JP4694647B2 - 超硬合金製エンドミル及び該エンドミルを用いた切削加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、荒切削から中仕上げ切削に用いる超硬合金製エンドミル及び該エンドミルを用いた切削加工方法に関する。
本発明は、従来は別々のエンドミルで行なわれていた縦送り加工、横送り加工、及びその複合加工である傾斜加工などの荒切削から中仕上げ切削を、一本のエンドミルで多機能でかつ高速で行える超硬合金製エンドミル及び該エンドミルを用いた切削加工方法を提供することを目的としている。
本発明が対象とする荒切削から中仕上げ切削用途の従来の一般的なエンドミルは、特に横送り加工用として、外周刃に波形状やニックを有し、この波形状外周刃やニック付き外周刃は、各刃で削り残しが出ないように工具軸方向に等間隔で位相がずれている。このような従来の波形状やニック付きの外周刃を有するエンドミルは、普通刃エンドミルと比較して、切り屑を分断しやすく切削抵抗を低減して加工ができるため、工具径方向(横送り加工)の切り込み量を大きくでき、高能率加工が可能である。その反面、加工面は普通刃エンドミルより粗くなるため、荒加工で用いることが多い。
荒加工においても加工能率を上げるために、切り込み量を大きくして縦送りや横送り切削、傾斜切削など高速切削による高能率加工を行うが、同一工具で行うのは困難である。特に、縦送りや傾斜切削などが組み合わさると、切り屑は工具の軸心付近に多くなるために、切り込み量を大きくしすぎると切り屑の排出性が良好でなければ切削抵抗が大きくなる。切り屑の排出性を改善する目的ではいくつかの提案がなされている。
特許文献1に記載されるエンドミルは、縦送り切削用のエンドミルに関するものであり、ギャッシュノッチ角が後端側に向かうに従い段階的に大きくなる複数段のギャッシュ面を構成するエンドミルが提案されている。縦送り時に大きな負荷が作用するエンドミル本体中心の先端側のギャッシュ面は強度を確保し、欠損等を防止でき、後端側のギャッシュ面は切り屑排出のための空間を確保するというものである。
特許文献2に記載されるエンドミルは、エンドミル回転中心側とエンドミル外周側にギャッシュ面を設け、外周側のギャッシュ角は回転中心側のギャッシュ角より大きく設けたエンドミルである。これにより、高硬度材の横送り切削時に、切り屑の排出性を向上させ、高速切削による高能率加工が可能であるとするものである。
さらに、高能率加工を行うために高速切削を行うときの問題として、横送り切削ではびびり振動の問題が生じることが多い。特にエンドミルの軸心から外周面の周方向に隣接する2枚の切れ刃までの線分で挟まれる分割角が切れ刃ごとに等しい等分割エンドミルは、エンドミルの製造が極めて容易であるメリットがあるが、切削加工中に共振が起こり、びびり振動が生じやすい。この対策として、製造上は費用と時間がかかるが、エンドミルの切れ刃の分割角を異なるようにして、切削力の周期を一定にしないようにした不等分割エンドミルが提案されている。
特許文献3には、波形状刃形のエンドミルにおいて、互いに隣接する各外周刃間における位相のずれ量を不均等にしたことにより、各外周刃の切り込み断面形状や断面積が不均等となり、不等分割同様にびびり振動を抑制し、工具寿命向上や高能率加工が可能となることが記載されている。
また、特許文献4のエンドミルでは、ラフィング切れ刃にて構成されている外周刃の波形状のピッチが、波形状の凹凸の偶数周期を1周期として正弦曲線状に増減させられているとともに、そのピッチの増減に連動して深さおよび曲率半径もそれぞれ波形状の凹凸が1周期ごとに変化させられているため、その増減により軸方向各部の切削態様が変化して共振周波数がずれ、工具全体として共振が軽減されてびびり振動が抑制されることが記載されている。
特開2006−15418号公報 特開2007−296588号公報 特開平01−127214号公報 特開2002−233910号公報
近年、金型加工や部品加工において、高能率加工の要求は一段と強く、縦送り加工や横送り加工、傾斜切削などを区別することなく高速に行うことで、従来にない飛躍的な高能率加工が可能なエンドミルが要求されている。そのために、金型加工や部品加工の切削現場では、エンドミル加工も加工の姿勢に関係なく、工具を交換せずに一本のエンドミルのみで多機能な加工を行いたい、それも高速で行いたいという要望が強い。
先行技術文献で紹介したように、従来のエンドミルでは、縦送りや、横送り加工にそれぞれ特化したエンドミルが提案されてきた。従来のエンドミルで凹形状等の縦送りや傾斜切削を含む加工を行う場合には、最初に縦送りに特化したエンドミルやドリルなどを用い、その後に横送りに特化したエンドミルで繰り広げることが多い。縦送りや傾斜切削では切り屑排出を考慮し、チップポケットの大きくできる刃数の少ないものを使用することが多く、横送りの高速切削を行うには、工具剛性を考慮し、心厚の大きいもので、刃数の多いものを使用することが多い。このように、従来のエンドミルでは、加工の目的によって、それぞれの加工に適したエンドミルを交換する必要があり、段取り替えの時間のロスで高能率化には適しない。それどころか、従来の通常のエンドミルは複数の切れ刃を外周に持ち、回転しながら切削するというフライス工具の特性から横送り加工は切り屑の排出性もさほど問題にならないが、エンドミルで縦送り加工を行うには、切り屑排出の問題で、高能率な加工が困難である。従来のエンドミルで縦送り加工を行うと、軸中心付近の底刃によって生成される切り屑排出が悪く、切り屑づまりによる折損が生じやすくなる。また、切り屑排出を良好にするため、底刃のチップポケットを大きくすると、切り屑排出は良好となるが、横送り加工の際に底刃の剛性不足から欠損が発生しやすくなるという問題がある。このような事情により、縦送り加工と横送り加工、さらにはこれらの組合せ加工である傾斜切削を行う場合は、高能率な加工を行うためにそれぞれ専用工具を使用していたが、さらに高能率に行いたいという要望が多くなってきているのが現状である。そこで、高能率化を図るために、ドリルやエンドミルを交換せず、段取り替えの時間を無くして1本のエンドミルですべての加工を行うと、従来のエンドミルでは加工方向に不得手の方向も同じエンドミルで加工することになり、かえって加工時間が延びてしまうケースが多かった。
特許文献1は、縦送り加工用として、縦送り時に大きな負荷が作用するエンドミル本体中心の先端側のギャッシュ面は強度を確保し、後端側のギャッシュ面は切り屑排出のための空間を確保したエンドミルであり、特許文献2は、高硬度材の高速横送り加工に適した複数段のギャッシュ面を構成するエンドミルである。しかしながら、さらなる多機能な加工を高能率で行う場合、先端側のギャッシュ面と後端側のギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具剛性と切り屑排出を両立させるために重要であることが本発明者の検討で明らかになってきた。特許文献1及び2のエンドミルでは、回転軸中心から前記つなぎ部の位置までの長さが長くなるため切り屑詰まりによる欠損などの問題となることが多かった。
さらに、エンドミルにおけるびびり振動を抑制する技術として、従来技術で説明したような不等分割によるエンドミルが提案されている。不等分割を適用したエンドミルは適切な形状設計をすれば、一定のびびり振動を抑制する効果があるが、切れ刃が不均一に並んでいることからエンドミルの製造が困難であり、製造コストが高くなる。さらにエンドミルの再研磨時にも各刃の分割角が異なるため、研削する際の位置あわせなどで問題になることが多かった。また、不等分割を適用したエンドミルは、形状的に刃溝が不均一によることを意味し、切り屑排出性が不均一になりやすく切り屑の排出性が悪いため、異常摩耗や欠けなどの問題があった。この問題は最近の高速切削に伴って多量に排出される切り屑の処理には特に重要な問題点になる。
また、特許文献3では、互いに隣接する各外周刃間における位相のずれ量を不均等にし、不等分割同様の効果でびびり振動を抑制する方法が提案されている。しかし、特許文献3のエンドミルは発明の当時にエンドミルの工具材料として主流であった高速度工具鋼を母材としているので、各外周刃の位相のずれ量は比較的大きい例が提案されている。エンドミル母材を本発明のように靭性の低い超硬合金とした場合には、単に位相のずれ量を不均等にしたり、前記のように位相からのずれ量が大きい場合には、切削抵抗が大きくなる超硬合金製エンドミルの外周刃では欠損やチッピングが生じやすく、さらなる高速切削での適用には問題が残っていた。超硬合金製エンドミルの外周刃は、高速度工具鋼と比較して本質的に欠損やチッピングが生じやすいという意識が強いので、超硬合金製のエンドミルで外周刃の位相をずらしてみようという発想も生じ難かったといっても過言ではない。
さらに、特許文献4では、ラフィング切れ刃の波形状のピッチ、深さ、および曲率半径のうちの少なくとも一つが、該波形状の凹凸の周期よりも大きな周期で増減し、各刃の切削量を変えて、各刃の切削量を変えることによりびびり振動を抑制する方法が提案されている。しかし、波形状を各刃で変化させることは、エンドミル製造時に各波形状ごとの砥石が必要であり、不等分割を適用したエンドミルと同様に製造コストが高くなってしまう。
以上、先行技術について問題点は指摘したとおりであるが、いずれの先行技術に記載されるエンドミルの改良提案も、縦送り加工か横送り加工の何れかに特化したものであり、これらの加工をすべてまとめて行なえるエンドミルの提案という、本発明の重要な課題認識である多機能加工の認識はない。本発明は、このような背景と課題認識の下に、縦送り加工、横送り加工、及び傾斜切削などの多機能な加工を一本のエンドミルで高能率に行え、切削工具の製造コストを考慮して、容易に工具製造や工具の再研磨が行えること、また、切削抵抗の分散を十分に行えることでびびり振動を抑制し、長寿命な超硬合金製エンドミル及び該エンドミルを用いた切削加工方法を提供することを目的とする。
さらに本発明が目的とする多機能加工とは、上記のような切削加工のほとんどあらゆる姿勢以外に、多様な被加工材にも対応できるエンドミルを提供するということも目的としている。この目的は最近需要の高まっている航空機材料や原子力発電に使用される超耐熱合金やチタン合金の切削加工には必須である。
