JP4059561B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アセトアセチル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、AA化EVOHと略記する)を用いた積層体に関し、更に詳しくは各種基材、接着剤等から発生するホルムアルデヒドを吸着し、かつ可塑剤移行防止、汚れ防止に優れ、特に壁紙用途に有用な積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、塩化ビニル系樹脂のシートやフィルムは、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シート、農業用資材、自動車の内装用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)等に利用されており、更にはデスクマット、ファイル表紙、手帳表紙等の事務用品や文房具等にも多用されている。
しかしながら、かかる塩化ビニル系樹脂中には多量の可塑剤が含有されており、塩化ビニル系樹脂中の可塑剤の悪影響を防ぐために塩化ビニル系樹脂層にEVOHを積層した壁紙(実公平2−47015号公報)や可塑剤を25〜55重量%含有するポリ塩化ビニル系フィルムに2〜50μm厚みのEVOHを積層した積層体(特開昭60−224542号公報)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のいずれの積層体(壁紙)も汚染防止、可塑剤移行防止の効果は認められるものの、近年非常に問題視されているホルムアルデヒドの低減効果については効果を発しないことが判明した。
【0004】
ホルムアルデヒドは低分子の合成原料や高分子樹脂の製造原料としても多量に使用されており、これから得られた樹脂、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂やメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グアナミン−ホルムアルデヒド樹脂等は接着加工、成形加工、紙加工、繊維加工、塗料、化粧板等の広汎な用途に使用されているが、かかる樹脂を製造する際あるいは樹脂を加工する際に、しばしばホルムアルデヒドが僅かながら雰囲気中に逸散し刺激臭が漂うという問題が発生し、更には、かかる樹脂を使用して得られる各種加工製品もホルムアルデヒドを発生する傾向があり問題とされている。
【0005】
又、上記樹脂からなる接着剤等を使用しない木材にもホルムアルデヒドが含まれており、かかる木材からも微量のホルムアルデヒドが気中に放散することが知られている。
ホルムアルデヒドは人体に有害であり、空気中10ppm以上存在するとその刺激臭に耐えられなくなるものであり、加工製品や日常生活と密接に関連している建材、内装材、機器、衣料、自動車、衛生材、雑貨、食品等から発生するホルムアルデヒドを低減させる方法が強く求められているのが実情である。
【0006】
そこで、本発明では、ホルムアルデヒドを効率良く低減させ、室内へのホルムアルデヒドの移行が防止でき、かつ塩化ビニル系樹脂フィルム等からの可塑剤移行防止性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等はかかる事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂(A)層に、エチレン含有量が20〜50モル%のAA化EVOH(B)の、水の含有量が30〜70重量%である水とアルコールの混合溶媒溶液をコーティングしてなる積層体が上記目的に合致することを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられるが、中でも塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、内装材用途や農業用フィルム用途には特に塩化ビニル系樹脂が好ましく、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0009】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、(直鎖状)低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、酢酸ビニルやアクリル酸エステルあるいはブテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン類を共重合したポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト共重合したポリプロピレン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン及び上記ポリオレフィンに不飽和カルボン酸やその酸無水物、ビニルシラン系化合物、エポキシ基含有化合物等を共重合あるいはグラフト重合してなる変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、(直鎖状)低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト共重合体したポリプロピレン、α−オレフィン類を共重合したポリプロピレン等のポリプロピレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体等が好適に使用される。
【0010】
