JP4725759B2 - 溶融金属浴中の軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板に亜鉛やアルミニウム等の溶融金属めっきを施す際に連続溶融金属浴中に浸漬して用いられるロール、特にシンクロールやサポートロールの軸受装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から連続溶融金属めっきラインのめっき浴としては、図5に示す装置が用いられている。図5において、溶融金属めっき浴1内には、めっきを施す鋼板2を連続して通板するためのシンクロール3、及び一対のサポートロール4が設置されている。シンクロール3は、溶融金属めっき浴1の底部に配置され、浴中に送られてきた鋼板2の進行方向を上方の浴面側に変えるものである。通常、シンクロール3の回転動力は、鋼板の走行移動によって駆動トルクが付与される。一対のサポートロール4は、シンクロール3を通過した後の浴面に近い位置に設けられ、外部のモーターによりスピンドルを介して駆動される。この一対のサポートロール4は、鋼板2を挟み込んで鋼板2のパスラインを保ち、シンクロール3を通過した際に生じる鋼板2の反りを矯正する作用を行う。溶融金属めっき浴1の上方部には、めっき厚を均一に制御するために一対のノズル5が設置されている。
【0003】
シンクロール3やサポートロール4の軸受としては、滑り軸受や転がり軸受が用いられている。図6は、シンクロール3の軸受装置として従来から用いられている滑り軸受の一例を示す図であり、シンクロール3のロール軸3aは、アーム6に設けた軸受7で支持する構成になっている。そして、ロール軸3aは、円筒状の軸受7の内周面と幅Eにわたって接触しながら摺動回転する。軸受7は、溶融金属を潤滑剤として使用するために、軸受7の内径はロール軸3aの外径より大きくして、ロール軸3aと隙間Dが生じるようにしている。また、ロール軸3aと摺動接触する軸受7は、溶融金属に対して耐食性、かつ耐摩耗性のある材質から作られている。この軸受7としては、Cr鋼,Ni−Cr鋼、低炭素鋼等の溶融金属に対する耐食性の高い合金鋼やセラミックスを使用したり、あるいはこれらの材質の表面に耐食性合金やセラミックスを溶射したものが使用されていた。なお、ロール軸3aの材質は、一般にはステンレス鋼が用いられている。
【0004】
軸受7は溶融金属による侵食と機械的すべりとの相乗作用により、実質的に負荷を受ける上部の摩耗が著しく早いため、通常2週間程度の短周期でロール3を溶融金属めっき浴1から引き上げて軸受7の交換が行われおり、生産性低下、保守費用増大を招いていた。さらに、軸受7の摩耗により回転振動が発生すると、ノズル5と鋼板2との間隔を一定に保つことができなくなり、鋼板2に均一な膜厚のめっきを施すことができなくなるという課題があった。また、サポートロール4の軸受にガタツキが発生すると、その回転中心軸が偏心しながら回転するために鋼板2に振動を与え、この振動によりノズル5と鋼板2との間隔が変動し、均一なめっき層を形成できなくなる不具合も発生していた。特に、近年のめっき速度の高速化に対して、このようなめっき品質の低下は大きな課題となっていた。
【0005】
上記の課題に対しては、軸受7のセラミックス化が検討され、耐摩耗性の点において性能の向上が図られつつあり、摩耗という観点からみた寿命は半永久的といえる状況にまで改善されている。しかしながら、シンクロール3のロール軸3aの摩耗、アーム6の熱膨張や変形によりロール3の回転に偏心が生じる現象が発生していた。ロール3の回転に偏心が生じると、前記の通り、鋼板2に均一な膜厚のめっきを施すことができなくなる。従って、シンクロール3やサポートロール4の回転に偏心が発生した場合には、これらの軸受に直ちに自動調芯する機能を持たせると、軸受やロールをメンテナンスすることなく、鋼板2に長日数にわたって均一な膜厚のめっきを施すことが可能になる。
【0006】