前記の目的を達成するために、本発明のエンドミルは、底刃と、複数の外周刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュとを有する超硬合金製エンドミルである。本発明のエンドミルは、従来よりも大きい単位時間当たりの切り屑排出量を達成できるように超硬合金製であり、外周刃の特徴は、各外周刃の波形またはニックの位置の位相がずれており、前記位相のずれ量が特定の範囲で外周刃によって不均一である高速切削用の波型形状またはニック付きの外周刃形状を有していることを特徴としている。また本発明の超硬合金製エンドミルは、特に縦送り加工や傾斜切削の際に底刃から排出される切り屑処理と、エンドミル先端付近の強度を中心から外周まで確保するために複数の面からなる新規なギャッシュ形状が併設されている。さらに、本発明の超硬合金製エンドミルは、切り屑の排出性とエンドミル製造の生産性の点で大きな優位性を持つ等分割エンドミルを採用している。等分割エンドミルとは、エンドミルを軸垂直断面で見たときに、外周刃の配列が等角度に分割されているエンドミルのことである。本発明は、これらすべての発明の構成要件の相乗効果によって、一本の工具で縦送り加工、横送り加工、及び傾斜加工を含む多機能な加工ができる超硬合金製エンドミルを提供できるのである。しかも、本発明の超硬合金製エンドミルは、工具自体の製造が容易であり、従来の超硬合金製エンドミルとほとんど変わらないコストで切削現場が望む多機能かつ高性能のエンドミルを実用化できるという大きなメリットもある。
すなわち第1の本発明は、底刃と、複数の外周刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュとを有する超硬合金製エンドミルであって、前記複数のギャッシュ面は、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面、エンドミルの工具軸の回転中心側に設けられた第2ギャッシュ面、及びエンドミルの外周側に設けられた第3ギャッシュ面を設け、前記第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角、前記第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角としたとき、第1ギャッシュ角は15゜〜35゜、第2ギャッシュ角は40゜〜60゜に設けられ、エンドミルの外周刃には径方向に山部と谷部を繰り返す複数の波形状外周刃を有し、ある波形状外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の波形状外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチの0%を含まない5%以下(望ましくは2〜3%)の幅で工具軸方向にずれて設けられ、前記第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具回転軸から工具径の5%以上20%未満であることを特徴とする超硬合金製エンドミルである。
の本発明は、底刃と、複数の外周刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュとを有する超硬合金製エンドミルであって、前記複数のギャッシュ面は、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面、エンドミルの工具軸の回転中心側に設けられた第2ギャッシュ面、及びエンドミルの外周側に設けられた第3ギャッシュ面を設け、前記第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角、前記第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角としたとき、第1ギャッシュ角は15゜〜35゜、第2ギャッシュ角は40゜〜60゜に設けられ前記外周刃には径方向に切り屑を分断させる複数のニック付き外周刃を有し、あるニック付き外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃のニック付き外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、ニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記ニックのピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれて設けられ、前記第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具回転軸から工具径の5%以上20%未満であることを特徴とする超硬合金製エンドミルである。
本発明の超硬合金製エンドミルはある波形状外周刃又はニック付き外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチ又はニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチ又はニックのピッチの2%〜3%の幅のずれ量であることが望ましい。
本発明の超硬合金製エンドミルは、少なくとも外周刃には硬質皮膜が被覆されていることが望ましい。望ましくは底刃にも硬質皮膜を被覆したほうが良い。本発明で有効な硬質皮膜は、単層で被覆されるか又は他の組成の皮膜との複合で被覆され、最も外層の皮膜は組成的にはTiAlN系、AlCrN系、TiSiN系などが推奨される。
本発明の超硬合金製エンドミルは、工具保持部と、超硬合金製の切れ刃部を別の部品として構成し、相互に着脱可能とすることができる。
本発明の切削加工方法は、前述した本発明の超硬合金製エンドミルを用いて縦送り切削、横送り切削および傾斜切削から選ばれる少なくとも2種以上の切削を連続して行うことを特徴とする切削加工方法である。すなわち本発明の切削加工方法は、本発明の工具形状として特徴のある前記エンドミル一本を用いて、縦送り切削、横送り切削および傾斜切削の組合せを連続して行なう切削加工方法である。
外周刃が波形状であれば、切り屑の分断効果が大きいため、切削抵抗の抑制に効果的であり、高能率に加工ができるが、外周刃の波形状が加工面に転写されるため加工面が悪くなる。外周刃にニックを有するエンドミルであれば、切り屑分断効果があり、切削抵抗が抑制されるが、波形状より効果は小さくなる。しかし、加工面に転写されるのは普通刃であるため、比較的加工面は良好になる。よって、外周刃が波形状であれば大荒加工や荒加工に、ニック付きであれば荒加工や中仕上げ加工に用いられることが多い。
本発明の超硬合金製エンドミルによれば、超硬合金を母材としたときの最適な位相ずれを有する波形状外周刃又はニック付き外周刃と、エンドミル先端方向でのギャッシュの形状を最適化しているため、一本のエンドミルのみで工具の交換なしで縦送り、横送りや傾斜加工など多機能で、かつ高能率な加工ができる。
さらに本発明の超硬合金製エンドミルは、工具の製造が容易で製造コスト的にも有利であり、波形状外周刃の位相がずれている形状であることにより、加工中のびびり振動を抑制することで、欠損やチッピングを起こすことなく安定した加工が可能となるので、高速切削による高能率荒加工から高能率中仕上げ加工が可能となり、さらに長寿命に加工が行える超硬合金製エンドミルを提供することができる。
第1又は第の本発明の超硬合金製エンドミルは、ある波形状外周刃又はニック付き外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチやニックピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチ又はニックピッチの0%を含まない5%以下の幅で配置されているため、切削抵抗が分散されて切削負荷が安定し、びびり振動を抑制できる。
そのため工具軸方向への位相からのずれがない従来のエンドミルと比較して、本発明の超硬合金製エンドミルはびびり振動を抑制できることから、横送り切削時には、びびり振動に最も起因する切削速度を1.5倍以上に上げて高能率加工が達成できる。さらに、ギャッシュの形状を最適化しているため、同じエンドミルを傾斜加工に適用したとしても、従来のエンドミルと比較して、本発明の超硬合金製エンドミルは1.5倍以上の送り速度の高能率加工が達成できる。すなわち、本発明の超硬合金製エンドミルを一本準備することで、横送り切削はもちろんのこと、縦送り切削も含まれる傾斜加工にも同一エンドミルが適用でき、切削の姿勢の如何にかかわらず従来のエンドミルの1.5倍以上の高能率加工は可能となるものである。これが本発明が多機能加工のメリットがあるという所以である。
傾斜切削において、従来のエンドミルであれば、傾斜角は大きくても5°程度が限界であり、通常の傾斜切削は3°程度の傾斜角で行うのが一般的であった。本発明のエンドミルであれば、傾斜角度が20°以上で加工することが可能となり、ポケット形状などの凹形状の加工においてもドリルと組み合わせる必要が無くなり、ドリルからエンドミルへの交換や交換のための段取りも必要ではなくなる。すなわち、本発明の超硬合金製エンドミルを用いた切削加工方法によれば、高能率で穴加工などの傾斜切削が行えると共に、ポケット形状の加工時も工具交換や段取り回数が減ることで、工程短縮に繋がり、加工時間も短くなる。
本発明の超硬合金製エンドミルは、外周刃は不等分割ではないために、エンドミル製造時は、通常のエンドミル製造と同じようにできるために製造コストも抑えて容易にエンドミルの製造が可能である。また、各刃の刃溝の形状はすべて同一であるため、切削加工時の切り屑の排出性も良好であり、エンドミルの寿命の安定と高速切削を可能にする効果が得られる。不等分割品に関しては刃溝研削において、分割角度を調整するため研削時間が多くなり、さらに、ランド幅を均一にするための、研削する箇所が多くなり研削時間が多くなる。
本発明の超硬合金製エンドミルのうち、ニック付きの外周刃として、ある外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃のニックの工具軸方向への位相からのずれ量が、ニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記ニックのピッチの0%を含まない5%以下の幅で配置されているものは、びびり振動の抑制と共に、ニックによる切り屑の分断が適正に行なわれ、安定した高速回転ができ、工具寿命も延びる。
