JP3823389B2 - ブレ検出装置、及び、撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラなどの撮影装置における手ブレなどによる振動を検出するブレ検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のブレ検出装置の利用例として、ブレ検出装置を内蔵したスチルカメラなどの撮影装置が提案されている。このような撮影装置は、カメラの振動をブレ検出装置が検出し、撮影レンズの一部のレンズ(以下、ブレ補正レンズという)を光軸と略直交する方向に、その検出信号に基づいて移動し、撮影時にカメラが振動することにより生ずる像ブレを補正している。
【0003】
従来のブレ補正を行う光学系の構造については、特開平4−76525号公報の第3図に開示されている。特開平4−76525号公報の防振手段を有したカメラは、光軸と直角方向の平面内で平行移動可能なブレ補正レンズと、このブレ補正レンズを保持する枠部材と、この枠部材を保持する板部材と、この板部材に取り付けられた4本のワイヤと、このワイヤを支持する本体と、巻線コイル,ヨーク及び永久磁石からなり、ブレ補正レンズを上下及び左右方向に駆動するアクチュエータと、発光素子と受光素子とからなり、ブレ補正レンズの位置を検出する位置検出装置とを備えている。
【0004】
以下に、図5を参照して、従来のブレ補正装置の動作について説明する。
図5は、従来のブレ補正装置のブロック線図である。
角速度センサ10は、例えば、コリオリ力を検出するための圧電振動式角速度センサであり、カメラの振動をモニタするためのセンサである。角速度センサ10の出力は、積分部40に入力され、積分部40は、角速度センサ10の出力を時間積分し、カメラのブレ角度に変換した後に、ブレ補正レンズの目標駆動位置情報に変換し出力する。サーボ回路100は、この目標駆動位置情報に応じてブレ補正レンズを駆動するために、目標駆動位置情報とブレ補正レンズの位置情報との差を演算し、アクチュエータ110に信号を出力する。アクチュエータ110は、光軸と略直交する面内において、この信号に基づいて、ブレ補正レンズを駆動する。位置検出装置120は、ブレ補正レンズの動きをモニタし、サーボ回路100にフィードバックしている。
【0005】
従来のブレ補正装置では、角速度センサ10の出力を積分部40が時間積分するときに、制御の基準値となる積分定数が必要となる。この積分定数の演算方法に関しては、例えば、特開平4−211230号公報の第17図及び第18図に開示されている。
特開平4−211230号公報に開示されている手振れ補正装置のブレセンサは、コリオリ力を検出する角速度センサと、中央演算処理装置(CPU)とメモリとからなり、現時点から所定の時間前までの間にサンプリングした角速度センサの出力の平均値を算出するドリフト成分検出部と、角速度センサの出力から平均値を減算することによりドリフト成分を除去し、その減算値を出力する減算器とを備えている。
【0006】
ドリフト成分検出部には、角速度センサの出力が10ms毎に入力され、0.5秒(10ms×50)毎に50個分の出力が入力される。そして、ドリフト成分検出部のメモリには、算出された50個分の平均値(以下、平均1とする)が格納され、10秒(0.5秒×20)経過後には、さらに20個分の平均1が入力される。したがって、スタートから10秒経過後には、1000個分(50×20)の角速度センサの出力の平均値を算出することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のブレ補正装置では、角速度センサの出力信号を一度積分し、角変位情報に変換してから処理しているために、角速度センサの出力信号を積分するときに積分定数を決定する必要がある。この積分定数は、カメラが静止した状態での角速度センサの出力(以下、オメガゼロという)を用いるのが一般的である。
しかし、カメラなどの撮影装置を手持ちで撮影するときには、カメラは、撮影者の手ブレにより通常振動している。このような状況下では、振動センサの静止時の出力を直接測ることができないために、手ブレにより振動がのった角速度センサの出力信号から、オメガゼロを演算により求める必要がある。
【0008】
以下に、図6及び図7を参照して、オメガゼロの演算に成功した場合と失敗した場合とについて説明する。
図6は、従来のブレ補正装置によるオメガゼロの演算に成功した例を示す図である。図7は、従来のブレ補正装置によるオメガゼロの演算に失敗した例を示す図である。図6(A)及び図7(A)は、角速度センサが出力した角速度信号を示したものであり、図6(B)及び図7(B)は、角速度信号から求めた角変位信号を示したものである。なお、説明を簡単とするために、手ブレ波形として正弦波が入力されたのとし、オメガゼロは、ゼロとした。
