JP4419466B2 - 撮影レンズ、およびカメラシステム - Google Patents

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Description

本発明は、撮像面に対する被写体像の像面ブレを光学的に補正する撮影レンズ、およびカメラシステムに関する。
従来、手振れなどによる被写体像の像面ブレを、撮影レンズ内のブレ補正光学系を使用して光学的に補正する技術が知られている。
この種の従来技術では、まず、撮影レンズやカメラの振動を角速度センサによって検出する。撮影レンズは、この角速度に基づいて、被写体像の像面ブレを打ち消すのに必要なブレ補正光学系の位置(以下『目標駆動位置』という)を決定し、ブレ補正光学系をこの目標駆動位置に追従制御する。
また、下記の特許文献1および特許文献2には、ビデオカメラにおいて像面ブレを抑制する関連技術が開示されている。このビデオカメラは、撮像画像から画像動き信号を検出する。次に、ビデオカメラは、この画像動き信号を補間してサンプリングレートを上げる。ビデオカメラは、補間した画像動き信号を、高速に更新される目標駆動位置にフィードバックすることにより、光学的ブレ補正の防振性能を高める。
特開平10−322585号公報(図1) 特開平10−145662号公報(図1,図3)
[従来技術の問題点]
従来、光学的ブレ補正では、角速度センサから出力されるDCオフセットやドリフトが問題となっていた。被写体像の像面ブレを正確に追跡するには、角速度センサの出力から、DCオフセットやドリフトといった余分な成分を除かなければならない。
しかしながら、これらの成分は、角速度センサの温度や使用条件によって変動する。そのため、工場出荷時における角速度センサの静止時出力をそのまま使用できない。そこで、角速度センサの出力からDCオフセットやドリフトを分離抽出する方法が従来実施されていた。
すなわち、人間の手振れは、2〜7Hz程度の周波数成分が支配的である。一方、角速度センサの静止時出力は、およそ1Hz未満の周波数成分が支配的である。そこで移動平均やローパスフィルタを使用して、角速度センサの出力信号から低域成分を抽出することにより、DCオフセットとドリフトを推定していた。
しかしながら、従来のこの手法では、基準値の推定時に種々の誤差が発生する。図8は、従来の基準値推定のシミュレーション結果を示す図である。図8Aでは、角速度センサの出力信号から移動平均を算出して、基準値を求めている。この移動平均により、基準値中のドリフトに位相遅れが生じる。また、基準値中には、移動平均により完全に平滑化されない振動成分も残存する。このように誤差を含んだ基準値を角速度センサの出力信号から除くことにより、図8Bに示す誤差が角速度に混入する。
図8Cに示す太線は、この誤差を含んだ角速度に基づいて光学的ブレ補正を実施した場合の像面ブレ量の時間変化を示す図である。手振れの高周波成分は低減しているが、時間の経過と共にブレ補正光学系が徐々にドリフト移動している。
光学的ブレ補正は、角速度に基づくフィードフォワード制御なので、角速度の検出誤差は、そのまま制御誤差となって現れる。
以上説明した理由から、光学的ブレ補正の防振性能は、角速度センサの基準値を如何に正確に求めるかにかかっている。
[特許文献1および特許文献2の問題点]
ところで、特許文献1および特許文献2に開示される関連技術では、画像動き信号を光学的ブレ補正に利用する。しかしながら、特許文献1および特許文献2の制御方式を、電子スチルカメラに適用する場合、次のような問題[1][2]が具体的に生じる。
[1] まず、電子スチルカメラでは、レリーズ前の期間、モニタ表示用の撮像画像などから画像動き信号を得る。この場合の撮像間隔(例えば、30フレーム/秒)は、一般的なビデオカメラの撮像間隔(例えばNTSCでは60フィールド/秒)に比べて数倍も長い。すなわち、電子スチルカメラでは、画像動き信号のサンプル間隔が粗く、この粗い画像動き信号を目標駆動位置にフィードバックする制御方式では充分な防振効果を得ることが難しい。
