JP4702972B2 - 積層型電子部品およびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子部品およびその製法に関し、特に積層セラミックコンデンサに適する積層型電子部品およびその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来の積層セラミックコンデンサは、図8乃至図10に示すように、複数のセラミック層1と、長辺3aと短辺3bを有する複数の長方形状の内部電極3を交互に積層してなる積層体5の上下面に、上側端面セラミック層6および下側端面セラミック層7が形成されて、電子部品本体8が形成されており、この電子部品本体8の両端部に外部電極9を設けて構成されていた。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサは、例えば、先ず、PETフィルム上に、セラミック粉末、有機バインダーおよび溶剤を含むセラミックスラリーを塗布し、40〜80℃で10〜20秒間乾燥後、これをPETフィルムから剥離して複数のセラミックグリーンシートを形成し、これらを複数積層して下側と上側の端面セラミックグリーンシートを形成する。この下側端面セラミックグリーンシートを台板上に配置し、プレス機により圧着して貼り付ける。
【0004】
一方、PETフィルム上に、上記と同様のセラミックスラリーを塗布し、40〜80℃で10〜20秒間乾燥後、このセラミックグリーンシート上に、例えば、Ni、Cu、Ag−Pdのうち一種を含む内部電極ペーストを塗布して、セラミックグリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成した後、この内部電極パターンが形成されたグリーンシートをPETフィルムから剥離する。
【0005】
この後、下側端面セラミックグリーンシートの上に、複数の内部電極パターンが形成されたグリーンシートを所定枚数積層し、次に、上側端面セラミックグリーンシートを積層し、複数のセラミックグリーンシートと、長辺と短辺を有する複数の長方形状の内部電極パターンを交互に積層してなる積層成形体の上下面に、端面セラミックグリーンシート層が積層された電子部品成形体を作製する。
【0006】
次に、電子部品成形体を、積層方向からプレス機により加圧して圧着し、さらに電子部品成形体の上部にゴム型を配置し、静水圧成形する。この後、所定のチップ形状にカットし、そのチップ状成形体の両端面に外部電極ペーストを塗布して、焼成することにより、積層セラミックコンデンサが形成されていた。尚、外部電極については、焼成されたチップ状焼結体の両端面に外部電極ペーストを塗布して焼き付けることによっても形成されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層するため、内部電極パターンを印刷した部分と、印刷していないグリーンシートの部分で段差が生じ、積層数が増加すればする程、この段差が重畳し、積層成形体の変形が著しくなり、焼成後においてクラック等の構造欠陥が発生したり、耐熱衝撃試験においてクラックが発生するという問題があった。
【0008】
特に、グリーンシートの厚みが薄くなると、特に厚みが10μm以下と薄くなればなる程、焼成後にクラック等の構造欠陥が発生したり、耐熱衝撃試験においてクラックが発生し易いという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、クラック等の構造欠陥や耐熱衝撃試験におけるクラックの発生を抑制できる積層型電子部品およびその製法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、複数のセラミック層と複数の長方形状の内部電極とを交互に積層してなる積層体と、該積層体の上下面に形成された端面セラミック層とからなる電子部品本体と、該電子部品本体の両端部に設けられた外部電極とを具備する積層型電子部品であって、前記複数の長方形状の内部電極のうち、一部の前記内部電極における長辺側端が、隣設する前記内部電極の長辺側端よりも突出しており、突出した前記内部電極の長辺側端に、前記内部電極の厚みと同じ厚みの空洞部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように、一部の内部電極の長辺側端に、隣設する内部電極の長辺側端よりも突出して空洞部が形成されているので、内部電極パターンを印刷した部分と、印刷していないグリーンシートのみのマージン部分との間に段差が形成されていたとしても、その部分が空洞となっているので、この空洞部で焼成による歪みや変形が吸収緩和され、焼成後のクラックを抑制することができるとともに、耐熱衝撃性試験におけるクラックの発生を防ぐことができる。また、空洞部は、突出した内部電極の長辺側端に形成されているため、静電容量の低下はない。
