JP5644084B2 - 超硬合金製エンドミル - Google Patents

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本発明は、荒切削から中仕上げ切削に用いる超硬合金製エンドミルに関し、特に3次元形状削りや溝削りに適した高速切削用の超硬合金製エンドミルに関する。
エンドミルは端面と外周にそれぞれ底刃と外周刃という切れ刃を有し、前記切れ刃の単独又は複合した使用によって、広範囲の加工ができるために、多用されている切削工具である。最近はエンドミルによる荒切削や中仕上げ切削において、加工能率を上げるために、切り込み量を大きくして高速切削で加工を行いたいという産業界の要望が強く、高速切削に適したエンドミルが提案されている。
従来のエンドミルは加工方向によって、縦送り切削、横送り切削および傾斜切削に特化して、それぞれの切削目的に適したエンドミルが提案されている。特に、本発明が主な切削対象とする3次元形状削りでは縦送り切削や傾斜切削が増加するので、切り込み量を大きくしすぎると切り屑の排出性が良好でなければ切削抵抗が大きくなる。
エンドミルの切り屑の排出性を改善する目的ではいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1では、ラフィングボールエンドミルのボール刃の各刃に互いに位置を変化させた波形状切れ刃、又はニックを設けたことにより、切り屑を分断でき、切削抵抗を軽減できるため、高切り込みで高送り切削を可能となることが記載されている。
特許文献2には、ニック部の逃げ面を円弧状にして、ニック先端角コーナの切刃角を大きくすることによって剛性を高めたニック付きボールエンドミルが提案されている。
エンドミルの外周刃に関しては、本発明が対象とする用途に用いる従来のエンドミルは、外周刃に波形状やニックを有し、この波形状外周刃やニック付き外周刃は、各刃で削り残しが出ないように工具軸方向に等間隔で位相がずれている。このような従来の波形状やニック付きの外周刃を有するエンドミルは、普通刃エンドミルと比較して、切り屑を分断しやすく切削抵抗を低減して加工ができるため、工具径方向の切り込み量を大きくでき、高能率加工が可能である。
荒加工においても加工能率を上げるために、切り込み量を大きくして高能率加工を行うが、びびり振動の問題が生じることが多い。特にエンドミルの軸心から外周面の周方向に隣接する2枚の切れ刃までの線分で挟まれる分割角が等しい等分割エンドミルは、製造が極めて容易であるメリットがあるが、加工中に共振が起こり、びびり振動が生じやすい。この対策として、製造上は費用と時間がかかるが、切れ刃の分割角を異なるようにして、切削力の周期を一定にしないようにした不等分割エンドミルが提案されている。
特許文献3では、波形状刃形のエンドミルにおいて、互いに隣接する各外周刃間における位相のずれ量を不均等にしたことにより、各外周刃の切り込み断面形状や断面積が不均等となり、不等分割同様にびびり振動を抑制し、工具寿命向上や高能率加工が可能となることが記載されている。特許文献4では、ギャッシュノッチ角が後端側に向かうに従い段階的に大きくなる複数段のギャッシュ面を構成するエンドミルが提案されている。縦送り時に大きな負荷が作用するエンドミル本体中心の先端側のギャッシュ面は強度を確保し、欠損等を防止でき、後端側のギャッシュ面は切り屑排出のための空間を確保するというものである。
特開平7−195221号公報 実開昭60−100111号公報 特開平01−127214号公報 特開2006−15418号公報
近年、金型加工や部品加工の高能率加工への要求は一段と強く、荒加工においても高速機の普及と共に高速切削による高送り加工が注目されている。高速切削は切削速度を大きくすること、すなわち回転数を高く設定し、高能率加工を行う方法である。
最近のエンドミルへの他の要求として、3次元形状を有する金型などの加工を、エンドミルを変更せずに一本のエンドミルで切削加工したい、それも高能率で行いたいという要求が強い。前記の3次元形状削りの他にも、溝削りや段削りのニーズも増えている。
3次元形状削り、溝削り、及び段削りは、外周刃と外周刃につながるコーナR刃または底刃を同時に用いて被加工材の形状に沿って連続して行う加工であり、外周刃と外周刃につながるコーナR刃または底刃が連携して機能しないと、エンドミルの高能率加工にはつながらない。特に荒削り加工においては、波形状外周刃またはニック付き外周刃を持つエンドミルを用いて切り込み量を大きくし、回転数も高く設定するとびびり振動が発生し、異常摩耗やチッピングの発生により、寿命を短くするだけでなく、欠損や折損を引き起こす原因となるのである。
特許文献1に記載されるボールエンドミルでは、ボール刃にニックを設け、切り屑を分断することで切削抵抗を軽減し、高切り込みで高送りが可能なエンドミルが提案されている。しかしボール刃にニックを設けるだけでは、切り屑が分断される効果はあるが、外周刃も含めて高速切削による高能率加工を行った場合に、特に外周刃の切削抵抗で問題となり、びびり振動を抑制する効果はなく、異常摩耗による欠損や折損につながることが多かった。
特許文献2に記載のボールエンドミルでのニックの役割は、切削チップを分断するためであるが、本考案の最大の目的は、ニックの内外側逃げ面を共に円弧として逃げ面を逃がし、ニックの先端コーナの切刃角を大きくすることによってボール刃のチッピングを低減することである。確かに前記の切刃角を大きくすればニックの剛性は高められるであろうが、これは特許文献1と同様にボール刃の形状改善のみでボール刃の剛性を高めようとするもので、本発明が主目的とするエンドミルによる高能率の3次元形状切削のように、外周刃も同時に切削に加わりびびり振動が起こりやすい切削条件には対応できない。
