JP4714183B2 - 車両用フロアカーペット - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、自動車等の車両の車室内に敷設される車両用フロアカーペットに関する。
従来から、自動車等の車両の車室内のフロアには、床からの振動を防止すると共に、車外からの騒音を遮断する等のために、フロアカーペットが敷設されている。近年、前記フロアカーペットが敷設される車体の床構造に関し、空気抵抗を低減化するために車体の全高を低くして床下をフラットにすることが要求されている。このため、フロアパネルを支持するフロアフレームが床上に設けられる構造となっており、フロアの床上には、前記フロアフレームの突出面と床面との段差によって鉛直上下方向に沿って凹凸(高低差)が発生する。
そこで、特許文献1には、このような車室内のフロア高さ(高低差)を調整してフラット化するために、発泡スチロール又は発泡ポリプロピレン等の樹脂発泡体によって形成された車両用の嵩上げ材を設けることが開示されている。この特許文献1に開示された嵩上げ材では、樹脂発泡体が金属製の車体パネルと擦れてキューという摺接音が発生するために、前記樹脂発泡体の周囲をフェルトで捲いて吸音層とする構造が採用されている。
特開2002−79868号公報(段落0002、図1)
しかしながら、前記特許文献1に開示された嵩上げ材では、発泡スチロール又は発泡ポリプロピレン等の樹脂発泡体からなるブロック体に形成された通気孔を通じて通気性を有し、フロアパネルを介して車室内に進入する車外騒音(例えば、運転時におけるロードノイズや足周りから伝達される振動及びエンジン振動等に起因して発生する騒音等)が前記通気孔を介して車室内へと伝搬されるため、乗員に不快感を与えるおそれがある。
また、車室内で発生する騒音についても、前記通気性を確保するための通気孔では前記騒音を十分に抑制することができないという問題がある。
さらに、嵩上げ材を用いて車室内のフロア高さを調整してフラット化した場合、前記嵩上げ材の材質等に起因し、乗員の足による踏み込み荷重によって、フロアフレームが設けられた床部分と前記フロアフレームが設けられていない床部分との間で、乗員の踏み込み感に違和感を発生させないようにすることが要請されている。
本発明の一般的な目的は、車室の内外で発生する騒音を効率的に低減化することが可能な車両用フロアカーペットを提供することにある。
また、本発明の主たる目的は、フロアの平坦化と足踏み剛性確保とを両立させることが可能な車両用フロアカーペットを提供することにある。
前記の目的を達成するために、本発明は、車両の車室内に敷設される車両用フロアカーペットであって、フロアパネルの床面に上方に向かって膨出形成されたフロアフレームによって形成された前記フロアパネルの凹部に装填され、前記フロアパネルの床面に膨出形成されたフロアフレームの上面と略面一に形成されたポリプロピレン発泡体からなるスペーサと、前記スペーサの上面に積層され、前記フロアフレーム及び前記スペーサを略水平面に沿って被覆する遮音層と、前記遮音層の上面に積層される樹脂シート体と、前記樹脂シート体の上面に積層される吸音層と、前記吸音層の上面に設けられる表皮材と、を備え、前記スペーサには、前記遮音層から前記フロアパネル側の下部に向かって延在し、前記フロアパネル側が閉塞されると共に前記遮音層側に開口部を有する複数の有底孔部が形成され、前記遮音層は、第1フェルト材を有し、前記吸音層は、第2フェルト材を有し、前記第2フェルト材の厚さは、前記第1フェルト材の厚さよりも大きく設定されることを特徴とする。
本発明によれば、車両用フロアカーペットの下層に、ポリプロピレン発泡体によって構成されたスペーサをフロアフレームの上面と略面一に設けることにより、フロアが平坦化されると共に、前記スペーサに設けられた複数の有底孔部を介して車室の外から進入する騒音に対して遮音性が発揮される。
すなわち、本発明では、ポリプロピレン発泡体からなるスペーサに複数の有底孔部を設けることにより、自動車が走行する際に発生する、所謂ロードノイズ等の車外から進入する騒音を前記有底孔部が非貫通の前記スペーサの下部側によって遮蔽する。従って、本発明では、前記スペーサに形成された複数の有底孔部によって車両外の騒音を遮音して車室内の静穏化が図られる。
また、本発明によれば、下層側の遮音層と上層側の吸音層との間に、遮音機能を有する樹脂シート体を介装することにより、フロアフレームの上方に位置する薄肉な部位であっても所望の剛性が確保され、形状安定性を達成することができる。
