JP4706094B2 - ブレ補正光学機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、手振れ等による振動を検出する振れ検出装置、及び、振れ検出装置を内蔵した双眼鏡等の光学装置やカメラ等の撮影装置などのブレ補正光学機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブレ補正光学機器は、ブレ検出手段として加速度センサ又は角速度センサ(ジャイロ)などの手振れ振動検出センサからの出力信号を積分してブレ量を計算し、この計算結果に基づいて撮影光学系の光路中に設けられたブレ補正光学系を駆動することにより、カメラの受像面、例えばフィルム面や光電変換素子の受光面の上での被写体像の移動を相殺又は軽減している。
【0003】
ここで、手振れ振動検出センサのセンサ出力は、センサ内外部の電子回路によって信号処理されており、手振れ等による振動が全くない(角速度がゼロ)状態であってもセンサのいわゆるヌル電圧等の直流成分が含まれるため、センサ出力より得られる角速度情報は、ゼロとはならない。
したがって、センサ出力をそのまま用いて積分してブレ量の算出を行うと、残留直流成分の影響によりブレ量に誤差が含まれてしまう。つまり、時間積分されたデータは、1次の単調増加/減少傾向を有する。その大きさは、手振れ振動による角速度と比較して無視できる程度ではない。また、この直流成分は、温度や時間経過によっても左右される。
【0004】
そこで、従来は、一般的にセンサ出力からハイパスフィルタ等を用いて直流成分を除去した出力のみを得る方法や、センサ出力から移動平均などの演算結果を出力値から差し引くという手法が行われている。この場合、ハイパスフィルタを用いて十分な精度を得るためには、カットオフ周波数を1Hz程度と非常に低く設定する必要がある。
【0005】
しかし、カットオフ周波数を1Hz程度とすると、フィルタ出力が安定するために、数秒あるいは、それ以上の時間がかかる場合があり、例えば、カメラ等において、電源投入直後に撮影を行うような場合に、フィルタ出力が安定しないために、ブレ補正の精度が低くなるばかりか、却って悪影響を及ぼす場合があった。
このような問題を解決する手法として、特開昭63−285424号公報等には、カットオフ周波数を状態に応じて変更可能にして、フィルタ出力を早期に安定化する発明が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭63−285424号公報等による手法では、応答をよくして収束を早める場合には、カットオフ周波数を高くするので、十分な精度が得られないという問題があった。
従来は、出力安定時の精度と収束時の応答性とのいずれを優先するかを選択することが必要であり、一方を優先すると、他方の特性に不満が残る結果となっていた。
【0007】
本発明の課題は、ヌル電圧等の残存直流成分の影響を速やかに除去すると共に、低周波成分をも含めて正確にブレを補正することができるカメラ等のブレ補正光学機器を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。請求項1の発明は、撮影光学系と、前記撮影光学系の少なくとも一部であって、前記撮影光学系の光軸を偏光する補正光学系と、振動を検出し、振動検出信号を出力する振動検出部と、所定時刻よりも前に前記振動検出部から出力された前記振動検出信号を用いて第1基準値を演算し、前記所定時刻よりも後に前記振動検出部から出力された前記振動検出信号を用いて第2基準値を演算する基準値演算部と、予測基準値を演算する基準値予測部と、前記補正光学系を駆動する駆動部と、前記基準値予測部から出力された前記予測基準値及び前記振動検出信号に基づき、前記振動による被写体像のブレを補正するように前記駆動部の駆動を制御する制御部と、前記第1基準値から前記第2基準値までの変化が所定値より大きいか否かを判断する判断部とを含み、前記基準値予測部は、前記第1基準値及び第2基準値を用いて前記予測基準値を演算し、前記制御部は、前記判断部が前記第1基準値から前記第2基準値までの変化が前記所定値より大きいと判断したときに、前記予測基準値及び前記振動検出信号に基づき前記駆動部の駆動を制御することを特徴するブレ補正光学機器である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のブレ補正光学機器において、前記基準値予測部は、前記第1基準値から前記第2基準値までの変化に基づいて前記予測基準値を演算することを特徴とするブレ補正光学機器である
