JP4722526B2 - 抗菌性樹脂組成物を有する積層フィルムおよび積層体 - Google Patents

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本発明は、低温での熱ラミネーションが可能でエンボス加工が容易な、防カビ機能と汚れ防止機能を有する積層フィルムおよび該積層フィルムを有する積層体に関する。
近年、ポリ塩化ビニル樹脂層を主体とする樹脂成形物が、建築物の内装材として広く用いられている。しかしこれらポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙や、一般家庭、病院、医院、飲食店、工場、船舶、電車、自動車などの天井材、壁面材、床材、家具などに用いられる化粧板(以下壁紙類と略称する事がある)は、たばこの煙、手垢、落書き、各種食品中の色素などで汚染されやすい。またポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤が、壁紙類の表面にブリードアウトし、このブリードアウトした可塑剤に埃が付着することによって、ポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙類はさらに汚れ易くなる。一方、最近使用され始めてきたポリオレフィン樹脂を主体とする壁紙類の場合でも、可塑剤のブリードアウトの問題は少ないものの、上記の各種汚れで汚染されやすいのは同様である。
この問題に対し、近年、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略称する事がある)またはエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物からなるフィルムを、壁紙類の表面に積層する事により、耐汚染性を改善する技術が公知である(例えば、特許文献1 参照)。
また、EVOH組成物からなるフィルムを壁紙類と積層する際、両者の間の接着力を改善するため、イソシアネート基を含む反応型ポリウレタン系高分子や塩化ビニル系重合体とイソシアネート−ウレタン系化合物よりなる組成物を、EVOH組成物からなるフィルムと壁紙類の間に接着剤層として配する技術も公知である(例えば、特許文献2 参照)。
更に、EVOHまたはEVOH組成物からなるフィルムに、抗菌性ゼオライトを配合する事により、抗菌機能を付与する技術もまた公知である(例えば、特許文献3 参照)。また、同様に抗菌性の金属を有する無機オキソ酸塩を配合する事により、抗菌機能を付与する技術も知られている(例えば、特許文献4 参照)。
この発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
特許1863111号公報 特開昭60−239233号公報 特開平04−8951号公報 特開平06−263933号公報
上記の従来技術により、確かに汚れ防止機能・接着力良好で、抗菌機能を有する壁紙類を得る事はできる。しかし昨今の、「シックハウス症候群」と言う言葉に代表される、住居内環境に対する消費者の意識の高まりや、壁紙類製造工程での環境負荷物質排出量低減のため、汚れ防止機能に優れ、抗菌機能を有しつつ、有機溶剤を使用しない壁紙類が求められている。ところが、従来EVOH組成物と基材間の接着剤として好適に用いられているイソシアネート−ウレタン系化合物、あるいは塩化ビニル系重合体とイソシアネート−ウレタン系化合物よりなる組成物は、一般に有機溶剤系接着剤として知られている物であり、トルエン・キシレン・メチル−ブチルケトン・酢酸エチル・酢酸ブチルなどの有機溶剤が溶媒として使用されるため、これら接着剤を使用する場合、最終製品の壁紙類中に含まれる有機揮発成分(以下、VOCと略称する事がある)量を実質的に0にするのは非常に困難である。
そこで、ビニルアルコール系重合体樹脂組成物と無機系抗菌剤を含む組成物層と、水性エマルジョン系接着剤層を含む積層体からなる壁紙類を試作したところ、汚れ防止機能・接着力良好で、更にVOC量が実質的に0である積層体が得られた。ところが、この積層体の抗菌性能評価を行ったところ、従来の有機溶剤系接着剤を使用した積層体に比べ、抗菌性能が大幅に低下している事が判明した。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、ビニルアルコール系重合体樹脂組成物と無機系抗菌剤を含む組成物層と従来の有機系溶剤系接着剤層を用いた多層構造体が有する汚れ防止機能を保持し、かつ接着力良好で、VOC量が実質的に0であり、更に良好な抗菌性を有する多層フィルム、および上記した多層フィルムを基材に積層した壁紙類を提供することにある。
上記の課題を解決する本発明の多層フィルムは、ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層と、水性エマルジョン系接着剤(B1)と酸化剤(B2)を含む接着剤(B)層を有し、無機系抗菌剤(A2)が銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む無機系抗菌剤である多層フィルムである事を特徴とする。
本発明において、ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)がエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物である事が好ましい。
また、本発明において、ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、水酸基と反応性を有する官能基を含有するオレフィン系樹脂を含む組成物である事がより好ましい。
更に、本発明において、酸化剤(B2)が、少なくとも過酸化水素水、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類、硝酸塩類、及び有機パーオキサイド(有機過酸化物)からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤である事がより好ましい。
