JP4729209B2 - 鉄道車両用空調システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の車室内に調和空気を吹き出すための吹き出し口を備えた鉄道車両用空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道車両用空調システムとして、客室内天井部に設けられた吹き出し口から下方に(座席部に向けて)調和空気を吹き出すものや、荷物棚下部に設けられた吹き出し口から横方向(車幅方向)に調和空気を吹き出すもの等が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、客室内天井部に設けられた吹き出し口から下方に調和空気を吹き出す構造においては、乗客の頭部に強い風が当たり、乗客がドラフト感を感じて不快な思いをすることがあった。
【0004】
また、荷物棚下部に設けられた吹き出し口から横方向(車幅方向)に調和空気を吹き出す構造においては、車室内の天井部近傍や窓付近において空気が淀み易く、乗客が淀み感を感じ易い。通路に立っている乗客の顔に直接風が当たる、中央付近の座席のドラフト感が強い。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布を均一化し、十分な空気調和を行うことが可能な鉄道車両用空調システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鉄道車両用空調システムは、鉄道車両の車室内天井面に沿わせて調和空気を吹き出すための第1の吹き出し口と、鉄道車両の車室内側面に沿わせて調和空気を吹き出すための第2の吹き出し口と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る鉄道車両用空調システムでは、第1の吹き出し口から吹き出された調和空気により車室内天井面に沿った空気流が形成される。また、第2の吹き出し口から吹き出された調和空気により車室内側面に沿った空気流が形成される。これらの空気流により、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布の均一化が可能となり、十分な空気調和を行うことができる。
【0008】
本発明に係る鉄道車両用空調システムにおいて、第1の吹き出し口は、鉄道車両の車室内天井部の幅方向端部近傍に設けられていることが好ましい。このように構成した場合、第1の吹き出し口から吹き出された調和空気により、車室内天井面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両用空調システムおいて、第2の吹き出し口は、荷物棚下部に設けられていることが好ましい。このように構成した場合、第2の吹き出し口から吹き出された調和空気により、車室内側面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る鉄道車両用空調システムは、鉄道車両の車室内天井部の幅方向端部近傍から車室内天井面に沿わせて調和空気を吹き出すための第1の吹き出し口と、鉄道車両の車室内側面に沿わせて調和空気を吹き出すための第2の吹き出し口と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る鉄道車両用空調システムでは、第1の吹き出し口から吹き出された調和空気により車室内天井部の幅方向端部近傍から車室内天井面に沿った空気流が形成される。また、第2の吹き出し口から吹き出された調和空気により車室内側面に沿った空気流が形成される。これらの空気流により、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布の均一化が可能となり、十分な空気調和を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムについて図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、図1及び図2に基づいて、本実施形態に係る鉄道車両用空調システムを説明する。図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムを示す断面図であり、図2は、同じく側面図である。
【0014】
鉄道車両の車両構体1の側部3には、側窓5まわりを内装する窓キセ7が設けられており、この窓キセ7の上辺部の上方には荷物棚9が車両長手方向に延びて設けられている。車両構体1の床部4には、図示しない空調装置に接続された床中ダクト10が配設されている。車両構体1の側部3における側窓5の開口部間には、床中ダクト10に接続された側立ち上がりダクト11が配設されている。
【0015】
車両構体1の天井部13の幅方向端部近傍(本実施形態においては、荷物棚9の上側)には、車両長手方向に延びる縦通ダクト15が配設されている。この縦通ダクト15には、側立ち上がりダクト11が接続されており、空調装置からの調和空気が床中ダクト10及び側立ち上がりダクト11を介して導かれる。
【0016】
縦通ダクト15の上部には、第1の吹き出し口17が車両長手方向(縦通ダクト15の延びる方向)に複数並設されている。この第1の吹き出し口17は、車両長手方向に延びる略スリット形状を有しており、車両幅方向に向けて開口して形成されている。これにより、空調装置から床中ダクト10及び側立ち上がりダクト11を介して縦通ダクト15に導かれた調和空気は、第1の吹き出し口17から車室内天井面(本実施形態においては、灯具等の機器類が収納されているユニット部18の下面)に沿わせて吹き出される。両側の第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気は互いに衝突して乱流となり、風速を落として車室内天井面付近から下方に流れる。第1の吹き出し口17から吹き出される調和空気の吹出風速は、たとえば2〜4m/sに設定される。また、第1の吹き出し口17から吹き出される調和空気の風量は、たとえば客室合計:66m3/min程度に設定される。
【0017】
また、それぞれの窓キセ7の上部、すなわち荷物棚9下部には、第2の吹き出し口19が設けられている。この第2の吹き出し口19は、車両長手方向に延びる略スリット形状を有しており、車両下方に向けて開口して形成されている。縦通ダクト15に導かれた調和空気の一部は、分岐通路21を介して第2の吹き出し口19に導かれる。これにより、縦通ダクト15に導かれた調和空気の一部は、第2の吹き出し口19から車室内側面(側窓5)に沿わせて吹き出される。第2の吹き出し口19から吹出される調和空気の吹出速度は、たとえば0.6m/s以下に設定される。また、第2の吹き出し口19から吹き出される調和空気の風量は、たとえば客室合計:8m3/min程度に設定されており、第1の吹き出し口17から吹き出される調和空気の風量の12%程度である。