エンドミルによる3次元形状削りで、高速切削で高能率加工を達成するのは、いわば外周刃と外周刃につながるコーナR刃または底刃の連携によって相互に切削負荷を軽減するというトータル的な工具設計が必須であり、特許文献1及び2に記載されるボールエンドミルのように、ボール刃のみに注目した改良では対策が不十分なのである。
エンドミルにおけるびびり振動を抑制する技術として、従来技術で説明したように外周刃の配置を等分割に代わって不等分割にしたエンドミルが提案されている。不等分割を適用したエンドミルは適切な形状設計をすれば、一定のびびり振動を抑制する効果がある。しかし、エンドミルの再研磨時には各刃の分割角が異なるため、研削する際の位置あわせ等で問題になることが多かった。また、不等分割を適用したエンドミルは、形状的に刃溝が不均一によることを意味し、切り屑の排出性が不均一になりやすく切り屑の排出性が悪いため、異常摩耗や欠けなどの問題があった。この問題は最近の高速切削に伴って多量に排出される切り屑の処理には特に重要な問題になる。
特許文献3では、互いに隣接する各外周刃間における位相のずれ量を不均等にし、不等分割同様の効果でびびり振動を抑制するエンドミルが提案されている。しかし、特許文献3に記載のエンドミルは高速度工具鋼を母材としているので、各外周刃の位相のずれ量は比較的大きい例が提案されている。エンドミル母材を本発明のように靭性の低い超硬合金とした場合には、単に位相のずれ量を不均等にしたり、前記のように位相のずれ量が大きい場合には、切削量が大きくなる超硬合金製エンドミルの外周刃では欠損やチッピングが生じやすく、さらなる高速切削での適用は問題が残っていた。
さらに、特許文献4では、縦送り加工用として、縦送り時に大きな負荷が作用するエンドミル本体中心の先端側のギャッシュ面は強度を確保し、後端側のギャッシュ面は切り屑排出のための空間を確保したエンドミルが提案されている。しかしながら、さらなる多機能な加工を高能率で行う場合、切り屑の排出機能を主目的とするギャッシュ面の改良だけでなく、切り屑を生成する外周刃やコーナR刃など、切削に関与するすべての切れ刃において最適化することが重要であることが本発明の検討過程で分かってきた。
本発明は、このような背景と課題認識の下に、主に3次元形状を有する金型などの加工、溝削り、及び段削りなどの超硬合金製エンドミルによる加工を目的として、エンドミルを変更せずに一本のエンドミルで高能率での切削加工に適したエンドミルの形状を提案するものである。
本発明の目的を達成するためには、エンドミルの外周刃と外周刃につながるコーナR刃が同時に切削作用に加わることを前提にする必要があり、従来のようにエンドミルの部位をそれぞれ単独で改良を加えることでは無理がある。そこで本発明は、外周刃と外周刃につながるコーナR刃が連携して機能し、切削抵抗の分散を十分に行えることでびびり振動を抑制し、回転数を高速に設定できる長寿命の超硬合金製エンドミルを提供することを目的とする。
本発明は、3次元加工において従来よりも大きい単位時間当たりの切り屑排出量を達成できる高速切削用のエンドミルの開発に伴い、切り屑の排出性と生産性の点で大きな優位性を持つ超硬合金製の等分割エンドミルを採用し、びびり振動を極力抑えることができ、さらに、傾斜切削などの3次元加工において切り屑の排出性を良好にできる形状要因を検討した結果として生まれたものである。
すなわち本発明者は、エンドミルの外周刃は、円周方向の配列は等分割とし、波形状外周刃又はニック付き外周刃の軸方向への相互の位相の最適なずれ量を形成することに着目して、高速切削に耐え、かつびびり振動を最小にする位相のずれ量を種々検討した。さらに、底刃のすくい面から連続して設けるギャッシュの形状を最適化して、切り屑の良好な排出をはかり、外周刃と底刃への負荷を低減すること、および、外周刃につながるコーナR刃についてはニックの最適な配置により切り屑排出性にも着目し、コーナR刃によって切削された切り屑も細かく分断して、外周刃への負荷を低減していることを特徴としている。
エンドミルを工具として製造するときには、製造コストの合理性も考慮しなければならない。そのために本発明の超硬合金製エンドミルは、外周刃は加工の容易な等分割エンドミルとして、外周刃につながるコーナR刃のニックの加工も、回転砥石で前記コーナR部に単純にニックを入れる程度でよい形状としている。例えば特許文献2では切刃角を大きくするために回転砥石の複雑な操作で、ニックの内外側両逃げ面を共に円弧としているが、本発明では平坦な面であっても良い。本発明の超硬合金製エンドミルの底刃のコーナR刃におけるニックの形状が単純で、このように製造コストをできるだけ小さくできる理由は、外周刃につながるコーナR刃のニック単独の剛性を高めなくても、外周刃のびびり振動抑制効果で外周刃につながるコーナR刃への負荷が小さく、逆に外周刃のびびり振動抑制効果やギャッシュ形状の最適化で、外周刃につながるコーナR刃への負荷が小さいという刃部位の相互の相乗効果があるからである。
すなわち、本発明の超硬合金製エンドミルは、山部と谷部を繰り返す波形状又はニック付きの複数の外周刃(1)と、前記外周刃(1)につながるコーナR刃(17)とを有し、
