JP4736191B2 - Icカードとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路部が形成された第1の基材と他の基材とを、第2の基材で接合するICカードとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非接触ICカードは、データの読み出し及び書き込みを行う外部リーダ・ライタとの間で、データ信号及び電力を送受信するアンテナコイル、信号処理を行うICチップなどの電子部品、及び、これらを実装して接続する基板などから構成されている。
【0003】
アンテナコイルの形態は、被覆銅線などを周回して形成した巻き線式コイル、銅箔などの金属をプラスチックフィルムなどの絶縁材料にラミネートしたものをエッチング法によってパターニングして形成するエッチングコイル、又は、導電性インクを用いてシルクスクリーン印刷法によって形成するプリントコイルなどがある。
【0004】
非接触式ICカードの製造方法は、アンテナコイルと、ICチップ,コンデンサなどの電子部品とを接続してコンポーネントとして実装した後に、このコンポーネントを射出成形されたプラスチックケースに収納するか、又は、プラスチックフィルムを複数積層してコンポーネントを内包するのが、一般的である。
【0005】
しかし、最近、ISO規格に定められた0.76±0.08mmという厚さを達成するために、プラスチックフィルムを複数積層して薄型化を図る方法が多くとられるようになってきている。
例えば、このアンテナコイルと、ICチップ,コンデンサなどの電子部品を接続したコンポーネントをフィルム上で形成し、これをプラスチックフィルムでラミネートして内包する方法では、カード表面を凹凸がない平滑な面とするために、通常、ホットメルトタイプの接着剤や、PVC,PET−G等の熱塑性のある材料によって積層する方法がとられる。
【0006】
図6は、従来の一般的な非接触ICカードの積層前の状態を示す分解斜視図である。
図6において、1は、基板1a上に電子部品で構成したカード9枚分の回路を搭載したコンポーネントフィルムである。1b,1b・・・1bは、ICチップであり、1c,1c・・・1cは、アンテナ回路である。2a,2bは、カード表面を保護するためのラミネート用のフィルム(積層フィルム)3a,3bを、コンポーネントフィルム1の表裏に接着して積層する接着剤層である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような非接触ICカードは、一般的に、一日のうちに何回も使用することが多く、その都度、使用者の目に触れるものであり、カード表側の体裁がきれいであることが好まれる。従って、見た目に美しく、平滑であることが、特に重要である。
良好な製品を得るためには、接着剤に流動性と接着強度を同時に満足する材料を選定する必要があるが、次の理由により極めて難しい。
前述した方法により、非接触ICカードを製造するときに、カード表面に凹凸なく、平滑な面にするためには、コンポーネントフィルム上のICチップ,コンデンサ,アンテナコイル等の金属部品が、熱塑性がないので、ホットメルトタイプの接着剤やPVC,PET−G等の熱塑性のある材料を、それら部品部の体積分だけ、周辺部に押し流して、厚さを一様にする必要がある。
【0008】
図5は、従来の非接触ICカードの一部を拡大して示した断面図である。
従来の非接触ICカードは、基板1a上に実装されたICチップ1bとラミネートフィルム3aの間に挿入された接着剤層2aの部分が、積層加工の過程で接着剤の加熱による流動性が不十分であるために、周辺部への拡散によって逃げきれずに残り、ラミネートフィルム3aの一部を盛り上げてしまい、カード表面に部分的な突出部を作ってしまう。
この例では、アンテナコイルの回路1cの部分は、一応、カード表面に凸部を作らずに済んでいるが、接着強度を確保するために、流動性を犠牲にすると、この部分でも、カード表面に凸部を作ってしまうことがある。
【0009】
前述したフィルム上に形成されたコンポーネントは、一般的に電子部品を接続するときに、はんだづけ、溶接,異方導電性フィルム等による接続に代表されるように、加熱,加圧により達成される。これらは、きわめて短時間で接続可能な上に、接続に関して高信頼性を得られることから広く採用されている。
その場合に、コンポーネントが形成されるフィルムは、それらの接続条件下でも、安定した寸法精度,物理強度が得られるような素材が選定される。それらは、物理的化学的に安定したプラスチックフィルムであることが多い。
従って、それらに対して、十分な接着力を備えた接着剤の種類も当然限られたものとなる。
【0010】
