JP4713892B2 - シリコンのスラグ精錬用ルツボ - Google Patents

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本発明は、太陽電池等の高純度が要求されるシリコンを製造するときの容器に用いるルツボに関する。
太陽電池等に用いられるシリコンは、高純度なものが求められる。特に、ボロンのように除去が困難な不純物については、種々の除去方法が提案されている。その中の1つに、スラグによる精錬法がある。このスラグによる精錬法では、スラグにアルカリを用いる方法が提案されている。この精錬法では、ルツボは溶損しないこと、割れないこと、また、誘導炉で精錬する場合には、スラグを加熱するために適度に発熱することが、望まれる機能である。
特許文献1では、塩基性スラグによるSiの精錬に用いるルツボとして、アルミナルツボを例示している。また、特許文献2では、太陽電池用Siの精錬において、SiC材質のルツボを例示している。
特開2003−12317号公報 特開2004−262746号公報
前述したように、シリコンの精錬のためには、溶損しないこと、割れないこと、また、誘導炉で精錬する場合には、スラグを加熱するために適度に発熱すること、の3つの条件が望まれる。図1に示されるように、ルツボ1が溶損2し、穴が開いた場合や、割れ3が発生した場合には、湯漏れが発生し、容器としての機能を果たさなくなる。また、誘導炉を使用した場合、ルツボ1が発熱しないと、電磁誘導を受けないスラグ4は、電磁誘導を受ける溶融シリコン5のみから熱が供給されることになる。このとき、シリコン5と接する表面積に比べスラグ4の量が多いと、スラグへの熱供給が不足し、固化したスラグ6がルツボ壁へ付着することになる。この付着量が多くなると、ルツボ1の入り口を塞ぎ、溶融シリコンやスラグの出し入れが困難になり、精錬ができなくなる。また、精錬初期に付着したスラグはボロン濃度が高く、このスラグが精錬末期に溶融シリコンに落下すると、シリコンはボロン汚染を受けることになる。これらのことから、3つの条件は、シリコン精錬においては必須であると言える。
特許文献1に開示されているアルミナルツボは、アルカリを含むスラグへの耐溶損性は優れている。しかし、割れに弱いことや誘導による発熱が無い等の不利な点もある。一方、特許文献2で開示されているSiCルツボは、割れることが少なく、また、誘導炉で用いる場合、誘導磁場により発熱する。しかし、アルカリや酸化性ガスによる溶損が大きい。
よって、従来のアルミナルツボやSiCルツボでは、溶損しないこと、割れないこと、また、誘導炉で用いる場合にはスラグを加熱するために適度に発熱することの3つを同時に満たすことができない。
そこで、本発明は、Siの高純度化にアルカリ金属塩又はアルカリ炭酸金属塩を含むスラグを用いるとき、又は、酸化性ガスを用いるとき、割れに起因する湯漏れやスラグの付着を防止するルツボ、さらにはスラグや酸化性ガスによる溶損を防止するルツボを提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって
(1) 高純度シリコンを製造するための酸化リチウム、酸化ナトリウム、炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムを含むスラグを用いる精錬に用いるルツボであって、
該ルツボの内側表面から20mm〜80mmまでの厚み部分は、その90質量%以上がアルミナで、残部がシリカ、酸化ソーダ、カルシア、酸化鉄から構成され、
該ルツボの外側表面から20mm〜60mmまでの厚み部分は、その80〜95質量%がアルミナで、残部はCで構成される
ことを特徴とするシリコンのスラグ精錬用ルツボ、
(2) 高純度シリコンを製造するための酸化リチウム、酸化ナトリウム、炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムを含むスラグを用いる精錬に用いるルツボであって、
該ルツボの内側表面から20mm〜80mmまでの厚み部分は、その90質量%以上がアルミナで、残部がシリカ、酸化ソーダ、カルシア、酸化鉄から構成され、
該ルツボの外側表面から20mm〜60mmまでの厚み部分は、その25〜80質量%がSiCで、残部の50質量%〜80質量%がCで、SiCとCの残部はSiO で構成される
ことを特徴とするシリコンのスラグ精錬用ルツボ
ある。
本発明のルツボを用いることによって、太陽電池用シリコンの精錬において、ルツボの溶損を低減し、割れを無害化し、さらに、誘導炉を用いる場合には適度に発熱するのでスラグのルツボへの付着を防止することができる。
