JP4697696B2 - 有機無機複合フィラー及びその製造方法 - Google Patents

有機無機複合フィラー及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な有機無機複合フィラー及びその製造法、並びに該有機無機複合フィラーを用いた歯科用硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科用複合修復材は、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや使用時の操作が容易なことから、治療した歯牙を修復するための材料として急速に普及し、近年においては、前歯の治療の大部分が複合修復材料によって行われているばかりでなく、高い咬合圧のかかる臼歯部等の修復にも使用されるようになってきている。
【0003】
歯科用複合修復材は、一般に重合性単量体(モノマー)、フィラー、及び重合触媒から主に構成されるが、硬化前ペーストの操作性、並びに硬化体の審美性及び機械的物性等は、使用するフィラーの種類、形状、粒子径、及び充填量等によって大きく左右される。
【0004】
例えば、従来、粒径が数μmを超える比較的大きな無機フィラーを配合した歯科用複合修復材が知られていたが、該歯科用複合修復材は、硬化体の機械的強度が高いという特徴を持つものの、研磨性や耐摩耗性が悪く、臨床的に天然歯と同様な艶のある仕上がり面を得られないといった問題があった。
【0005】
この問題点を解決するために、平均粒径が1μm以下の無機粒子、特にその形状が丸みを帯びた無機粒子及び/又はその凝集体からなる無機フィラーを用いることが提案され、表面滑沢性は大きく改善されている。しかしながら、このような微小フィラーを用いた歯科用複合修復材は、微小フィラーの比表面積が非常に大きいために硬化前ペーストの粘稠度が高くなってしまい、ペーストの粘稠度を歯科医が口腔内で使用可能なレベルに調整するためにはモノマーの配合量を多くせざるを得ず、操作性の低下や重合に伴う収縮量の増加、さらには機械的強度の低下等を招いてしまうといった問題があった。
【0006】
これらの問題を解決する方法として、微小無機フィラーを含む重合硬化性組成物を重合硬化させた後にこれを粉砕して得た有機無機複合フィラーを用いる方法が提案されている(特開2000−80013号公報)。このような有機無機複合フィラーを使用することにより、微細フィラーを用いたときの特徴である優れた表面滑沢性や耐磨耗性を実現しながら、上記したような操作性の低下、重合収縮の増大、機械的強度の低下といった問題を解決することが可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、歯科用複合修復材料の機械的強度等の性能に対する要求は次第に高くなってきており、上記の有機無機複合フィラーを用いた歯科用複合修復材料においても更に機械的強度の向上が望まれている。そこで本発明は、有機無機複合フィラーを用いた従来の歯科用複合修復材料と同様に優れた表面滑沢性及び耐摩耗性、並びに良好な操作性を有し、更に高い機械的強度を有する歯科用複合修復材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために種々検討を行なった。その結果、特定の製造方法によって表面に多量のラジカル重合性基を導入した新規な有機無機複合フィラーを用いた歯科用硬化性組成物は上記の要求を全て満足し得るものであることを見出し、本発明を提案するに至った。
【0009】
即ち、第一の本発明は、分子中にラジカル重合性基及び当該ラジカル重合性基以外の官能基を有するラジカル重合性単量体及び/又は該ラジカル重合性単量体における前記ラジカル重合性基以外の官能基を保護基で保護した重合性単量体、無機フィラー、並びにラジカル重合開始剤を含んでなる重合性組成物を重合硬化させた後に破砕し、更に前記ラジカル重合性基以外の官能基を保護基で保護した重合性単量体を用いた場合には脱保護を行なって、表面に前記官能基を有する有機無機複合フィラーを得、次いで分子中に前記官能基に対して反応性を有する官能基、及びラジカル重合性基を有する化合物と上記有機無機複合フィラーとを反応させて表面にラジカル重合性基を有する複合フィラーを得ることを特徴とする有機無機複合フィラーの製造方法である。
【0010】
また、第二の本発明は、前記第一の本発明の製造方法で製造されることを特徴とする有機無機複合フィラーであり、更に第三の本発明は、該有機無機複合フィラー、ラジカル重合性単量体、及びラジカル重合開始剤を含んでなることを特徴とする歯科用硬化性組成物である。
【0011】
一般に歯科用硬化性組成物に用いられている有機無機複合フィラーは、硬化させた時のマトリックス樹脂との密着性を向上させることを目的として表面にラジカル重合性基等を導入するためにシランカップリング剤等で表面処理することが行われている。しかしながら、このような表面処理剤は無機フィラーの表面水酸基と反応して結合するものであるため、無機フィラーが表面に露出する確率の少ない有機無機複合フィラーにおいては反応サイトが少なく、結果として表面に導入されるラジカル重合性基の量が少なくなっていた。これに対し、本発明の有機無機フィラーでは、上記した本発明の製造方法で示されるように、有機無機複合フィラーの有機成分にも表面処理剤と反応するような有機残基を導入することにより反応サイト数が増大し、密着性の向上に有効なのラジカル重合性基を多く表面に導入することが可能となっている。このため、ラジカル重合性単量体に混合して硬化させた時にマトリックス樹脂との密着性が向上し、硬化体の機械的強度が向上するものと考えられる。