前記波形又はニックが等間隔に並んだある外周刃(1)の位相に対して、その他の少なくとも一刃の外周刃(1)の位相が前記波形又はニックのピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれており、
前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)に、工具軸側の第1逃げ面(21)と外周側の第2逃げ面(22)とからなるニック(25)が設けられており、
前記第1逃げ面(21)と前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)との第1交線(32)、及び前記第2逃げ面(22)と前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)との第2交線(31)は、前記コーナR刃(17)とそれぞれ第1交点(30)及び第2交点(29)で交差しており、
前記第1交線(32)は、前記コーナR刃(17)から後方に行くに従って前記第1交点(30)と工具軸(O)との半径方向距離を半径とする円弧(34)より工具軸側(23)に広がっており、
前記第2交線(31)は、前記コーナR刃(17)から後方に行くに従って前記第2交点(29)と工具軸(O)との半径方向距離を半径とする円弧(33)より外周側(24)に広がっていることを特徴とする。
波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相の工具軸方向へのずれ量は1%〜3%の範囲が望ましい。
本発明の超硬合金製エンドミルは、波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相が適正範囲でずれているので、切削抵抗が分散されて切削負荷が安定し、びびり振動を抑制できる。さらにコーナR刃にはニックを設け、ニックの工具軸側の逃げ面は工具軸側に広がり、ニックの外周側の逃げ面は外周側に広がっていることにより、切り屑が細かく分断され、切削抵抗が軽減される。
本発明の超硬合金製エンドミルは、コーナR刃に設けるニックの切り屑切断効果によって外周刃の負荷が軽減され、高速切削でも振動が抑制され、逆に波形状外周刃又はニック付き外周刃の位相のずれ量の適正化で振動が抑制されるので、コーナR刃に設けるニックの負荷が軽減されてニックやニック付近の外周刃や底刃のチッピングが防止できるという効果がある。いわば、本発明の超硬合金製エンドミルは、外周刃とコーナR刃の形状の適正化が相互に助け合って3次元形状の切削でも高速切削を可能にする。
また、各刃の刃溝の形状はすべて実質的に同一であるため、切り屑の排出性も良好であり、切削工具の寿命の安定と高速回転を可能にする効果が得られる。
本発明超硬合金製エンドミルによれば、ギャッシュの形状を最適化しているため、切り屑の排出性が良好であり、切削抵抗が低減されて3次元加工での高能率な加工ができる。さらにコーナR刃にニックを設けることにより、切削抵抗が軽減されるほか、切り屑が分断されることにより、切り屑が細かくなり、さらに排出性が向上する。この場合に、ギャッシュの適正な配置は切り屑の排出を助け、コーナR刃のニックへの過度な切削負荷を抑制するので、ニックがチッピングを起こすことを防止し、逆にコーナR刃のニックが切り屑の適正な切断を行なうので、切り屑がギャッシュを通って排出しやすくする。
本発明超硬合金製エンドミルのように、外周刃の位相のずれ量の適正化とギャッシュの形状の最適化及びコーナR刃にニックを設ける形状にすれば、主にこの三つの形状の特長による相乗効果で切削抵抗が分散されて切削負荷が安定し、びびり振動を抑制できる。さらに、コーナR刃にニックを設けることにより、切削抵抗が軽減されるほかに、切り屑が分断され細かくなり、ギャッシュの形状を最適化しているため、切り屑の排出性が良好である。そのために本発明の超硬合金製エンドミルは従来のエンドミルと比較して、エンドミルの送り速度を1.5倍以上に上げることができ、本発明が主目的とする高能率な条件での3次元形状削りを達成できる。
本発明は、外周刃とギャッシュとコーナR刃に形状的な特徴があるが、いずれの部分も砥石研削で容易に成形できる形状である。よって、従来のエンドミルと比較しても、ほとんど変わらない工数でエンドミルを製造できるので、エンドミルの性能向上の割には容易な加工で済み、工具性能に対する生産コストを低減できる。
本発明の一実施例を示す超硬合金製エンドミルの全体概観図である。 図1の外周刃のA−A´断面の拡大図であり、(a)は波形状外周刃の拡大図を示し、(b)はニック付き外周刃としたときのニック付き外周刃の拡大図を示す。 図1の工具軸方向からみた図である。 図3のコーナR刃の拡大図である。 従来の位相のずれの無いエンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。 本発明超硬合金製エンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。 本発明の一実施例を示し、隣接する波形状外周刃のうち1組の前記波形状外周刃は位相のずれ量が無く、1刃に位相のずれ量があることを示す展開図である。 図1の底刃近傍の拡大図である。 コーナR刃のニックをコーナR刃に対し垂直方向に設けたエンドミルの、図4に相当する図である。