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のブレ補正光学機器において、前記基準値予測部は、前記ブレ補正光学機器の電源投入直後に前記第1基準値及び前記第2基準値を用いて前記予測基準値を演算することを特徴とするブレ補正光学機器である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明によるブレ補正光学機器の第1実施形態であるカメラを示す図である。
このカメラは、カメラボディ1,レンズ鏡筒2を有しており、カメラボディ1は、受像面5,カメラボディ内マイコン6を備え、レンズ鏡筒2は、非ブレ補正光学系3,ブレ補正光学系4,レンズ内マイコン7,角速度センサ8及び9,補正光学系駆動装置10を備えている。
【0018】
カメラボディ1は、レンズ交換が可能なように取付マウント1aを有し、この取り付けマウント1aにレンズ鏡筒2を取り付け、被写体結像を受像面5上に形成し、撮影可能となるカメラ本体であり、CCD等の撮像素子又はフィルム等が設けられた受像面5を備えている。
【0019】
カメラボディ内マイコン6は、カメラの各種動作を制御する制御部であり、カメラボディ1内に設けられ、レンズ内マイコン7と電気的に接続されている。
【0020】
レンズ鏡筒2は、マウント1aに対して着脱可能な交換レンズであり、ブレ補正機能を有している。
【0021】
非ブレ補正光学系3は、ブレ補正光学系4とともに被写体像を受像面5上に結像する光学系である。
【0022】
ブレ補正光学系4は、光軸に略直交する方向に移動可能に設けられた光学系であり、非ブレ補正光学系3と組合わせられて一つの撮影光学系を成しており、ブレ補正光学系4が補正光学系駆動装置10によって駆動されて移動することにより、受像面5上に結像した像が移動し、ブレの補正を行う。
【0023】
レンズ内マイコン7は、カメラボディ内マイコン6と電気的に接続され、レンズ内の各種動作を制御する制御部である。カメラボディ内マイコン6とレンズ内マイコン7によって、撮影及びブレ補正に関する一連の処理が行われる。
【0024】
角速度センサ8及び9は、受像面5に対するピッチングおよびヨーイング方向の手振れ振動検出器である。
【0025】
ブレ補正光学系駆動部10は、カメラボディ内マイコン6,レンズ内マイコン7,角速度センサ8及び9によって得られたブレ量に基づいてブレ補正光学系4の駆動を行う駆動部である。
【0026】
図2は、レンズ内マイコン7の内部構成を説明するブロック図である。
なお、実際の振れ検出及び制御は、略直交する2軸分行われているが、簡単のため、以下の説明では、1軸分のみ説明する。
まず、角速度センサ8,9からの信号を増幅器71によって増幅して振動検出信号ω’(振れ波形)を得る。この段階における信号ω’は、センサのヌル電圧や温度、時間経過に伴うドリフトなどの直流成分を含んでいる。
【0027】
次に、この振動検出信号ω’に対してローパスフィルタ(LPF)等から構成される基準値算出器(基準値演算部)72を通して、カメラが静止している状態における信号、すなわち、角速度ゼロの基準値ω0 のみを抽出する。
従来の技術として説明したように、基準値算出器72における基準値ω0 の演算結果は、演算時以前に演算した基準値ω0 の値を反映するので、演算時間が長くなるにしたがい、その精度が高くなる一方、初期に得られた基準値ω0 の精度が低い場合には、その悪影響がしばらく残ってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、振動検出信号ω’及び基準値ω0 は、基準値補正部75を介して、一定の場合に基準値ω0 が補正されて、ブレ角度演算器73に送られる。基準値補正部75については、後に詳しく説明する。
【0029】
ブレ角度演算器73では、得られた振動検出信号ω’から基準値ω0 を差し引いて手振れのみによる角速度ωを求める。
像面ブレ量演算器74では、この様にして得られた角速度ωを積分し、更にレンズ鏡筒2の焦点距離情報等を考慮して受像面5上におけるブレ量を算出する。
ブレ補正光学系駆動部10は、像面ブレ量演算器74が演算したブレ量に基づいてブレ補正光学系4を駆動して、受像面5上の被写体のブレを補正する。
【0030】
像面ブレ量演算器74は、角速度を積分して像面でのブレ量を算出するので、従来の技術において説明したように、わずかでも残留直流(オフセット)成分があると、時間積分されたデータは、1次の単調増加/減少傾向を有する。
これを防ぐには、精度良く基準値のみを算出する必要がある。例えば、基準値算出器72のローパスフィルタのカットオフ周波数を、1Hz程度あるいは、それ以下と十分低く設定する必要がある。
しかし、カットオフ周波数を低くすると、フィルタの出力が安定収束した後の性能は、良好となるが、基準値ω0 の演算を開始したときの基準値ω0 が正しい値でない場合、演算される基準値ω0 が正しい値に安定するのに数秒あるいは、それ以上の時間を要する。
