JP3743984B2 - 工具用複合高硬度材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は立方晶型窒化硼素(CBN)を主成分とする焼結体(CBN焼結体)よりなる切削工具材料の改良に関するものであり、特に、耐摩耗性に優れた工具用複合硬度材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
立方晶型窒化硼素(CBN)はダイヤモンドに次ぐ高い硬度を有する材料で、このCBNの焼結体は金属の切削工具として使用されている。
CBN焼結体は結合剤(焼結助剤)を用いてCBN結晶粒子を高温高圧下で焼結させて作られるが、下記の3つのタイプに大別することができる:
(1) CBN結晶粒子を20〜80体積%含み、結合剤としてTiの炭化物、窒化物、炭窒化物を用いるもの (例、特開昭53-77811号)
(2) CBN結晶粒子を70体積%以上含み、結合剤としてAlおよびCo金属を用いるもの (例、特公昭52-43846号)
(3) CBN結晶粒子を95体積%以上含み、結合剤としてM3 B2 N4 ( ここで、Mはアルカリ土類金属) を用いるもの (例、特開昭59-57967号)
【0003】
これらのCBN焼結体は極めて高い硬度を有し、熱伝導度が高い(高温強度に優れている)ので、各種の鋼の切削工具として利用されている。例えば、タイプ(1) のCBN焼結体はビッカース硬度 2,800〜3,700 を有し、耐摩耗性に優れているので焼入れ鋼の切削等に利用されており、タイプ(2) のCBN焼結体はビッカース硬度 3,500〜4,300 を有し、耐摩耗耐欠損性に優れているので高硬度鋳鉄の切削等に利用されており、タイプ(3) のCBN焼結体はビッカース硬度 4,000〜4,800 を有し、熱伝導性に優れているのでボンディグツール等に利用されている。
【0004】
しかし、これらのCBN焼結体は壁開性があり、耐酸化性および鉄との反応性に弱点があるため、難削材料、例えばトランスミッション用の鋼の切削では、CBN焼結体のみでは耐摩耗性が不足し、摩耗が回避できない。
CBN焼結体の耐摩耗性を向上させるために、CBN焼結体に各種耐摩耗層を被覆またはコーティングする方法が提案されている (例えば、特開昭59-134603 号公報、特開昭61-183187 号公報、特開平 1-96083号公報、特開平 1-96084号公報、特公平 2-44710号公報) が、公知の耐摩耗層は基材のCBN焼結体よりも硬度が低いため工具の摩耗は避けられない。また、超硬合金にTiN、 (TiAl)N、TiCN、Al 2 O3 等を被覆した工具も提案されているが、HRC60以上の焼入れ鋼を高速・高能率で切削すると切削温度が高くなって、基材内部が塑性変形し、容易に剥離または破壊してしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、母材強度が高く、耐摩耗性、耐反応性に優れ、しかも高温硬度、耐酸化性に優れた焼入れ鋼や高級鋳鉄等の切削に使用可能な工具用複合高硬度材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、立方晶型窒化硼素(CBN)を20体積%以上含むCBN焼結体からなる基材を有する工具用の複合高硬度材料において、少なくとも切削に関与する箇所の表面上に個々の層の厚さが 0.2〜20nmである超薄膜が交互に積層した構造を有する超薄膜積層膜を有する点に特徴がある。
この「超薄膜積層膜」とは下記(a) と(b) の化合物:
(a) 立方晶型結晶構造を有する周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素、AlならびにBから成る群の中から選択される少なくとも1種の元素の主として金属結合性の窒化物または炭窒化物、
(b) 常温、常圧、平衡状態で立方晶型以外の結晶構造を有する少なくとも1種の主として共有結合性の化合物、
の層を基材上に交互に積層し且つ積層膜全体が立方晶型の結晶構造を有するものを意味する。
【0007】
図1は本発明の工具用複合高硬度材料の概念的な断面図であり、(1) は超薄膜積層膜であり、 (a)および(b) は超薄膜積層膜(1)を構成する各単位層を表しており、 (2)は基材、 (3)および(4) は必要に応じて設けられる中間層および表面層を示している。なお、図1では超薄膜積層膜(1) を構成する各層 (a)および(b)が強調して示してあるが、超薄膜積層膜の各層の厚さは実際には 0.2〜20nmであり、中間層(3) の厚さ 0.05 〜5 μmおよび表面層(4) の厚さ 0.1〜5 μmの約 1/100であることに注意されたい。
【0008】
「積層周期」とは(a)と(b) の繰り返し単位を意味し、各層 (a)と(b) の厚さの和λを意味する (λ=(a) +(b))。
【0009】