【0009】
図6(A)に示すように、角速度信号の振幅の中心は、ゼロであり、オメガゼロがゼロの値に正確に求められたとする。このオメガゼロを積分定数として角速度信号の積分演算を行うと、図6(B)に示すような角変位信号を求めることができる。このように、正確に求めらたオメガゼロを積分定数として角速度信号を積分すると、角変位信号を正確に算出することができる。したがって、正確に算出された角変位信号を用いてブレ補正レンズを制御すると、ブレ補正を高精度に行うことができる。
【0010】
一方、図7(A)においては、角速度信号の振幅の中心はゼロではなく、演算したオメガゼロがゼロの値に正確に求められておらず、オフセット値がのっている。このような間違ったオメガゼロ値を積分定数として積分演算すると、図7(B)に示すように、1次の傾き成分がのった角変位信号が算出されてしまい、角変位信号を正確に算出することができない。このような角変位信号を用いてブレ補正レンズを制御すると、ブレ補正レンズは、振動しながらドリフトし、ブレ補正を高精度に行うことができないだけではなく、かえってブレを悪化させてしまう可能性がある。したがって、オメガゼロの演算を精度良く行うことが、ブレ補正においては重要な因子となる。
【0011】
オメガゼロの演算を行う方法としては、先に説明した特開平4−211230号公報の第17図及び第18図に開示されている移動平均法が知られている。
しかし、この移動平均法では、移動平均を計算する必要があり、この平均計算を行うためのデータの蓄積にある程度の時間を必要とする。例えば、特開平4−211230号公報の移動平均による演算方法では、10ms毎のデータ50個分の平均1を計算し、さらに平均1の20個分の平均を計算することにより、オメガゼロの演算を行う。このときに、演算開始からオメガゼロが出力されるまでの時間は、10秒(10ms×50個×20個)となる。したがって、ブレ検出装置を作動してから最初の10秒間は、ブレ検出装置によりオメガゼロを出力することができないことになる。
【0012】
例えば、カメラの半押しスイッチ(撮影動作準備スイッチ)が撮影者によりON動作され、オメガゼロの演算をブレ検出装置が開始すると、演算を開始してから最初の10秒間は、ブレ補正を行うことができないことになる。このために、ブレ補正が行えるまでレリーズを待っていると、シャッタチャンスをその間に逃してしまうという問題があった。
また、オメガゼロの出力を早く行うために、平均演算のためのデータのサンプリングを少なくすると、オメガゼロの検出を精度良く行うことができず、ブレ補正の効果が低下したり、ブレを悪化させてしまうという問題があった。
【0013】
本発明の課題は、基準値であるオメガゼロの演算を早期に精度良く行うことができるとともに、オメガゼロを基準として正確に算出された角変位信号を用いてブレ補正を高精度に行うことができるブレ検出装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。すなわち、請求項1の発明は、ブレによる振動を検出し振動検出情報(S300)を出力する振動検出部(10)と、ブレ検出を開始する前に予め取得される前記振動検出部(10)に関する初期値を設定する設定部(33)と、前記ブレ検出の開始前に予め取得された前記初期値と前記ブレ検出の開始後に取得された前記振動検出情報(S300)とに基づいてブレ補正制御のための演算が可能な演算部(30)とを含む演算手段とを有し、前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時には少なくとも前記ブレ検出を開始する前に予め取得された前記初期値を用い、前記振動検出部(10)のオフセットに関する量を演算し、前記振動検出部(10)が出力した前記振動検出情報(S300)から前記オフセットに関する量を減算し積分演算をして、前記ブレを検出することを特徴とするブレ検出装置。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載されたブレ検出装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時に前記初期値のみを用いて前記ブレを検出することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載されたブレ検出装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出が開始された後に、前記初期値と前記ブレ検出を開始した後に取得された前記振動検出情報(S300)との両方を用いて前記ブレを検出することを