JP2011246502A - 脂肪族ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境保全に貢献すると共に、結晶化速度が比較的低い脂肪族ポリエステル樹脂組成物の諸特性をより十分にする。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸等)に対し、扁平状のセルロース系繊維を結晶化剤として配合し、その配合物を結晶化して脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得る。前記のセルロース系繊維としては、例えば数百μmレベルの長さの繊維を用いたり、幅が数十μmレベル,厚さ数μmレベルの繊維を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂とセルロース系繊維を含んだ配合物から成る脂肪族ポリエステル樹脂組成物であって、例えば自動車分野等の各種分野で適用されている樹脂組成物に関するものである。
自動車分野に限らず各種分野で適用されている樹脂組成物の製品(例えば、自動車用ケーブルの筐体等)は、化石由来材料を利用したものが一般的であったが、その適用対象の製品が寿命等により処分対象となった場合には、単に埋立て処理等の方法により処分されていた。しかしながら、その埋立て処理に係る最終処分場が年々減少していく傾向となり、その対応策が望まれている。その対応策として、当該製品を焼却処理あるいはサーマルエネルギーとして利用する方法も検討されてきたが、この方法では燃焼処理工程を要するため、種々の有害物質あるいはCO2等を排出してしまう可能性がある。
そこで、近年においては、非化石由来材料を利用した樹脂組成物を適用する試みが行われている。例えば、植物由来材料として知られているポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂を利用した樹脂組成物は、生分解性を有するため、例えば前記のように埋め立て処理等により処分した場合であっても、比較的環境負荷が小さく、環境保全に貢献できるものとして注目されている。
ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂は結晶性高分子成分であるものの、化石由来材料の樹脂と比較して結晶化速度が遅く、当該脂肪族ポリエステル系樹脂を単に成形しただけでは、得られる樹脂組成物の結晶化度が低いものとなってしまう。一般的に、結晶化度の低い樹脂組成物は生産性(成形性),耐熱性,耐衝撃性,耐加水分解性等の諸特性が劣るとされており、当該結晶化度を高めることは重要とされている。
そこで、脂肪族ポリエステル系樹脂に対しガラス繊維やタルク等の無機系フィラーを結晶核剤として配合することにより結晶化速度を高める手法が採られてきたが、その結晶核剤においても植物由来材料を適用し、環境保全に更なる貢献をする試みがなされている。例えば、セルロース系繊維を結晶核剤として配合した脂肪族ポリエステル樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
特開2007−211129号公報(段落[0004],[0014]等)。
前記のようにセルロース系繊維を結晶化剤として用いて環境保全に貢献し、当該セルロース系繊維の平均粒径(あるいは長さ)を調整して結晶化速度を高めることが行われているが、結晶化速度が比較的低い脂肪族ポリエステル樹脂組成物の諸特性をより十分にするために、当該結晶化速度を更に向上させることが求められている。
本発明は、前記の課題を解決すべく創作された技術的思想であって、具体的に、この発明による脂肪族ポリエステル樹脂組成物の一態様は、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂,扁平状のセルロース系繊維を含有した配合物を結晶化して成ることを特徴とする。
前記の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸を用いることができる。また、前記のセルロース系繊維としては数百μmレベルの繊維長さの繊維を用いることができ、繊維幅が数十μmレベル,繊維厚さ数μmレベルの繊維を用いることもできる。
一般的に、樹脂組成物の分野では、結晶化剤として繊維の形状を整えるために、予め酸加水分解処理等の工程を経て繊維硬度を小さくする手法が採られており、このような処理工程を経て所定の大きさに裁断された単なる線状のセルロース系繊維(例えば、横断面略円状の繊維;以下、線状繊維と称する)が適用されているが、扁平状のセルロース系繊維(実施例では扁平状繊維)、すなわち形状が整えられていない繊維を適用するという発想は全くなく、検討すらされていなかった。
