JP4720702B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

本発明は、冷却水温に基づいて空調空気の風量が設定されているときに、乗員による風量設定がなされた場合でも風量学習を可能とした車両用空調装置に関する。
冷却水温に基づいて空調空気の風量を設定するようにした車両用空調装置として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。これは、冷却水温に基づいて風量を決定する制御マップ(水温制御マップ)を有しており、冷却水温が低いときには、この水温制御マップに基づいて風量を設定するようになっている。
空調空気を所定の温度に調整する際には、エンジン冷却水を利用したヒータユニットにより加熱調整するようになっているが、エンジン始動時等の冷却水温が低いときには空調空気が十分に加熱されないため、乗員に対して過度な冷感による不快感を与えないような風量で空調空気を吹き出す必要性があることから、冷却水温が低い時には上記の水温制御マップが適用されるのである。
特開平2−57419号公報
ところで、乗員毎に好ましいと思う風量は異なることが普通であるから、水温制御マップに基づいて風量を設定したとしても、この設定風量に乗員が違和感を覚えるようであれば、風量を設定しなおす必要がある。
しかしながら、上記従来装置では、学習機能を有していなかったために、水温制御マップが適用されるたびに乗員は風量を設定しなおす必要があるため、乗員の風量設定の操作負担が残されたままであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却水温に基づいて風量を決定する水温制御マップにより空調空気の風量が設定されているときに、乗員の風量設定の操作があった場合には、この水温制御マップを学習変更し、乗員の操作負担を低減することができる車両用空調装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、車室内に吹き出される空調空気の風量を、乗員の風量設定に基づいて学習する車両用空調装置であって、冷却水温に基づいて前記風量を決定する水温制御マップを記憶する記憶手段と、乗員が風量を設定変更可能な風量設定手段と、風量設定手段により風量が設定変更されたときに、水温制御マップによって風量が決定されているときには、設定変更された設定風量に基づいて水温制御マップを学習変更する学習手段とを備え、学習手段は、冷却水温の温度範囲が所定温度範囲内であって、冷却水温の変化量に対する風量の変化量を所定の変化量に制限し得る制御範囲で水温制御マップの制御特性を変更することを特徴としている。
請求項1の発明によれば、水温制御マップは乗員が設定した風量を反映した風量となるように学習変更できるようになっているため、乗員の好みに合わせた制御特性に変更できる。このため、冷却水温に基づく当該水温制御マップによって風量が設定されるたびに、乗員が風量を設定しなおす必要が無いため、乗員の設定操作の負担が低減される。また、乗員が設定した風量に基づいて学習変更した結果、学習後の制御特性が急激な風量変化を伴うような特性となることがあるが、このような場合には本構成のように学習変更による制御特性を制限することで急激な風量変化を抑えて乗員に対する不快感を防止することができる。特に、冷却水温が低温領域あるいは高温領域において急激な風量変化を伴うような制御特性となる場合には、乗員に対する不快感が一層増すため、本構成のように水温制御マップの制御特性の変更範囲を所定の温度範囲に制限すれば、確実に不快感を防止できる。
ここで、所定の変化量とは、乗員に対する温熱快適性を保持できる変化率のことをいい、所定温度範囲とは、体温相当温度である最低水温と冷却水安定水温である最高水温との間に含まれる水温範囲のことである。
請求項2の発明では、冷却水温を検出する冷却水温検出手段を備え、学習手段は、冷却水温検出手段で検出された冷却水温が所定温度範囲内にあるときに風量設定手段により風量が設定変更された場合に限って、水温制御マップを学習変更することを特徴としている。