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたブレ検出装置であって、前記ブレ検出の開始後に取得した前記振動検出情報(S300)は、積算平均値であることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたブレ検出装置であって、前記初期値は、前記振動検出部(10)が静止している状態で取得されたものであることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、前記振動検出部(10)は、加速度を検出する加速度検出器であること、を特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、前記振動検出部(10)は、速度を検出する速度検出器であること、を特徴とする。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、前記ブレ検出の開始後に取得した前記振動検出情報(S300)をAVとし、前記初期値をSとし、重み関数をPとしたときに、前記オフセットに関する量ω_0は、ω_0=P・S+(1−P)・AVであること、を特徴とする。
【0022】
請求項9の発明は、請求項8に記載のブレ検出装置において、前記重み関数Pは、前記演算部(30)が演算を開始してから時間が経過するとともに減少する減少関数であること、を特徴とするブレ検出装置。請求項10の発明は、請求項9に記載のブレ検出装置において、前記重み関数Pは、0≦P≦1であること、を特徴とする。請求項11の発明は、レンズを有した撮影装置であって、前記レンズを駆動するレンズ駆動部と、前記撮影装置のブレによる振動を検出し振動検出情報(S300)を出力する振動検出部(10)と、ブレ検出を開始する前に予め取得される前記振動検出部(10)に関する初期値が設定された設定部(33)と、前記ブレ検出の開始前に予め取得された前記初期値と前記ブレ検出の開始後に取得された前記振動検出情報(S300)とに基づいて演算をする演算部(30)とを含む演算手段とを有し、前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時には少なくとも前記ブレ検出を開始する前に予め取得された前記初期値を用い、前記振動検出部のオフセットに関する量を演算し、前記振動検出部が出力した前記振動検出情報から前記オフセットに関する量を減算して積分演算をし、前記ブレを検出して、前記レンズ駆動部による前記レンズの駆動量を演算し、前記レンズ駆動部は、前記演算手段の演算結果を用いて、前記レンズを駆動することを特徴とする。請求項12の発明は、請求項11に記載された撮影装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時に前記初期値のみを用いて演算することを特徴とする。請求項13の発明は、請求項11又は12に記載された撮影装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出が開始された後に、前記初期値と前記ブレ検出を開始した後に取得した前記振動検出情報(S300)との両方を用いて演算することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、図面などを参照して、本発明の実施形態について、さらに詳しくに説明する。
まず、本発明の実施形態に係るブレ検出装置が使用される一眼レフカメラについて説明し、このブレ検出装置の概要を説明する。
図1は、第1実施形態に係るブレ検出装置が使用される一眼レフカメラを示す概略断面図である。
【0024】
角速度センサ10は、カメラの振動を検出し、このカメラに作用するコリオリ力に比例する電圧値を出力するセンサである。角速度センサ10は、2軸方向の角速度を検出するために、X軸まわりの角速度を検出するピッチ角速度センサとY軸まわりの角速度を検出するヨー角速度センサとからなる2つのセンサを通常搭載している。図1において、1軸分の角速度センサについては図示することを省略している。角速度センサ10は、検出した振動検出情報を後述する増幅部20へ出力している。
【0025】
増幅部20は、角速度センサ10の出力値を増幅するためのものである。増幅部20は、角速度センサ10から出力された振動検出情報を増幅し、増幅した出力値を演算部30と積分部40へ出力している。
【0026】
演算部30は、増幅部20からの出力値からオメガゼロを演算するためのものである。
図2は、第1実施形態に係るブレ検出装置の演算部のブロック図である。
演算部30は、増幅部20の出力信号が入力する平均演算部31と、設定部33と、平均演算部31の出力信号及び設定部33の出力信号がそれぞれ入力するオメガゼロ演算部32とを備えている。オメガゼロ演算部32は、演算したオメガゼロを後述する積分部40へ出力している。
