JP4699629B2 - 車両用多極形ヒューズ素子 - Google Patents

車両用多極形ヒューズ素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用の多極形ヒューズ素子に関し、特に、車両内に配設される負荷に対して過電流が流れてしまうことを防止することができる車両用多極形ヒューズ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車などの車両には、バッテリーなどの電源と、各種発光装置や、オーディオ装置、パワーステアリング装置、パワーウインドウ装置などの負荷(電装品)とが搭載されている。そして、電源から各負荷に給電可能とするために、電源と負荷との間には、電線や配電ボックス(配電体の一種)、ヒューズなどが配設されている。
【0003】
ここで、配電体とは、一の電源から供給される電力を複数の負荷に分配したり、又は各負荷に過電流(負荷の許容電流を超える電流)が流れてしまうことを防止するためのものであり、その主な形状としては、箱形(ボックス形)やコネクタ形が挙げられる。一方、ヒューズは、負荷に過電流が流れることを防止するためのものであり、一般的なヒューズ素子としては、例えば、米国特許第4023264号に係るヒューズ素子、特開平10−199396号に係る多極型ヒューズ素子、及び、特開2000−30599号に係る多極形ヒューズ素子が挙げられる。まず、米国特許第4023264号に係るヒューズ素子は、長尺状ヒューズ材料より打ち抜き加工された略H形のエレメントと、絶縁材料から成りエレメントを被覆するハウジングとを備えている。かかるヒューズ素子を配電ボックスの差込口に差し込めば、負荷に過電流が流れることを防止することができ、更には、ヒューズ素子が飛んだ場合には、その飛んでしまったヒューズ素子を抜いて新しいヒューズ素子を差し込むことにより、容易にヒューズ素子を交換することができるのである。
【0004】
また、特開平10−199396号に係る多極型ヒューズ素子、及び特開2000−30599号に係る多極形ヒューズ素子においては、複数の出力端子部に夫々接続された溶断部が一の入力端子部側に接続されている。従って、負荷に過電流が流れてしまうことを防止するとともに、分岐回路を容易に構成することができるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常、車種が異なる場合は勿論のこと、同一車種の場合であっても、車両のグレードや仕様、出荷地(販売地)等の如何により、搭載負荷の数や質が異なる。また、車種の如何や製造メーカーの都合その他の理由によりモデルライフの長い車種もあるが、このようにモデルライフの長い車種の場合、モデルライフ中であるにも拘わらず、仕様の変更又は追加のなされ、搭載負荷の数や質が変更されることがある。
【0006】
このため、従来においては、車種、グレード、仕様、出荷地(以下、便宜上、単に「車種等」と称する。)の如何に応じた配電ボックスを製造することにより対応していた。また、仕様の追加又は変更がなされた場合には、既存の配電ボックスの代わりに使用される新規の配電ボックスや、既存の配電ボックスと共に使用される付属の配電ボックスを製造したり、電線(接続線)の配線方式(取り回しの仕方)を変更することにより対応していた。
【0007】
即ち、従来技術のヒューズ素子は、分岐機構を有する一部のヒューズ素子があるものの、単に「負荷に過電流が流れてしまうことを防止する」ことのみを目的とするものであった。このため、従来技術のヒューズ素子によれば、車種等の如何に応じた配電ボックスの製造を強いてしまうという問題点があった。また、仕様の追加又は変更がなされた場合には、新規の配電ボックスや付属の配電ボックスの製造を強いたり、電線の配線方式の変更を強いてしまうという問題点もあった。ひいては、複数の種類の金型等を要するなど、製造コスト削減の大きな障害となってしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために為されたものであり、車種等の如何に応じた異なる仕様の配電ボックスの製造を強いることを防止又は抑制することができ、更には、仕様の追加又は変更がなされた場合においても、新規の配電ボックス及び付属の配電ボックスの製造、並びに、電線の配線方式の変更を強いてしまうことを防止又は抑制することもできる車両用多極形ヒューズ素子を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載の車両用多極形ヒューズ素子は、車両内に配設される配電体の差込口に差し込み可能な複数の差込端子部と、その複数の差込端子部同士を通電可能に連結する連結部とを備えた車両用多極形ヒューズ素子において、前記連結部は、通電する電流の大きさに応じて溶断可能とするために前記差込端子部よりも断面積の小さくされた溶断部と、其の溶断部よりも断面積の大きくされたバスバー部との組み合わせにより構成されていると共に、該連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、前記バスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所においてその被覆部ごと切断されている。