[2] さらに、特許文献1および特許文献2では、目標駆動位置の更新間隔に合わせるため、画像動き信号を外延予測して補間値を生成している。一方、電子スチルカメラでは、サンプル間隔の粗い画像動き信号を扱うため、この種の外延予測によって非連続な補間誤差がビデオカメラよりも発生しやすい。この補間誤差は、目標駆動位置の制御誤差となる。その結果、防振効果を著しく損なうおそれがある。
なお補足として、特許文献1および特許文献2では、画像動き信号を目標駆動位置にフィードバックしている。この点で、画像動き信号により基準値を修正する本発明とは明らかに異なる。さらに、この特許文献1および特許文献2では、画像動き信号のフィードバック経路にハイパスフィルタを設けている。そのため、ドリフトやオフセットに相当する低域成分は、ハイパスフィルタによってカットされる。そのため、特許文献1および特許文献2では、低域のドリフトやオフセットを適切に修正することは不可能である。
特に、電子スチルカメラでは、ビデオカメラには存在しない、長秒時露光(1/15秒以上など)も考慮する必要がある。この長秒時露光では、ビデオカメラでは決して問題とならない、被写体像のゆっくりとした低速移動が露光ブレの原因となる。この低速移動を起こすドリフトの超低域成分は、上述したハイパスフィルタを通過しない。そのため、特許文献1および特許文献2では、長秒時露光における露光ブレの改善は不可能である。
そこで、本発明の目的は、上述した問題点に鑑みて、光学的ブレ補正の基準値をより正確に求めることである。
また、本発明の別の目的は、上述した問題点に鑑みて、画像動き信号をフィードバックする箇所を工夫することにより、光学的ブレ補正の防振効果を高めることである。
さらに、本発明の別の目的は、上述した問題点に鑑みて、電子スチルカメラに特に好適な光学的ブレ補正の制御方式を提供することである。
以下、本発明について説明する。
本発明の撮影レンズは、カメラの撮像面に被写体像を形成する撮影レンズであって、ブレ補正光学系、振動検出部、基準値生成部、目標駆動位置演算部、および駆動部を備える。
このブレ補正光学系は、撮像面に対する被写体像の像面ブレを光学的に補正するための光学系である。
振動検出部は、振動を検出して振動検出信号を出力する。
基準値生成部は、振動検出信号から低周波成分を抽出することにより、振動のない静止状態における振動検出部の出力である基準値を推定する。
目標駆動位置演算部は、振動検出信号と、推定された基準値との差から、像面ブレの原因となる振動成分を求め、振動成分に基づいてブレ補正光学系の目標駆動位置を求める。
駆動部は、ブレ補正光学系を目標駆動位置に追従制御する。
特にこのような構成において、基準値生成部は、カメラの撮像画像を解析して得られる画像動き信号を情報取得し、画像動き信号を基準値と同一スケールに換算し、基準値から減算することにより基準値を修正する。
なお、基準値生成部が、画像動き信号を基準値にフィードバックすることにより、基準値が『振動検出部のドリフト出力』を含むように、基準値を修正しても良い
また、低域のドリフト出力を基準値中に正確に含めるため、画像動き信号の低域成分をカットせずに、基準値にフィードバックしても良い
また、ドリフト出力に起因する低速の画像動きを選択的に検出して、画像動き信号としても良い
また、基準値生成部が、撮影レンズの焦点距離および撮影倍率に基づいて、画像動き信号を基準値と同一スケールに換算しても良い。基準値生成部は、この換算後の画像動き信号に基づいて基準値を修正しても良い
また、基準値生成部が基準値の修正値を更新する周期を、目標駆動位置の更新周期よりも遅く設定しても良い
また、画像動き信号の位相を進み補償する位相補償部を有しても良い。基準値生成部は、この進み補償された画像動き信号に基づいて、基準値を修正しても良い
また、この進み補償は、画像動き信号の計算遅れの期間を進み補償するものであっても良い
本発明のカメラシステムは、撮影レンズ、撮像部、および動き検出部を備えたカメラシステムである。
