JP4734719B2 - Icカードとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路部が形成された第1の基材と他の基材とを、第2の基材で接合するICカードとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非接触ICカードは、データの読み出し及び書き込みを行う外部リーダ・ライタとの間で、データ信号及び電力を送受信するアンテナコイル、信号処理を行うICチップなどの電子部品、及び、これらを実装して接続する基板などから構成されている。
【0003】
アンテナコイルの形態は、被覆銅線などを周回して形成した巻き線式コイル、銅箔などの金属をプラスチックフィルムなどの絶縁材料にラミネートしたものをエッチング法によってパターニングして形成するエッチングコイル、又は、導電性インクを用いてシルクスクリーン印刷法によって形成するプリントコイルなどがある。
【0004】
非接触式ICカードの製造方法は、アンテナコイルと、ICチップ,コンデンサなどの電子部品とを接続してコンポーネントとして実装した後に、このコンポーネントを射出成形されたプラスチックケースに収納するか、又は、プラスチックフィルムを複数積層してコンポーネントを内包するのが、一般的である。
【0005】
しかし、最近、ISO規格に定められた0.76±0.08mmという厚さを達成するために、プラスチックフィルムを複数積層して薄型化を図る方法が多くとられるようになってきている。
例えば、このアンテナコイルと、ICチップ,コンデンサなどの電子部品を接続したコンポーネントをフィルム上で形成し、これをプラスチックフィルムでラミネートして内包する方法では、カード表面を凹凸がない平滑な面とするために、通常、ホットメルトタイプの接着剤や、PVC,PET−G等の熱塑性のある材料によって積層する方法がとられる。
【0006】
図9は、従来の一般的な非接触ICカードの積層前の状態を示す分解斜視図である。
図9において、1は、基板1a上に電子部品で構成したカード9枚分の回路を搭載したコンポーネントフィルムである。1b,1b・・・1bは、ICチップであり、1c,1c・・・1cは、アンテナ回路である。2a,2bは、カード表面を保護するためのラミネート用のフィルム(積層フィルム)3a,3bを、コンポーネントフィルム1の表裏に接着して積層する接着剤層である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような非接触ICカードは、一般的に、一日のうちに何回も使用することが多く、その都度、使用者の目に触れるものであり、カード表側の体裁がきれいであることが好まれる。従って、見た目に美しく、平滑であることが、特に重要である。
ところが、前述した方法により、非接触ICカードを製造するときに、カード表面に凹凸なく、平滑な面にするためには、コンポーネントフィルム上のICチップ,コンデンサ,アンテナコイル等の金属部品が、熱塑性がないので、ホットメルトタイプの接着剤やPVC,PET−G等の熱塑性のある材料を、それら部品部の体積分だけ、周辺部に押し流して、厚さを一様にする必要がある。
【0008】
図8は、従来の非接触ICカードの一部を拡大して示した断面図である。
従来の非接触ICカードは、基板1a上に実装されたICチップ1bとラミネートフィルム3aの間に挿入された接着剤層2aの部分が、積層加工の過程で接着剤の加熱による流動性が不十分であるために、周辺部への拡散によって逃げきれずに残り、ラミネートフィルム3aの一部を盛り上げてしまい、カード表面に部分的な突出部を作ってしまう。
この例では、アンテナコイルの回路1cの部分は、一応、カード表面に凸部を作らずに済んでいるが、接着強度を確保するために、流動性を犠牲にすると、この部分でも、カード表面に凸部を作ってしまうことがある。
【0009】
良好な製品を得るためには、接着剤に流動性と接着強度を満足する材料を選定する必要があるが、次の理由により極めて難しい。
前述したフィルム上に形成されたコンポーネントは、一般的に電子部品を接続するときに、はんだづけ、溶接,異方導電性フィルム等による接続に代表されるように、加熱,加圧により達成される。これらは、きわめて短時間で接続可能な上に、接続に関して高信頼性を得られることから広く採用されている。
その場合に、コンポーネントが形成されるフィルムは、それらの接続条件下でも、安定した寸法精度,物理強度が得られるような素材が選定される。それらは、物理的科学的に安定したプラスチックフィルムであることが多い。それらを貼りあわせるための接着剤も限られたものになる。
【0010】
一方、カード化のときに、積層するフィルムは、カードとしての特性を備えたものを選定する必要がある。例えば、色,質感,材料コストの他に、物理強度,加工適性,安全性などが要求される。特に、加工適性においては、カード形状にするための加工、例えば、貼りあわせ,打ち抜き,印刷などが可能であることが最低条件となる。
【0011】
そのような性質の異なるフィルムは、積層によりカード化する場合に、これらを貼り合わせるために、接着剤又は熱により、フィルム間を接合させる必要があるが、所定の接着強度が得られる材料の開発にコストと多くの時間を必要とし、解決すべき問題点が多い。例えば、コンポーネントが形成されたフィルムには、よく接着するが、カード用のフィルムには、接着しない場合がある。また、その逆の場合もある。フィルムの融着にいたっては、ほぼ同じ材料でなければ全く強度が確保できない等々の問題がある。
さらにこの上に、材料の流動性を要求した場合に、カード表面の凹凸は、なくなり平滑になるが、接着強度が出ないという問題が発生する。
【0012】