【0031】
本実施形態では、基準値ω0 の早期安定化と精度の両立を計るために、ローパスフィルタのカットオフ周波数を精度上必要なだけ十分低いまま変化させずに、基準値補正部75によってローパスフィルタの出力を観測し、基準値ω0 に対して補正を行うことによって基準値ω0 の早期収束化を実現している。
【0032】
ここで、基準値補正部75の動作について説明する。
図3は、基準値補正部75の動作の流れを示すフローチャートである。
図4は、基準値の補正を行うときの振動検出信号ω’及び基準値ω0 の波形を示す図である。
【0033】
ステップ(以下、Sとする)100では、カウンタの初期化(カウンタ=0)を行う。
【0034】
S101では、基準値算出器72のLPFが基準値ω0 を演算し、S102へ進む。
【0035】
S102では、演算開始からの演算時間tが、T1以下となっているか否か、すなわち評価窓範囲内にあるか否かを判定する。t≦T1となっていなければ、S101に戻って基準値演算を継続し、t≦T1となっていれば、S103に進む。
【0036】
S103では、振動検出信号ω’(t)と、基準値ω0 (t)との差分の絶対値が差分基準値ERR_THを超えているか否かを判定する。差分基準値ERR_THを越えている場合には、S104に進み、差分基準値ERR_THを越えていない場合には、S105に進む。
【0037】
S104では、カウンタ=カウンタ+sign(ω(t)−ω0 (t))の演算を行う。ここで、sign(x)は、xの値によらずに、xが正の値であれば、+1を返し、xが負の値であれば、−1を返す符号関数である。すなわち、ここでは、カウント加算法則として、先の差分値が正であれば、カウンタに+1を、また、差分値が負であれば、カウンタに−1を加算する。
【0038】
S105では、演算時刻tが、評価時刻T1であるか否かの判定を行う。t=T1であれば、S106に進み、t≠T1であればS101に戻る。
【0039】
S106では、カウンタの絶対値がカウント規定値TH_CCを超えているか否かの判定を行う。カウント規定値TH_CCを超えているときには、S107に進み、カウント規定値TH_CCを超えていないときは、補正の処理を抜ける。
【0040】
S107では、基準値補正部75は、基準値ω0 の補正を行い、その後、補正の処理を抜ける。
【0041】
基準値補正部75は、基準値ω0 の補正を行うか否かの判断を行う補正実行判断部75aを有しており(図2)、S103からS106の動作は、この補正実行判断部75aにより行われる。
【0042】
基準値ω0 の補正には、演算開始時の基準値ω0 の初期値(図4中P1)と、評価時刻(T1)における振れ波形の値(図4中P2)との中間値(図4中P4)を用いる。
P4=(P1+P2)/2 式(1)
そして時刻(T1)における初期値をP3からP4へ置き換え、補正後の基準値ω0 とする。
P3=P4 式(2)
【0043】
図5は、図4に示す波形の全体を示した図である。
図5に示すように、評価時刻T1の次の時刻(n=T1+1)から補正された基準値ω0 を用いて演算がおこなわれるため、以降の演算収束を高速化することができる。
【0044】
演算時刻T1は、例えば演算開始から50ミリ秒程度、カウント規定値TH_CCを時刻T1間のサンプリング回数の半分程度(1ミリ秒サンプリングの場合では、TH_CC=25)と設定すれば、従来技術に比べ大幅な演算量の増加を必要とすることなく、非常に早く演算の収束化をすることが可能となる。
【0045】
なお、基準値ω0 に補正を行うと、基準値ω0 は、不連続な変化をすることになるが、ブレ量演算に対しては、誤差要因を取り除いて積分演算を行うこととなり、誤差要因に伴う発散を早急に抑えるので、演算系としては、より安定する。
【0046】
本実施形態によれば、振動検出信号ω’(t)と、基準値ω0 (t)とに基づき、基準値ω0 の補正を行なうので、ヌル電圧等の直流成分やパンニングによる残存直流成分の影響を速やかに除去することができる。
また、基準値ω0 が真の基準値ω0 に収束するのが速くなるので、撮影時には、正規の低周波成分をも含めて正確にブレを補正することができる。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態は、基準値補正部75の動作が第1実施形態と異なるのみであるので、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。
図6は、第2実施形態における基準値補正部75の動作の流れを示すフローチャートである。