本発明において、組成物(A)と接着剤(B)とがアンカーコート剤(C)を介してなる多層フィルムである事も、好適である。
上記多層フィルムを基材(D)に積層してなる内装材も、本発明の好適な実施態様である。
本発明の多層フィルムを使用する事により、汚れ防止機能・接着力を保持しつつ、VOC量が実質的に0であり、かつ良好な抗菌性を有する多層フィルムを提供することが可能となる。
本発明で用いられるビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)の主成分としては、ビニルエステル重合体をケン化して得られるビニルアルコール系重合体樹脂(以下、PVA系樹脂と略称する事がある)が好ましい。PVA系樹脂の製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を単独または複数共重合することもできる。
さらに、本発明に用いられるPVA系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、特に限定はされないが、好ましくは90%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満では、汚れ防止機能や耐水性が不充分となるおそれがある。なおここで、PVAがケン化度の異なる2種類以上のPVA系樹脂からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
本発明で用いられるPVA系樹脂組成物(A1)が、EVOH組成物であれば、フィルムの耐水性が改善でき、また、溶融押出成形などの樹脂を溶融させての成型加工が可能となるため、より好適である。更に、上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物が、EVOHと、水酸基と反応性を有する官能基を含有するオレフィン系樹脂を含む組成物であれば、フィルム表面の光沢度を下げる事ができるので、一般的に低い光沢度が好まれる、住居等の内装材としてより好適である。
上記のEVOHのエチレン含有量は、特に限定はされないが、5〜60モル%であることが好ましい。エチレン含有量が60モル%を超える場合、得られるPVA系樹脂組成物(A1)の汚れ防止機能が不十分になるおそれがある。エチレン含有量の上限は57モル%以下であることがより好ましく、54モル%以下であることがさらに好ましく、51モル%以下であることが最適である。一方、エチレン含有量が5モル%に満たない場合、PVA系樹脂組成物(A1)の耐水性が不充分になるおそれがある。更に、エチレン含有量が低いほどEVOHの融点が高くなる一方、分解開始温度が低くなる傾向にあるため、溶融成形が可能な運転条件の温度範囲が狭くなる。この観点より、EVOHのエチレン含有量の下限はより好適には8モル%以上であり、さらに好適には12モル%以上であり、特に好ましくは15モル%以上であり、最適には20モル%以上である。なお、EVOHが、エチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHからなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。
上記EVOHのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、特に限定はされないが、0.3〜150g/10分が好適であり、より好適には0.5〜120g/10分、更に好適には0.8〜90g/10分、特に好適には1〜60g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。MFRの異なる2種以上のEVOHを混合して用いることもできる。
また、上記のEVOHのビニルエステル成分のケン化度は好ましくは90%以上である。より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満では、汚れ防止機能が不充分となるおそれがある。なおここで、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
PVAのケン化度や、EVOHのエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
一方、上記の水酸基と反応性を有する官能基を含有するオレフィン系樹脂(以下、変性ポリオレフィンと略称する事がある)としては、特に限定はされないが、高密度もしくは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などの単独重合体、およびエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどから選ばれた少なくとも1種のα−オレフィン同士の共重合体あるいはα−オレフィンと他の共重合体成分との共重合体などを、カルボン酸、カルボン酸塩、およびボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基、イソシアネート基、アミド基、エポキシ基から選ばれた少なくとも1種の官能基で変性したものが例示される。これらの内、カルボン酸、カルボン酸塩、およびボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基の、少なくとも1種類で変性されたポリオレフィンが、EVOHへの分散性および経済性より好ましい。EVOHと変性ポリオレフィンの配合割合は、好ましくはEVOH98〜50重量%と変性ポリオレフィン2〜50重量%、より好ましくはEVOH97〜60重量%と変性ポリオレフィン3〜40重量%、更に好ましくはEVOH96〜70重量%と変性ポリオレフィン4〜30重量%である。変性ポリオレフィン含量が50重量%を超えると汚れ防止機能が不十分になり、また製膜性が悪くなりフィルムに孔が開くなどの欠点が出やすい。変性ポリオレフィン含量が2重量%に満たない場合は、光沢度の低減効果が不十分となる。
