JP4693129B2 - トリティケーレ粉を含む麺用穀粉組成物及びこれを使用した麺類 - Google Patents

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Description

本発明は、トリティケーレ粉を含む麺用穀粉組成物及びこれを使用した麺類に関する。
うどん、そば、パスタなどの麺類は日本人にとって馴染み深い食品であり、家庭で調理したり、蕎麦屋、うどん屋、レストランなどで提供されるものを利用したりするほかに、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売されている調理済の麺も広く利用されている。
しかしながら、これら調理済の麺は、調理後に時間が経つと麺線同士が付着して固まってしまい、食べ難くなるという欠点があった。
この欠点に対処するために、麺線表面を油脂などでコーティングしたり、食べる前に麺に出し汁をかけたりしてほぐれ易くする工夫がなされている。
また、ガラクトキシログルカンのような添加物で麺の表面を処理するなどしてほぐれを良くする方法も知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、このような方法は、特殊な添加物が必要であったり、製造に余計な工程が必要であったりするなどの問題があった。
特開2006-333796号公報
従って、本発明の目的は、特殊な製麺方法や食品素材、添加物などを使用することなく、ほぐれの良い麺類を提供することである。
本発明者らは前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、麺用穀粉に少量のトリティケーレ粉を混合して製麺すると、ほぐれの良い麺ができることを見出した。
さらに、使用するトリティケーレ粉の比率を検討し、麺用穀粉とトリティケーレ粉を質量比率で99.5:0.5から97.0:3.0の範囲とした場合にほぐれ易く、食感にも優れる麺が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は麺用穀粉とトリティケーレ粉を質量比率が99.5:0.5から97.0:3.0の範囲で配合したことを特徴とする麺用穀粉組成物である。
また、前記麺用穀粉組成物を使用して製造した麺類及び前記麺用穀粉組成物を含む麺用プレミクス粉である。
本発明の麺用穀粉組成物を使用して製造した麺類は、調理後時間が経っても麺線同士が付着しにくいため固まりにくく、ほぐれ易い状態を維持できるとともに、つるみなどの食感にも優れる。
また、本発明の麺類は、通常の製麺設備で製造することが可能であり、特殊な装置や余計な手間はかからない。
さらに、本発明の麺用穀粉組成物に食塩など他の製麺資材をさらに加えることで、麺用プレミクス粉とすることが可能である。
また、本発明の麺類は食品添加物を必要とせず、消費者に受け入れられ易い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の麺用穀粉組成物は、麺用穀粉とトリティケーレ粉を一定の質量割合で配合したことが特徴である。
本発明のトリティケーレ粉とはトリティケーレの頴果を製粉した粉をいう。
トリティケーレとはイネ科の植物であり、学名は、「X Triticosecale Wittmack」である。
本発明における麺用穀粉とは、麺類の製造に使用される穀粉をいう。
麺用穀粉の一例としては、うどんや中華麺などに使用される小麦粉、そばに使用されるそば粉またはそば粉と小麦粉を混合した穀粉、スパゲティなどに使用されるデュラムセモリナなどが挙げられる。
本発明における麺類とは、穀粉と水を主体として、必要に応じて他の資材も加え、捏ねて生地を作ってから線状、シート状などの形状に整形し、茹でるなどの調理をして食べる食品をいう。
代表的な麺類としては、うどん、素麺、冷麦、きしめん、そば、ラーメン、冷やし中華、皮もの(餃子、雲呑など)、パスタ(スパゲティ、マカロニなど)、ちゃんぽん、沖縄そばなどが挙げられる。
本発明の麺用穀粉組成物は、穀粉組成物100.0質量部中にトリティケーレ粉が0.5質量部以上、3.0質量部以下の範囲で含まれている必要がある。
トリティケーレ粉の比率が0.5質量部よりも少ないと、ほぐれ改良の効果が得にくくなる。
逆に、トリティケーレ粉の比率が3.0質量部を超えると、ほぐれは良いものの麺食感が柔らかくなりすぎたり、表面にぬめりを感じたりといった問題が発生して好ましくない。
本発明の方法で製造した麺類は、調理後の麺線表面の保湿力が強くなり、乾燥して粘着性を帯びるのが遅れるために、長時間ほぐれが良い状態を持続するものと推定される。
この保湿効果は、トリティケーレ粉中の水溶性蛋白質や多糖類などの成分によるものと考えられる。
