JP4728476B2 - ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光フィルムの製造原料として有用で、表面平滑性と厚み均一性に優れたビニルアルコール系重合体フィルムが得られる製造法と、これにより得られるフィルムを用いて作製した偏光フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計等の小型機器から、近年ではラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ等の広範囲に広がり、従来以上に光学特性の均一性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
一般に偏光板は、ビニルアルコール系重合体フィルム(以下、これを「PVAフィルム」と略記し、また、これの原料であるビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸し、染色することにより製造した偏光フィルムの両面に、三酢酸セルロース(TAC)膜などの保護膜を貼り合わせた構成をしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
偏光板の偏光性能を均一化させるためには、PVAフィルムを均一に延伸すること、ムラなく貼り合わせることなど多くの注意点があるが、最も重要な点は偏光フィルムの素材となるPVAフィルムの表面を平滑にすることと、厚みを均一にすることである。これまでPVAフィルムの表面平滑性や厚み均一性を向上させるために、低濃度PVA水溶液を流延製膜することが行われていたが、満足のできるフィルムを得ることはできなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、特に偏光フィルム用として好適な厚みが均一で表面平滑性に優れたPVAフィルムを得ることができる製造法を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の製造法は、ロール製膜機またはベルト製膜機を用いてPVAフィルムを製造する際に、ダイ内部のリップ内面を形成するリップ面の真直度が全幅で50μm以下で、200mm離れた二点間で10μm以下の精度を有し、幅が3.5m以上のダイを用いる。
【0007】
以上の製造法によれば、表面平滑性に優れ、厚みが均一な良好なPVAフィルムが得られる。
【0008】
このとき、前記リップ面の表面粗さは1S以下とすることが好ましい。これによれば、より良好なPVAフィルムが得られる。
【0009】
以上の製造法は、偏光フィルム用PVAフィルムを作製するときに好適に用いられる。また、このPVAフィルムを用いることにより、偏光性能が均一な偏光フィルムが得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の製造法に用いるPVAフィルムの製造装置の一例として、含水PVA(有機溶剤を含んでいても良い。以下同じ)を溶融して押し出す溶融押出製膜機の要部を示している。この製膜機は、図示しない押出機から押し出されてきた溶融PVA(製膜原料)8をダイ1内部のリップ3全長にわたって均一に分配するため、まず、マニホールド(空洞部)2に一旦満たして足並みをそろえ、リップ3内面のリップ面4を介してダイ吐出部5から定量の溶融PVA(製膜原料)を定速で回転する金属ロール6上に押し出し、この金属ロール6の円周面の一部を通過させて、PVAフィルムの一方の面を乾燥させる。この後、このPVAフィルムは、図示しないフローティングドライヤーや乾燥用金属ロールや検査機などを通過してワインダーに巻き取られる。
【0011】
本発明は、以上のロール製膜機を用いてPVAフイルムを溶融押出製膜する際に、ダイ1内部のリップ面4(表面がメッキされている場合はメッキ表面、以下省略)の真直度が全幅で200μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下とし、かつ、200mm離れた二点間で50μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下の精度を有し、ダイ1の幅Wが2m以上、より好ましくは2.5m以上、特に好ましくは3m以上のダイ1を用いることが重要である。前記リップ面4の真直度が全幅で200μmを超えたり、200mm離れた二点間で50μmを超えた場合には、得られるPVAフィルムの厚み斑が大きくなり、表面にスジが発生して表面平滑性が悪化し、光学斑の少ない偏光フィルムを得ることはできない。また、ダイ1の幅Wが2m未満では、得られたPVAフィルムを延伸するときに、フィルム端部の影響が中央付近にまでおよぶため、偏光斑の少ない偏光フィルムが得られない。
【0012】
前記リップ3は、リップ開度調整ボルト12でリップ開度の微調整を行うフレキシブルリップ方式が好ましく、そのリップエッジは、半径が150μm以下が好ましい。また、リップ3の材質は、ステンレス鋼や、ニッケル・クロム・酸化クロム・亜鉛・錫などをメッキしてあるステンレス鋼が好ましい。
【0013】
このとき、PVAを構成成分とする製膜原料8が接触するリップ面4の表面粗さが1S以下、より好ましくは0.5S以下、特に好ましくは0.3S以下であることも重要である。リップ面4の表面粗さが1Sを超えた場合には、得られるPVAフィルムの表面にスジが発生して表面平滑性が悪化し、光学斑の少ない偏光フィルムが得られない。
【0014】
ここで、表面粗さの単位「S」とは、表面の凹凸の程度を示すもので、その表面粗さを最大高さで表示したものである。「最大高さ」とは、JIS B 0601に準じ、対象物の断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分の平均線に平行な最も高い山と最も深い谷に接する2直線間の間隔をマイクロメーター(μm)単位で表したものをいう。前記表面粗さ1Sとは、最大高さが1μmである。
