JP6616601B2 - 乾麺 - Google Patents

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本発明は、中華麺らしい風味を有する乾麺に関する。
ラーメン、やきそば、ちゃんぽん等に用いられる中華麺は、独特のコシと弾力のある食感、風味、色調を有することから、広く普及している人気の麺類である。従来、中華麺は、小麦粉を主成分とする原料粉にアルカリ剤の水溶液を加えて混捏し、製麺機等により圧延した後、切り出して製造されており、このアルカリ剤の水溶液としては、かん水を用いるのが一般的である。かん水は、かん粉とも呼ばれる、かん水原料の水溶液であり、小麦粉中の蛋白質、色素、澱粉等に作用して、中華麺独特の食感、風味、外観を生み出すため、中華麺の製造上、欠くことのできない必須のものとされている。
しかし、かん水を用いた麺類は、加熱調理時に麺線が褐色に変色し、商品価値が著しく低下するという課題がある。斯かる麺線の褐変の課題の解決を図るべく、特許文献1には、麺線中における水酸化カルシウムの含有量を該麺線中の粉体原料に対して重量比で特定範囲とし、その麺線を湿熱下95℃以上で30分以上加熱処理し、加熱処理後の麺線のpHを9.5以上とすることが記載されている。特許文献1によれば、加熱処理時の麺線の褐変が抑えられるだけでなく、保存時においても褐変が進行せず、中華麺風味が高い麺類
が得られるとされている。
また特許文献2には、乾麺、即席麺以外のウェットタイプの麺類で且つ密封包装されたものに関し、麺線のpHを酸性〜中性として加熱殺菌処理した後に、麺線pHを8.1〜9.7の範囲に調整することで、かん水臭が強く中華麺らしい風味を付与でき、しかも保存中に麺線の褐変が生じにくくなることが記載されている(特許文献2の〔0005〕参照)。特許文献2記載の麺類の製造方法は、斯かる知見に基づきなされたもので、さらに、麺線の密封包装に使用する包装体や包装体内の酸素濃度等に改良が施されている。
特許文献3には、加熱せずに水さえあれば容易に可食状態となる冷凍麺として、かん水等のアルカリ性添加材を配合した麺生地から作製した冷凍麺が記載されている。特許文献3記載の冷凍麺は、麺生地を製麺して得られた生麺線を喫食可能な状態まで茹でた後、冷水で水洗いし、さらに冷凍して製造されるもので、乾麺ではない。
特開2002−360197号公報 特開2002−262795号公報 特開平11−9210号公報
本発明の課題は、麺線が変色し難く、喫食時において中華麺らしい風味が豊かな乾麺を提供することに関する。
本発明は、穀粉を含有し且つpHが10以上の乾燥状態の麺線を、雰囲気温度4℃以下の環境に置くことによって得られる乾麺である。
また本発明は、穀粉を用いて麺生地を作製し、さらに製麺し乾燥して、pHが10以上の乾麺前駆体を得る工程と、該乾麺前駆体を雰囲気温度4℃以下の環境に置く工程とを有する、乾麺の製造方法である。
本発明によれば、麺線が変色し難く、喫食時において中華麺らしい風味が豊かな乾麺が提供される。
本発明で用いる穀粉としては、麺原料として通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム粉、又はこれらを乾熱若しくは湿熱処理してなる熱処理粉等の小麦粉の他、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉は、本発明の乾麺の主体を成すものであり、通常、本発明の乾麺の製造に用いる全麺原料の50質量%以上を占める。
本発明の乾麺には、穀粉以外の他の成分を含有させることができる。具体的には例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉、及びこれらにα化、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化処理、架橋処理等の処理を施した加工澱粉;小麦グルテン、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン等が挙げられ、乾麺の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の乾麺は、穀粉を含有する乾燥状態の麺線(乾麺前駆体)を製造中間体とするものであり、その主たる特徴として、1)乾麺前駆体のpHを10以上とすること、及び2)乾麺前駆体を雰囲気温度4℃以下の環境に置くこと、の2点が挙げられる。
