JP4722825B2 - 卵加工食品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させて得られる風味、食感に優れた卵加工食品、特に、加熱凝固後に冷凍し加熱処理した後も、離水することなく空洞部分等を生じることの無い、冷凍保存性に優れた卵加工食品およびその製造方法に関する。
茶碗蒸し等の卵加工食品は、風味、食感が良く、栄養学的にも優れていることから、日常の食生活において広く親しまれている食品の一つである。そして、家庭において調理されて食されるのはもちろんのこと、もっと手軽に幅広い状況でも楽しみたいという要望から、加熱するだけで食用に供されるような調理加工済みの加工食品が種々開発されてきている。
例えば、茶碗蒸しであれば、レストランあるいは学校給食で使用される業務用のものとして、パックに充填された液体状のものが販売されており、これらは調理現場においてパックで包装された状態のまま加熱処理して中身を固化させるだけで、茶碗蒸しとして食することができるものである。
また、このような業務用とは別に、時間をかけずに手軽に調理できる利点から、一般家庭用としては冷蔵用の成形されたものが販売されているが、手軽には食することができるものの保存性はあまり良くなかった。
近年は、生活様式の多様化から、このような冷凍食品の一般家庭における需要が急速に伸びてきていることもあり、風味、食感等に優れ、しかも長期の冷凍保存が可能な卵加工食品の開発が望まれるようになってきている。
このような従来の冷凍食品用の卵加工食品は、冷凍保存時に品質劣化が起こることが多く、解凍後に加熱処理を行うと、離水を生じたり、空洞部分を生じてスポンジ状になったりするなど、食感の好ましくないものが多いのが問題点であった。
そこで、これらの問題点を解決するために、例えば、全卵に食感を改善するための種々の添加物を配合した加工食品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−252050号公報
しかし、特許文献1に記載のものをはじめ、従来の卵加工食品は、解凍および加熱処理後の食感の改善を試みているものの、離水および空洞部分の発生等を含め、すべての品質が必ずしも満足できるものはなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱凝固させた際の風味、食感に優れ、長期の冷凍保存後も離水や空洞部分を生じることなく、冷凍前と同等の風味、食感を維持することができる卵加工食品およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、原料である卵として全卵ではなく、乾燥卵白と卵黄を組み合わせて用いることで、冷凍前の加熱凝固時は勿論のこと、解凍および加熱処理後においても風味、食感に優れ、離水および空洞部分の発生等をより効果的に抑制することができる卵加工食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、乾燥卵白、卵黄および焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、前記焼成カルシウムの配合量が0.001〜0.06質量%であり、前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする卵加工食品である。
物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、応力1.3×10N/m以下でかつ歪率75%以下の範囲内において卵白ゲルが破断しない。
請求項2に記載の発明は、乾燥卵白、卵黄および焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、前記焼成カルシウムの配合量が0.001〜0.06質量%であり、前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする卵加工食品である。
物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、破断しない範囲における該卵白ゲルの応力/歪率の値が、2.2×10N/m以下である。