【0012】
なお、有機無機複合フィラーとマトリックス樹脂との密着性に有機無機複合フィラーの表面に存在にするラジカル重合性基が重要な役割を果たすことはほぼ間違いないと考えられる。また、このような密着性はラジカル重合性基の存在量だけでなく存在状態等によっても異なると考えられる。そして、後述する実施例と比較例との対比から明らかなように、従来の有機無機複合フィラーを用いた硬化体と本発明の有機無機複合フィラーを用いた硬化体とではフィラーとマトリックス樹脂との密着性に起因する機械的強度に有意の差があることから、両者の間には表面に存在するラジカル重合性基の量及び/又はその存在状態に何らかの違いがあると考えられる。しかしながら、有機無機複合フィラーの表面状態は複雑であるため、その存在量や存在状態を正確に測定することは困難であり、このような違いを定量的に把握して本発明の有機無機複合フィラーを特定することは現時点では極めて難しい。そこで、本発明の有機無機複合フィラーにおいては製造方法で特定することとした。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の複合フィラーの製造方法は、分子中にラジカル重合性基及び当該ラジカル重合性基以外の官能基(以下、官能基aともいう。)を有するラジカル重合性単量体(以下、重合性単量体Aともいう。)及び/又は該重合性単量体Aの官能基aを保護基で保護したラジカル重合性単量体(以下、重合性単量体A’ともいう。)、無機フィラー(以下、複合フィラー原料無機フィラーともいう。)、並びにラジカル重合開始剤を含んでなる重合性組成物を重合硬化させた後に破砕し、更に重合性単量体A’を用いた場合には脱保護を行なって、表面に前記官能基aを有する複合フィラーを得、次いで分子中に前記官能基aに対して反応性を有する官能基(以下、官能基bともいう。)、及びラジカル重合性基を有する化合物(以下、化合物Bともいう。)と上記有機無機複合フィラーとを反応させることにより製造するものであれば、特に限定されない。ここで、有機無機複合フィラー(単に複合フィラーともいう。)とは、ポリマーと無機フィラーが複合化したフィラーであり、有機成分であるポリマーマトリックス中に無機成分である無機フィラーが分散した構造を有するフィラーを意味する。また、ラジカル重合性基とは、ラジカル重合可能な官能基を意味し、具体的には、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイル基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和二重結合を有する基が例示される。
【0014】
上記本発明の製造方法においては、複合フィラーの有機成分の原料となるモノマー(以下、複合フィラー原料モノマーともいう。)として重合性単量体A及び/又はA’を含むモノマー用いることにより、表面処理剤である化合物Bの官能基bと反応して結合を生じるような官能基aを多く表面に露出させてから化合物Bと反応させることにより複合フィラーの表面に多くのラジカル重合性基を導入することを可能にし、歯科用硬化性組成物のフィラーとして用いた時に高い機械的強度を与える本発明の複合フィラーを効率よく製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法で使用する複合フィラー原料モノマーは、前記重合性単量体A及び/又はA’を必須成分として含有する必要がある。これら重合性単量体を含まないモノマーを用いた場合には有機成分に官能基aを導入することができず、化合物Bと反応させてもラジカル重合性基を表面に導入することができない。重合性単量体Aとしては、分子中にラジカル重合性基、及び該ラジカル重合性基以外の官能基(官能基a)を有するラジカル重合性単量体であれば、公知のものが何ら制限なく使用可能である。重合性単量体Aの分子中に含まれるラジカル重合性基としては特に制限はないが、可視光線ですばやく硬化できるといった点から、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイル基、またはメタクリロイルオキシ基であることが好適である。上記ラジカル重合性基は、分子中に複数含有されていてもよい。また、重合性単量体Aの分子中に含まれる官能基aとしては、ラジカル重合性基以外の官能基であり反応性を有するものであれば、公知の官能基が何ら制限なく使用可能である。官能基aの好適な例としては、ハロゲン基(ハロゲン原子)、カルボキシ基、カルボキシルハライド基、カルバモイル基、アミノ基、アセトアミド基、アジリジニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアナト基、メルカプト基等が挙げられる。反応性が高いといった点から、重合性単量体Aにおいて上記官能基aは末端に存在するのが好ましい。また、上記官能基aは分子中に複数個含まれていてもよい。
【0016】
重合性単量体Aの具体的例としては、メタクリル酸、メタクリル酸クロライド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロプロピルメタクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−メチルアミノエチルメタクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ビスフェノールA−ジエポキシメタクリル酸ジアダクト、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。これらの重合性単量体Aは、単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0017】
