JP4697366B2 - ボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末及び該ストロンチウムフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボンド磁石用として好適な粒子形状及び粒子サイズを有し、しかも飽和磁化値σsが高いボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、ボンド磁石は、焼結磁石に比べ、軽量で、寸法精度が良く、複雑な形状も容易に量産化できる等の利点があるため、玩具用、事務用具用、音響機器用等の各種用途に広く使用されている。
【0003】
ボンド磁石に用いられる磁性粉末として、Nd−Fe−B系に代表される希土類磁石粉末やフェライト粒子粉末が知られている。希土類磁石粉末は高い磁気特性を有する反面、価格も高価であって、使用できる用途が制限されている。一方、フェライト粒子粉末は希土類磁石粉末に比べて磁気特性の面では劣っているが、安価であり化学的に安定であるため幅広い用途に用いられている。
【0004】
ボンド磁石は、一般に、ゴム又はプラスチックス材料と磁性粉末とを混練した後、磁場中で成形するか、或いは機械的手段により成形することにより製造されている。
【0005】
磁場中で成形される磁場配向成形品は、特に形状の複雑な部品に用いられ、しかも高い残留磁束密度Br、最大エネルギー積BHmaxが要求されている分野で用いられている。
【0006】
一方、機械的手段により成形される機械配向成形品は、複雑な形状をした部品には適してはいないが、加工が容易であるという理由で、特にマイクロモータの分野において汎用されている。
【0007】
近年、各分野における用具や機器の小型化・軽量化に伴って、使用されるボンド磁石の高性能化による磁石自体の小型化が強く要望されており、残留磁束密度Br、最大エネルギー積BHmaxの更なる向上が必要である。
【0008】
ボンド磁石の残留磁束密度Brと最大エネルギー積BHmaxの向上は、磁性粉末の配向度、充填率及び飽和磁化値によって大きく左右され、配向度、充填率及び飽和磁化値が共に高いことが要求される。
【0009】
先ず、磁性粉末の配向度及び充填率の向上のためには、磁性粉末としてボンド磁石用に好適な粒子形状及び粒子サイズを有することが重要である。この事実は、特公昭58−27212号公報の「一般にプラスチック磁石に適したフェライト粒子粉末として要求される条件は、その粒子形状が6方晶フェライトの形がい粒子たる6角平板状で且つ、出来るかぎり薄板状で、各々の結晶の大きさが揃っており、粒度も平均粒子径で1.0〜1.5μの範囲で粒度分布巾のより狭いことが理想である。」なる記載からも明らかである。
【0010】
また、磁気特性を向上させるためにゴム又はプラスチック材料への、磁性粉末の充填率を高めた場合には、ゴム又はプラスチック材料との混練物の溶融粘度が高くなって磁性粉末の配向度が低下する傾向にあり、一方、配向度を高めるために磁性粉末の充填率を低くした場合には、磁性粉末の配向度は向上しても磁性粉末含有量の絶対量が少ないので磁気特性、特に残留磁束密度Br値を高めるには限度がある。
【0011】
一方、磁性粉末の飽和磁化値σsは残留磁束密度Brに密接に関係しているが、磁性粉末の飽和磁化値の向上に関しては極限状態にあるのが現状である。この事実は、特開平9−106904号公報の「残留磁束密度Brについては飽和磁化σsが決め手となる。マグネトプランバイト型(以下M型と略称することがある)フェライトにおける飽和磁化σsの理論値としては、ストロンチウムフェライトが72emu/g、バリウムフェライトが71emu/gであるのに対し、一般市販品は70emu/g程度とかなり理論値に近いところまで向上しているので、これ以上のσsの大幅な向上は難しい。」なる記載からも明らかである。
【0012】
従来、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末に対してLa、Co及びZn等の各種元素を添加して飽和磁化値を向上させる方法が、特開平7−106113号公報、特開平9−115715号公報、特開平10−149910号公報、特開平11−97227号公報、特開平11−154604号公報、特開平11−246223号公報、特開2000−138114号公報、特開2000−138116号公報、特開2000−156310号公報、特開2000−195715号公報、特開2000−323317号公報、特開2000−331813号公報、WO99/38174号公報等において試みられている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ボンド磁石用として好適な粒子形状及び粒子サイズを有し、しかも飽和磁化値σsが高いフェライト粒子粉末は現在、最も要求されているところであるが、前記諸特性を十分に満たすものは未だ得られていない。
【0014】
即ち、前出特開平7−106113号公報記載の技術は、La及びBiで置換する方法であるが、実施例中に見られる飽和磁化値の最大値は72.7emu/gであり、未だ飽和磁化値が十分とは言い難いものである。
【0015】