この撮影レンズは、上述したいずれか撮影レンズである。
撮像部は、撮像面を有し、撮影レンズによって撮像面に形成される被写体像を撮像する。
動き検出部は、撮像部から撮像画像を取得して撮像画像の時間軸の変化を検出し、被写体像の撮像面に対する動きを画像動き信号として撮影レンズへ出力する。
なお好ましくは、撮影レンズと撮像部とを着脱自在に構成し、両者間で画像動き信号などの情報のやりとりを行う。
本発明では、カメラの撮像画像を解析して得られる画像動き信号を用いて、振動検出信号の基準値を修正する。
一般に、この基準値に誤差があると、振動成分の検出誤差となって撮像画像に残存ブレを生じる。本発明では、この撮像画像の残存ブレを画像動き信号として検出し、この画像動き信号を用いて基準値を修正する。このようなフィードバック作用により、基準値の誤差を確実に低減することができる。その結果、振動成分の検出誤差が確実に低減し、光学的ブレ補正の防振精度を一段と高めることができる。
特に、本発明がフィードバック先として選んだ基準値は、更新間隔の短い目標駆動位置に比べて、はるかに低域中心の信号である。そのため、サンプリング間隔の粗い画像動き信号をフィードバックしても、制御系に過度な行き過ぎが生じるおそれは少なく、安定かつ適正な制御応答が達成できる。すなわち、サンプリング間隔の粗い画像動き信号をフィードバックする箇所として、この低域中心の基準値は非常に適している。
また、基準値が外乱などによって変動した場合も、この画像動きベクトルのフィードバックによって基準値は正常値にすぐに引き戻される。そのため、本発明では、基準値外乱に対してロバスト性の極めて高い光学的ブレ補正が実現する。
以下、図面に基づいて本発明にかかる実施形態を説明する。
[実施形態の構成説明]
図1は、光学的ブレ補正の機構を有するカメラシステム190(撮影レンズ190aを含む)を示す図である。なお、実際のカメラシステム190は、水平および垂直の2軸方向について像面ブレを補正する。しかしながら、図1では、説明を簡明にするため、光学的ブレ補正の機構を1軸分のみ記載している。
以下、図1に示す各部の構成について説明する。
角速度センサ10は、カメラシステム190の振動を、コリオリ力などにより角速度として検出する。増幅部20は、角速度センサ10の出力を増幅する。なお、センサ出力の高周波ノイズを低減させることを目的として、ローパスフィルタを付加させてもよい。A/D変換部30は、増幅部20の出力をデジタルの角速度データに変換する。
基準値演算部40は、A/D変換部30から出力される角速度データから低域成分を抽出することにより、角速度の基準値(振動のない静止状態における角速度データ)を推定する。さらに、基準値演算部40は、後述する画像動きベクトルを用いて、この基準値を修正する。
目標駆動位置演算部50は、角速度データから基準値を減算することにより、像面ブレの原因となる真の角速度を求める。目標駆動位置演算部50は、この真の角速度を積分することによって、撮影レンズ190aの光軸角度を求める。目標駆動位置演算部50は、この光軸角度に基づいて、目標駆動位置を決定する。この目標駆動位置は、この光軸角度における被写体像の変位を打ち消すブレ補正光学系100の位置である。
なお、目標駆動位置演算部50は、この目標駆動位置の決定に、焦点距離情報120、撮影倍率情報130、およびブレ補正光学系100の光学情報140を使用する。この焦点距離情報120は、撮影レンズ190aのズーム環のエンコーダ出力などから随時に得られる情報である。撮影倍率情報130は、撮影レンズ190aのレンズ位置やAF駆動機構から随時に得られる情報である。また、ブレ補正光学系100の光学情報140は、ブレ補正係数(ブレ補正係数=レンズ移動量に対する像移動量/レンズ移動量)であり、予め撮影レンズ190a内に格納されるデータである。