冷却水温が制御範囲内にあるときに風量設定されたときに、その設定風量に基づいて制御マップを学習変更すれば、学習変更後の制御特性を乗員に対する温熱的な快適性を確保したものとすることができる。
請求項3の発明では、記憶手段は、過去の設定変更による設定風量を記憶するものであり、学習手段は、記憶手段に記憶された設定風量及び今回の設定変更による設定風量に基づいて水温制御マップの制御特性を学習変更することを特徴としている。
このようにすれば、乗員が極端な風量設定を行っても、その影響を最小限に止めることができる。
請求項4の発明では、予め登録された複数の搭乗予定者の中から車室内に搭乗した乗員を特定する乗員特定手段を備え、記憶手段は、水温制御マップを、複数の搭乗予定者のそれぞれに対応して複数有し、学習手段は、乗員特定手段により特定した乗員に対応する水温制御マップを学習変更することを特徴としている。
請求項4の発明によれば、各搭乗予定者の好みに合った風量を設定することができる。
<第1の実施形態>
本発明に係る車両用空調装置の一実施形態について図1から図7を参照して説明する。本実施形態の車両用空調装置は、乗員が風量設定を行ったときの冷却水温TWが73℃以下である時に、その設定風量に基づいて水温制御マップを学習変更する学習機能を備えたものである。
図1に、本実施形態の車両用空調装置のシステム構成を示す。室内ユニットを構成する空調ユニット10の空気流れ最上流側には外気導入口11aと内気導入口11bを有する内外気切替箱11が配置され、この内外気切替箱11内に内外気切替ドア12が回動自在に設置されている。
この内外気切替ドア12は外気導入口11aと内気導入口11bとの分岐点に配置され、アクチュエータ12aにより駆動されて、空調ユニット10に導入する空気を内気もしくは外気に切り替え、あるいは内気と外気の混合割合を調整する。
送風機13は内外気切替箱11内に空気を吸い込んで空調ユニット10の下流側に送風するものであり、ブロワモータ14と、その回転軸に連結された遠心式送風ファン15を有している。そして、この送風ファン15の下流にはエバポレータ16とヒータコア17が設けられている。
エバポレータ16は冷却用熱交換器であって、図示しない車両エンジンにより駆動されるコンプレッサ等と結合されて冷凍サイクルを構成し、その内部の低圧冷媒が空気から吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。また、ヒータコア17は加熱用熱交換器であって、図示しない車両エンジンの冷却水(温水)が内部を循環し、このエンジン冷却水を熱源として空気を加熱する。
ヒータコア17の上流側には、吹出空気温度調整手段としてのエアミックスドア18が回動自在に設けられ、エアミックスドア18の開度はアクチュエータ18aにより駆動されて調節される。これによって、ヒータコア17を通過する空気とヒータコア17をバイパスする空気の割合とが調整され、車室内に吹き出す空調空気の温度が調整される。
空調ユニット10の最下流には、デフロスタ(DEF)吹出口19を開閉するデフロスタドア20、フェイス(FACE)吹出口21を開閉するフェイスドア22、およびフット(FOOT)吹出口23を開閉するフットドア24が設けられている。
これら各ドア20、22、24は吹出モード切替手段を構成するもので、アクチュエータ25により駆動されて各吹出口19、21、23を開閉することによって各種の吹出モード(フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフモード、デフロスタモード等)が設定される。そして、各吹出モードに応じて開口した吹出口から、温度調整された空調空気が車室内へ吹き出される。
ここで、フェイスモード時は、フェイス吹出口21を全開し、デフロスタ吹出口19およびフット吹出口23を閉塞して、フェイス吹出口21のみから空調空気を車室内の乗員上半身側へ吹き出す。
バイレベルモード時は、フェイス吹出口21およびフット吹出口23を全開し、デフロスタ吹出口19を閉塞して、フェイス吹出口21およびフット吹出口23の両方から乗員上半身側および乗員足元側へ空調空気を略同量ずつ吹き出す。