前記スペーサの上面に積層される遮音層及び前記樹脂シート体の上面に積層される吸音層は、第2フェルト材と第1フェルト材によってそれぞれ構成され、前記第2フェルト材の厚さは、前記第1フェルト材の厚さよりも大きく設定されるとよい。この第1フェルト材及び第2フェルト材は、少なくとも、熱可塑性樹脂をバインダとして加熱した熱可塑フェルト材料(熱可塑性フェルト材料)、熱硬化性樹脂をバインダとして加熱したレジンフェルト材料又はニードルパンチ加工によるニードルフェルト材料等のいずれかによって構成されるとよい。
前記樹脂シート体は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)系樹脂シート体によって構成されるとよい。この場合、前記樹脂シート体は、引張強度が高いため、スポットの足踏み荷重に対して周囲で保持されることにより、撓みが抑制されて上層における剛性が確保される。この結果、本発明では、車両用フロアカーペットの剛性を向上させて足踏み時における沈み込み量を低減させることができる。
さらに、本発明によれば、硬質樹脂発泡体からなるスペーサをフロアパネルの凹部に装填し、前記フロアパネルの凹部におけるフロアカーペットの沈み込み量を低減させることにより、フロアフレーム部位におけるフロアカーペットの沈み込み量と前記凹部におけるフロアカーペットの沈み込み量との差を減少させて、乗員への違和感を減少させて良好な足踏み感を得ることができる。
本発明では、車両用フロアカーペットであって、形状が安定して組み付け作業性を向上させることができると共に、フロアフレーム部位と凹部における沈み込み差を抑制して良好な足踏み感を得ることができる。また、本発明では、フロアの平坦化と足踏み剛性確保とを両立させることができる。さらに、本発明では、車室内の吸音性能と車室外からの騒音に対する遮音性能を高いレベルで併有し、騒音を効率的に低減化することができる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に係る車両用フロアカーペットがフロアパネル上に敷設された状態の車幅方向に沿った縦断面図であり、図1(b)は、前記車両用フロアカーペットの部分拡大縦断面図である。
先ず、車体のフロアパネル100の構造について概略説明する。図1(a)に示すように、車体のフロアパネル100の中央部には、縦断面略コ字状でルーフ側に向かって突出して形成され、車体の前後方向に沿って延在するセンタトンネル102が設けられる。前記センタトンネル102の車幅方向に沿った両側には、車体の前後方向に沿って延在し、フロアパネル100から床上側に向かって膨出形成された一組のフロアフレーム104が設けられる。この場合、フロアパネル100の床上面を基準としてセンタトンネル102の高さ方向に沿った寸法は、フロアフレーム104の高さ方向の寸法に対して大きく設定されている。
車幅方向に沿った前記センタトンネル102と前記フロアフレーム104との間には、断面略矩形状の第1凹部106aが形成され、また、前記フロアフレーム104に隣接し前記センタトンネル102から車幅方向に沿って離間する側には、断面略矩形状の第2凹部106bが形成される。
図1(a)及び(b)に示すように、車両用フロアカーペット10(以下、単に、カーペット10という)は、前記第1凹部106a及び第2凹部106bに対応する形状からなり、該第1凹部106a及び第2凹部106bにそれぞれ装填され、カーペット10の下層に設けられる第1スペーサ12a及び第2スペーサ12bを含む。
前記第1スペーサ12a及び第2スペーサ12bは、前記フロアフレーム104の上面と略面一に形成されたブロック体からなり、好適にはポリプロピレン発泡体(ビーズ法ポリプロピレンフォーム材)によって構成される。前記第1スペーサ12a及び第2スペーサ12bの上面と、前記フロアフレーム104の上面とを略面一に形成することにより、フロアの平坦化を達成することができる。
さらに、前記カーペット10は、フロアフレーム104の上面を被覆して前記第1スペーサ12a及び第2スペーサ12bの上面に積層され、カーペット10の中間層に設けられる第1フェルト材(遮音層)14aと、前記第1フェルト材14aの上面に積層され、カーペット10の中間層に設けられる遮音シート体(樹脂シート体)16と、前記遮音シート体16の上面に積層され、カーペット10の上層に設けられる第2フェルト材(吸音層)14bと、前記第2フェルト材14bの上面に設けられる表皮材18とを有する。
