JP3776788B2 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔及びその製造方法 - Google Patents

電解コンデンサ電極用アルミニウム箔及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗面化処理に供する電解コンデンサ電極用アルミニウム箔およびその製造方法に関するものであり、特に中高圧用電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電解コンデンサ中高圧用箔の製造工程は、Al純度99.992%前後の純度のスラブを鋳造後、面削し、熱間圧延、冷間圧延を引き続き行い、最終圧延の前パスで中間焼鈍を行って最終冷間圧延を行い、その後最終的には500℃以上の温度で、且つ不活性ガス雰囲気で数時間処理して製品とするのが通常である。
さらに電解コンデンサ電極として用いるためには、この箔素材に粗面化処理を行い、有効表面積を拡大してから、誘電体としての陽極酸化膜を表面に形成するのが通常であり、多くの場合には電解コンデンサの陽極として用いられる。上記粗面化処理の効果はコンデンサの品質である静電容量に直接効果があり、コンデンサの特性には非常に重要な役割を果たすが、粗面化は電気化学的なエッチング処理を行うことで代表され、箔素材の特性により大きく左右されている。このためAl箔のメーカーは種々の材料的改良を重ねてきた。
【0003】
その一つが、最終焼鈍雰囲気を真空、あるいはArガスなどの非酸化性雰囲気で最終焼鈍を行い、出来るだけ薄い酸化膜を形成させてエッチング処理をやりやすくしたり、また例えば特開昭60−110853号公報にあるように中間焼鈍を行って最終焼鈍後の箔の立方体方位率を向上することを行ってきた。更には特開昭57−194516号公報に見るようにPbなどの不純物元素を表面に濃縮させることによって、化学溶解性を促進させ粗面化率の向上を行っている。また表面酸化被膜では特開平1−248609号公報などのようにγ−アルミナ粒子の大きさ個数の規定を行い粗面化率の向上を行っている。
【0004】
上記のようにアルミニウム箔は、電解コンデンサの電極として用いられるためには粗面化処理が施されるのが通常であり、この粗面化率が高いとそれだけ単位面積あたりの静電容量が高くなり、コンデンサの小型化に寄与することが出来ると共に省資源、コスト減につながり好ましい。
上記粗面化率を構成するピットはキャピラリー状、あるいはトンネルピットと呼ばれており、このピット個数、密度が表面積に直接的に寄与すると考えられている。したがって前述した従来法は殆どがこのピット形成に関するものであり、出来るだけピット密度を高めることを目的にしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来例をはじめとして今までの方法ではピット発生が均一にならないため、ある部分はピットの合体が生じ有効表面積に寄与しない。またある部分は広い領域でピットが生じない部分が存在するのが実態であり、静電容量の向上に限度があった。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、ピットの分散性を良くし、ピットの合体をなくすことにより有効表面積を高くし、ひいては静電容量が高いコンデンサが得られる電解コンデンサ電極用アルミニウム箔およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の発明は、純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で0.3μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で8μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の発明は、中圧用に関するものであり、純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で0.3μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で5μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の発明は、高圧用に関するものであり、純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で1.0μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で8μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項記載の本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、純度が99.96質量%以上からなり、熱間圧延、冷間圧延により得た箔に、450℃〜600℃で加熱する最終焼鈍処理を施した、立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム原箔に、粗面化処理に先立って、冷間加工率0.3〜10%の低歪み加工を行い、その後、150〜550℃で加熱する回復熱処理を行って立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム箔を得ることを特徴とする。