上記重合性単量体Aにおける官能基aは、必要に応じて適当な保護基によって保護し重合性単量体A’とした後に用いることもできる。このような保護は、官能基aの種対に応じ、一般的に行われている保護法を適宜選択すればよいが、好適な保護方法としては、N−ベンジルオキシカルボニル化によるアミノ基の保護、アミンイミド化やケトンオキシム化によるイソシアナト基の保護、トリメチルシリル化によるメルカプト基の保護等が挙げられる。
【0018】
本発明の複合フィラーにおいては、粘度の調整、及び複合フィラーを配合して得られる硬化性組成物の硬化体の物性向上等を目的として、複合フィラー原料モノマーに重合性単量体A及びA’以外のラジカル重合性単量体(以下、重合性単量体Cともいう。)を添加して複合フィラー原料モノマーとしてもよい。なお本発明においては、複数種類の重合性単量体A又はA’を用いる場合、使用する化合物Bとの関係で、化合物Bとの反応に寄与しない重合性単量体は上記の粘度調整等の機能を果たすことになる。複合フィラー原料モノマー中における上記重合性単量体C並びに化合物Bとの反応に寄与しない重合性単量体A及びA’の配合量は目的に応じて選択すればよいが、化合物Bとの反応に寄与する重合性単量体A及び/又はA’の合計100重量部に対して、0〜9900重量部の範囲で使用することが好ましく、0〜1000重量部の範囲で使用することが特に好ましい。
【0019】
重合性単量体Cとしては特に限定されず、公知のものが何ら制限なく使用できる。好適に使用できる重合性単量体を例示すれば、(メタ)アクリロイル基を有する重合可能なモノマーが挙げられ、このような重合性単量体の具体例としては下記C1〜C4に示される各モノマーが挙げられる。
【0020】
C1 単官能性ビニルモノマー
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等。
【0021】
C2 二官能性ビニルモノマー
C2−1 芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(以下、bis−GMAと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D−2.6Eと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0022】
C2−2 脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する)、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等。
【0023】
C3 三官能性ビニルモノマー
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0024】
C4 四官能性ビニルモノマー
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
【0025】
上記重合性単量体Cの中でも、高い機械的強度を有する歯科用複合材料を提供する複合フィラーが得られることから、ラジカル重合基が複数存在する重合性単量体であることが好適である。また、これらの重合性単量体Cは、単独で用いることもあるが、2種類以上を添加して使用することもできる。
【0026】
本発明の製造方法で使用する無機フィラー(複合フィラー原料無機フィラー)としては、非晶質シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカチタニア酸化バリウム、石英、アルミナ等の無機酸化物等の公知の無機化合物からなるフィラーが使用できる。これら無機化合物として高温で焼成した無機酸化物を使用する場合には、焼成時に緻密化を図る等の目的で少量の周期律表第I族の金属酸化物を無機酸化物中に存在させた複合酸化物も用いることができる。複合フィラー原料無機フィラーとしては、歯科用硬化性組成物として使用した時にX線造影性を付与でき、耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。
【0027】
また、複合フィラー原料無機フィラーの形状は特に制限されないが、高い表面滑沢性や耐磨耗性を得るために、形状が球状若しくは略球状の無機粉体及び/又はその凝集体を用いることが好適である。なお、ここでいう略球状とは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みを帯びており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上であることを意味する。これら球状及び略球状の無機粉体の製造方法は特に限定されるものではないが、工業的には所謂ゾルゲル法によって製造するのが一般的である。即ち、加水分解可能な有機ケイ素化合物、あるいはこれに更に加水分解可能な周期律表第I、II、III、及び第IV族の元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む有機化合物を加えた混合溶液を、これらの有機化合物は溶解するが反応生成物は実質的に溶解しないアルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行い反応生成物を析出させ、析出物を乾燥する方法が好適に採用される。また、この様な方法で得られた無機酸化物は、表面安定性を保持するため乾燥後500〜1000℃の温度で焼成されていてもよい。焼成に際しては、無機酸化物の一部が凝集する場合もあるため、ジェットミル、振動ボールミル等を用いることにより凝集粒子を解きほぐし、粒度を調整してから使用するのが好ましい。このような操作を行なっても凝集粒子を完全に凝集前の状態にするのは困難であり、上記のような熱処理を行なった場合には、一次粒子とその凝集体とが混合したフィラーが得られる。