【0012】
また、前記内部電極の長辺側端部が積層方向中央部に向けて湾曲していることが望ましい。
【0014】
本発明の積層型電子部品の製法は、上記の積層型電子部品の製法であって、セラミックグリーンシートの一方主面に、平均粒径が0.1〜0.4μmの金属粒子を含有する内部電極ペーストを塗布して長方形状の内部電極パターンを形成する工程と、該長方形状の内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを複数積層して、一部の前記内部電極パターンの長辺側端が、隣設する前記内部電極パターンの長辺側端よりも突出する積層成形体を作製する工程と、該積層成形体の上下面に端面セラミックグリーンシートを積層して電子部品成形体を形成し、一軸加圧した後、靜水圧成形する工程と、加圧された前記電子部品成形体を切断して、チップ状成形体を形成する工程と、該チップ状成形体を焼成する工程とを具備することを特徴とする。
【0015】
このように、一部の内部電極パターンの長辺側端が、隣設する内部電極パターンの長辺側端よりも突出する積層成形体を形成することにより、焼成後において、一部の内部電極の長辺側端が、隣設する内部電極の長辺側端よりも突出させることができ、また、平均粒径が0.1〜0.μmの金属粒子を含有する内部電極ペーストを用いて内部電極パターンを形成するため、焼成後には金属粒子が焼結し、突出する一部の内部電極の長辺側端に空洞部が形成されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の積層型電子部品を、例えば、積層セラミックコンデンサを例にして説明する。
の積層セラミックコンデンサは、図1乃至図3に示すように、複数のセラミック層31と、長辺33aと短辺33bを有する複数の長方形状の内部電極33を交互に積層してなる積層体35の上下面に、上側端面セラミック層36および下側端面セラミック層37が形成されて、電子部品本体38が形成されており、この電子部品本体38の両端部に外部電極39を設けて構成されている。
【0017】
内部電極33の短辺33b側端は、図1に示したように、積層体35の両端面に交互に露出しており、これらの短辺33b側端が外部電極39に接続されている。
【0018】
そして、図2に示したように、積層体35の積層方向中央部における内部電極33の長辺33a側端は、上下端の内部電極33の長辺33a側端よりも距離xだけ、即ち20〜70μm外方に突出している。この突出した距離xが20μmよりも小さい場合には、端面セラミック層36、37が薄くなり易く、70μmよりも大きい場合には、積層方向中央部におけるセラミック層31が薄くなり易い。このような理由から、突出した距離xは、30〜50μmであることが望ましい。
【0019】
また、上下端の内部電極33の長辺33a端部が積層方向中央部に向けて湾曲しており、その曲率半径R2は50μm以上とされている。曲率半径が50μm未満である場合には、極性の異なる内部電極33同士がショートし易い。ショート防止という点から、曲率半径は100μm以上であることが望ましい。
【0020】
複数のセラミック層31の厚みは、3μm以下、特には2.5μm以下とされており、その厚み差は、0.2μm以内であることが望ましい。このように、セラミック層31の厚みが薄くなればなるほど、異なる極性の内部電極が近づき、ショートや絶縁抵抗の低下が発生し易くなる。また、厚み差を0.2μm以内とすることにより、ショート不良および絶縁不良を抑制することができる。
【0021】
そして、本発明の積層型電子部品では、図4に示すように、一部の内部電極33の長辺33a側端が、隣設する内部電極33の長辺33a側端よりも突出しており、該突出した内部電極33の長辺33a側端に、前記内部電極の厚みと同じ厚みの空洞部71が形成されている。この空洞部71は、内部電極ペースト中の金属粒子の収縮が大きいほど生じ易いため、セラミック層31の厚みが薄い程金属粒子の焼結による収縮が大きくなるため望ましく、特にセラミック層31の厚みは0.5〜3μmが望ましい。
【0022】