請求項3に記載の発明は、乾燥卵白、卵黄、オリゴ糖、ゼラチン、加工デンプンおよび焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、前記配合成分の割合が、乾燥卵白が1〜4質量%、卵黄が5〜30質量%、オリゴ糖が2〜12質量%、ゼラチンが0.9〜3.5質量%、加工デンプンが0.3〜1.5質量%、焼成カルシウムが0.001〜0.06質量%であることを特徴とする卵加工食品である。
請求項4に記載の発明は、前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする請求項3に記載の卵加工食品である。
物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、応力1.3×10N/m以下でかつ歪率75%以下の範囲内において卵白ゲルが破断しない。
請求項5に記載の発明は、前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする請求項3に記載の卵加工食品である。
物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、破断しない範囲における該卵白ゲルの応力/歪率の値が、2.2×10N/m以下である。
請求項6に記載の発明は、前記オリゴ糖が、デンプンをアミラーゼおよび/またはプルラナーゼで処理することにより得られたものである請求項3〜5のいずれか一項に記載の卵加工食品である。
請求項に記載の発明は、乾燥卵白を1〜4質量%、卵黄を5〜30質量%、オリゴ糖を2〜12質量%、ゼラチンを0.9〜3.5質量%、加工デンプンを0.3〜1.5質量%、焼成カルシウムを0.001〜0.06質量%となるように配合し、該配合物を水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍することを特徴とする卵加工食品の製造方法である
本発明により、加熱凝固させた際の風味、食感に優れ、長期の冷凍保存後も離水や空洞部分等を生じることなく、冷凍前と同等の風味、食感を維持することができる卵加工食品を得ることができる。なかでも、冷凍食品用茶碗蒸しに好適である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で用いる乾燥卵白としては、具体的には以下のような物性を有するものが挙げられる。すなわち、乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、該混合物をフードミキサーで30秒間よく混合して卵白液とする。該卵白液を底面直径32mm、開口部直径37mm、高さ30mmのカップに25g充填し、80℃で15分間蒸してから粗熱をとって卵白ゲルとし、続いて−25〜−18℃で6時間冷凍する。冷凍した卵白ゲルを約20℃で1時間静置して自然解凍を行い、該解凍卵白ゲルをカップから取り出して、底部が水平でかつ高さが25mmとなるようにトリミングを行い、測定サンプルとする。
レオメーター(株式会社山電製)を用いて、No.1、直径31mmのプランジャーによりn=3で、該測定サンプルに外部から力を加えた時の応力と歪率との関係を調べる。乾燥卵白(a)〜(d)を用いた場合の本試験結果の一例を図1に示す。図1において、(a)〜(c)はいずれも本発明の卵加工食品に用いるのに好適な乾燥卵白の測定データであり、(d)は解凍および加熱後の卵加工食品に空洞部分が生じ易い乾燥卵白の測定データである。なお、乾燥卵白(a)〜(d)とは、具体的には以下のものである。
乾燥卵白(a);乾燥卵白ELS(商品名、キューピー株式会社製)
乾燥卵白(b);乾燥卵白K(商品名、キューピー株式会社製)
乾燥卵白(c);乾燥卵白M(商品名、キューピー株式会社製)
乾燥卵白(d);乾燥卵白粉(商品名、松田産業株式会社製)
それぞれの曲線は、歪率の増加と共に応力が増加し、ある点において、応力が増加から一転して急激に減少することを示しているが、この点が卵白ゲルの破断が生じたことを示している。なお、破断時の歪率はそれぞれ、(a)72.5%、(b)58.3%、(c)53.9%、(d)57.5%である。
本発明の卵加工食品は、前記測定条件において、応力が1.3×10N/m以下でかつ歪率が75%以下の範囲内において破断しない前記卵白ゲルが得られる乾燥卵白(以下、乾燥卵白1と略記する)、または、前記卵白ゲルが破断しない範囲における、応力/歪率の値が、2.2×10N/m以下である乾燥卵白(以下、乾燥卵白2と略記する)が必須成分として配合されたものである。