最近の切削加工現場では、プリハードン鋼や焼入焼戻しされた鋼を切削したいという要望が強い。熱処理後に切削加工することは、部品や金型の歪を最小にするメリットがあるが、熱処理後の硬い材料を切削することになり、切削工具には過大の負荷がかかる。しかし、本発明は、特に加工目的として推奨される被加工材は硬さが40HRCを超える焼き入れ材である。このような被加工材は従来のエンドミルとして主流である高速度工具鋼製のエンドミルでは工具の形状がいかなるものでも高能率加工条件では極端に工具寿命が短くなっていた。
本発明は超硬合金製のエンドミルであるため、従来の高速度工具鋼製のエンドミルと比較して、波形状外周刃又はニック付き外周刃は大幅に耐摩耗性が向上するものの、位相をずらすために前記外周刃は欠損やチッピングの危険性にさらされる。そこで本発明者は超硬合金製のエンドミルについて、波ピッチ又はニックのピッチの最適な配列を多数の切削試験から検討し、その結果として、位相からのずれ量は、波ピッチ又はニックのピッチ量を刃数で割った値で等間隔に並んだ基準波形状外周刃又は基準ニック形状外周刃のそれぞれの外周刃の位相から、前記波ピッチ又はニックのピッチの0%を含まない5%以下の比較的狭い幅のずれ量で軸方向にずれて配置されていることが必要であることを見出したものである。本発明では位相からのずれは必須であるが、位相からのずれ量は波ピッチ又はニックのピッチの5%以下、望ましくは2%〜3%でなければならない。位相からのずれ量が波ピッチ又はニックのピッチの5%を超えると、超硬合金製エンドミルでは、波形状外周刃又はニック付き外周刃の欠損やチッピングが生じやすくなるためである。逆に位相からのずれ量が波ピッチ又はニックのピッチの1%未満であると、前記の位相はほとんど等間隔で配置されることになり、びびり振動の抑制の効果は十分には期待できない程度となる。
本発明の超硬合金製エンドミルは、少なくとも外周刃には硬質皮膜を有するようにすると良い。この場合には個々の外周刃が超硬合金からなり、該外周刃はエンドミル軸方向へ特定の位相のずれ量をもって波形状かニック形状で配設されているので、高速切削しても切削抵抗が分散されてびびり振動を抑制して欠損やチッピングの突発事故を防止でき、かつ、過酷な高速切削に伴う酸化と摩耗を防止するという硬質皮膜の効果で、トータルのエンドミルの特性向上で高速かつ長寿命の加工を達成できる。
具体的には、工具軸方向への位相からのずれがない従来のエンドミルでは、切削速度が周速100m/min程度しか上がらなかったが、本発明エンドミルの切削速度は周速200m/min以上の条件も可能であり、このような高能率加工の効果は、本発明の超硬合金で製造されたエンドミルの新規な形状と硬質皮膜被覆の効果の相乗効果による。
本発明によれば、従来の高速度工具鋼製に比較して、工具の寿命延長は期待できるが脆性材料で欠損の危険性の高い超硬合金製エンドミルの切れ刃のチッピングや折損が防止でき、長寿命に加工が行える超硬合金製エンドミルを提供することができる。
さらに、本発明エンドミルの製造時のメリットとしては、等分割のため不等分割品の刃溝研削において、分割角度を調整するための研削時間やランド幅を均一にするための、研削時間が無いため通常のエンドミルと同じように製造できるので、製造コストも抑えて容易に超硬合金製エンドミルの製造が可能である。
さらに、本発明の超硬合金製エンドミルは、工具保持部と、超硬合金製の切れ刃部が自在に着脱可能とすることができる。これにより切れ刃が切削加工により摩耗した場合には切れ刃部を交換するだけで良くなるため、使用コストを抑えることができる。さらに工具保持部の材料としてSCM440やSKD61等の合金鋼を用いることによって、製造コストを抑えることができる。
本発明の一実施例を示す超硬合金製エンドミルの全体概観図である。 図1の底刃近傍の拡大図である。 第1ギャッシュ面と平行な平面で切断したギャッシュ形状を簡易的に表す、図2のB−B´部分断面図である。 図1の外周刃A−A´断面の拡大図であり、(a)は波形状外周刃の拡大図を示し、(b)はニック付き外周刃としたときのニック付き外周刃の拡大図を示す。 従来の位相からのずれの無いエンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。 本発明の超硬合金製エンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。 本発明の一実施例を示し、隣接する波形状外周刃のうち1組の前記波形状外周刃は位相からのずれ量が無く、1刃に位相からのずれ量があることを示す展開図である。 従来の位相からのずれの無いエンドミルのニック付き外周刃の位相とニックのピッチを示す展開図である。 本発明の超硬合金製エンドミルのニック付き外周刃の位相とニックのピッチを示す展開図である。 本発明の一実施例を示し、隣接するニック付き外周刃のうち1組の前記ニック付き外周刃は位相からのずれ量が無く、1刃に位相からのずれ量があることを示す展開図である。 従来のエンドミルの位相を等間隔にした場合の切削抵抗図を示す。 従来のエンドミルに不等分割を採用した場合の切削抵抗図を示す。 本発明の超硬合金製エンドミルの切削抵抗図を示す。 本発明の一実施例を示し、切れ刃部と工具保持部が着脱できるエンドミルの全体概観図である。 従来のエンドミルを用いて彫り込み加工を行う場合と、本発明例で彫り込み加工を行う場合を比較したフローチャートを示す図である。 硬質皮膜の最上層及び硬質皮膜の最下層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。 硬質皮膜の最下層から、硬質皮膜の最上層まで実質的に最下層の組成と最上層の組成の1回以上の繰り返しで積層された複合層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。 硬質皮膜の最上層、硬質皮膜の最下層及び中間層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図18に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示す超硬合金製エンドミルの全体概観図である。以下に示す本発明の実施例は硬質皮膜は必ずしも必要ではないが、硬質皮膜を被覆したほうがより性能向上のために望ましい。図1に示すように、工具径Dで外周側に切り屑排出用の刃溝16と、刃数が4枚の外周刃1を有する例である。前記外周刃には工具先端側2からシャンク側3に向かって波形状外周刃が設けられている。前記刃数は、2枚以上であれば、位相をずらすことが可能であるため刃数は必要に応じて変え得る。例えば、アルミニウムなどの切削は切り屑排出が多いため刃数は2枚程度とし、切り屑排出用のチップポケットを大きめに設定し、また、高硬度材の切削は刃数を8枚まで増やし、高送りに対応することができる。
図2は、図1の底刃近傍の拡大図である。図2に示す本発明の超硬合金製エンドミルのギャッシュには、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面21、エンドミルの工具軸の回転中心側に第2ギャッシュ面22、エンドミルの外周側に第3ギャッシュ面23が設けられている。
図3は第1ギャッシュ面と平行な平面で切断したギャッシュ形状を簡易的に表す、図2のB−B´部分断面図である。なお、図3の斜線部は断面を示す。図3より第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部24と軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角25、第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部26と軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角27としたときに、第1ギャッシュ角25を15゜〜35゜、第2ギャッシュ角27は40゜〜60゜であり、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さ28は工具回転軸から工具径の5%以上20%未満とした。このことにより、工具回転軸中心付近は剛性が確保でき、外周側は大きなチップポケットで十分な空間ができ、切り屑づまりによる欠損が防止出来る。ここで、つなぎ部の長さ28とは、回転軸中心と第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部までの長さをいう。
本発明例の超硬合金製エンドミルにおいて、第1ギャッシュ角25は15°〜35°とし、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さ28は工具回転軸から工具径Dの5%以上20%未満とした。第1ギャッシュ角25を15°〜35°としたことにより、工具回転軸付近の剛性が確保でき、切り屑の排出性が良好になる。第1ギャッシュ角が15°未満の場合は、工具回転軸中心部付近のチップポケットが狭くなるため、切り屑づまりによる欠損が生じる。また、第1ギャッシュ角25が35°を超える場合、底刃の中心付近の剛性不足により欠損が生じる。
さらに第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さ28は工具回転軸から工具径の5%以上20%未満としたことにより、底刃の工具回転軸付近の剛性を確保し、外周の溝への切り屑の排出が良好になる。第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さ28が工具回転軸から工具径の5%未満の場合、第3ギャッシュ面23が工具回転軸付近より近く設けられることになり、底刃の工具回転軸付近の剛性が低くなり、底刃の工具回転軸付近での欠損が生じやすくなる。また、前記つなぎ部の長さ28が工具回転軸から20%以上の場合、底刃によって生成された切り屑が第2ギャッシュ面22に押し付けられる時間が長くなり、高速切削の場合、第2ギャッシュ面22に滞留して切り屑排出性が悪くなり、切り屑づまりが生じやすく底刃の欠損につながる。