【0027】
平均演算部31は、角速度センサ10からの出力信号の積算平均値を演算するためのものである。平均演算部31では、積算平均値が以下の計算式により算出される。
AV ω(t)=Σω(i)/t 〔式1〕
式1は、平均演算部31に入力された入力信号の積算平均値を求めるための式であり、この積算平均値は、演算を開始してから十分に時間が経過した後に、オメガゼロとして利用することができる。
【0028】
設定部33は、オメガゼロ初期推定値Magicを設定するためのものである。このオメガゼロ初期推定値Magicは、EEPROMなどの記憶装置に予め書き込んでおき、常に一定値として記憶しておいてもよい。オメガゼロ初期推定値Magicの決定方法としては、例えば、ブレ検出装置を工場から出荷するときに、角速度センサ10の静止時の出力をモニタし、この静止時の出力値を記憶する方法などがある。
【0029】
オメガゼロ演算部32は、平均演算部31において演算された積算平均値と後述する設定部33において設定されたオメガゼロ初期推定値Magicとに基づいて、オメガゼロを演算するためのものである。オメガゼロ演算部32では、以下の計算式によりオメガゼロが算出される。
W ω(t)=p(τ;t)・Magic +(1−p(τ;t))・Av ω(t)〔式2〕
【0030】
式2は、平均演算部31において式1にしたがって計算された積算平均値と、設定部33において予め設定されたオメガゼロ初期推定値Magicとを利用して、積算平均値とオメガゼロ初期推定値Magicとの重みづけ平均(以下、補間平均という)を演算するものである。
式2において、関数p(τ;t)は、積算平均Av ω(t)とオメガゼロ初期推定値Magicとの採用比率を決める重みづけ関数である。
τは、オメガゼロ初期推定値Magicを信頼する時間を表すパラメータである。このパラメータτは、EEPROMなどの記憶装置に予め書き込んでおき、常に一定値として記憶しておいてもよい。
重みづけ関数p(τ;t)は、例えば、以下の式により表すことができる。
p(τ;t)=exp(−t/τ) 〔式3〕
【0031】
重みづけ関数p(τ;t)は、演算を開始してから時間が経過するとともに減少する減少関数である。このように、重みづけ関数p(τ;t)を設定することにより、演算を開始してから初期の段階、すなわちtが小さい段階では、オメガゼロ初期推定値Magicに重みをおいてオメガゼロが演算される。演算を開始してから時間が経過するほど、すなわちtが大きくなると、積算平均値に重みをおいてオメガゼロが演算される。
【0032】
積分部40は、増幅部20の出力値から演算部30の出力値を減算し、積分演算を行うものである。積分部40は、積分演算を行うことにより、角速度信号を角変位信号に変換する。
【0033】
駆動部50は、積分部40からの角変位信号に基づいて、後述するブレ補正レンズ60を駆動するための駆動信号を出力し、この駆動信号に基づいてブレ補正レンズ60を駆動するためのものである。駆動部50には、制御用のサーボ回路と、ブレ補正レンズ60を駆動するアクチュエータと、ブレ補正レンズの駆動位置を検出するための位置検出装置などを備えている
【0034】
ブレ補正レンズ60は、光軸I方向に対して略直交する方向(図中矢印方向)に駆動し、ブレを補正するレンズである。ブレ補正レンズ60は、撮影装置の結像光学系に内蔵されており、駆動部50からの駆動信号に基づいて、撮影装置の結像光学系の光軸を偏心させてブレを補正する。
【0035】
レンズ鏡筒80は、ブレ補正レンズ60を含む撮影光学系を収納するための部材である。レンズ鏡筒80は、カメラボディ70に着脱自在であり、交換可能である。
【0036】
電源供給部90は、角速度センサ10に電源を供給するための供給部である。電源供給部90は、後述する半押しスイッチSW1のON動作と同時に角速度センサ10に電源を供給する。
【0037】
半押しスイッチS1は、一連の撮影準備動作を開始するためのスイッチである。半押しスイッチS1は、図示しないレリーズボタンの半押し動作に連動してONする。
【0038】
全押しスイッチS2は、カメラの露光動作などの撮影動作を開始させるためのスイッチである。全押しスイッチS2は、レリーズボタンの全押し動作に連動してONする。
【0039】
つぎに、本発明の実施形態に係るブレ検出装置の動作を説明する。
図3は、第1実施形態に係るブレ検出装置が使用される一眼レフカメラの動作を説明するフローチャートである。
ステップ(以下、Sとする)200において、半押しスイッチSW1がONされているか否かが判断される。半押しスイッチSW1がONであるときには、S300に進み、半押しスイッチSW1がONでないときには、半押しスイッチS1がONされるまで繰り返し判断を続ける。