一方、扁平状のセルロース系繊維を適用した場合、従来のような線状の繊維と比較して、表面積が大きいため、脂肪族ポリエステル系樹脂に配合された場合には当該脂肪族ポリエステル系樹脂とセルロース系繊維との界面の面積も大きくなる。
以上示したように本発明によれば、環境保全に貢献できると共に、十分(例えば、線状のセルロース系繊維と比較して十分)な結晶化速度を確保することができ、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の諸特性の向上にも貢献できる。
本実施例で用いたセルロース系繊維の繊維長分布(S1,H1)。 セルロース系繊維における化学構造図。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるワイドスペクトル図(S1,H1)。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるワイドスペクトル図(S2,H2)。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるナロースペクトル図(S1,H1)。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるナロースペクトル図(S2,H2)。 本実施例で用いたセルロース系繊維における比表面積結果図(S1〜H2)。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるSEM写真図(S1,H1)。 本実施例で用いたセルロース系繊維におけるSEM写真図(S2,H2)。 本実施例で用いたセルロース系繊維による等温結晶化速度結果図(S1〜H2)。
本実施形態の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル系樹脂に対し、少なくとも扁平状のセルロース系繊維を結晶核剤として配合し、その配合物を結晶化して成るものであり、例えば目的とする適用製品(例えば、自動車用ケーブルの筐体等)に応じて、以下に示すように脂肪族ポリエステル系樹脂,セルロース系繊維の他に各種添加剤等を適宜利用しても良く、樹脂組成物分野における周知の製法を適宜適用することができる。
[脂肪族ポリエステル系樹脂]
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、又は脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体等が挙げられる。例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、ポリ乳酸系樹脂,ポリグリコール酸,ポリ3−ヒドロキシ酪酸,ポリ4−ヒドロキシ酪酸,ポリ4−ヒドロキシ吉草酸,ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸,ポリカプロラクトン等が挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、ポリエチレンアジペート,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
[セルロース系繊維]
セルロース系繊維としては、人為的に抽出・合成されたセルロース,リグノセルロースや、これらセルロース,リグノセルロースを少なくとも何れか一方を含んだセルロース系バイオマスから得られる繊維が挙げられ、その繊維を目的とする樹脂組成物に応じた所定の長さに裁断された扁平状ものを適用する。
セルロースを含んだセルロース系バイオマスとしては、木材パルプ粉砕物,コットンリンター(例えば、綿実から得られるもの),コットンフロック,人絹フロック(例えば、人絹を裁断したもの)等がある。また、リグノセルロースを含んだセルロース系バイオマスとしては、リグノセルロース系繊維,リグノセルロース系がある。具体例としては、木材パルプ,リファイナー・グランド・パルプ(RGP),製紙パルプ,古紙,粉砕処理した木片,木粉,鋸屑,カンナ屑,竹粉,バガス,果実殻粉等を挙げることができる。
このようなセルロース系繊維は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物に配合されることによって、脂肪族ポリエステル系樹脂の強化充填剤として作用するだけでなく、当該脂肪族ポリエステル系樹脂が溶融状態から固化する際の結晶化を促進する結晶核剤としても作用する。
本実施形態のように扁平状のセルロース系繊維を得る手法としては、例えば前記のような酸加水分解処理を施さずに、セルロース系繊維を単に裁断する手法が挙げられる。この手法の場合、セルロース系繊維には横断面方向にせん断力(押圧力)が掛かりながら裁断されるため、目的とする扁平状の繊維が容易に得られることとなる。従来、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の結晶核剤としてセルロース系繊維を用いる場合には、比較的形状が整った線状のものを適用する必要があると考えられ、例えば酸加水分解処理により予めセルロース系繊維の硬度を小さくし、線状に裁断し易くする手法が採られていたが、本実施形態の場合には当該酸加水分解処理を必要としない。