【0010】
この請求項1記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、差込端子部よりも断面積の小さくされた溶断部と該溶断部よりも断面積の大きくされたバスバー部との組み合わせにより構成される連結部のうち、車両内の配電体の差込口に差込可能な複数の差込端子部同士が通電可能に連結され、この連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えている。ここで、かかるバスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所においてその被覆部ごと切断されている。
【0011】
このため、一又は複数の箇所においてバスバー部を切断すれば、一の「溶断部とバスバー部との」組み合わせにより、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することが可能とされる。ひいては、車種等の如何に応じた異なる仕様の配電ボックスの製造を強いることが防止又は抑制され、更には、仕様の追加又は変更がなされた場合においても、新規の配電ボックス及び付属の配電ボックスの製造、並びに、電線の配線方式の変更を強いてしまうことが防止又は抑制される。
【0012】
請求項2記載の車両用多極形ヒューズ素子は、車両内に配設される配電体の差込口に差し込み可能な複数の差込端子部と、その複数の差込端子部同士を通電可能に連結する連結部とを備えた車両用多極形ヒューズ素子において、前記連結部は、通電する電流の大きさに応じて溶断可能とするために前記差込端子部よりも断面積の小さくされた溶断部と、其の溶断部よりも断面積の大きくされたバスバー部との組み合わせにより構成されており、前記バスバー部は、溶断部を介して差込端子部同士を連結する間接バスバー部と、溶断部を介することなく差込端子部同士を直接に連結する直接バスバー部とを備えていると共に、該バスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所において切断され又は切断可能とされている。
【0013】
請求項3記載の車両用多極形ヒューズ素子は、請求項1又は2に記載の車両用多極形ヒューズ素子において、連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、その被覆部は、バスバー部及び溶断部の配設箇所が外部より切断可能とされている。
【0014】
請求項4記載の車両用多極形ヒューズ素子は、請求項1から3の何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子において、連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、その被覆部は、バスバー部及び溶断部の配設箇所が外部より視認可能とされている。
【0015】
(削除)
【0016】
請求項記載の車両用多極形ヒューズ素子は、請求項1からの何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子において、各溶断部は夫々、複数の本数に分割されており、その複数の本数に分割された各溶断部は、負荷の許容電流の大きさに応じた本数分が切断され、又は切断可能とされている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について添付図面を参照して説明する。本発明の車両用多極形ヒューズ素子は、通常、車両内に配設される配電ボックス等に差し込まれた状態で機能するものであり、負荷に過電流が流れることを防止して、該過電流により負荷が損傷(故障)してしまうことを防止するためのヒューズ素子に関する。
【0018】
図1は、本発明の一実施例である車両用多極形ヒューズ素子(以下、便宜上、「本多極形ヒューズ素子」と称する。)1の平面図及び断面図である。図1に示すように、多極形ヒューズ素子1は、導電材料(導電性(通電性)を有する材料)から成り且つ電源(図示せず)から負荷(図示せず)への電路を構成する部位であるエレメント2と、絶縁材料(絶縁性を有する材料)から成り且つエレメント2を被覆する部位であるハウジング3とを備えている。
【0019】
図2は、エレメント2のみの平面図である。この図2に示すように、エレメント2は、入出力端子部2aと、ヒューズ溶断部2bと、第1導通バスバー部2cと、第2導通バスバー部2dと、第3導通バスバー部2eとによって構成されている。
