JP4730573B2 - 塗装用水性インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗装用の水性インクに関し、分散安定性に優れ、特にスプレー塗装において、スプレーノズルの目詰まりを損なわず、安定、かつ噴射制御が容易なスプレー噴射特性を持ち、耐久性に優れたスプレー塗膜を可能にする水性インク組成物もしくは塗装用水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶や車両、建築物の内外壁、橋梁及び道路等には金属、ガラス、プラスチック、石材、コンクリート、セメントモルタル、スレート、ALC、木材等様々な基材が用いられており、それらの表面を塗装・印刷する手段としてスプレー塗装や、ロール塗工、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の塗装・印刷手段が知られているが、最もよく使われる手段の一つとしてスプレー塗装が用いられている。
【0003】
そのための塗料・インキ組成物として、具体的には、特開昭60−99177号公報の塗装方法によって、多彩色となる塗料組成物では、コロイドフリー型の合成樹脂エマルジョンを用いた水分散型塗料組成で、塗料の増粘剤、分散剤(アニオン活性剤)、顔料を含む塗料が提案されているが、スプレー塗工を行う場合に合成樹脂エマルジョンの使用によるスプレーノズル目詰まり、顔料の分散安定性、増粘剤と顔料の影響による塗料のチクソトロピックな挙動に伴うスプレーの不安定さが問題であった。
【0004】
特開平10−113608号公報によると、アルコキシシリル基とカルボキシル基を含有するアクリル共重合体の中和物を含有する樹脂成分及び着彩顔料を含有する少なくとも1色の水性着色塗料組成物を、微小口径ノズルを有するスプレー塗装機により塗装した後、該模様塗膜の上にクリヤ塗料を塗装する模様塗装方法では、共重合体溶液による着彩顔料の分散により顔料凝集を防止し、顔料分散性及び安定性に優れた水性着色塗料組成物を得るとしているが、顔料表面を共重合体で完全に被覆するのは困難であり、顔料によるチクソトロピックな挙動が生じ、微小口径ノズルからのスプレー塗装は必ずしも安定ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、前述の諸問題を解決して、顔料の分散安定性に優れ、かつチクソトロピックな挙動が少なく安定した塗装を可能とし、特にスプレー塗装における安定したスプレー噴射と耐久性に優れた水性インク組成物もしくは塗装用水性インク組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を解決するに至った。
【0007】
即ち本発明は、少なくとも着色剤と水性増粘剤樹脂と水とからなるインクにおいて、着色剤が、皮膜形成性樹脂によって顔料が被覆された着色樹脂粒子である塗装用、もしくはスプレー塗装用水性インク組成物を提供する。
【0008】
水性増粘剤樹脂はインクの粘度を調整しスプレーノズルからのインクの噴射を最適に制御すると共に、被記録体上での着色剤の結合機能を有するものであり、少量の添加で増粘を示すものが好ましい。具体的には、(スチレン)アクリル系、(スチレン)無水マレイン酸系水溶性樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、エマルジョン樹脂溶液のシックナーと知られているアクリル系あるいはポリエステル系増粘剤樹脂やその他の公知慣用の増粘剤樹脂から選択することが出来る。増粘のpH範囲はなるべく広いことが好ましいが、少なくとも中性からアルカリで増粘するアクリル系あるいはポリエステル系増粘剤樹脂は、本発明の皮膜形成性樹脂によって顔料が被覆された着色樹脂粒子との組み合わせにおいて、安定な分散とスプレー塗装に最適なレオロジー特性を与える。
【0009】
本発明の着色剤は、酸基を有していて塩基により自己水分散可能な水分散性樹脂、すなわち、少なくとも一部が塩基で中和された酸基を有する皮膜形成性樹脂によって顔料粒子が被覆された着色樹脂粒子が好ましい。その理由として、着色剤が分散剤によって分散された顔料粒子の場合、顔料の凝集力のためインクの流動特性はしばしばチクソトロピー性を示し、特に前記水性増粘剤樹脂と組み合わせることにより激しいチクソトロピー性のために安定したスプレー噴射が出来ないのに対して、本発明の皮膜形成性樹脂、より好ましくは少なくとも一部が塩基で中和された酸基を有する皮膜形成性樹脂によって顔料粒子が被覆された着色樹脂粒子と前記水性増粘剤樹脂の組み合わせのインクは、特に高粘度領域においてもチクソトロピー性が小さく、安定したスプレー噴射を可能にする。