【0015】
この実施形態では、PVAフィルムを製造するのに、ロール製膜機を用いているが、ベルト製膜機を用いても良い。
【0016】
本発明にかかるPVAは、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。また、PVAをグラフト共重合した変性PVAや、ビニルエステルと共重合可能なモノマーと共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAをホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンツアルデヒドなどのアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などが好適に用いられる。
【0017】
このようなビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。
【0018】
変性PVAに使用されるコモノマーは、主として変性を目的に共重合させるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、例えば、オレフィン類、アクリル酸およびその塩またはそのエステル、メタクリル酸およびその塩またはそのエステル、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、N−ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、マレイン酸およびその塩またはそのエステル、イタコン酸およびその塩またはそのエステル、ビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。
【0019】
変性PVAを用いる場合、変性量は15モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。またコモノマーとしては、α−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0020】
PVAのけん化度は、得られる偏光フィルムの偏光性能と耐久性の点から95モル%以上が好ましく、特に99.5モル%以上が最も好ましく、染色性の点からは99.99モル%以下が好ましい。
【0021】
前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0022】
PVAの重合度は、得られる偏光フィルムの偏光性能と耐久性の点から1000以上が好ましく、特に2500以上が最も好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
【0023】
前記PVAの重合度(Po )は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
Po =([η]×103 /8.29)(1/0.62)
【0024】
以上のPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法としては、上述した含水PVAを押出機で溶融混練して押出す溶融押出製膜法のほか、例えば、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して流延させる流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらのなかでも流延製膜法および溶融押出製膜法が、透明性の高い良好なフィルムが得られることから好ましい。
【0025】
PVA溶液または含水PVA(製膜原料)には、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させても良い。
【0026】
前記製膜原料を乾燥させるための金属ロールやベルトは、スチーム・熱媒・温水・電気ヒーターなどにより加熱する。また、温風や冷風などをPVAフィルムに吹き付けたり、PVAフィルム周囲の空気や蒸気などを吸引するなどの手段を用いても良い。
【0027】
製膜原料が吐出されるロール製膜機の金属ロールやベルト製膜機のベルトの温度は、50乃至110℃であることが好ましく、60乃至105℃がより好ましく、70乃至100℃がさらに好ましい。金属ロールまたはベルトの温度が50℃より低いと、吐出された製膜原料の乾燥が不均一になる場合があり、110℃より高いと、製膜原料が発泡する場合があるため、厚み均一性に優れたPVAフィルムを得ることが困難となる場合がある。
【0028】
前記金属ロールは、ニッケル・クロム・酸化クロム・亜鉛・錫などをメッキしてあることが好ましい。また、金属ロールの金属表面またはメッキ表面の平滑性は、3S以下が好ましく、特に0.5S以下が最も好ましい。平滑性が3Sを超える場合には、得られるPVAフィルムの厚み均一性や表面の平滑性が悪化し、レタデーション差が大きくなる場合がある。
【0029】
前記製膜原料が金属ロールまたはベルトに吐出された後には、複数の金属ロールで乾燥させ、もしくはテンター式やフリー方式のフローティングドライヤーなどの乾燥装置で乾燥させ、または乾燥炉中に設置された複数のロールを通過させて乾燥させるようにしても良い。これらの装置に付随するロールは、可変減速機やインバーター制御などにより独立して速度調節できるものが好ましい。また、PVAフィルムを巻き取る前の工程には、調湿機や検査機などを設置しても良い。
【0030】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0031】