【0020】
入出力端子部2aは、エレメント2の長手方向に対して並列に複数配設されており、それら複数の入出力端子部2a,…,2aは、夫々、本多極形ヒューズ素子1の入力端子部又は出力端子部の何れか一方を構成するものである。また、複数の入出力端子部2a,…,2aは、図示しない配電ボックスの差込口に差込可能とするために、突出する向きが同方向とされている。なお、各入出力端子部2aの向きは、必ずしも、同方向とされていなくても良く、配電ボックス等の差込口に差込可能とされていれば如何なる突出方向であっても良い。
【0021】
ヒューズ溶断部2bは、入出力端子部2a同士を通電可能に連結する部位であり、入出力端子部2aの延長線上に複数形成されている。また、これらヒューズ溶断部2bの断面積は、夫々、入出力端子部2aよりも断面積が小さくされている。このため、ヒューズ溶断部2bに流れる電流が負荷の許容電流を超えると、ヒューズ溶断部2bが溶断することにより、負荷に過電流(即ち、負荷の許容電流を超える電流)が流れてしまうこと防止し、ひいては、過電流により負荷が損傷してしまうことを防止することができるのである。なお、ヒューズ溶断部2bは、当然に、複数形成されなくても良く、入出力端子部2aの延長線上に形成されなくても良い。
【0022】
第1導通バスバー部2c、第2導通バスバー部2d、及び、第3導通バスバー部2eは、共に、ヒューズ溶断部2bよりも断面積が大きくされており、ヒューズ溶断部2bと同様に各入出力端子部2a同士を通電可能に連結する部位である。
【0023】
第1導通バスバー部2cは、入出力端子部2aの根元近傍において隣り合う入出力端子部2a同士をヒューズ溶断部2bを介することなく互いに直接に連結するものである。従って、各入出力端子部2a同士を強固に連結することができ、エレメント2の剛性を高めることができるのである。ひいては、エレメント2のみが流通される場合(例えば、下請け業者から元請け業者へ流通される場合、部品製造工場から部品組立工場へ流通される場合)においても、入出力端子部2aが曲がったり、ヒューズ溶断部2bが切断してしまう等、エレメント2が損傷してしまうことを防止することができる。更には、歩留まりが悪化してしまうことを防止することもできるのである。
【0024】
第2導通バスバー部2dは、入出力端子部2aと第3導通バスバー部2eとを連結するものであり、入出力端子部2aの延長線上に配設されている。一方、第3導通バスバー部2eは、その長手方向が入出力端子部2a、第2導通バスバー部2d及びヒューズ溶断部2bに対して略垂直な向きとなるように配設されており、第2導通バスバー部2d又は溶断部2bの何れか一方の部位を介して各入出力端子部2aに連結されている。従って、複数の入出力端子部2a,…,2aを相互に連結することができるのである。また、第3導通バスバー部2eを介して所望の数に分岐する電路(分岐回路)を構成することができるのである。
【0025】
また、第3導通バスバー部2eは、入出力端子部2aに対して近い方に形成される内側第3導通バスバー部2e1と、この内側第3導通バスバー部2e1に対して所定間隔毎に連結され且つ入出力端子部2aに対して遠い方に形成される外側第3導通バスバー部2e2とを備えている。従って、内側第3導通バスバー部2e1と外側第3導通バスバー部2e2との連結を切断することにより、内側第3導通バスバー部2e1を通る電路、及び外側第3導通バスバー部2e2を通る電路の、重複する二つ以上の電路を構成することができる。なお、内側第3導通バスバー部2e1と外側第3導通バスバー部2e2との連結箇所は、当然に、所定間隔毎とされなくても良い。
【0026】
上記説明した通り、複数の入出力端子部2a,…,2aは、第1導通バスバー部2c、第2導通バスバー部2d、第3導通バスバー部2e及びヒューズ溶断部2bの組み合わせにより、相互に連結されている。従って、これら第1導通バスバー部2c、第2導通バスバー部2d、及び第3導通バスバー部2eを一又は複数の箇所において切断することにより、詳細について後述するが、例えば図5から図7までに示すような、複数の種類(パターン)の電路を構成することができるのである。換言すれば、一の「ヒューズ溶断部2bと各導通バスバー部2c,2d,2eとの」組み合わせにより、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することができるのである。
【0027】