麺線(乾麺前駆体)のpHは次の方法で測定することができる。即ち、容器に評価対象の麺線10gと水90gとを入れ、ホモジナイザーで2分間撹拌して被検液を得、該被検液のpHを市販のpHメーターを用いて測定する。
乾麺前駆体のpHを10以上とする主たる理由は、加熱調理後、喫食時に中華麺らしい風味(臭い及び味)を有する乾麺を得るためである。乾麺前駆体のpHは、好ましくは10.0〜11.0である。乾麺前駆体のpHを10以上に調整することは、乾麺前駆体にアルカリ剤を含有させることで可能である。このアルカリ剤としては、食品に添加可能なものを特に制限なく用いることができ、特にかん水原料が好ましい。かん水原料を用いることで、乾麺にいわゆるかん水臭を付与することができ、中華麺らしい風味を一層向上させることができる。
本発明で用いるかん水原料としては、中華麺の製造に通常用いられるかん水の成分、即ち、常温で粉末状のかん粉が用いられ、具体的には例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。かん水原料としては、市販のものを用いることもでき、例えば、オリエンタル酵母工業製の商品名「粉末かんすい赤」が挙げられる。この「粉末かんすい赤」には、かん水原料として、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムが含まれている。
本発明の乾麺の製造中間体である乾麺前駆体のpHを10以上にすることで、喫食時に中華麺らしい風味を有する乾麺が得られる反面、麺線が褐色に変色しやすくなることが懸念される。本発明においては、斯かる懸念を払拭するために、褐変を起こしやすいpH10以上の乾麺前駆体に対して、「雰囲気温度4℃以下の環境に置く処理」(低温処理)を施すこととし、そうすることによって、中華麺らしい風味と麺線の褐変防止との両立を図っている。斯かる低温処理は、麺類の保存性の向上手段としては周知であり、本来的に保存性に難のある生麺については通常実施されているが、本来的に保存性に優れる乾麺には無用のものである。本発明者らは、生麺の保存性向上手段として周知の低温処理が、pHの高い麺線に特有の課題である、麺線の褐変を防止するのに有効であることを知見し、前記1)及び2)の特徴を具備する本発明に想到したものである。
本発明の乾麺は、穀粉を含む麺原料を用い、常法に従って麺生地の作製、製麺、乾燥を順次行って乾燥状態の麺線(乾麺前駆体)を得、しかる後、前記の通り、乾麺前駆体を雰囲気温度4℃以下の環境に置く(低温処理する)ことによって製造することができる。
具体的には、先ず、麺原料に加水し混捏して麺生地を作製し、必要に応じ該麺生地を熟成させた後、適当な厚さに圧延し、任意の幅に細断して生麺線とし、該生麺線を乾燥させて、pH10以上の乾麺前駆体を得る。乾麺前駆体の含水率は、通常の乾麺と同程度にすることができ、好ましくは10〜15質量%である。尚、乾麺前駆体に前記低温処理を施して得られる本発明の乾麺の含水率は、通常、乾麺前駆体の含水率とほぼ同じである。本明細書において含水率は、例えば絶乾法(130℃に加熱し、重量変化を測定する方法)に従って、麺線の全体部分の含水率を測定した値である。
乾麺前駆体は、アルカリ剤の含有量に留意する点以外は、通常の乾麺の製造方法に従って製造することができる。乾麺前駆体におけるアルカリ剤(かん水原料)の含有量は、乾麺前駆体に含まれる穀粉100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1〜2.5質量部である。通常、麺線におけるアルカリ剤(かん水原料)の含有量が増えると、麺線のpHが上昇する。乾麺前駆体においてアルカリ剤(かん水原料)の含有量が少なすぎると、乾麺前駆体のpHを10以上にすることが困難となるため、中華麺らしい風味が豊かな乾麺を得ることが困難となり、逆に、アルカリ剤(かん水原料)の含有量が多すぎると、麺線の変色や食感不良が発生するおそれがある。