【0018】
以上のように、本実施形態においては、鉄道車両の車室内天井面に沿わせて調和空気を吹き出すための第1の吹き出し口17と、鉄道車両の車室内側面に沿わせて調和空気を吹き出すための第2の吹き出し口19とを備えている。このようにして第1の吹き出し口17と第2の吹き出し口19とを備えることで、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により天井部13の幅方向端部近傍から車室内天井面に沿った空気流が形成されると共に、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により車室内側面に沿った空気流が形成される。これらの空気流により、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部22付近における温度分布の均一化が可能となり、十分な空気調和を行うことができる。
【0019】
本実施形態において、第1の吹き出し口17は、鉄道車両の車室内天井部13の幅方向端部近傍に設けられている。これにより、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により、車室内天井面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0020】
また、本実施形態おいて、第2の吹き出し口19は、荷物棚9下部に設けられている。これにより、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により、車室内側面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0021】
次に、図3及び図4に基づいて、本実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す断面図であり、図4は、同じく側面図である。
【0022】
図3及び図4にて示される変形例では、空調装置(図示せず)が天井(屋根上)に設置され、車両構体1の天井部13に天井ダクト23が車両長手方向に延びて配設されている。縦通ダクト15は、車両構体1の天井部13と側部3との角部(側天井部)に沿って配設されている。縦通ダクト15は接続通路24を介して天井ダクト23に接続されており、空調装置からの調和空気は天井ダクト23及び接続通路24を介して縦通ダクト15に導かれる。
【0023】
第2の吹き出し口19は、それぞれの窓キセ7の上辺部に複数(たとえば、2箇所)設けられており、それぞれの第2の吹き出し口19に対して分岐通路21が接続して設けられている。
【0024】
このように、図3及び図4にて示される変形例においても、図1及び図2にて示された実施形態と同様に、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により車室内天井部13の幅方向端部近傍から車室内天井面に沿った空気流が形成されると共に、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により車室内側面に沿った空気流が形成される。これにより、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布の均一化が可能となり、十分な空気調和を行うことができる。
【0025】
また、第1の吹き出し口17は、鉄道車両の車室内天井部13の幅方向端部近傍に設けられているので、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により、車室内天井面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。更に、第2の吹き出し口19は、荷物棚9下部に設けられているので、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により、車室内側面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0026】
次に、図5及び図6に基づいて、本実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を説明する。図5は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す断面図であり、図6は、同じく側面図である。
【0027】
図5及び図6にて示される変形例では、空調装置(図示せず)が天井(屋根上)に設置され、天井ダクト23から鉄道車両の車室内天井部13の幅方向端部近傍に設けられた第1の吹き出し口17に調和空気が導かれている。また、天井ダクト23に導かれた調和空気の一部は、分岐通路25を介して第2の吹き出し口19に導かれる。
【0028】
このように、図5及び図6にて示される変形例においても、図1及び図2にて示された実施形態と同様に、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により車室内天井部13の幅方向端部近傍から車室内天井面に沿った空気流が形成されると共に、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により車室内側面に沿った空気流が形成される。これにより、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布の均一化が可能となり、十分な空気調和を行うことができる。
【0029】
また、第1の吹き出し口17は、鉄道車両の車室内天井部13の幅方向端部近傍に設けられているので、第1の吹き出し口17から吹き出された調和空気により、車室内天井面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。更に、第2の吹き出し口19は、荷物棚9下部に設けられているので、第2の吹き出し口19から吹き出された調和空気により、車室内側面に沿った空気流を適切且つ効果的に形成することができる。
【0030】
最後に、本発明の鉄道車両用空調システムにおいて、第1の吹き出し口から鉄道車両の車室内天井面に沿わせて調和空気を吹き出させ、第2の吹き出し口から鉄道車両の車室内側面に沿わせて調和空気を吹き出させることによって得られるドラフト感及び淀み感の低減効果及び温度分布の均一化効果を確認するシミュレーション試験を行った。結果を図7〜図15に示す。図7〜図9は本発明による実施例1の結果を示し、図10〜図12は比較例1の結果を示し、図13〜図15は比較例2の結果を示している。本発明による実施例1としては、上述した実施形態のものを用いた。これに対して、比較例1は、客室内天井部に設けられた吹き出し口から下方に(座席部に向けて)調和空気を吹き出すものを用い、比較例2は、荷物棚下部に設けられた吹き出し口から横方向(車幅方向)に調和空気を吹き出すものを用いた。シミュレーションは、図16(A)〜(C)に示す構成の鉄道車両に基づいて行った。図16(A)〜(C)中「×」は、評価点を示している。