図3は、ハウジング3のみの平面図である。この図3に示すように、第1導通バスバー部2c及び第3導通バスバー部2eの配設部分に、バスバー切断穴3aが穿設されている。従って、図1に示すように、ハウジング3の被覆後においても導通バスバー部2c,2eの配設箇所を視認させることができるのである。ひいては、各導通バスバー部2c,2d,2eがハウジング3により被覆された後においても、導通バスバー部2c,2eを誤った箇所において切断してしまったり、導通バスバー部2c,2e以外の部位を切断してしまう等、導通バスバー部2c,2eの切断作業が煩雑となってしまうことを防止することができるのである。更には、被覆後においても導通バスバー部2c,2d,2eの切断箇所を外部より視認させることができ、ひいては、一の電路構成の本多極形ヒューズ素子1と他の電路構成の本多極形ヒューズ素子1とを区別させることができる。なお、当然に、視認可能とする部位は、第1導通バスバー部2c及び第3導通バスバー部2eの両方の部位が共に視認可能とされなくても良く、第1導通バスバー部2c及び第3導通バスバー部の何れか片方の部位のみが視認可能とされても良いし、第2導通バスバー部2dが視認可能とされても良いし、ヒューズ溶断部2bが視認可能とされても良い。
【0028】
図4は、各ヒューズ溶断部2bの部分拡大図である。図4に示すように、各ヒューズ溶断部2bは、複数の本数の小容量ヒューズ部2b1によって構成されている。従って、負荷の許容電流の大きさに応じた本数の小容量ヒューズ部2b1を切断することにより、負荷の許容電流が小さい場合にも、その許容電流を超える電流(過電流)が流れて、負荷が損傷してしまうことを防止することができる。即ち、各負荷の許容電流の如何に対応した電路を構成することができるのである。
【0029】
次に、図5から図7までを参照して、一の「ヒューズ溶断部2bと各導通バスバー2c,2d,2eとの」組み合わせにより構成される、車種等の如何に応じた複数種類の電路について説明する。なお、本発明の理解を容易とするために、図5から図7までの各図面には、各入出力端子部2aに、右端の入出力端子部2aから順番に丸一から丸十までの符号を付している。
【0030】
図5(a)に示す本多極形ヒューズ素子1においては、第1導通バスバー部2cは、丸一から丸七までの各間の箇所、及び、丸八から丸十までの各間の箇所において切断されている。また、第3導通バスバー部2eは、丸二と丸三との間の箇所、丸五と丸六との間の箇所、及び、丸七から丸九までの各間の箇所において夫々切断されている。従って、図5(b)に示すように、ヒューズ回路(溶断部を介する電路)及びバイパス回路(溶断部を介さない電路)の両方の回路を電路構成することができるとともに、分岐回路(分岐する電路)及び非分岐回路(分岐しない電路)の両方の回路を電路構成することができる。特に、第1導通バスバー部2cが丸七と丸八との間の箇所において切断されていないので、互いに隣り合う丸七の第1導通バスバー部2cと丸八の第1導通バスバー部2cとの間に、溶断部を介さない電路(バイパス回路)を容易に構成することができるのである。
【0031】
一方、図6(a)に示す本多極形ヒューズ素子1においては、第1導通バスバー部2cは、丸一から丸十までの各入出力端子部2a間において切断されている。また、第3導通バスバー部2eは、丸二と丸三との間の箇所、及び、丸七と丸八との間の箇所において夫々切断されている。従って、図6(b)に示すように、図5(b)に示す電路構成とは異なる電路構成であるにも拘わらず、種々の回路を電路構成することができる。特に、丸四から丸五までの入出力端子部2a間に構成されるように、第1導通バスバー部2cを介することなく、第2導通バスバー部2d及び第3導通バスバー部2eを介してバイパス回路を電路構成することにより、二つの第2導通バスバー部2dの間に並行に配設されるヒューズ溶断部2bを活用することができるのである。
【0032】
更に、図7(a)に示す本多極形ヒューズ素子1においては、第1導通バスバー部2cは、丸一から丸十までの各入出力端子部2a間において切断されている。また、第3導通バスバー部2eは、丸二と丸三との間の箇所、丸五と丸六との間の箇所、丸九と丸十との間の箇所において夫々切断されている。更に、第3導通バスバー部2eを構成する内側第3導通バスバー部2e1及び外側第3導通バスバー部2e2は、互いに入出力端子部2aの延長線上において連結されているが、其の連結箇所が丸三から丸九までの入出力端子部2aの延長線上において切断されている。従って、図7(b)に示すように、種々の回路を電路構成することができるのである。特に、内側第3導通バスバー部2e1と外側第3導通バスバー部2e2とを分割することにより、丸一、丸二及び丸十の入出力端子部2aを利用して電路を構成する場合においても、丸二の入出力端子部2aと丸十の入出力端子部2aとの間に配設される、丸三から丸九までの入出力端子部2aを利用して複数の電路を構成することができるのである。
【0033】
上記説明したように、本多極形ヒューズ素子1によれば、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することができるので、ひいては、車種等の如何に応じた異なる仕様の配電ボックスの製造を強いることを防止又は抑制することができ、また、仕様の追加又は変更がなされた場合においても、新規の配電ボックス及び付属の配電ボックスの製造、並びに、電線の配線方式の変更を強いてしまうことを防止又は抑制することもできるという効果がある。更には、配電ボックスの製造に要する金型の種類を低減することにより、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0034】