フットモード時は、フェイス吹出口21を閉塞し、フット吹出口23を全開し、デフロスタ吹出口19を小開度だけ開口する。これにより、フット吹出口23から主に空調風を乗員足元側へ吹き出すと同時に、デフロスタ吹出口19から少量の空調空気を車室内の窓ガラス内面側へ吹き出す。
デフロスタモード時は、フェイス吹出口21およびフット吹出口23を閉塞し、デフロスタ吹出口19を全開して、デフロスタ吹出口19のみから空調空気を窓ガラス内面側へ吹き出す。
フットデフロスタモード時は、フェイス吹出口21を閉塞し、デフロスタ吹出口19およびフット吹出口23を全開して、フット吹出口23とデフロスタ吹出口19から空調空気を略同量ずつ吹き出す。
空調制御装置30は制御手段としてのマイクロコンピュータ31を有し、風量はマイクロコンピュータ31からの出力信号に基づいて駆動回路32を介してブロワモータ14の印加電圧(ブロワ電圧)を調整してモータ回転数を調整することにより制御される。なお、その他のアクチュエータ12a、18a、25も、マイクロコンピュータ31からの出力信号に基づいて駆動回路32にて制御される。
マイクロコンピュータ31は図示しない中央演算処理装置(CPU)、ROM、RAM、I/Oポート、A/D変換部、およびスタンバイRAM31a等を持ち、それ自体は周知のものである。
スタンバイRAM31a(記憶手段)は、車両エンジンの運転を断続するイグニションスイッチ(以下、IGと記す)オフの場合においても情報を記憶(バックアップ)するためのRAMであり、IGがオフであっても車載バッテリーからIGを介さずに直接電源が供給される。また、マイクロコンピュータ31とバッテリーとの電気接続が遮断された状況でも短時間ならばマイクロコンピュータ31に電源を供給する図示しないバックアップ用の電源が設けられている。
マイクロコンピュータ31には、車室内計器盤に設置された空調操作部33から操作信号が入力される。この空調操作部33には、空調装置の自動制御状態を設定するオートスイッチ34、内外気吸込モードを手動で切替設定するための内外気切替スイッチ35、吹出モードを手動で切替設定するための吹出モード切替スイッチ36、ファン15の風量を手動で切替設定するための風量切替スイッチ37a(風量設定手段)、ファン15の風量をオフにするOFFスイッチ37b、乗員の好みの車室内温度を設定するための温度設定スイッチ38等が設けられている。
このうち、風量切替スイッチ37aは、具体的には、風量アップスイッチと風量ダウンスイッチからなり、風量アップスイッチは1回押されるごとにブロワ電圧(駆動用モータ14への印加電圧)を1レベル(0.25ボルト)上げる信号を出力し、風量ダウンスイッチは1回押されるごとにブロワ電圧を1レベル(0.25ボルト)下げる信号を出力する。尚、風量切替スイッチ37aとしては、ロータリ式スイッチあるいはシーソー式スイッチを用いても良い。
OFFスイッチ38bは、風量をゼロにするためのスイッチであり、乗員が当該スイッチ38bを操作した時には、マイクロコンピュータ31に対してブロワ電圧を0にするための信号を出力する。
また、マイクロコンピュータ31には、車室内の空気温度(内気温度)TRを検出する内気温検出手段としての内気温センサ39、車室外の空気温度(外気温度)TAMを検出する外気温検出手段としての外気温センサ40、車室内に入射する日射量TSを検出する日射量検出手段としての日射センサ41、蒸発器温度(具体的には蒸発器吹出空気温度)TEを検出する蒸発器温度検出手段としての蒸発器温度センサ42、ヒータコア17を循環するエンジン冷却水温TWを検出する水温検出手段としての水温センサ43等からの各信号が、それぞれのレベル変換回路44を介して入力され、これらはマイクロコンピュータ31においてA/D変換されて読み込まれる。また、温度設定スイッチ38からの信号もレベル変換回路44でレベル変換されてマイクロコンピュータ31に入力される。
マイクロコンピュータ31(学習手段、選択手段)は、車両に搭載された個人情報ECU50(乗員特定手段)から個人IDを入力するようになっている。個人情報ECU50は、予め登録された複数の搭乗予定者の中から、ドアロック解除キーの情報等に基づいて車室内に搭乗した乗員を特定し、特定した乗員の個人識別情報(個人ID)を、車両内通信網を介して出力するようになっている。