乾燥卵白1が配合された卵加工食品(以下、卵加工食品1と略記する)、および乾燥卵白2が配合された卵加工食品(以下、卵加工食品2と略記する)は、いずれも、上記のような特徴的な物性を有する乾燥卵白が配合されていることで、風味および食感を損なうことなく、効果的に離水や空洞部分の発生が抑制されたものである。
卵加工食品1および2には、その種類に応じて、乾燥卵白1および2以外に、本発明の効果を妨げない範囲内で如何なる成分を配合しても良い。このようなものとして、例えば、後記する卵加工食品3に配合される各配合成分(乾燥卵白、卵黄、オリゴ糖、ゼラチン、加工デンプン、焼成カルシウム、その他の配合成分)が挙げられるが、これらに限定されず、目的に応じて適宜選択すれば良い。また、卵加工食品1および2の各配合成分の比率も特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜調整すれば良い。
卵加工食品1および2は、例えば、乾燥卵白1および2を用いること以外は、従来公知の卵加工食品の製造方法で製造できる。
本発明の卵加工食品の他の実施態様として、必須成分として、乾燥卵白、卵黄、オリゴ糖、ゼラチン、加工デンプンおよび焼成カルシウムが配合されている卵加工食品(以下、卵加工食品3と略記する)が挙げられる。全卵ではなく、乾燥卵白と卵黄を組み合わせて用い、上記のような配合とすることで、風味および食感を損なうことなく、効果的に離水や空洞部分の発生が抑制された卵加工食品が得られる。
本発明において乾燥卵白とは、生卵から主として卵黄および殻を取り除いて乾燥させたものであり、保存性およびゲル強度の向上等のために、食品分野で通常行われる加工を施したものでも良い。そして本発明においては、特に冷凍保存時以降の保水力に優れ、卵加工食品に滑らかさおよび一体感(ボディ感)を付与すると同時に、解凍および加熱後の卵加工食品に離水が生じたり、空洞部分が生じる(茶碗蒸しの場合、いわゆる「す」が入ること、以下同様)ことを抑制するものである。
卵加工食品3において用いる乾燥卵白は特に限定されないが、前記乾燥卵白1または2であることが好ましい。
卵加工食品3で用いることができる市販品の乾燥卵白として、具体的には、例えば、卵加工食品1および2と同様に、乾燥卵白ELS、乾燥卵白K、乾燥卵白M(以上、商品名、キューピー株式会社製)を挙げることができる。
卵加工食品3において、乾燥卵白の比率は、1〜4質量%であり、2〜3質量%であることが好ましい。
また、乾燥卵白は、水と混合して乾燥卵白液として用いることが好ましく、このような乾燥卵白液を用いる場合には、10〜20質量%の濃度で用いることが好ましい。
本発明において卵黄は、卵加工食品に卵風味を付与するものであり、例えば、生卵から得たものを用いることができる。
卵加工食品3において、卵黄の比率は、5〜30質量%であり、8〜15質量%であることが好ましい。
本発明は、前記のように乾燥卵白と卵黄を組み合わせて配合する点で、生卵から殻を除いたいわゆる全卵を配合したものと類似するが、乾燥卵白および卵黄に代えてこのような全卵を用いると、卵加工食品の滑らかさおよび一体感が失われるだけでなく、解凍および加熱後に離水および空洞部分が生じてしまう。
本発明においてオリゴ糖とは、2〜10個程度の単糖が結合した糖のことを指す。これらオリゴ糖は保水性を有しており、卵加工食品に滑らかさおよびほのかな甘さを付与すると同時に、解凍および加熱後の卵加工食品に空洞部分が生じることを抑制するものである。
オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アガロオリゴ糖、マルトオリゴ糖など、保水性を有するものであればいずれも用いることができるが、入手の容易性、その呈味のまろやかさなどの観点から、マルトオリゴ糖が特に好ましい。
マルトオリゴ糖は、例えば、デンプンをアミラーゼおよび/またはプルラナーゼで従来公知の手法で処理することにより得られる。そして、水あめ等でも、その固形分量を調整することによって用いることができる。本発明で用いることができる市販品として、具体的には、例えば、オリゴトース(商品名、三菱化学フーズ株式会社製)、テトラップ(商品名、株式会社林原商事販売)等を挙げることができる。