【0013】
本発明に到った理由は以下の通りである。
まず発明者らはピットの発生点について鋭意研究した結果、ピットの発生点は箔内部(最表面より1μmから内部)に形成されている転位組織の境界上、あるいはそれらのトリプルポイントに優先的に形成されることを明らかにした。なお、本明細書では、転位組織とは、亜粒界または転位セルのいずれか又は両方からなるものをいう。従来の工程を通った場合、この亜粒界または転位セルのサイズは0.2〜5μmのサイズにあり、その大きさにかなりのばらつきを示していることも判明した。このように亜粒界または転位セルのサイズがばらついた場合、その粒界上あるいはトリプルポイント上にピット発生が優先的に生じた場合、自ずとピット発生点の分散性は悪くなり、ピットが合体したりピット間間隙が大きくなるなどする。したがって有効表面積が充分に得られないことになる。
又、最近は非常に高電圧(>600V)の化成電圧のいわゆる高電圧用電解コンデンサの高容量化への要求が強い。しかし従来工程品ではピット間隔が局部的に狭い所が多く、高電圧で化成し、厚い誘電体皮膜を形成した場合、その皮膜がお互いに接触してしまい有効表面積が減少して静電容量が低下してしまう問題がある。
【0014】
なお、ここで亜粒界とは、隣接する結晶粒の傾きが5°以内の結晶粒界をいう。粒界は一般の不整合配列かあるいは高密度転位壁でも良い。転位セルとは、アルミニウム材料を冷間加工により転位が増殖して行く過程で高密度転位で囲まれた領域が形成される。これを転位セルといい、隣接する転位セル間の結晶の傾きが殆どない場合をいう。
本発明のアルミニウム箔では、転位組織として亜粒界、転位セルの一方だけが存在してもよく、または両方が存在しているものであってもよい。両方が存在する場合には、亜粒界、転位セルの両方において本発明の条件を満たすことが必要である。
【0015】
以上の研究結果から本発明のアルミニウム箔およびその製造方法が提案されるに到った。即ち本発明は表面から少なくとも数μm層の転位組織サイズの調整技術に関するものであり、本発明のアルミニウム箔は、転位組織の大きさのバラツキを小さくしてピット発生点の均一、分散化を図るものである。また、本発明の製造方法は、この大きさを均一にする加工方法であるといえる。すなわち、転位組織の大きさを均一化するとそれに伴い、ピット発生点の均一、分散化が得られ、静電容量の画期的な向上が得られることが実証されたのである。
【0016】
なお、本発明の製造方法により転位組織サイズが均一に形成される理由は、既に形成されていた大きさの不均一な転位組織に歪みを与え、転位を多数導入してやり、一旦、これらの転位組織にできるだけ均一な歪みを与える。その後、回復熱処理を与えてやると、歪み(転位)の再配列により、新しい転位組織が形成され、歪みの量および回復温度により、今迄転位組織の無かった場所にも転位組織が形成されるとともに、微細な転位組織は逆に転位の再配列の際に、転位組織の成長が生じるためであり、結果として均一なサイズの転位組織が得られるためである。また、本発明の付加的加工熱処理に用いる原材料に、立方体方位率が60%以上のものを用いることの理由は、本製造工程では、それ未満の立方体方位率では、転位組織サイズを均一にしても粗面化処理後の表面積拡大率があまり向上しなかったためである。好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の立方体方位率の原箔を使用するのがよい。
【0017】
上記原箔を用いて歪みを与えた場合、あまり転位密度が低い(これは少ない加工率に対応する)場合は回復さえも起こりにくい。また逆にあまり加工率が高い場合は回復のみならず、再結晶が生じ、転位組織は粗大になるだけでなく全体の結晶方位が変化し、急激に立方体方位率が低下してしまう。この場合は静電容量に対し好ましくないことは言うまでもない。したがって歪みの付与では、低歪みでかつ適切歪みを与えることが必要になる。このような低歪み加工方法は引っ張り歪みでも、圧延による加工歪みでもよい。更に曲げ加工による歪みの導入でも良い。要するに転位密度が同じであればどのような加工方法をとっても良い。例えば引っ張り加工を行った場合は1.5%歪みで転位密度10本/cmが目安になる。折り曲げによる加工方法を選んだ場合もこの転位密度を加工率に対する共通の指標にしてやればよい。
【0018】
本発明の方法を用いることで次の事も可能になる。
▲1▼コンデンサの使用電圧に合わせた組織の改良。
中高圧の使用電圧で300V未満の比較的低電圧で静電容量を向上したい場合、歪みを5%以上かけ回復は比較的低温で行うと、回復した亜粒界または転位セル組織が細かく、しかも均一径になり、ピット開始点が増え、静電容量は増加する。この場合ピットの径は、誘電体被膜は薄くても良いためピットは細くても有効な表面積となるからである。
また高圧用コンデンサに対する本製造方法の利用方法は、5%までの中程度の歪みを与え、比較的高温で焼鈍すると安定な大きな亜粒界または転位セルが形成され、ピット数は少ないものの合体のないピットが形成され、高圧用コンデンサ(500V以上)として好ましい電極が得られるのである。