本発明の超薄膜積層膜(1) は上記定義のものを意味し、少なくとも1種の主として共有結合性化合物の薄膜の結晶構造を主として金属結合性化合物の結晶構造である立方晶に変化させて、共有結合性化合物の性質と金属結合性化合物の性質を併せ持ち且つ全体に立方晶の単一結晶構造を示す超薄膜積層体である。この超薄膜積層膜は2種類またはそれ以上の化合物を界面を形成させないで化合物の組成の全部または一部が連続的に変化し、そのある部分が立方晶型の共有結合性化合物である構造(以下、「組成変調層」とよぶ)でもよい。また、明瞭な界面と界面を持たない組成変調層とが組み合わされた構造にすることもできる。
【0010】
本発明の超薄膜積層膜の一つの特徴は、組成が連続的に変化する組成変調層を超薄膜積層膜の互いに隣接した2つの単位層の間に有する点にある。この組成変調層を有する超薄膜積層膜は所望特性の超薄膜積層膜を得るための製作条件の許容範囲が広くなるという利点がある。
【0011】
金属結合性化合物と共有結合性化合物は構成元素の全てが異なる化合物を積層したもの、構成元素の一部が共有な化合物を積層したもの、全ての構成元素が同一で組成比のみが異なる化合物を積層したものにすることができる。一例としてTiAlNの場合にはTiリッチになると主として金属結合性の化合物となり、Alリッチになると主として共有結合性の化合物になる。Alの代わりにBを用いた場合も同様である。また、 (a)および/または(b) の層が複数ある場合には (a)および(b) の各々の層の化合物は全て同じでも、層毎に互いに違っていてもよい。
【0012】
共有結合性の化合物(b) はAlまたはBの少なくとも一方を含む化合物にすることができる。好ましい化合物は窒化アルミニウム(AlN)である。
【0013】
金属結合性の窒化物、炭化物または炭窒化物(a) は、Ti、Zr、Cr、V、Hf、AlおよびBからなる群の中から選択される少なくとも一つの元素を含む窒化物、炭化物、炭窒化物、複合窒化物、複合炭化物または複合炭窒化物にすることができる。
【0014】
超薄膜積層膜(1) はスパッタリング法やイオンプレーティング法等のPVD法で作ることができる。これらの方法は基材強度、工具では基材の耐摩耗性、耐欠損性を高いレベルに維持したまま表面処理することができる。
本発明の超薄膜積層膜を作製するには、非晶質成分の少ない結晶性の高い共有結合性化合物の層が形成可能な成膜プロセスが必要である。実際には、原料元素のイオン化率が高いアーク式イオンプレーティング法が適している。反応性イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリングを含めたスパッタリング法でも共有結合性化合物を成膜できるが、非晶質成分がどうしても混在するため、特性は低下する。
【0015】
また、より高いイオン化率を得るためには、窒化物あるいは炭化物の化合物のターゲットを用いるよりも、少なくともIVa、Va、VIa族元素、B、Alの1種以上の元素を含んだ金属あるいは合金の複数のターゲットとC、Nのいずれか、あるいは両方を含む気体を原料として用いる反応性のPVD法が適している。本発明の立方晶型の共有結合性化合物を形成するには、イオン化率が高く、結晶性の高い共有結合性化合物を形成することができるアーク式イオンプレーティング法が適している。この時、形成する化合物の結晶性向上等のために、原料となる気体以外に、Ar、He等の不活性ガス、H2 等のエッチング効果を持つ気体を成膜炉内に同時に導入することもできる。
【0016】
切削工具、特に切削チップに超薄膜積層膜を被覆する場合には、チップの各面に求められる特性に応じて、チップの逃げ面とすくい面に積層周期の異なる超薄膜積層を被覆するのが好ましい。
【0017】
図2(a) は本発明の超薄膜積層膜の作製装置の第1実施例の概念図である。この実施例では工具チップすなわち基材(2) を回転ホルダー(5) の外周に取付け、回転ホルダー(5) を回転させながら窒素雰囲気中でアーク電極(20)との間にアーク放電を起こさせることによって2つの蒸発原(10)、(11)からAlとTiの蒸気を蒸発させて、基材(2) 上にAlNおよびTiNの超薄膜を交互に積層させる。この実施例では遮蔽板(6) を用いることによって、(b) の概念図に示すような、組成変調層を実質的に有しない超薄膜積層膜(a/b/a・・・) 、すなわち、(c) の組成分布図に示すような組成分布を有する超薄膜積層膜が基材(2) 上に形成される。
【0018】
図3(a) は本発明の超薄膜積層膜の作製装置の第2実施例の概念図である。この第2実施例は組成変調層cを有する超薄膜積層膜が得られるようにした点で第1実施例と相違している。すなわち、この実施例では例えば図示したようにAlとTiの4つの蒸発原(10), (10'), (11), (11')を用いて、回転ホルダー(5) を回転させることによって、基材(2) 上のAlおよびTiの両方の蒸気が到達する部分にAlとTiの窒化物すなわち組成変調層cが作られる。(b) はこの実施例で得られる超薄膜積層膜の概念図であり、(c) はその超薄膜積層膜の概念的な組成分布図である。
【0019】