【0040】
S300において、角速度センサ10に電源供給部90から電源が供給される。電源供給部90は、レリーズスイッチが押されることにより、半押しスイッチSW1のON動作を検出し、角速度センサ10に電源を供給する。2回目以降のループのときには、角速度センサ10への電源の供給が継続される。
【0041】
S400において、平均演算部31は、式1に基づいて積算平均を演算する。平均演算部31は、角速度センサ10から出力された振動検出情報に基づいて積算平均を演算する。1回目のループのときには、平均演算部31は、角速度センサ10から出力された振動検出情報に基づいて積算を開始する。
【0042】
S500において、オメガゼロ演算部32は、式2に基づいてオメガゼロを演算する。オメガゼロ演算部32は、平均演算部31において演算された積算平均値と設定部33において設定されたオメガゼロ初期推定値Magicとに基づいて、オメガゼロを演算する。1回目のループのときには積算開始となる。
【0043】
S600において、積分部40は、積分演算を行う。積分部40は、増幅部20の出力値から演算部30の出力値を減算し、角速度信号を角変位信号に積分演算し変換する。1回目のループのときには演算開始となる。
【0044】
S700において、ブレ補正レンズ60は、ブレ補正を開始する。駆動部50は、積分部40からの角変位信号に基づいて駆動信号を出力し、ブレ補正レンズ60は、この駆動信号に基づいて、撮影装置の結像光学系の光軸を偏心させてブレを補正する。1回目のループのときにはブレ補正開始となる。
【0045】
S800において、全押しスイッチSW2がONされているか否かが判断される。全押しスイッチSW2がONであるときには、S900に進み、全押しスイッチSW2がONでないときには、S200に戻り、半押しスイッチS1がONされるか否かが判断される。
【0046】
S900において、撮影が行われる。シャッタ機構によりシャッタの開閉、フィルム巻き上げ機構によるフィルムの巻き上げなどの一連の撮影動作が行われる。撮影動作が終了した後には、S200に戻り、半押しスイッチS1がONされるか否かの判断又は一連の動作を終了する。
【0047】
つぎに、本発明の実施形態に係るブレ検出装置による補間平均の演算結果と従来のブレ検出装置による移動平均の演算結果とを比較して説明する。図4は、第1実施形態に係るブレ検出装置による補間平均の演算結果と従来のブレ検出装置による移動平均の演算結果とを比較して示した図である。図4に示すように、従来の移動平均による演算方法では、演算を開始してからしばらくは、未出力時間(移動平均演算未出力時間)が存在する。一方、補間平均による演算方法では、演算を開始した直後から演算結果を得ることができ、演算を開始してから早い時間にオメガゼロがゼロに収束している。また、補間平均による演算方法では、演算を開始してから十分時間が経過した後に、演算結果が振動することがなく、オメガゼロを高精度に演算することができる。
【0048】
本発明の実施形態では、オメガゼロの演算を補間平均により行っているので、演算開始から早い時間にオメガゼロを高精度に演算することができ、演算開始から早い時間にブレ検出を高精度に行うことができる。その結果、従来のブレ検出装置では困難であった、オメガゼロの演算開始からブレ補正開始までのタイムラグを大幅に短縮することができ、シャッタチャンスを逃してしまうといった失敗を防ぐことができる。
また、補間平均による演算方法では、演算開始から十分時間が経過した後であっても、演算結果が揺らぐことがないために、オメガゼロの演算を高精度に行うことができる。その結果、従来の移動平均による演算方法によりブレ補正を行うのに比べ、補間平均による演算方法では、ブレ補正の精度を向上させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第1実施形態における式3は、例えば、tが小さいときには、オメガゼロ初期推定値Magicに重みをおき、tが大きくなるにしたがって式1により演算される積算平均値に重みを置く関数に置き換えることもできる。例えば、より簡単な式として以下の計算式を挙げることができる。
p(τ;t)=−t/τ+1(t≦τ)
p(τ;t)=0(t>τ) 〔式4〕
式4では、まずt=0のときには、オメガゼロ初期推定値Magicと積算平均値との重みの比は、1:0であるが、t=τ/2のときには、重みの比は、0:1である。
【0050】
(他の実施形態)
以上説明した実施形態に限定されることはなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