【0019】
以下に、本発明のアルミニウム箔で定めた条件について説明する。
【0020】
アルミニウム箔純度:99.96質量%以上
本発明のアルミニウム箔の純度を99.96質量%以上とした理由は、それ未満の純度では中高圧コンデンサに用いた場合リーク電流が増加し、コンデンサとしての基本性能が悪くなり適応できない。また、転位を高密度で発生させるという観点から純度は99.995質量%以下とするのが望ましい。
【0021】
アルミニウム箔立方体方位率:60体積%以上
また、本発明のアルミニウム箔は、立方体方位率が体積比で、60%以上であることが必要とされる。これは立方体方位の組織においてピットが効果的に形成されることから、充分な数のピットを形成するために立方体方位率の下限を定めるものである。なお、同様の理由で立方体方位率が80体積%以上であるのが望ましく、さらに90体積%以上であるのが一層望ましい。
【0022】
アルミニウム箔表面内層部転位組織(亜粒界または転位セル)サイズ
・円相当径0.3μm未満:10%以下(面積率)
・円相当径8μm超 :10%以下(面積率)
アルミニウム箔の表面内層部の転位組織サイズのバラツキを小さくして大きさをできるだけ揃えることでピット発生点の均一、分散化がなされ、静電容量が大幅に向上する。
ここで、円相当径で0.3μm未満の転位組織が面積率で10%を超えて存在していると、ピットの合体が生じやすく、充分な静電容量が得られなくなるため、該サイズの転位組織は面積率で10%以下であることが必要である。また、円相当径で8μm超の転位組織が面積率で10%を超えて存在していると、ピットの不均一性が際だち、中高電圧用コンデンサの充分な静電容量が得られなくなるため、該サイズの転位組織も面積率で10%以下であることが必要である。
但し、中圧用(250V〜400V化成)として用いる場合、5μm超の転位組織が面積率で10%を越えて存在すると、ピット間隔の大きな場所がそれだけ多く発生してしまうということ、すなわち未エッチング領域が増えることになり静電容量には好ましくない。
中圧用では、円相当径5μm超の転位組織が面積率でさらに10%以下であるのが望ましい。
【0023】
一方、高圧用(>400V化成)コンデンサの電極として用いる場合は、転位組織サイズが円相当径で1.0μm未満のものが10%以下、8μm超のものが10%以下であるのが望ましい。化成電圧が高くなることにより誘電体である陽極酸化膜の厚みは厚くなる。即ちピットの間隔があまり狭いと、高電圧化成ではこの隣り合うトンネルピットに形成された陽極酸化膜同志がぶつかり合うことになる。こうなると実質的なピットの表面積は低下し静電容量も低下してしまう。したがって高電圧化成になると、適正なピット間隔は大きい方にシフトするのである。したがって転位組織の円相当径1.0μm未満はできるだけ少ない方がよいため10%以下とした。逆に転位組織の円相当径が8μmを超えると、エッチングされないスペースが残り、したがってピット密度が減ることにより静電容量は低下する。よって転位組織サイズが8μmを超す面積率を10%以下にするのが望ましい。
なお、本明細書では、上記のように化成電圧250〜400Vを中圧用、400V超を高圧用として区分している。
【0024】
なお、上記転位組織サイズに着目する領域として最表層部を重視しないのは、エッチングに際し、微細粒界サイズの最表層部は早期に溶解し、それよりも内層部でピット発生の起点が見られるためである。この最表層部は、通常、表面から1μm以内の深さで存在している。したがって、本発明では、表面から1μmの深さを表面内層部の開始深さとして見ることにより表層部を確実に除外することができる。また、この表面内層部は、通常は、少なくとも表面から3μmまでの深さに存在する。
【0025】
以下に、本発明のアルミニウム箔の製造方法で定めた条件について説明する。
【0026】
アルミニウム原箔純度:99.96質量%以上
本発明のアルミニウム原箔の純度を99.96質量%以上とした理由は、製造の結果得られるアルミニウム箔において、前記理由から該純度を達成できるようにするためである。前記理由と同様の理由で、原箔においても純度は99.995質量%以下とするのが望ましい。
【0027】
アルミニウム原箔立方体方位率:60体積%以上
また、本発明のアルミニウム原箔は、立方体方位率が体積比で、60%以上であることが必要とされる。これは製造の結果得られるアルミニウム箔において、前記理由から該立方体方位率を達成できるようにするためである。なお、前記と同様の理由で原箔においても、立方体方位率が80体積%以上であるのが望ましく、さらに90体積%以上であるのが一層望ましい。
【0028】
アルミニウム原箔は、通常は、熱間圧延、冷間圧延を経て得られる箔に最終焼鈍を行ったものである。なお、このアルミニウム原箔は、冷間圧延の途中に中間焼鈍を行ったものでもよい。最終焼鈍は、通常450℃〜600℃(望ましくは530℃〜580℃)×3〜10時間の加熱によって行う。この温度は450℃未満であると、立方体方位の結晶が充分に成長せず、所望の立方体方位率を得ることが難しくなる。一方600℃を越えると箔の一部焼き付き等が生じるため、加熱温度を600℃以下とするのが望ましい。なお、同様の理由で下限530℃、上限580℃が望ましい。
【0029】
低歪み冷間加工率:0.3〜10%