本発明の麺用穀粉組成物に、さらに製麺用の資材、例えば澱粉、植物性蛋白質、食塩などの食品素材や、かんすい、乳化剤などの食品添加物を加え、麺用プレミクス粉として提供することもできる。
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜4、比較例1〜4]うどんによる評価
市販の中力小麦粉にトリティケーレ粉を加え、うどんを試作して評価を行った。
トリティケーレ粉は、北海道産トリティケーレをブラベンダー社製テストミルで挽いたストレート粉を使用した。
なお、ストレート粉とは、製粉によって得られた穀粉を全部混合したものをいう。
トリティケーレ粉の使用量は比較例1で0%、比較例2で0.3%、実施例1で0.5%、実施例2で1.0%、実施例3で2.0%、実施例4で3.0%、比較例3で4.0%、比較例4で5.0%とした。
ここに示した比率は、小麦粉とトリティケーレ粉の質量の合計に対する、トリティケーレ粉の質量の割合を表している。
うどんの製法は以下のとおりである。
1.穀粉(小麦粉とトリティケーレ粉の混合物)100.0質量部に食塩2.0質量部、水34.0質量部を加えて、5分間ミキシングを行い生地とした。
但し、穀粉は水分13.5質量%ベースで水分補正を行った。
穀粉の水分をm質量%とした場合の水分補正の方法は次のとおり:
穀粉の実際の使用量(単位:質量部)=100.0×(100.0−m)÷(100.0−13.5)
水の実際の使用量(単位:質量部)=(100.0+34.0)−穀粉の実際の使用量
2.前記生地を製麺ロールにより整形1回、複合2回、圧延3回行い、最終の麺帯の厚みを2.0mmとし、10番(角)の切歯で切り出し麺線とした。麺線の長さは約25cmとした。
3.前記麺線を麺線質量の約15倍の茹で水(pHを5.5〜6.0に調整)で22分間茹で、冷水で締めてからざるに盛った。
4.10名の熟練のパネラーにより、官能評価を行った。評価項目は外観(色調と肌荒れ)、食感(硬さ、粘弾性、なめらかさの3項目)、風味(食味と香り)の5項目とした。
また、製麺作業性は製麺技術者2名により評価を行った。
これらの評価は7段階とし、非常に劣る=1点、劣る=2点、やや劣る=3点、普通=4点、やや優れる=5点、優れる=6点、非常に優れる=7点として、各項目について全パネラーの平均を評点とした。
なお、評価は比較例1を対照として全項目4点とし、それに対する相対評価で行った。
ほぐれ易さの評価は、次の方法で行った。
1.前述したうどんの製法と同じ方法で得られたうどん(茹でて冷水で締めた麺)を約40gずつ小分けにしてプラスチック容器に入れて蓋をし、冷蔵庫(7℃)に入れて1日置いた。(冷蔵している間に麺線が付着して固まりになるようにした。)
2.1000mlのビーカーに水を800ml入れ、スターラーで攪拌して渦流を作った。(渦流の強さは、トリティケーレ粉を加えていない麺が3〜5秒程度でほぐれるように、あらかじめ予備試験で設定した。)
前記の方法で固めた茹で麺を渦流中に投入し、ほぐれてバラバラになるのに要する時間を測定した。
測定は同一試料で5回繰り返し、その平均をとった。
3.1の方法で固めた茹で麺を素手でほぐして、ほぐれ具合を官能的に確認した。
評価は5名のパネラーで行った。
評価は7段階とし、非常に劣る=1点、劣る=2点、やや劣る=3点、普通=4点、やや優れる=5点、優れる=6点、非常に優れる=7点として、各項目について全パネラーの平均を評点とした。
なお、評価は比較例1を対照(4点)とし、それに対する相対評価で行った。
うどんの評価の結果を表1、うどんのほぐれ性評価の結果を表2に示す。
Figure 0004693129
Figure 0004693129
トリティケーレ粉を入れたうどんでは、トリティケーレ粉使用量が多くなると生地や麺帯がしっとりする傾向が認められたが、製麺作業性には影響ない程度であった。
トリティケーレ粉を入れたうどんは色調がやや明るくなるが、添加量が多くなると白っぽくなり、比較例4ではやや白く不自然な外観であった。
トリティケーレ粉を入れたうどんは、ソフトで弾力が弱くなる傾向にあった。
使用量が3.0質量%まではソフトな粘弾性を感じるが、それを超えると弾力に欠け、食感がやや弱いと感じた。
うどんにトリティケーレ粉を入れると、つるみが強くなり、なめらかな食感になった。
トリティケーレ粉0.5質量%の使用でも、つるみは比較例1よりも明らかに強くなった。
しかし、トリティケーレ粉の量が3.0質量%を超えると、つるみを超えてぬめるような食感になった。
実施例4では大多数のパネラーがつるみありと評価した(若干名はぬめりと評価)が、比較例3では全パネラーがぬめりと評価し、比較例4では全パネラーがひどいぬめりと評価した。
うどんの風味は、トリティケーレ粉を使用しても対照と大差なかった。