一方、積層するフィルムは、全体をカード化した状態でカードとしての適性を備えたものを選定する必要がある。たとえば、色,質感,材料コストの他に、物理強度,加工適性,安全性などが要求される。特に、加工適性においては、カード形状にするための加工、たとえば、貼りあわせ,打ち抜き,印刷が可能であることが最低条件となる。
そのような性質の異なるフィルムをカード化するために積層する場合には、フィルム間を熱により融着させるか、又は、フィルムを貼り合わせるための接着剤を使用する必要がある。ところが、フィルム同士を融着させる方法は、ほぼ同じ材料でなければ全く強度が確保できない。
【0011】
一方、接着剤を使用する場合には、所定の接着強度が得られる材料の開発には、コストと多くの時間を必要とし、解決すべき問題点が多い。
例えば、コンポーネントが形成されたフィルムには、よく接着するが、表面を覆うカード用のフィルムには、接着しない。また、その逆の場合もある。
従って、カード表面の凹凸をなくし平滑化するために必要な接着材料の流動性を要求する場合は、コンポーネントを形成するフィルムに対して必要な接着強度が十分得られないという問題点が発生する。
【0012】
本発明の課題は、積層される他の基材に対して必要な接合強度のある第2の基材を使用しながら、回路部が形成される第1の基材との構造的な係合を密にして、使用する各基材の物性のいかんにかかわらず、カード全体としての十分な貼り合わせ強度が得られるICカードとその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、表面に回路部が形成された第1の基材と、前記第1の基材とその第1の基材に積層される他の基材とを接合し、加工時に流動性を有する第2の基材と、を含むICカードにおいて、前記第1の基材に分散して多数形成され、前記加工時に前記第2の基材を流入させて一体化する接合用補助孔を備え、前記多数の接合用補助孔の一部は、前記第1の基材の周辺部を跨ぐように形成されていること、を特徴とするICカードである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のICカードにおいて、前記他の基材は、前記第1の基材の両側に配置されており、前記第2の基材は、前記第1の基材よりも前記他の基材に対する接着性がよいこと、を特徴とするICカードである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1に記載のICカードにおいて、前記接合用補助孔は、前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収する大きさであること、を特徴とするICカードである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のICカードを製造するICカードの製造方法において、前記第1の基材に前記回路部を形成する回路部形成工程と、前記第1の基材に前記回路部が形成されない部分に、前記加工時に前記第2の基材を流入させて一体化する接合用補助孔を分散して多数形成する接合用補助孔形成工程と、前記第2の基材を前記第1の基材と前記他の基材に挟んで流動化させ、前記接合用補助孔に前記第2の基材を流入させながら、前記第1の基材と前記他の基材とを接合する接合工程とを備え、前記接合用補助孔形成工程は、前記多数の接合用補助孔の一部を、前記第1の基材の周辺部を跨ぐように形成すること、を特徴とするICカードの製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面などを参照して詳しく説明する。
図1は、本発明による非接触ICカードの実施形態を、カード単体について積層加工する以前の状態に分解して示した斜視図、図2は、図1のコンポーネントフィルム10の一部を拡大して詳細に示した平面図である。
なお、実際のカードの製造工程では、図6に示した従来カードと同様な方法(9面付け)で加工される。
【0018】
本実施形態のICカードは、コンポーネントフィルム10と、接着剤層21,22と、積層フィルム31,32等とを備えている。
コンポーネントフィルム10は、表面にICチップ12a,アンテナコイル12bなどの回路部が形成されたフィルム(第1の基材)である。このコンポーネントフィルム10には、予め、回路部の実装予定場所の周辺に、本発明の特徴である多数の孔13a,13a・・・13aが開けられている。また、その実装予定場所及びその周辺を除く部分の全体にわたって、分散配置された多数の孔13b,13b・・・13bが開けられる。
【0019】
接着剤層21,22は、コンポーネントフィルム10とそれに積層される積層フィルム(他の基材)31,32とを接合し、加工時に流動性を有する接着剤又は融着フィルムなどの基材(第2の基材)である。