さらに、撮影レンズ190aには位置検出部90が設けられ、ブレ補正光学系100の位置検出を行う。この位置検出部90は、赤外線LED92、PSD(位置検出素子)98、およびスリット板94を備える。赤外線LED92の光は、ブレ補正光学系100の鏡筒102に設けられたスリット板94のスリット穴96を通過してスポット光となる。このスポット光は、PSD98に到達する。PSD98は、このスポット光の受光位置を信号出力する。この信号出力をA/D変換部110を介してデジタル変換することにより、ブレ補正光学系100の位置データが得られる。
駆動信号演算部60は、この位置データと目標駆動位置との偏差を求め、この偏差に応じて駆動信号を算出する。例えば、この駆動信号の演算は、偏差の比例項、積分項、および微分項を所定比率で足し合わせるPID制御が実施される。
ドライバ70は、求めた駆動信号(デジタル信号)に応じて、駆動電流を駆動機構80に流す。
駆動機構80は、ヨーク82、マグネット84、コイル86から構成される。コイル86は、ブレ補正光学系100の鏡筒102に固定された状態で、ヨーク82とマグネット84からなる形成される磁気回路内に配置される。ドライバ70の駆動電流をこのコイル86に流すことにより、ブレ補正光学系100を光軸と直交する向きに動かすことができる。
ブレ補正光学系100は、撮影レンズ190aの結像光学系の一部である。このブレ補正光学系100を目標駆動位置まで動かして、被写体像の結像位置をシフトさせることにより、被写体像の像面ブレを抑制できる。
撮像素子150は、撮像面に形成される被写体像を撮像する。撮像画像は、不図示のモニタ画面に表示される他、動きベクトル検出部160へ出力される。
動きベクトル検出部160は、撮像画像の時間軸方向の動きを検出することにより、残存ブレを含む画像動きベクトルを検出する。動きベクトル変換部170は、焦点距離情報120および撮影倍率情報130を用いて、この画像動きベクトルを基準値と同一スケールに換算する。このように換算された画像動きベクトルは、前述した基準値演算部40において基準値の修正に使用される。
[発明との対応関係]
以下、発明と本実施形態との対応関係について説明する。なお、ここでの対応関係は、参考のために一解釈を例示するものであり、本発明を徒らに限定するものではない。
請求項記載の撮影レンズは、撮影レンズ190aに対応する。
請求項記載のブレ補正光学系は、ブレ補正光学系100に対応する。
請求項記載の振動検出部は、角速度センサ10に対応する。
請求項記載の基準値生成部は、基準値演算部40、および動きベクトル変換部170に対応する。
請求項記載の目標駆動位置演算部は、目標駆動位置演算部50に対応する。
請求項記載の駆動部は、駆動信号演算部60、ドライバ70、駆動機構80、および位置検出部90に対応する。
請求項記載のカメラシステムは、カメラシステム190に対応する。
請求項記載の画像動き信号は、画像動きベクトルの角速度方向の成分に対応する。
[実施形態の動作説明]
図2は、光学的ブレ補正の動作タイミングを説明する図である。
図3は、画像動きベクトルの計算手順を示す流れ図である。
図4は、光学的ブレ補正の制御動作を示す流れ図である。
以下、これらの図を参照して、本実施形態の動作を説明する。
まず、図2に示すように、撮像素子150は、所定の撮像間隔Timgで定期的に撮像画像を出力する。この撮像間隔Timgごとに、図3に示す画像動きベクトルの計算処理が実施される。以下、この画像動きベクトルの計算処理を説明する。
ステップS1: 撮像素子150は、画像のライン数を間引くことにより、モニタ表示用の撮像画像を高速(30フレーム/秒)に読み出す。
ステップS2: 動きベクトル検出部160は、撮像画像のフレーム間差などから画像の動きベクトルを求める。このような画像動きベクトルの検出方法としては、時空間勾配法やブロックマッチング法などの方法がある。
なお、撮像画像の全体について画像動きベクトルを求めてもよい。または、撮像画像の一部エリアについて画像動きベクトルを求めてもよい。
さらに、画像動きベクトルとしては、光学的ブレ補正の各軸方向(例えば、垂直と水平など)ごとに個別に求めてもよい。この場合、各軸方向の画像動き(フレーム間の変位など)を個々の要素とする画像動きベクトルが求まる。