変性の方法としては、上記官能基を有するビニル化合物を共重合する方法や、ポリオレフィン中に微量存在する二重結合に付加させる方法、グラフト化して側鎖に官能基を導入する方法などが例示される。共重合以外の変性方法については、溶液中で反応させる方法や、押出機内で反応させる方法など、特に限定はされない。
これらの変性ポリオレフィン樹脂は、単独、または複数を組み合わせて使用しても良い。
本発明における無機系抗菌剤(A2)としては、必ずしも限定されるものではないが、銀、銅、亜鉛などの金属イオンを含む化合物や、有機系抗菌剤を無機化合物固体に担持させたものが例示される。これらの内、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンの内から1種、あるいは複数のイオンを含有する無機系抗菌剤が、少量の添加で数多くの細菌・カビに効果がある事から、より好適である。これらの無機系抗菌剤は、単独、または複数を組み合わせて使用しても良い。PVA系樹脂組成物(A1)に対する無機系抗菌剤(A2)の配合比は、特に限定はされないが、PVA系樹脂組成物(A1)100重量部に対して0.01〜5重量部が好適であり、より好ましくは0.03〜3重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部、最も好適には0.1〜1.5重量部である。
本発明におけるPVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)に、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩などのホウ素化合物や、カルボン酸/カルボン酸塩類などのカルボン酸化合物、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩などのリン酸化合物を配合する事ができる。これらの化合物を、単独あるいは複数配合する事により、組成物の耐水性・機械物性、あるいは溶融成形時の熱安定性などを改善する事ができる。必ずしも限定はされないが、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、カルボン酸化合物の含有量は好ましくは5〜2000ppm、リン酸化合物の含有量は好ましくはリン酸根換算で5〜300ppmである。
また、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、本発明における組成物(A)に、可塑剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、充填剤、各種繊維等の補強剤等を適量添加することも可能である。この時、本発明の目的を阻害しない範囲で、これら添加剤の分散性を向上させるため、高級脂肪酸などの分散剤を添加しても良い。更に、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、本発明に用いられる組成物(A)として、水酸基と反応性を有する官能基を含有するオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合したものを用いることも可能である。熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、およびポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種の樹脂が用いられる。
本発明における水性エマルジョン系接着剤(B1)は、PVA系樹脂組成物(A1)と壁紙類の基材(D)となるポリ塩化ビニルやポリオレフィンの両方に接着性を有していれば、特に限定はされないが、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルの群から選ばれる少なくとも2種のモノマーを共重合したポリマーの水性エマルジョンが好適な接着剤として例示される。この水性エマルジョン系接着剤(B1)は、単独、または複数の共重合ポリマーを混合、あるいは2層以上の複数の層を形成させて使用しても良い。
これらの水性エマルジョンは、通常ポリビニルアルコールなどを保護コロイドとして、レドックス触媒などを使用して製造される。詳細は不明だが、この水性エマルジョンに含有される、還元性の残留触媒などが、抗菌剤に含まれる金属イオンの還元、あるいは抗菌性成分の分解をもたらす事により、抗菌剤を失活させているのではないかと推定している。
本発明における酸化剤(B2)は、必ずしも限定されるものではないが、過酸化水素水、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類、硝酸塩類から選ばれるの無機系酸化剤や、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ヘキシルヒドロパーオキサイドなどの有機パーオキサイド(有機過酸化物)が例示される。これらの内、無機系酸化剤については、過酸化水素水が着色の懸念がない事、および過剰な過酸化水素は揮発して悪影響を及ぼしにくい事から、好適である。また、有機系酸化剤については、10時間の半減期を得る温度が100℃以上の比較的安定性の高いものを使用する事が、取扱いおよび安全上の観点からみて好適である。これらの有機系酸化剤の例としては、上記のt−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ヘキシルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの酸化剤は、単独または複数を組み合わせて使用しても良い。