低歪み加工を0.3%加工率以上とした理由は、それ未満の歪みでは転位組織の大きさが充分に均一化せずピット発生点の均一、分散化について効果が認められず、したがって静電容量に対しても所望の効果が得られないためである。一方、加工歪みが10%を越えると、その後の熱処理において転位組織の大きさが粗大になると共に、立方体方位に悪影響を与えるため、低歪み加工での冷間加工率を上記範囲に定める。好ましくは冷間加工歪みは下限1%、上限8%である。
【0030】
回復熱処理条件:150℃〜550℃
上記した低歪み加工後には、回復熱処理がなされる。回復熱処理は、歪み(転位)の再配列により、新しい転位組織を形成し、歪みの量および回復温度により、今迄転位組織の無かった場所にも転位組織を形成する。微細な転位組織では逆に転位の再配列の際に、転位組織の成長が生じる。結果として均一なサイズの転位組織が得られるためである。
この熱処理温度を150℃以上とした理由は、それ未満では回復作用がなく、ピット生成について影響が見られなかったためである。また上限を550℃にした理由は、それを越える温度では酸化膜の厚みが厚くなりピット形成に関し改善が見られなかったためである。
好ましい回復熱処理条件は下限300℃であり、上限は550℃迄と考えてよい。なお加熱時間は、上記した所望の回復作用が得られるように定めるが、バッチ炉では2時間以上、連続炉では10秒以上とするのが望ましい。なお、熱処理は空気中で行ってもよく、また不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
上記した低歪み冷間加工率と回復熱処理条件を適切に定めることにより、回復熱処理条件後において、立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム箔が得られるようにする。例えば冷間加工率が上記条件の上限付近であって回復熱処理温度も上限付近にあると、上記立方体方位率を確保することが難しくなる。
【0031】
本発明のアルミニウム箔は、上記した製造方法により好適に製造される。ただし、本発明のアルミニウム箔の製造方法が、上記製造方法に限定されるものではなく、他の製造方法、製造条件に基づいて製造することも可能である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態を説明する。
本発明では、常法により得た純アルミニウムを用いることができ、加工工程として熱間圧延および所定の厚さの箔に加工する冷間圧延あるいは冷間圧延および中間熱処理工程を含んでいる。
純アルミニウムは、本発明のアルミニウム箔としての純度を確保できるものでなければならない。これを満たす限りにおいては不純物の量、種別は限定されるものではなく微量の添加元素を含むものであってもよい。特に表面溶解性を促進させるPbを1ppm前後含むことは好ましい。
上記加工工程を得た箔はアルミニウム原箔として、好適な製造方法である、本発明の低歪み加工処理、回復熱処理に供される。
【0033】
低歪み加工の方法は、引張歪みでも、圧延による加工歪みでも良く、更に曲げ加工による歪みの導入でも良い。要するに転位密度が一緒であればどのような加工方法をとっても良く、本発明としては特に加工方法が限定されるものではない。 上記低歪み加工処理後は、150℃〜550℃の回復熱処理を行う。回復熱処理は通常、バッチ炉または連続炉からなる加熱炉内にアルミニウム箔を収容し、空気中または調整した雰囲気中で加熱することにより行う。なお、低歪み加工処理における冷間加工率が2%を越える場合には、この加熱処理における加熱温度は500℃以下とするのが望ましい。
【0034】
上記処理を終えた本製造方法により得られたアルミニウム箔には、表面の粗面化処理、所定の化成処理(陽極酸化)が行われる。
上記製造方法を代表とする方法により得られた本発明のアルミニウム箔は、粗面化処理に際しては、均一かつ高密度にピットが形成され、高い粗面化率が得られる。
なお、粗面化処理、化成処理条件については本発明は特に限定されるものではなく、例えば常法により行うことができる。
本発明のアルミニウム箔は、亜粒界または転位セルサイズが揃っており、電解コンデンサの電極(特に陽極)として使用することにより、単位面積当たりの静電容量が高く、小型化が可能な電解コンデンサが得られる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
従来法で溶製した純度99.992質量%Alを、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を経て0.11mm厚みの高圧用アルミニウム箔とし、これに540℃×5時間の最終焼鈍を行ってアルミニウム原箔Aとした。該原箔の立方体方位率は96体積%であった。また、520℃、460℃×5時間の最終焼鈍を行った原箔B、Cを用意した。これらの原箔の立方体方位率はそれぞれ80%、65%であった。また、比較用の原箔aとして上記高圧用アルミニウム箔に400℃×5時間の最終焼鈍を行ったものを用意した。この原箔の立方体方位率は55体積%であった。なお、立方体方位率は、硝酸−塩酸の混酸を用いたエッチングにより立方体方位を現出させ面分析を行い体積率を算出した(これらの箔では立方体方位が厚さ方向に沿って表裏に貫通しており、面分析により体積率を算出することができる)。