この場合、カーペット10は、下層の第1及び第2スペーサ12a、12b、中間層の第1フェルト材14a、遮音シート体16、上層の第2フェルト材14b並びに表皮材18が、例えば、ホットメルト接着剤等の結合手段によって一体的に結合される。なお、第1スペーサ12a及び第2スペーサ12bの両者を総称してスペーサ12という。
前記スペーサ12は、縦方向に沿った厚さ寸法が約30〜45mmからなるポリプロピレン発泡体によって構成される。このスペーサ12は、多孔質に形成されることにより、吸音性を有する。この場合、樹脂材料としては、ポリスチレンフォーム材、ポリエチレンフォーム材等が周知であるが、前記フォーム材は、金属と接触したときに擦れ音が発生するおそれがあり、その対策として前記フォーム材の表面を不織布等で被覆する必要がある。なお、ポリプロピレンフォーム材を使用した場合、この対策は不要となる。
また、前記スペーサ12として、例えば、ポリウレタンフォーム材を用いた場合、擦れ音の発生を防止することができるが、所定の剛性を確保するために高密度なポリウレタンフォーム材に形成する必要があり、製造コストが高騰し、重量が増加するという他の不具合があり好ましくない。
さらに、前記スペーサ12には、第1フェルト材14a側からフロアパネル100側に向かって延在し、前記フロアパネル100側が閉塞(閉止)されると共に、前記第1フェルト材14a側に開口部を有する複数の有底孔部20が形成される。換言すると、フロアパネル100側であるスペーサ12の下部側は非貫通で、スペーサ12の上面である第1フェルト材14側に向かって開口する複数の有底孔部20が形成される。
このように、ポリプロピレン発泡体からなるスペーサ12に複数の有底孔部20を設けることにより、自動車が走行する際に発生する、所謂ロードノイズ等の車外から進入する騒音を前記スペーサ12の下側部分によって遮蔽する。仮に、途中で閉塞されることがなく上下面を貫通する貫通孔(図示せず)をスペーサ12に複数個設けた場合、車外からの騒音が前記貫通孔を通じて車室内に伝達されるおそれがある。従って、本実施形態では、前記スペーサ12に形成された複数の有底孔部20によって車両外の騒音を遮音して車室内の静穏化を達成することができる。なお、前記複数の有底孔部20の配置関係、形状等については、実施例で後記する。
前記スペーサ12の上面に積層される前記第1フェルト材14aは、遮音シート体16と共働して車外騒音を遮音するために設けられる。この第1フェルト材14aは、例えば、有機繊維、無機繊維、又は各種繊維製品からのリサイクル繊維等を原材料としてこれらを解繊し、熱可塑性樹脂をバインダとして加熱した熱可塑フェルト材料(熱可塑性フェルト材料)、熱硬化性樹脂をバインダとして加熱したレジンフェルト材料又はニードルパンチ加工によるニードルフェルト材料等のいずれかによって構成されるとよい。
なお、上記各種フェルト材料に代替して、例えば、ポリウレタンフォーム材料、塩化ビニルフォーム材料等の合成樹脂フォーム材料等を用いてもよい。
前記第1フェルト材14aは、例えば、その厚さが約5〜10mm、目付け量(1m当たりの繊維の重量)が500g/m〜900g/mに設定されることにより、遮音性能の維持、重量及び製造コスト等をバランスさせた場合に最適である。
前記遮音シート体16は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)系樹脂シート体によって構成されるとよい。この場合、前記遮音シート体16は、引張強度が高いため、スポットの足踏み荷重に対して周囲で保持されることにより、撓みが抑制されて上層における剛性が確保される。
なお、前記遮音シート体16として他には、例えば、工業用アスファルト、合成ゴム、天然ゴム又は再生ゴム等のいずれかを主原料とし、これに各種の充填材を混合、混練し、圧延加工されたゴム製シート体を用いてもよい。さらに、前記ゴム製シート体以外として、従来から公知の遮音用シート体を用いてもよい。
前記遮音シート体16の上面に積層される第2フェルト材14bは、車室内に発生する騒音を吸音するために設けられる。前記第2フェルト材14bとしては、前述したように、熱可塑性樹脂をバインダとして加熱した熱可塑フェルト材料(熱可塑性フェルト材料)、熱硬化性樹脂をバインダとして加熱したレジンフェルト材料又はニードルパンチ加工によるニードルフェルト材料等のいずれかによって構成されるとよい。好適には、第2フェルト材14bとして熱可塑フェルト材料を用いることにより、ホルムアルデヒドフリーとなって環境及び健康に対する影響を配慮することできると共に、リサイクル性の向上を達成することができる。