うどんのほぐれは、トリティケーレ粉使用量0.5質量%で改良がみられ、添加量が増えるに従って効果が高くなった。
なお、1日置いたうどんでは、トリティケーレ粉を入れた方が表面がしっとりしていたので、ほぐれの良さは麺線表面の保湿力による(乾いてべたつきが出るのを抑える)ものと推定した。
これらの結果より、うどんにトリティケーレ粉を加えると食感(つるみ)とほぐれを改良することができ、トリティケーレ粉の比率を穀粉全体に対して0.5質量%以上、3.0質量%以下とすると良い効果が得られることが確認できた。
なお、3.0質量%の使用でもぬめりを指摘したパネラーが若干名だがいたことを考慮すると、トリティケーレ粉の量を0.5質量%以上、2.0質量%以下とした場合に、一層好ましい結果が得られるといえる。
[実施例5,6、比較例5,6]そばによる評価
トリティケーレ粉を入れたそばを試作し、食感およびほぐれを評価した。
穀粉は、市販のそば粉、市販のそばのつなぎ用小麦粉、および実施例1〜4で使用したのと同じトリティケーレ粉を、表3の比率で配合して使用した。
Figure 0004693129
そばの試作方法は以下のとおりである。
1.表3の穀粉100.0質量部に、水32.0質量部、食塩1.0質量部を加えて、5分間ミキシングを行い生地とした。
但し穀粉は、水分13.5質量%ベースで水分補正を行った。
2.生地を製麺ロールにより整形1回、複合1回、圧延3回行い、最終の麺帯の厚みを1.5mmとし、20番(角)の切歯で切り出し麺線とした。麺線の長さは約25cmとした。
3.前記麺線を麺線質量の約15倍の茹で水で3分間茹で、冷水で締めた後に水を切った。
4.前記冷水で締めた麺を約40gずつ小分けしてプラスチック容器に入れ、蓋をして7℃の冷蔵庫で一日置いた。
5.一日置いた後の麺を、パネラー10名により、官能的に評価した。
評価項目は食感のなめらかさと、ほぐれ具合である。
製麺作業性は製麺技術者2名が評価した。
これらの評価は7段階とし、非常に劣る=1点、劣る=2点、やや劣る=3点、普通=4点、やや優れる=5点、優れる=6点、非常に優れる=7点として、各項目について全パネラーの平均を評点とした。
なお、評価は比較例5を対照として全項目4点とし、それに対する相対評価で行った。
6.1000mlのビーカーに水を800ml入れ、スターラーで攪拌して渦流を作った。(渦流は、前述したうどんの試験と同じ強さとした。)
冷蔵庫で一日置いて固めた麺を渦流中に投入し、ほぐれてバラバラになるのに要する時間を測定した。
測定は同一試料で5回繰り返し、その平均をとった。
結果を表4に示す。
Figure 0004693129
表4のように、そばでもトリティケーレ粉を入れると食感のなめらかさと麺のほぐれが改良されるが、トリティケーレ粉の比率が4.0質量%になるとぬめりが感じられて好ましくないことが確認できた。
[実施例7および比較例7]冷やし中華での評価
中華麺用プレミクス粉を作り、冷し中華を試作して評価を行った。
市販の準強力小麦粉100.0質量部に食塩1.0質量部、かんぷん1.0質量部を加えてよく混合し、比較例7の中華麺用プレミクス粉とした。
市販の準強力小麦粉99.0質量部にトリティケーレ粉1.0質量部、食塩1.0質量部、かんぷん1.0質量部を加えてよく混合し、実施例7の中華麺用プレミクス粉とした。
冷し中華の製法および評価方法は以下のとおりである。
1.中華麺用プレミクス粉100.0質量部に水33.0質量部を加えて5分間ミキシングを行い、生地を得た。(比較例7、実施例7ともに原材料から計算した水分含有量は13.4質量%であった。加水の際に水分換算は行なわなかった。)
2.前記生地を製麺ロールにより整形1回、複合2回、圧延4回行い、最終の麺帯の厚みを1.5mmとし、20番の切歯で切り出し麺線を得た。
麺線の長さは約25cmとした。
3.前記麺線を、麺線質量の10倍程度の茹で水で3分間茹で、茹で湯を切った後に、流水中に晒して冷却した。
3.前記冷却した麺線から水を切り、100gずつプラスチック製の深皿に盛り、食品用の塩化ビニル製ラップをかけて7℃の冷蔵庫中に一日置いた。
4.冷蔵庫中に一日置いた麺に、市販の冷し中華用スープをかけ、熟練のパネラー5名により官能評価を行った。
実施例7のプレミクス粉から作った冷し中華は、比較例7から作ったものと比べて簡単にほぐれ、適度なつるみもあり美味であった。

Claims (3)

  1. 麺用穀粉:トリティケーレ粉の質量比率が99.5:0.5から97.0:3.0である麺用穀粉組成物。
  2. 請求項1に記載の麺用穀粉組成物を使用して製造した麺類。
  3. 請求項1に記載の麺用穀粉組成物を含む麺用プレミクス粉。
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