卵加工食品3において、オリゴ糖の比率は、2〜12質量%であり、3〜6質量%であることが好ましいが、オリゴ糖の種類に応じてその保水性により適宜調整することが好ましい。
本発明においてゼラチンは、卵加工食品に滑らかさおよび一体感を付与すると同時に、解凍および加熱後の卵加工食品に離水および空洞部分が生じることを抑制するものである。ただし、配合量が多くなり過ぎると、卵加工食品の舌触りが悪化するだけでなく、甘みが強くなってしまう。
したがって、卵加工食品3において、ゼラチンの比率は、0.9〜3.5質量%であり、1〜2.5質量%であることが好ましい。
本発明で用いることができる市販品のゼラチンとして、具体的には、例えば、ミキシングフォーマーSC(商品名、千葉製粉株式会社製)を挙げることができる。
本発明において加工デンプンは、卵加工食品に滑らかさおよび一体感を付与すると同時に、解凍および加熱後の卵加工食品に離水および空洞部分が生じることを抑制するものである。ただし、配合量が多くなり過ぎると、卵加工食品の食感が硬くなってしまい、少な過ぎると割れが生じ易くなってしまう。また、加工デンプンに代わって原料デンプンを用いると、離水が生じ易くなってしまう。
したがって、卵加工食品3において、加工デンプンの比率は、0.3〜1.5質量%であり、0.4〜0.7質量%であることが好ましい。
加工デンプンは、従来公知のものであればいずれも用いることができ、その種類は特に限定されず、具体的には、例えば、原料デンプンを各種誘導体化したもの、分解したもの、アルファ化したもの等を挙げることができる。本発明で用いることができる市販品の加工デンプンとして、具体的には、例えば、THEMFLO(商品名、NSC社製)を挙げることができる。
本発明において焼成カルシウムは、卵加工食品に滑らかさおよび一体感を付与すると同時に、解凍および加熱後の卵加工食品に離水および空洞部分が生じることを抑制するものである。そして、卵加工食品の品質に極く微量で影響を与える。
焼成カルシウムの配合量は多くなり過ぎても、卵加工食品の滑らかさおよび一体感が失われるだけでなく、解凍および加熱後に離水および空洞部分が生じ易い。一方、配合量が少な過ぎても多すぎる場合と同様な傾向が見られるが、特に滑らかさが失われ易い。
したがって、卵加工食品3において、焼成カルシウムの比率は、0.001〜0.06質量%であり、0.01〜0.05質量%であることが好ましい。
卵加工食品3においては、前記配合成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、食品分野で一般的に用いられる各種添加物をその他の配合成分として配合して卵加工食品としても良い。
例えば、その他の配合成分としてだし汁などを配合することにより、卵加工食品の風味を向上させることができる。卵加工食品の工業製品などでは広く一般的にだし汁等が用いられている。ここでだし汁とは、特に限定されるものではなく、卵加工食品の種類に応じて適宜従来公知のものを選択すれば良い。
これらその他の配合成分の比率は、卵加工食品の種類に応じて前記配合成分の比率がそれぞれ前記範囲内となるように適宜調整すれば良い。
卵加工食品1〜3は、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させることで風味、食感に優れた卵加工食品とすることができる。このようなものとして、例えば、茶碗蒸しを挙げることができる。
また、卵加工食品1〜3は冷凍食品に好適であり、冷凍して得られた卵加工食品は、長期の冷凍保存後も風味、食感が損なわれることがなく、離水や空洞部分を生じることのない優れた品質のものとなる。特に冷凍用茶碗蒸しに好適である。
本発明の卵加工食品3は、乾燥卵白を1〜4質量%、卵黄を5〜30質量%、オリゴ糖を2〜12質量%、ゼラチンを0.9〜3.5質量%、加工デンプンを0.3〜1.5質量%、焼成カルシウムを0.001〜0.06質量%となるように配合し、該配合物を水蒸気雰囲気下で加熱凝固させることで製造することができる。また、本製造方法で製造された卵加工食品を従来公知の方法で冷凍することで、冷凍食品である卵加工食品とすることができる。
本発明において、前記配合物は、加熱凝固前および/または加熱凝固後において冷凍保存することができるが、特に加熱凝固後に冷凍保存した場合に、解凍および加熱後の卵加工食品に離水および空洞部分が生じることを抑制し、冷凍保存前の風味、食感を維持する効果が高い。
