JP4691755B2 - 被覆用組成物及び表面被覆材料 - Google Patents
被覆用組成物及び表面被覆材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自己架橋型の水系アクリルエマルジョンにシリコン系化合物,フッ素系化合物,ポリエチレン系化合物の群から選ばれる潤滑性化合物を混合した水系被覆用組成物、更には酸性化合物も含有せしめた該組成物と、該組成物を60〜300℃で焼付けて得られる、高い硬度、良好な耐汚染性、常温及び高温の潤滑性に優れた表面被覆材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エマルジョン、サスペンジョン、ラテックス等と呼称される微細粒子の液状媒体分散体は従来から、水性塗料、接着剤、紙塗工剤、皮革の下地調整剤、セメント用混和剤、フィルムの滑剤、繊維のバインダー等として広く利用されている。水性塗料として鋼板や樹脂板等に塗布して塗膜を形成させた場合、塗膜の耐傷付き性、耐汚染性、耐候性、鋼板や樹脂板同志の非接着性、良好な外観といった要求に加え、最近では機械加工時の塗油を省略するため潤滑性が要求される。又、用途によっては耐溶剤性、耐アルカリ溶出性も要求される。
【0003】
これらの要求を満たすため塗膜は硬く、かつ潤滑性を高くする必要があるが、従来の水系エマルジョンで、塗膜を硬くすることは難しい。また、潤滑性を高めるためには水系エマルジョンに潤滑剤を混合することは容易に考えつくが一般に使用される潤滑剤と水系エマルジョンとは混合性が悪く、数日あるいは瞬時に凝集してしまうことが多い。また、連続して機械加工を行うと、加工機械のダイスが加熱されて高温になるが塗膜の高温潤滑性が伴わず、カジリといった問題や機械加工条件を変更しなければならないといった問題が生じる。
【0004】
そのため現在は、メラミン、エポキシ、ウレタン等の架橋性成分を持つ有機溶剤系塗料を200℃あるいは300℃といった高温で焼付けることで硬くかつ潤滑性の良い塗膜を得ているが、揮発した有機溶剤の回収や、高温を得るために大がかりな炉が必要となる。また特開平11−80485号公報開示の発明には自己架橋する水系エマルジョンの記載があるが、該発明における自己架橋性単量体の反応性が低いので低温での焼付け性に劣り、潤滑性に関しては、何ら開示していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記従来技術の欠点を解消し、完全水系で、低温で焼き付けた場合でも、高い硬度、良好な耐汚染性及び外観、常温及び高温での潤滑性能に優れた皮膜を形成しうる被覆用組成物及び該皮膜で被覆された表面被覆材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。
【0007】
すなわち本発明は、ビニル重合性の自己架橋性単量体2〜30重量%とその他の共重合性単量体を非重合性乳化剤の存在下に共重合してなるアクリル系共重合体の水系エマルジョンと、上記水系エマルジョンの固形分に対し2〜10重量%のシリコン系化合物,フッ素系化合物,ポリエチレン系化合物の群から選ばれる潤滑性化合物とを、必須成分とする被覆用組成物である。さらに該組成物には、燐酸系化合物、硫酸、硝酸、塩酸の群から選ばれる1種以上の酸性化合物を上記水系エマルジョンの固形分に対し0.5〜10重量%含有せしめてもよく、自己架橋性単量体はN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルの群から選ばれるものであることが推奨される。
【0008】
また本発明は、かかる組成物を60〜300℃で焼付けてなる、6H以上の鉛筆硬度、良好な耐汚染性と、25℃での動摩擦係数0.15以下かつ120℃での動摩擦係数として25℃におけるものの1.2倍未満を有する皮膜で被覆された表面被覆材料をも包含する。
【0009】
【発明の実施の形態】
前述の通り自己架橋性単量体としては、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルの群から選ばれたものが好ましい。尚、本発明で言う自己架橋性単量体とは、ヒドロキシアルキルアミド基,メトキシアルキルアミド基,エポキシ基といった官能基を有し、該官能基同志でまたは該官能基と本願共重合に採用するその他の共重合性単量体である(メタ)アクリル酸のカルボキシル基や水酸基含有単量体の水酸基とで反応するようなものを言うのであり、上述の化合物群が代表的である。具体的には、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシブチル(メタ)アクリルアミド等即ちアルキルとしてはC1 〜C4 が挙げられる。これらの自己架橋性単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。尚、(メタ)アクリル〜と表記しているのは、メタアクリル〜又はアクリル〜を表している(以下、同様)。
【0010】
自己架橋性単量体は、エマルジョンを形成する単量体総量の2〜30重量%使用する。2重量%未満の場合には、鉛筆硬度、耐汚染性、常温及び高温での潤滑性が悪くなり、30重量%を超える場合には、水系エマルジョンとしての安定性が悪くなり採用できない。
【0011】