上記アルミニウム原箔に対し、一部を除き、表1、2に示すように、冷間圧延により種々の加工率で加工し、更に各種温度で回復熱処理を行い、供試材として用意した。なお、回復熱処理はバッチ炉では4時間、連続炉では30秒の加熱時間とした。
【0036】
上記回復熱処理後、各供試材の組織について、上記と同様の方法により立方体方位率を算出した。さらに、透過型電子顕微鏡を用いて、表面から1μm〜3μmの深さ範囲で観察し、転位組織(亜粒界、転位セル)を写真に撮影した。なお、上記深さ範囲では、亜粒界、転位セルは深さ方向に伸張しており、横断面の観察結果に基づき、所定サイズの亜粒界、転位セルについて面積率を算出した。これらの結果は表3、4に示した。なお、亜粒界、転位セルの両方が存在するものでは、それらを合算して面積率を求めた。
表3、4から明らかなように、従来材および本発明材以外では、大きさがばらついた転位組織が見られたが、本発明材では大きさが揃った転位組織が形成されていた。
【0037】
その後、粗面化率を確認するため各供試材に以下の条件で電解エッチングを行い、380Vまたは550Vで化成を行って静電容量を調べた。該静電容量については、従来材の静電容量を100として相対評価をし、その結果を表3、4に示した。
(電解エッチング条件)
HCl 1モル/l
SO 3モル/l
初期電流密度 0.2A/cm
温 度 75℃
時 間 6分
表3、4から明らかなように、本発明の製造方法により得られたアルミニウム箔は、従来材に比べて高い静電容量が得られており、粗面化処理により高い粗面化率が達成されたことが分かる。
【0038】
【表1】
Figure 0003776788
【0039】
【表2】
Figure 0003776788
【0040】
【表3】
Figure 0003776788
【0041】
【表4】
Figure 0003776788
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法によれば、純度が99.96質量%以上からなり、熱間圧延、冷間圧延により得た箔に、450℃〜600℃で加熱する最終焼鈍処理を施した、立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム原箔に、粗面化処理に先立って、冷間加工率0.3〜10%の低歪み加工を行い、その後、150〜550℃で加熱する回復熱処理を行うので、表面内層部の転位組織サイズが揃ったアルミニウム箔が得られる。該サイズが揃った好適な例である、本発明のアルミニウム箔は、純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面内層部の転位組織が、円相当径で0.3μm未満(高圧用は好適には1.0μm未満)であるものが面積率で10%以下、円相当径で8μm超(中圧用では好適には5μm超)であるものが面積率で10%以下であり、転位組織サイズが揃ったアルミニウム箔を粗面化処理に供することにより、ピットが均一かつ高い密度で形成され、高い粗面化率が得られ、結果的に単位面積当たりの静電容量が高い電解コンデンサ電極が得られる。

Claims (4)

  1. 純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で0.3μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で8μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  2. 純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で0.3μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で5μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする中圧用電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  3. 純度が99.96質量%以上で、立方体方位率が60体積%以上からなり、かつ表面からの深さ1μmから3μmの深さに至る表面内層部に存在する亜粒界又は/及び転位セルからなる転位組織のサイズが、円相当径で1.0μm未満であるものが面積率で10%以下、円相当径で8μm超であるものが面積率で10%以下であることを特徴とする高圧用電解コンデンサ電極用アルミニウム箔。
  4. 純度が99.96質量%以上からなり、熱間圧延、冷間圧延により得た箔に、450℃〜600℃で加熱する最終焼鈍処理を施した、立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム原箔に、粗面化処理に先立って、冷間加工率0.3〜10%の低歪み加工を行い、その後、150〜550℃で加熱する回復熱処理を行って立方体方位率が60体積%以上のアルミニウム箔を得ることを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
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