扁平状の繊維の大きさとしては、目的とする樹脂組成物に応じて適宜設定することができるが、例えば数百μmレベルの繊維長さ(実施例では約140μm〜200μmレベル)に裁断されたものであって、繊維幅が数十μmレベル(実施例では約20μmレベル),繊維厚さ数μmレベル(実施例では約1.5μm〜2.5μmレベル)のもの(扁平状の繊維において繊維幅方向よりも繊維厚さ方向の寸法が大きいもの)が挙げられる。
配合量においても、目的とする樹脂組成物に応じて適宜設定することができるが、例えば100重量部の脂肪族ポリエステル系樹脂に対し、10〜900重量部程度を配合することが挙げられる。なお、セルロース系繊維の配合量が過少であると所望とする結晶化速度が得られ難くなり、当該配合量が過多になると脂肪族ポリエステル系樹脂とセルロース系繊維とを混練した際の均一分散性が低下する恐れがある。
[その他の成分]
前記の脂肪族ポリエステル系樹脂,セルロース系繊維の他に、多塩基酸無水物,有機過酸化物,変性脂肪族ポリエステル系樹脂,無機系化結晶核剤などを、目的とする樹脂組成物に応じて適宜配合しても良い。
<多塩基酸無水物,有機過酸化物>
多塩基酸無水物は、脂肪族ポリエステル系樹脂,セルロース系繊維を主成分とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物に対して必要に応じて添加されるものである。この多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸,無水コハク酸,無水フタル酸,無水ヘキサヒドロフタル酸,無水テトラヒドロフタル酸,無水ジクロロマレイン酸,無水イタコン酸,無水テトラブロモフタル酸,無水ヘット酸,無水トリメット酸,無水ピロメリット酸等が挙げられる。これら多塩基酸無水物の配合量としては、100重量部の脂肪族ポリエステル系樹脂に対し、0.1〜20重量部の範囲で配合されることが挙げられる。
有機過酸化物は、配合された多塩基酸無水物を脂肪族ポリエステル系樹脂に重合させるものである。この有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3,1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシフェニルアセテート等を挙げることができる。このような有機過酸化物は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。これら有機過酸化物の配合量としては、100重量部の脂肪族ポリエステル系樹脂に対し、0.001〜2重量部の範囲で配合することが挙げられる。
前記のように多塩基酸無水物および有機過酸化物が配合されて脂肪族ポリエステル系樹脂と化学反応することにより、セルロース系繊維との親和性を有する極性基が脂肪族ポリエステル系樹脂に設けられることとなる。これにより、脂肪族ポリエステル系樹脂とセルロース系物質との相溶性が向上し、脂肪族ポリエステル系樹脂のマトリックス中にセルロース系物質が微細に均一に分散し易くなる。このように、微細に均一に分散したセルロース系繊維が結晶核剤として作用するため、脂肪族ポリエステル系樹脂は、加熱溶融した後に冷却して固化する際において、結晶化速度が高くなる傾向となる。
<変性脂肪族ポリエステル系樹脂>
変性脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物に対して必要に応じて添加されるものである。この変性脂肪族ポリエステル系樹脂は、前記の多塩基酸無水物,有機過酸化物と共に、または多塩基酸無水物,有機過酸化物を代替して用いることができるものである。この変性脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂を、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を持つ変性剤(化合物)で変性したものである。