また、画像動きベクトルとしては、複数の向きについて撮像画像のフレーム間変位の検出を行うことで、撮像画像の変位方向と変位量を求めてもよい。
ステップS3: 動きベクトル変換部170は、撮影レンズ190aの焦点距離情報120を情報取得する。
ステップS4: 動きベクトル変換部170は、撮影レンズ190aの撮影倍率情報130を情報取得する。
ステップS5: 動きベクトル検出部160が出力する画像動きベクトルは、撮像画像のフレーム間における変位の情報である。そこで、動きベクトル変換部170は、画像動きベクトルを、基準値と同じ角速度のスケールに換算する。例えば、下記の換算式が使用される。
Figure 0004419466
ただし、Vは換算前の画像動きベクトル、V′は換算後の画像動きベクトル、fは焦点距離、βは撮影倍率、およびGは定数である。
ステップS6: 動きベクトル変換部170は、基準値修正用に保持する画像動きベクトルを、ステップS5で求めた最新値V′に更新する。
以上のような画像動きベクトルの計算処理は、図2に示すように、撮像時点から、計算時間Tcalだけ遅れて完了する。
次に、光学的ブレ補正の制御動作について、図4を用いて説明する。
ステップS11: A/D変換部30は、角速度センサ10の角速度出力を、サンプリング間隔ToptでA/D変換する。
ステップS12: 基準値演算部40は、A/D変換後の角速度データに対して移動平均やローパスフィルタ処理を施し、角速度データの基準値を推定する。
ステップS13: 基準値演算部40は、動きベクトル変換部170から、ステップS6で更新された画像動きベクトルV′を情報取得し、基準値Woを下式に従って修正する。
Wo′=Wo−Q・v′ ・・・(2)
ただし、Qは画像動きベクトルのフィードバックゲインである。v′は、画像動きベクトルV′の角速度方向の成分(角速度の単位に換算したもの)である。このQの値は、基準値Wo′の行き過ぎを適度に抑制し、かつ基準値Wo′の整定時間を適度に短縮するなどの観点から決定される。
一般に、基準値Wo′に誤差が生じると、光学的ブレ補正において撮像画像に残存ブレが生じる。この残存ブレを画像動きベクトルV′として検出し、上式(2)によって基準値にフィードバックすることにより、基準値Wo′の誤差を低減することができる。
基準値Wo′の誤差が低減するに従って、徐々に画像動きベクトルV′も低減する。最終的に画像動きベクトルV′がゼロと見なせるほどに小さくなると、基準値Wo′は、角速度センサ10のドリフト出力やDCオフセットを正確に含んだ値となる。
なお、光学的ブレ補正では、ブレ補正光学系100の追従性を高めるため、図2に示すように撮像間隔Timgよりも短いサンプリング間隔Toptで、目標駆動位置および基準値の更新を実行する。そのため、毎回の基準値修正のたびに、毎回新しい画像動きベクトルを使用することはできない。そこで、次回の画像動きベクトルを取得するまでの期間、一つの画像動きベクトルV′を繰り返し使用して、基準値修正を行う。
ステップS14: 目標駆動位置演算部50は、A/D変換部30から出力される角速度データから、修正後の基準値Wo′を減算し、像面ブレの原因となる真の角速度データを求める。
ステップS15: 目標駆動位置演算部50は、この真の角速度データを積分することにより、撮影レンズ190aの光軸角度の変位量を求める。目標駆動位置演算部50は、この光軸角度の値から、被写体像の結像位置の変位を打ち消すために必要なブレ補正光学系100の位置(いわゆる目標駆動位置)を求める。
例えば、下式をもちいて、この目標駆動位置θ(Tk)の計算が行われる。
C=f・(1+β)2/K ・・・(3)
θ(Tk)=θ(Tk-1)+C・[W(Tk)−Wo′] ・・・(4)
ただし、fは焦点距離、βは撮影倍率、θ(Tk-1)は前回の目標駆動位置、W(Tk)は最新の角速度データ、およびKはブレ補正係数である。なお、ブレ補正係数Kは、下式に基づいて予め実測しておく。
K=(被写体像の変位)/(ブレ補正光学系100の変位)