前出特開平9−115715号公報記載の技術は、焼結磁石に関するものであって該公報に記載されている不定形の粒子径が1μm以下であるフェライト粒子粉末は、焼結磁石用の原料粉末として用いられている。従って、このフェライト粒子粉末をボンド磁石用として使用した場合、高配向、高充填することが困難である。更に、該公報では飽和磁化値を高める為に異種元素で置換しているが、実施例中に見られるとおり、異種金属で置換しないときの飽和磁化値が70.5emu/g程度であるのに対して、置換したときに最大値72.4emu/gを示すに過ぎず、未だ飽和磁化値が十分とは言い難いものである。
【0016】
前出特開平10−149910号公報、特開平11−97227号公報、特開2000−323317号公報及び特開2000−331813号公報記載の技術は、焼結磁石に関するものであって該公報に記載されている不定形の粒子径が1μm以下であるフェライト粒子粉末は、焼結磁石用の原料粉末として用いられている。従って、このフェライト粒子粉末をボンド磁石用として使用した場合、高配向、高充填することが困難である。更に、該公報の実施例中に見られる飽和磁化値の最大値は71.4emu/gを示すに過ぎず、未だ飽和磁化値が十分とは言い難いものである。
【0017】
また、前出特開平11−154604号公報、特開平11−246223号公報、特開2000−195715号公報記載の技術は、二種類の融剤を使用することは記載されておらず、フェライト化反応が十分に進行するとは言い難く、飽和磁化値が低いものと推定でき、ボンド磁石用フェライト粒子粉末としては十分な磁気特性を有するとは言い難いものである。
【0018】
また、特開2000−138114号公報にはCo及びZnで置換したフェライト粒子粉末が記載されているが、融剤を用いることは記載されておらず、得られるフェライト粒子粉末の飽和磁化値は72Am2/kg(72emu/g)であり、未だ十分とは言い難いものである。
【0019】
前出特開2000−138116号公報及び特開2000−156310号公報には、フェライト粒子中及び結晶粒界近傍の置換元素の存在割合を特定しているが、各置換元素が置換サイトに存在しないため、磁気特性、殊に、飽和磁化値が高いとは言い難いものである。
【0020】
また、前出WO99/38174号公報には、酸化ビスマスを用いることが記載されているが、本発明に用いる融剤については記載されておらず、また、得られるフェライト粒子粉末の飽和磁化値は68.9Am2/kg(68.9emu/g)であり、未だ十分とは言い難いものである。
【0021】
また、特開昭54−116399号公報には、粒子の機械的及び磁気的配向を可能にすることを目的として、フェライト粒子粉末の原料混合粉に、アルカリ又はアルカリ土類ハライドとアルカリ又はアルカリ土類硼酸塩とを混合することが記載されているが、異種元素を置換することによって飽和磁化値を向上させることは考慮されておらず、得られるボンド磁石は残留磁束密度及び最大エネルギー積が低く十分とは言い難いものである。
【0022】
また、特開昭60−63715号公報には、La及びCoで置換した六方晶系フェライト粒子粉末を用いた磁気記録媒体が記載されているが、平均粒径が0.01〜0.3μmと小さく、また、置換量が多く、ボンド磁石用として磁気特性に優れるとは言い難いものである。
【0023】
本発明は、高い残留磁束密度と最大エネルギー積を有するボンド磁石を提供する為、高配向と高充填を可能にする最適な粒子形状及び粒子サイズを有し、しかも飽和磁化値σsが高いボンド磁石用フェライト粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0025】
即ち、本発明は、組成が(Sr1−xAx)O・n[(Fe1−y−zCoyZnz)2O3](但し、AはLa、La−Nd、La−Pr又はLa−Nd−Pr、n=5.80〜6.10、x=0.1〜0.5、y=0.0083〜0.042、0≦z<0.0168)であって、飽和磁化値σsが73Am2/kg(73emu/g)以上である平均粒径が1.0〜3.0μmのマグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末であり、且つ、前記マグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末中に板状粒子を個数割合で60%以上含んでいることを特徴とするボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末である。
【0026】
また、本発明は、前記ストロンチウムフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石である。
【0027】
次に、本発明に係るフェライト粒子粉末について説明する。
【0028】
本発明に係るフェライト粒子粉末の組成は、(Sr1−xAx)O・n[(Fe1−y―zCoyZnz)2O3](但し、AはLa、La−Nd、La−Pr、La−Nd−Pr、n=5.80〜6.10、x=0.1〜0.5、y=0.0083〜0.042、0≦z<0.0168)である。
【0029】