PVAフィルムを製造する際には、可塑剤として多価アルコールを添加することが好ましい。この多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも延伸性の向上効果から、ジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好適に使用される。
【0032】
多価アルコールの添加量としては、PVA100重量部に対し1重量部乃至30重量部が好ましく、特に5重量部乃至20重量部が最も好ましい。1重量部未満では、染色性や延伸性が低下する場合があり、一方、30重量部を超えると、PVAフィルムが柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0033】
また、PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0034】
界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01重量部乃至1重量部が好ましく、0.05重量部乃至0.3重量部が最も好ましい。0.01重量部未満では延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1重量部を超えると、PVAフィルム表面に溶出し、ブロッキングの発生原因となって取り扱い性が低下する場合がある。
【0035】
溶融PVAまたはPVA溶液の揮発分は、40重量%乃至90重量%が好適であり、特に45重量%乃至85重量%が最も好適である。揮発分が90重量%を超える場合は、得られる偏光フィルムに色斑が発生しやすく、一方40重量%未満の場合には、均一な厚みのPVAフィルムが得られにくくなる場合がある。
【0036】
PVAフィルムの厚みは、20μm乃至150μmが好ましく、30μm乃至80μmがより好ましい。PVAフィルムの厚みが20μm未満では、偏光フィルムを製造する際の一軸延伸で切断しやすく、150μmを超えると偏光フィルムを製造する際の一軸延伸で延伸斑が発生して染色斑や光学斑になりやすい。
【0037】
本発明のPVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えばPVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、および乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えば良い。各工程の順序は特に限定はなく、また染色と一軸延伸など二つの工程を同時に実施しても構わない。また、各工程を複数回繰り返しても良い。
【0038】
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などの二色性染料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。通常、染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに塗工したり、PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0039】
前記一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき、温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でも良い)または吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30℃乃至90℃が、また乾熱延伸する場合は50℃乃至180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から4倍以上が好ましく、特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚みは、3μm乃至75μmが好ましく、5μm乃至50μmがより好ましい。
【0040】
延伸フィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加しても良い。
【0041】
前記延伸フィルムの乾燥処理(熱処理)は、30℃乃至150℃で行うのが好ましく、50℃乃至150℃で行うのがより好ましい。
【0042】
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリオレフィン系フィルムなどが使用される。偏光フィルムと保護膜の接着力を上げるため、両方のフィルムまたは片方のフィルムの貼り合わせる面にコロナ処理、火炎処理などの表面処理を行うことが好ましい。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、PVA系の接着剤が好適である。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
リップ面の真直度が全幅で40μm、200mm離れた二点間で8μm、リップ面の表面粗さが0.1S、ダイの幅Wが3.5m、リップエッジの半径が100μmのフレキシブルリップダイと、平滑性が0.3Sの90℃に加熱した直径2.5mの金属ロールを用い、これらの間隔が5mmとなるように配置したロール製膜機を用いた。
そして、けん化度99.9モル%で重合度1750のPVA100重量部に対し、グリセリン10重量部を含有するPVA濃度が15重量%の水溶液を前記製膜機を用いて流延製膜し、90℃の熱風で乾燥させた。その後、15本の加熱金属ロールでPVAフィルムの表裏を交互に乾燥させて、厚さ75μmの偏光フィルム用PVAフィルムを得た。このPVAフィルムの表面は平滑であり、厚み斑は2μmと良好であった。
【0044】