例えば、本発明の実施形態に係るブレ検出装置の積算部40は、演算部30に内蔵してもよい。
また、オメガゼロ初期推定値Magicは、カメラ特有の機械的性質、角速度センサの特質、カメラのおかれている撮影状況又は角速度信号の入力値などに応じて可変してもよく、予め記憶しておいた複数の値を状況に応じて選択して設定してもよい。オメガゼロ初期推定値Magicの過去のデータを学習させ、最適なデータを選択して設定することもできる。
【0051】
本発明の実施形態では、平均演算部31は、角速度信号の積算平均値を式1により演算しているが、この式1による積算平均に限らず、その他の平均演算法、例えば統計的な最小二乗法などを利用することもできる。平均演算法に限らず、デジタルフィルタなどを利用して、角速度信号の波形の低周波成分を抽出するような演算を行ってもよい。
また、式2におけるパラメータτは、カメラのおかれている状況に応じて可変としてもよい。
【0052】
振動検出部は、角速度センサに限らず、加速度センサやその他のセンサに関しても本発明は有効である。例えば、角加速度センサを用いるときには、まず角加速度信号に対して補間平均が演算され、この演算結果が積分されて角速度信号に変換される。そして、本発明の実施形態において説明した補間平均による演算方法により、この角速度信号が演算され、この演算結果がさらに積分されて角変位信号に変換される。
また、本発明の実施形態では、スチルカメラにブレ検出装置を搭載した例を挙げて説明したが、これに限らず、ビデオカメラ、双眼鏡又は望遠鏡などに対しても本発明は有効である。レンズ鏡筒の交換が不可能なコンパクトカメラについても本発明を適用することができる。
なお、S300において、角速度センサ10のON動作のタイミングは、例えば、カメラのメイン電源スイッチのON動作に同期させてもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、請求項1記載の発明によれば、振動検出情報に基づいて演算した中心値と設定部により設定された初期値とから演算部が基準値を演算し、請求項2記載の発明によれば、増幅部の出力値に基づいて、演算部が中心値を演算するので、演算開始直後から正確な基準値を得ることができ、基準値を高精度に演算することができる。
【0054】
請求項3記載の発明によれば、振動検出部は、加速度を検出する加速度検出器であるので、加速度検出器の出力信号に基づいて、基準値を演算することができる。
【0055】
請求項4記載の発明によれば、振動検出部は、速度を検出する速度検出器であるので、速度検出器の出力信号に基づいて、基準値を演算することができる。
【0056】
請求項5記載の発明によれば、基準値は、振動検出部が静止しているときの出力値であるので、ブレ補正制御のための基準値を容易に求めることができる。
【0057】
請求項6記載の発明によれば、中心値は、振動検出部が振動の検出を開始してからの積算平均値であるので、振動の検出を開始してから時間が経過した後には積算平均値により基準値を精度良く求めることができる。
【0058】
請求項7記載の発明によれば、中心値をAVとし、初期値をSとし、重み関数をPとしたときの基準値ω 0は、ω 0=P・S+(1−P)・AVであるので、中心値と基準値を適当に重みづけすることにより基準値を精度良く演算することができる。
【0059】
請求項8記載の発明によれば、重み関数Pは、演算部が演算を開始してから時間が経過するとともに減少する減少関数であり、請求項9記載の発明によれば、重み関数Pは、0≦P≦1であるので、演算を開始してから初期の段階では初期値に重みをおき、演算開始から時間を経過するほど中心値に重みをおいて基準値の演算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るブレ検出装置が使用される一眼レフカメラを示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係るブレ検出装置の演算部のブロック図である。
【図3】第1実施形態に係るブレ検出装置が使用される一眼レフカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係るブレ検出装置による補間平均の演算結果と従来のブレ検出装置による移動平均の演算結果とを比較して示した図である。
【図5】従来のブレ補正装置のブロック線図である。
【図6】従来のブレ補正装置によるオメガゼロの演算に成功した例を示す図である。
【図7】従来のブレ補正装置によるオメガゼロの演算に失敗した例を示す図である。
【符号の説明】
10 角速度センサ
20 増幅部
30 演算部
31 平均演算部
32 オメガゼロ演算部
33 設定部
40 積算部
50 駆動部
60 ブレ補正レンズ
70 カメラボディ