これら酸化剤が、水性エマルジョン系接着剤(B1)中に含まれる還元性の抗菌剤を失活させる成分を酸化・無害化する事により、抗菌剤の失活を抑制していると推定される。酸化剤(B2)の好適な含有量は、例えば水性エマルジョン系接着剤(B1)中の抗菌剤を失活させる成分の含有量等により異なることが予想されるため、限定する事は難しいが、水性エマルジョン系接着剤(B1)中の固形分に対して1〜2000μmol/gが好ましい。より好適には2〜1500μmol/g、更に好適には5〜1000μmol/g、最も好適には10〜700μmol/gである。酸化剤(B2)の含有量が1μmol/gに満たない場合は、抗菌性が不十分になるおそれがあり、2000μmol/gを超える場合は、酸化剤がポリマーそのものを劣化させ、着色や機械物性の低下をもたらす可能性がある。
また、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、本発明における接着剤(B)に、可塑剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、充填剤、各種繊維等の補強剤、等を適量添加することも可能である。
接着剤(B)層と、PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層は、その界面を介して接するのみであり、抗菌性評価を行う多層フィルム表面は、接着剤との界面の反対側の組成物(A)層の表面であるにもかかわらず、接着剤(B)層の組成が抗菌性に影響を与えるメカニズムの明確ではない。詳細は不明だが、細菌・カビ等が繁殖しやすい高温・多湿の条件では、組成物(A)層が吸湿して水分を多量に含む事により、接着剤(B)層中の抗菌剤を失活させる成分や酸化剤が比較的自由に動いて、組成物(A)層表面の抗菌性に影響を及ぼしている可能性が推定される。有機溶剤系接着剤を用いた場合、EVOH層に対する透過性は水と比較して著しく減少するため、上記したような接着剤との界面の反対側の組成物(A)層の表面の抗菌性に与える影響は非常に小さくなり、これまでこのような現象が問題とされていなかったものと推定される。
本発明において、水性エマルジョン系接着剤(B1)は、PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層と、壁紙類の基材(D)であるポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン系樹脂、双方と接着性を有するが、一般に、壁紙類の基材(D)と接着剤(B)層間の接着力に比べて、組成物(A)層と接着剤(B)層間の接着力の方が弱い場合がある。このような時に、組成物(A)層と接着剤(B)層との間にアンカーコート剤(C)層を設ける事が好適である。アンカーコート剤(C)は、接着剤(B)と組成物(A)の両方に良好な接着性を示す物であれば特に限定はされないが、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂やポリエステル系ポリウレタン樹脂およびそれらの混合物などが例示される。アンカーコート剤(C)についても、本発明の目的に鑑みて、有機溶剤を使用しないノンソルベント(水系)タイプのアンカーコート剤が好適である。通常、このようなアンカーコート剤では、ポリエーテル系あるいはポリエステル系ポリマーと、イソシアネート基を2つ以上有する硬化剤との組合せが用いられる事が多い。アンカーコート剤(C)は、単独または複数のものを混合、あるいは2層以上の複数の層を形成させて使用しても良い。
本発明の、PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層と、水性エマルジョン系接着剤(B1)と酸化剤(B2)を含む接着剤(B)層を有する多層フィルムの製造法について、以下に述べる。
PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層からなるフィルムの成形方法は、特に限定はされないが、水・アルコールなどの適当な溶媒に溶解させ、適当な支持体(ガラス板、キャストロールなど)の上に流延・乾燥させる方法や、スリットから貧溶媒中に溶液を押出して凝固させる方法が例示される。また、組成物(A)が溶融成形可能であるならば、一軸あるいは二軸押出機を使用した通常の押出成形法によりフィルム形状に加工する方法が、所要工数・コスト的に好適である。その他、場合に応じてカレンダー成形など、公知の方法でフィルム形状に加工しても良い。組成物(A)層の厚みは、特に限定はされないが、1〜2000μmが好ましい。組成物(A)層の厚みが1μmに満たない場合は、引っかき傷などにより容易に組成物(A)層が破れやすく、その部分の汚れ防止機能・抗菌性などが失われやすい。組成物(A)層の厚みが2000μmを超える場合はフィルムが硬くなりすぎて、ハンドリングが困難になるおそれがある。組成物(A)層のより好適な厚みは3〜1000μm、更に好適には5〜500μm、最も好適には7〜250μmである。
PVA系樹脂組成物(A1)に無機系抗菌剤(A2)を含有させる方法としては、特に限定はされないが、PVA系樹脂組成物(A1)を水・アルコールなどの適当な溶媒に溶解させ、その溶液に無機系抗菌剤(A2)を縣濁させる方法が例示される。また、PVA系樹脂組成物(A1)が溶融成形可能な場合は、一軸あるいは二軸押出機を使用した通常の押出成形法により組成物(A)を得る方法が挙げられる。この場合、一度組成物(A)のペレットを得てから、そのペレットを溶融製膜設備に投入してフィルム形状に加工しても良いし、ペレットを経ずに直接スリットダイから押出してフィルム形状にしても良い。更に、PVA系樹脂組成物(A1)に高濃度の無機系抗菌剤(A2)を添加したマスターバッチを作成し、このマスターバッチとPVA系樹脂組成物(A1)を所要量、溶融製膜設備に投入しても良い。あるいは、無機系抗菌剤(A2)を含まないPVA系樹脂組成物(A1)のフィルムを作成し、その上に適当な溶媒に縣濁させた無機系抗菌剤(A2)をコート・乾燥することにより、無機系抗菌剤(A2)を含有するPVA系樹脂組成物(A1)フィルムを得る方法も例示する事ができる。この場合、必要に応じて、無機系抗菌剤(A2)をPVA系樹脂組成物(A1)のフィルムに固着させるために、PVA系樹脂組成物(A1)の汚れ防止機能を損なわない範囲で、水溶性ポリマー等のバインダーを使用しても良い。これらの方法の中では、PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を溶融製膜設備に投入してフィルム形状に加工する方法が、所要工数・コスト面から好適である。