基材(2) と超薄膜積層膜(1) との間には膜厚が0.05〜5 μmの少なくとも1層の中間層(3) を設けるのが好ましい。この中間層(3) は周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の硼化物、窒化物、炭化物、酸化物並びにこれらの固溶体より成る群の中から選択される材料で作るのが好ましい。この中間層(3) は超薄膜積層膜(1) と基材(2) との間の密着性を向上させる役目をする。また、特性が大きく異なる基材および超薄膜積層膜の間に中間的な特性の中間層を設けることは、特性の変化を段階的に制御して、膜の残留応力を低減する効果が期待できる。
【0020】
同様に、超薄膜積層膜(1) の外側表面に膜厚が 0.1〜5 μmの表面層(4) を形成することもできる。この表面層(4) はIVa、Va、VIa族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物または酸化物中から選択する材料で作るのが好ましい。
【0021】
【作用】
共有結合性の化合物は一般に立方晶型とは異なる結晶型を有し、高い硬度と優れた耐熱性を示す。例えば焼結体として用いられている窒化アルミ(AlN)は常温、常圧、平衡相でウルツァイト構造をもち、硬度と耐熱性の両者において優れた特性を示す。また、常温、常圧下では非平衡相である立方晶型の結晶構造をもつ共有結合性化合物であるダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素(CBN)も硬度と耐熱性の両者において極めて優れた特性を有している。このことから、他の共有結合性物質でも立方晶型の非平衡相は極めて優れた特性を有すると予測される。しかし、非平衡相である立方晶型の共有結合性化合物の薄膜は合成が非常に困難であり、また、合成できたとしても、基材または中間層として一般に用いられるTiN、TiCN等の立方晶 NaCl 型結晶構造を有する金属結合性の硬質薄膜との密着性が非常に低いため、耐摩耗被膜・保護膜として用いられていないのが現状である。
【0022】
また、金属結合性化合物と共有結合性化合物の両者の性質を取り入れるために両化合物を積層構造にしても、両化合物の界面の密着性が悪く、容易に剥離が起こるため、やはり耐摩耗性被膜・保護膜として従来の積層膜を用いることはできない。すなわち、共有結合性に対して金属結合性という化合物のもつ結合性の違いに加えて、結晶構造も異なるため、基材または境界層との界面または積層膜の各化合物界面において原子間の十分な結合が形成されないためである。
特公平 5-80547号には金属表面の保護層として 0.5〜40nmの薄膜を積層した多層保護膜が開示されているが、この多層保護膜は結晶格子に対してコヒーレントな界面を有することが必須である。すなわち、この多層保護膜は各薄膜が完全エピタキシャルに成長するためには、結合が金属結合性化合物どうしの組成であり,互いに隣接する2つの薄膜の結晶格子定数(面間隔等)を含めた特性が実質的に同じものでなければならない。
【0023】
本発明では、厚さが 0.2nm〜20nmの極めて薄い立方晶の主として金属結合性の化合物の層(a) と、常温、常圧、平衡状態で立方晶とは異なる結晶構造を有する主として共有結合性化合物の層(b) とを繰り返し積層して得られる全体が単一の立方晶型結晶構造を有する超薄膜積層膜(1) を採用する。
【0024】
すなわち、本発明は、常温、常圧、平衡状態で立方晶型の結晶構造をもたない主として共有結合型の化合物を20nm以下という極めて薄い層厚にし、その前後に立方晶型の主として金属結合性化合物を同じく20nm以下という極めて薄い層厚で積層し、超薄膜積層膜全体を立方晶型の共有結合性化合物にする。換言すれば、本発明の超薄膜積層膜では2種類の層(a) と(b) とを交互に積層することによって、互いに隣接する層の間で結晶構造の変化が起こり、全体が単一の立方晶型結晶構造になる。このことはX線解析データからも確認されている。
【0025】
本発明の超薄膜積層膜では、共有性化合物が立方晶型に変化する。この化合物層の結晶構造の変化に伴って歪みエネルギーが蓄積される効果と、両方の化合物の境界部分または組成変調層での原子の結合による各化合物層の歪みによる歪みエネルギーが蓄積される効果とによって超薄膜積層膜の硬度はさらに向上するものと考えられる。
【0026】
本発明の超薄膜積層膜では立方晶型の共有結合性化合物の極めて優れた特性が発揮されるとともに、結晶構造を同一にすることで超薄膜積層膜の各層の間で十分な原子間結合が形成され、基材または中間層と十分な密着力を示す。この超薄膜積層膜は従来の被膜またはコーティング膜よりも硬度、耐酸化性、耐摩耗性に優れている。従って、本発明の超薄膜積層膜を有する工具は優れた耐摩耗性、耐熱性を発揮する。
【0027】
金属結合性化合物の層厚は特に限定されないが、共有結合性化合物の層厚に比べて金属結合性化合物の層厚があまりにも大きくなり過ぎると共有結合性化合物による高硬度、高耐酸化性などの効果が薄れるので、金属結合性化合物の層厚も上限は同じ20nmにするのが好ましい。