なお、個人情報ECU50が行う乗員の特定は、ドアロック解除キーの情報に基づくものに限定されず、例えば調整されたシート位置情報、調整されたステアリングホイール位置情報、調整されたルームミラー位置情報、室内カメラ画像情報、乗員が操作する乗員特定スイッチからの信号等のいずれか1つ、もしくは複数を組み合わせた情報に基づくものであってもよい。
ところで、スタンバイRAM31aには、個人情報ECU50に予め登録されている各搭乗予定者に対応するマップ対60,70,80が記憶されている。各マップ対60,70,80は、それぞれ2つの制御マップを有しており、1つは冷却水温TWに基づいて風量B(TW)を決定する水温制御マップ100A(図5参照)であり、もう1つは内気温度TR、日射量TS、及び外気温度TAM(環境条件)に基づいて風量B(EN)を決定する環境制御マップ100Bである。尚、環境制御マップ100Bは、本願出願人が出願した「特開2000−293204号」に記載されている制御マップと同様であるから、これを参照されたい。
また、スタンバイRAM31aには、各環境条件に対応する制御用設定温度TSETが記憶されているとともに、風量切替スイッチ37aにより設定された風量(設定風量)を記憶するための領域が確保されている。
次に、上記構成に基づき、本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。
「基本制御動作」
図3は、マイクロコンピュータ31により実行される概略制御動作を示すフローチャートであり、IGオンとともに図3の制御をスタートする。
まず、ステップS100にて各種変換、フラグ等の初期値を設定する。そして、次のステップS110では、個人情報ECU50からの個人識別情報を入力し、車室内に搭乗した乗員を特定する。
次のステップS120では空調操作部33の各種スィッチ34〜38の操作信号を読み込む。そして、次のステップS130では各種センサ39〜43からのセンサ検出信号(環境条件信号)を読み込む。
次のステップS140では、ステップS130で読み込んだ環境条件信号、およびスタンバイRAM31aに記憶されている制御用設定温度TSET等に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを下記数式1に基づいて算出する。
(数1)
TAO=KSET×TSET−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
但し、KSET、KR、KAM、KSは係数、Cは定数であり、TSET、TR、TAM、TSはそれぞれ上記した制御用設定温度、内気温度、外気温度、日射量である。
次に、ステップS150に進んで、車室内に吹き出す空調空気を所定の風量とするためのブロワ電圧を決定する。本実施形態では、個人情報ECU50で特定した搭乗予定者に対応するマップ対60,70,80を読出す。そして読み出したマップ対に含まれる2つの制御マップ100A,100Bでそれぞれ算出された風量のうち、相対的に小さい風量を選択するようになっている。即ち、冷却水温TWに基づいて風量B(TW)が決定される水温制御マップ100Aと、環境条件に基づいて風量B(EN)が決定される環境制御マップ100Bを有しており、水温制御マップ100Aで決定された風量B(TW)と、環境制御マップ100Bで決定された風量B(EN)のうち、小さいほうの風量を選択し、選択した方の風量に基づいてブロワ電圧を決定するのである。
ここで、各制御マップ100A、100Bは、冷却水温TWが低いときには、当該冷却水温TWに基づく水温制御マップ100Aが選択され、冷却水温TWが所定の水温に上昇到達したときには、環境条件に基づく環境制御マップ100Bが選択されるように、それぞれの制御特性が設定されている。
次に、ステップS160に進み、TAOに対するエアミックスドア18の開度SWを下記数式2に基づいて算出する。
(数2)
SW=(TAO−TE)/(TW−TE)×100(%)