上記のようなシンクロール3の回転ムラをなくする対策としては、例えば、特開平8−144035号公報には、ロール軸の両端外径面に互いに向きの異なる軸方向テーパを付し、これに外嵌する軸受はそれぞれ内面を該テーパと嵌合する形状にするとともにロール軸方向に移動可能に形成した溶融金属めっき浴中ロール軸支持装置が開示されている。同公報に開示されている軸支持装置は、軸受箱を軸方向に移動させることによってロール軸と支持部の隙間をなくし、よって軸受部のガタに起因したロールとの触れ回りによって生じる鋼板の振動を防止しようとするものである。
【0007】
特開平7−173593号公報には、溶融金属めっき浴中のロール支持装置として、少なくとも一方の軸受箱は転がり軸受を構成する外輪を軸方向に揺動自在に支持する調芯リングを用いた転がり軸受を採用することにより、温度変化に伴うロール全長の膨張、収縮をこの調芯リングにより吸収させることが開示されている。
【0008】
特開2000−64008号公報には、通板速度が250m/分の高速ラインスピードに十分追従しかつ耐久性を確保する滑り軸受け構造の提供を目的として、ロール軸外径に対して1〜15mm大きな内径を有するセラミックス製軸受けと、この滑り軸受け外径に対して0.15〜15mm大きい滑り軸受けを保持する穴を設けたロールホルダーアームで構成された溶融金属めっき浴用滑り軸受け構造が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平8−144035号公報に開示されている軸支持装置では、軸受部を構成する互いに嵌り合うテーパ状のリング部材等の部材を必要とするのみならず、ロールを回転駆動しているモーターの負荷を検出して、この検出負荷に基づいて軸受を設置したアームをロール軸方向にスライドさせる機構を必要し、装置全体が極めて複雑になるという問題がある。
【0010】
特開平7−173593号公報に開示されているロール支持装置は、自動調芯機能を有しているが、転がり軸受を用いた支持装置であるために軸受部の構造が複雑になり、かつ部品点数も多くなるという問題がある。
【0011】
特開2000−64008号公報に開示されている溶融金属メッキ浴用滑り軸受け構造は、内周面の全体が平坦な円筒状形状であるため、軸受の内周面がロール軸と摺動接触する長さは軸受の幅とほぼ等しくなる。従って、高速通板に対しては摺動抵抗が大きくなり易い。
【0012】
本発明は上記問題を解決するために、極めて簡単な構造であり、かつシンクロールあるいはサポートロールがその回転軸が偏心して回転しても、ただちに正常な回転に復帰する自動調芯機能を有するとともに、高速通板に対しても小さい摺動抵抗で追従することができる溶融金属浴中の軸受装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶融金属浴中に浸漬配置されるロールの軸受装置において、セラミックスで構成された一の軸受を有し、ロール軸と摺動接触する前記軸受の内周面の前記ロール軸の軸心方向を含む断面形状が凸状かつ円弧状であるとともに当該凸状かつ円弧状の断面形状の最も高い頂点は軸心方向において前記軸受の中央部にあり、さらに前記ロール軸の軸心方向において前記軸受の内周面の両端部には球面部が形成されていることを特徴とする溶融金属浴中の軸受装置である。また本発明は、上記断面形状が凸状の内周面において、内周面の最小内径部を平坦にした溶融金属浴中の軸受装置である。
【0014】
さらに本発明は、前記軸受の内周面の最大内径と最小内径との差が1mm以上、かつ最小内径より内径が大きい部分の占める領域が2分の1以上として溶融金属浴中の軸受装置である。また、本発明の溶融金属浴中の軸受装置は、軸受が軸方向または円周方向に分割されて構成されたものでもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す要部断面図である。シンクロール等においては、ロールの両端に設けたロール軸が各々軸受に支持されているが、図1では一方の軸受のみを示している。図1において、シンクロール(またはサポートロール)3のロール軸3aは、アーム6に設置した円筒状の軸受8により支持されている。軸受8は、アーム6の孔部に若干の間隔Lを設けて装着する。この間隔Lは、アーム6と軸受8との熱膨張係数の差による膨張量の差を吸収するために設けるものである。
