JP6011418B2 - 自動車用フロアカーペットの構造 - Google Patents
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Description
図7に、従来のカーペットの構造の一例を模式的に示す。図7に車幅方向の断面図を示すように、一般に、フロアパネル110には、図示しないプロペラシャフトを通すためのセンタートンネル部111,サイドシル120と結合するサイドシル結合部112が設けられ、補強のための波型断面部113が設けられている場合もある。なお、波型断面部113は、フレーム相当の構造要素になるので、フロアフレームとも呼ぶ。これらのセンタートンネル部111,サイドシル結合部112及び波型断面部113は、それぞれフロアパネル110の前後方向に延びて形成され、フロアパネル基面115よりも高くなった箇所であり、以下、これらを総称して「突出部」という。
つまり、図7に示すように、カーペット130は、その下面がフロアパネル110の突出部111,112,113に対応して凹凸を持ったものに成形される。一方で、カーペット130の表面は、車室内空間を広くすると共に乗員が足を乗せ易いように、できるだけ上方(車室側)への突出を抑えて低い位置でフラットに成形される。
また、上述したように、上方に突出するセンタートンネル部111及びサイドシル部120,120に被覆する部分のカーペット130は、車室内空間を広くするために薄く成形されて車室側への突出を抑えているので、これらの部分の中間層134は薄肉箇所133a,133c,133dとなる。
この場合、カーペット130の厚みを増大させることなく遮音性能を向上させなくてはならない。二重壁効果が期待できない限り、例えば、表皮材層131をより面密度の高いものにすることが考えられるが、これにも限度がある。そこで、例えば図7に二点鎖線で示すように、表皮材層131の裏面の全面に遮音層を追加することも考えられる。いずれにしても、カーペット130の質量を増やすことにより、質量則に基づいて遮音性能を向上させる必要がある。
一方、カーペットには、組み付け時に作業者が無理なく持ち運ぶことができるように重量制限が設けられているため、遮音層を過剰に追加すれば、カーペットの重量増が過剰になり、カーペットの重量が重量制限を超えてしまって一枚ものでは扱えなくなってしまう。
(2)前記フロアパネルの中央部にはフロアパネル基面よりも上方に突出したトンネル部が前後に延びて形成され、前記フロアパネルの左右端部のサイドシルと結合する箇所には前記フロアパネル基面よりも高くなったサイドシル結合部が前後に延びて形成され、前記薄肉箇所は、前記トンネル部及び前記サイドシル結合部を含む、前記フロアパネル基面よりも高くなった箇所に対応して設けられていることが好ましい。
(4)また、前記表皮材層には高密度で且つ非通気もしくは通気抵抗の大きい材料が用いられ、前記中間層には低密度で且つ通気抵抗の小さい材料が用いられ、前記部分遮音層には高密度で且つ非通気もしくは通気抵抗の大きい材料が用いられていることが好ましい。
(4)また、表皮材層及び部分遮音層には高密度で且つ非通気もしくは通気抵抗の大きい材料が用いられ、中間層には低密度で且つ通気抵抗の小さい材料が用いられれば、表皮材層とフロアパネルとによる二重壁効果によって高い遮音性能を確実に得ることができ、部分遮音層によって質量則に基づく遮音性能を確実に得ることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用フロアカーペットの構造を示すもので、前席の足元部分における車幅方向全体の模式的な断面図であり、自動車のフロアパネル10上にフロアカーペット30が敷設された状態を示している。なお、本実施形態に係る自動車用フロアカーペットの構造は、図1の断面では左右対称の構造となっている。
フロアパネル10の車幅方向中央部には、図示しないプロペラシャフトを通すために、断面が略コ字状でフロアパネル基面15よりも鉛直上方(車室側)に突出したトンネル部11が前後に延びて形成されている。また、フロアパネル10の左右端部のサイドシル20,20と結合する箇所には、フロアパネル基面15よりも鉛直上方にやや高くなったサイドシル結合部12,12がそれぞれ前後に延びて形成されている。なお、このサイドシル結合部12,12とサイドシル20,20とは、スポット溶接などにより接合されている。また、図1においては省略しているが、車室内前部の運転席と助手席との間のトンネル部11には、その上端部にセンターコンソール装着用の穴部が設けられている。