次に、第2ギャッシュ角27を40゜〜60゜としたのは、縦送り切削及び傾斜加工の際に、底刃で生成された切り屑の排出性を検討した結果である。第2ギャッシュ角27が40°未満の場合、第2ギャッシュ面22に押し付けられた切り屑は、第3ギャッシュ面23によって外周の刃溝に流れにくく、工具の外側に飛ばされる。特に、エンドミルの縦送り加工においては、工具の外側はすべて加工穴の壁面であり、また、傾斜切削でも一部に加工済みの壁面があり、切り屑を工具外側へ排出することが困難となる。よって、第2ギャッシュ角27が40°未満の場合は、底刃から排出された切り屑は外周の溝への流れが悪くなり、切り屑づまりが生じやすくなる。また、第2ギャッシュ角27が60°を超えた場合、切り屑排出用のチップポケットは大きくなり、底刃によって生成された切り屑は外周の刃溝へ流れやすくなり、切り屑の排出は問題ないが、工具先端付近の剛性が弱くなるため、欠損が生じやすい。
前記のように第1ギャッシュ角25と第2ギャッシュ角27を設定することで、縦送り切削及び傾斜切削を行った際の、底刃で生成された切り屑の排出性が良好となる。このとき、底刃で生成された切り屑の排出性は、外周刃の形状によって影響を受けないため、外周刃がニック付き外周刃であるエンドミルを用いた場合においても、同様の効果が得られる。すなわち、本発明の超硬合金エンドミルは、特徴ある外周刃で横送り切削の振動の少ない高速切削が確保されると共に、従来のエンドミルでは問題になりうる縦送り切削での底刃で生成された切り屑の排出性も良好なので、傾斜切削での高速切削には特に適正な工具といえる。
図4は図1の外周刃A−A´断面の拡大図である。なお、図4(a)、(b)の斜線部は断面を示す。図4(a)は波形状外周刃の拡大図を示す。通常波形状刃形は図4のように波ピッチ4ごとに波高さ5の山部6と谷部7を繰り返した刃形であり、切り屑を細かく分断できる刃形となる。図4(b)はニック付き外周刃としたときのニック付き外周刃の拡大図を示す。ニック付き刃形においてもニックのピッチ8ごとにニックの深さ9の溝が入った形状を繰り返し、切り屑を分断出来る刃形となる。切り屑を分断することにより切削抵抗を抑制出来る効果がある。
本発明の超硬合金製エンドミルと従来のエンドミルの波形状外周刃の位相と波ピッチを比較するために図5〜図7を用いて説明をする。図5は従来の位相からのずれの無いエンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図、図6は本発明の超硬合金製エンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図、図7は、本発明の一実施例を示し、隣接する波形状外周刃のうち1組の前記波形状外周刃は位相からのずれ量が無く、1刃に位相からのずれ量があることを示す展開図である。尚、図5〜図7では山部の位置を丸印で示している。
図5のように、従来のエンドミルでは図の一番上に示される第1波形状外周刃を基準形状外周刃10として、基準形状外周刃10の山部6から次の山部6までの波ピッチ4(ニック付きの場合は外周刃とニックの交点から次の外周刃とニックの交点までをニックのピッチ8とする。)を4等分したそれぞれの位相14(言い換えれば、基準形状外周刃10の1/4ピッチごと)に、連続して次の第2波形状外周刃11、第3波形状外周刃12及び第4波形状外周刃13の山部6が来るように等間隔に波形状外周刃がそれぞれ配置されている。このような配置は波形状外周刃の山部6の位相14が一定であり、エンドミルによって切削される被加工材の切削量は各波形状外周刃で同一となる。各刃で切削される被加工材の切削量が同一であれば、従来技術で説明した等分割エンドミルと同様に、加工中に共振が起こり、びびり振動が生じやすい。
これに対して、本発明では図6に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2波形状外周刃11と第4波形状外周刃13の山部6の位置は、基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列されている。そして、基準形状外周刃10以外の波形状外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃が基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10の波ピッチ4の0%を含まない5%以下の範囲の幅で工具軸方向へ配設されている。図6の本発明の超硬合金製エンドミルの一例として、基準形状外周刃10の波ピッチ4を1mmとし4枚の刃数で割った値で等間隔に並んだそれぞれの波形状外周刃の位相14のずれ量15は、第2波形状外周刃11は波ピッチ4の2%である0.02mm、第3波形状外周刃12では0mm、第4波形状外周刃13では波ピッチ4の2%である0.02mmの位相からのずれがある。ここでずれ量15はプラスを工具シャンク側3の方向とし、マイナスを工具先端側2の方向とする。
また、本発明の第2発明での実施例では図7に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2波形状外周刃11の山部6の位置は、基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列され、隣接する第3波形状外周刃12と第4波形状外周刃13の位相からのずれ量が無いように配列されている。そして、基準形状外周刃10以外の波形状外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃が基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10の波ピッチ4の0%を含まない5%以下の範囲の幅で工具軸方向へ配設されている。
1刃だけがずれ量15を有する例として、小径エンドミルでの被加工材を溝切削する場合、切屑排出の確保のため刃数が奇数となる3枚刃を用いることが多く、この場合には特許文献1に記載のエンドミルの仕様では、互いの隣接する外周刃の位相14のずれ量15はすべて異ならせることとなるが、本発明を用いれば、1刃だけの位相14のずれ量15を異ならせることでよい。更に、刃数が奇数となる5枚刃の場合においても、前記特許文献1のエンドミルの仕様では、基準形状外周刃10からの位相14のずれ量15は2つの種類が必要となる。しかしながら、本発明では1つの種類の位相14のずれ量15だけでも、びびり振動の抑制と共に、高速切削による高能率加工が可能となり、さらに長寿命に加工が行える。このことは、後で述べる実施例においても確認している。
本発明の超硬合金製エンドミルでは、上記で述べたように波形状外周刃の山部の位置にずれ量があると、エンドミルで被加工材を切削する各刃の切削量は不均一になり、びびり振動抑制効果が発揮される。図11〜図13を用いて、従来の位相からのずれの無いエンドミルと本発明の超硬合金製エンドミルの切削抵抗を測定し、びびり振動を比較した説明をする。
図11は従来のエンドミルの位相を等間隔にした場合の切削抵抗図を示す。図12は従来のエンドミルに不等分割を採用した場合の切削抵抗図を示す。図13は本発明の波ピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から、本発明の望ましい範囲である前記波ピッチ4の2%のずれ量で工具軸方向にずらした超硬合金製エンドミルで切削した切削抵抗図を示す。
被加工材は構造用鋼を用い、測定に使用したエンドミルは工具径Dが8mmで、4枚刃の超硬合金製とし、切削条件はN=8000回転/min(Vc=200m/min) Vf=3000mm/min(fz=0.09mm/tooth) 軸方向切り込み8mmの溝切削にてデータを採取した。切削抵抗波形の振幅量によりびびり振動を確認した。
従来の位相からのずれの無いエンドミルでは、図11で示す振幅量は251.9N(ニュートン)であった。このことは、切削時の回転数に刃数を掛けた周期で切削力が掛かり、この周期の周波数で共振が起こりびびり振動に繋がる。特に高速切削においては共振が生じやすく、びびり振動が大きくなる。図12で示す不等分割を採用した従来のエンドミルでの振幅は151.9Nであった。図13の本発明例は146.1Nであり、本発明例を採用したエンドミルの切削抵抗波形の振幅が共振を防いだことにより、最も小さくなった。
本発明の第1発明は、工具の外周刃の径方向に山部と谷部を繰り返す複数の波形状外周刃を有するエンドミルにおいて、ある波形状外周刃を基準波形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の波形状外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれている超硬合金製エンドミルを用いれば、各外周刃の1刃当たりの切削量が僅かづつに異なる。よって、高速切削を行っても切削抵抗が分散されて切削負荷が安定し、びびり振動を抑制できる。ここで、それぞれの位相からのずれ量を波ピッチの0%を含まない5%以下としたのは、位相のずれ量が5%を超えて大きくなるとそれぞれの外周刃の切削量が大きく異なるため、位相が最も大きい外周刃に集中し、負荷が大きくなって工具の折損や波形状外周刃のチッピングが生じ、エンドミル全体としての寿命が短くなるためである。
特許文献1では、前記位相からのずれ量が約6%の高速度工具製エンドミルで切削した例が紹介されている。このずれ量と同様の比率で本発明が対象とする超硬合金を母材としたエンドミルを用いて高速切削を行うと、切削負荷の変動が大きく、ずれ量が最も大きい波形状外周刃はチッピングを起こしてしまう。靭性の高い高速度工具鋼を母材にしたエンドミルを用い、切削速度が80m/min以下の低い条件で、鋳鉄など被削性の良い被加工物を加工すれば、問題なく加工できるが、さらなる高能率加工を行うために超硬合金製エンドミルを用いた場合、前記位相からのずれ量が6%では大きすぎ、チッピングや欠損などの問題となる。このことは、後で述べる実施例においても確認している。
現在の金型や部品の加工現場では熱処理されていない非調質鋼は当然ながら、40HRCを超える焼き入れ材でも加工ができるエンドミルが当然のように求められている。このニーズに対しては、もはや高速度工具鋼製のエンドミルはいかなる形状であろうとも極端に工具寿命が短くなり、対応が困難である。本発明は、このような加工現場で常識化している高硬度材の切削や高能率加工を行うために、最適な波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相をずらした超硬合金製エンドミルとして、高速切削での欠損やチッピングが生じない位相ずらし量を特徴とするものである。本発明ではこの位相ずらし量の詳細な検討の結果、前記の位相の軸方向への等間隔の配置からのずれ量は5%以下とした。好ましくは各外周刃は、基準形状外周刃のそれぞれの等間隔の位相の配置から前記波ピッチの2%〜3%のずれ量の幅で工具軸方向にずれていることが望ましい。