そして、ステップS170に進み、内外気切替ドア12による内外気吸込モードを図6の制御特性(マップ)によりTAOに基づいて決定する。次に、ステップS180にて吹出モードドア20、22、24による吹出モードを図7の制御特性(マップ)によりTAOに基づいて決定する。
最後に、ステップS190では、上記各ステップS150〜S180で決定された各種制御信号を、駆動回路32を介してブロワモータ24、および各アクチュエータ12a、18a、25に加えて、ブロワモータ24の回転数および各アクチュエータ12a、18a、25の作動を制御する。
次のステップS200では、制御周期であるt秒経過したか判定し、t秒経過後にステップS120に戻り、上記処理を繰り返す。
「風量学習動作」
風量学習動作について、図4のフローチャートに基づいて説明する。この風量学習動作は、乗員による風量切替スイッチ37aの設定変更の操作がトリガーとなって作動する。ステップS300では、乗員が風量切替スイッチ37aを操作したときに、水温制御マップ100Aを学習変更すべきか否かを判断する。その判断基準としては、乗員のスイッチ操作時における冷却水温TWが73℃以下であるときに学習変更すべきであると判断する。この判断基準に合致したときには、ステップS310に移行して学習変更を行う。
ステップS300にて肯定判定された場合には、ステップS310にて、スタンバイRAM31aに記憶されている過去の風量設定に基づく設定風量の情報を読み出す。読み出す設定風量の情報は例えば過去4回分とする。
次に、ステップS320にて、スタンバイRAM31aから読み出した過去4回分の設定風量及び今回の風量設定による設定風量に基づいて水温制御マップ100Aを学習変更する。図5に示すように、水温制御マップ100Aには基本となる制御特性が予め設定されており、乗員の風量設定に基づいてこの制御特性を変更するのである。尚、以下では、風量B(TW)をブロワレベルに置き換えて説明する。
基本となる制御特性は、冷却水温TWが38℃(体温相当温度)〜73℃(冷却水安定温度)の領域においては、冷却水温TWとブロワレベル(風量B(TW))とが比例関係となっており、具体的には、冷却水温TWの38℃とブロワレベルの1とが交わる点a(基準点a)と、冷却水温TWの73℃とブロワレベルの31とが交わる点bとを結ぶ直線(基本制御直線L、図中(A)の直線)によって各冷却水温TWに対応するブロワレベルが決定されるようになっている。また、冷却水温TWが73℃以上の水温領域では、ブロワレベルは一定の31とされており、冷却水温が35℃〜38℃の水温領域では、当該冷却水温TWが35℃に下降到達したときには、ブロワレベルが0となり、冷却水温TWが38℃に上昇到達したときには、ブロワレベルが1となるヒステリシス特性とされている。
また、制御特性の変更範囲を以下の範囲に制限する。即ち、冷却水温TWの38℃及び63℃が、それぞれブロワレベルの1と交わる点a,c、冷却水温TWの48℃及び73℃が、それぞれブロワレベルの31と交わる点b,dの4点に囲まれた菱形領域As(制御範囲)内に制限するのである。
乗員の風量設定に基づく学習変更は、乗員が風量切替スイッチ37aで設定変更した風量に基づいて、基準点aを中心として基本制御直線Lの傾きを菱形領域As内で変更するのである。この基本制御直線Lの傾きは、例えば、スタンバイRAM31aから読み出した過去4回分の設定風量及び今回の風量設定による設定風量から、最小二乗近似によって得られた直線の傾きを学習後の基本制御直線Lとすることができる。
ここで、基本制御直線Lの傾きが当初の傾き(図中(A)の傾き)よりも大きくなった場合には、冷却水温TWが73℃よりも低い温度でブロワレベル31に到達するが、ブロワレベルが31に到達する冷却水温TWよりも高い水温領域においては、ブロワレベルを一定の31とする。従って、学習後の基本傾斜直線Lの傾きが当初の傾きよりも大きくなった場合には、図中の(B)に示すような制御特性とされる。
また、基本制御直線Lの傾きが当初の傾きよりも小さい場合には、冷却水温TWが73℃に到達しても、ブロワレベルが31よりも低いレベルとなる。この場合には、基本制御直線Lは、菱形領域Asの外縁を辿り、ブロワレベルが31の水平直線に繋がる。従って、学習後の基本制御直線Lの傾きが当初の傾きよりも小さくなった場合には、図中の(C)に示すような制御特性とされる。