逆に、超薄膜積層膜の各化合物の各層 (a)および(b) の層厚を 0.2nm以下にすると、相互拡散等の影響により超薄膜積層膜全体が均質な混合層となるので上記の効果は期待できない。
超薄膜積層膜の全膜厚が 0.5μm未満の場合には耐摩耗性の向上がほとんど見られない。また、10μmを越えると超薄膜積層膜中の残留応力等の影響で基材との密着強度が低下する。従って、積層する超薄膜積層体の全体の膜厚は 0.5μm〜10μmにする。
【0028】
本発明の超薄膜積層膜の効果は積層した各化合物層の間の界面で生ずるものではないので、化合物層間に明瞭、不明瞭を問わず界面が存在する必要はない。つまり、隣接する化合物の全てまたは一部の元素が連続的に変化して、ある組成の範囲が立方晶型の共有結合性化合物である構造すなわち組成変調層でも上記の効果は発現される。この場合、共有結合性化合物の結晶構造は立方晶型により安定化され、硬度、耐酸化性は向上し、耐摩耗性、耐熱性に優れた極めて優れた切削特性が実現され、欠陥や膜応力の急激な変化等による剥離も回避できる。本発明の超薄膜積層膜は硬度が非常に高く、荷重1gfでのビッカース硬度は4,000kgf/mm2以上である。
【0029】
中間層(3) の膜厚は0.05μm未満では密着強度の向上が見られず、逆に5μmを越えても密着強度は向上しない。従って、特性および生産性の観点から中間層(3) の膜厚は0.05〜5μmの範囲にするのが好ましい。また、本発明の超薄膜積層膜の最上層の上に形成される表面層(4) の厚さは 0.1μm以上且つ5μm以下にするのが好ましい。この表面層(4) の膜厚が 0.1μm以下では耐摩耗特性の向上は見られず、5μmを越えると剥離等により、やはり、耐摩耗特性の向上は見られない。
【0030】
本発明の工具用複合高硬度材料は、チップ、ドリル、エンドミル等の切削工具に加工して使用することができる。本発明の工具用複合高硬度材料から作った工具は切削性能および寿命が格段に向上することが確認されている。
また、切削工具チップにおいては、すくい面の超薄膜積層膜の積層周期を逃げ面の超薄膜積層膜の周期より大きくすると、切削チップの切削性能および寿命が格段に向上することが確認されている。また、異なるチップ形状、切削用途においては、逃げ面の超薄膜積層膜の積層周期をすいく面の超薄膜積層膜の周期より大きくすると、切削チップの切削性能および寿命が格段に向上する場合がある。これは、各用途によって逃げ面とすくい面に要求される耐摩耗性、耐酸化性等の特性が異なり、最適な超薄膜積層膜の周期が互いに異なるものと思われる。
【0031】
基材(2) は前記の3つのタイプのCBN焼結体の中から選択できる。好ましいCBN焼結体としては下記 (1)〜(3) のものを挙げることができる:
(1) 立方晶型窒化硼素(CBN)を30〜90体積%含み、残部が周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物ならびにこれらの固溶体から成る群の中から選択される少なくとも1種と、アルミニウム化合物と、TiB2とからなる結合材および不可避的不純物である焼結体。残部結合材は、50〜98重量%のTiC、TiN、TiCN、(TiM)C、(TiM)Nおよび(TiM)CNから成る群の中から選択される少なくとも1種(ここで、MはTiを除く周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の中から選択される遷移金属)と、2〜50重量%のアルミニウム化合物とからなるのが好ましい。
【0032】
(2) 立方晶型窒化硼素(CBN)を40〜95体積%含み、残部がTiN、CoまたはWの硼化物または炭化物、窒化アルミニウム、硼化アルミニウムならびにこれらの固溶体から成る群の中から選択される少なくとも1種の結合材および不可避的不純物からなる焼結体。残部結合材は1〜50重量%のTiNを含むのが好ましい。
(3) 立方晶型窒化硼素(CBN)を90体積%以上を含み、残部が周期律表第1aまたは2a族元素の硼窒化物とTiNとを含む結合材と、不可避的不純物からなる焼結体。残部結合材は1〜50重量%のTiNを含むのが好ましい。
【0033】
タイプ(1) のCBN焼結体自体は公知であり、その特性および製造方法は特開昭53-77811号公報に詳細に記載されている。
タイプ(2) のCBN焼結体は特公昭52-43846号に記載の結合材にTiNを加えたものにすることができる。TiNを加えることによって超薄膜積層膜との接着性が良くなる。
タイプ(3) のCBN焼結体は特開昭59-57967号に記載の結合材にTiNを加えたものにすることができる。このタイプのCBN焼結体もTiNを加えることによって超薄膜積層膜との接着性が良くなる。
【0034】