【0028】
本発明の複合フィラー原料無機フィラーの粒径等は特に制限されないが、高い表面滑沢性や耐摩耗性、並びに高い機械的強度を得るためには、平均粒径0.001〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなる無機フィラーを使用するのが好適である。また、複合フィラー原料無機フィラーの全体としての平均粒子径は、0.001〜100μm、特に0.05〜50μmの範囲であることが好適である。なお、該無機フィラーにおいては、粒子径の大きな凝集体を含んでいても該凝集体は平均粒径0.001〜1μmの無機粒子の凝集体であるので、粒子径の大きな独立粒子を添加した場合と異なり、重合硬化後の滑沢性及び耐摩耗性は低下しない。さらにこれら複合フィラー原料無機フィラーにおいては、歯科用硬化性組成物として用いた時の硬化体の表面滑沢性及び耐摩耗性の観点から、前記無機粒子(一次粒子)は、その粒子径の変動係数が0.3以内にあるような単分散性に優れたものであるのが好ましい。なお、これら複合フィラー原料無機フィラーは粒度分布や材質が異なるものを複数種類混合して用いることもできる。
【0029】
複合フィラー原料無機フィラーは、複合フィラーの原料である重合性単量体A及び/又はA’を必須成分として含む重合性単量体(複合フィラー原料モノマー)への分散性を改良する目的でその表面を疎水化処理してから用いることが好ましい。かかる疎水化処理は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。代表的な疎水化処理方法を具体的に例示すれば、複合フィラー原料無機フィラー及び疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物を、適当な溶媒中でボールミル等を用いて分散混合させ、エバポレーターやスプレードライで乾燥した後、50〜150℃に加熱する方法や、複合フィラー原料無機フィラー及び上記疎水化剤をアルコール等の溶剤中で混合し、数時間程度加熱還留する方法等が挙げられる。この時使用される上記疎水化剤の量に特に制限はなく、最終的に得られる歯科用硬化性組成物(複合修復材等)硬化体の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、複合フィラー原料無機フィラー100重量部に対して、上記疎水化剤1〜10重量部の範囲である。
【0030】
本発明の製造方法で使用する複合フィラー原料モノマー(即ち、重合性単量体A及び/又はA’、並びに必要に応じて使用する重合性単量体C)の使用量は特に限定されず得られる複合フィラーの強度や屈折率の観点から適宜決定すればよいが、複合フィラー原料モノマー100重量部に対して、複合フィラー原料無機フィラーが60〜1900重量部、特に150〜900重量部の範囲であるのが好適である。
【0031】
本発明の複合フィラーは、ラジカル重合開始剤を用いてその成分である前記複合フィラー原料モノマーを重合させることにより硬化してから得られる。一般に、ラジカル重合開始剤は重合性単量体の重合手段によって異なる種類のものが使用される。重合手段には、紫外線、可視光線等の光エネルギーによるもの、過酸化物と促進剤との化学反応によるもの、加熱によるもの等があり、採用する重合手段に応じて適宜選定される。
【0032】
熱重合に使用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
【0033】
また、光エネルギーによる反応(以下、光重合という)に用いるラジカル重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
【0034】
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
【0035】
これらラジカル重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、複合フィラー原料モノマー100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。
【0036】
本発明の製造方法では、先ず、各々所定量の上記複合フィラー原料モノマー、複合フィラー原料無機フィラー、及びラジカル重合開始剤を混合機等にて混合し、ラジカル重合開始剤の種類に応じた方法で重合硬化させた後、該硬化体を粉砕し、更に重合性単量体A’を用いた場合には保護基の脱保護を行なって、表面に前記官能基aを有する複合フィラー(官能基含有複合フィラーともいう。)を得る。このとき重合硬化に際しては、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、顔料、重合禁止剤等が挙げられる。また、粉砕方法としては、振動ボールミルやジェットミル等が好適に使用できる。さらに、フルイ、エアー分級機、あるいは水ひ分級等による分級工程を行うことによって、目的とする粒度分布の複合フィラーを好適に得ることができる。本発明の複合フィラーにおいては、硬化体の機械的強度や硬化性ペーストの操作性の観点からその平均粒径は2〜100μm、特に5〜20μmであるのが好適である。さらに、重合性単量体A’を用いた場合における粉砕後の脱保護は、酸、塩基、酸化剤、求核剤、重金属等の脱保護剤を用いたり、接触還元、水素化物還元、陽極反応、光照射、並びに加熱等の方法によって行うことが出来る。