図7は、基準値の補正を行うときの振動検出信号ω’及び基準値ω0 の波形を示す図である。
【0048】
S200で変数の初期化を行った後、S201において基準値ω0 の初期値tmp1を保存する。
【0049】
S202では、評価時刻(t=T2)であるか否かを判定する。評価時間に達している場合には、S203に進み、評価時間でない場合には、基準値ω0 補正のフローを終了して、基準値ω0 の演算動作に戻る。
したがって、本実施形態における基準値ω0 補正のフローは、オメガゼロ演算経過時間nが評価時間(t=T2)に達した時にのみ実行される。
【0050】
S203では、演算時点(t=T2)における基準値ω0 の値tmp2を保存する。
【0051】
S204では、下記の式に従って傾きθ(に相当する値)を求める。
θ=tmp2−tmp1 式(3)
ここで、tmp1は、S201において保存した基準値ω0 の初期値であり、tmp2は、時刻T2における基準値ω0 である。
なお、式(3)によるθは、時間で割り算していないため、正確には、図7での傾きθを表すものではないが、それに相当する値であることに変わりはない。
【0052】
S205では、補正実行判断部75aにおいて、傾きθの絶対値が、傾き基準値θth以上であるか否かを判定する。ここで、傾き基準値θthは、基準値ω0 の補正が必要であるか否かを判定するために設定する値であり、傾き基準値θthよりも傾きθが大きければ、基準値ω0 の補正が必要であると判定し、傾き基準値θthよりも傾きθが小さければ、基準値ω0 が一定の値に落ち着いていると考えられるので、基準値ω0 の補正は、不要であると判定する。
したがって、傾きθの絶対値が、傾き基準値θth以上であるときは、S206に進み、傾きθの絶対値が、傾き基準値θthよりも小さいときには、基準値ω0 補正のフローを終了して、基準値ω0 の演算動作に戻る。
【0053】
S206では、実際に基準値ω0 の補正を行う。本実施形態における基準値ω0 の補正は、所定時間後の基準値ω0 の演算値を予測することによって行う。
具体的には、一定時間内の基準値ω0 の変化を線形変化とみなして、演算時刻(t=T2)での基準値ω0 (T2)=tmp2と基準値ω0 の初期値ω0 (0)=tmp1とを通る直線Lを求める。
なお、演算開始時の値(初期値tmp1)が目標値から離れているほど直線Lの傾きθが大きくなる。逆に、演算開始時の値が目標値に近ければ傾きθが小さくなる。
【0054】
本実施形態では、評価時間(T2)以後も、このまま基準値の演算を継続した場合の演算結果は、この直線Lに沿って推移するものと仮定する。そして、所定の時間(予測時間)後に到達する値を演算し、これを予測値とする。そしてこの予測値を新たな基準値ω0 (PP3)として、評価時間の次のサンプル時刻(t=T2+1)から補正された基準値ω0 とする。
【0055】
具体的には、以下の式(4)を用いて予測値(PP3)を演算する。
【0056】
【数1】
【0057】
式(4)において、FWDは、図5中の予測時間を示すもので、ローパスフィルタの時定数等にも依存するが、例えば、1秒先程度を設定する。WINDは、傾き演算を行う評価時間窓であり、例えば、200ミリ秒程度を設定する。
【0058】
予測演算の基準となる基準値ω0 の演算は、ローパスフィルタ演算であり時間が長いほど目標値に近くなる(精度が向上する)ので、図7中の予測値は、評価時間でのオメガゼロ値よりも目標値に近いことになる。
式(4)の右辺が図7中の予測値(PP3)に相当し、この予測値を評価時間の次のサンプリング時刻(t=T2+1)から、補正された基準値ω0 を用いて基準値ω0 の演算を実行することにより、基準値ω0 を急速に目標値へ収束することができる。
【0059】
図8は、本実施形態において、基準値ω0 を補正した場合と、補正を行わずに、従来の基準値ω0 の演算のアルゴリズムのみを実行した場合とを比較して示した図である。
図8からわかるように、基準値ω0 を補正することによって、基準値が真の基準値ω0 に近づくのが速くなり、従来の基準値ω0 の演算のアルゴリズムのみを実行した場合よりも早く目標値へ収束させることができる。
【0060】
本実施形態によれば、所定時間後の基準値ω0 の予測を行い、演算時点の基準値ω0 をその予測値によって置き換えるので、短時間の内に基準値ω0 の精度を高くすることができる。
【0061】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)各実施形態において、基準値ω0 の補正を一度だけ行う例を示したが、これに限らず、例えば、演算時間中に複数回同様な補正を行なってもよい。この場合、更なる基準値の高精度化が期待できる。