CBN粉末と、結合材粉末であるTiN、TiCおよびこれらの固溶体とアルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物と、不可避的不純物とを出発原料としたタイプ(1) のCBN焼結体では、高温高圧下での焼結時に結合材とCBNとが反応して硼化チタン(TiB2)、硼化アルミニウム(AlB2)、窒化アルミニウム(AlN)等の化合物がCBN粒子と結合材との界面に生成して各粒子間の結合力を高め、焼結体の靭性および強度を向上させている。
【0035】
特に出発結合材としてTiNまたはTiCを用いた場合には、TiNZ およびTiCZ のzの値をそれぞれ 0.5≦z≦0.85、0.65≦z≦0.85として化学量論比からずらして遊離チタン量を増やすことによって、CBNと結合材との反応を効果的に促進させるたとができ、AlB2 、AlN、TiB2 等の反応生成物によって良好な摩耗特性および強度を有するCBN焼結体が得られる。ここで、TiNZ およびTiCZ のzの値をそれぞれ 0.5≦z≦0.85、0.65≦z≦0.85と規定したのは、それぞれのz値が 0.5および0.65未満になると酸化反応による発熱により粉末の充填操作が困難になり、0.85を超えるとCBNと結合材との反応性が化学量論比のTiNおよびTiCを用いた場合とほとんど変わらなくなるためである。
【0036】
タイプ(1) のCBN焼結体の出発結合材粉末としてTiNZ (0.5≦z≦0.85) またはTiCZ (0.65≦z≦0.85)を用いた場合、CBN焼結体中のアルミニウム化合物量が2重量%未満では、アルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物とCBNとの反応が不十分になるため、結合材によるCBNの保持力が弱くなる。逆に40重量%を超えるとAlB2 およびAlNに比べ硬度や機械的強度に優れるCBNの相対的な含有量が低下するため耐摩耗性が著しく低下する。従って、従来の工具用硬度材料では、出発結合材粉末としてTiNZ (0.5 ≦z≦0.85)またはTiCZ (0.65≦z≦0.85)を用いたタイプ(1) のCBN焼結体を切削工具として用いる場合には、焼結体中の結合材の組成としては60〜80重量%のTiNまたはTiCと、20〜40重量%のアルミニウム化合物、TiB2 および不可避的不純物からなるものが最も適していた。
【0037】
しかし、本発明の工具用複合高硬度材料においては、耐摩耗性に優れた超薄膜積層膜を被覆することによって耐摩耗性に劣るCBN焼結体に優れた耐摩耗性を付与させることができるので、本発明の工具用複合高硬度材料の基材用のCBN焼結体には、耐摩耗性よりも高靭性かつ高強度であることがより重要な要素として要求される。換言すれば、本発明では、従来では十分な靭性を備えていても耐摩耗性に欠点があるために高硬度の難削材の切削に用いることができなかった材料、例えば、焼結体中の結合材が多量のアルミニウム化合物とTiB2 および不可避的不純物を含むCBN焼結体でも、本発明の超薄膜積層膜を被覆することによって耐欠損性と耐摩耗性とを兼ね備えた理想的な工具用複合高硬度材料となり得る。
【0038】
特に、タイプ(1) のCBN焼結体の出発結合材粉末として、TiNZ (0.5 ≦z≦0.85)またはTiCZ (0.65≦z≦0.85)と、アルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物と、不可避的不純物とを用いた場合には、焼結体中の結合材部の組成が50〜80重量%のTiNと、20〜50重量%のアルミニウム化合物、TiB2 および不可避的不純物とからなる抗折力(JIS規格により測定)が 110 kgf/mm2以上である材料と、焼結体中の結合材部の組成が50〜80重量%のTiCと、20〜50重量%のアルミニウム化合物、TiB2 および不可避的不純物とからなり抗折力(JIS規格により測定)が 105 kgf/mm2以上である材料で上記の効果顕著であり、通常のCBN焼結体工具や従来の耐摩耗層被覆CBN焼結体工具では切削不可能であった高硬度焼入鋼の強断続切削においても実用レベルを十分に満たす工具寿命を実現することができる。
なお、出発結合材粉末として、TiNZ (0.5≦z≦0.85)またはTiCZ (0.65≦z≦0.85)を用いる場合、焼結体中のアルミニウム化合物、TiB2 および不可避的不純物が50重量%を超えるとCBN焼結体の硬度および強度が不十分となり、本発明の工具用複合高硬度材料の基材としては不適当になる。
【0039】
タイプ(2) のCBN焼結体は、平均粒径が3μm以下のCBN粉末を出発材料として用いることによって抗折力が 105 kgf/mm2以上のCBN焼結体を製造することが可能となり、得られた高靭性のCBN焼結体を基材として超薄膜積層膜を被覆することによって、通常のCBN焼結体工具や従来の耐摩耗層被覆CBN焼結体工具では切削不可能であった高硬度の焼入鋼の強断続切削でも実用レベルを十分に満たす工具寿命を実現できる。
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
実施例1