本発明は、図2に示すように、高純度シリコンを製造するためのアルカリ金属塩又はアルカリ金属炭酸塩を含むスラグを用いる精錬に用いるルツボであって、該ルツボの少なくともスラグが接触する部分8に、溶損の少ないアルミナ材質を用いる。この際、ルツボの内側は、少なくともスラグが接触する部分がアルミナ材質で構成されていればよいが、スラグが接触する部分の上方向に、スラグの発泡に対応するため、少なくともスラグが接触する部分の厚みに対して2〜3倍程度の余裕をもたせて、および/または、スラグが接触する部分の下方向に、液面のゆらぎに対応するため、少なくとも30%程度の余裕をもたせて、アルミナ材質で構成されることが好ましく、作製の容易さなどを考慮すると、ルツボの内側全体がアルミナ材質で構成されることがより好ましい。
さらに、前記ルツボのスラグと接触しない部分および/または前記ルツボの外側7が、割れが生じ難く、また、誘導炉において発熱する、アルミナとCを主成分とする材質、又は、SiCとCを主成分とする材質から構成されることが好ましい。この際、前記ルツボのスラグと接触しない部分および/またはルツボの外側7は、一部がアルミナとCを主成分とする材質から構成され、及び残部がSiCとCを主成分とする材質から構成されるなど、これらの組み合わせによって構成されていてもよいが、作製の容易さなどを考慮すると、ルツボの外側7全体が、アルミナとCを主成分とする材質またはSiCとCを主成分とする材質から構成されることが好ましい。
ここで言うアルミナ材質とは、全質量に対して90質量%以上がアルミナで、残部がシリカ、酸化ソーダ、カルシア、酸化鉄、等で構成される材質である。アルミナが90%を下回ると、融点が下がり、精錬中に温度を高くできなくなる。
また、アルミナとCを主成分とする材質とは、アルミナが全質量に対して80質量%以上95質量%以下であり、残部がカーボン(C)で構成される材質である。アルミナが80質量%を下回ると、大気による酸化による損耗が深刻になり、95質量%を超えると、スポール割れを起こし易くなる。
さらに、SiCとCを主成分とする材質とは、SiCが全質量に対して25質量%〜80質量%、残部の50質量%〜80質量%までがCで、SiCとCの残部は、SiO等で構成される材質である。この範囲内であれば、ルツボを製造する際の成形性、耐割れ性が良好である。もし、これらの条件の範囲外であれば、使用したときの熱衝撃割れが顕著となってしまう。
このルツボを用いた場合、内側の全面或いは少なくともスラグの接触する部分がアルミナ材質なので、アルカリを含んだスラグや酸化性ガスによる耐溶損性には優れている。また、内側8のアルミナ材質の部分に割れ3が発生したとしても、外側7のSiCとCを主成分とする材質やアルミナとCを主成分とする材質の部分が割れずにアルミナの形状を保持するので、割れた部分から少量のシリコンやスラグが染み入る程度で、ルツボ外にスラグやシリコンが漏れ出ることはない。さらに、誘導加熱を用いたとき、外側7のSiCとCを主成分とする材質やアルミナとCを主成分とする材質が発熱するので、スラグが固化してルツボ壁に付着し堆積することも少ない。
内側のアルミナ材質の厚みは、20mm以上80mm以下が望ましい。20mmよりも薄いと、割れたときのスラグやシリコンの侵入が多く、外側の材質を損耗させる可能性がある。一方、80mmよりも厚いと、外側の材質で発熱した熱が伝達され難いので、ルツボの内側にスラグが付着する可能性がある。
また、外側のSiCとCを主成分とする材質やアルミナとCを主成分とする材質の厚みは、20mm以上60mm以下が望ましい。20mmよりも薄いと、強度的に弱くなり易く、発熱量が少なくなる可能性がある。一方、60mmよりも厚いと、使用後の変形が大きく、繰り返し使用する際の取扱いが困難である。
以上のように、本発明のシリコンのスラグ精錬用ルツボを用いると、アルカリ金属塩あるいはアルカリ金属炭酸塩を含むスラグを用いたシリコンの精錬において、ルツボの溶損を低減し、割れを無害化し、さらに、誘導炉を用いる場合には、適度に発熱するので、スラグのルツボへの付着を防止することができる。
なお、本発明は、ルツボの少なくともスラグが接触する部分がアルミナ材質であることを特徴とするものであり、その他の構成要件、例えば、ルツボの大きさ、スラグを構成するアルカリ金属塩やアルカリ金属炭酸塩などについては、公知と同様の要件が使用でき、例えば、アルカリ金属塩としては、酸化リチウムおよび酸化ナトリウム等などが;およびアルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムなどが、それぞれ、挙げられる。また、本発明で使用されるスラグ材料は、他の添加剤を含むであってもよく、この際、他の添加剤としては、公知の添加剤が使用でき、例えば、炭酸水素リチウム、珪酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、珪酸ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムまたはフッ化カルシウム等が使用できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特記されない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例1及び2、比較例1及び2