本発明で用いるAA化EVOH(B)を得る方法としては、特に制限されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)とジケテンを反応させる方法、EVOHをアセト酢酸エステルと反応させてエステル交換する方法や、エチレンと酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルを共重合させる方法等、いずれの方法で製造しても良いが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化EVOHが得られる点から、EVOHとジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。EVOHとジケテンを反応させる方法としては、EVOHとガス状あるいは液状のジケテンを直接反応させても良いし、有機酸をEVOHに予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下で液状又はガス状のジケテンを噴霧、反応するか、又はEVOHに有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応するか、酢酸エステル系溶媒、有機酸、EVOHの混合系中にジケテンを滴下又は添加する等の方法が用いられる。
【0011】
上記AA化EVOH(B)を得る際の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置であれば充分である。例えば、通常の反応型ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置が挙げられる。
【0012】
上記EVOHには更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーを含んでいても差し支えない。又、本発明の効果を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等の「後変性」されても差し支えない。
【0013】
上記AA化EVOH(B)において、本発明では、特にエチレン含有量が20〜50モル%であり、ケン化度90モル%以上、好ましくは95モル%以上、アセトアセチル基含有量が0.5〜15モル%、好ましくは3〜10モル%であることが好ましい。
エチレン含有量が10モル%未満では耐汚染性は不充分となり、60モル%を越えると可塑剤の移行防止能が低下することとなる。ケン化度が90モル%未満では可塑剤の移行防止能が低下することとなる。更にアセトアセチル基含有量が0.5モル%未満ではホルムアルデヒドの脱臭能力の点で不充分となり、15モル%を越えるとAA化EVOHがアセトアセチル基間の架橋反応等により不溶化したり、又、可塑剤の移行防止能が低下したりして好ましくない。
【0014】
尚、ケン化度(モル%)は、1H−NMR測定(溶媒;d6−DMSO)で、3.3〜4.0ppmの積分強度α(EVOHのCH)、0.85ppmの積分強度β(EVOHの末端CH3)、1.98ppmの積分強度γ(EVOHの未ケン化部分のCH3)より、下式(I)にて算出される。
【数1】
(3×α−β−γ)×100/(3×α−β)・・・(I)
アセトアセチル基含有量は、1H−NMR(270MHz)測定(溶媒;d6−DMSO)で、2.18ppmの積分強度ICH3(アセトアセチル基のCH3)と、1.2〜1.6ppmの範囲での積分強度ICH2(EVOHのCH2)より、下式(II)より算出される。
【数2】
2ICH3×100/3ICH2・・・(II)
【0015】
上記の熱可塑性樹脂(A)層とAA化EVOH(B)層を積層して積層体を得るわけであるが、かかる積層に当たっては溶液コーティングが用いられる。
【0016】
溶液コーティングは、AA化EVOH(B)溶液を熱可塑性樹脂(A)層にコーティングする方法で、用いられる溶媒としては水とアルコールの混合溶媒で、水の量は30〜70重量%(アルコールの量は70〜30重量%)であり、30重量%未満又は70重量%を越えると均一な溶液が得難く塗膜が不透明となり好ましくない。又、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられ、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが好適に使用される。
【0017】
かかるAA化EVOH(B)溶液あるいは分散液中のAA化EVOH(B)の濃度は特に制限なく任意の範囲で塗工可能であるが、通常は0.5〜25重量%程度が好ましく、特には10〜20重量%が好ましい。
コーティングに当たっては、公知の方法を採用することができ、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、ドクターナイフコーター、エアナイフコーター、ロータリースクリーンコーター、フラットスクリーンコーター、スプレー、ハケ塗り、バーコーター、コンマコーター、カーテンフローコーター等が挙げられ、好適にはグラビアコーターやリバースロールコーターが使用される。
【0018】
AA化EVOH(B)溶液あるいは分散液の塗布に当たっては、通常基材(熱可塑性樹脂(A)層)の表面には接着剤(アンカーコート)層が設けられる。係る接着剤としては、有機チタン系接着剤、2液反応型ポリウレタン系接着剤、ポリエステル/イソシアネート系接着剤等が挙げられ、好適には2液反応型ポリウレタン系接着剤が使用される。該接着剤層の厚みは乾燥後の厚みで0.1〜3μmが好ましく、更には0.5〜1μmが好ましい。
【0020】
かくして熱可塑性樹脂(A)層とAA化EVOH(B)層の積層体が得られるが、各層の厚みはその用途等により一概には規定できないが、通常、熱可塑性樹脂(A)層は50〜10000μm(更には100〜1000μm)、AA化EVOH(B)層は1〜50μm(更には2〜10μm)であることが好ましい。層間に接着剤を用いる場合の該接着剤層の厚みは0.1〜10μm程度が好ましい。
【0021】