本発明において、酸化剤(B2)を水性エマルジョン系接着剤(B1)に含有させる方法としては、特に限定はされないが、酸化剤(B2)を水・アルコールなどの適当な溶媒に溶解させ、その溶液を水性エマルジョン系接着剤(B1)に添加する方法、水性エマルジョン系接着剤(B1)を壁紙類の基材(D)、あるいはPVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層の上にコート・乾燥した後、酸化剤(B2)を溶解・縣濁させた液を水性エマルジョン系接着剤(B1)層にコート・乾燥する、あるいは酸化剤(B2)を溶解・縣濁させた液中に浸漬して酸化剤(B2)を含浸させる方法などが例示される。これらの内、酸化剤(B2)を水・アルコールなどの適当な溶媒に溶解させ、その溶液を水性エマルジョン系接着剤(B1)に添加する方法が簡便であり、好ましい。
本発明において、有機パーオキサイド(有機過酸化物)を酸化剤(B2)として使用する場合には、激烈な分解による爆発事故の可能性があるため、取扱い時の温度管理に十分な注意を払う必要がある。使用する有機パーオキサイド活性にもよるが、保管は冷蔵庫あるいは冷凍庫内で行い、室温を大きく超える温度では取扱わない事が望ましい。
本発明において、PVA系樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層と、水性エマルジョン系接着剤(B1)と酸化剤(B2)を含む接着剤(B)層を積層する方法は、特に限定はされないが、組成物(A)層に接着剤(B)をコート・乾燥する方法、壁紙類の基材(D)に接着剤(B)をコート・乾燥させた後、組成物(A)層と熱ラミネーションする方法、接着剤(B)を適当な支持体(テフロン板など)の上に流延し乾燥させて、接着剤(B)のフィルムを得た後、組成物(A)層と熱ラミネーションする方法などが例示される。これらの内、組成物(A)層に接着剤(B)をコート・乾燥する方法が作業的に簡便で、好ましい。接着剤(B)層の厚みは、特に限定はされないが、0.03〜500μmが好ましい。接着剤(B)層の厚みが0.03μmに満たない場合は、組成物(A)層と壁紙類の基材(D)との間の接着力が不十分になるおそれがある。接着剤(B)層の厚みが500μmを超える場合は、フィルム間のブロッキング等のトラブルを起こしやすい。接着剤(B)層のより好適な厚みは0.1〜200μm、更に好適には0.5〜100μm、最も好適には1〜50μmである。
また、本発明においては前記のように組成物(A)層と接着剤(B)層との間の接着力を改善するために、組成物(A)層と接着剤(B)層との間にアンカーコート剤(C)層を設ける事ができる。組成物(A)層と接着剤(B)層の間にアンカーコート剤(C)層を積層する方法は、特に限定はされないが、組成物(A)層の上にアンカーコート剤(C)をコート・乾燥させた後、その上に接着剤(B)をコート・乾燥する方法、壁紙類の基材(D)の上に接着剤(B)をコート・乾燥させた後、アンカーコート剤(C)をコート・乾燥させた多層体を、組成物(A)層と熱ラミネーションする方法、接着剤(B)またはアンカーコート剤(C)を適当な支持体(テフロン板など)の上に流延し乾燥させて、接着剤(B)またはアンカーコート剤(C)のフィルムを得た後、その上にアンカーコート剤(C)または接着剤(B)をコート・乾燥させた多層体を、組成物(A)層と熱ラミネーションする方法などが例示される。これらの内、組成物(A)層の上にアンカーコート剤(C)をコート・乾燥させた後、その上に接着剤(B)をコート・乾燥する方法が作業的に簡便で、好ましい。アンカーコート剤(C)層の厚みは、特に限定はされないが、0.01〜100μmが好ましい。アンカーコート剤(C)層の厚みが0.01μmに満たない場合は、組成物(A)層と接着剤(B)層との間の接着力の改善が不十分になるおそれがある。アンカーコート剤(C)層の厚みが100μmを超える場合は、フィルム間のブロッキング等のトラブルを起こしやすい。アンカーコート剤(C)層のより好適な厚みは0.02〜50μm、更に好適には0.05〜10μm、最も好適には0.1〜5μmである。組成物(A)層と接着剤(B)層との間の接着力を十分に改善させるには、アンカーコート剤を十分に硬化させる事が重要である。これは、組成物(A)層とアンカーコート剤(C)層と接着剤(B)層を積層した後、速やかに25〜45℃の温度で16時間以上保存させることにより達成される。
アンカーコート剤(C)層を設ける事により、組成物(A)層と接着剤(B)層とは直接接触しなくなるが、水性エマルジョン系接着剤(B1)に酸化剤(B2)を含有させていない場合、細菌・カビが繁殖しやすい高温・多湿の条件では、抗菌剤を失活させる成分などは比較的容易に親水性のアンカーコート剤(C)層を透過して、接着剤(B)層から組成物(A)層に移行し、抗菌性に影響与えるものと推定される。