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示すエンドミルの全体概観図で、外周刃が波形状外周刃の場合である。図1に示すように、工具径Dで外周側に切り屑排出用の刃溝16と、刃数が4枚の外周刃1とコーナR刃17を有する例である。さらにコーナR刃17にはコーナR刃のニック25が設けられている。前記刃数は、2枚以上であれば、位相をずらすことが可能であるため刃数は必要に応じて変え得る。例えば、アルミニウムなどの切削は切り屑排出が多いため刃数は2枚程度とし、切り屑排出用のチップポケットを大きめに設定し、また、高硬度材の切削は刃数を8枚まで増やし、高送りに対応することができる。
図2は図1の外周刃のA−A´断面の拡大図である。図2(a)は波形状外周刃の拡大図を示す。通常波形状の刃形は図2のように波ピッチ4毎に波の高さが波高さ5の山部6と谷部7を繰り返した刃形であり、切り屑を細かく分断できる刃形となる。図2(b)はニック付き外周刃としたときのニック付き外周刃の拡大図を示す。ニック付き刃形においても、外周刃とニックの交点20の間隔であるニックのピッチ8毎にニックの深さ9の溝が入った形状を繰り返し、外周刃で切り屑を分断出来る刃形となる。切り屑を分断することにより切削抵抗を抑制出来る効果があり、コーナR刃に設けるニックへの負荷も軽減できる。ここで、図2の斜線部は断面を示す。
図3は図1の工具軸方向からみた図を示し、図4は図3のコーナR刃の拡大図を示す。外周刃1からつながるコーナR刃17の逃げ面18には、工具軸側の第1逃げ面21と外周側の第2逃げ面22とからなるニック25が設けられている。第1逃げ面21とコーナR刃17の逃げ面18との第1交線32、及び第2逃げ面22とコーナR刃17の逃げ面18との第2交線31は、コーナR刃17とそれぞれ第1交点30及び第2交点29で交差している。
図4に示すように、本発明の超硬合金製エンドミルでは、工具回転時に干渉しないように、第1逃げ面21の工具軸側の稜線(第1交線)32は、コーナR刃17から後方に行くに従って第1交点30と工具軸Oとの半径方向距離を半径とする円弧34より工具軸側23に逃げて(広がって)いる。また、第2逃げ面22の外周側の稜線(第2交線)31は、コーナR刃17から後方に行くに従って第2交点29と工具軸Oとの半径方向距離を半径とする円弧33より外周側24に逃げて(広がって)いる。なお、図4では第1交線32の後端部32aが屈曲して、円弧34に接近しているように見えるが、これは第1交線32の後端部32aが底刃の第1逃げ面35に続く第2逃げ面36に接しているためである。もし第2逃げ面36がなければ、第1交線32の後端部32aも破線で示すように拡がっている。
本発明では、コーナR刃のニック25の工具軸側の逃げ面21及び外周側の逃げ面22が、工具軸側への逃がしと外周側への逃がしを明確に付与されていることが特徴である。図4でいえば外周側のコーナR刃17の逃げ面とニック25外周側逃げ面の交線31及び工具軸側のコーナR刃17の逃げ面とニック25工具軸側逃げ面の交線32はニック25の右側端部で円弧33と円弧34よりそれぞれ上下に離れるほど望ましい。これは本発明の超硬合金製エンドミルは主たる切削目的を3次元形状削りでの高速切削を前提としており、高速で3次元加工を行うときは、負荷の大きい外周刃とコーナRとが協働して切削作用を行なうことが多くなるので、外周刃のびびり振動が少々大きくなってもコーナR部のニックの前記交線31及び前記交線32が被削材と干渉しないようにしておくことが必須であるからである。
また、コーナR刃17の外周側逃げ面とニック25外周側逃げ面の交線31及びコーナR刃17の工具軸側逃げ面とニック25工具軸側逃げ面の交線32の形状は直線状が望ましい。前記交線31及び前記交線32を直線状にすることは、テーパ状の砥石を使った砥石研削で容易にできるメリットがある。このことは、エンドミルの底刃の再研削も容易であることを意味する。前記交線31及び前記交線32を直線状ではなくて、円弧状にして干渉を防ぐ方法も前述の実用新案文献のように提案はされているが、この方法は前述のように工数とコストのかかる方法である。
従来のコーナR刃のニックは、ニックの逃げの方向についてはそれほど考慮されておらず、単純にニックの交線31、32が平行な場合も多い。これは、従来のボール刃やコーナR刃のニックは、ニックによる切り屑の分断効果の付与が主目的であり、例えニックの交線が平行であっても、切削負荷の小さい条件でエンドミルの振動が小さければ、干渉の心配はそれほどない場合も多いからである。
しかし、本発明のエンドミルのように、外周刃のびびり振動を小さくした外周刃の形状であっても、コーナR刃に設けるニックの逃げ面の方向は本発明のような特別の考慮が要る。コーナR刃のニックの形状を、本発明のように考慮しなかった場合の例を図9を用いて説明する。図9は、コーナR刃のニックをコーナR刃に対し垂直方向に設けたエンドミルの、図4に相当する図である。ただし、図9コーナR刃17の工具軸側逃げ面とニック25の工具軸側逃げ面の交線32が被削材と干渉することを説明するために、干渉部分をやや誇張して図示している。
図9に示すように、コーナR刃17にはコーナR刃のニック25が設けてあるが、コーナR刃のニック25はコーナR刃17に対し垂直方向に設けてある。そのためコーナR刃17の外周側逃げ面とニック25の外周側逃げ面の交線31は、外周側のコーナR刃17とニック25との交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧33を基準として外周側24へ逃げた形状となりコーナR刃17の工具軸側逃げ面とニック25の工具軸側逃げ面の交線32は、工具軸側のコーナR刃17とニック25との交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧34を基準として外周側24へ逃げた形状となる。