【0031】
図7、図10、及び図13は、各座席列における時間(60秒間)平均温度を示している。図8、図11、及び図14は、各座席列における時間(60秒間)平均風速を示している。図9、図12、及び図15は、各座席列における時間(60秒間)平均有効ドラフト温度(EDT:Effective Draft Temperature)を示している。
【0032】
図7に示される結果から分かるように、図10及び図13に示される結果と比較して、本発明の実施例1の方が各座席列における時間平均温度が均一化されている。図8に示される結果から分かるように、図11及び図14に示される結果と比較して、本発明の実施例1の方が各座席列における風速がドラフト感を感じない風速0.35m/s(ADPI:空気拡散性能指標による定義)以下、淀み感を感じない風速0.05m/s(TCC:空調体感試験結果から定義)以上の範囲内に収まっている。また、図9に示される結果から分かるように、図12及び図15に示される結果と比較して、本発明の実施例1の方が有効ドラフト温度の許容値範囲内に入っている率が高く、そのバラツキも低く抑えられている。
【0033】
以上のように、本発明の実施例1は、比較例1,2に比して、ドラフト感及び淀み感を感じさせずに、座席部付近における温度分布の均一化を実現していることが分かった。
【0034】
ここで、空気拡散性能指標(ADPI:Air Diffusion Performance Index)及び有効ドラフト温度θについて説明する。まず、温度差と風速によるドラフトの指標として、有効ドラフト温度θ(EDT:Effective Draft Temperature)を下記の(1)式により定義する。
θ=(tx−tc)−8(Vx−0.15) … (1)
ただし、tx:局所温度(℃)
tc:平均気温(℃)
Vx:局所風速(m/s)
−1.7℃<θ<1.1℃で且つVx<0.35m/sの範囲を快適域とし、人が存在する範囲の測定点のうち快適域にある測定点数の割合(体積割合%)を空気拡散性能指標と定義している。
【0035】
なお、実施例1における空気拡散性能指標(ADPI)は95.8%であるのに対して、比較例1の空気拡散性能指標は85.8%となり、比較例2の空気拡散性能指標は80.0%となり、実施例1の方が優位性を有していることが分かる。
【0036】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、第1の吹き出し口及び第2の吹き出し口の数、形状等は適宜変更可能である。また、同様に、第1の吹き出し口及び第2の吹き出し口に調和空気を導くためのダクト構成も鉄道車両の構成に応じて変更することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、乗客に与えるドラフト感及び淀み感を低減しながら、座席部付近における温度分布を均一化し、十分な空気調和を行うことが可能な鉄道車両用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムを示す断面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムを示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す要部断面図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す要部側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す要部断面図である。
【図6】 本発明の実施形態に係る鉄道車両用空調システムの一変形例を示す要部側面図である。
【図7】本発明の鉄道車両用空調システムによる実施例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均温度を示している。
【図8】本発明の鉄道車両用空調システムによる実施例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均風速を示している。
【図9】本発明の鉄道車両用空調システムによる実施例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均有効ドラフト温度を示している。
【図10】比較例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均温度を示している。
【図11】比較例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均風速を示している。
【図12】比較例1でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均有効ドラフト温度を示している。
【図13】比較例2でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均温度を示している。
【図14】比較例2でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均風速を示している。
【図15】比較例2でのシミュレーション試験結果を示す線図であり、各座席列における時間平均有効ドラフト温度を示している。
【図16】(A)〜(C)は、シミュレーション試験にて用いた鉄道車両の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
1…車両構体、3…側部、4…床部、5…側窓、7…窓キセ、9…荷物棚、10…床中ダクト、11…側立ち上がりダクト、13…天井部、15…縦通ダクト、17…第1の吹き出し口、18…ユニット部、19…第2の吹き出し口、21…分岐通路、22…座席部、23…天井ダクト、24…接続通路、25…分岐通路。
Claims (1)
- 鉄道車両の車室内天井面に沿わせて調和空気を吹き出すための第1の吹き出し口と、
前記鉄道車両の車室内側面に沿わせて調和空気を吹き出すための第2の吹き出し口と、を備えており、
前記第1の吹き出し口は、前記鉄道車両の車室内天井部の幅方向両端部近傍にそれぞれ設けられ、
前記第2の吹き出し口は、荷物棚下部に設けられていることを特徴とする鉄道車両用空調システム。
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