特に切削が不安定になりやすい傾斜切削を高速切削による高能率な安定加工を行うには、切り屑の排出性と工具剛性を両立する必要がある。切り屑の排出性を重視すれば、工具剛性が劣り、欠損や折損などが生じやすくなる。また、工具剛性を重視すると切り屑の排出性が劣り、欠損や折損などが生じやすくなる。本発明は、切り屑の排出性を重視した刃型でも、外周刃の波形状を最適な配列として、びびり振動が抑制できるため、欠損や折損などが生じにくく、安定した高能率な傾斜切削が行える。従来のエンドミルであれば、傾斜角度が大きくても5°程度で行う傾斜切削であったが、本発明の超硬合金製エンドミルであれば、傾斜角度が20°以上での傾斜切削が可能である。このことは、次に述べるニック付き外周刃でも同様のことがいえる。
次にニック付き外周刃としたときの本発明の超硬合金製エンドミルについて説明する。図8〜図10は、本発明超硬合金製エンドミルと従来のエンドミルのニック付き外周刃の位相とニックのピッチを比較するための展開図を示す。図8は従来の位相からのずれの無いエンドミルのニック付き外周刃の位相とニックのピッチを示す展開図、図9は本発明超硬合金製エンドミルのニック付き外周刃の位相とニックのピッチを示す展開図、図10は、本発明の一実施例を示し、隣接するニック付き外周刃のうち1組の前記ニック付き外周刃は位相からのずれ量が無く、1刃に位相からのずれ量があることを示す展開図である。尚、図8〜図10では外周刃とニックの交点の位置を丸印で示している。
図8のように、従来のエンドミルでは図の一番上に示される第1ニック付き外周刃を基準形状外周刃10として、基準形状外周刃10のニックのピッチ8(ニック付きの場合は外周刃とニックの交点20から次の外周刃とニックの交点20までをニックのピッチ8とする。)を4等分したそれぞれの位相14(言い換えれば、基準形状外周刃10の1/4ピッチごと)に、連続して次の第2ニック付き外周刃17、第3ニック付き外周刃18及び第4ニック付き外周刃19の外周刃とニックの交点20が来るように等間隔にニック付き外周刃がそれぞれ配置されている。このような配置はニック付き外周刃の外周刃とニックの交点20の位相14が一定であり、エンドミルによって切削される被加工材の切削量は各ニック付き外周刃で同一となる。各刃で切削される被加工材の切削量が同一であれば、従来技術で説明した等分割エンドミルと同様に、加工中に共振が起こり、びびり振動が生じやすい。
これに対して、本発明では図8に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2ニック付き外周刃17と第4ニック付き外周刃19の外周刃とニックの交点20の位置は、基準形状外周刃10のニックのピッチ8を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列されている。そして、基準形状外周刃10以外のニック付き外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃が基準形状外周刃10のニックのピッチ8を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10のニックのピッチ8の0%を含まない5%以下の範囲のずれ幅で工具軸方向へ配設されている。図9は本発明の超硬合金製エンドミルの一例であり、基準形状外周刃10のニックのピッチ8を1mmとし4枚の刃数で割った値で等間隔に並んだそれぞれのニック付き外周刃の位相14のずれ量15は、第2ニック付き外周刃17はニックのピッチ8の2%である0.02mm、第3ニック付き外周刃18では0mm、第4ニック付き外周刃19ではニックのピッチ8の2%である0.02mmの長さの位相からのずれがある。ここでずれ量15はプラスを工具シャンク側3の方向とし、マイナスを工具先端側2の方向とする。
また、本発明では図11に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2ニック付き外周刃17の外周刃とニックの交点20の位置は、基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列され、隣接する第3ニック付き外周刃18と第4ニック付き外周刃19の位相からのずれ量が無いように配列されている。そして、基準形状外周刃10以外のニック付き外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃が基準形状外周刃10のニックのピッチ8を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10のニックのピッチ8の0%を含まない5%以下の範囲のずれ量で工具軸方向へ配設されている。
また、前述した波形状外周刃が設けられた本発明の超硬合金製エンドミルの1刃だけがずれ量15を有する例と同様に、刃数が奇数となる場合においても、1刃だけの位相14のずれ量15を異ならせることで、びびり振動の抑制と共に、高速切削による高能率加工が可能となり、さらに長寿命に加工が行える。
本発明のニック付き外周刃とした場合の超硬合金製エンドミルの、それぞれの位相14のずれ量15をニックのピッチ8の0%を含まない5%以下としたのは、前記ずれ量15が5%を超えて大きい場合は、それぞれの外周刃の切削量が大きく異なるため、位相14が最も大きい外周刃に集中し、負荷が大きくなって工具の折損やニック付き外周刃にチッピングが生じ、エンドミル全体としての寿命が短くなるためである。好ましくは基準形状外周刃のそれぞれの位相14から前記ニックのピッチ8の2%〜3%の幅で工具軸方向にずれていることが望ましい。
このような本発明のニック付き外周刃とした場合の超硬合金製エンドミルを用いて切削した時の各ニック付き外周刃の切削量は僅かづつ異なる。よって、高速切削を行っても切削抵抗が各外周刃に分散されて切削負荷が安定し、びびり振動を抑制できるため、波形状外周刃を有する超硬合金製エンドミルと同様の効果が得られる。
図14は本発明の一実施例を示し、切れ刃部と工具保持部が着脱できるエンドミルの全体概観図である。超硬合金製の切れ刃部29を工具保持部30から分離可能な着脱式にすることにより、切れ刃が切削加工により摩耗した場合には切れ刃部29を交換するだけで良くなるため、使用コストを抑えることができる。工具保持部30の材質は切れ刃部29と同じ超硬合金でも良いが、工具保持部30の材質をSCM440やSKD61等の合金鋼を用いることによって、製造コストを抑えることが可能となる。
図15は従来の彫り込み加工を行う場合と、本発明例で彫り込み加工を行う場合を比較したフローチャートを示す図である。従来の方法でポケット形状の彫り込み加工を行う場合、まずドリルで穴加工を行う。その後工具交換し、段取りを行いエンドミルで繰り広げ加工となる。本発明例の形状の新規なエンドミルを用いると、従来のエンドミルに比べ傾斜角が20°以上となる高能率な傾斜切削での加工が可能であるため、工具交換なしでポケット加工が可能となる。本発明の切削加工方法によれば、1本のエンドミルで縦送り切削、傾斜切削及び横送り切削を組み合わせて加工できるため、段取りの工数を減らし、大幅に工程を短縮することが出来る。
次に、本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する代表的な硬質皮膜の種類について説明する。本発明はエンドミルの形状として新規な形状を有するので、それのみでも従来のエンドミルより高速化できるという効果を発揮するが、硬質皮膜を被覆することで、実施例に示すようにさらに性能が向上する。硬質皮膜は耐酸化性重視ではTiN系の皮膜が、耐摩耗性重視ではTiCN系の皮膜が選択できる。しかし、本発明のエンドミルの使用環境は刃先温度が800℃以上に上昇する条件であり、この場合には前述のTiNやTiCNより酸化開始温度で評価される耐酸化性と硬度特性に優れたTiAlN系の硬質皮膜を選択すると良い。
TiAlN系の硬質皮膜では、TiとAlの組成比によって酸化開始温度を制御でき、刃先温度が800°乃至900°前後の条件にはAlの添加量を増加して、金属のみの成分の原子比でAlがTiに対して50乃至70%程度とするのが望ましい。TiAlN系とは窒化物を意味するが、TiやAl以外の非金属元素として、窒素単独にかかわらず、TiとAlを主成分とした化合物として窒化物、炭窒化物(例えば(TiAl)CN)、酸窒化物(例えば(TiAl)ON)、酸炭窒化物(例えば(TiAl)CON)であればよい。以下、これらの化合物を総称して、窒素系TiAl化合物という。
図16は硬質皮膜の最上層及び硬質皮膜の最下層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。図16における下側が母材36であり、母材36に硬質皮膜の最下層32、硬質皮膜の最上層31の2層からなる硬質皮膜が被覆されている。
図17は硬質皮膜の最下層から、硬質皮膜の最上層まで実質的に最下層の組成と最上層の組成の1回以上の繰り返しで積層された複合層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。図17における下側が母材36であり、母材36に硬質皮膜の最下層32、硬質皮膜の最上層と同じ組成を有する皮膜34、硬質皮膜の最下層と同じ組成を有する皮膜33、硬質皮膜の最上層31の4層からなる硬質皮膜が被覆されている。硬質皮膜の最上層と同じ組成を有する皮膜34及び硬質皮膜の最下層と同じ組成を有する皮膜33は交互に複数回繰り返されるような複合層としても良い。
図18は硬質皮膜の最上層、硬質皮膜の最下層及び中間層からなる本発明の硬質皮膜被覆エンドミルに適する硬質皮膜の層構造の一例を示す図である。図18における下側が母材36であり、母材36に硬質皮膜の最下層32、中間層35、硬質皮膜の最上層31の3層からなる硬質皮膜が被覆されている。