【0016】
円筒状の軸受8の内周面には、凸状部8aを形成する。この凸状部8aは図1に示すように、ロール軸3aを含む断面形状が一様な凸状になるようにする。凸状部8aにおいて、その突出高さが最も高くなる頂点部分8bは、軸受8の軸心方向B−Bのほぼ中央部分に形成する。そして、シンクロール3が正常に稼動しているときには、この頂点部分8bを含む平面A−Aはシンクロール3の軸心B−Bと直交するように頂点部分8bを形成し、頂点部分8bとその近傍を含む極めて狭い面積がロール軸3aと摺動接触するようにする。
【0017】
また、軸受8の端部から突出する凸状部8aの突出高さは、0.5mm以上、好ましくは0.5〜2mmにするとよい。すなわち、軸受8の内周面の最大内径と最小内径との差は1mm以上にするとよい。この突出高さHが2mmより大きくなると、頂点部分8bに応力が集中し易くなってこの部分から破壊が生じる危険性が生じるからである。また、突出高さHが0.5mmより小さくなると、ロール3の軸心B−Bが偏心したときに自動調芯作用が低下し、また、凸状部8aとロール軸3aとが摺動接触する面積が大きくなり摺動抵抗が増加するからである。ロール軸3aの外径よりも軸受8の内径を大きくして、ロール軸3aと軸受8の頂点部分8bとの間には隙間Dを設けるようにする。この隙間Dを設けることにより、ロール軸3aと軸受8との熱膨張係数の差による軸受8の破壊防止と、溶融金属を摺動接触部に対する潤滑剤として作用させることができる。この隙間Dは5〜15mmが好ましい。
【0018】
図1に示す本発明の第1の実施の形態においては、ロール3が偏心することがなく正常に回転しているときには、凸状部8aの頂点部分8bとその近傍がロール軸3aにほぼ点接触の状態で摺動接触する。このため、ロール軸3aと軸受8との摺動抵抗が極めて低くなり、鋼板2の通板速度が200m/分以上の高速ラインスピードに対しても追従することができる。
【0019】
軸受8の材質としては、窒化珪素、サイアロン等のセラミックスを用いることが望ましい。しかし、前記のように、ロール軸3aと軸受8とが摺動接触する部分は、軸受8に形成した頂点部分8bの近傍と極めて狭い領域であるため、摺動抵抗は極めて小さくなる。このため、本発明においては、軸受8とロール軸3aとの摺動抵抗が小さくなるような材質を選択する必要性がなくなるという効果がある。
【0020】
続いて本発明の溶融金属浴中の軸受装置の自動調芯作用について説明する。図2に示すように、アーム6の熱膨張や変形、あるいはロール軸3aの摩耗した部分が軸受8に接触して瞬間的に軸受8に対してロール軸心B−Bが偏心すると、ロール3には鋼板2から上方への通板に伴う引張力が作用して、直ちに図1に示すようにロール軸3aは軸受8の頂点部分8bと摺動接触する正常な状態に復帰して高速通板に追従することができるようになる。これにより、鋼板2のめっき品質の低下を防止することができる。また、軸受8の内周面の全面に凸状部8aを形成しているので、軸受8の両端部には球面部(R部)が形成されるので、図2に示すようにロール軸3aが偏心しても、この軸受8の端部はロール軸3aと接触する危険性はなくなり、軸受8の破壊を防止することができる。
【0021】
続いて本発明の第2の実施の形態を図3に基づいて説明する。図3においては、軸受8の凸状部8aのほぼ中央部、すなわち、図1に示す頂点部分8bを含む近傍を、軸受8の内周面の全周にわたって長さHの平坦部8cを設け、この平坦部8cがロール軸3aと摺動接触させるようにしたものである。ロール3が正常に回転しているときには、平坦部8cはロール3の軸心B−Bと平行になるように形成する。このように長さHの平坦部8cを設けることにより、凸状部8aに対する応力集中を前記第1の実施の形態と比較して低減させることができる。平坦部8cの長さHは、軸受8の軸方向の長さの2分の1より小さく、すなわち、軸受8の内周面の最小内径より内径が大きい部分の占める領域が2分の1以上にすることが好ましい。この理由は、平坦部8cの長さHを軸受8の軸方向の長さの2分の1より大きくすると、平坦部8cとロール軸3aと摺動抵抗が増加して高速通板に追従できなくなるからである。