超硬合金製ポットとボールとを用いてTiN粉末とアルミニウム粉末とを80:20の重量比で混合して、結合材粉末を得た。次に、この結合材粉末とCBN粉末とを体積比で30:70となるように配合した後、Mo製容器に充填し、48kbの圧力で 1,400℃で20分間焼結した。
【0041】
得られた焼結体を切削工具用のチップの形に加工した後、チップの切削に関与する部分に真空アーク放電によるイオンプレーティング法によって超薄膜積層膜を付けた。
すなわち、図2に示す成膜装置内にTiのターゲットと、Alのターゲットとを配置し、これらのターゲットの中心に設けた回転式の基材保持具にチップを装着し、成膜装置を 10 -5 Torr の真空度まで減圧し、アルゴン(Ar)ガスを導入して 10 -2Torrの雰囲気にして 500℃に加熱し、基材保持具を回転させながらチップに−2,000 Vの電圧を加えて洗浄する。次いで、Arガスを排気し、N2 ガスを 300 cc/min の割合で導入し、真空アーク放電によってTiおよびAlのターゲットとを蒸発イオン化してチップ上にTiNの層とAlNの層とを交互に積層した。超薄膜積層膜の積層周期と層厚は基材保持具の回転速度と真空アーク放電量とを調整して制御し、全体の層厚は積層時間で制御した。
Tiターゲットを周期律表IVa〜VIa族の他の元素(Zr等)に代えて同様な超薄膜積層膜層を形成させた。
比較例として、同じチップに公知の方法でコーテング膜を付けたものを作った(試料番号1−28〜30) 。
被覆層の構成は〔表1〕〜〔表4〕にまとめて示してある。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
〔表1〜4〕で☆を付けた部分は本発明の定義から外れる部分を示している。例えば、試料1−1では、TiN層=0.14 nm 、AlN層= 0.16 nmで、積層周期が 0.3 nm の超薄膜積層膜 (全膜厚=3.4 μm)であり、本発明の定義に入らない。この超薄膜積層膜膜をTEMで観察したところ、明瞭な積層構造は観られず、アイランド状の混合層となる。
【0047】
〔表1〕の試料1−28〜30は比較例であり、公知のコーティングした切削チップである。試料1−28、29は通常の成膜装置を使用して真空アーク放電を用いたイオンプレーティング法で上記と同じ組成・形状の切削チップの表面にTiN層とTiCN層とを単独または組み合せたて付けた硬質被覆層を有するチップである。試料1−30は通常のCVD法で上記と同じ組成・形状のチップの表面にTiNとA12O3 とを組合せて付けた硬質被覆層を有するチップである。
【0048】
得られた各チップに対して切削テストを行って耐摩耗性を調べた。すなわち、被削材として硬度HRC60のSUJ2の丸棒を用い、この丸棒の外周を切削速度120 m/min 、切込み量 0.2 mm 、送り量 0.1 mm/rev で乾式で20分間切削した後の逃げ面の摩耗幅 (mm) を測定した。結果は〔表5〕にまとめて示してある。
【0049】
【表5】
【0050】
実施例2
実施例1と同じ操作を繰り返したが、成膜装置を図3のものに代え(TiおよびAlのターゲット数を合計4つにした)、実施例1の試料1−6と同じ材料と同じ条件(TiN 層厚:5.9 nm、AlN 層厚:4.0 nm) を用いて超薄膜積層膜を作った。
この超薄膜積層膜が組成変調層を有することはTEM(透過電子顕微鏡)、EDX(分析TEM付帯のエネルギー分散型X線分析計)およびEELS(電子エネルギー損失分析)で確認された。
この場合の逃げ面摩耗幅は 0.100mmであった。
【0051】
実施例3
実施例1と同様な操作を行ったが、基材のCBN含有率(体積%)および結合材の組成(重量%)を〔表6〕に示すものに代えた。
得られた焼結体をX線回折で観察すると、不可避不純物としてのα- Al2O3 、WCおよびCoと思われるピークが観察された。
各CBN焼結体を用いて切削チップを作製し、チップの切削に関与する表面にTiNの中間層をPVD法で2μmの厚さに被覆した後、実施例1と同様な方法TiNとAlNとを超薄膜積層膜の全膜厚が 4.2μmとなるように交互に成膜した。各層の厚さは 2.6 nm で、積層周期は 5.2 nm である。なお、成膜装置を図2のものを使用した。
全ての超薄膜積層膜のX線回折パターンは立方晶構造であることを示した。
〔表6〕には外周4箇所にV形状の溝を有する浸炭焼き入れしたSCM415 の丸棒の外周を各工具を用いて切削した場合の欠損時間(工具が欠損するまでの時間:分)が示してある。
【0052】
【表6】
【0053】
実施例4
CBN粉末と、CoWB、 Co3W3 B、AlNおよびAlB2 よりなる結合材とを体積比で80:20となるように混合したものを焼結圧力 50kb 、焼結温度1,450 ℃で0.5 時間焼結して得られたCBN焼結体を作った。 なお、成膜装置を図2のものを使用した。
各CBN焼結体を切削工具用チップの形に加工した後、実施例1と同様な方法でチップの切削に関与する部分に真空アーク放電によるイオンプレーティング法で超薄膜積層膜を成膜した。ターゲットとしてはTi、Al、Ti−Al、Zr、V、HfおよびCrを用いた。各積層膜TiN、AlN、TiAlN、TiCN、ZrN、VN、CrNおよびHfNの層厚は被覆時間を調節して制御した。