硬質皮膜の層構造としては、母材に接する硬質皮膜の最下層から、硬質皮膜の最上層まで実質的に最下層の組成と最上層の組成の1回以上の繰り返しで積層された複合層、または、前記最下層と最上層の間に一層以上の中間層を含む複合層でなり、皮膜の最下層の組成が金属元素としてTiとAlを主成分とし含有し、前記金属元素の窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物の何れかであり、皮膜の最上層の組成が、Siを含有した硬質皮膜を被覆することにより、より安定した切削加工が可能になり、長寿命化が達成できる。より具体的な化合物は金属元素としてTiとSiを主成分として含有し、前記金属元素の窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物の何れかから成る構造が望ましい。
Siを含有した最上層用の硬質皮膜の中でも最適な硬質皮膜の成分系はTiSiの窒化物であり、Si含有量が原子比で5〜30%、残Tiで構成された窒化物が良い。また、Si含有量が原子比で1〜15%、残TiおよびもしくはCr、Alから選択されるTiAlSiの窒化物、AlCrSiの窒化物でも本発明のエンドミルの性能を大きく改善する効果を発揮する。さらにTiSiの窒化物、TiAlSiの窒化物、AlCrSiの窒化物から選択される積層膜はより、優れた耐久性を発揮する。これら硬質皮膜はTiN、CrN、TiAlN、AlCrN等の皮膜から選択される1種以上の皮膜と積層しても同様に本発明のエンドミルの切削性能が向上する。
上記に具体的な組成として挙げた硬質皮膜の製造方法は物理蒸着法であることが耐久性向上の観点から好ましく、アーク放電式イオンプレーティング法、スパッタリング法の何れでも良い。この硬質皮膜は、ニック付きのエンドミル外周刃にも適用できる。
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、それらにより本発明が限定されるものではない。
以下の表中にある各実施例では、本発明、従来例、比較例を区分として示し、試料番号は本発明例、従来例、比較例ごとに、連続の通し番号で記載した。
(実施例1)
実施例1は本発明である第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面を有する超硬合金製エンドミルで、ギャッシュの最適な形状を確認するために行った実施例である。また、従来の超硬合金製エンドミルである第3ギャッシュ面の無いもの、特許文献1に記載の超硬合金製エンドミルであるギャッシュノッチ角を規定したもの、及び特許文献2に記載の超硬合金製エンドミルである外周側のギャッシュ角を回転中心側のギャッシュ角より大きく設けたものと比較した。
本発明例1〜12、従来例1〜3、比較例1〜6においては母材はCo含有量が8重量パーセント、WC平均粒径が0.8μmの超硬合金で、工具径8mm、刃長16mm、全長70mm、シャンク径8mmで刃数は4枚とした。外周刃の形状は波刃形とし、波ピッチを1mmで、ねじれ角は45°とし、用いたエンドミルはすべて(TiAl)N系にSiを含有させた硬質皮膜(以下(TiAlSi)Nとも記載する)を工具表面に施した。
また、外周刃は波形状外周刃とし、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmとした。
本発明例1〜5及び比較例1、2は、第2ギャッシュ角を50°、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の9%とした0.72mmとし、第1ギャッシュ角を本発明例1〜5において15°、20°、25°、30°、35°、比較例1、2において10°、40°とした。
本発明例6〜9及び比較例3、4は、第1ギャッシュ角を25°、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の9%とした0.72mmとし、第2ギャッシュ角を本発明例6〜9において40°、45°、55°、60°、比較例3、4において35°、65°とした。
本発明例10〜12及び比較例5〜6は、第1ギャッシュ角を25°、第2ギャッシュ角を50°とし、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは本発明例10〜12において工具回転軸から工具径の5%、10%、15%、比較例5〜6において工具回転軸から工具径の0%、3%とした。なお、以下のすべての実施例において、前記つなぎの長さの工具径に対する割合(%)を「比率」としてその数値を表に記載している。
従来例1として、第1ギャッシュ角が25°で第3ギャッシュ面がないもの、従来例2として、特許文献2に記載のものと同仕様として第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の20%とした1.6mmで、第1ギャッシュ角が25°、第2ギャッシュ角が50°のもの、従来例3として、特許文献1の図1に記載のものと同仕様として第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の23.5%とした1.76mmで、第1ギャッシュ角が25°、第2ギャッシュ角が50°のものを作製した。
実施例1の切削加工として、本発明の超硬合金製エンドミルを含む前記21種類のエンドミルで、硬さHRC40のプリハードン鋼を被加工材として幅50mm、長さ50mm、深さ24mmの凹形状を加工した。切削加工は、一本のエンドミルで傾斜切削も横送り切削も連続して可能であるかを確認するために、傾斜切削で深さ8mmまで切削し、次に横送りで繰り広げて幅50mm、長さ50mmまでの切削を3回繰り返し、深さ24mmまで加工する方法で比較した。従来HRC40の被加工材を切削する場合は切削速度は100m/minでも高速であるが、本実施例での切削条件は回転数をさらに上げて6000回転/min(切削速度150m/min)、送り速度を1920mm/min(1刃送り量0.08mm)とし、軸方向切り込みを8mm、径方向切り込みを2mm、傾斜切削時の送り速度は1200mm/minとし、傾斜角10°とした。
評価として、前記形状が1個加工できたものを良好とし、加工終了後にエンドミルが欠損及び加工途中で折損したものはその結果を記録した。その結果を表1に示す。
Figure 0004694647
結果として、本発明例1〜12は切り屑づまりがなく、傾斜切削・横送り切削共に安定した加工が行えた。しかし、従来例1は第3ギャッシュ面が無いため、底刃のチップポケットが狭く切り屑詰まりが生じ、加工開始直後の傾斜切削時に折損した。従来例2、3は凹形状を1個加工できたが、第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが長く、切り屑づまりにより底刃の工具回転軸付近から大きく欠損していた。比較例1は第1ギャッシュ角が10°と小さいため、底刃のチップポケットが狭く切り屑づまりが生じ、加工開始直後の傾斜切削時に折損した。比較例2は第1ギャッシュ角が40°と大きく、剛性不足により、横送り時に底刃外周付近が大きく欠損した。比較例3は第2ギャッシュ角が35°と小さいため、切り屑が外周の刃溝に流れにくく、切り屑詰まりにより、横送り時に外周刃が欠損した。比較例4は第2ギャッシュ角が65°と大きく、剛性不足により横送り時に外周刃が底刃から大きく欠損した。比較例5及び6は第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さが短いため、底刃の工具軸中心付近の剛性がなく、加工終了後に欠損していた。
(実施例2)
実施例2は外周刃の最適な位相のずれ量の検討を行った実施例である。本発明例13〜17、従来例4〜7、及び比較例7はいずれも第1ギャッシュ角を25°、第2ギャッシュ角を50°、中心からのつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の9%の0.72mmとして仕様を統一した。
本発明例13は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの1%とした0.01mm、第3波形状外周刃は波ピッチの1%とした0.01mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
本発明例14は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
本発明例15は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第4波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mmのものを作製した。
本発明例16は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの5%とした0.05mm、第3波形状外周刃は波ピッチの4%とした0.04mm、第4波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mmのものを作製した。
本発明例17は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
従来例4は、波形状外周刃の位相からのずれ量の無いものを作製した。
従来例5は、波形状外周刃の位相からのずれ量が無いが、各外周刃の切れ刃の分割角度を85°、95°、85°、95°とし、外周刃の配列が不等分割としたものを作製した。
従来例6は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第3波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
従来例7は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第3波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
比較例7は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第3波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmのものを作製した。