【0037】
上記の様にして得られた官能基含有複合フィラーは、次に化合物Bと反応させられる。化合物Bとしては、分子中に上記官能基aと反応性を有する官能基b、及びラジカル重合性基及びを有する重合性単量体であれば、公知のものが何ら制限なく使用可能である。重合性単量体Bの分子中に含まれるラジカル重合性基としては特に制限はないが、可視光線ですばやく硬化でき、歯科用硬化性組成物として使用する時のモノマー成分とも重合可能であるといった点から、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイル基、またはメタクリロイルオキシ基であることが好適である。上記ラジカル重合性基は、分子中に複数含有されていてもよい。また、官能基bとしては、ラジカル重合性基以外の官能基であり前記官能基aと反応性を有するものであれば、官能基aの種類に応じて公知の官能基が何ら制限なく使用可能である。官能基bの好適な例としては、ハロゲン基(ハロゲン原子)、カルボキシ基、カルボキシルハライド基、カルバモイル基、アミノ基、アセトアミド基、アジリジニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアナト基、メルカプト基等が挙げられる。反応性が高いといった点から、化合物Bにおいて上記官能基bは末端に存在するのが好ましい。また、上記官能基bは分子中に複数個含まれていてもよい。化合物Bの具体的例としては、メタクリル酸、メタクリル酸クロライド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロプロピルメタクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−メチルアミノエチルメタクリレート、2−メルカプトエチルメタクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ビスフェノールA−ジエポキシメタクリル酸ジアダクト、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。
【0038】
表面に前記官能基aを有する複合フィラーと化合物Bとの反応は、官能基aとbとを反応させて化合物Bのラジカル重合性基を該複合フィラーに結合させる反応であれば特に制限なく公知の方法が利用できる。このような反応の中で好適なもの具体例を例示すれば、カルボキシル基とアミノ基とを反応させてアミド結合を形成する反応、カルボキシルハライド基とアミノ基を反応させてアミド結合を形成する反応、エポキシ基とアミノ基を反応させてアミノ結合を形成する反応、エポキシ基とカルボキシル基を反応させてエステル結合を形成する反応、エポキシ基とヒドロキシル基を反応させてエーテル結合を形成する反応、エポキシ基とメルカプト基を反応させてスルフィド結合を形成する反応、イソシアナト基とヒドロキシル基を反応させてウレタン結合を形成する反応、イソシアナト基とアミノ基を反応させて尿素結合を形成する反応、イソシアナト基とメルカプト基を反応させてチオウレタン結合を形成する反応、アジリジニル基とカルボキシルを反応させてアミド結合を形成する反応、イソチオシアナト基とアミノ基を反応させてチオ尿素結合を形成する反応、アルキルハライド基とヒドロキシル基を反応させてエーテル結合を形成する反応等の反応が挙げられる。上記の反応の中でも、反応性が高く副生成物の除去が必要でない事から、イソシアナト基とヒドロキシル基あるいはアミノ基の反応、アジリジリル基とカルボキシル基の反応等が好適に利用される。これら反応は、官能基aを表面に有する複合フィラーを適当な分散媒中に分散させて、反応に応じて常用される触媒の存在下に化合物Bと接触させることにより好適に行なうことができる。分散媒としてはは、官能基a及びbを失活させたり、複合フィラーを溶解しないものであれば特に制限なく使用可能であるが、好適に使用できる溶媒を例示すれば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ジオキサン、エーテル、塩化メチレン等が挙げられる。
【0039】
上記反応において、化合物Bの使用量は特に制限されず、複合フィラー表面に存在する官能基aの量に対して充分な量であれば特に限定されない。なお、複合フィラー表面に存在する官能基aの量は、滴定等の方法を用いて定量することができるが、官能基aの量に対して大過剰の化合物Bを用いて反応を行なっても未反応の化合物Bは適当な溶媒を用いて洗浄する事で容易に除去する事ができるので、反応性を高める観点からも重合性単量体A及び/又はA’の使用量から予想される官能基aの量に対して過剰量の化合物Bを用いるのか好適である。化合物Bの量の好適な範囲を例示すれば、複合フィラー100gに対して、0.005〜5mol、より好ましくは0.05〜1molの範囲である。また、反応温度は、−30〜200℃の範囲、好ましくは−10〜100℃の範囲から選択する事ができる。また、反応時間は、反応温度との関連で適宜決定すればよいが、一般的には1〜50時間程度である。