本発明の課題は、十分な接着強度が得られる接着材料を使用しても、カード表面の凹凸を解消することができるICカードとその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、表面に回路部が形成された第1の基材と、前記第1の基材とその第1の基材に積層される他の基材とを接合し、加工時に流動性を有する第2の基材と、を含むICカードにおいて、前記第1の基材に形成され、前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収する体積吸収部を備え、前記体積吸収部は、前記回路部からの距離に応じて、その大きさを異ならせたこと、を特徴とするICカードである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のICカードにおいて、前記体積吸収部は、前記第1の基材の前記回路部の周辺に設けられた孔部又は凹部であること、を特徴とするICカードである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のICカードにおいて、前記体積吸収部は、前記回路部の体積に応じて、その大きさを異ならせたこと、を特徴とするICカードである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1に記載のICカードにおいて、前記他の基材は、前記第1の基材の両側に設けられており、前記体積吸収部は、孔部であり、前記両側の他の基材は、前記孔部を通して、前記第2の基材で接合される部分を有すること、を特徴とするICカードである。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のICカードを製造するICカードの製造方法において、前記第1の基材に前記回路部を形成する回路部形成工程と、前記第1の基材に前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収し、前記回路部からの距離に応じて、その大きさが異なる体積吸収部を形成する体積吸収部形成工程と、前記第2の基材を前記第1の基材と前記他の基材に挟んで流動化させ、前記第2の基材の体積余剰部を前記体積吸収部に吸収させながら、前記第1の基材と前記他の基材とを接合する接合工程と、を備えたことを特徴とするICカードの製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面などを参照して詳しく説明する。
図1は、本発明によるICカードの実施形態を、カード単体について積層加工する以前の状態で示した分解斜視図である。
なお、実際のカードの製造工程では、図9に示した従来カードと同様な方法(9面付け)で加工される。
【0020】
本実施形態のICカードは、コンポーネントフィルム10と、接着剤層21,22と、積層フィルム31,32等とを備えている。
コンポーネントフィルム10は、表面にICチップ12a,アンテナコイル12bなどの回路部が形成されたフィルム(第1の基材)である。このコンポーネントフィルム10には、回路部の体積分の接着剤層21,22を構成する流動化した接着剤を吸収する体積吸収部となる多数の孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13b,13c,13c・・・13cなどが形成されている。
【0021】
接着剤層21,22は、コンポーネントフィルム10とそれに積層される積層フィルム(他の基材)31,32とを接合し、加工時に流動性を有する接着剤又は融着フィルムなどの基材(第2の基材)である。
積層フィルム31,32は、コンポーネントフィルム10に積層され、最も外側に配置されてカード全体を保護するフィルム(他の基材)である。
【0022】
次に、この非接触ICカードの製造方法について説明する。
まず、コンポーネントフィルム(第1の基材)10は、基板11上に、ICチップ12a,アンテナコイル12bなどの回路部が形成される(回路部形成工程)。このときに、この基板11には、予め、回路部の実装予定位置の周辺に、本発明の体積吸収部となる多数の孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13b,13c,13c・・・13cなどが開けらる(体積吸収部形成工程)。
【0023】
その後に、コンポーネントフィルム10は、接着剤層21,22によって、積層フィルム31,32の間に挟むようにして積層して、接合される(接合工程)。このとき、孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13b,13c,13c・・・13cには、基板11の表裏面を貫通し、前述した積層加工時に、接着剤層21,22を構成する接着剤の一部が流入する。
【0024】
図2は、ICチップ12aとその周辺の孔13a,13a・・・13aの配置例を示す説明図(平面図)である。但し、図中のaは、孔13aが円形の例であり、bは、孔13bが長方形の例である。
図3は、アンテナコイル12bの一部と、その周辺の孔13c,13c・・・13cの配置例を示す説明図(平面図)である。
図2又は図3に示すように、基板11上に回路部を構成するICチップ12aやコンデンサ、アンテナコイル12bなどの部品の周辺部に、多数の孔13a,13a・・・13a(又は13b,13b・・・13b)や、13c,13c・・・13cなどを開けることによって、基板11上の部品の上側にある接着剤層21の一部が、部品の体積分(余剰分)だけ基板11の孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13b,13c,13c・・・13cへ流れ込むので、表面の凹凸が解消される。
【0025】
図4は、この凹凸が解消される状況を示す説明図(断面図)である。
図5は、図4の過程を経て凹凸が解消された状態を、図8の従来例に対比して示した説明図(断面図)である。