本発明例13〜17、従来例4〜6、比較例7においては母材はCo含有量が8重量パーセント、WC平均粒径が0.8μmの超硬合金で、従来例7においては母材は高速度工具鋼とした。工具の形状の基本仕様としては、全てのエンドミルで工具径8mm、刃長16mm、全長70mm、シャンク径8mmで刃数は4枚とした。また、外周刃の形状は波刃形とし、波ピッチを1mmで、ねじれ角は45°とし、用いたエンドミルはすべて(TiAl)N系にSiを含有させた硬質皮膜を施した。
被加工物・切削条件・加工形状は実施例1と同様で、評価として実施例1と同様に行い、凹形状を1個加工終了時に底刃の摩耗幅の測定を行い記録した。高速度工具鋼製である従来例7については、超硬合金製よりはるかに切削条件を緩和して、切削条件は回転数を1200回転/min(切削速度30m/min)、送り速度を150mm/min(1刃送り量0.03mm)とし、軸方向切り込みを8mm・径方向切り込みを2mmとした。傾斜切削時の送り速度は70mm/minとし、傾斜角10°とした。これらの結果を併せて表2に示す。
Figure 0004694647
結果として、本発明例13〜17は安定した加工ができ、凹形状を1個加工できた。特に位相のずれ量が2〜3%のものは、摩耗幅が0.1mm以下と小さい値であった。すなわち、本発明で位相のずれ量を最適化したものは、一本のエンドミルで傾斜切削も横送り切削も連続して可能であることを確認できた。
従来例4は最適なギャッシュ形状であるにも関わらず、横送り時にびびり振動が生じ、外周刃凹形状1個加工後に底刃が欠損していた。従来例5は、不等分割により、びびり振動は抑制でき、凹形状を1個加工できたが、傾斜切削時に底刃によって生成された切り屑が小さい外周の刃溝にたまり、チッピングが生じた。従来例6として、位相のずれ量が6%と大きいため、負荷の最も大きくなる外周刃にチッピングが生じていた。従来例7は高速度工具鋼製であるため、工具剛性が弱く、切削開始直後の傾斜切削時に折損した。比較例7は従来例6と同様に位相からのずれ量が6%と大きいため、負荷の最も大きくなる外周刃にチッピングが生じていた。
(実施例3)
実施例3は従来のエンドミルとの対比で本発明の超硬合金製エンドミルの送り限界テストを行った実施例である。本発明例18として、実施例1の本発明例3と同仕様のもの、従来例8として、実施例1の従来例3と同仕様のもの、従来例9として実施例2で用いた従来例5と同仕様の不等分割品のエンドミルを使用し、被加工材を構造用鋼として横送りにて送り限界テストを行った。本発明例18、従来例8〜9においては母材はCo含有量が8重量パーセント、WC平均粒径が0.8μmの超硬合金とした。工具の形状の基本仕様としては工具径8mm、刃長16mm、全長70mm、シャンク径8mmで刃数は4枚とした。また、外周刃の形状は波刃形とし、波ピッチを1mmで、ねじれ角は45°とし、用いた試料はすべて(TiAl)N系にSiを含有させた硬質皮膜を施した。
切削条件は回転数を8000回転/min(切削速度200m/min)、送り速度を2800mm/min(1刃送り量0.09mm)とし、軸方向切り込みを4mmの溝切削とした。評価は1m切削ごとに350mm/min送り速度を上げていき途中折損したところを記録した。加工後に問題がなければ○を記し、折損または各送り速度で1m切削後に欠損又はチッピングが生じていれば×を記し、送り速度4200mm/min以上で切削を行い、問題がなかったものは評価を「良好」とした。結果を表3に示す。
Figure 0004694647
結果として、本発明例18は送り速度が4200mm/minまで問題なく加工できたのに対し、従来例8は送り速度が2800mm/min時に欠損、従来例9は送り速度が3150mm/min時に折損した。本発明を適用したエンドミルは従来のエンドミルより、1.5倍以上の送り速度で加工することができた。
(実施例4)
実施例4として、本発明によるエンドミルと、外周刃の配列を不等分割にする従来のエンドミルについて、製造時の研削時間の比較を行った。不等分割品に関しては刃溝研削において、分割角度を調整するため研削時間が多くなり、さらに、ランド幅を均一にするための、研削する箇所が多くなり研削時間が多くなる。ここでは、特に研削時間の大きく異なる刃溝研削の時間を測定して比較した。エンドミルの対象は、実施例1で用いた本発明例1と、不等分割を採用した実施例2で用いた従来例5のエンドミルとして、これらを製作するときの1本当たりの刃溝研削の研削時間の測定を行った。結果を表4に示す。
Figure 0004694647
研削にかかる時間の調査の結果として、外周刃の不等分割品(従来例5)に関しては刃溝研削で切れ刃の分割角を調整するため、研削時間が多くなり、さらに、ランド幅を均一にするための、研削する箇所が多くなり研削時間が多くなる。従来例5の不等分割品に関しては本発明例1より研削時間が1.4倍となった。これはエンドミル一本の研削時間であり、工業的に例えばエンドミルを1000本作って比較するとなると、不等分割にした場合は本発明より66時間余りも多く工数が必要となる計算である。
(実施例5)
実施例5は実施例2と同様に、ニック付き外周刃で最適な位相のずれ量の検討を行った実施例である。本発明例19〜23、従来例10〜13、比較例8は第1ギャッシュ角を25°、第2ギャッシュ角を50°、中心からのつなぎ部の長さが工具回転軸から工具径の9%の0.72mmとして仕様を統一した。
本発明例19は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの1%とした0.01mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの1%とした0.01mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
本発明例20は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
本発明例21は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの3%とした0.03mmのものを作製した。
本発明例22は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの5%とした0.05mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの4%とした0.04mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの3%とした0.03mmのものを作製した。
本発明例23は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
従来例10は、ニック付き外周刃の位相からのずれ量の無いものを作製した。
従来例11は、ニック付き外周刃の位相からのずれ量が無いが、各切れ刃の分割角度を85°、95°、85°、95°と異なるようにして、不等分割としたものを作製した。
従来例12は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの6%とした0.06mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
従来例13は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの6%とした0.06mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの2%とした0.02mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
比較例8は、第1刃を基準形状外周刃として、それぞれのニック付き外周刃の位相の前記ずれ量を第2ニック付き外周刃はニックのピッチの6%とした0.06mm、第3ニック付き外周刃はニックのピッチの6%とした0.06mm、第4ニック付き外周刃はニックのピッチの0%とした0mmのものを作製した。
上に述べた本発明例19〜23、従来例10〜12、及び比較例8においては、母材はCo含有量が8重量パーセント、WC平均粒径が0.8μmの超硬合金として、従来例13においては母材は高速度工具鋼とした。工具形状の基本仕様としては全てのエンドミルで工具径8mm、刃長16mm、全長70mm、シャンク径8mmで刃数は4枚とした。また、外周刃の形状はニック付き外周刃とし、ニックのピッチを1mmで、ねじれ角は45°とし、用いたエンドミルははすべて(TiAl)N系にSiを含有させた硬質皮膜を工具表面に施した。
被加工物・切削条件・加工形状は実施例1と同様で、評価として実施例1と同様に行い、凹形状を1個加工終了時に底刃の摩耗幅の測定を行い記録した。高速度工具鋼製である従来例13については、超硬合金製よりはるかに切削条件を緩和して、切削条件は回転数を1200回転/min(切削速度30m/min)、送り速度を150mm/min(1刃送り量0.03mm)とし、軸方向切り込みを8mm・径方向切り込みを2mmとした。傾斜切削時の送り速度は70mm/minとし、傾斜角10°とした。これらの結果を併せて表5に示す。
Figure 0004694647
結果として、本発明例19〜23は被加工材が横送り切削と傾斜切削を含むものであったが安定した加工ができ、凹形状を1個加工できた。特に外周刃の位相のずれ量が2〜3%のものは、摩耗幅が0.1mm以下と小さい値であった。従来例10は最適なギャッシュ形状であるにも関わらず、横送り時にびびり振動が生じ、外周刃凹形状1個加工後に底刃が欠損していた。従来例11は、不等分割により、びびり振動は抑制でき、凹形状を1個加工できたが、傾斜切削時に底刃によって生成された切り屑が小さい外周の刃溝にたまり、チッピングが生じた。従来例12として、位相からのずれ量が6%と大きいため、負荷の最も大きくなる外周刃にチッピングが生じていた。従来例13は高速度工具鋼製であるため、工具剛性が小さく、切削開始直後の傾斜切削時に折損した。比較例10は従来例12と同様に位相からのずれ量が6%と大きいため、負荷の最も大きくなる外周刃にチッピングが生じていた。波形状外周刃を有するエンドミルで行った実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例6)
実施例6では、本発明例と従来の方法でポケット形状の彫り込み加工を行い加工時間(段取り時間を含む)の比較を行った。本発明の切削加工方法に用いた工具は本発明例3と同仕様のものを用いた。従来の切削加工方法に用いた工具は刃長が25mmとし、その他の仕様は従来例1と同仕様のものを用いた。