80 レンズ鏡筒
90 電源供給部
Claims (13)
- ブレによる振動を検出し振動検出情報を出力する振動検出部と、
ブレ検出を開始する前に予め取得される前記振動検出部に関する初期値を設定する設定部と、前記ブレ検出の開始前に予め取得された前記初期値と前記ブレ検出の開始後に取得された前記振動検出情報とに基づいてブレ補正制御のための演算が可能な演算部とを含む演算手段とを有し、
前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時には少なくとも前記ブレ検出を開始する前に予め取得された前記初期値を用い、前記振動検出部のオフセットに関する量を演算し、前記振動検出部が出力した前記振動検出情報から前記オフセットに関する量を減算し積分演算をして、前記ブレを検出することを特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1に記載されたブレ検出装置であって、
前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時に前記初期値のみを用いて前記ブレを検出することを特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1又は2に記載されたブレ検出装置であって、
前記演算手段は、前記ブレ検出が開始された後に、前記初期値と前記ブレ検出を開始した後に取得された前記振動検出情報との両方を用いて前記ブレを検出することを特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたブレ検出装置であって、
前記ブレ検出の開始後に取得した前記振動検出情報は、積算平均値であることを特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたブレ検出装置であって、前記初期値は、前記振動検出部が静止している状態で取得されたものであることを特徴とするブレ検出装置。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、
前記振動検出部は、加速度を検出する加速度検出器であること、
を特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、
前記振動検出部は、速度を検出する速度検出器であること、
を特徴とするブレ検出装置。 - 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のブレ検出装置において、
前記ブレ検出の開始後に取得した前記振動検出情報をAVとし、前記初期値をSとし、重み関数をPとしたときに、前記オフセットに関する量ω_0は、
ω_0=P・S+(1−P)・AVであること、
を特徴とするブレ検出装置。 - 請求項8に記載のブレ検出装置において、
前記重み関数Pは、前記演算部が演算を開始してから時間が経過するとともに減少する減少関数であること、
を特徴とするブレ検出装置。 - 請求項9に記載のブレ検出装置において、
前記重み関数Pは、0≦P≦1であること、
を特徴とするブレ検出装置。 - レンズを有した撮影装置であって、
前記レンズを駆動するレンズ駆動部と、
前記撮影装置のブレによる振動を検出し振動検出情報を出力する振動検出部と、
ブレ検出を開始する前に予め取得される前記振動検出部に関する初期値が設定された設定部と、前記ブレ検出の開始前に予め取得された前記初期値と前記ブレ検出の開始後に取得された前記振動検出情報とに基づいて演算をする演算部とを含む演算手段とを有し、
前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時には少なくとも前記ブレ検出を開始する前に予め取得された前記初期値を用い、前記振動検出部のオフセットに関する量を演算し、前記振動検出部が出力した前記振動検出情報から前記オフセットに関する量を減算して積分演算をし、前記ブレを検出して、前記レンズ駆動部による前記レンズの駆動量を演算し、
前記レンズ駆動部は、前記演算手段の演算結果を用いて、前記レンズを駆動することを特徴とする撮影装置。 - 請求項11に記載された撮影装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出の開始時に前記初期値のみを用いて演算することを特徴とする撮影装置。
- 請求項11又は12に記載された撮影装置であって、前記演算手段は、前記ブレ検出が開始された後に、前記初期値と前記ブレ検出を開始した後に取得した前記振動検出情報との両方を用いて演算することを特徴とする撮影装置。
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