ステップS16: 駆動信号演算部60は、目標駆動位置演算部50から目標駆動位置を情報取得し、ブレ補正光学系100を目標駆動位置に追従制御する。
[本実施形態の効果など]
図5は、本実施形態の光学的ブレ補正のシミュレーション結果を示す図である。
図5Aに示す基準値には、画像動きベクトルをフィードバックすることによって、角速度センサ10のDCオフセットやドリフト出力が正確に含まれる。特に、従来の移動平均では修正不可能であったドリフト出力の位相遅れなどを正確に修正することができる。
特に、基準値は低域中心の信号であるため、サンプリング間隔の粗い画像動き信号であっても、適切かつ安定に基準値を修正することができる。また、基準値が外乱などによって変動した場合も、この画像動きベクトルのフィードバックによって基準値を適切に正常値に引き戻すことができる。そのため、基準値の外乱変動に対してロバスト性が極めて高くなる。
その結果、図5Bに示す基準値の誤差(真の角速度データの誤差)は、図8Bに示す従来例のシミュレーション結果に比較して少ない。このように基準値の精度が向上することにより、図5Cに示すように高い防振効果が得られる。
さらに、画像動きベクトルの更新間隔は粗いため、画像動きベクトルの計算処理に伴うシステム負荷は非常に小さい。
図6は、本実施形態における防振性能の目安を示す説明図である。従来技術(図6中のB,C)では、ブレ補正光学系100が時間経過と共にドリフト移動してしまうため、像面ブレ量を小さく抑えることが難しい。一方、本実施形態(図6に示すD,E)では、ブレ補正光学系100のドリフト移動が小さく、露光時間中における像面ブレ量を小さく抑えることができる。
[実施形態の補足事項]
なお、上述した実施形態において、図7のステップS21に示すように、画像動きベクトルを進み補償してもよい。
例えば、下式を用いて、進み補償を施した画像動きベクトルVnow′を求めることが可能である。
Vnow′=Vnow+S・[Vnow−Vpre]・・(5)
ただし、Vnowは最新の画像動きベクトル、Vpreは前回の画像動きベクトル、およびSは定数である。
この定数Sを調整することによって、例えば、図2に示す計算時間Tcalの分だけ、画像動きベクトルを進み補償することができる。この場合、計算時間Tcalの無駄時間を位相補償して、基準値の修正精度を一段と高めることが可能になる。
また、上述した実施形態では、撮像素子の撮像画像に基づいて画像動きベクトルを生成している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カメラシステムの分割測光機構や焦点検出機構や測色機構やファインダ機構などで光電変換を行って、撮像画像を生成してもよい。この種の撮像画像から画像動きベクトルを生成することによって、『銀塩カメラ』や『一眼レフタイプの電子カメラ』において本発明を実施することができる。
なお、カメラ側に秒間2〜8コマ以上程度の連写性能があれば、基準値の修正に必要なサンプリング間隔の画像動き信号を得ることもできる。したがって、連写しながら光学的ブレ補正を継続実施するタイプのカメラに本発明を適用することもできる。
さらに、上述した実施形態において、撮影レンズ190aとカメラシステム190とを一体に構成してもよい。また、撮影レンズ190aとカメラシステム190とを着脱自在に構成してもよい。なお、撮影レンズ190aとカメラシステム190とを着脱する場合は、画像動き信号を生成するブロックを、撮影レンズ190aおよびカメラシステム190のどちらに設置してもよい。例えば、画像動き信号を生成するブロックをカメラシステム190側に設置し、画像動き信号を基準値と同一スケールに換算するブロックを撮影レンズ190a側に設置するなどの態様が可能である。
また、上述した実施形態では、振動検出信号として角速度を検出している。しかしながら、本発明は、角速度の検出に限定されず、被写体像の結像位置の変位を推定可能な振動成分を検出すればよい。例えば、カメラシステムに作用する加速度や、角加速度や、遠心力や、慣性力などを振動検出信号として検出すればよい。