発明における壁紙類の基材(D)としては、特に限定されるものではないが、代表例としては可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層を主体とする壁紙があげられる。ここで可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層を主体とする壁紙とは、難燃紙、不織布、ガラス繊維、アスベスト紙などからなる支持体の上に、ポリ塩化ビニル樹脂に、可塑剤、必要に応じ、顔料、充填剤、安定剤などを配合した組成物をカレンダー法、コーティング法などにて積層した物、さらにはこれら積層物の上に印刷加工が施された物、また発泡剤を配合させることにより、最終製品で1.5〜15倍にポリ塩化ビニル樹脂を発泡させた物などがあげられる。また本発明において、他の積層体の例として本発明の組成物層を積層した化粧板があげられる。ここで化粧板とは、プリント化粧板、化粧石膏ボード、塩ビ化粧板、塩ビ鋼板、塩ビ不燃板などを総称した物である。プリント化粧板とは、薄葉紙などに印刷を施し、これを合板、パーティクルボードなどからなる支持体に積層した物である。また立体感を強調するために、エンボス加工が施されていることがある。また化粧石膏ボード、塩ビ化粧板、塩ビ鋼板、塩ビ不燃板などとは、可塑剤などを含有するポリ塩化ビニル樹脂製のシートに印刷を施し、これを石膏ボード、合板、パーティクルボード、鋼板、コンクリート板などからなる支持体に積層した物である。プリント化粧板の場合と同様、立体感を強調するために、エンボス加工が施されていることがある。
また、発明における壁紙類の基材(D)として、特に限定されるものではないが、近年のポリ塩化ビニルに関する環境問題から使用量が徐々に増加している、ポリオレフィン系樹脂を主体としたオレフィン壁紙を使用することもできる。このオレフィン壁紙とは、エチレンー酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂を使用して、上記のポリ塩化ビニルを主体とする壁紙と同様の方法で成形した物である。但し、ポリ塩化ビニル樹脂を主体とする壁紙との違いとして、一般には上記のポリ塩化ビニル樹脂用可塑剤を含有せず、また、ポリオレフィン系樹脂はポリ塩化ビニル樹脂より一般に難燃性に劣るため、難燃剤や無機系充填剤を添加する事により、難燃性を改善する事が多い。
本発明において、壁紙類の基材(D)と組成物(A)層・接着剤(B)層との積層方法は、特に限定はされないが、上述のように、組成物(A)層と接着剤(B)層からなる多層フィルムを得た後、これを基材(D)上に熱ラミネーションする方法や、基材(D)の上に接着剤(B)を積層した後、組成物(A)層を熱ラミネーションする方法などが例示される。これらの内、組成物(A)層と接着剤(B)層からなる多層フィルムを得た後、これを基材(D)上に熱ラミネーションする方法が、操作上簡便で好ましい。また、この時上述の方法で、組成物(A)層と接着剤(B)層の間に、アンカーコート剤(C)層を設ける事もできる。
なお、これら壁紙類の基材(D)は本発明の目的に鑑み、VOCが実質的に0である、揮発性の有機化合物成分を含有しない物を使用する事が望ましい。
この様にして得られた本発明の多層フィルムと基材を含む内装材は、VOCが実質的に0であり、かつ良好な汚れ防止機能と抗菌機能を保持するため、抗菌性壁紙、抗菌性化粧板として非常に有用である。本発明の多層フィルムを含む内装剤は、前記したとおり壁紙または化粧板として特に有効であるが、他の基材に積層した積層体としても有効に用いられる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、以下「%」、「部」とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。
ポリ酢酸ビニル重合体のケン化により得られたポリビニルアルコール重合体である株式会社クラレ製PVA−124H(ケン化度99モル%以上)15gを、イオン交換水85gに入れ、90℃に加熱しながら1時間撹拌して、15%のPVA水溶液を得た。この水溶液を室温にまで冷却した後、株式会社シナネンゼオミック製ゼオミックAV10D(銀ゼオライト)を0.12g添加してよく撹拌し、水溶液中に均一に縣濁させた。この抗菌剤を含む溶液を、板ガラス上に貼り付けた100μm厚みのポリエチレンーテレフタレート製フィルムの上に流延し、80℃で1時間乾燥した後、ポリエチレンーテレフタレート製フィルムから剥がして、PVA樹脂と無機系抗菌剤を含むフィルムを得た。このフィルムを真空乾燥機に入れて40℃で2日間乾燥した後、結晶化を促進するため160℃で3分間熱処理した。このフィルムの厚みは15μmであった。
0.5gの三井武田ケミカル株式会社製タケネートWD725(硬化剤)に脱イオン水25gを添加し、よく撹拌してエマルジョン化した。これに、三井武田ケミカル株式会社製タケラックW605(水系ウレタン樹脂)を0.5g添加し、マグネティックスターラーを用いて撹拌して、アンカーコート剤の水分散液を得た。これを、4番のバーコーターを用いて、上記のPVA樹脂と無機系抗菌剤を含むフィルム上に塗布し、80℃の乾燥機で1分間乾燥した。乾燥後のアンカーコート剤層の厚みは0.3μmであった。
住化ケムテックス株式会社製スミカフレックス830(エチレンー塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体エマルジョン、固形分50%)10gを、20gの脱イオン水で希釈し、それに3%の過酸化水素水を0.2g添加して均一になるまで撹拌した。この時、過酸化水素の接着剤固形分に対する添加量は、35.3μmol/gとなる。この酸化剤を含む接着剤を、8番のバーコーターを用いて、上のPVA樹脂と無機系抗菌剤を含むフィルム上に塗布したアンカーコート剤層の上に塗布し、80℃の乾燥機で3分間乾燥して、PVA樹脂と無機系抗菌剤を含む層と、水性エマルジョン系接着剤と酸化剤を含む接着剤の層を有する多層フィルムを得た。乾燥後の接着剤層の厚みは3μmであった。
以上のようにして得られた多層フィルムを用いて、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度を、以下の基準に従って評価した。
<抗菌性>
JIS Z2801に規定の方法で評価した。評価条件は以下の通り。
・菌液濃度:1/500NB
・菌液滴下量:0.4ml
・保存温度:35±1℃
・保存湿度:>90%RH
・保存時間:24±1時間
・使用細菌:黄色ブドウ球菌(NBRC12732)、大腸菌(NBRC3972)
・サンプル数:n=3。
判定 基準
A(合格) :黄色ブドウ球菌、大腸菌、いずれの菌の数も検出限界未満