このような形状のコーナR刃のニックを有した工具を用いて、特に本発明が主目的とする高速加工の条件で3次元形状の切削加工を行った場合にはコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの工具軸側逃げ面の交線32が被削材と干渉してしまうことがあるため、チッピングや欠損が生じてしまう。この干渉は、コーナR刃のニックの逃げの方向に関連して、高速で回転して負荷の大きい外周刃の振れの影響も大きいと推定される。
コーナR刃に設けられたニックにより、切り屑が分断されるため切削抵抗が軽減され、工具回転時に被削材との干渉による異常摩耗が無くなる。このコーナR刃に設けられたニックは、コーナ部での加工にさしかかると、主に切り屑の分断作用が働き、切り屑のギャッシュへの誘導が容易になると共に、ギャッシュでの切り屑の排出がスムーズになるので、切削抵抗が小さくなり、外周刃で協働して切削する場合でも、外周刃への負荷を小さくする。特に本発明の超硬合金製エンドミルのコーナR刃に設けられたニックの逃げ面の逃げ方向は、外周刃の振動によってもニックと被削材が干渉しないように十分考慮された形状になっているので、本発明での前記ニックは干渉による摩耗などはなく安定して寿命まで機能するものである。
さらに、本発明超硬合金製エンドミルと従来のエンドミルにおける波形状外周刃の位相と波ピッチを比較するために図5〜図7を用いて説明をする。図5〜図7では波形状外周刃で代表的に説明しているが、ニック付き外周刃の場合には、図2(b)に示すニックのピッチ8を波ピッチ4に置き換えれば、位相のずれの設け方は以下の説明と同じである。
図5は従来の位相のずれの無いエンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。図6は本発明超硬合金製エンドミルの波形状外周刃の位相とピッチを示す展開図である。図7は、本発明の一実施例を示し、隣接する波形状外周刃のうち1組の前記波形状外周刃は位相のずれ量が無く、1刃に位相のずれ量があることを示す展開図である。なお、図5〜図7では山部の位置を丸印で示している。
図5のように、従来のエンドミルでは図の一番上に示される波形状外周刃を基準形状外周刃10として、基準形状外周刃10の山部6から次の山部6までの波ピッチ4(ニック付きの場合は外周刃とニックの交点から次の外周刃とニックの交点までをニックのピッチとする。)を4等分したそれぞれの位相14(言い換えれば、基準形状外周刃10の1/4ピッチごと)に、連続して次の第2波形状外周刃11、第3波形状外周刃12及び第4波形状外周刃13の山部6が来るように等間隔に波形状外周刃がそれぞれ配置されている。このような配置は波形状外周刃の山部6の位相14が一定であり、エンドミルによって切削される被加工材の切削量は各波形状外周刃で同一となる。各刃で切削される被加工材の切削量が同一であれば、従来技術で説明した等分割エンドミルと同様に、加工中に共振が起こり、びびり振動が生じやすい。
これに対して、本発明では図6に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2波形状外周刃11と第4波形状外周刃13の山部6の位置は、基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列されている。そして、基準形状外周刃10以外の波形状外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃以上が基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10の波ピッチ4の0%を含まない5%以下の範囲の幅で工具軸方向へ配設されている。図6の本発明の超硬合金製エンドミルの一例として、基準形状外周刃10の波ピッチ4を1mmとし4枚の刃数で割った値で等間隔に並んだそれぞれの波形状外周刃の位相14のずれ量15は、第2波形状外周刃11は波ピッチ4の2%である0.02mm、第3波形状外周刃12では0mm、第4波形状外周刃13では波ピッチ4の2%である0.02mmの位相のずれがある。ここでずれ量15はプラスを工具シャンク側3の方向とし、マイナスを工具先端側2の方向とする。
また、本発明では図7に示すように、基準形状外周刃10の次に配置される第2波形状外周刃11の山部6の位置は、基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分した位相14から工具軸方向へずれ量15だけずれて配列され、隣接する第3波形状外周刃12と第4波形状外周刃13の位相14のずれ量15が無いように配列されている。そして、基準形状外周刃10以外の波形状外周刃の位相14のずれ量15は、少なくとも一刃以上が基準形状外周刃10の波ピッチ4を4等分したそれぞれの位相14を基準にして、基準形状外周刃10の波ピッチ4の0%を含まない5%以下の範囲の幅で工具軸方向へ配設されている。
1刃だけがずれ量15を有する例として、小径エンドミルでの被加工材を溝切削する場合、切屑排出の確保のため刃数が奇数となる3枚刃を用いることが多くこの場合、特許文献3の仕様では、互いの隣接する外周刃の位相のずれ量はすべて異ならせることとなるが、本発明を用いれば、1刃だけの位相のずれ量を異ならせることでよい。更に、刃数が奇数となる5枚刃の場合においても、前記特許文献3の仕様では、基準形状外周刃からの位相のずれ量は2つの種類が必要となる。しかしながら、本発明では1つの種類の位相のずれ量だけでも、びびり振動の抑制と共に、高速切削による高能率加工が可能となり、さらに長寿命に加工が行える。このことは、後で述べる実施例においても確認している。