被覆層の構成は〔表7〕〜〔表10〕にまとめて示してある。
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
〔表7〜10〕で☆を付けた部分は本発明の定義から外れる部分を示している。また、試料3−27〜29は比較例の従来法の被覆切削チップであり、実施例1の比較例と同じ方法で作製した。
得られた各切削チップを用い切削テストを行った。
切削テストでは、硬度HRC60のSKD11材の丸棒からなる被削材の外周を切削速度 220m/min 、切込み量 0.5mm、送り量 0.25mm/rev で、乾式で15分間切削した場合の逃げ面摩耗幅(mm)を測定した。結果は〔表11〕にまとめて示してある。
【0059】
【表11】
【0060】
実施例5
実施例1と同じ操作を繰り返したが、Alターゲットの代わりにBターゲットを用いた。超薄膜積層膜の構成は〔表12〕〔表13〕に、また、結果は〔表14〕に示してある。
【0061】
【表12】
【0062】
【表13】
【0063】
【表14】
超薄膜積層膜を被覆していないCBN工具の逃げ面摩耗幅: 0.230 mm
【0064】
実施例6
基材のCBN焼結体を〔表15〕〔表16〕に示すCBN含有率(体積%)および結合材組成(重量%)のものに代えた。各組成は50kb、1450℃で15分間焼結した。
得られた焼結体をSNGN120408(ISO規格)型のチップに加工した後、CH4 ガスとN2 ガスとを用いて実施例1と同様の方法で、先ず、TiCNから成る中間層を2μm被覆し、次に、TiCとAlNとからなる超積層薄膜を膜厚が5μmと成るように被覆した。なお、TiCの層厚は3nm、AlNの層厚は3nmであった。
この超薄膜積層膜を被覆した切削工具を用いて、外周に4箇所のU字形状の溝を有する硬度HRC60のSKD11を被削材として、切削速度 120m/分、切り込み 0.2mm、送り 0.1mm/回転で乾式切削し、1km切削したときの欠損率(サンプル数5)を測定した。比較ために、超薄膜積層膜を被覆していない通常のCBN焼結体もテストした。
得られた結果は〔表17〕にまとめて示してある。
【0065】
【表15】
【0066】
【表16】
【0067】
【表17】
【0068】
【発明の効果】
本発明の複合硬度材料は母材強度が高く、耐摩耗性に優れ、高温硬度、耐酸化性に優れているので、難削鋼の切削に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複合硬度材料の概念的な断面図。
【図2】 本発明の複合硬度材料の超薄膜積層膜を作製する1つの実施例の装置と、この装置で得られる超薄膜積層膜の概念図と、超薄膜積層膜の組成分布とを示す概念図。
【図3】 本発明の複合硬度材料の超薄膜積層膜を作製する別の実施例の装置と、この装置で得られる組成変調層を有する超薄膜積層膜の概念図と、この超薄膜積層膜の組成分布とを示す概念図。
【符号の説明】
1 超薄膜積層膜
1(a) 金属結合性の窒化物、炭化物または炭窒化物
1(b) 共有結合性の化合物
2 CBN焼結体
3 中間層
4 表面層
Claims (17)
- 立方晶型窒化硼素(CBN)を30〜90体積%含み、残部結合材が50〜98重量%のTiC、TiN、TiCN、(TiM)C、(TiM)Nおよび(TiM)CNから成る群の中から選択される少なくとも1種(ここで、MはTiを除く周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の中から選択される遷移金属)と、2〜50重量%のアルミニウム化合物およびTiB 2 とからなる結合材と、不可避的不純物とで構成されるCBN焼結体からなる基材(2)を有する工具用の複合高硬度材料において、
周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素、Al並びにBから成る群の中から選択される少なくとも1種の元素の立方晶型結晶構造を有する主として金属結合性の窒化物、炭化物または炭窒化物(a)と、常温、常圧、平衡状態で立方晶型以外の結晶構造を有する少なくとも1種の主として共有結合性の化合物(b)とが交互に積層された超薄膜積層膜(1) を基材(2) の少なくとも切削に関与する箇所の表面上に有し、超薄膜積層膜(1)の全体の厚さは 0.5〜10μmであり、超薄膜積層膜(1) を構成する個々の単位層は厚さは0.2〜20nmであり、超薄膜積層膜(1) 全体が立方晶型の結晶構造を有ることを特徴とする工具用の複合高硬度材料。 - 基板(2)の残部結合材が50〜98重量%のTiNと、2〜50重量%のアルミニウム化合物およびTiB 2 とからなる結合材と、不可避的不純物とで構成される請求項1に記載の材料。