【0010】
さらに、インクの粘度が0.1〜10Pa・s、好適には0.5〜5Pa・sの場合には、とくに後述の無機顔料を用いた場合に、着色剤の沈降防止と安定したスプレー噴射に対する効果がより顕著である。粘度測定のための粘度計はB型粘度計やコーンプレート型のE型粘度計等の回転系の粘度計を用いることができるが、特にE型粘度計が好ましく、本発明に規定した粘度の数値はE型粘度計を用いて測定した値である。チクソトロピー性の大小は粘度計による測定の経時的な変動の大小に反映することから容易に判断できる。
【0011】
着色樹脂粒子に使用する皮膜形成性樹脂としては、公知慣用の水不溶性の樹脂をいずれも使用することができる。例えばアクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂等があるが、特に好ましくは、スチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂である。尚、本発明で(メタ)アクリルとは、アクリルとメタアクリルとの両方を包含する。
【0012】
スチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂とは、スチレン系モノマーを必須成分として、(メタ)アクリル酸系モノマー、例えば(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、を共重合させた樹脂である。
【0013】
当該皮膜形成性樹脂としては、例えばスチレンあるいはα−メチルスチレンのような置換スチレン、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つ以上のモノマー単位と、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも一つ以上のモノマー単位を含む共重合体である。
【0014】
これらの共重合体は、ガラス転移温度は任意に設定することが出来るが、スプレーノズルの詰まりを少なくするには30℃〜130℃であることが好ましい。皮膜形成性樹脂を重合で得るに当たっては、この範囲となるようにモノマー成分を選択することが好ましく、少なくともその一部が共有結合性の架橋や多価金属によるイオン架橋をされていても良い。
【0015】
本発明のインクに用いる皮膜形成性樹脂は、自己水分散可能な水分散性樹脂であることが好ましく、公知慣用の水不溶性の皮膜形成性樹脂を自己水分散性を有するように改質した樹脂をいずれも使用することができる。その中でも特に酸基を有する樹脂が好ましく、その酸基は特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有するものが特に好ましい。酸価が50以上280以下の合成樹脂で少なくとも一部が塩基で中和されてなる自己水分散性樹脂の場合は、本発明の水性増粘剤樹脂との組み合わせで、特にチクソトロピー性の少ない優れたインク流動特性を維持することが出来る上、皮膜形成性樹脂のバインダー機能により優れた耐久性の塗膜が得られる。
【0016】
酸価を有する皮膜形成性樹脂を用いて自己水分散性樹脂として用いる場合には、そのカルボキシル基の少なくとも一部を塩基で中和すればよい。塩基、即ちアルカリ性中和剤による中和は、得られる自己水分散性樹脂が水に溶解しない程度に中和することが好ましい。
【0017】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物の他、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、アルコールアミン等の揮発性塩基性物質が好ましく、なかでもトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミンは、揮発性が大きすぎないことからスプレーノズルの詰まりが少なく、かつ経時的に耐水性を発現するために好適である。これらの塩基は前記水性増粘剤樹脂のアルカリサイドでの増粘を付与するためのアルカリ剤としても機能する。
【0018】
こうして得られた本発明の水性インク組成物は、水のみまたは水を主体とする水性媒体に、上記した各成分が少なくとも含まれたものである。本発明における水としては、水道水も使用可能であるが、スプレーノズル径が微細である場合には、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水を用いることが好ましい。