前記第2フェルト材14bは、自動車のフロアに追従させるために所望の成形加工を施すことが可能な程度の厚さであればよい。また、第2フェルト材14bの目付け量としては、400g/m〜1400g/mに設定されることにより、吸音性能の維持、重量及び製造コストをバランスさせた場合に最適である。
前記第2フェルト材14bの上面には、表皮材(カーペット材)18が設けられる。従来から、カーペット裏打ち材として、重量物からなるマスバック材が使用されている。しかしながら、このマスバック材は遮音性に優れた特性を有するが、車室内の音を吸音する吸音特性を持っていないと共に、軽量化を図る観点から好ましくない。従って、本実施形態で使用される表皮材18としては、成形後において通気性を有し、軽量且つ吸音性に優れたものを選択するとよい。
本実施形態に係る車両用フロアカーペット10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
本実施形態に係るカーペット10では、遮音シート体16を中間位置とし、フロアパネル100側に遮音層(第1フェルト材14a)、車室内側に吸音層(第2フェルト材14b)とすることで、吸遮音特性を併有でき、車室の内外で発生する騒音を効率的に低減することができる。そして、本実施形態に係るカーペット10では、その下層に、例えば、ポリプロピレン発泡体によって構成されたスペーサ12をフロアフレーム104の上面と略面一に設けることにより、フロアの平坦化を達成することができると共に、前記スペーサ12に設けられた複数の有底孔部20を介して車室外から進入する騒音に対して遮音性が発揮され、しかも、後記するように、足踏み時における沈み込み量が低減される。この結果、本実施形態に係るカーペット10では、フロアの平坦化と足踏み剛性確保とを両立させることができる。
また、本実施形態に係るカーペット10では、脆弱層である第1フェルト材14aと第2フェルト材14bとの間に、遮音機能を有し樹脂製シートからなる遮音シート体16を介装することにより、フロアフレーム104の上方に位置する薄肉な部位であっても所望の剛性を確保することができる。すなわち、下層側の第1フェルト材14a及び上層側の第2フェルト材14bがそれぞれ可撓性を有する部材で構成されているが、前記第1フェルト材14aと前記第2フェルト材14bの中間に前記可撓性を抑制する遮音シート体16を設けることにより、カーペット10全体として剛性が確保されて形状安定性を達成することができる。
さらに、本実施形態に係るカーペット10では、下層の第1及び第2スペーサ12a、12b、中間層の第1フェルト材14a、遮音シート体16、上層の第2フェルト材14b並びに表皮材18が、例えば、ホットメルト接着剤等の結合手段によって一体的に結合されることにより、車両の組み付けラインにおいて、極めて短時間でフロアパネル100に対して位置決めされた状態で1回の作業工程で簡便に装着することができる。
さらにまた、本実施形態に係るカーペット10では、フロアフレーム104上に配置される薄肉な部分が、第1フェルト材14aと第2フェルト材14bの中間に介装された遮音シート体16によって所望の剛性を確保することができる。この結果、本実施形態に係るカーペット10では、フロアパネル100の第1凹部106a及び第2凹部106bにそれぞれ装填される肉厚なスペーサ12を、前記フロアフレーム104上に配置される薄肉な部分によって好適に保持することができ、前記第1凹部106a及び第2凹部106bへの装填作業が容易となる。
仮に、前記フロアフレーム104上に配置される薄肉な部分において所望の剛性が確保されない場合には、ポリプロピレン発泡体からなるスペーサ12の重量作用下に前記薄肉な部分が撓曲して形状が安定せず、作業者によるフロアパネル100への取付作業に困難を伴うと共に、取付作業に時間がかかって作業効率が悪くなるという不具合が発生するからである。
またさらに、本実施形態に係るカーペット10では、比較的に重量物であるスペーサ12に複数の有底孔部20を設けることにより、カーペット10全体における重量を軽減させて軽量化を図ると共に、成形材料の節減化を達成することができる。
このように、本実施形態に係るカーペット10では、車室の内外で発生した騒音の低減化を達成することができると共に、形状が安定して組み付け作業性及び組み付け効率を向上させることができる。