図8は、図1の底刃近傍の拡大図である。図のギャッシュには、底刃のすくい面である第1ギャッシュ面26、エンドミルの工具軸側に第2ギャッシュ面27、第2ギャッシュ面27の工具軸方向後端側に第3ギャッシュ面28が設けられている本発明におけるギャッシュ部分の特徴は、以下で述べるコーナR刃17に設けられたコーナR刃のニック25で分断された切り屑が、速やかに、円滑に排出されるように、二段のギャッシュ形状としていることである。切り屑は第2ギャッシュを経て第3ギャッシュに沿って速やかにエンドミルの外周側に誘導される。このギャッシュの形状の効果で、工具軸側では工具剛性が向上し、外周刃付近はチップポケットが広くなることで切り屑の排出性が向上する。
さらに本発明では外周刃につながるコーナR刃の外周部にコーナR刃のニックを設けているので、切り屑は細かく分断されるため、さらに排出性が向上する。コーナRに設けるニックは外周側のコーナR刃とニックの交点29及び工具軸側のコーナR刃とニックの交点30が切削に寄与する(図4)が、ニックの逃げ面は被加工材との摩擦をなくす、又は摩擦を最小限にするために、本発明では特別の方向に向けている。そのため、特に傾斜切削などの3次元加工において、高能率な加工が可能となる。
以下、実施例中の表には、本発明例、従来例、比較例を区分して示す。試料番号は本発明例、従来例、比較例ごとに、連続の通し番号で記載した。
(位相のずれ量とニックの効果の確認試験)
本発明例1乃至7、比較例1乃至4、従来例1乃至3においては基材はCo含有量が8重量パーセント、WC平均粒径が0.8μmの超硬合金で、工具径8mm、半径2mmのコーナR刃、刃長16mm、全長70mm、シャンク径8mmで刃数は4枚とした。外周刃の形状は波刃形とし、波ピッチを1mmで、ねじれ角は45°とし、テストに用いた。用いた試料はすべて(TiAl)N系にSiを含有させた硬質皮膜を施した。
本発明例1乃至7として、コーナR刃にコーナR刃のニックを設け、コーナR刃のニックはコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの工具軸側逃げ面の交線が、工具軸側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として工具軸側へ逃げた形状とし、かつコーナR刃の外周側逃げ面とニックの外周側逃げ面の交線が、外周側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として外周側へ逃げた形状とした。
また、実施例中の全ての表においてコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの軸中心側逃げ面の交線が、工具軸側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準としたときの逃げた方向を、工具軸側のニックの逃げ面の逃げ方向として記載した。またコーナR刃の外周側逃げ面とニックの外周側逃げ面の交線が、外周側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準としたときの逃げた方向を、外周側のニックの逃げ面の逃げ方向として記載した。
本発明例1は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を、第2波形状外周刃は波ピッチの1%とした0.01mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの1%とした0.01mmとなる形状のものを作製した。
本発明例2は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を、第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmとなる形状のものを作製した。
本発明例3は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmとなる形状のものを作製した。
本発明例4は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの5%とした0.05mm、第3波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mm、第4波形状外周刃は波ピッチの4%とした0.04mmとなる形状のものを作製した。
本発明例5は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分しそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mmなる形状のものを作製した。
本発明例6は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、さらに底刃のギャッシュには、第1ギャッシュ面、第2ギャッシュ面、第3ギャッシュ面を設け、波形状外周刃の位相のずれ量の無い、波ピッチの0%とした位相が一定のものを作製した。
