JP4707045B2 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中高圧用電解コンデンサの陽極箔に好適な電解コンデンサ電極用アルミニウム箔に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造では、純度99.9%以上(例えば純度99.980%以上)の純アルミニウムを使用し、これを常法により熱間、冷間圧延し、最終焼鈍した後、表面の粗面化処理、所定の化成処理(陽極酸化)が行われる。
上記した粗面化処理はアルミニウム箔の表面積の拡大を目的としたものであり、一般に塩酸を主体とした電解液の中で電気化学的に処理して多数のキャピラリー状ピットを形成させる。この1つずつのピットは箔面に垂直に伸びて箔の表面積の増大をもたらし、未処理のものに比べて高い静電容量をもたらす。この粗面化における表面積拡大率が大きい程、コンデンサの電極に用いる際に使用する箔の量は少なくて済み、小型化及び省資源に寄与することができる。
このため粗面化処理における拡大率を高めるため、コンデンサメーカでは粗面化処理条件の研究がなされており、一方、原箔の供給者である箔圧延メーカでは粗面化処理で高い粗面化率(拡大率)が得られる箔について種々の研究がなされている。例えば、アルミニウム箔素地に微量成分を添加し、該成分を起点にしてピットを高密度で形成する方法も提案されている(特開昭57−194516号等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来例では、以前に比べて粗面化率は向上したものの、エッチングピットの不均一分布は無くなっていなく、最近のさらなる市場の要求である小型化、高容量化の要求には対処しきれなくなっているのが現状である。
本発明者は、ピットの不均一性に関し、さらなる研究を行ったところ、アルミニウム箔の表面仕上げ状態がエッチングピットの形成に関与しているのではないかと考えた。そして中高圧電解コンデンサ用アルミニウム箔の表面仕上げ状態は最終冷間圧延時のロール粗度、及びロールとの表面摩擦による歪の程度に大きく依存する。
【0004】
一般には中高圧電解コンデンサアルミニウム箔の最終冷間圧延では、一つの溝の平均が約1μmの深さで、溝の間隔が約1μmのロール目をもつロールが用いられる。
このロールでアルミ箔の圧延を行うとロール目の凹凸と反対の圧延目がアルミ箔に転写される。最近発明者らは、このようなロール目をもつロールで最終圧延を行い、その後、中高圧用の最終焼鈍(500℃以上)を行った場合でさえも、この圧延目に沿った部分でロール目の谷付近、即ち箔側から見れば山付近にかけ非常に高い転位密度(>5個/μm2)が存在することを発見した。
また一般に箔の電気化学的粗面化処理(エッチング)では、その中間段階までは箔の転位密度が高い部分のみが集中してエッチングされ、いわゆる筋状エッチングの状況になり均一なエッチングピット発生になっていない。上記粗面化処理により箔にはトンネルピットが数多く発生するが、上記筋状に発生している高密度転位領域が優先的にエッチングされることによりトンネルピットの発生もこの部分に優先的に発生するものと考えられる。そして粗面化処理の最終段階では初期にピットの発生しなかった部分(転位密度の低い領域)もピットの発生を見るが、ピット発生が遅れることによりピットの長さが短く且つ径も細いため粗面化への効果が少ない。結局トータルの粗面化率はピット発生の時期が遅れる部分があると低くなるものと考えられる。これが従来品の現状の問題点であり、ひいてはコンデンサ用電極として満足する静電容量が得られなかった。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、従来品でみられる表面層の不均一転位密度領域を均一化し高密度転位領域を出来るだけ多くしピットの分散性を良くして、単位面積当たりの静電容量が高い電解コンデンサが得られる電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔のうち第1の発明は、最終焼鈍が施された電解コンデンサ電極用アルミニウム箔であって、純度99.980%以上からなり、表面に転位密度が5本/μm2以上の高転位密度領域が平均面積率で30%以上存在し、かつ、表面の平均転位密度が2×108本/cm2以上であることを特徴とする。
【0007】
第2の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔は、請求項1記載の発明において、前記高転位密度領域が深さ1.0μm未満の深さで表面層に存在することを特徴とする。
【0009】
上記従来材は下記の内容の方策により改善されコンデンサの小型化に大きく寄与できることが判明した。即ち本発明のアルミニウム箔により前記問題点が解決されたといえる。
純度99.980%以上と限定した理由はその純度未満では不純物の分布がエッチングに対し影響する度合いが転位密度のそれを上回り、高密度転位領域の存在による効果が見られなかったためである。なお、高密度領域の効果的な発生という観点からは、純度を99.999%未満とするのが望ましい。
【0010】
また高密度転位領域を表面の30%以上とした理由はそれ未満ではピットが均等に形成されず、また、この面積率が上昇する事により粗面化率は常に上昇して行く事が判明したためである。なお、望ましくは50%以上である。また高密度転位領域の転位密度を5本/μm2以上としたのは、他部(通常は転位密度108/cm2以下)に対しピットの形成において顕著な優位性が認められるのが上記密度以上と考えられるからである。これは転位密度においてこれほどの差があると化学エッチングはもとより、電気化学的にも腐食開始点として差異が生まれたためと考えられる。望ましくは10本/μm2以上である。なお、高密度領域は表面層において深さ1μm未満に存在するのが望ましい。何故なら1μm以上の深さで存在すると、全体的エッチングがそれだけ深くなりトンネルピット形成が遅れるからであり、また、全面腐食量がそれだけ多くなり箔厚みの低下を引き起こし箔歩留を低下させるからである。
また、面全体の平均転位密度として2×108本/cm2以上であることを満たせば、ピットが面全体でほぼ均等かつ充分に形成され、高密度転位領域またはこれに近い密度で転位が存在している領域が大きな面積率でアルミニウム箔表面に存在することになり、高い粗面化率を得ることができる。