一方、一番複雑な電路構成となる車種等に合わせて配電ボックスを製造することも考えられるが、簡単な電路の構成の車種等においては、必要のない余分な機能までつくこととなり、製造コストの削減、省スペース化の大きな障害となってしまうという問題点があった。しかしながら、本多極形ヒューズ素子1によれば、この問題点をも解決することができるのである。
【0035】
「第2実施例」次に、図8を参照して、上記実施例(第1実施例)の変形例(第2実施例)について説明する。図8は、第2実施例の多極形ヒューズ素子20の平面図及び断面図である。なお、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0036】
図8に示すように、多極形ヒューズ素子20は、導電材料から成り且つ電源(図示せず)から負荷(図示せず)への電路を構成する部位であるエレメント2と、絶縁材料(絶縁性を有する材料)から成り且つエレメント2を被覆する部位であるハウジング23とを備えている。ハウジング23は、バスバー切断穴3aを有するハウジング3と異なり、バスバー切断凹部23aが形成されている。このバスバー切断凹部23aは、第1導通バスバー部2c及び第3導通バスバー部2eの配設部分に形成されており、このバスバー切断凹部23aの形成場所は、他の部分に比べて凹んでいる。従って、ハウジング23により、第1実施例のハウジング3と同様の効果を奏することができるのである。
【0037】
「第3実施例」次に、図9を参照して、第1実施例の別の変形例(第3実施例)について説明する。図9は、第3実施例の多極形ヒューズ素子30の平面図及び断面図である。なお、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0038】
図9に示すように、多極形ヒューズ素子20は、導電材料から成り且つ電源(図示せず)から負荷(図示せず)への電路を構成する部位であるエレメント2と、絶縁材料(絶縁性を有する材料)から成り且つエレメント2を被覆して絶縁する部位であるハウジング33とを備えている。ハウジング33は、バスバー切断穴3aを有するハウジング3と異なり、全体が透明(無色透明及び着色透明の何れの透明も含む。)に形成されている。従って、ハウジング33により、第1実施例のハウジングと同様の効果を奏することができ、更には、第2導通バスバー部2c及びヒューズ溶断部2bの電路構成も把握させることができるのである。
【0039】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は当然に上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察することができるものである。
【0040】
例えば、本実施例によれば、第3導通バスバー部2eは、内側第3導通バスバー部2e1及び外側第3導通バスバー部2e2の二つの導電板により構成されている。しかしながら、第3導通バスバー部2eは、当然に、二つの導電板により構成されるものに限られるものではなく、一つの導電板により構成されても良いし、三つ以上の導電板により構成されても良い。
【0041】
また、本実施例によれば、第1実施例のハウジング3においてはバスバー切断穴3aが形成され、第2実施例のハウジング23においてはバスバー切断凹部23aが形成され、第3実施例のハウジング33においては全体が透明とされている。即ち、各実施例のハウジング3,23,33は、それぞれ構成上の特徴を有している。しかしながら、これら特徴は、当然に単独でなくてもよく、二つ以上の特徴が組み合わされるようにしても良い。
【0042】
なお、疑義が生じないように念のために説明すれば、特許請求の範囲に記載の間接バスバー部及び直接バスバー部は、差込端子部、溶断部及びバスバー部の構成の仕方により、バスバー部は、必ずしも、間接バスバー部又は直接バスバー部の何れか一方の部位に区分できるものではなく、間接バスバー部でもあり直接バスバー部でもある部位が存在する。
【0043】
【発明の効果】