【0019】
本発明での顔料は特に限定されるものはなく、例えば従来から知られている無機顔料やモノアゾ系、ジスアゾ系等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料を用いることが出来る。特に建築材料や船舶・車両等の屋外での使用が前提である場合には、カーボンブラック、酸化鉄顔料、酸化亜鉛顔料、酸化チタン顔料、硫化亜鉛、酸化亜鉛、黄鉛、クロム顔料、コバルト顔料、鉛顔料、アンチモン顔料、アルミニウム、黄銅、雲母等の無機顔料の使用が好ましい。なかでも、カーボンブラック、酸化鉄顔料(べんがら、鉄黒)、酸化亜鉛顔料、酸化チタン顔料(チタンホワイト、チタンイエロー)は耐候性に優れ、環境に極めて優しい材料であり、かつ石材や煉瓦調の外壁材等の微妙な色調表現を可能にするため外壁材塗装用に最適である。
【0020】
本発明の水性インク組成物において、各成分の使用量は、特に制限されるものではないが、皮膜形成性樹脂に包含された着色樹脂粒子の顔料樹脂比率は、1:5〜5:1で特に1:1付近が好ましく、着色樹脂粒子のインク中での含有率は0.01〜20%、塩基は皮膜形成性樹脂の酸基に対して40〜200モル%相当量で、インクのpHが6〜10、好適にはpH7〜9の範囲に調整されると分散がより安定となる。
【0021】
前述の顔料着色樹脂粒子を作製する方法は、特に限定されるものではないが、酸基を有し、塩基により自己水分散可能な水分散性樹脂を用いたより好ましい具体的な例は、下記工程に示す通りである。
(1)酸基を有する皮膜形成性樹脂に、少なくとも顔料を分散または溶解して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
(2)少なくとも、水、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒、塩基、前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し、分散によって少なくとも皮膜形成性樹脂の一部が溶解している着色剤懸濁液を得る懸濁工程。
(3)前記懸濁工程で得られた着色剤懸濁液中の顔料表面に、溶解している皮膜形成性樹脂を沈着させる再沈殿工程。
【0022】
(1)の樹脂着色工程は、酸基を有する皮膜形成性樹脂に、少なくとも顔料を分散または溶解して固形着色コンパウンドを得る工程である。この工程は、例えば従来知られているロールやニーダーやビーズミル等の混練装置を用いて、溶液や加熱溶融された状態で、顔料を、皮膜形成性樹脂に均一に溶解または分散させ、最終的に固体混練物(固形着色コンパウンド)として取り出すことにより行うことが出来る。
【0023】
(2)の懸濁工程は、少なくとも、水、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒、塩基、前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し、分散によって少なくとも皮膜形成性樹脂の一部が溶解している着色剤懸濁液を得る工程である。(1)の樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを、分散媒として水、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒、塩基を必須とする混合溶媒に加えて、均一に分散する様に攪拌することによって、固形着色コンパウンド表面から、顔料を包含する皮膜形成性樹脂が、有機溶媒と塩基の助けを借りて、溶解または自己乳化し、いずれの場合も少なくとも当該皮膜形成性樹脂の一部が溶解している着色剤懸濁液が得られる。
【0024】
懸濁液を得るための撹拌方法としては、公知慣用の手法がいずれも採用でき、例えば従来の1軸のプロペラ型の撹拌翼の他に、目的に応じた形状の撹拌翼や撹拌容器を用いて容易に懸濁可能である。
【0025】
懸濁液を得るに当たって、単なる混合撹拌の他、それに加えて更に高せん断力下において、より分散を安定させてもよい。この場合の分散機としては、従来知られている湿式のビーズミルの他に、高圧ホモジナイザーや商品名マイクロフルイダイザーやナノマイザーで知られるビーズレス分散装置等を用いるのが、顔料の再凝集が少なく好ましい。
【0026】