- 基材(2)が、CBN粉末と、結合材粉末であるTiNZ(0.5≦z≦0.85)、アルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物および不可避的不純物とを出発原料とした焼結体であって、残部結合材が50〜80重量%のTiNと20〜50重量%のアルミニウム化合物、TiB2および不可避不純物とからなり、抗折力(JIS規格により測定)が 110 kgf/mm2以上である請求項2に記載の材料。
- 基板(2)の残部結合材が50〜98重量%のTiCと、2〜50重量%のアルミニウム化合物およびTiB2 とからなる結合材と、不可避的不純物とで構成される請求項1に記載の材料。
- 基材(2)がCBN粉末と、結合材粉末であるTiCZ(0.65≦z≦0.85)、アルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物および不可避的不純物とを出発原料とした焼結体であって、残部結合材が50〜80重量%のTiCと、20〜50重量%のアルミニウムおよび/またはアルミニウム化合物、TiB2および不可避的不純物とからなり、JIS規格で測定した抗折力が105 kgf/mm2以上である請求項4に記載の材料。
- 立方晶型窒化硼素(CBN)を40〜95体積%含み、残部結合材がTiN、CoまたはWの硼化物または炭化物、窒化アルミニウム、硼化アルミニウムおよびこれらの固溶体から成る群の中から選択される少なくとも1種の結合材およびおよび不可避的不純物であるCBN焼結体からなる基材(2)を有する工具用の複合高硬度材料において、
周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素、Al並びにBから成る群の中から選択される少なくとも1種の元素の立方晶型結晶構造を有する主として金属結合性の窒化物、炭化物または炭窒化物(a)と、常温、常圧、平衡状態で立方晶型以外の結晶構造を有する少なくとも1種の主として共有結合性の化合物(b)とが交互に積層された超薄膜積層膜(1) を基材(2) の少なくとも切削に関与する箇所の表面上に有し、超薄膜積層膜(1)の全体の厚さは 0.5〜10μmであり、超薄膜積層膜(1) を構成する個々の単位層は厚さは0.2〜20nmであり、超薄膜積層膜(1) 全体が立方晶型の結晶構造を有し、CBN焼結体のCBN粉末原料の平均粒径が3μm以下である、ことを特徴とする工具用の複合高硬度材料。 - 基材(2)の残部結合材が1〜50重量%のTiNと、CoまたはWの硼化物または炭化物、窒化アルミニウム、硼化アルミニウムおよびこれらの固溶体から成る群の中から選択される少なくとも1種とを含む請求項6に記載の材料。
- JIS規格で測定した基材(2)の抗折力が105 kgf/mm2以上である請求項7に記載の材料。
- 超薄膜積層膜(1) の互いに隣接した2つの単位層の間に組成が連続的に変化する組成変調層を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の材料。
- 共有結合性の化合物(b) がAlまたはBの少なくとも一方を含む化合物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の材料。
- 金属結合性の窒化物、炭化物または炭窒化物(a) がTi、Zr、Cr、V、Hf、AlおよびBからなる群の中から選択される少なくとも一つの元素を含む窒化物、炭化物、炭窒化物、複合窒化物、複合炭化物または複合炭窒化物である請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料。
- 周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の硼化物、窒化物、炭化物、酸化物並びにこれらの固溶体より成る群の中から選択される少なくとも1種の材料からなる膜厚が0.05〜5μmの中間層(3)を基材(2)と超薄膜積層膜(1)との間にさらに有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の材料。
- 周期律表第IVa、VaおよびVIa族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物から成る群の中から選択される少なくとも1種の材料からなる膜厚が 0.1〜5 μmの表面層(4) を超薄膜積層膜(1) の外側表面にさらに有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の材料。
- HRC60以上の硬度を有する高硬度材の切削加工用の請求項1〜13のいずれか一項に記載の材料。
- 高硬度材が焼き入れ鋼または鋳鉄である請求項14に記載の材料。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の工具用複合高硬度材料のHRC60以上の硬度を有する高硬度材の切削での使用。
- 高硬度材が焼き入れ鋼または鋳鉄である請求項16に記載の使用。
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