尚、突出していない内部電極33の長辺33a側端にも、空洞が焼成時に発生することもあるが、その空洞の大きさは、突出した内部電極33の長辺33a側端に空洞部71よりも小さいものである。突出した内部電極33の長辺33a側端に空洞部71は、隣設する内部電極33の長辺33a側端よりも突出しているため雰囲気の影響を受けやすく、このため焼成時および再酸化時において発生する。突出していない空洞については、応力を吸収緩和する機能は殆どない。
【0023】
なお、再酸化処理行程において、内部電極の最端部は酸化されやすく、少なくとも一部の内部電極層の長辺側端が隣設する内部電極層の短辺側端よりも突出していると、空洞部71が形成されやすい。
【0024】
一部の内部電極33の長辺33a側端の、隣設する他の内部電極33の長辺33a側端からの突出量Lは、長辺33a側のマージン領域の厚みの1/3以下が望ましく、特には10μm以下が望ましい。空洞部71の長さは、突出量Lと同一の10μm以下が望ましい。
【0025】
空洞部71が形成された内部電極33の長辺33a側端部も、上記したように、積層方向中央部に向けて湾曲している。これにより、積層方向中央部への応力を分散できるため、積層及び加圧による変形から生じる歪みを緩和することができる。
【0026】
空洞部71における金属量は、内部電極33中央部における金属量の0.6倍以下であることが望ましい。特には、空洞部71には金属が存在しないことが望ましい。焼成後、空洞部71に存在する金属は、再酸化処理により酸化されてセラミック層に固溶するので、空洞部71における金属の存在率は焼成後よりさらに減少する。この場合、湾曲したとしても空洞部71にはほとんど電極が存在していないので、内部電極33間の短絡はない。
【0027】
空洞部71における金属量は、内部電極33中央部における金属量の0.6倍よりも多くなると、積層及び加圧による変形から生じる歪みを緩和する効果が小さくなるとともに、肥大化した電極が存在しやすくなるのでショートの原因となる。
【0028】
上記した積層セラミックコンデンサは、例えば、先ず、PETフィルム上に、セラミック粉末、有機バインダーおよび溶剤を含むセラミックスラリーを塗布し、乾燥器内で40〜80℃で10〜20秒間乾燥後、これを剥離して複数のセラミックグリーンシートを形成し、これらを複数積層して端面セラミックグリーンシートを形成する。
【0029】
この後、端面セラミックグリーンシートを、上記グリーンシートの乾燥温度よりも高く、かつ長時間乾燥させ、例えば、60〜120℃で10〜60分間乾燥することにより、十分に乾燥させて収縮させ、硬化させる。この端面セラミックグリーンシートは、50〜100μmとされており、図5に示すように、このような端面セラミックグリーンシート40を、台板41上に配置し、プレス機により圧着して台板41上に貼り付ける。
【0030】
セラミック粉末としては、例えば、BaTiO3粉末にMgCO3、MnCO3、Y23粉末を混合したものが用いられ、有機バインダーとしては、例えば、ブチラール樹脂が用いられ、溶剤としてはトルエンが用いられる。
【0031】
一方、PETフィルム上に、上記と同一のセラミックスラリーを塗布し、乾燥器内で40〜80℃で10〜20秒間乾燥後、この厚み3〜10μmのセラミックグリーンシートに、例えば、Niを含む内部電極ペーストを塗布して、グリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを形成し、乾燥後、剥離する。内部電極ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、グラビア印刷、オフセット印刷法等の周知の印刷方法により塗布する。その厚みは、コンデンサの小型、高信頼性化という点から2μm以下、特には1μm以下であることが望ましい。尚、セラミックスラリーは、端面セラミックグリーンシート層と同一である必要はなく、異なる組成であっても良い。
【0032】
そして、本発明の積層型電子部品の製法では、内部電極ペーストに用いられる金属粒子の平均粒径を0.1〜0.μmとすることが重要である。
【0033】
金属粒子の平均粒径が0.1μmより小さいと、粒子表面が活性になるために過焼結となり、金属の肥大化を引き起こし、ショートの原因となるおそれがある。平均粒径が0.μmより大きいと、グリーンシートの焼結収縮に対して内部電極の金属粒子の収縮が小さくなるので、焼成の際に空洞は形成され難くなるからである。
【0034】
この後、図5に示すように、端面セラミックグリーンシート層40の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを所定枚数積層し、この後、端面セラミックグリーンシート43を積層し、複数のセラミックグリーンシートと、長辺と短辺を有する複数の長方形状の内部電極パターンを交互に積層してなる積層成形体45の上下面に、端面セラミックグリーンシート層40、43が積層された電子部品成形体47を作製する。