前記組成においては必ずLaを含有する。Laを含有しない場合には、本発明の目的とする高い飽和磁化値を有するフェライト粒子粉末が得られない。また、AとしてLaに加えて、更にNd、Pr、Nd−Prを置換してもよい。
【0030】
前記組成においてCoを含有しない場合には、本発明の目的とする高い飽和磁化値を有するフェライト粒子粉末が得られない。また、CoとZnを同時に置換することによって、温度特性に優れたフェライト粒子粉末を得ることができる。Co及びZnを同時に用いる場合、Zn量はCoに対してモル比で0.65以下であることが好ましく、より好ましくは0.45以下である。
【0031】
前記組成においてnの範囲は5.80〜6.10であり、xの範囲は0.1〜0.5であり、yの範囲は0.0083〜0.042、zの範囲は0以上0.0168未満である。n、x、y及びzが上記範囲以外の場合には、飽和磁化値が低くなり本発明の目的とするフェライト粒子粉末が得られない。好ましくはnが5.90〜6.05であり、xが0.2〜0.4であり、yが0.017〜0.033、zが0〜0.012である。
【0032】
本発明に係るフェライト粒子粉末は、該粒子粉末中に板状粒子を個数割合で60%以上含んでいる。また、平均粒径が1.0〜3.0μmであり、飽和磁化値が73kAm2/kg(73emu/g)以上である。
【0033】
本発明において板状とは、板状比(板面径/厚み)が1.5以上であることをいう。本発明に係るフェライト粒子粉末中において板状粒子の個数割合が60%未満の場合には、ボンド磁石にする際の配向性が悪くなるため、高い磁気特性を有するボンド磁石が得られない。より好ましくは70%以上である。
【0034】
また、本発明に係るフェライト粒子粉末の板状粒子は各稜線部が丸みを帯びていることが好ましく、より好ましくは、各稜線部が丸みを帯びている六角板状である。これにより、配向時に粒子が滑らかに動くため配向性が向上する。
【0035】
本発明に係るフェライト粒子粉末の平均粒径が1.0〜3.0μmの範囲以外の場合には、ボンド磁石にする際に高充填ができなくなる為、高い磁気特性を有するボンド磁石が得られない。好ましくは1.0〜2.5μm、より好ましくは1.0〜2.0μmである。
【0036】
本発明に係るフェライト粒子粉末の厚みの平均値は、0.5〜1.0μmが好ましい。
【0037】
本発明に係るフェライト粒子粉末の圧縮密度CDは、3250kg/m3(3.25g/cm3)以上が好ましい。圧縮密度が3250kg/m3(3.25g/cm3)未満の場合には、充填性が低下する為、高い磁気特性を有するボンド磁石が得られない。より好ましくは3300kg/m3(3.30g/cm3)以上である。
【0038】
本発明に係るフェライト粒子粉末の飽和磁化値が73Am2/kg(73emu/g)未満の場合には、高い磁気特性を有するボンド磁石が得られない。好ましくは73.5Am2/kg(73.5emu/g)以上である。
【0039】
本発明に係るフェライト粒子粉末の保磁力Hcは、135〜279kA/m(1700〜3500Oe)が好ましい。保磁力が135kA/m(1700Oe)未満の場合には、高い磁気特性を有するボンド磁石が得られない。より好ましくは151〜263kA/m(1900〜3300Oe)である。
【0040】
次に、本発明に係るフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石について述べる。
【0041】
本発明に係るボンド磁石は、ボンド磁石中における前記フェライト粒子粉末の割合が70〜95wt%となるように、結合樹脂と混合したものである。
【0042】
結合樹脂としては従来のボンド磁石に使用されているものであれば特に制限はなく、ゴム、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂等から用途に応じて選択できる。また、必要に応じてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の公知の離型剤を添加することができる。
【0043】
本発明におけるボンド磁石の残留磁束密度Brは290mT(2900G)以上が好ましく、より好ましくは295mT(2950G)以上である。保磁力iHcは119〜279kA/m(1500〜3500Oe)が好ましく、より好ましくは127〜259kA/m(1600〜3250Oe)である。最大エネルギー積BHmaxは15.9kJ/m3(2.00MGOe)以上が好ましく、より好ましくは16.3kJ/m3(2.05MGOe)以上である。
【0044】
次に、本発明に係るフェライト粒子粉末の製造法について述べる。
【0045】
本発明に係るフェライト粒子粉末は、周知のマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の製造法によって得ることができる。例えば、所定の配合割合で原料粉末を配合・混合し、得られた原料混合粉末を大気中、1000〜1250℃の温度範囲で焼成した後、粉砕、水洗処理し、次いで、大気中、700〜950℃の温度範囲で熱処理することによって得ることができる。
【0046】
原料粉末としては、各種金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の中から適宜選択すればよい。なお、焼成時における反応性の向上を考慮すれば、粒子径は2μm以下が好ましい。