【0026】
なお、接着剤層21がICチップ,コンデンサ,アンテナコイルなどの部品に対して接着しなくても、孔へ流れ込んだ接着剤層21,22が基板11の両面でつながることによって、必要な接着強度は十分確保できる。
これらの孔の形状,サイズ,個数,配置は、目的とする平滑性が得られ、かつ、基板11がコンポーネント形成のために問題が発生しない程度で設ければよい。その手段も、抜き刃,レーザ光などを使用し、基板11の性能を損なわなければよい。
【0027】
図6及び図7は、基板11上のICチップなどの部品周辺に配置する孔の状態の応用例を示す説明図(平面図)である。
図6の場合には、孔は円形であり、ICチップ12cの周辺で最も近い場所に比較的大きい径の孔13d,13d・・・13dを配置し、その外側に、やや小さい径の孔13e,13e・・・13eを配置し、最も外側に、最も小さい孔13f,13f・・・13fを配置してある。
【0028】
図7の場合には、孔は角形(長方形又はL字形)であり、ICチップ12cの周辺で最も近い場所に、比較的大きい孔13g,13hなどを配置し、その外側に、やや小さい径の孔13i,13i・・・13iを配置をしてある。
図6、図7のいずれの場合も、図2と同様の効果が得られ、特に、ICチップ12cが比較的に大きい場合に適し、接着剤層21の流入を、より速やかにすることができる。
なお、これらの孔の形状と配置は、図2,図7,図8に示すものに限定されることはなく、他にも色々な形,大きさ,配置の組み合わせをすることも可能である。
【0029】
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
例えば、体積吸収部は、孔の例で説明したが、凹部を形成してもよい。また、体積吸収部は、ICチップ等の体積に応じて、孔や凹部の大きさを変更することもできる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1の基材に形成される回路部の周辺に、加工時に流動化する第2の基材の、前記回路部の体積分を吸収する体積吸収部を設けたので、第1の基材と他の基材との間の、前記回路部分の第2の基材が体積吸収部に吸収され、カード表面に凹凸を生じさせないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による非接触ICカードの実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1のICチップと周辺の孔の配置例を示す説明図(平面図)である。
【図3】アンテナコイルの一部と周辺の孔の配置例を示す説明図(平面図)である。
【図4】ICチップ周辺の凹凸が解消される状況を示す説明図(断面図)である。
【図5】図4の過程を経て凹凸が解消された状態を示す説明図(断面図)である。
【図6】部品周辺の孔(円形)の配置の応用例を示す説明図(平面図)である。
【図7】部品周辺の孔(角形)の配置の応用例を示す説明図(平面図)である。
【図8】従来の非接触ICカードの一部を拡大して示した説明図(断面図)である。
【図9】従来の非接触ICカードの複数枚分を加工積層する以前の状態で示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1,10 コンポーネント部
1a,11 基板
1b,12a ICチップ
1c,12b アンテナ回路
2a,2b,21,22 接着層
3a,3b,31,32 積層フィルム
Claims (5)
- 表面に回路部が形成された第1の基材と、前記第1の基材とその第1の基材に積層される他の基材とを接合し、加工時に流動性を有する第2の基材と、を含むICカードにおいて、
前記第1の基材に形成され、前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収する体積吸収部を備え、
前記体積吸収部は、前記回路部からの距離に応じて、その大きさを異ならせたこと、
を特徴とするICカード。 - 請求項1に記載のICカードにおいて、
前記体積吸収部は、前記第1の基材の前記回路部の周辺に設けられた孔部又は凹部であること、
を特徴とするICカード。 - 請求項1又は請求項2に記載のICカードにおいて、
前記体積吸収部は、前記回路部の体積に応じて、その大きさを異ならせたこと、
を特徴とするICカード。 - 請求項1に記載のICカードにおいて、
前記他の基材は、前記第1の基材の両側に設けられており、
前記体積吸収部は、孔部であり、
前記両側の他の基材は、前記孔部を通して、前記第2の基材で接合される部分を有すること、
を特徴とするICカード。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のICカードを製造するICカードの製造方法において、
前記第1の基材に前記回路部を形成する回路部形成工程と、
前記第1の基材に前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収し、前記回路部からの距離に応じて、その大きさが異なる体積吸収部を形成する体積吸収部形成工程と、
前記第2の基材を前記第1の基材と前記他の基材に挟んで流動化させ、前記第2の基材の体積余剰部を前記体積吸収部に吸収させながら、前記第1の基材と前記他の基材とを接合する接合工程と、
を備えたことを特徴とするICカードの製造方法。
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2001
- 2001-01-22 JP JP2001012706A patent/JP4734719B2/ja not_active Expired - Fee Related
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