なお、変性脂肪族ポリエステル系樹脂においては、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の主成分である脂肪族ポリエステル系樹脂と同一の化合物を変性させたものに限定されるのではなく、他の異なる脂肪族ポリエステル系樹脂化合物を変性させてなるものもでも良い。カルボキシル基を有する変性剤の具体例としては、マレイン酸,シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカンジカルボン酸,カルバリル酸,シクロヘキサンジカルボン酸,シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸,テレフタル酸,イソフタル酸,オルトフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,ビフェニルジカルボン酸,トリメシン酸,トリメリット酸,ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。また、酸無水物基を有する変性剤の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロキシフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
前記のような変性脂肪族ポリエステル系樹脂が配合されると、脂肪族ポリエステル系樹脂とセルロース系繊維との相溶性が向上し、脂肪族ポリエステル系樹脂のマトリックス中にセルロース系物質が微細化して均一に分散する作用が得られる。このようにして微細に均一に分散したセルロース系繊維は、結晶核剤として作用するので、脂肪族ポリエステル系樹脂は、加熱溶融した後に冷却して固化する際、結晶化速度が高くなる傾向となる。
<無機系結晶核剤>
無機系結晶核剤は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物に添加される多塩基酸無水物および有機過酸化物に対し、併用的に配合されるものである。もしくは、無機系結晶核剤は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物に添加される変性脂肪族ポリエステル系樹脂に対し、併用的に配合されるものである。
このような無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、シリカ、モンモリロナイト、カオリナイト、クレー、マイカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、特に好ましいものとしてはタルクが挙げられる。また、一般的にポリマーの結晶核剤として用いられているものであれば、特に限定されるものではなく、これら結晶核剤としては、樹脂との親和性,分散性を向上させるために、各種チタネート系カップリング剤,シランカップリング剤,不飽和カルボン酸,脂肪酸や、それら誘導体等で表面処理したものを用いてもよい。
無機系結晶核剤の大きさとしては、例えば平均粒径(レーザー回折散乱法によって測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求めた平均粒径等)0.001μm〜3.0μmの範囲で、かつ比表面積が15m2/g〜1000m2/gの範囲にあるものが挙げられる。また、配合量としては、脂肪族ポリエステル系樹脂100重量部に対し、0.01〜50重量部の範囲とすることが挙げられる。
このように無機系結晶核剤が配合されることにより、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の結晶化が促進される傾向となる。
<その他>
また、必要に応じて、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の分野で周知の各種材料、例えば可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、着色剤、各種フィラー、充填材、強化材、抗菌・抗カビ剤等さらには米等に代表される澱粉物質の各種の添加剤などにおいても、適宜配合してもよい。
[製法]
本実施形態の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、当該脂肪族ポリエステル樹脂組成物の分野で周知の各種方法により製造することができるが、例えば、前記の脂肪族ポリエステル系樹脂,セルロース系繊維等を所定比率で混合し、成形機のホッパー内に投入し、溶融させることにより行うことができる。このように溶融している脂肪族ポリエステル樹脂組成物を、直ちに成形して成形体を作成してもよい。
また、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を構成する前記各成分の任意組み合わせを溶融混合して一旦ペレット化し、その後で必要に応じて再溶融して成形してもよい。均一に混合させるには、一旦ペレット化する方法が挙げられる。
成形体を成形する際の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の溶融押出温度や反応溶融時間は、使用する脂肪族ポリエステル系樹脂の融点及びその他の成分の混合比率等を考慮して適宜選択できるが、例えば溶融押出温度を100〜250℃程度,反応溶融時間を数十分程度に設定することが挙げられる。また、無機系結晶核剤の添加方法としては、特に限定されないが、ペレットにあらかじめ混合されている場合もあるし、ペレットを再溶融する際に添加して混合することも考えられる。