【0062】
(2)第1実施形態及び第2実施形態は、独立した実施形態として説明したが、これに限らず、例えば、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせて演算開始直後に第1実施形態を行い、その後更に第2実施形態を行ってもよいし、その逆の順で行ってもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)基準値及び/又は振動検出信号に応じて基準値演算部の出力を補正する基準値補正部を備えるので、残存直流成分の影響を速やかに取り除き、基準値を正しい値に補正することができる。
【0064】
(2)基準値補正部は、所定時間後の基準値を予測して補正を行うので、基準値を精度よく補正することができる。
【0065】
(3)基準値補正部は、演算時点の振動検出信号と、所定時間前における基準値との中間値によって補正を行うので、補正に要する時間が短時間であっても、精度よく基準値の補正を行うことができる。
【0066】
(4)基準値補正部は、予測による補正と、演算時点の振動検出信号と所定時間前における基準値との中間値による補正とを組み合わせて実行するので、振動状態に最適な基準値の補正を行うことができ、短時間の内に高精度な補正を行うことができる。
【0067】
(5)基準値補正部は、基準値の補正を実行するか否かを判断する補正実行判断部を有するので、必要なときにのみ補正を実行し、補正によって却って基準値の精度を低下させるようなこともなく、常に基準値の精度を高くすることができる。
【0068】
(6)補正実行判断部は、基準値が一定の範囲内に収束しているか否かを判断し、基準値が一定の範囲内に収束していない場合に、基準値の補正を実行すると判断するので、基準値の精度を一定以上に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるブレ補正光学機器の第1実施形態であるカメラを示す図である。
【図2】レンズ内マイコン7の内部構成を説明するブロック図である。
【図3】基準値補正部75の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】基準値の補正を行うときの振動検出信号ω’及び基準値ω0 の波形を示す図である。
【図5】図4に示す波形の全体を示した図である。
【図6】第2実施形態における基準値補正部75の動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】基準値の補正を行うときの振動検出信号ω’及び基準値ω0 の波形を示す図である。
【図8】本実施形態において、基準値ω0 を補正した場合と、補正を行わずに、従来の基準値ω0 の演算のアルゴリズムのみを実行した場合とを比較して示した図である。
【符号の説明】
7 レンズ内マイコン
71 増幅器
72 基準値算出器
73 ブレ角速度演算器
74 像面ブレ量演算器
75 基準値補正部
75a 補正実行判断部
Claims (3)
- 撮影光学系と、
前記撮影光学系の少なくとも一部であって、前記撮影光学系の光軸を偏光する補正光学系と、
振動を検出し、振動検出信号を出力する振動検出部と、
所定時刻よりも前に前記振動検出部から出力された前記振動検出信号を用いて第1基準値を演算し、前記所定時刻よりも後に前記振動検出部から出力された前記振動検出信号を用いて第2基準値を演算する基準値演算部と、
予測基準値を演算する基準値予測部と、
前記補正光学系を駆動する駆動部と、
前記基準値予測部から出力された前記予測基準値及び前記振動検出信号に基づき、前記振動による被写体像のブレを補正するように前記駆動部の駆動を制御する制御部と、
前記第1基準値から前記第2基準値までの変化が所定値より大きいか否かを判断する判断部とを含み、
前記基準値予測部は、前記第1基準値及び第2基準値を用いて前記予測基準値を演算し、
前記制御部は、前記判断部が前記第1基準値から前記第2基準値までの変化が前記所定値より大きいと判断したときに、前記予測基準値及び前記振動検出信号に基づき前記駆動部の駆動を制御することを特徴するブレ補正光学機器。 - 請求項1に記載のブレ補正光学機器において、
前記基準値予測部は、前記第1基準値から前記第2基準値までの変化に基づいて前記予測基準値を演算することを特徴とするブレ補正光学機器。 - 請求項1又は請求項2に記載のブレ補正光学機器において、
前記基準値予測部は、前記ブレ補正光学機器の電源投入直後に前記第1基準値及び前記第2基準値を用いて前記予測基準値を演算することを特徴とするブレ補正光学機器。
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