本発明の卵加工食品3の製造方法においては、前記各配合成分を配合する順番は、製造する卵加工食品の種類に応じて適宜調整することができる。また、一種類以上の配合成分を分割して段階的に配合しても良い。例えば、茶碗蒸しを製造する場合には、加工デンプン、ゼラチン、焼成カルシウム等をあらかじめだし汁等のその他の配合成分に配合してよく混合しておき、該混合物に乾燥卵白、卵黄、オリゴ糖等を配合して加熱凝固させる際に、あらためてゼラチン、焼成カルシウム等を配合しても、風味、食感に優れ、長期の冷凍保存後も離水や「す」を生じることのない、優れた品質の茶碗蒸しが得られる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
以下に示す方法で冷凍用茶碗蒸しを製造し、冷凍保存後、解凍および加熱処理を行って、調理済み茶碗蒸しの品質の比較を行った。
(冷凍用茶碗蒸しの製造)
水と各調味料を表1に示す配合比で配合し、実施例1〜3および比較例1〜7で用いるだし汁を調製した。なお、かつお節だし汁には、極(商品名、日本たばこ産業株式会社販売)を用いた。
また、水と各乾燥卵白を表2に示す配合比で配合し、ミキサーでよく混合してからメッシュでこして、実施例1〜3および比較例1〜7の乾燥卵白液をそれぞれ調製した。なお、乾燥卵白ELSは図1に示す(a)、乾燥卵白Kは(b)、乾燥卵白Mは(c)であり、いずれも前記乾燥卵白1および2に該当する。一方、乾燥卵白粉(商品名、松田産業株式会社製)は図1に示す(d)であり、前記乾燥卵白1および2のいずれにも該当しない。
続いて、前記だし汁と、市販品のゼラチンとしてミキシングフォーマーSC(商品名、千葉製粉株式会社製)と、市販品の加工デンプンとしてTHEMFLO(商品名、NSC社製)とを、表3に示す配合比で配合し、ミキサーでよく混合した。そして、該混合物を沸騰(ひとたち)するまで加熱してから、40〜50℃に冷却した後、沸騰時に蒸発した分の水を足して該混合物の重量を沸騰前の重量に合わせて、実施例1〜3および比較例1〜7のだし汁配合液をそれぞれ調製した。
このようにして得られた各だし汁配合液と、前記の各乾燥卵白液、卵黄、オリゴ糖としてオリゴトース(商品名、三菱化学フーズ株式会社製)、ゼラチンとしてPS−21(商品名、新田ゼラチン株式会社製)、焼成カルシウムを表4に示す配合比で配合し、実施例1〜3および比較例1〜7のスラリーをそれぞれ調製した。ただし、比較例5では、乾燥卵白液と卵黄の組み合わせの代わりとして、同量の全卵を用いた。また、だし汁配合液は、配合前によく混合し、底部のものは用いないようにした。
続いて、カップの底部に竹の子、人参および椎茸を各一切れずつ置き、該カップ内に前記各スラリーを50gずつ入れて、85℃で17分間蒸し工程に供し、実施例1〜3および比較例1〜7の茶碗蒸しをそれぞれ製造した。
Figure 0004722825
Figure 0004722825
Figure 0004722825
Figure 0004722825
(茶碗蒸しの冷凍)
前記各茶碗蒸しについて、上面のドリップを、カップを斜めにしてカップ外に除去した後、粗熱をとって、−15℃まで急速冷凍した。そして、−25℃で24時間冷凍保存した。
(茶碗蒸しの解凍および加熱処理)
前記の各冷凍茶碗蒸しを解凍し、電子レンジで600W、1.5分の条件で加熱処理を行って、実施例1〜3および比較例1〜7の調理済み茶碗蒸しとした。
(調理済み茶碗蒸しの評価)
前記の各調理済み茶碗蒸しについて、離水、「す」の有無についての評価、食感(なめらかさ)、食感(一体感/ボディ感)についての官能評価を行った。その結果を表6に示す。なお、各評価における評価基準は以下に示す通りである。
離水:○・・・離水がほとんどない、△・・・わずかに離水がある、×・・・ドリップが出る
食感(なめらかさ):○・・・なめらかである、△・・・ざらつきを感じるが許容範囲内である、×・・・ざらざらした固さを感じる
食感(一体感/ボディ感):○・・・ボディ感、一体感があり、まとまった食感を感じる、△・・・ボディ感、一体感が弱く、まとまりがない、×・・・まとまりがなく、だらっとしている
なお、各冷凍茶碗蒸し中の各成分について、配合成分ごとにその量を換算して質量%表示としたものを表5に示す。
Figure 0004722825
Figure 0004722825