積層フィルム31,32は、コンポーネントフィルム10に積層され、最も外側に配置されてカード全体を保護するフィルム(他の基材)である。
【0020】
孔13(13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13b)は、基板11の表裏面を貫通するように、基材11に分散して多数形成され、積層加工時に、接着剤層21,22の一部を流入させて一体化する接合用補助孔である。これらの孔13は、加工時に接着剤層21,22の一部を流入させ、流入して接触する面を互いに融着させて連結する役割を果たしている。また、回路部周辺の孔13a,13a・・・13aは、上記役割の他に、回路部が基板11の面から突出する体積に相当する量の余分の接着剤を加工時に吸収して(体積吸収部)、カード表面の平滑化に役立つように大きさや配置が決められている。
【0021】
これらの孔13の形状,サイズ,個数,配置は、目的とする接合力や平滑性が得られ、かつ、基板11がコンポーネント形成のために問題が発生しない程度であればよい。その手段も、抜き刃,レーザ光などを使用し、基板11の性能を損なわなければよい。
【0022】
次に、この非接触ICカードの製造方法について説明する。
まず、コンポーネントフィルム(第1の基材)10は、基板11上に、ICチップ12a,アンテナコイル12bなどの回路部が形成される(回路部形成工程)。このときに、この基板11には、予め、回路部の実装予定場所を除く部分に、接合用補助孔となる多数の孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13bなどが開けられる(接合用補助孔形成工程)。
【0023】
その後に、コンポーネントフィルム10は、接着剤層21,22によって、積層フィルム31,32の間に挟むようにして積層して、接合される(接合工程)。このとき、孔13a,13a・・・13a,13b,13b・・・13bには、基板11の表裏面を貫通し、前述した積層加工時に、接着剤層21,22を構成する接着剤の一部が流入する。
【0024】
このとき、基板11の両側の接着剤層21,22は、積層加工時に、基板11上に回路を形成するICチップ12aやアンテナコイル12b,その他コンデンサなどの回路部の周辺に開けられた多数の孔13a,13a・・・13aや、その他の部分に分散配置された多数の孔13b,13b・・・13bへ流れ込んで接触するので、互いに融着して一体となり、基板11と間の接着力を補強する。また、回路部の周辺に開けられた多数の孔13a,13a・・・13aには、積層加工時に、これらの部品の上側にある接着剤層21の一部が流れ込むことによって、積層カード31の表面の凹凸が解消される。
【0025】
図3は、積層加工により、基板11の孔13aや孔13bに接着剤が流入する状況を示す説明図(断面図)である。
図4は、図3の過程を経て、カード表面に凹凸が生じないように接着され、かつ、基板11への接着力が補強された状態を、図5の従来例に対比して示した説明図(断面図)である。
【0026】
このように、本実施形態によれば、接着剤層21は、ICチップ,コンデンサ,アンテナコイルなどの回路部に対して接着しなくても、また、基板11への接着力が不足する場合であっても、孔13a,13bへ流れ込んだ接着剤層21,22が孔13a,13bでつながることによって、必要な接着強度を十分に確保することができる。
従って、ICカードの設計をする場合に、従来、難しかった接着剤の選定が容易になる、という効果がある。
【0027】
(他の実施形態)
本発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、種々の変形又は変更が可能であって、これらの均等の範囲内である。
図7は、基板11上のICチップなどの部品周辺に配置する孔の状態の応用例を示す説明図(平面図)である。
本発明の特徴であるコンポーネントフィルム10は、基板11の表裏に貫通する孔が、円形でなく他の形でもよい。図7の場合は、長方形の孔13c,13c・・・13c,13d,13d・・・13d,13e,13e・・・13e,13f,13f・・・13fを開けた例の一部を示す説明図(平面図)である。
【0028】
図7の場合は、ICチップ12cの周辺で最も近い場所に比較的大きい孔13c,13dなどを配置し、その外側にやや小さい径の孔13e,13e・・・13eを配置をしてある。
図7の場合も、図2と同様の効果が得られ、特に、ICチップ12cが比較的に大きい場合に適し、接着剤層21の流入をより速やかにすることができる。
【0029】
図8は、コンポーネントフィルムの基板の他の変形例の一部を示す説明図(平面図)である。