また、上記反応は、化合物Bのラジカル重合性基が重合するのを防ぐため、重合禁止剤を添加して行われる事が好ましい。用いられる重合禁止剤に特に制限はないが、具体的に例示すると、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,4−ベンゾキノン、4,4‘−ジメトキシジフェニルアミン、ピロカテコール、ヒドロピリダジン、2−ニトロフェノール、1−ニトロソ−2−ナフトール、ジフェニルアミン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシド、等が挙げられる。このようにして反応を行なった後、分散媒を減圧留去等の方法により除去し、適当な溶媒を用いて未反応の化合物Bや触媒成分等を洗浄し乾燥を行う事で、本発明の複合フィラーを得る事ができる。
【0040】
上記の様にして得られた本発明の複合フィラーは、歯科用硬化性組成物用のフィラーとして好適に使用できる。本発明の製造方法により製造された複合フィラー(本発明の複合フィラー)、ラジカル重合性単量体、及びラジカル重合開始剤を含んでなる歯科用硬化性組成物(以下、本発明の歯科用硬化性組成物ともいう。)は、その硬化体の機械的強度が高いという特徴を有する。中でも複合フィラー原料無機フィラーとして平均粒径0.001〜1μmの無機粒子、特に球状若しくは略球状である無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなり、全体としての平均粒子径が0.001〜100μm、特に0.05〜50μmの範囲である無機フィラーを用いた本発明の複合フィラーを含む本発明の歯科用硬化性組成物は上記の特徴に加え、硬化体の表面滑沢性や耐摩耗性も優れるという特徴を有する。
【0041】
本発明の歯科用硬化性組成物で使用する上記ラジカル重合性重合性単量体(以下、重合性単量体Dともいう。)としては、本発明の複合フィラーの成分である重合性単量体Cとして前記したものと同じラジカル重合性単量体が、単独で又は複数種組合わせて、なんら制限なく使用可能である。また、ラジカル重合開始剤としては、本発明の複合フィラーの硬化に用いるラジカル重合開始剤として前記したものと同じものがなんら制限なく使用可能であるが、一般に歯科用硬化性組成物においては、使用時の操作の簡便さの理由から、硬化(重合)手段として光重合が採用されることが多く、本発明の歯科用硬化性組成物においても重合開始剤としては光重合開始剤を用いるのが好適である。前記した光重合開始剤の中でも特に好適な光重合開始剤を具体的に例示すると、カンファーキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)―2,4,4−トリメチルフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、重合性単量体100重量部に対して通常0.01〜10重量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。また、本発明の歯科用硬化性組成物中における本発明の複合フィラーの含有量は特に限定されないが、硬化前ペーストの操作性や硬化体の強度の観点から、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、20〜1700重量部、特に50〜1000重量部の範囲にあるのが好適である。
【0042】
さらに、本発明の歯科用硬化性組成物は、従来の複合フィラーを用いた歯科用硬化性組成物と同様に、硬化前ペーストの操作性や硬化体の強度の更なる向上、重合収縮の低減等を目的として無機フィラーを配合するのが好適である。該無機フィラーとしては公知のものが何ら制限なく使用可能であるが、硬化体の表面滑沢性や耐摩耗性等の観点から、平均粒径0.001〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなり、無機フィラーの全体としての平均粒子径が0.001〜100μm、特に0.05〜50μmの範囲である無機フィラーが好適に使用できる。なお、上記無機粒子は、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物であるのが好適であり、その形状は球状または略球状であり、さらに粒子径の変動係数が0.3以内にあるような単分散性に優れたものであるのがより好適である。これら無機フィラーは粒度分布や材質が異なるものを複数種類混合して用いることもできる。また、該無機フィラーについても、表面を前記したような方法で疎水化処理を施すのが好適である。このような無機フィラーの配合量は、特に限定されないが、物性向上効果の観点から重合性単量体100重量部に対して、20〜1700重量部、特に50〜1000重量部の範囲にあるのが好適である。さらに、本発明の歯科用組成物においては、その効果を著しく阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、一般に、前記各必須成分及び必要に応じて添加する各任意成分を所定量とって十分に混練し、さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去することによって得ることができる。
【0044】