(3)の再沈殿工程は、前記懸濁工程で得られた着色剤懸濁液中の顔料表面に、溶解している皮膜形成性樹脂を沈着させる工程である。本発明において「再沈殿」とは、顔料、或いは溶解している皮膜形成性樹脂が顔料表面に吸着した着色剤を懸濁液の液媒体から、分離沈降させることを意味するものではない。従って、この工程で得られるものは、固形成分と液体成分とが明らかに分離した単なる混合物ではなく、溶解している皮膜形成性樹脂が顔料表面に吸着した着色剤が、懸濁液の液媒体に安定的に分散した着色樹脂粒子水性分散液である。
【0027】
(2)の懸濁工程の着色剤懸濁液中の顔料表面へ溶解樹脂の沈着は、例えば、▲1▼少なくとも一部当該皮膜形成性樹脂が溶解している着色剤懸濁液に、当該皮膜形成性樹脂に対して貧溶媒として機能する水または水性媒体を加えて行うか、▲2▼着色剤懸濁液から有機溶媒を除去して行うことによって容易に行うことが出来る。更にこれらの両方の手段を組み合わせることも可能である。
【0028】
この様にして得られた着色樹脂粒子水分散液から共存している有機溶媒を更に除いて、皮膜形成性樹脂によって包含された顔料着色樹脂粒子の安定な水分散液を得る。本発明の着色樹脂粒子の粒子径はスプレー噴射に影響を与えなければ特に制限はないが、体積平均粒子径で10nm〜1μmが好ましい。
【0029】
前記製造方法において、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒が用いられるが、これは当該樹脂に対して良溶媒として機能するものである。当該有機溶媒としては、当該樹脂に対して適宜選択することが出来、例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチルエステル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、アミド類等樹脂を溶解させるものであれば使用可能である。
【0030】
当該皮膜形成性樹脂が、例えばスチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸とを含む組成物の共重合体の場合には、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒を主として、助溶媒としてイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒から選ばれる少なくとも1種類以上の溶媒とを組み合わせて用いるのが良い。
【0031】
またインク組成物としては、必要に応じて以下の添加剤類を併用することが好ましい。乾燥防止剤はスプレーノズル口でのインクの乾燥を防止する効果を与えるものであり、通常、水の沸点以上の沸点を有するものが使用される。このような乾燥防止剤としては、特に限定されるものではなく、従来知られているエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン類、アミド類、ジメチルスルホオキサイド、イミダゾリジノン等が使用可能であるが、特にグリセリンは少量の添加でも優れた乾燥防止効果を示し好ましい。
【0032】
乾燥防止剤の使用量は、種類によって異なるが、速乾性・塗膜特性を考慮すると通常インク中に0.1〜50質量%であり、0.1〜10質量%の範囲が好適である。
【0033】
被塗工物がポーラスな場合には水性インク組成物の浸透をより良好とするために、公知慣用の浸透剤の必要量を用いることができる。浸透剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ジエチレングリコール−N−ブチルエーテル等のグリコールエーテル、プロピレングリコール誘導体等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を加えてもよい。
【0034】
一方、エネルギー線硬化タイプのジェットインキとしては、皮膜形成性樹脂によって顔料粒子が被覆された着色樹脂粒子水分散体からなる水性顔料タイプのジェットインキ中に、公知慣用のエネルギー硬化成分等を含有させるか、水性インキの水の替わり、希釈有機溶剤あるいは反応性希釈剤中に顔料を分散させて顔料インキとすれば良い。
【0035】
好ましいエネルギー線硬化成分としては、エネルギー反応性のポリマー・オリゴマー・モノマーから選択可能であり、特にカルボキシル基含有アクリレート類をアルカリで中和したものが水に対する溶解・分散の点で好ましい。エネルギー線樹脂骨格としてはポリエステル樹脂骨格、ポリエーテル骨格、ポリエーテルポリエステル樹脂骨格、ポリオレフィン樹脂骨格、ポリウレタン樹脂骨格、エポキシ樹脂骨格等公知のものが使用できる。