【0035】
そして、本発明では、一部の内部電極パターンの長辺側端が、隣設する内部電極パターンの長辺側端よりも突出するように、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層することが重要である。隣設するグリーンシート上に形成された内部電極パターンと、同一形状の内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層する位置をずらして、一部の内部電極パターンの長辺側端が、隣設する内部電極パターンの長辺側端よりも突出するように積層することもできるが、隣設する内部電極パターンよりも短辺が長い内部電極パターンをグリーンシート上に形成し、これを積層することにより、内部電極パターンが重畳する面積が大きくなり、容量を大きくできる。
【0036】
次に、電子部品成形体47を、図6(a)に示すように、電子部品成形体47が形成された台板41を金型51に載置し、積層方向からプレス機の加圧板53により加圧して圧着し、この後、図6(b)に示すように、さらに電子部品成形体47の上部にゴム型57を配置し、静水圧成形し、この後、台板41から電子部品成形体47を剥離する。尚、電子部品成形体47を上下からゴム型により静水圧成形しても良い。
【0037】
この後、この電子部品成形体47を所定のチップ形状にカットし、そのチップ状成形体の両端面に、例えばNiを含有する外部電極ペーストを塗布して、脱バイ、焼成することにより、積層セラミックコンデンサが形成される。脱バイは、例えば、チップ状成形体を大気中250〜300℃または酸素分圧0.1〜1Paの低酸素雰囲気中500〜800℃で行い、焼成は、例えば、非酸化性雰囲気で1200〜1300℃で2〜3時間で行う。さらに、所望により、酸素分圧が0.1〜10−4Pa程度の低酸素分圧下、900〜1100℃で5〜15時間再酸化処理を施すことにより還元されたセラミック層が酸化されることにより、良好な絶縁特性を有するセラミック層となる。
【0038】
尚、外部電極については、焼成されたチップ状焼結体の両端面に外部電極ペーストを塗布して焼き付けることによっても形成できる。例えば、得られた積層焼結体に対し、各端面にCuペーストを塗布し、Ni/Snメッキを施し、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを作製することができる。
【0039】
以上のように構成された積層セラミックコンデンサでは、積層方向からプレス機の加圧板53により加圧すると、図7に示すように、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺近傍が横方向に延びるものの、端面セラミックグリーンシート層40、43が延びにくいため、これらの端面セラミックグリーンシート層40、43に引きずられて上下端部の内部電極パターンの長辺の延びが抑制され、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺が、上下端の内部電極パターンの長辺よりも突出した状態となる。
【0040】
そして、この後、ゴム型57を用いて静水圧成形すると、図7に示すように、内部電極パターンの長辺近傍は、従来よりも曲率半径が大きい湾曲状態となり、その下方にある極性の異なる内部電極パターンとの距離も従来よりも大きくすることができ、ショート不良や絶縁抵抗低下を抑制することができる。
【0041】
また、積層方向中央部では内部電極パターンの長辺近傍が横方向に延びるものの、端面セラミックグリーンシート層40、43が延びにくいため、この端面セラミックグリーンシート層40、43に引きずられて電子部品成形体47の横方向への延びが抑制され、セラミックグリーンシート間の剥離やクラックを防止でき、これにより、積層型電子部品のデラミネーションおよびクラックの発生を抑制することができる。
【0042】
そして、本発明の積層型電子部品では、一部の内部電極33の長辺33a側端に、隣設する内部電極33の長辺33a側端よりも突出して空洞部71が形成されているので、内部電極パターンを印刷した部分と、印刷していないグリーンシートのみのマージン部分との間に段差が形成されていたとしても、その部分が空洞部71となっており、この空洞部71部分で焼成による歪みや変形が吸収緩和され、焼成後におけるクラックを抑制することができるとともに、耐熱衝撃性試験におけるクラックの発生を防ぐことができる。尚、空洞部71は、突出した内部電極33の長辺33a側端に形成されているため、静電容量の低下はない。