従って、学習変更後の制御特性において、冷却水温TWの変化量に対する風量B(TW)の変化量は、最大でも点a、b(点c、d)を結ぶ直線の傾きに制限されるのである。この直線の傾きは、乗員に対する温熱快適性を保持できる傾きに設定されている。
ここで、上記の水温制御マップ100Aにおいて学習変更に用いる設定風量は、上記の菱形領域Asのほかに、この菱形領域Asの左右にある三角形領域Ta,Tbも含まれる。このうち、右側の三角形領域Taは、点b、c、及び冷却水温TWが73℃とブロワレベルが1の交点eにより囲まれた領域であり、左側の三角形領域Tbは、点a,d、及び冷却水温TWが38℃とブロワレベルが31との交点fに囲まれた領域である。これら3つの領域As,Ta,Tb以外の領域で風量設定された場合には、その風量設定に基づく学習変更からは除外する。
即ち、風量設定スイッチ37aにより風量設定されたときの冷却水温TWが、最低水温(38℃)及び最大水温(73℃)を含む温度範囲内(所定温度範囲内)にあるときに水温制御マップ100Aを学習変更するのである。
この後、ステップS330にて学習変更後の水温制御マップ100Aに基づいて風量B(TW)を算出する。
一方、ステップS300で否定判定された場合には、ステップS340にて環境制御マップ100Bに基づいて風量B(EN)を算出する。尚、環境制御マップ100Bは、本願出願人が出願した「特開2000−293204号」に記載されている制御マップと同様であるから、これを参照されたい。
最後にステップS350にて、学習変更後の水温制御マップ100A及び環境制御マップ100Bのいずれかに基づいてブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧の決定は、上述したステップS150の処理と同様である。
以上により、本実施形態によれば、乗員が風量設定したときに、水温制御マップ100Aが選択されているときには、その設定風量に基づいて水温制御マップ100Aを学習変更するようにしているため、この水温制御マップ100Aを乗員の好みに合った制御特性に変更することができる。
また、水温制御マップ100Aについては、制御特性の変更範囲を所定の菱形領域As(制御領域)内に制限しているため、乗員の設定した設定風量に素直に従って学習変更した場合に、急激な風量変化を伴うような制御特性に変更されるようなことがなく、急激な風量変化による不快感を防止することができる。特に、冷却水温TWが48℃以下の低温領域あるいは63℃以上の高温領域において急激な風量変化を伴うような制御特性となる場合には、乗員に対する不快感が一層増すことが予測されるため、本構成のように水温制御マップ100Aの制御特性の変更範囲を菱形領域Asに制限すれば、確実に不快感を防止できる。
また、冷却水温TWが最小水温(38℃)及び最大水温(73℃)を含む温度範囲内にあるときに風量設定された場合には、その設定風量に基づいて水温制御マップ100Aを学習変更しているので、学習変更後の制御特性を乗員に対する温熱的な快適性を確保したものとすることができる。
また、過去4回分の設定風量をも考慮して水温制御マップ100Aの制御特性を変更するようにしているから、乗員が極端な風量設定を行ったとしても、適切な制御特性に修正することができる。
また、予め登録された複数の搭乗予定者の中から車室内に搭乗した乗員を特定し、マップ対60、70、80の中から搭乗した乗員に対応したマップ対を選択し、選択したマップ対に含まれる制御マップ100A、100Bに基づいて風量を設定しているため、各搭乗予定者の全てに対して不快を感じ難い風量制御を行うことができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
上記実施形態では、水温制御マップ100Aにおける制御特性の変更範囲は、冷却水温TWの38℃及び63℃が、それぞれブロワレベルの1と交わる点a,c、冷却水温TWの48℃及び73℃が、それぞれブロワレベルの31と交わる点b,dの4点に囲まれた菱形領域Asとしていたが、この菱形領域Asの位置及び形状は任意に変更することができる。