溶融シリコンをスラグで精錬する実験を行った。シリコン質量は20kg、スラグはNaOとSiOで、そのモル比が3:1のものを10kg使用した。また、精錬炉には誘導炉を用いた。精錬時間は10時間、精錬後は、熱間で溶融したシリコンとスラグを排出する。ルツボが冷えてから、ルツボの性状を調査、評価した。もし、ルツボの損傷が少なく、精錬の継続が可能と判断できた場合は、同様の実験を繰り返し、何回使用できるかを調査した。継続の判断基準は、損耗厚みが3mm以内且つルツボ外への湯漏れが無いことである。
使用したルツボは、材質がアルミナ材質(材質A)(比較方式1)、SiCとCを主成分とする材質(SiC35%、C45%:材質B)(比較方式2)、内側が材質Aで、外側がアルミナとCを主成分とする材質(アルミナ85%、グラファイト15%:材質C)(本発明方式1)、内側が材質Aで、外側が材質B(本発明方式2)の4通りについて、比較した。ルツボのサイズは、いずれも外径400mm、内径300mmで、深さ375mmであった。また、本発明方式1、2では、内側の材質と外側の材質は同じ厚みで、それぞれ25mmとし、比較方式1、2での、各材質の厚みは、それぞれ25mm及び30mmとした。比較方式2以外の方式は、内側がアルミナであり、シリコンが溶解しないので、ルツボの底にカーボンの板を設置し、カーボンの発熱でシリコンを溶解した。
調査の結果を表1に示す。表1に示したように、損耗厚みは、比較方式2に比べ、比較方式1及び発明方式1、2の方が少ない。即ち、溶損は、アルミナ材質がSiC材質に比べ少ないと言える。また、割れは、比較方式1、本発明方式1、2で見られた。しかし、本発明方式1、2では、内側のアルミナの部分のみが割れていた。しかも、割れの起点は内側で、外周に到達しているものは少なく、スラグやシリコンの外側の材質への付着は少なかった。これは、外側の材質が内側のアルミナを支持・拘束した結果、アルミナで発生した割れの進展を抑制したものと考えられる。この結果、外側の材質の溶損は見られなかった。また、ルツボへのスラグの付着は、比較方式1のみで見られ、比較方式2、本発明方式1、2では見られなかった。比較方式2、本発明方式1、2では、SiCとCを主成分とする材質やアルミナとCを主成分とする材質が発熱したためと考えられる。また、使用可能な回数は、比較方式1、2に比べ、本発明方式の方が格段に多いことも判った。
以上の結果より、本発明方式では、シリコンの精錬のためのルツボに望まれる3つの条件である、溶損しないこと、湯漏れしないこと、スラグが付着しないことの全てが満たされていることが判った。
従来方式の課題を示した図である。 本発明方式を示した図である。
符号の説明
1・・・ルツボ、
2・・・溶損部分、
3・・・割れ、
4・・・スラグ、
5・・・溶融シリコン、
6・・・固化したスラグ、
7・・・ルツボの外側、
8・・・ルツボの内側。

Claims (2)

  1. 高純度シリコンを製造するための酸化リチウム、酸化ナトリウム、炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムを含むスラグを用いる精錬に用いるルツボであって、
    該ルツボの内側表面から20mm〜80mmまでの厚み部分は、その90質量%以上がアルミナで、残部がシリカ、酸化ソーダ、カルシア、酸化鉄から構成され、
    該ルツボの外側表面から20mm〜60mmまでの厚み部分は、その80〜95質量%がアルミナで、残部はCで構成される
    ことを特徴とするシリコンのスラグ精錬用ルツボ。
  2. 高純度シリコンを製造するための酸化リチウム、酸化ナトリウム、炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムを含むスラグを用いる精錬に用いるルツボであって、
    該ルツボの内側表面から20mm〜80mmまでの厚み部分は、その90質量%以上がアルミナで、残部がシリカ、酸化ソーダ、カルシア、酸化鉄から構成され、
    該ルツボの外側表面から20mm〜60mmまでの厚み部分は、その25〜80質量%がSiCで、残部の50質量%〜80質量%がCで、SiCとCの残部はSiO で構成される
    ことを特徴とするシリコンのスラグ精錬用ルツボ。
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