又、本発明では、熱可塑性樹脂(A)層/AA化EVOH(B)層の積層体の他にも、熱可塑性樹脂(A)層をa、AA化EVOH(B)層をbとすると、a(ポリオレフィン系樹脂)/b/a(塩化ビニル系樹脂)、a(ポリオレフィン系樹脂)/b/a(ポリオレフィン系樹脂)、b/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(塩化ビニル系樹脂)、b/a(ポリエステル系樹脂)/a(塩化ビニル系樹脂)、a(アクリル系樹脂)/b/a(塩化ビニル系樹脂)等の積層構造を挙げることができ、特に(表側)b/a(塩化ビニル系樹脂)(裏側)、(表側)b/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(塩化ビニル系樹脂)(裏側)の積層構造を有するものは、壁紙や化粧用シート等の内装材用途に有用で、これらの積層体の熱可塑性樹脂(A)層の裏面には洋紙、和紙、不織布、アスベスト、紙、ガラス、繊維、布等の壁紙用の基材を粘(接)着剤を塗布し、カレンダー法、ラミネート法等の方法で貼り合わせることも可能で、又、紙にナイフコーターやロールコーター、フラットスクリーンコーターで塩化ビニル系樹脂(A)を塗布し、その後AA化EVOH(B)を積層させることもできる。
【0022】
かかる壁紙を壁に貼着する場合には、一般に用いられる水系澱粉糊等の公知の接着剤を基材に塗布し、壁面に圧着させればよく、又、意匠性等の付加価値を高めるために該積層体の少なくとも一方の表面にエンボス加工を施して凹凸模様を形成することも有用であり、凹凸模様としては木目導管模様、塗装板の表面を模したもの、抽象模様、石目模様、布目模様、万線模様、木肌模様及びそれらを組み合わせたもの等を用いることができ、かかるエンボス加工により形成される凹凸模様の深さは模様により異なるが、壁紙用途の場合、通常1〜200μm程度に形成するのが、良好な立体感を付与することとなり好ましい。
【0023】
又、壁紙等の意匠性を付与するために、塩化ビニル系樹脂等の基材を発泡させることも有用で、この場合のAA化EVOH(B)の積層工程は発泡処理の前後どちらでもよいが、実質的には溶液コーティングの時はAA化EVOH(B)積層後に発泡処理を行うことが好ましく、溶融コーティングあるいはフィルムラミネート法の時は発泡処理後にAA化EVOH(B)を積層することが好ましい。
【0024】
エンボス加工により凹凸模様を形成する方法としては、所望の凹凸模様を形成した通常の熱エンボス機を用いてエンボス加工を施す方法やエクストルージョンコート装置の冷却ロール等に所望の凹凸模様を付与したエンボスロールを用い、AA化EVOH(B)層を形成するのと同時にエンボス加工を行う、所謂ダブリングエンボス法等、いわゆるメカニカルエンボス法あるいは発泡抑制剤や発泡促進剤を含むインクを印刷し、発泡工程で凹凸模様をつけるケミカルエンボス法等が用いられる。
【0025】
又、b/a(塩化ビニル系樹脂)、b/a(ポリオレフィン系樹脂)、b/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(ポリオレフィン系樹脂)、b/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(ポリオレフィン系樹脂)・・・、b/a(塩化ビニル系樹脂)/b、b/a(ポリオレフィン系樹脂)/b、b/a(ポリオレフィン系樹脂)/a(ポリオレフィン系樹脂)・・・/b等の積層構造を有するものは、農業用フィルム(シート)として有用である。
【0026】
本発明では、必要に応じて、積層体の各層にポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等の樹脂、可塑剤(軟質塩化ビニル系樹脂層には当然のことながら含有されているが)、安定剤、界面活性剤、架橋性物質(エポキシ化合物、多価金属、無機又は有機の多塩基酸又はその塩等)、充填剤、着色剤、補強材としての繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)、艶消剤(タルク、シリカ系粉末、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂微粒子粉末)等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。
【0027】
又、本発明においては、上記AA化EVOH(B)層に、従来公知の消臭剤、例えば酸化リン、酸化銀を2重量%以上含んだリン酸系ガラス粉末、アルキレンジアミン、ポリアルキレンジアミン、塩化第二鉄、塩化クロム、塩化マンガン、塩化ニッケル、塩化銅、塩化鉄等を含有させることも可能である。該公知の消臭剤のうち、リン酸系ガラス粉末、アルキレンジアミン、ポリアルキレンジアミンを併用する場合はAA化EVOH(B)100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部配合するのが適当である。
【0028】
塩化第二鉄、塩化クロム、塩化マンガン、塩化ニッケル、塩化銅、塩化鉄のような金属イオンを添加する場合、AA化EVOH(B)のアセトアセチル基(及び水酸基)に対して2〜100モル%、好ましくは5〜80モル%配合するのが適当する。
該金属イオンはアセトアセチル基や水酸基とキレートを形成し、均一に分散することにより、アルデヒド系化合物以外の悪臭(アンモニア、硫化水素、トリメチルアミン、等)にも有効に作用するのである。
【0029】
かくして得られた本発明の積層体は、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シート等をはじめデスクマット等の事務用品、塩ビレザーの表紙を用いた手帳やファイル等の文房具、自動車用の内装用資材、農業用フィルム等の農業用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)等に利用することができ、中でも上記で詳述したように壁紙や化粧シート等の内装材や農業用フィルム(シート)に大変有用であり、特に耐汚染性や可塑剤移行防止に優れ、かつ近年問題視されているホルムアルデヒドの低減効果に優れた壁紙として有用である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を意味する。
アセトアセチル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物として下記の(B−1)〜(B−3)を用いた。
[AA化EVOH(B−1)]