また、上記実施形態では、過去4回分の設定風量及び今回の風量設定による設定風量に基づく最小二乗近似によって得られた直線の傾きを基本制御直線Lとしていたが、直線を求めるために用いる過去の設定風量は4回分以下あるいは6回分以上であってもよい。
また、上記実施形態では、スタンバイRAM31aは、予め登録された3名の搭乗予定者にそれぞれ対応する3組のマップ対60、70、80を有していたが、2名以上の複数の搭乗予定者のそれぞれについてマップ対を有し、搭乗した乗員に対応して使い分けるものであってもよい。また、マップ対を1つしか備えない場合であっても、本発明を適用して有効である。
また、上記一実施形態では、記憶手段としてスタンバイRAM31aを用いたが、これに限らず、他の記憶素子を用いるものであってもよい。
本発明を適用した一実施形態における車両用空調装置のシステム構成を示す模式図である。 各搭乗予定者毎に設けられるマップ対を示した図である。 マイクロコンピュータ31により実行される基本制御動作を示すフローチャートである。 風量学習動作の内容を示したフローチャートである。 水温制御マップの制御特性及び学習変更に伴う制御特性の変更方法を示した図である。 内外気吸込モードの特性図である。 吹出モードの特性図である。
符号の説明
30…空調制御装置
31…マイクロコンピュータ(学習手段、選択手段)
31a…スタンバイRAM(記憶手段)
37a…風量切替スイッチ(風量設定手段)
37b…OFFスイッチ
50…個人情報ECU(乗員特定手段)
60、70、80…マップ
100A…水温制御マップ
100B…環境制御マップ
As…菱形領域(制御範囲)
Ta,Tb…三角形領域
TW…冷却水温
TAM…外気温度(環境条件)
TR…内気温度(環境条件)
TS…日射量(環境条件)

Claims (4)

  1. 車室内に吹き出される空調空気の風量を、乗員の風量設定に基づいて学習する車両用空調装置であって、
    冷却水温に基づいて前記風量を決定する水温制御マップを記憶する記憶手段と、
    前記乗員が前記風量を設定変更可能な風量設定手段と、
    前記風量設定手段により前記風量が設定変更されたときに、前記水温制御マップによって前記風量が決定されているときには、前記設定変更された設定風量に基づいて前記水温制御マップを学習変更する学習手段とを備え
    前記学習手段は、前記冷却水温の温度範囲が所定温度範囲内であって、前記冷却水温の変化量に対する前記風量の変化量を所定の変化量に制限し得る制御範囲で前記水温制御マップの制御特性を変更することを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記冷却水温を検出する冷却水温検出手段を備え、
    前記学習手段は、前記冷却水温検出手段で検出された前記冷却水温が前記所定温度範囲内にあるときに前記風量設定手段により前記風量が設定変更された場合に限って、前記水温制御マップを学習変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 前記記憶手段は、過去の設定変更による前記設定風量を記憶するものであり、
    前記学習手段は、前記記憶手段に記憶された前記設定風量及び今回の設定変更による設定風量に基づいて前記水温制御マップの制御特性を学習変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
  4. 予め登録された複数の搭乗予定者の中から前記車室内に搭乗した乗員を特定する乗員特定手段を備え、
    前記記憶手段は、前記水温制御マップを、前記複数の搭乗予定者のそれぞれに対応して複数有し、
    前記学習手段は、前記乗員特定手段により特定した乗員に対応する前記水温制御マップを学習変更することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
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