【0011】
上記高密度転位領域を如何にして得るかに関し、種々鋭意研究した結果以下の方法により比較的に良く得られることが判明した。
一つの方法は、最終箔圧延のロールの目の高さを平均0.5μm(Ra=0.5μm)で、間隔0.5μm以下とすると、高密度転位領域は少なくとも70%が得られた。このロール目を細かくして行くことにより徐々に均一なエッチング開始が得られたが、あまり細かくすると最終焼鈍の際に圧延油が蒸発しにくくなり、油が残留しエッチングされ難くなった。このため適切な圧延目の大きさがあると考えられる。例えばロール目のRaで0.2μm以下では圧延油の飛び(蒸発)が悪くなり好ましくなかった。
また第二番目の方法として極圧添加剤を添加しない、いわゆるパラフィン系のベースオイルのみでスキンパスによる圧延で仕上げる方法である。スキンパス圧延の率を変えること(加工率2〜10%)により最終焼鈍後の転位密度のロール目の依存度が低くなり、比較的均一に転位密度が分布した表面層が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のアルミニウム箔は、常法により得た純アルミニウムを用いることができ、加工工程として所定の厚さの箔に加工する冷間圧延を含んでいる。冷間圧延前の材料としては常法による溶製、熱間圧延工程を経たものが例示される。
本発明に用いられる純アルミニウムは、前述したように、純度が99.980%以上であり、これを満たす限りにおいては材料としての制約は特にない。したがって、純アルミニウム中に微量の添加元素を含むものであっても良い。
該純アルミニウムからは、上記したように所定の高密度転位領域または平均転位密度を有するアルミニウム箔を得る。該アルミニウム箔は、上記したように代表的には冷間圧延での製造条件により得ることができる。すなわち上記のように圧延目の大きさの設定やスキンパスでの圧延率の設定によって、充分な面積率で高密度転位領域が形成され、アルミニウム箔の表面全体での平均転位密度も高くなる。
【0013】
本発明のアルミニウム箔には、常法により最終焼鈍した後、表面の粗面化処理、所定の化成処理(陽極酸化)が行われる。
粗面化処理に際しては、転位が高密度である程にピットが優先的に形成され、ピットの形成が促進される。また高密度領域が大きな面積率で存在することにより面全体でのピット形成が均等化され、結果として高い粗面化率が得られる。
なお、最終焼鈍、粗面化処理、化成処理条件については本発明は特に限定されるものではなく、例えば常法により行うことができる。
上記により得られたアルミニウム箔を電解コンデンサの電極(特に陽極)として使用することにより、単位面積当たりの静電容量が高く、小型化が可能な電解コンデンサが得られる。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
純度が99.999%、99.993%、99.98%及び99.92%の純アルミニウムを用いて常法により熱間圧延(熱間圧延温度550℃)して7mm厚とした後、冷間圧延によって所定厚のアルミニウム箔を得た。なお、冷間圧延に際しては、従来のロール(平均ロール目高さ1μm、Ra=1.0μm)を用いたものを従来例とし、ロール目Ra=0.5μm、及び0.3μmでそれぞれ間隔0.5μm、0.3μmとしたロールを用いて通常の最終圧延率50%の場合と、Ra=1.0μmで最終圧延率3%と5%のスキンパス圧延を行った場合とを本発明とした。
冷間圧延後の上記各アルミニウム箔に対し、最終焼鈍として、不活性ガス中560℃×3hrで加熱し、徐冷した。
【0015】
上記により得られた各アルミニウム箔を供試材とし、各供試材の表面にある転位をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、その転位密度が5本/μm2以上である高転位密度領域の面積率を計算し、また、箔の厚み方法断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察によりその深さを測定した。さらに、面全体での平均転位密度を計算した。これらの結果を表1に示した。
次いで以下の条件にて電解エッチングを行った。
HCl 1モル/l
H2SO4 3モル/l
初期電流密度 0.1A/cm2
温度 75℃
時間 5分
次いで化成処理(化成電圧270V)を行った後、静電容量を測定した。静電容量の測定結果は、純度99.999%で従来法により得た供試材の静電容量を100として相対評価により行った。その結果は表1に示した。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示すように、本発明の条件を満たす供試材では、従来に比べて高い静電容量が得られており、本発明の条件で転位の密度を制御することによって粗面化率が向上したことが明らになった。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔によれば、最終焼鈍が施された電解コンデンサ電極用アルミニウム箔であって、純度99.980%以上からなり、表面に転位密度が5本/μm2以上の高転位密度領域が平均面積率で30%以上存在し、表面の平均転位密度が2×108本/cm2以上であるので、粗面化に際し、均等かつ高密度でエッチングピットが形成され、高い粗面化率が得られる。この結果、このアルミニウム箔を電解コンデンサの電極として用いた場合、電極単位面積当たりの静電容量が高く、小型化が可能なコンデンサを得ることができる。
Claims (2)
- 最終焼鈍が施された電解コンデンサ電極用アルミニウム箔であって、純度99.980%以上からなり、表面に転位密度が5本/μm2以上の高転位密度領域が平均面積率で30%以上存在し、かつ、表面の平均転位密度が2×108本/cm2以上であることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
- 前記高転位密度領域は深さ1.0μm未満の深さで表面層に存在することを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔
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