図8は、カード単体の周辺部に当たる部分に、基板11に設けた孔13g,13g・・・13gで、積層加工時に、基板11を挟む接着剤層21,22の一部を流入させて、その上下を連結することにより、特に、カードの周縁部を補強したものである。
【0030】
カード単体は、図6に準じてカードの複数枚を一緒にして積層したのち、図8に示す基板11の孔13g,13g・・・13gのくし刺し状態の切断線(図中に2点鎖線で示すカードの周縁部の位置)14の所から図示しない積層フィルムや接着剤層と共に切り離し、同図の斜線で示す部分を除去してカード単体とする。さらに、コンポーネントフィルム10を、この外側に配置される接着剤層21,22や最外側部を覆う積層フィルム31,32より一回り小さくして、単体に切り離されたときに、コンポーネントフィルム10が完全に接着剤層21,22に包み込まれるようにしてもよい。
【0031】
なお、基板の表裏に貫通する孔の形状と配置は、図2,図7,図8等に示すものに限定されることはなく、他にも色々な形,大きさ,配置の組み合わせが可能であり、本発明の趣旨に沿うものであれば、そのいずれでもよい。
また、接合用補助孔は、貫通孔の例で説明したが、入り口の狭い凹孔などにして、片側から接合するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1の基材に形成される回路部を配置しない部分に分散して接合用補助孔を多数設けたので、第1の基材に積層される他の基材に対して、必要な接合強度のある第2の基材を使用してありさえすれば、第1の基材への接合力が補強されるために、前記回路部の状態や第1の基材の第2の基材への物性いかんにかかわらず、カード全体として、十分な貼り合わせ強度が得られる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による非接触ICカード単体の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】コンポーネント部の一部を拡大して示した平面図である。
【図3】積層加工時に基板の孔に接着剤が流入しようとする状況を示す説明図(断面図)である。
【図4】図3の過程を経て基板への接着力が補強された状況を示す説明図(断面図)である。
【図5】従来の非接触ICカードの一部を拡大して示した断面図である。
【図6】従来の非接触ICカードの複数枚分の加工で、積層前の状態で示す分解斜視図である。
【図7】部品周辺に配置する孔の状態の応用例を示す説明図(平面図)である。
【図8】基板の変形例の一部を示す説明図(平面図)である。
【符号の説明】
1,10 コンポーネントフィルム
1a,11 基板
1b,12a ICチップ
1c,12b アンテナコイル
2a,2b,21,22 接着剤層
3a,3b,31,32 積層フィルム
13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g 孔
Claims (4)
- 表面に回路部が形成された第1の基材と、前記第1の基材とその第1の基材に積層される他の基材とを接合し、加工時に流動性を有する第2の基材と、を含むICカードにおいて、
前記第1の基材に分散して多数形成され、前記加工時に前記第2の基材を流入させて一体化する接合用補助孔を備え、
前記多数の接合用補助孔の一部は、前記第1の基材の周辺部を跨ぐように形成されていること、
を特徴とするICカード。 - 請求項1に記載のICカードにおいて、
前記他の基材は、前記第1の基材の両側に配置されており、
前記第2の基材は、前記第1の基材よりも前記他の基材に対する接着性がよいこと、
を特徴とするICカード。 - 請求項1に記載のICカードにおいて、
前記接合用補助孔は、前記回路部の体積分の前記第2の基材を吸収する大きさであること、
を特徴とするICカード。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のICカードを製造するICカードの製造方法において、
前記第1の基材に前記回路部を形成する回路部形成工程と、
前記第1の基材に前記回路部が形成されない部分に、前記加工時に前記第2の基材を流入させて一体化する接合用補助孔を分散して多数形成する接合用補助孔形成工程と、
前記第2の基材を前記第1の基材と前記他の基材に挟んで流動化させ、前記接合用補助孔に前記第2の基材を流入させながら、前記第1の基材と前記他の基材とを接合する接合工程とを備え、
前記接合用補助孔形成工程は、前記多数の接合用補助孔の一部を、前記第1の基材の周辺部を跨ぐように形成すること、
を特徴とするICカードの製造方法。
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