本発明の歯科用硬化性組成物の用途は特に限定されないが、具体例としては歯科充填用コンポジットレジンが挙げられる。その一般的な使用方法としては、修復すべき歯の窩洞を適切な前処理材や接着材で処理した後に歯科充填用コンポジットレジンを直接充填し、歯牙の形に形成した後に専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させる方法等が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた、重合性単量体A、化合物B、重合性単量体C、重合性単量体D、無機フィラー、及びラジカル重合開始剤、並びにそれらの略号{化合物名;の後ろの括弧()内に記載}は以下の通りである。
【0046】
〔重合性単量体A〕
▲1▼2−ヒドロキシエチルメタクリレート;(HEMA)
▲2▼トリメチロールプロパンジメタクリレート;(TMPD)
▲3▼グリシジルメタクリレート;(GMA)
▲4▼メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル;(BEMA)
▲5▼2−メチルアミノエチルメタクリレート;(MAEM)
▲6▼10−メタクリロイロキシデカンマロン酸;(MDMA)。
【0047】
〔化合物B〕
▲1▼2−イソシアナトエチルメタクリレート;(IEMA)
▲2▼メタクリル酸;(MAA)
▲3▼2−メタクリロイロキシエチルハイドロジェンサクシネート;(MAES)
▲4▼2−アミノエチルメタクリレート;(AEMA)
▲5▼2−メルカプトエチルメタクリレート;(MEMA)
▲6▼メタクリロイルクロライド;(MC)
▲7▼2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート;(AZEM)
▲8▼3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン;(MPS)。
【0048】
〔重合性単量体C〕
▲1▼2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン;(D−2.6E)とトリエチレングリコールジメタクリレート;(3G)の混合物、但しD−2.6E/3G重量比=70/30;(M−1)
〔重合性単量体D〕
▲1▼2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン;(bis−GMA)とトリエチレングリコールジメタクリレート;(3G)との混合物、但しbis−GMA/3G重量比=60/40;(M−2)
〔無機フィラー〕
▲1▼平均粒径0.2μmの球状シリカジルコニア粒子、及びその凝集体からなるフィラー(全体の平均粒子径20μm)をγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理したもの;(F−1)
〔重合開始剤〕
▲1▼アゾビスイソブチロニトリル;(AIBN)
▲2▼カンファーキノン;(CQ)
▲3▼N,N−ジメチル-p-トルイジン;(DMPT)
実施例1
重合性単量体AとしてHEMA100重量部、及び重合性単量体CとしてM−1を400重量部の混合物に、重合開始剤AIBNを上記重合性単量体混合物に対して重量比で0.5%予め溶解させて得た組成物100重量部に対して無機フィラーF−1300重量部を混合し、乳鉢でよく練和する事でペースト状とした。このペーストを95℃窒素加圧下で一時間加熱することによって重合硬化させ、更にこの硬化体を振動ボールミルにて粉砕し、平均粒径12μmの官能基含有複合フィラーを得た。次いで、上記官能基含有複合フィラー100重量部をトルエン中に分散させ、重合性単量体BとしてIEMAを20重量部、並びにジラウリン酸ジブチルスズ(IV)を1重量部、ジブチルヒドロキシトルエンを0.5重量部添加し、12時間70℃にて加熱撹拌を行った。その後、ろ過、洗浄及び乾燥を行い、複合フィラーIを得た。得られた複合フィラーIについて、フーリエ変換赤外分光光度計で分析したところ、C=C結合由来の1640cm−1の吸収が確認された。
【0049】
実施例2〜8
重合性単量体A及び化合物Bとして表1に示す化合物を用い、実施例1に準じて複合フィラーII〜VIIIを得、実施例1と同様にしてラジカル重合性基の導入を確認した。なお、官能基含有複合フィラーと化合物Bとの反応条件は、複合フィラーIIについては実施例1と同じであるが、その他の複合フィラーについては、添加剤及び反応条件は次のように変更して行なった。即ち、複合フィラーIII及びIVについては塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを1重量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.5重量部を添加し、12時間80℃にて撹拌して行い;複合フィラーVについては官能基含有複合フィラー100重量部を150℃で熱処理した後にトルエン中に分散させ、重合性単量体BとしてAEMA20重量部を添加し、24時間室温することにより行い;複合フィラーVIについては、官能基含有複合フィラー100重量部を150℃で熱処理した後にトルエン中に分散させ、重合性単量体BとしてMEMA20重量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.5重量部を添加し、撹拌しつつ12時間還留することにより行い;、複合フィラーVIIについては、官能基含有複合フィラー100重量部を塩化メチレン中に分散させ、重合性単量体BとしてMC20重量部、並びにトリエチルアミンを10重量部添加し、12時間室温にて撹拌することにより行い;複合フィラーVIIIについては、官能基含有複合フィラー100重量部を塩化メチレン中に分散させ、重合性単量体BとしてAZEM20重量部を添加し、12時間室温にて撹拌することにより行なった。