本発明例7は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けた他に、さらに底刃のギャッシュには、第1ギャッシュ面、第2ギャッシュ面、第3ギャッシュ面を設け、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmとなる形状のものを作製した。
比較例1は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設け、コーナR刃のニックはコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの工具軸側逃げ面の交線が、工具軸側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として工具軸側へ逃げた形状とし、かつコーナR刃の外周側逃げ面とニックの外周側逃げ面の交線が、外周側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として外周側へ逃げた形状とした。
また、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mmとなる形状のものを作製した。
比較例2は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けず、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、基準形状外周刃の波ピッチを4等分したそれぞれの波形状外周刃の位相のずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mm、第3波形状外周刃は波ピッチの3%とした0.03mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmのものを作製した。
比較例3は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設け、コーナR刃のニックはコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの工具軸側逃げ面の交線が、工具軸側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として工具軸側へ逃げた形状とし、かつコーナR刃の外周側逃げ面とニックの外周側逃げ面の交線が、外周側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧よりも工具軸側にある形状とした。また、比較例3の波形状外周刃の位相のずれ量は、比較例2と同一とした。
比較例4は、図9に示すように、コーナR刃のニックをコーナR刃に対して垂直方向に設け、コーナR刃のニックはコーナR刃の工具軸側逃げ面とニックの工具軸側逃げ面の交線が、工具軸側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧よりも外周側にある形状とし、かつコーナR刃の外周側逃げ面とニックの外周側逃げ面の交線が、外周側のコーナR刃とニックの交点と工具軸の距離を半径としたときの円弧を基準として外周側へ逃げた形状とした。また、比較例4の波形状外周刃の位相のずれ量は、比較例2と同一とした。
従来例1は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けず、波形状外周刃の位相のずれ量の無い、波ピッチの0%とした位相が一定のものを作製した。
従来例2は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けず、不等分割を採用し、各刃の分割角が95°、85°、95°、85°で、波形状外周刃の位相のずれ量の無い波ピッチの0%とした位相が一定のものを作製した。
従来例3は、コーナR刃にコーナR刃のニックを設けず、特許文献3に記載されるエンドミルの位相のずれ量を同比率として算出し、1刃の波形状外周刃を基準形状外周刃として、それぞれの波形状外周刃の位相の前記ずれ量を第2波形状外周刃は波ピッチの6%とした0.06mm、第3波形状外周刃は波ピッチの0%とした0mm、第4波形状外周刃は波ピッチの2%とした0.02mmのものを作製した。
本発明の実施例7種を含む前記14種類のエンドミルで、硬さHRC40の熱間ダイス鋼SKD61を被加工材として切削を行った。切削条件は回転数を6000回転/min(切削速度150m/min)、送り速度を1600mm/min(1刃送り量0.06mm)とし、軸方向切り込みを4mm・径方向切り込みを4mmとして、寿命テストを行った。評価として、5m毎に外周刃を観察し、50mまで切削を行い欠損及びチッピングの無いものを良好として、その時の外周刃の摩耗幅を測定した。また、50mまでに外周刃を観察し欠損及びチッピングが生じたものはその時点で終了し、切削長及び外周刃の状態を記録した。その結果を表1に示す。
Figure 0005644084
その結果、本発明例1乃至7はびびり振動も小さく、安定した切削が行え、50m切削しても正常摩耗であった。特に本発明例2、3、5、6、7は50m切削後の摩耗幅は0.10mm以下と小さく、さらに本発明例7においては、50m切削しても摩耗幅が0.05mmと最も小さかった。
比較例1は位相のずれ量が6%と大きいため、切削途中で欠損した。比較例2及び従来例1乃至3はコーナR刃にニックが無いため、切削途中にチッピングや欠損が生じた。さらに、比較例3及び4はニックの逃げ面がそれぞれ切削中に干渉し、その結果切削途中で欠損を生じた。