【0022】
図4は本発明の第3の実施の形態を示すもので、図1に示す円筒状の軸受8を軸心B−B方向と直交する向き(軸受8の円周方向)に3分割して軸受を構成したもので、頂点部分8bを含む軸受部9、外側に位置する軸受部10、ロール3側に位置する軸受部11を各々別個に製作して一体化したものである。この実施の形態に示す軸受は、ロール軸3aと摺動接触する軸受部9を窒化珪素、サイアロン等のセラミックス部材とし、他の軸受部10、11はステンレス鋼等からなる部材から製作する。また、全ての軸受部9、10、11をセラミックス部材で形成してもかまわない。また、図示していないが、軸受部9の内周面の全面に図3に示す平坦部8cを設けてもよい。
【0023】
以上に説明した本発明の実施の形態の他に、図1あるいは図3に示す軸受8をロール軸B−B方向に半割りした半円筒形状にし、ロール軸3aから負荷がかかる方向の半円筒状軸受に凸状部を形成してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明した本発明は、次の効果を有している。
(1)軸受の内周面を円弧状に形成しているために、ロール軸が瞬間的に偏心しても直ちに自動的に調芯作用が働き、ロールが正常な回転に復帰する。このため、鋼板のめっき品質の低下を防止することができる。
(2)軸受とロール軸とが点接触に近い状態、あるいは極めて狭い面積で摺動接触させることができるため、従来の軸受と比較してロール軸の回転時の摺動抵抗を低下させることができる。これにより、高速通板速度に正常に追従することが可能な溶融金属めっき浴中の軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す要部断面図である。
【図2】 図1において、ロール軸が偏心したときの状態を示す要部断面図である。
【図3】 本発明の第2の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】 本発明の第3の実施の形態を示す要部断面図である。
【図5】 溶融金属めっき浴の構成を示す説明図である。
【図6】 従来の溶融金属めっき浴に使用されている滑り軸受の構造の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1:溶融金属めっき浴、 2:鋼板、 3:シンクロール、
3a:ロール軸、 4:サポートロール、 5:ノズル、
6:アーム、 7:軸受、 8:軸受、
8a:凸状部、 8b:頂点部分、 8c:平坦部、
9:分割した軸受部、 10:分割した軸受部、 11:分割した軸受部
Claims (4)
- 溶融金属浴中に浸漬配置されるロールの軸受装置において、セラミックスで構成された一の軸受を有し、ロール軸と摺動接触する前記軸受の内周面の前記ロール軸の軸心方向を含む断面形状が凸状かつ円弧状であるとともに当該凸状かつ円弧状の断面形状の最も高い頂点は軸心方向において前記軸受の中央部にあり、さらに前記ロール軸の軸心方向において前記軸受の内周面の両端部には球面部が形成されていることを特徴とする溶融金属浴中の軸受装置。
- 前記軸受の内周面の最小内径部が平坦であることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属浴中の軸受装置。
- 前記軸受の内周面の最大内径と最小内径との差が1mm以上、かつ最小内径より内径が大きい部分の占める領域が2分の1以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融金属浴中の軸受装置。
- 前記軸受が軸方向または円周方向に分割されて構成されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の溶融金属浴中の軸受装置。
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