【0043】
尚、上記例では、本発明の積層型電子部品を積層セラミックコンデンサに適用した例について説明したが、本発明では上記例に限定されるものではなく、例えば、積層型インダクタ、圧電トランス、圧電アクチュエータ等に用いても良いことは勿論である。
【0044】
【実施例】
先ず、PETフィルム上に、BaTiO3、MgCO3、MnCO3およびY23粉末、ブチラール樹脂、およびトルエンからなるセラミックスラリーを作製し、これをドクターブレード法により塗布し、乾燥器内で60℃で15秒間乾燥後、これを剥離して厚み9μmのセラミックグリーンシートを形成し、これらを10枚積層して端面セラミックグリーンシート層を形成した。そして、これらの端面セラミックグリーンシート層を、90℃で30分の条件で乾燥させた。
【0045】
この端面セラミックグリーンシート層を台板41上に配置し、プレス機により圧着して台板41上に貼り付けた。
【0046】
一方、PETフィルム上に、上記と同一のセラミックスラリーをドクターブレード法により塗布し、60℃で15秒間乾燥後、厚み3μmのセラミックグリーンシートを多数作製した。
【0047】
次に、平均粒径が表1に示すNi粉末45重量%に対し、エチルセルロース5.5重量%とオクチルアルコール94.5重量%からなるビヒクル55重量%を3本ロールで混練して内部電極ペーストを作製した。
【0048】
この後、得られたセラミックグリーンシートの一方主面に、スクリーン印刷装置を用いて、上記した内部電極ペーストを内部電極パターン状に印刷し、グリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成し、乾燥後、剥離した。
【0049】
この後、図5に示すように、端面セラミックグリーンシート層40の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを400枚積層し、この後、端面セラミックグリーンシート43を積層し、電子部品成形体47を作製した。
【0050】
内部電極パターンが形成されたグリーンシートを積層する際に、一部の内部電極パターンの長辺側端が、隣設する内部電極パターンの長辺側端よりも突出するようにずらして積層した。内部電極パターンのずれの有無について表1に記載した。
【0051】
次に、電子部品成形体47を、図6(a)に示すように、金型51上に載置し、積層方向からプレス機の加圧板53により圧力を段階的に増加して圧着し、この後、図6(b)に示すように、さらに電子部品成形体47の上部にゴム型57を配置し、静水圧成形した。
【0052】
この後、この電子部品成形体47を所定のチップ形状にカットし、大気中300℃または0.1Paの酸素/窒素雰囲気中500℃に加熱し、脱バイ処理を行った。さらに、10-7Paの酸素/窒素雰囲気中、1300℃で2時間焼成し、さらに、10-2Paの酸素窒素雰囲気中にて1000℃で再酸化処理を行い、焼結体を得た。焼成後、焼結体の端面にCuペーストを900℃で焼き付け、さらにNi/Snメッキを施し、内部電極と接続する外部電極を形成した。
【0053】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.25mm、長さ2.0mm、厚さ1.25mmであり、内部電極間に介在するセラミック層の厚みは2μmであった。また、セラミック層の有効積層数は400層であった。
【0054】
得られた積層セラミックコンデンサについて、1000個の試料を40倍の双眼顕微鏡にて観察し、クラックの有無を検査した。クラックが生じた個数を表1に示す。また、上記のようにして得られた積層セラミックコンデンサを用いて、JIS規格に基づいて耐熱衝撃性試験を行い、試料数300個について温度(ΔT=225℃)のときのクラックが発生した個数を算出した。この結果も表1に示す。
【0055】
金属量は、突出した内部電極の長辺側端部分を破断し、金属の占有部分と非占有部分を画像解析(ルーゼックス社製画像解析器)により算出し、内部電極の中央部における金属量との比率を算出し、その結果も表1に示した。
【0056】
比較例として平均粒径が0.4μmのNi粉末を用いた場合と、内部電極パターンの長辺側端を揃えて積層し、長辺側端が突出した内部電極が存在しない場合について同様な評価を行った。
【0057】