次に、図2(b)の向かって右側に示される本実施例に係るカーペットのテストピースと、図2(b)の向かって左側に示される第1比較例に係るカーペットのテストピースとを用いて、足踏み感に関する実験を行った。
本実施例に係るテストピースとしては、以下のものを用いた。
スペーサ12は、その上下方向に沿った全体の厚さが約25mmからなるポリプロピレンフォーム材を用い、ブロック体の上面(平面)における表面積に対して複数の有底孔部20の開口率が約10%、単一の有底孔部20の開口面積が約75mm(単一の有底孔部20の直径が約10mm)、前記有底孔部20の深さ(スペーサ12上面の開口部から閉塞された有底孔部20の底部までの距離)が約15mmに設定されたものを用いた。
また、複数の有底孔部20は、スペーサ12を平面視して均等に配置し、その有底孔部20の横断面(軸線方向と直交する方向の断面形状)が、丸断面形状に設定されたものを用いた。
第1フェルト材14aは、その厚さが約6mmからなり、目付け量が600g/mからなり、その材質が、ポリエステル、雑反毛(反毛)等からなるニードルフェルトを用いた。
遮音シート体16は、その厚さが約2mmからなり、その材質が、合成ゴム、熱可塑性樹脂、充填材等からなる樹脂製シート体を用いた。
第2フェルト材14bは、その厚さが約10mmからなり、目付け量が1000g/mからなり、その材質が、ポリエステル、雑反毛(反毛)、バインダ繊維からなる熱可塑フェルトを用いた。
表皮材18は、その厚さが約5mmからなり、その材質が、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンからなるカットパイルカーペットを用いた。
前記第1比較例に係るテストピースは、図2(b)に示すように、下層に上下方向に沿った厚さが約20mmからなるウレタンと、前記ウレタンの上面に積層され、その厚さが約1.5mmからなる遮音材と、前記遮音材の上面に積層され、その厚さが約20mmからなるフェルトと、前記フェルトの上面に設けられ、厚さが約3.5mmからなる表皮材とから構成されるものを用いた。
本実験では、図2(a)に示すように、同一の所定寸法(縦×横×厚さ)を有するテストピースを測定物とし、テストピースの上面に半径約75mmからなる円盤体56を載置した状態において、前記円盤体56に対して図示しない加圧機構を介して加圧力F(約300N)を鉛直下方向に付与したときの沈み込み量d(mm)をそれぞれ測定した。その測定結果を図2(c)に示す。
この加圧力300N(≒30kgf)は、一般的なモデルケースとして、例えば、体重約60kg相当からなる乗員がカーペットを踏みしめたことを想定して設定された荷重であり、また、乗員の足踏み範囲(例えば、つま先部分)を想定し、前記想定された乗員の足踏み範囲に対応して円盤体56の半径を約75mmに設定したものである。
図2(c)から諒解されるように、第1比較例に係るテストピースでは、沈み込み量dが10mmであったのに対し、本実施例に係るテストピースでは、沈み込み量dが5mmに半減した。この第1比較例及び本実施例における沈み込み量dは、フロアフレーム104に隣接した第1凹部106a(又は第2凹部106b)における沈み込み量dに相当するものである。
これに対して、第1比較例に係るテストピースから下層のウレタンの一部を除去したものを他のテストピースとし、本実施例に係るテストピースから下層のスペーサ12を除去したもの(第1フェルト材14a、遮音シート体16、第2フェルト材14b、及び表皮材18のみによって構成されるもの)を他のテストピースとして同一の厚さに設定し、前記と同様に加圧力Fを付与した場合、それぞれ沈み込み量dが3mmと同一であった。この沈み込み量dは、フロアフレーム104の上方部位のカーペット10における沈み込み量に相当するものである。
以上から、第1比較例に係るテストピースでは、フロアパネル100の凹部106a(106b)における沈み込み量10mmと、フロアフレーム104上における沈み込み量3mmとの間で7mmの沈み込み量の差(10−3=7)が発生し、乗員に違和感を与えるおそれがある。これに対して、本実施例に係るテストピースでは、フロアパネル100の凹部106a(106b)における沈み込み量5mmと、フロアフレーム104上における沈み込み量3mmとの間で2mmの沈み込み量の差(5−3=2)が発生し、乗員に違和感を与えることがなく、良好な踏み込み感を奏するものと考えられる。