【0047】
また、前記製造法において、原料混合粉末に融剤を添加して焼成することが好ましい。融剤としては、BaCl2・2H2O及びNa2B4O7を同時に添加することが好ましい。また、粒子形状や平均粒径を制御するためにBaCl2・2H2O及びNa2B4O7の添加比率は重量換算で5:1〜1:5であることが好ましい。BaCl2・2H2O及びNa2B4O7の添加量は、原料混合粉末100重量部に対してそれぞれ1〜5重量部であることが好ましい。1重量部未満の場合には平均粒径が1.0μmより小さくなり、5重量部を越える場合には効果が飽和するため必要以上に添加する意味がない。より好ましくは1〜4.5重量部である。
【0048】
また、本発明においてはBi2O3を原料混合粉末、又は焼成後の粉砕粉に混合してもよい。
【0049】
次に、本発明に係るフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石の製造法について述べる。
【0050】
本発明に係るボンド磁石は、周知のボンド磁石の製造法によって得ることができ、例えば、本発明に係るフェライト粒子粉末と前記結合樹脂とを混合した後、磁場中で成型することによって得られる。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0052】
フェライト粒子粉末の粒子形状は、「電界放射形走査電子顕微鏡S−800」((株)日立製作所製)により観察した。
【0053】
フェライト粒子粉末の平均粒径は、「粉体比表面積測定装置SS−100」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0054】
板状比は、ボンド磁石を配向面に対して垂直に切断した面を撮影した電子顕微鏡写真(×6,000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について、板面径及び厚さをそれぞれ測定し、(板面径/厚さ)によって求めた。
【0055】
板状粒子の割合は、上記板状比を測定した写真に示される粒子約350個中に存在する板状比1.5以上の粒子の割合を百分率によって示した。
【0056】
フェライト粒子粉末の圧縮密度には、粒子粉末を1t/cm2の圧力で圧縮したときの密度を採用した。
【0057】
フェライト粒子粉末の飽和磁化値σsと保磁力Hcは、「試料振動型磁束計SSM−5−15」(東英工業(株)製)を用いて最大磁場1430kA/m(18kOe)の条件で測定した。飽和磁化値σsには、得られた各磁場における測定値を1/H2プロットにより磁場無限大に外挿した値を採用した。
【0058】
フェライト粒子粉末と樹脂からなるボンド磁石の磁気特性(残留磁束密度Br、飽和磁束密度Bs、保磁力iHc、最大エネルギー積BHmax)は、「直流磁化特性自動記録装置3257」(横川北辰電気(株)製)を用いて測定した。
【0059】
<フェライト粒子粉末の製造>
粉末状のα−Fe2O3、SrCO3、La2O3、CoOを、組成が(Sr0.80La0.20)O・5.92[(Fe0.983Co0.017)2O3](n=5.92、x=0.20、y=0.017、z=0)となるように秤量して、湿式アトライターで30分混合した後、濾過、乾燥した。得られた原料混合粉末にBaCl2・2H2O及びNa2B4O7の混合水溶液を添加してよく混合した後、造粒した。この時、BaCl2・2H2O及びNa2B4O7の添加量は、上記原料混合粉末100重量部に対してそれぞれ3重量部、1重量部とした。得られた造粒物を大気中1200℃で2時間焼成した。得られた焼成物を粗粉砕した後に、湿式アトライターで30分粉砕し、水洗、濾過、乾燥した。その後、更に振動ミルで30分粉砕した。次いで、得られた粉砕物を大気中950℃で1.5時間熱処理した。
【0060】
得られたフェライト粒子粉末の飽和磁化値σsは73.1Am2/kg(73.1emu/g)であり、保磁力Hcは230kA/m(2890Oe)であった。粒子形状は、きれいな六角板状であって、各稜線部は丸みを帯びていた。平均粒径は1.30μmであり、板状粒子の割合は70%であり、圧縮密度は3300kg/m3(3.30g/cm3)であった。
【0061】
<ボンド磁石の製造>
このフェライト粒子粉末とエチレンビニル共重合体樹脂を、フェライト粒子粉末含有量が92wt%になるように80℃で混合した後、該混合物を2軸のロールでシート状に成型した。得られたシート状混合物を円柱状に打ち抜いた後、積層して磁場中で成型することによって、円柱状のボンド磁石を得た。このボンド磁石の残留磁束密度Brは300mT(3000G)であり、飽和磁束密度Bsは315mT(3150G)であり、保磁力iHcは220kA/m(2760Oe)であり、最大エネルギー積BHmaxは17.5kJ/m3(2.21MGOe)であった。
【0062】
【作用】
本発明において最も重要な点は、ボンド磁石用として好適な粒子形状及び粒子サイズを有し、しかも飽和磁化値σsが高いフェライト粒子粉末であるという点である。
【0063】