アセトアセチル基含有量5モル%、エチレン含有量45モル%、ケン化度94.6モル%、メルトインデックス12g/10分(210℃、荷重2160g)
[AA化EVOH(B−2)]
アセトアセチル基含有量7モル%、エチレン含有量35モル%、ケン化度92.6モル%、メルトインデックス12g/10分(210℃、荷重2160g)
[AA化EVOH(B−3)]
アセトアセチル基含有量3モル%、エチレン含有量45モル%、ケン化度96.6モル%、メルトインデックス3g/10分(210℃、荷重2160g)
【0031】
実施例1
塩化ビニル系樹脂100部、炭酸カルシウム90部、ジオクチルフタレート45部、塩素化パラフィン5部、安定剤3部、発泡剤5部、酸化チタン18部からなる樹脂組成物をスーパーミキサーで均一に混合した後、単軸押出機にて厚さ0.15mmのフィルムを得た。これを230℃で、30秒間ギアオーブン中で発泡させて、厚さ1mmのシート(発泡倍率6.7倍)を作製した。
該シートの片面にイソシアネート反応型ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製、AD−335A/cat−10)を塗工し、100℃で乾燥した(乾燥後の厚みで0.5μm)。
次に、この上に更に、AA化EVOH(B−1)を水/アルコール混合溶媒(混合重量比は水/アルコール=30/70)で溶解したAA化EVOH(B−1)溶液(濃度15%)をバーコーターにより塗工し、熱風乾燥機にて80℃で3分間乾燥し、5μmの被覆層を形成した積層体を得た。
得られた積層体を用いて以下の評価を行った。
【0032】
(ホルムアルデヒド吸収力)
放出ホルムアルデヒド量が10.0mg/(h・m2)の合板に、上記積層体をAA化EVOH(B−1)層面が表側になるようにポリウレタン系接着剤を介して貼り合わせ、放出するホルムアルデヒドの量を測定した。
尚、ホルムアルデヒド量は、チップモード試験法(DIN 52368)のガス分析法によるホルムアルデヒド測定法にて測定した。
【0033】
(可塑剤移行防止性)
上記積層体(100mm×100mm)のAA化EVOH(B−1)層表面に、直径50mm、厚み3mmのポリスチレン円板を接触させ、その上から10kg/m2の荷重をかけ、40℃、65%RH条件下で10日間放置後の可塑剤移行量を(重量変化)を測定した。
又、同様に40℃、90%RH条件下で10日間放置後の可塑剤移行量(重量変化)も測定した。
評価基準は下記の通りである。
○・・・重量変化が1g/m2未満
×・・・重量変化が1g/m2以上
【0034】
(汚染除去性)
積層体のAA化EVOH(B−1)層表面に約70℃のホットコーヒーを直径2cm程度の大きさに塗布あるいは滴下し、20℃で24時間放置後の水を含ませたさらし木綿で拭き取った後の積層体の表面状態を目視により以下の評価した。
尚、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シート単独層についても同様に評価を行った。又、靴墨(中性洗剤で拭き取った)、和がらし、水性マジック(市販の洗剤(マジックリン)で拭き取った)についても同様に評価した。
○・・・完全に拭き取れて汚染の痕跡が認められない。
×・・・汚染の痕跡が認められる。
【0035】
実施例2
実施例1において、AA化EVOH(B−1)をAA化EVOH(B−2)に代えた以外は同様に行い、評価を行った。
【0037】
比較例1
実施例1において、AA化EVOH(B−1)をエチレン含有量45モル%、ケン化度99.6モル%、メルトインデックス(MI)12g/10分(荷重2160g)のEVOHに代えた以外は同様に行い、評価を行った。
実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
──────────────────────────────────────
放出ホルムアルデヒド量 可塑剤移行防止性 汚染除去性
───────────────
mg/(h・m2) 65%RH 90%RH
──────────────────────────────────────
実施例1 1.2 ○ ○ ○
〃 2 0.9 ○ ○ ○
──────────────────────────────────────
比較例1 9.2 × × ×
──────────────────────────────────────
【0039】
【発明の効果】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂(A)層とAA化EVOH(B)層を積層しているため、ホルムアルデヒドを含有する対象物あるいは基材から発生するホルムアルデヒドの低減に非常に優れ、かつ可塑剤の移行防止性、耐汚染性に優れた効果を示し、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シート等をはじめデスクマット等の事務用品、塩ビレザーの表紙を用いた手帳やファイル等の文房具、自動車用の内装用資材、農業用フィルム等の農業用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)等の積層体にも大変有用である。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂(A)層に、エチレン含有量が20〜50モル%のアセトアセチル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)の、水の含有量が30〜70重量%である水とアルコールの混合溶媒溶液をコーティングしてなることを特徴とする積層体。
- 熱可塑性樹脂(A)が塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
- 内装材用途又は農業用フィルム用途に用いることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体。
- 内装材用途が壁紙用途であることを特徴とする請求項3記載の積層体。
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