(傾斜切削を含む凹形状の切削試験)
前記表1に示す同一形状及び同一基材のエンドミルを作製し、傾斜切削を含む凹形状の加工で評価を行った。すなわち、本発明例8乃至14は本発明例1乃至7と同仕様、比較例5乃至8は比較例1乃至4と同仕様、従来例4乃至6は従来例1乃至3と同仕様の合計14種類のエンドミルである。切削試験の被加工材は、硬さHRC40のプリハードン鋼で幅50mm、長さ50mm、深さ24mmの凹形状になるように加工した。
切削試験は、傾斜切削で深さ8mmまで切削し、次に横送りで繰り広げて幅50mm、長さ50mmまでの切削を3回繰り返し、深さ24mmまで加工する方法で比較した。従来HRC40の被加工材を横送りにて切削する場合は、切削速度は100m/minでも高速であるが、本切削条件においては切削速度が1.5倍となるように、回転数を6000回転/min(切削速度150m/min)、送り速度を1920mm/min(1刃送り量0.08mm)とし、軸方向切り込みを8mm、径方向切り込みを2mm、傾斜切削時の送り速度は1200mm/minとし、傾斜角5°とした。
評価として、前記形状が1個加工できたものを良好とし、その時の外周刃の摩耗幅を測定した。加工終了後に欠損及び加工途中で折損したものはその結果を記録した。その結果を表2に示す。
Figure 0005644084
その結果、本発明の実施例である本発明例8乃至14を用いた傾斜切削を含む凹形状の切削試験において、びびり振動も小さく、切り屑が細かく分断され安定した切削が行え、凹形状を1個加工しても正常摩耗であった。特に本発明例13、14は第2ギャッシュ面と第3ギャッシュ面を有するため、切り屑の排出性が良好であり、摩耗幅も0.03mm以下と良好であった。
比較例5は外周刃の位相のずれ量が6%と大きいため、横送り時の切削途中で欠損した。比較例6及び従来例4乃至6はコーナR刃にニックが無いため、傾斜切削時に切り屑が分断されなかったため加工途中に折損を生じたり、加工後にも欠損が生じたものがあった。比較例7及び8はコーナR刃に設けたニックの逃げ面が本発明で規定するような逃げの条件を満足していないために、すなわち、ニックの工具軸側の逃げ面が工具軸側に、かつニックの外周側の逃げ面は外周側に逃げていないために、切削初期の傾斜切削でニックの逃げ面が干渉し、折損する結果となった。
本発明の超硬合金製エンドミルは、コーナR刃に設けるニックの切り屑切断効果によって外周刃の負荷が軽減され、高速切削でも振動が抑制され、逆に外周刃の位相のずれ量の適正化で振動が抑制されるので、コーナR刃に設けるニックの負荷が軽減されてニックやニック付近の外周刃や底刃のチッピングが防止できるという効果がある。いわば、本発明のエンドミルは、外周刃とコーナR刃の形状の適正化が相互に助け合って、3次元形状の切削でも従来よりも大きい単位時間当たりの切り屑排出量を達成できる。
1 外周刃
2 工具先端側
3 工具シャンク側
4 波ピッチ
5 波高さ
6 山部
7 谷部
8 ニックのピッチ
9 ニックの深さ
10 基準形状外周刃
11 第2波形状外周刃
12 第3波形状外周刃
13 第4波形状外周刃
14 位相
15 ずれ量
16 刃溝
17 コーナR刃
18 コーナR刃の逃げ面
20 外周刃とニックとの交点
21 工具軸側の第1逃げ面
22 外周側の第2逃げ面
23 工具軸側
24 外周側
25 コーナR刃のニック
26 第1ギャッシュ面
27 第2ギャッシュ面
28 第3ギャッシュ面
29 第2交点
30 第1交点
31 第2交線
32 第1交線
32a 第1交線32の後端部
33 第2交点と工具軸Oとの半径方向距離を半径とする円弧
34 第1交点と工具軸Oとの半径方向距離を半径とする円弧
35 底刃の第1逃げ面
36 底刃の第1逃げ面35に続く第2逃げ面
O 工具軸
D 工具径

Claims (1)

  1. 山部と谷部を繰り返す波形状又はニック付きの複数の外周刃(1)と、前記外周刃(1)につながるコーナR刃(17)とを有する超硬合金製エンドミルにおいて、
    前記波形又はニックが等間隔に並んだある外周刃(1)の位相に対して、その他の少なくとも一刃の外周刃(1)の位相が前記波形又はニックのピッチの0%を含まない5%以下の幅で工具軸方向にずれており、
    前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)に、工具軸側の第1逃げ面(21)と外周側の第2逃げ面(22)とからなるニック(25)が設けられており、
    前記第1逃げ面(21)と前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)との第1交線(32)、及び前記第2逃げ面(22)と前記コーナR刃(17)の逃げ面(18)との第2交線(31)は、前記コーナR刃(17)とそれぞれ第1交点(30)及び第2交点(29)で交差しており、
    前記第1交線(32)は、前記コーナR刃(17)から後方に行くに従って前記第1交点(30)と工具軸(O)との半径方向距離を半径とする円弧(34)より工具軸側(23)に広がっており、
    前記第2交線(31)は、前記コーナR刃(17)から後方に行くに従って前記第2交点(29)と工具軸(O)との半径方向距離を半径とする円弧(33)より外周側(24)に広がっていることを特徴とする超硬合金製エンドミル。
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