請求項1記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、差込端子部を通電可能に連結する連結部は、溶断部とバスバー部との組み合わせにより構成されていると共に、該連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、かかる連結部を構成するバスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所において、その被覆部ごと切断されている。従って、少なくともバスバー部の切断箇所の位置又は数の何れか一方を変更すれば、一の「溶断部とバスバー部との」組み合わせにより、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することができるという効果がある。ひいては、車種等の如何に応じた異なる仕様の配電体の製造を強いることを防止又は抑制することができ、また、仕様の追加又は変更がなされた場合においても、新規の配電体及び付属の配電体の製造、並びに、電線の配線方式の変更を強いてしまうことを防止又は抑制することもできるという効果がある。更には、配電体の製造に要する金型の種類を低減することにより、製造コストの削減を図ることができるという効果に加え、特に、本請求項に係る車両用多極形ヒューズ素子は、連結部を被覆する被覆部ごと、バスバー部が切断されているので、その切断箇所を外観から視認させることにより、一の電路構成の本車両用多極形ヒューズ素子と他の電路構成の本車両用多極形ヒューズ素子とを区別させることができるという効果がある。ひいては、保管時に異なる電路構成の多極形ヒューズ素子が混ざってしまったり、組み付け時に誤った多極形ヒューズ素子を選択してしまうことを防止することができる。
【0044】
請求項2記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、前述したように、少なくともバスバー部の切断箇所の位置又は数の何れか一方を変更すれば、一の「溶断部とバスバー部との」組み合わせにより、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することができるという効果がある。ひいては、車種等の如何に応じた異なる仕様の配電体の製造を強いることを防止又は抑制することができ、また、仕様の追加又は変更がなされた場合においても、新規の配電体及び付属の配電体の製造、並びに、電線の配線方式の変更を強いてしまうことを防止又は抑制することもできるという効果がある。更には、配電体の製造に要する金型の種類を低減することにより、製造コストの削減を図ることができるという効果に加え、特に、本請求項に係る車両用多極形ヒューズ素子は、バスバー部が、間接バスバー部と直接バスバー部とによって構成されており、間接バスバー部により、差込端子部同士が溶断部を介して直接に連結され、直接バスバー部により差込端子部が溶断部を介することなく連結される。従って、一の「溶断部とバスバー部との」組み合わせであるにも拘わらず、溶断部を介する電路及び溶断部を介さない電路の何れの電路をも構成することができるという効果がある。
【0045】
請求項3記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、請求項1又は2に記載の車両用多極形ヒューズ素子の奏する効果に加え、更に、被覆部により連結部が被覆されているにも拘わらず、かかる連結部の構成要素であるバスバー部の配設箇所が外部より切断可能とされているので、連結部を被覆した後においても、車種等の如何に応じた複数種類の電路を構成することができるという効果がある。
【0046】
請求項4記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、請求項1から3の何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子の奏する効果に加え、更に、被覆部により連結部が被覆されているにも拘わらず、かかる連結部の構成要素であるバスバー部の配設箇所が外部より視認可能とされているので、連結部を被覆部により被覆した後にバスバー部を切断する場合においても、其の切断作業が煩雑となってしまうことを防止することができるという効果がある。
【0047】
また、バスバー部の配設箇所が外部より視認可能とされているので、被覆部により連結部が被覆された後においても、かかる切断箇所を外観から視認させることにより、電路構成を把握させることができるという効果がある。ひいては、本多極形ヒューズ素子の収納及び保管作業、並びに、配電体に差し込む(組み付ける)作業が煩雑となってしまうことを防止することができるという効果がある。
【0048】
(削除)
【0049】
請求項記載の車両用多極形ヒューズ素子によれば、請求項1からの何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子の奏する効果に加え、更に、各溶断部は夫々複数の本数に分割されており、負荷の許容電流の大きさに応じた本数分が切断され、又は切断可能とされているので、各負荷の許容電流の如何に対応した電路を構成することができ、更には、負荷の許容電流の如何に応じて、電路構成が複雑となり、又は電路構成が不可能となってしまうことを防止することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明の一実施例である車両用多極形ヒューズ素子(多極形ヒューズ素子)の平面図であり、(b)は、上記多極形ヒューズ素子のIb−Ib側面図である。