前記PVAフィルムを、予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作製した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に5分間浸漬させて予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬させた。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.5倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬させて固定処理を行った。この後、延伸フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。
【0045】
得られた偏光フィルムの厚みは22μmであり、色斑は無かった。また、得られた偏光フィルムの50cm四方を、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度で挟んで透過光を観察した結果、異常は見られなかった。
【0046】
実施例2
リップ面の真直度が全幅で30μm、200mm離れた二点間で5μm、リップ面の表面粗さが0.1S、ダイの幅Wが3.5m、リップエッジの半径が80μmのフレキシブルリップダイと、平滑性が0.3Sの90℃に加熱した直径2.5mの金属ロールを用い、これらの間隔が5mmとなるように配置したロール製膜機を用いた。
そして、けん化度99.9モル%で重合度4000のPVA100重量部とグリセリン10重量部および水110重量部を前記製膜機により溶融混練させて溶融押出製膜し、90℃の熱風で乾燥させた。その後15本の加熱金属ロールでPVAフィルムの表裏を交互に乾燥させて、厚さ75μmの偏光フィルム用PVAフィルムを得た。このPVAフィルムの表面は平滑であり、厚み斑は2μmと良好であった。
【0047】
前記PVAフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを30℃の水中に5分間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬させた。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬させて固定処理を行った。この後、延伸フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。
【0048】
得られた偏光フィルムの厚みは22μmであり、色斑は無かった。また、得られた偏光フィルムの50cm四方を、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度で挟んで透過光を観察した結果、異常は見られなかった。
【0049】
実施例3
実施例2において、リップ面の表面粗さを2Sとした以外は実施例2と同様にして、偏光フィルム用PVAフィルムを得た。このPVAフィルムの表面にはわずかな厚み斑(4μm)が見られた。
【0050】
実施例2と同様にして、得られた偏光フィルムの50cm四方をクロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度で挟んで、透過光を観察すると、薄い不定形の斑がわずかに観察されたが、LCD用途に使用可能なレベルであった。
【0051】
比較例1
実施例2において、リップ面の真直度が全幅で300μm、200mm離れた二点間で70μm、リップ面の表面粗さが2S、ダイの幅Wが2m、リップエッジの半径が200μmのフレキシブルリップダイと、平滑性が5Sの90℃に加熱した直径2.5mの金属ロールを用い、それらの間隔を20mmとなるように配置した以外は、実施例2と同様にして、偏光フィルム用PVAフィルムを得た。このPVAフィルムの表面には、フィルムの長さ方向にスジが観察され、フィルムの幅方向の厚み斑も10μmと大きかった。
【0052】
実施例2と同様にして、得られた偏光フィルムの50cm四方をクロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度で挟んで、透過光を観察すると、筋状の斑と不定形な斑が多数観察され、LCD用途には使用できなかった。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、厚みが均一で表面平滑性に優れた良好なPVAフィルムを得ることができ、特に偏光フィルム用PVAフィルムの製造法として有用で偏光性能が均一な偏光フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるPVAフィルムの製造法に用いるロール製膜機の要部を示す側面図である。
【符号の説明】
1…ダイ、2…マニホールド、3…リップ、4…リップ面、5…ダイ吐出部、7…リップ間隔調整ボルト、8…溶融PVA(製膜原料)、W…ダイの幅。
Claims (3)
- ロール製膜機またはベルト製膜機を用いてビニルアルコール系重合体フィルムを製造する際に、ダイ内部のリップ内面を形成するリップ面の真直度が全幅で50μm以下で、200mm離れた二点間で10μm以下の精度を有し、幅が3.5m以上のダイを用いることを特徴とするビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
- 請求項1において、前記リップ面の表面粗さが1S以下であるビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
- 請求項1または2において、前記ビニルアルコール系重合体フィルムが偏光フィルム用であるビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
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