なお、本発明に係る自動車用フロアカーペットの構造は、上述したような形状のフロアパネルに限定されず、例えば、トンネル部,サイドシル結合部及び波型断面部を有さないフロアパネル上に敷設されるカーペットに対しても適用することができる。
図1に示すように、カーペット30は、表皮材層31とその裏面側の中間層34とを有していて、フロアパネル10上への敷設時に、表皮材層31が、中間層34を介してフロアパネル10と離隔して配置され、フロアパネル10と協働して二重壁構造を構成するようになっている。
図1に示すように、カーペット30の上層部分を形成する表皮材層31は、フロアパネル10のトンネル部11及びサイドシル20,20に対応する部分を除いて、乗員が足を乗せ易いようにフラットに形成されている。また、表皮材層31において、フロアパネル10のトンネル部11及びサイドシル20,20に対応する部分に沿って敷設される個所は、各部の平面に沿ってフラットに形成されている。
そこで、本実施形態のカーペット30は、中間層34の厚みが、遮音性能上一定以上の二重壁効果が得られ、且つ、カーペット30の上面をできるだけ低く設定することができるように設定されている。なお、本実施形態では、中間層34の基準的な厚みは10〜20mmとなっている。
なお、薄肉箇所は上記のものに限定されず、中間層34に部分的に設けられ、且つ、厚みが所定の厚み以下となり二重壁効果が得られ難い箇所であれば、如何なる箇所も該当し得る。例えば、中間層34に部分的に設けられた厚みの無い箇所も薄肉箇所となる。
図4は、カーペット30及び部分遮音層32の上面図を示している。図4に示すように、部分遮音層32は、シート状のオレフィンを型抜きした一枚ものであり、カーペット30の薄肉箇所に対応して形成されている。また、カーペット30には、図示しない運転席と助手席との間にセンターコンソールを介装するための穴部35が、フロアパネル10のトンネル部11に設けられた穴部と対応させて設けられている。なお、図4に示した実線はカーペット30を構成する複数の面(平面又は略平面)の境界線であり、図4に示した点線はカーペット30をフロアパネル10上へ敷設した際に、フロアパネル10の波型断面部13,13と対応する部分である。
なお、中間層34には、部分遮音層32を積層するための凹みを設けても良い。つまり、中間層34の上面に、部分遮音層32に応じた凹凸を形成し、中間層34と部分遮音層32とがフロアパネル10と表皮材層31との間で隙間なく係合するように構成しても良い。
また、本実施形態では、中間層34がフェルトなどの材料で均一に充填されているものとしているが、例えば薄肉箇所33eは、フェルトなどの材料が他の箇所よりも低密度に充填されていても良い。つまり、薄肉箇所33eはカーペット30の比較的小部分でしかないため、これ以外の箇所でカーペット30の剛性が十分に確保できるのであれば、薄肉箇所33eにはフェルトなどの材料が多少の隙間を持って設けられていても良い。
本実施形態に係る自動車用フロアカーペットの構造は上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
上述したように、カーペット30は、その表皮材層31とフロアパネル10とで二重壁構造を構成していて、これにより、遮音性能上一定以上の二重壁効果が得られるようになっている。また、カーペット30の上面はできるだけ低く設定されているため、車室内空間が確保されている。
また、フロアパネル基面15よりも上方に突出したトンネル部11及びサイドシル20と対応して、薄肉箇所33a,33c,33dが設けられているので、これらの部分におけるカーペット30を薄く形成することができるため車室内空間を確保することができる。
また、部分遮音層32は薄肉箇所33にのみ設けられるので、もともと二重壁効果の得られた部分に過剰な遮音性能を持たせることを回避しながら、弱点部位の遮音性能を効率よく向上させることができる。