【図2】 上記多極形ヒューズ素子を構成するエレメントの平面図である。
【図3】 (a)は、上記多極形ヒューズ素子を構成するハウジングの平面図であり、(b)は、上記多極形ヒューズ素子を構成するハウジングのIIIb−IIIb線における断面図である。
【図4】 上記多極形ヒューズ素子を構成するヒューズ溶断部の部分拡大図である。
【図5】 (a)は、上記多極形ヒューズ素子の一の電路構成を示す平面図であり、(b)は、(a)の電路構成を示す回路図である。
【図6】 (a)は、上記多極形ヒューズ素子の他の電路構成を示す平面図であり、(b)は、(a)の電路構成を示す回路図である。
【図7】 (a)は、上記多極形ヒューズ素子の別の電路構成を示す平面図であり、(b)は、(a)の電路構成を示す回路図である。
【図8】 (a)は、第2実施例の車両用多極形ヒューズ素子(多極形ヒューズ素子)の平面図であり、(b)は、第2実施例の多極形ヒューズ素子のVIII−VIII線における断面図である。
【図9】 (a)は、第3実施例の車両用多極形ヒューズ素子(多極形ヒューズ素子)の平面図であり、(b)は、第3実施例の多極形ヒューズ素子のIX−IX線における断面図である。
【符号の説明】
1,20,30 車両用多極形ヒューズ素子(多極形ヒューズ素子)
2 エレメント
2a 入出力端子部(差込端子部)
2b ヒューズ溶断部(連結部の一部、溶断部)
2b1 小容量ヒューズ溶断部(連結部の一部、溶断部)
2c 第1導通バスバー部(連結部、バスバー部、及び直接バスバー部の一部)
2d 第2導通バスバー部(連結部、バスバー部、及び直接バスバー部又は間接バスバー部の一部)
2e 第3導通バスバー部(連結部、バスバー部、及び直接バスバー部又は間接バスバー部の一部)
2e1 内側第3導通バスバー部(連結部、バスバー部、及び直接バスバー部又は間接バスバー部の一部)
2e2 外側第3導通バスバー部(連結部、バスバー部、及び直接バスバー部又は間接バスバー部の一部)
3,23,33 ハウジング(被覆部)

Claims (5)

  1. 車両内に配設される配電体の差込口に差し込み可能な複数の差込端子部と、その複数の差込端子部同士を通電可能に連結する連結部とを備えた車両用多極形ヒューズ素子において、
    前記連結部は、通電する電流の大きさに応じて溶断可能とするために前記差込端子部よりも断面積の小さくされた溶断部と、其の溶断部よりも断面積の大きくされたバスバー部との組み合わせにより構成されていると共に、該連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、
    前記バスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所においてその被覆部ごと切断されていることを特徴とする車両用多極形ヒューズ素子。
  2. 車両内に配設される配電体の差込口に差し込み可能な複数の差込端子部と、その複数の差込端子部同士を通電可能に連結する連結部とを備えた車両用多極形ヒューズ素子において、
    前記連結部は、通電する電流の大きさに応じて溶断可能とするために前記差込端子部よりも断面積の小さくされた溶断部と、其の溶断部よりも断面積の大きくされたバスバー部との組み合わせにより構成されており、
    前記バスバー部は、溶断部を介して差込端子部同士を連結する間接バスバー部と、溶断部を介することなく差込端子部同士を直接に連結する直接バスバー部とを備えていると共に、
    バスバー部は、電源から複数の負荷へ夫々給電可能とする電路を構成するために、一又は複数の箇所において切断され又は切断可能とされていることを特徴とする車両用多極形ヒューズ素子。
  3. 連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、その被覆部は、バスバー部及び溶断部の配設箇所が外部より切断可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用多極形ヒューズ素子。
  4. 連結部を被覆する絶縁性の被覆部を備えており、その被覆部は、バスバー部及び溶断部の配設箇所が外部より視認可能とされていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子。
  5. 各溶断部は夫々、複数の本数に分割されており、その複数の本数に分割された各溶断部は、負荷の許容電流の大きさに応じた本数分が切断され、又は切断可能とされていることを特徴とする請求項1からの何れかに記載の車両用多極形ヒューズ素子。
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