【0036】
低粘度反応剤(反応性希釈剤)としては、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、或いはポリオールのアルキレンオキシド付加物のモノ又はポリ(メタ)アクリレート等のモノマーやオリゴマーを加えることができる。
【0037】
活性エネルギー線として、紫外線照射による硬化を行う場合には、水性インキ中に光重合開始剤を配合するが、電子線による硬化を行う場合には光重合開始剤を配合する必要はない。光重合開始剤としては水溶性又は親水性の光重合開始剤が好ましく、公知慣用のものが使用できるが、具体的には、ダロキュア2959、1173、1116、イルガキュア184(いずれもチバ・スペシャリティー・ケミカル製)、カンタキュアABQ、BTC、QTX(いずれもシェル化学製)等が挙げられる。光重合開始剤は、水性インキ中に0.1〜10重量%配合することが好ましい。その他の添加剤として、2級又は3級アミン構造を含むビニル基含有デンドリマー体のごとき反応性酸素阻害抑制剤や安定剤等を含むことができる。
【0038】
その他、必要に応じて他の水溶性や水分散性樹脂、防腐剤、キレート剤、pH調整剤等の添加剤を加えることができる。
【0039】
本発明の水性インク組成物はそのままでも使用できるが、スプレーノズル径の1/10以上の粒子径を有する粗大粒子、好適には絶対レベルで10μm以上の粗大粒子を含まない様にフィルター濾過を行うことにより、安定した分散とスプレー噴射が可能となる。
【0040】
本発明のスプレーインクを用いた塗装は複数の色を組み合わせてもよく、塗装を行った後、必要に応じてクリヤラッカー等によりコーティングを行うことにより、更に風合いや耐候性を向上させることが出来る。
【0041】
前記の説明は主にスプレー塗装のものであるが、他の塗装方法用のインク・塗料における分散安定性やレオロジカル的な問題は共通であり、チクソトロピー性を嫌う場合には本発明の塗装用水性インク組成物を適用すると効果的である。
【0042】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例中における「部」は『質量部』を表わす。尚、実施例等において、着色樹脂粒子の体積平均粒子径は、「リーズ アンド ノースラップ社製マイクロトラック粒度分析計」を用いた。
【0043】
(実施例1)
カーボンブラック20部とスチレン−アクリル酸−メタクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13;分子量5万・酸価160・ガラス転移温度107℃)20部の二本ロール混練物を、水210部、グリセリン35部、トリエタノールアミン8部、メチルエチルケトン90部、イソプロピルアルコール40部の混合溶液に入れ、室温で3時間撹拌し着色剤懸濁液を得た。
得られた懸濁液に撹拌しながら、グリセリン30部と水210部の混合液を毎分5mlの速度で滴下し、黒色樹脂粒子水分散液を得た。得られたカプセル液をロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールと水の一部を留去し、顔料分8質量%、粒子径100nmの最終の黒色樹脂粒子水分散液を得た。
【0044】
上記黒色樹脂粒子水分散液1部を、スチレン無水マレイン酸樹脂GSM−803(岐阜セラック製)18部、28質量%のアンモニア水6.3部、N−メチルジエタノールアミン5.2部と水70.5部の混合溶液に攪拌しながら徐々に加えて、十分撹拌した後に5μmメンブランフィルターで濾過を行い、スプレー用水性黒色インクとした。得られたインクの粘度は800mPa・sで粘度測定時の時間変化に伴う粘度変化は小さく、pHは8であった。
【0045】
得られた水性インクは凝集物もなく安定な分散を示し、ノズル口径1mmのエアー式スプレー装置を用い、セメントモルタル板表面へ3階調に相当する噴射量により塗装を行った結果、ノズル目詰まりもなく、セメントモルタル板の白黒階調トーンもしっかりしており、天然の石材のごとき外壁材が得られた。
【0046】
(実施例2)