【0050】
【表1】
Figure 0004697696
【0051】
実施例9〜16
先ず、重合性単量体DとしてのM−2 100重量部に対して、重合開始剤としてのCQおよびDMPTをそれぞれ0.5重量部及び1.5重量部加えて混合し、均一な混合物を調製した。メノウ乳鉢に複合フィラーI 240重量部、無機フィラーF−1を160重量部を入れた後上記混合物100重量部を徐々に加え、暗所にて十分に混練し均化した後、減圧下脱泡して気泡を除去して歯科用硬化性組成物Iを調製した。更に同様にして複合フィラーII〜VIIIを用い歯科用硬化性組成物II〜VIIIを調製した。次に、このようにして得られた各歯科用硬化性組成物を2×2×25mmの角柱状の型枠に歯科用充填器を用いて充填し、十分に光重合を行って硬化させた。このとき型枠に組成物を充填する際の操作性を、べたつきやぱさつきが少なく、充填操作がしやすいものについては○、特に充填操作性に優れるものについては◎、べたつきやぱさつきが強く充填操作が困難なものについては×として評価した。硬化後、硬化体を型枠から取り出し、37℃水中に24時間浸漬したものを試料片とし、試験機(島津製作所製、オートグラフ5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で3点曲げ破壊強度(曲げ強度)を測定した。さらに、各硬化体について、表面を耐水研磨紙1500番で研磨後、Sof-lex Superfine(3M社製)にて仕上げ研磨し、表面の光沢度を目視により判定した。滑沢性に優れるものについては○、特に滑沢性に優れるものについては◎、滑沢性に劣るものについては×の判定とした。各物性の測定結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
Figure 0004697696
【0053】
比較例1及び2
重合性単量体CとしてのM−1 100重量部に重合開始剤AIBNを0.5重量部溶解させて得た組成物100重量部を、無機フィラーF−1を300重量部に添加混合し、乳鉢でよく練和する事でペースト状とした。このペーストを95℃窒素加圧下で一時間加熱することによって重合硬化させ、更にこの硬化体を振動ボールミルにて粉砕し、平均粒径12μmの複合フィラーR1を得た。さらに該複合フィラーR1の一部をエタノール中に分散させ、該複合フィラー100重量部に対して0.02重量部のγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを添加し、90℃で5時間還留することで表面処理を行い、平均粒径12μmの複合フィラーR2を得た。実施例9において複合フィラーIの代わりに複合フィラーR1(比較例1)、又は複合フィラーR2(比較例2)を用いる他は同様にして歯科用硬化性組成物R1及びR2を調製し、実施例9と同様にして各種物性を評価した。結果を併せて表2に示した。
【0054】
比較例3
実施例1と同様にして化合物Bと反応させる前の官能基含有複合フィラー(複合フィラーR3)を調製した。実施例9において複合フィラーIの代わりに複合フィラーR3を用いる他は同様にして歯科用硬化性組成物R3を調製し、実施例9と同様にして各種物性を評価した。結果を併せて表2に示した。
【0055】
表2に示されるように、各比較例の歯科用硬化性組成物R1〜R3は、ペーストの操作性、及び硬化体の表面滑沢性が良好であるものの曲げ強度は十分とは言えない。これに対し、本発明の複合フィラー(複合フィラーI〜VIII)を用いた本発明の歯科用硬化性組成物(歯科用硬化性組成物I〜VIII)は、ペーストの操作性、及び硬化体の表面滑沢性が良好であるばかりでなく曲げ強度が高いことが分かる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の複合フィラーを用いた歯科用硬化性組成物は、従来の複合フィラーを用いた歯科用硬化性組成物と同様に重合収縮を抑えることが可能でペーストの操作性が良好で硬化体の表面滑沢性や耐摩耗性も優れているという特徴をそのまま有するばかりでなく、該従来の歯科用硬化性組成物比べて硬化体の機械的強度が高いという優れた特徴を有する。

Claims (3)

  1. 分子中にラジカル重合性基及び当該ラジカル重合性基以外の官能基を有するラジカル重合性単量体及び/又は該ラジカル重合性単量体における前記ラジカル重合性基以外の官能基を保護基で保護したラジカル重合性単量体、無機フィラー、並びにラジカル重合開始剤を含んでなる重合性組成物を重合硬化させた後に破砕し、更に前記ラジカル重合性基以外の官能基を保護基で保護した重合性単量体を用いた場合には脱保護を行なって、表面に前記官能基を有する有機無機複合フィラーを得、次いで分子中に前記官能基に対して反応性を有する官能基、及びラジカル重合性基を有する化合物と上記有機無機複合フィラーとを反応させて表面にラジカル重合性基を有する複合フィラーを得ることを特徴とする有機無機複合フィラーの製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法で製造されることを特徴とする有機無機複合フィラー。
  3. 請求項2に記載の有機無機複合フィラー、ラジカル重合性単量体、及びラジカル重合開始剤を含んでなることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
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