これらの結果から、本発明の卵加工食品である実施例1〜3については、離水および「す」が生じることも無く、食感も良好で、いずれの評価結果も満足できるものであり、特に、実施例1は、実施例2および3よりも食感がより一層優れたものであった。これに対し、焼成カルシウムを含有しない比較例1、加工デンプンを含有しない比較例2、ゼラチン含有量の低い比較例3、乾燥卵白および卵黄の組み合わせに代わり同量の全卵を用いた比較例5、焼成カルシウム含有量の多い比較例6は、いずれも「す」が生じ食感も劣り、評価結果は満足できるものではなかった。また、オリゴ糖を含有しない比較例4、乾燥卵白1および2のいずれにも該当しない乾燥卵白を用いた比較例7は、いずれも離水は生じなかったが、「す」が生じ、食感も必ずしも良好ではなく、評価結果は満足できるものではなかった。
本発明は、業務用または一般家庭用の卵加工食品、特に冷凍用卵加工食品に好適である。
乾燥卵白から得られた卵白ゲルの応力と歪率との関係の一例を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 乾燥卵白、卵黄および焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、
    前記焼成カルシウムの配合量が0.001〜0.06質量%であり、
    前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする卵加工食品。
    物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、応力1.3×10N/m以下でかつ歪率75%以下の範囲内において卵白ゲルが破断しない。
  2. 乾燥卵白、卵黄および焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、
    前記焼成カルシウムの配合量が0.001〜0.06質量%であり、
    前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする卵加工食品。
    物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、破断しない範囲における該卵白ゲルの応力/歪率の値が、2.2×10N/m以下である。
  3. 乾燥卵白、卵黄、オリゴ糖、ゼラチン、加工デンプンおよび焼成カルシウムを配合し、水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍して得られた卵加工食品であって、
    前記配合成分の割合が、乾燥卵白が1〜4質量%、卵黄が5〜30質量%、オリゴ糖が2〜12質量%、ゼラチンが0.9〜3.5質量%、加工デンプンが0.3〜1.5質量%、焼成カルシウムが0.001〜0.06質量%であることを特徴とする卵加工食品。
  4. 前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする請求項3に記載の卵加工食品。
    物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、応力1.3×10N/m以下でかつ歪率75%以下の範囲内において卵白ゲルが破断しない。
  5. 前記乾燥卵白が以下の物性を有することを特徴とする請求項3に記載の卵加工食品。
    物性:乾燥卵白を12.5質量%となるように水と混合し、次いで、80℃で15分間加熱処理して得られた卵白ゲルを−25〜−18℃で6時間以上冷凍した後、20℃で1時間解凍した卵白ゲルに外部から力を加えた時に、破断しない範囲における該卵白ゲルの応力/歪率の値が、2.2×10N/m以下である。
  6. 前記オリゴ糖が、デンプンをアミラーゼおよび/またはプルラナーゼで処理することにより得られたものである請求項3〜5のいずれか一項に記載の卵加工食品。
  7. 乾燥卵白を1〜4質量%、卵黄を5〜30質量%、オリゴ糖を2〜12質量%、ゼラチンを0.9〜3.5質量%、加工デンプンを0.3〜1.5質量%、焼成カルシウムを0.001〜0.06質量%となるように配合し、該配合物を水蒸気雰囲気下で加熱凝固させた後、冷凍することを特徴とする卵加工食品の製造方法。
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