本発明においてボンド磁石用として好適な粒子形状及び粒子サイズが得られる理由について本発明者は、本発明においては、ボンド磁石用として最適な組成を選択し、且つ、選択した組成に好適な融剤としてBaCl2・2H2O及びNa2B4O7を選択したことによって、融剤を用いない場合と比較して粒子が成長しやすくなり、フェライトの結晶構造を反映した板状を呈しやすくなること及び前記融剤の添加比率、添加量を最適化したことにより粒子の成長を制御することができ、ボンド磁石用として好適な粒子形状及び粒子サイズが得られたものと推定している。
【0064】
また、高い飽和磁化値が得られる理由について本発明者は、組成(置換元素及び置換量)を最適化したこと及び組成に適する融剤を用いて焼成したことによりフェライト化反応が促進され、各置換元素(La、Co及びZn)が本来の置換サイトに存在することが容易に可能となり、より完全に近い結晶構造を有するフェライト粒子粉末が得られたことによるものと推定している。
【0065】
また、本発明においてはCoを置換することによって、飽和磁化値を高くするとともに、保磁力も高く維持できるので、本発明に係るフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石は、最大エネルギー積BHmaxが高くボンド磁石として優れている。
【0066】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例により本発明を説明する。
【0067】
実施例1〜5:
組成、BaCl2・2H2O及びNa2B4O7の添加量、焼成温度、熱処理温度を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にしてフェライト粒子粉末を作成した。更に、このフェライト粒子粉末とエチレンビニル共重合体樹脂からなるボンド磁石を前記発明の実施の形態と同様にして作成した。製造条件を表1に、諸特性を表2及び表3に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
比較例1:
粉末状のα−Fe2O3、SrCO3、La2O3、CoOを、組成が(Sr0.75La0.25)O・5.95[(Fe0.981Co0.019)2O3]となるように秤量して、湿式アトライターで30分混合した後、濾過、造粒、乾燥した。得られた造粒物を大気中1200℃で3時間焼成した。得られた焼成物を粗粉砕した後に、湿式アトライターで30分粉砕し、濾過、乾燥した。その後、更に振動ミルで30分粉砕した。得られたフェライト粒子粉末の飽和磁化値σsは72.0Am2/kg(72.0emu/g)、保磁力Hcは264kA/m(3320Oe)であった。平均粒径は0.95μmであり、圧縮密度は3320kg/m3(3.32g/cm3)であった。板状粒子の割合は20%であり、角張った形状の粒子が数多く存在した。
【0072】
このフェライト粒子粉末とエチレンビニル共重合体樹脂を、フェライト粒子粉末含有量が92wt%になるように80℃で混合したが、両者を均一に混合することができず、ボンド磁石を得ることができなかった。
【0073】
比較例2〜5:
組成、BaCl2・2H2O及びNa2B4O7の添加量、焼成温度、熱処理温度を種々変化させた以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子粉末を作成した。更に、このフェライト粒子粉末とエチレンビニル共重合体樹脂からなるボンド磁石を実施例1と同様にして作成した。製造条件を表1に、諸特性を表2及び表3に示す。
【0074】
【発明の効果】
本発明に係るストロンチウムフェライト粒子粉末は、ボンド磁石用として適度な粒子形状及び粒子サイズを有し、しかも飽和磁化値σsが高いのでボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末として好適である。
【0075】
また、本発明に係るストロンチウムフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石は、配向度及び充填性に優れ、しかも残留磁束密度と最大エネルギー積が高いのでボンド磁石として好適である。
Claims (2)
- 組成が(Sr1−xAx)O・n[(Fe1−y−zCoyZnz)2O3](但し、AはLa、La−Nd、La−Pr又はLa−Nd−Pr、n=5.80〜6.10、x=0.1〜0.5、y=0.0083〜0.042、0≦z<0.0168)であって、飽和磁化値σsが73Am2/kg(73emu/g)以上である平均粒径が1.0〜3.0μmのマグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末であり、且つ、前記マグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末中に板状粒子を個数割合で60%以上含んでいることを特徴とするボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末。
- 請求項1記載のストロンチウムフェライト粒子粉末を用いたボンド磁石。
Priority Applications (1)
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