以上説明したように、本発明は、光学的ブレ補正機能を有する光学機器などに利用可能な技術である。
光学的ブレ補正の機構を有するカメラシステム190(撮影レンズ190aを含む)を示す図である。 光学的ブレ補正の動作タイミングを示す図である。 画像動きベクトルの計算手順を示す流れ図である。 光学的ブレ補正の制御動作を示す流れ図である。 本実施形態の光学的ブレ補正のシミュレーション結果を示す図である。 本実施形態における防振性能の目安を示す説明図である。 画像動きベクトルの計算手順(画像動きベクトルの進み補償を含む)を示す流れ図である。 従来の光学的ブレ補正のシミュレーション結果を示す図である。
符号の説明
10 角速度センサ
20 増幅部
30 A/D変換部
40 基準値演算部
50 目標駆動位置演算部
60 駆動信号演算部
80 駆動機構
90 位置検出部
100 ブレ補正光学系
102 鏡筒
150 撮像素子
160 動きベクトル検出部
170 動きベクトル変換部
190 カメラシステム
190a 撮影レンズ

Claims (6)

  1. カメラの撮像面に被写体像を形成する撮影レンズであって、
    前記撮像面における前記被写体像の像面ブレを光学的に補正するためのブレ補正光学系と、
    振動を検出して振動検出信号を出力する振動検出部と、
    前記振動検出信号から低周波成分を抽出することにより、前記振動のない静止状態における前記振動検出部の出力である基準値を推定する基準値生成部と、
    前記振動検出信号と、推定された前記基準値との差から、前記像面ブレの原因となる振動成分を求め、前記振動成分に基づいて前記ブレ補正光学系の目標駆動位置を求める目標駆動位置演算部と、
    前記ブレ補正光学系を前記目標駆動位置に追従制御する駆動部とを備え、
    前記基準値生成部は、前記カメラの撮像画像を解析して得られる画像動き信号を情報取得し、前記画像動き信号を前記基準値と同一スケールに換算し、前記基準値から減算することにより前記基準値を修正する
    ことを特徴とする撮影レンズ。
  2. 請求項1に記載の撮影レンズにおいて、
    前記基準値生成部は、前記画像動き信号を前記基準値にフィードバックすることにより、前記基準値が前記振動検出部のドリフト出力を含むように、前記基準値を修正する
    ことを特徴とする撮影レンズ。
  3. 請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の撮影レンズにおいて、
    前記基準値生成部は、前記撮影レンズの焦点距離および撮影倍率に基づいて、前記画像動き信号を前記基準値と同一スケールに換算す
    ことを特徴とする撮影レンズ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮影レンズにおいて、
    前記基準値生成部が前記基準値の修正値を更新する周期は、前記目標駆動位置の更新周期よりも遅く設定される
    ことを特徴とする撮影レンズ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の撮影レンズにおいて、
    前記画像動き信号の位相を進み補償する位相補償部を有し、
    前記基準値生成部は、進み補償された前記画像動き信号に基づいて、前記基準値を修正する
    ことを特徴とする撮影レンズ。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮影レンズと、
    前記撮影レンズにより撮像面に形成される被写体像を撮像する撮像部と、
    前記撮像部から撮像画像を取得して前記撮像画像の時間軸の変化を検出し、前記被写体像の撮像面に対する動きを画像動き信号として前記撮影レンズへ出力する動き検出部と
    を備えたことを特徴とするカメラシステム。
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