【表1】
Figure 0004702972
【0058】
この表1の結果から、平均粒径が0.10μm、0.15μm、0.20μm、0.25μm、0.30μmのNi粉末のいずれの試料を用いた場合でも、内部電極の長辺側端に突出した空洞部が存在しており、焼成後および耐熱衝撃性試験後においてクラックが発生していないことが判る。
【0059】
また、Ni粉末の平均粒径が小さくなるにしたがって、突出した空洞部における金属量は低下しているが、これはNi粉末の収縮が大きいためである。
【0060】
一方、平均粒径が0.4μmのNi粉末を用いた場合、突出した空洞部の金属量は内部電極中央部の金属量とほぼ同等となり、耐熱衝撃性試験においてクラックの発生が見られる。また、内部電極の突出部分がない試料No.7は、焼成後にクラックが生じ、また耐熱衝撃性試験でもクラックが発生することが判る。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、一部の内部電極の長辺側端に、隣設する内部電極の長辺側端よりも突出して空洞部が形成されているので、内部電極パターンを印刷した部分と、印刷していないグリーンシートのみのマージン部分との間に段差が形成されていたとしても、その部分が空洞となっているので、この空洞部で焼成による歪みや変形が吸収緩和され、焼成後におけるクラックを抑制することができるとともに、耐熱衝撃性試験におけるクラックの発生を防ぐことができる。また、空洞部は、突出した内部電極の長辺側端に形成されているため、静電容量の低下はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品の縦断面図である。
【図2】図1のa−a線に沿った横断面図である。
【図3】本発明のセラミック層上の内部電極を説明するための斜視図である。
【図4】図2の一部を拡大して示すもので、内部電極の長辺側端に空洞部が形成されている状態を示す断面図である。
【図5】台板上に電子部品成形体を形成した状態を示す側面図である。
【図6】本発明の製法を説明するための説明図であり、(a)は加圧成形する状態を示す断面図、(b)はゴム型により静水圧成形する状態を示す断面図である。
【図7】電子部品成形体の断面図である。
【図8】従来の積層型電子部品の縦断面図である。
【図9】図8のb−b線に沿った横断面図である。
【図10】従来のセラミック層上の内部電極を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
31・・・セラミック層
33・・・内部電極
33a・・・長辺
33b・・・短辺
35・・・積層体
36、37・・・端面セラミック層
38・・・電子部品本体
45・・・積層成形体
71・・・空洞部

Claims (3)

  1. 複数のセラミック層と複数の長方形状の内部電極とを交互に積層してなる積層体と、該積層体の上下面に形成された端面セラミック層とからなる電子部品本体と、該電子部品本体の両端部に設けられた外部電極とを具備する積層型電子部品であって、前記複数の長方形状の内部電極のうち、一部の前記内部電極における長辺側端が、隣設する前記内部電極の長辺側端よりも突出しており、突出した前記内部電極の長辺側端に、前記内部電極の厚みと同じ厚みの空洞部が形成されていることを特徴とする積層型電子部品。
  2. 前記内部電極の長辺側端部が積層方向中央部に向けて湾曲していることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
  3. 請求項1または2に記載の積層型電子部品の製法であって、
    セラミックグリーンシートの一方主面に、平均粒径が0.1〜0.4μmの金属粒子を含有する内部電極ペーストを塗布して長方形状の内部電極パターンを形成する工程と、
    該長方形状の内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを複数積層して、一部の前記内部電極パターンの長辺側端が、隣設する前記内部電極パターンの長辺側端よりも突出する積層成形体を作製する工程と、
    該積層成形体の上下面に端面セラミックグリーンシートを積層して電子部品成形体を形成し、一軸加圧した後、水圧成形する工程と、
    加圧された前記電子部品成形体を切断して、チップ状成形体を形成する工程と、
    該チップ状成形体を焼成する工程とを具備することを特徴とする積層型電子部品の製法。
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