実施例1のカーボンブラックに代わり、べんがらを用いて顔料分8質量%、粒子径250nmの褐色樹脂粒子水分散液を作製し、この褐色樹脂粒子水分散液1部を、N−メチル−ジエタノールアミン(アルカリ剤)0.2部、アクリル系増粘剤SN636(株式会社サンノプコ製)1.5部、プロピレングリコール10部、水87.3部の混合溶液に攪拌しながら徐々に加えて、十分撹拌した後に5μmメンブランフィルターで濾過を行い、スプレー用水性褐色インクとした。得られたインクの粘度は1060mPa・sで時間変化に伴う粘度変化は非常に小さく、pHは7であった。
【0047】
得られた水性インクは凝集物もなく安定な分散を示し、ノズル口径1mmのエアー式スプレー装置を用い、前もって褐色に均一着色されたセメントモルタル板の表面へ褐色水性インクの4階調に相当する噴射量により塗装を行った結果、ノズル目詰まりもなく、セメントモルタル上の階調トーンもしっかりしており、本物の煉瓦のごとき外壁材が得られた。
【0048】
【発明の効果】
本発明によると、少なくとも着色剤と水性増粘剤樹脂と水とからなるインクにおいて、着色剤が皮膜形成性樹脂、より好ましくは酸基を有し、塩基によって自己水分散可能な水分散性樹脂である皮膜形成性樹脂によって、顔料が被覆された着色樹脂粒子である水性インク組成物、もしくは塗装用水性インク組成物、なかでもスプレー塗装用水性インク組成物は、分散安定性に優れ、特にスプレー塗装におけるノズルの目詰まりを生じず、安定・かつ噴射制御が容易なスプレー噴射と耐久性に優れた塗膜を可能にする。
Claims (13)
- 少なくとも着色剤と水性増粘剤樹脂と水とからなるインクにおいて、着色剤が、皮膜形成性樹脂によって顔料が被覆された着色樹脂粒子であることを特徴とする水性インク組成物。
- 皮膜形成性樹脂が酸基を有し、塩基により自己分散可能な水分散性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水性インク組成物。
- 水性増粘剤樹脂がポリアクリル酸系増粘剤樹脂であることを特徴とする請求項1、2記載の水性インク組成物。
- 顔料が無機顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性インク組成物。
- 無機顔料がカーボンブラック、酸化鉄顔料、酸化亜鉛顔料、酸化チタン顔料から選ばれた1種以上のものであることを特徴とする請求項4記載の水性インク組成物。
- 着色樹脂粒子の体積平均粒子径が10nm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク組成物。
- インクの粘度が0.1〜10Pa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性インク組成物。
- インクのpHが6〜10の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク組成物。
- インクが塗装に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク組成物。
- インクがスプレー塗装に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗装用水性インク組成物。
- 前記水性インク組成物は、顔料が被覆された着色樹脂粒子の水分散液を、水性増粘剤樹脂を含有する混合溶液と混合して作製される請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
- 皮膜形成性樹脂によって顔料粒子が被覆された着色樹脂粒子を含有する水性インク組成物の製造方法であって、前記顔料粒子が被覆された着色樹脂粒子の水分散液と、水性増粘剤樹脂を含有する混合溶液との混合によって製造されることを特徴とする水性インク組成物の製造方法。
- 前記顔料粒子が被覆された着色樹脂微粒子の水分散液を、
(1)酸価を有する樹脂に、少なくとも顔料を分散または溶解して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程
(2)少なくとも、水、樹脂を溶解する有機溶媒、塩基、前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し、分散によって少なくとも樹脂の一部が溶解している着色剤懸濁液を得る懸濁工程、および
(3)前記懸濁工程で得られた着色剤懸濁液中の顔料表面に、溶解している樹脂を沈着させる再沈殿工程を経て製造する、請求項12に記載の水性インク組成物の製造方法。
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