B(合格) :黄色ブドウ球菌、大腸菌のいずれかまたは両方の菌数が検出限界以上で対照区の1/100以下。
C(不合格):黄色ブドウ球菌、大腸菌のいずれかまたは両方の菌数が対照区の1/100を超える
<汚れ防止機能>
2cm×2cmの大きさに切り取った多層フィルムを、油性の赤色インキ(三菱鉛筆(株)製三菱マーカー)、24時間後にベンジンを付けたガーゼで拭き取った。また醤油(キッコーマン(株)製キッコーマン濃口)を塗布し、24時間後にライオン株式会社のママレモン(台所用合成洗剤)で湿らせたガーゼで拭き取った。
判定 基準
A(合格) :赤色インク、醤油、いずれも全く汚れが残らない
B(合格) :赤色インク、醤油、いずれか一方または両方で、気にならない程度の汚れが残る
C(不合格):赤色インク、醤油、いずれか一方または両方で、明らかな汚れが残る
<VOC>
壁紙製品規格協議会が規定しているSV規格の6.3.9に規定されている、残留VOCの定量法に準拠して評価を実施した。
判定 基準
A(合格) :多層フィルム中の残留TVOC(トルエン換算のVOC)量が検出限界以下
B(合格) :多層フィルム中の残留TVOC量が50μg/g以下
C(不合格):多層フィルム中の残留TVOC量が50μg/gを超える
<接着性>
多層フィルムを、ナンカイテクナート株式会社製非発泡塩化ビニル壁紙基材に、ホットプレス試験機で、圧力1Kgf/cm、温度130℃、加熱時間1秒の条件で熱ラミネートして、室温に冷却後、15mm幅にサンプリングして、多層フィルム/塩化ビニル壁紙基材間のT字剥離強度を測定した。
判定 基準
A(合格) :剥離強度が300gf/15mm以上
B(合格) :剥離強度が100gf/15mm以上、300gf/15mm未満
C(不合格):剥離強度が100gf/15mm未満
<耐水性>
多層フィルムを、90℃に加熱した脱イオン水中に5分間浸漬し、乾いた布をこすらずに押し当てて表面の水を吸い取った後、表面(接着剤を塗布した面の反対側の面)を指でこすった時の感触で評価した。但し、この項目は、本発明で改善を試みる性能項目ではないので、合否判定の基準とはしなかった。
判定 基準
A :表面にぬめりが全く無い
B :表面に若干ぬめりがあるが、フィルム形態は保持している
C :表面のぬめりがひどく、一部でフィルムの破れが発生する
<光沢度>
多層フィルム表面の光沢を目視で判定した。但し、この項目は、本発明で改善を試みる性能項目ではないので、合否判定の基準とはしなかった。
判定 基準
A :土壁のようにつやが無く、蛍光灯の光などをほとんど反射しない
B :すりガラス状で、わずかに蛍光灯の光などを反射する
C :光沢があり、蛍光灯の光などを反射させた時、明瞭に光源の形状が判る。
上記基準に基づき、本実施例で得られた多層フィルムを用いて、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度を評価した。抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性はいずれもA判定、耐水性はB判定、光沢度はC判定であった。
エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化したエチレンビニルアルコール共重合体である、株式会社クラレ製エバールE105A(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%、MFR(190℃、2160g荷重下)5g/10分)を100部と株式会社シナネンゼオミック製ゼオミックAV10D(銀ゼオライト)0.5部を、タンブラーでドライブレンドし、小型二軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル小型押出機2D25W型)に投入してブレンドペレットを得た。押出温度は210℃、スクリュー回転数は150rpm、吐出量は約6kg/時であった。このペレットを乾燥機に入れ、80℃で8時間乾燥した。乾燥後のペレットの水分率は0.1%であった。乾燥後のペレットを下記の条件で溶融押出キャスト製膜して、EVOH樹脂と無機系抗菌剤を含むフィルムを得た。
押出機:東洋精機製ラボプラストミル20mm一軸押出機
ダイ:300mm幅コートハンガータイプダイ
押出温度:210℃
スクリーン:50/100/50メッシュ
スクリュー回転数:40rpm
吐出量:1.1kg/時
キャストロール温度:50℃
ライン速度:2.5m/分
フィルム厚み:22μm
このフィルムに、実施例1と同様にしてアンカーコート剤、接着剤を積層して得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
株式会社クラレ製エバールE105Aを100部使用する代わりに、エバールE105Aを85部と、株式会社三井化学製アドマーNF−550(無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン)を15部ドライブレンドしたものを用いた以外は、実施例2と同様にして、多層フィルム得た。このフィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
アンカーコート剤を使用しなかった以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
株式会社シナネンゼオミック製ゼオミックAV10D(銀ゼオライト)の添加量を0.04部とした以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
銀ゼオライトを添加しない以外は、実施例3と同様にして、無機系抗菌剤を含まないEVOH樹脂フィルムを得た。このフィルムに、メタノールで20倍に希釈した触媒化成工業株式会社製ATOMY BALL−S(銀/酸化チタン組成物)を、12番のバーコーターを用いて塗布し、乾燥機に入れて80℃で5分間乾燥し、EVOH樹脂と無機系抗菌剤を含むフィルムを得た。乾燥後のエバール樹脂組成物100部に対する銀/酸化チタン組成物の量は、0.54部であった。このフィルムに、実施例1と同様にしてアンカーコート剤、接着剤を積層して得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