本実施形態に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物の成形体の成形方法としては、一般的な脂肪族ポリエステル樹脂組成物の分野で周知の成形方法を適用することができ、具体例として、射出成形、ガス射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、畏形押出成形、射出ブロー成形、真空圧成形、圧縮成形等を挙げることができる。良好な成形性と外観を有する成形体を得る手法としては、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の溶融物を金型内に充填し、金型内でそのまま結晶化させる方法、あるいは冷却して成形体を取り出し後、結晶化温度で一定時間保持して結晶化させる方法等により、成形品を結晶化させることが考えられる。
結晶化させる温度としては、ガラス転移点以上融点以下の温度で、具体的には、約60℃から160℃の範囲が挙げられる。また、結晶化された成形体は、各種方法により各種形状に成形することができるものであって、フィルム、シート、射出成形体、ブロー成形体、押出成形体、真空圧空成形体、積層構造体、容器、発泡体、繊維、織物、不織布等として、自動車分野、電気・電子分野、包装分野、農業分野、漁業分野、医療分野、その他一般雑貨等各種分野に利用することが考えられる。
本実施形態に係る成形体の用途例としては、自動車分野では、ケーブル(筐体等),バンパー、ラジエーターグリル、サイドモール、ガーニッシュ、ホイールカバー、エアロパーツ、インストルメントパネル、ドアトリム、シートファブリック、ドアハンドル、フロアマット等の内外装部品に利用することができる。
また家電・電子用途では、パソコンのハウジング及び内部部品、CRTディスプレイ及びLCDのハウジング及び内部部品、プリンターハウジング及び内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型等の携帯端末ハウジング及び内部部品、記録媒体(CD、DVD,MD、FD等)ドライブのハウジング及び内部部品、コピー機、ファクシミリ等のハウジング及び内部部品、更にVTR、デジタルカメラ、テレビ、冷蔵庫、エアコン等電子・家電機器のハウジング、内部部品に有用に用いることができる。
そして、包装分野では、発泡緩衝剤、包装用フィルム、シートとして、各種包装が可能である。また医療分野では、医療用材料、生理用品等の衛生材料として利用できる。その他、レジャー用品、ICカード等のカード類、トレイ、プラスチック缶、コンテナー、タンク、カゴ等の容器・食器類、鞄、椅子、テーブル、等にも有用である。
次に、本実施形態の脂肪族ポリエステル樹脂組成物に基づいて、以下に示すように脂肪族ポリエステル系樹脂,セルロース系繊維を用い、結晶化速度の検証を行った。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ネイチャーワークス社製のポリ乳酸PLA(以下、樹脂PLAと称する)を用いた。セルロース系繊維としては、日本製紙社製のKCフロックであって、下記表1に示すように酸加水分解処理を施さずに裁断された扁平状の繊維(以下、扁平状繊維H1,H2と称する)と、酸加水分解処理して裁断された2種類の線状の繊維(以下、線状繊維S1,S2)と、を用いた。
なお、前記の各繊維の繊維長さ,繊維幅,繊維厚さをISO/FDIS16065−2に基づいて調べたところ、下記表2に示すように、扁平状繊維H1と線状繊維S1、扁平状繊維H2と線状繊維S2は、それぞれ互いに略同じ繊維長さでありながら、繊維幅,繊維厚さにおいては差が有ることが読み取れる。
また、扁平状繊維H1,線状繊維S1における繊維長分布を、繊維長・形状測定機(L&W Fiber Tester Lorentzen and Wettre社製)により調べたところ、図1に示すように互いに略同一であることが読み取れる。扁平状繊維H2と線状繊維S2の繊維長分布についても、前記の扁平状繊維H1,線状繊維S1同様に、互いに略同一であることを確認した。
すなわち、扁平状繊維H1と線状繊維S1、扁平状繊維H2と線状繊維S2は、それぞれ繊維長さは略同一であり、その違いとしては形状が異なる点(扁平状か線状かの違い)だけであることが判明した。
[セルロース系繊維の表面官能基]