この結果、第1比較例に係るテストピースでは、フロアパネル100の凹部106a(106b)における沈み込み量が大きく、前記凹部106a(106b)とフロアフレーム104上との沈み込み量の差が大きいことから不適(図2(c)中の×参照)であると判定し、一方、本実施例に係るテストピースでは、前記凹部106a(106b)とフロアフレーム104上との沈み込み量の差が小さく、乗員に対して違和感を与えることがないと思われるため適正(図2(c)中の○参照)であると判定した。
なお、乗員の体重が約60kg相当の加圧力Fが付与されることを条件として、フロアパネル100の凹部106a(106b)における足踏み時の沈み込み量dは、実験乃至シミュレーションに基づいて、6mm以下に設定されると好適であることがわかった。本実施例に係るテストピースでは、この沈み込み量dが5mmで前記沈み込み量の適正範囲を充足している。
図3(a)は、本実施例と第2比較例との騒音レベル差を示す特性図である。なお、第2比較例に係るテストピースとしては、図3(b)に示すように、下層にウレタン製吸音材からなる吸音層50を形成し、その吸音層50の上面にマスバックからなる遮音層(重量層)52を積層して中間層とし、その遮音層52の上面に表皮材54を設け、本実施例に係るテストピースと同一の所定寸法(縦×横×厚さ)からなるものを用いた。また、本実施例に係るテストピースは、図2(b)に示したものと同一である。
この特性図では、Y軸に周波数(Hz)をとり、X軸に本実施例と第2比較例との音圧レベル差であるΔSPL(Sound Pressure Level)をとっており、前述した第2比較例は、前記ΔSPLが零でY軸に対応する。図3(a)から諒解されるように、本実施例では、低域周波数領域で遮音効果が得られると共に、中域周波数領域から高域周波数領域にかけて吸音効果を得ることができた。
この結果、本実施例では、吸遮音効果を併有すると共に、遮音効果を劣化させることがなく高い吸音効果を得ることができた。また、車室内のトータルした音レベルで判断すると、全周波数領域で良好な吸遮音効果を得ることができた。
換言すると、一般的に、タイヤやエンジン音は低域周波数領域に属し、風や排気音は高域周波数領域に属するが、本実施例では、低域周波数領域から高域周波数領域にわたる幅広い周波数領域において、十分な吸遮音特性を達成することができた。
(a)は、本発明の実施形態に係る車両用フロアカーペットがフロアパネル上に敷設された状態の車幅方向に沿った縦断面図であり、(b)は、前記車両用フロアカーペットの部分拡大縦断面図である。 (a)は、カーペットの沈み込みを測定する実験方法を示す図であり、(b)は、本実施例及び第1比較例に係るテストピースの構造を示す縦断面図であり、(c)は、前記実験の測定結果を示す図である。 (a)は、本実施例と第2比較例との騒音レベル差を示す特性図であり、(b)は、第2比較例に係るテストピースの構造を示す縦断面図である。
符号の説明
10 車両用フロアカーペット
12a、12b スペーサ
14a 第1フェルト材(遮音層)
14b 第2フェルト材(吸音層)
16 遮音シート体(樹脂シート体)
18 表皮材
100 フロアパネル
104 フロアフレーム

Claims (1)

  1. 車両の車室内に敷設される車両用フロアカーペットであって、
    フロアパネルの床面に上方に向かって膨出形成されたフロアフレームによって形成された前記フロアパネルの凹部に装填され、前記フロアパネルの床面に膨出形成されたフロアフレームの上面と略面一に形成されたポリプロピレン発泡体からなるスペーサと、
    前記スペーサの上面に積層され、前記フロアフレーム及び前記スペーサを略水平面に沿って被覆する遮音層と、
    前記遮音層の上面に積層される樹脂シート体と、
    前記樹脂シート体の上面に積層される吸音層と、
    前記吸音層の上面に設けられる表皮材と、
    を備え、
    前記スペーサには、前記遮音層から前記フロアパネル側の下部に向かって延在し、前記フロアパネル側が閉塞されると共に前記遮音層側に開口部を有する複数の有底孔部が形成され
    前記遮音層は、第1フェルト材を有し、
    前記吸音層は、第2フェルト材を有し、
    前記第2フェルト材の厚さは、前記第1フェルト材の厚さよりも大きく設定されることを特徴とする車両用フロアカーペット。
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