3%過酸化水素水の添加量を0.4部(過酸化水素の接着剤固形分に対する添加量は7.6μmol/g)とした以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
3%過酸化水素水を0.2g添加する代わりにt−ブチルヒドロペルオキシドを6.75%含有する水との混和物を0.2g添加(t−ブチルヒドロペルオキシドの接着剤固形分に対する添加量は30μmol/g)した以外は、実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
エバールE105Aを55部と、アドマーNF−550を45部ドライブレンドしたものを用いた以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
比較例1
EVOHに無機系抗菌剤を添加しなかった以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
比較例2
水性エマルジョン系接着剤に酸化剤を添加しなかった以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
比較例3
水性エマルジョン系接着剤およびアンカーコート剤を使用しなかった以外は実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
比較例4
水性エマルジョン系接着剤の代わりに有機溶剤系である大日本インキ化学株式会社製ディックシールLA−100ZとKP−90(硬化剤)を100部対0.6部で混合した接着剤を使用して、酸化剤を使用しなかった以外は実施例4と同様にして得た多層フィルムを得た。この時、溶媒はメチルーエチルケトンと酢酸ブチルの50/50部の混合溶媒を使用し、接着剤層の厚みは3μmであった。この多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
比較例5
EVOHを使用する代わりに、水酸基と反応性を有する官能基を含有しないオレフィン系樹脂である日本ポリエチレン株式会社ノバテックLC600A(低密度ポリエチレン樹脂)を使用した以外は、実施例3と同様にして得た多層フィルムを用い、抗菌性・汚れ防止機能・VOC・接着性・耐水性・光沢度について評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0004722526
実施例1〜9の本発明の多層フィルムは、VOCが実質的に0であり、かつ良好な汚れ防止機能と抗菌機能を保持している。エチレンを共重合していないPVAを用いた実施例1では耐水性が若干劣り、変性ポリオレフィン樹脂を含有しない実施例1,2では光沢度が高かった。また、アンカーコート剤を使用しない実施例4では接着性が若干劣り、無機系抗菌剤の添加量が少ない実施例5や、酸化剤の量が少ない実施例7では若干抗菌性が劣っていた。更に、変性ポリオレフィンの含有量が多い実施例9では、若干汚れ防止機能が劣っていた。
それに対して、無機系抗菌剤を含有しない比較例1や、酸化剤を含有しない比較例2では、抗菌性が不良であった。また、接着剤層・アンカーコート剤層を有しない比較例3では、接着性が不良であり、有機溶剤系の接着剤を用いた比較例4では、VOC量が多く不良であった。更に、ビニルアルコール系重合体の代わりに低密度ポリエチレンを用いた比較例5では、汚れ防止機能が明らかに不良であった。
本発明の多層フィルムを基材に積層した壁紙類は、汚れ防止機能・接着力良好でVOC量が実質的に0である内装材として、住居等に利用される。


Claims (7)

  1. ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)と無機系抗菌剤(A2)を含む組成物(A)層と、水性エマルジョン系接着剤(B1)と酸化剤(B2)を含む接着剤(B)層を有し、無機系抗菌剤(A2)が銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む無機系抗菌剤である多層フィルム。
  2. ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物を含む請求項1に記載の多層フィルム。
  3. ビニルアルコール系重合体樹脂組成物(A1)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、水酸基と反応性を有する官能基を含有するオレフィン系樹脂を含む組成物である請求項1または2に記載の多層フィルム。
  4. 水性エマルジョン系接着剤(B1)が、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルの群から選ばれる少なくとも2種のモノマーを共重合したポリマーを含む請求項1〜のいずれか1項に記載の多層フィルム。
  5. 酸化剤(B2)が、少なくとも過酸化水素水、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類、硝酸塩類、及び有機パーオキサイド(有機過酸化物)からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の多層フィルム。
  6. 組成物(A)と接着剤(B)とがアンカーコート剤(C)を介してなる請求項1〜のいずれか1項に記載の多層フィルム。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の多層フィルムと基材(D)を含む内装材。
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