図5は、シミュレーションによって得られた、本発明に係るカーペット30の各部の構造をモデル化して、その遮音性能(透過損失)と音の周波数との関係、即ち、遮音特性を、比較例モデルの遮音特性と共に示すグラフである。
図5には、実施例1,実施例2,比較例1及び比較例2の各モデルの特性を示すが、このうち、実施例1は、図6(a)に示すように、フロアパネル10上に敷設されたカーペット30のうち、薄肉箇所33に部分遮音層32が設けられた部分をモデル化したものである。また、実施例2は、図6(b)に示すように、フロアパネル10上に敷設されたカーペット30のうち、中間層34の厚みが所定の厚みより大きく、二重壁効果の得られる部分をモデル化したものである。
また、部分遮音層32は質量則に基づいて遮音性能を向上させるものであるので、部分遮音層32に、より高密度な材料を用いることによって、図5に二点鎖線で示すように、全周波数域の音に対する遮音性能をより向上させることができると考えられる。本発明の自動車用フロアカーペットの構造によれば、上述したように、従来は使用できなかった高密度な材料を部分遮音層32に使用することができるため、質量則に基づいて薄肉箇所33の遮音性能を効果的に向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲でかかる実施形態に対して種々の変形を加えて実施することができる。
例えば、表皮材層31,部分遮音層32及び中間層34の各材料は、上記のものに限定されず、カーペットの重量制限,要求される遮音性能,使用感などに応じて、種々の材料を適用することが可能である。この場合、表皮材層31及び部分遮音層32には、カーペット30の重量制限を超えない範囲でより高密度な材料を用いることによって、カーペット30の遮音性能を質量則に基づいてより向上させることができる。また、中間層34に吸音材料(多孔質材料)を用いれば、上述した遮音効果に加えて吸音効果も得ることができる。
11 トンネル部
12 サイドシル結合部
13 波型断面部
15 フロアパネル基面
20 サイドシル
30 カーペット
31 表皮材層
32 部分遮音層
33 薄肉箇所
34 中間層
Claims (5)
- 表皮材層と前記表皮材層の裏面側の中間層とを有し、
自動車のフロアパネル上への敷設時に、前記中間層を介して前記フロアパネルと離隔して配置される前記表皮材層が前記フロアパネルと協働して二重壁構造を構成する自動車用フロアカーペットの構造であって、
前記中間層には、厚みが所定の厚み以下の薄肉箇所が部分的に設けられ、
前記薄肉箇所にのみ部分遮音層が設けられている
ことを特徴とする、自動車用フロアカーペットの構造。 - 前記フロアパネルの中央部にはフロアパネル基面よりも上方に突出したトンネル部が前後に延びて形成され、前記フロアパネルの左右端部のサイドシルと結合する箇所には前記フロアパネル基面よりも高くなったサイドシル結合部が前後に延びて形成され、
前記薄肉箇所は、前記トンネル部及び前記サイドシル結合部を含む、前記フロアパネル基面よりも高くなった箇所に対応して設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載の自動車用フロアカーペットの構造。 - 前記部分遮音層はシート状材料を型抜きした一枚ものである
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の自動車用フロアカーペットの構造。 - 前記表皮材層には高密度で且つ非通気もしくは通気抵抗の大きい材料が用いられ、
前記中間層には低密度で且つ通気抵抗の小さい材料が用いられ、
前記部分遮音層には高密度で且つ非通気もしくは通気抵抗の大きい材料が用いられている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用フロアカーペットの構造。 - 前記部分遮音層は前記表皮材層と前記中間層の前記薄肉箇所との間に介装される
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車用フロアカーペットの構造。
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