加工形状は実施例1と同様であり、本発明の超硬合金製エンドミルによる本発明の加工方法と従来の加工方法で、炭素鋼を被加工材として幅50mm、長さ50mm、深さ24mmの凹形状のポケット切削加工の結果を比較した。本発明例での切削加工は、実施例1と同様に、傾斜切削で深さ8mmまで切削し、次に横送りで繰り広げて幅50mm、長さ50mmとなる切削を3回繰り返し、深さ24mmまで加工し、従来の方法はドリルを用いて中心部に深さ24mmまで穴をあけ、その後エンドミルで繰り広げる方法で比較した。
本発明例のエンドミルによる本発明の加工方法は、横送り切削および傾斜切削の2種の切削を連続して行う切削加工方法である。切削条件は6000回転/min(切削速度150m/min)、送り速度を1920mm/min(1刃送り量0.08mm)とし、軸方向切り込みを8mm、径方向切り込みを4mm、傾斜切削時の送り速度は1200mm/minとし、傾斜角は20°とした。
従来方法ではエンドミルでの傾斜切削は大きくても傾斜角度が5°程度であるため、加工時間が掛かってしまう。したがって、従来方法ではドリルで下穴の加工を行い、エンドミルを用いて繰り広げて加工を行う。従来方法のエンドミルの切削条件は4000回転/min(切削速度100m/min)、送り速度を1280mm/min(1刃送り量0.08mm)とし、軸方向切り込みを8mm、径方向切り込みを1mmとした。
評価方法は本発明例と従来方法において、ポケット形状の彫り込み加工を行うための各工程にかかった時間を計測し、その合計時間が10分以下となる方法を良好とした。評価結果を表6に示す。
Figure 0004694647
結果として、本発明例である切削加工方法は、1本の工具で傾斜角が20°となる高能率な傾斜切削と高能率な横送り切削が可能なため、合計時間は10分以下である7分で完了し、従来方法の約1/3の短時間で加工することが出来た。
これに対し、従来のエンドミルは傾斜切削が可能な傾斜角が大きくても5°程度であるため、従来方法ではドリルで穴あけを行ってからエンドミルにて繰り広げ加工を行う方法を用いた。しかし従来のエンドミルは切削条件を高く設定することが出来ないため、ドリルでの段取り及び加工時間や、従来のエンドミルの加工時間から発生する時間のロスが蓄積し、合計時間は20分となった。
金型加工や部品加工などの加工分野では、縦送り加工、横送り加工、及びその複合加工である傾斜加工などの荒切削から中仕上げの切削加工は必須である。従来のエンドミルの切削では、これらの加工は別々のエンドミルで行なわれていたが、本発明の超硬合金製エンドミル及びそれを用いた切削加工方法によれば、一本のエンドミルでこれらの切削加工が可能であり、しかも、高能率の加工が行える。
被削対象材としてステンレス鋼、耐熱鋼、超耐熱合金、及びチタン合金などのエンドミルの荒加工では従来のエンドミルと比較して1.5倍程度以上の高能率加工が要望されている。さらに切削の現場では、HRC40程度以上の調質材や焼入材の加工はもはや常識化してきている。本発明はこのような難加工材や高硬度材の高速加工の市場のニーズにも応じられる新しい超硬合金製エンドミルを提供するものである。
1 外周刃
2 工具先端側
3 工具シャンク側
4 波ピッチ
5 波高さ
6 山部
7 谷部
8 ニックのピッチ
9 ニックの深さ
10 基準形状外周刃
11 第2波形状外周刃
12 第3波形状外周刃
13 第4波形状外周刃
14 位相
15 ずれ量
16 刃溝
17 第2ニック付き外周刃
18 第3ニック付き外周刃
19 第4ニック付き外周刃
20 外周刃とニックの交点
21 第1ギャッシュ面
22 第2ギャッシュ面
23 第3ギャッシュ面
24 第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部
25 第1ギャッシュ角
26 第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部
27 第2ギャッシュ角
28 つなぎ部の長さ
29 切れ刃部
30 工具保持部
31 硬質皮膜の最上層
32 硬質皮膜の最下層
33 硬質皮膜の最下層と同じ組成を有する皮膜
34 硬質皮膜の最上層と同じ組成を有する皮膜
35 中間層
36 母材
D 工具径

Claims (6)

  1. 底刃と、複数の外周刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュとを有する超硬合金製エンドミルであって、前記複数のギャッシュ面は、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面、エンドミルの工具軸の回転中心側に設けられた第2ギャッシュ面、及びエンドミルの外周側に設けられた第3ギャッシュ面を設け、前記第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角、前記第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角としたとき、第1ギャッシュ角は15゜〜35゜、第2ギャッシュ角は40゜〜60゜に設けられ、前記外周刃には径方向に山部と谷部を繰り返す複数の波形状外周刃を有し、ある波形状外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の波形状外周刃は、その位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれて設けられ
    前記第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具回転軸から工具径の5%以上20%未満であることを特徴とする超硬合金製エンドミル。
  2. 底刃と、複数の外周刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュとを有する超硬合金製エンドミルであって、前記複数のギャッシュ面は、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面、エンドミルの工具軸の回転中心側に設けられた第2ギャッシュ面、及びエンドミルの外周側に設けられた第3ギャッシュ面を設け、前記第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角、前記第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角としたとき、第1ギャッシュ角は15゜〜35゜、第2ギャッシュ角は40゜〜60゜に設けられ、前記外周刃には径方向に切り屑を分断させる複数のニック付き外周刃を有し、あるニック付き外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃のニック付き外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、ニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記ニックのピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれて設けられ、
    前記第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具回転軸から工具径の5%以上20%未満であることを特徴とする超硬合金製エンドミル。
  3. 請求項1乃至請求項いずれかに記載の超硬合金製エンドミルにおいて、ある波形状外周刃又はニック付き外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波ピッチ又はニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記波ピッチ又はニックのピッチの1%〜3%の幅のずれ量であることを特徴とする超硬合金製エンドミル。
  4. 外周刃には硬質皮膜が被覆されていることを特徴とする請求項1乃至請求項いずれかに記載の超硬合金製エンドミル。
  5. 請求項1乃至請求項いずれかに記載の超硬合金製エンドミルにおいて、工具保持部と、超硬合金製の切れ刃部が自在に着脱可能であることを特徴とする超硬合金製エンドミル。
  6. 工具の外周刃の径方向に山部と谷部を繰り返す複数の波形状の外周刃、および、工具の外周刃の径方向に切り屑を分断させる複数のニックを有する複数の外周刃より選ばれるいずれかの外周刃と、底刃と、複数のギャッシュ面からなるギャッシュと、を有し、前記外周刃には硬質皮膜が被覆されており、
    前記複数のギャッシュ面は、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面、エンドミルの工具軸の回転中心側に設けられた第2ギャッシュ面、及びエンドミルの外周側に設けられた第3ギャッシュ面を有し、前記第1ギャッシュ面と第2ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第1ギャッシュ角、前記第1ギャッシュ面と第3ギャッシュ面の交差部と工具軸線に直交する平面とのなす角度を第2ギャッシュ角としたとき、第1ギャッシュ角は15゜〜35゜、第2ギャッシュ角は40゜〜60゜に設けられ、
    前記外周刃は、ある外周刃を基準形状外周刃としたときに、その他の少なくとも一刃の外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量が、波またはニックのピッチを刃数で割った値で等間隔に並んだ前記基準形状外周刃のそれぞれの位相から前記ピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれて設けられ、前記第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面のつなぎ部の長さは、工具回転軸から工具径の5%以上20%未満である超硬合金製エンドミルを用い、
    縦送り切削、横送り切削および傾斜切削から選ばれる少なくとも2種以上の切削を連続して行うことを特徴とする切削加工方法。
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