まず、扁平状繊維H1,H2と線状繊維S1,S2の表面官能基について、図2に示した化学構造式における実線丸印で囲まれた炭素原子(図5,図6中の符号Jに相当),点線丸印で囲まれた炭素原子(図5、図6中の符号Tに相当)に着目してX線光電子分光装置(AXIS−165)により観測し、その結果を、図3A(線状繊維S1),B(扁平状繊維H1)および図4A(線状繊維S2),B(扁平状繊維H2)のワイドスペクトル図と、図5A(線状繊維S1),B(扁平状繊維H1)および図6A(線状繊維S2),B(扁平状繊維H2)のナロースペクトル図に示した。
これら図3〜図6の結果において、酸加水分解処理の有無で比較してみると、扁平状繊維H1と線状繊維S1、扁平状繊維H2と線状繊維S2は、それぞれ互いに同じスペクトル特性を示していることが読み取れる。すなわち、各スペクトル特性に示すように、それぞれC1S,O1Sが検出されたものの、酸加水分解処理(硫酸や塩酸等による処理)によって検出されると予想していたS成分,Cl成分については、この観測では検出されなかった。
ゆえに、セルロース系繊維においては、酸加水分解処理の有無で表面官能基が変化することはないものとみなすことができ、当該酸加水分解処理自体が結晶化速度に影響を及ぼすことは無いものと判明した。
[セルロース繊維の比表面積]
BET吸着法(NOVA−4200e Quatachrome社製機器使用)により、前記の扁平状繊維H1,H2と線状繊維S1,S2の比表面積を観測し、その結果を図7に示した。その結果、扁平状繊維H1と線状繊維S1、扁平状繊維H2と線状繊維S2は、それぞれ繊維長さが略同一であるにもかかわらず、線状繊維S1よりも扁平状繊維H1のほうが比表面積は大きく、線状繊維S2よりも扁平状繊維H2のほうが比表面積は大きいことが読み取れる。
そこで、前記の扁平状繊維H1,H2と線状繊維S1,S2をSEM(日立ハイテクノロジー社製のS−3400N)写真により観察したところ、図8A(線状繊維S1),B(扁平状繊維H1)および図9A(線状繊維S2),B(扁平状繊維H2)に示すように、繊維長さが略同一であるにもかかわらず、形状が線状と扁平状との違いがあり、繊維幅,繊維厚さにおいても違いがあることを確認できた。
ゆえに、セルロース系繊維においては、たとえ繊維長さが略同一であっても、扁平状のものは線状のものよりも比表面積が大きくなることを判明した。
[結晶化速度]
まず、前記の樹脂PLAに対し、扁平状繊維H1,H2,線状繊維S1,S2のいずれかを配合し、バッチ式混練機(東洋精機製作所社製のラボプラストミル)により混練してペレット状の組成物試料をそれぞれ作成した。そして、各組成物試料について、DSC法(TA社製機器使用)により等温結晶化速度を観測し、その結果を図10に示した。なお、観測条件としては、40℃から200℃(昇温速度10℃/分)を10分間ホールドした後、90℃から130℃(降温速度45℃/分)を30分間ホールドした。
図10に示すように、いずれの繊維H1,H2,S1,S2を用いた場合であっても、結晶化ピーク時間が温度105℃前後で出現しているにもかかわらず、それら結晶化ピーク時間自体について差があることが読み取れる。
すなわち、線状繊維S1を用いた試料よりも扁平状繊維H1を用いた試料のほうが結晶化ピーク時間は短縮され、線状繊維S2を用いた試料よりも扁平状繊維H2を用いた試料のほうが結晶化ピーク時間は短縮されることが読み取れる(それぞれ結晶化ピーク時間が約20%短縮)。
ゆえに、セルロース系繊維においては、線状のものを用いた場合と比較して、扁平状のものを用いることにより結晶化ピーク時間を短縮でき、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の結晶化度の向上に貢献できることを判明した。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
H1,H2…扁平状繊維
S1,S2…線状繊維

Claims (4)

  1. 少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂,扁平状のセルロース系繊維を含有した配合物を結晶化して成ることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
  2. 前記の脂肪族ポリエステル系樹脂は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
  3. 前記のセルロース系繊維の繊維長さは、数百μmレベルであることを特徴とする請求項1または2記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
  4. 前記のセルロース系繊維は、繊維幅が数十μmレベル,繊維厚さが数μmレベルであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
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