次に、pH10以上の乾麺前駆体を、雰囲気温度4℃以下の環境に置く(低温処理)。斯かる低温処理における雰囲気温度は、麺線の褐変防止の観点からは、乾麺前駆体が冷凍されずに冷蔵される程度の範囲(0〜4℃程度)でも問題ないが、中華麺らしい風味の一層の向上の観点からは、乾麺前駆体が冷凍され得る範囲が好ましく、具体的には−10℃以下、特に−10〜−40℃が好ましい。斯かる低温処理時の雰囲気温度の影響は、後述する実施例1及び2と実施例3との対比からも明らかである。低温処理は、雰囲気温度を−20℃〜4℃程度にする場合は冷蔵庫を用いて行うことができ、雰囲気温度を−20℃よりさらに低温にする場合は冷凍庫を用いて行うことができる。低温処理時間は、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは24時間以上である。低温処理時間が短すぎると、麺線の褐変防止効果が十分に得られないおそれがある。低温処理時間は長い分には特に問題はない。
本発明の乾麺は、製造後速やかに、即ち、前記低温処理後速やかに(前記低温処理に引き続き)、雰囲気温度4℃以下の環境で保存することが好ましく、そうすることで、本発明の効果がより確実に奏されるようになる。本発明の乾麺は、麺の種類が制限されるものではないが、かん水臭が要望される用途に適しており、特に中華麺(乾燥中華麺)として好適である。
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
穀粉100質量部に、かん水原料、食塩1質量部を溶解させた水をそれぞれ所定量加え、製麺用ミキサーを用いて、常法により高速(90rpm)で10分間混捏して、グルテンが十分に形成された麺生地を作製した。次にこの麺生地を、製麺ロールを用いて圧延して厚さ1.4mmの麺帯にした後、22番の角の切刃(麺線幅約1.4mm)を用いて麺線に切り出した。切り出した麺線を常法により乾燥させ、乾麺前駆体を得た。次いで、得られた乾麺前駆体を所定の環境に所定時間置く保存処理を行い、乾麺(乾燥中華麺)を製造した。穀粉としては小麦粉(強力粉、日清製粉製「特ナンバーワン」)を用い、かん水原料としてはオリエンタル酵母工業製「粉末かんすい赤」を用いた。
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の乾麺を加熱調理して中華麺風味(かん水臭)及び麺線の変色についての評価試験に供した。具体的には、評価対象の乾麺100gを沸騰水中で最適な可食状態になるまで茹で、その茹で麺を10人のパネラーに食してもらい、中華麺風味(かん水臭)及び麺線の変色を下記評価基準により評価してもらった。その結果(パネラー10人の平均点)を下記表1に示す。
(中華麺風味の評価基準)
・比較例1(従来の乾燥中華麺)を対照品として、下記基準によって評価する。
5点:対照品に比して、かん水臭がかなり強く感じられ、非常に良好。
4点:対照品に比して、かん水臭が強く感じられ、良好。
3点:対照品と略同じ強さのかん水臭が感じられる。
2点:対照品に比して、かん水臭が弱く感じられ、不良。
1点:かん水臭がほとんど感じられず、非常に不良。
(麺線の変色の評価基準)
・比較例1(従来の乾燥中華麺)を対照品として、下記基準によって評価する。
5点:麺線の色が対照品と同じであり、麺線に変色が見られない。
4点:麺線の色が対照品に比してわずかに褐色を呈しているが、問題ないレベル。
3点:麺線の色が対照品に比して少し褐色を呈しているが、問題ないレベル。
2点:麺線の色が対照品に比してやや褐色を呈している。
1点:麺線の色が対照品に比してかなり褐色を呈している。
Figure 0006616601

Claims (3)

  1. 加熱調理後の可食状態においてかん水臭を有し、且つ乾燥状態とした後の麺線に変色が生じにくい乾麺であって、
    穀粉を含有し且つpHが10以上で絶乾法により測定した含水率が10〜15質量%の乾燥状態の麺線(但し、乾燥前に前調理したものを除く)を得た後該麺線を雰囲気温度4℃以下の環境に24時間以上置く低温処理を行うことによって得られる乾麺。
  2. 加熱調理後の可食状態においてかん水臭を有し、且つ乾燥状態とした後の麺線に変色が生じにくい乾麺を製造する、乾麺の製造方法であって、
    穀粉を用いて麺生地を作製し、さらに製麺し乾燥して、pHが10以上で絶乾法により測定した含水率が10〜15質量%の乾麺前駆体(但し、乾燥前に前調理したものを除く)を得る工程の後に、該工程とは不連続の工程として、該乾麺前駆体を雰囲気温度4℃以下の環境に24時間以上置く低温処理を行う工程を具備する、乾麺の製造方法。
  3. 前記低温処理を行う工程においては、前記乾麺前駆体を−10〜−40℃の環境に置く、請求項2に記載の乾麺の製造方法。
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