その他の共重合性単量体としては、上述した自己架橋性単量体と共重合するものである限り、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル,スチレン,(メタ)アクリル酸,水酸基含有単量体から選ばれる単量体を1種又はそれ以上用いることが好ましい。これらのその他の共重合性単量体の総量は自己架橋性単量体を除いた量であり、70〜98重量%となることは言うまでもない。
【0012】
かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸セカンダリーブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のC1 〜C8 のアルキルエステルや(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。これらの単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0013】
上述した水酸基含有単量体とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル鎖中に水酸基を1つ以上有するものを言い、かかる水酸基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの水酸基含有単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン、(メタ)アクリル酸、水酸基含有単量体は、上述したように70〜98重量%使用される。70重量%未満の場合には、水系エマルジョンの安定性が悪くなり、98重量%を超える場合には、得られる皮膜の鉛筆硬度、耐汚染性、耐溶剤性、耐アルカリ溶出性、高温での潤滑性が悪くなり採用できない。
【0015】
かかる単量体混合物を水系で共重合する本発明のエマルジョンは、重合に際して非重合性乳化剤を採用する。非重合性乳化剤とはそれ自身の分子量が比較的高く、水と相溶性の良い官能基を有し、ビニル基等の付加重合性の官能基を有さないものを言い、上記単量体が重合して形成される重合主鎖の中には取り込まれないところに特徴がある。この非重合性乳化剤の存在が下記するように本発明組成物の安定性に有効である。
【0016】
非重合性乳化剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分子量が2万程度のポリオキシエチレン等のアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤の他、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドといった水溶性保護コロイドや、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基を持つ単量体を重合して合成した物等が挙げられる。これらの非重合性乳化剤は混合して使用しても差しつかえない。非重合性乳化剤を用いなかった場合には、重合段階でアクリルエマルジョンに凝集物が発生し結果として安定性が悪くなったり、水系エマルジョンと混合するシリコン系化合物、フッ素系化合物、ポリエチレン系化合物等との混和安定性が悪くなったりするので、かかる乳化剤の使用は必須である。使用量は重合条件にも依るが、大概単量体混合物100重量部当たり1〜5部程度である。
【0017】
このような水系エマルジョンに添加する潤滑性化合物(以下、潤滑剤とも言う)としてはシリコン系化合物、フッ素系化合物、ポリエチレン系化合物から選ばれ、これらは混合して使用しても差しつかえない。これらの例としてはシリコン系化合物であるペインタッド51(ダウコーニングアジア(株)製),KM−862(信越シリコン(株)製)、ポリエチレン系化合物であるケミパールW700(三井化学工業(株)製),KSL−240A(フタバファインケミカル(株)製)、メイカテックスHP−50(明成化学工業(株)製)、サンリーフCLA−3(三洋化成工業(株)製)、フッ素系化合物であるフルオンAD−1(旭IC(株)製),ポリフロンLDW40(ダイキン工業(株)製)等がある。水系エマルジョンに添加するときの潤滑剤の形態としては粒子径が10μm以下で湿潤状態であるのが好ましく、添加する方法は、水系エマルジョン攪拌下に潤滑剤を少量ずつ添加することが推奨される。
【0018】
かかる潤滑剤は水系エマルジョンの固形分に対し2〜10重量%含有させることが必要である。2重量%未満の場合では、常温及び高温いずれでも潤滑性が悪く、10重量%を超える場合では、組成物中で水系エマルジョンに凝集物が発生し結果として組成物自体の安定性が悪くなる。尚本発明が推奨する以外の潤滑剤、例えばステアリン酸系化合物のような直鎖アルキル酸化合物を潤滑剤として用いた場合、添加量が2〜10重量%であっても本発明の水系エマルジョンと混合すると、組成物は数日で凝集してしまう。なお、本発明の被覆用組成物は、上述してきた水系エマルジョンとその固形分の2〜10%の潤滑剤とを必須成分とするものであり、その他の成分として、防錆剤、増粘剤、後述する酸性化合物等を加えてもかまわない。
【0019】
上述した水系エマルジョンの固形分に対し酸性化合物を0.5〜10重量%含有させることで、自己架橋性単量体の架橋反応を促進させ、60〜120℃といった比較的低温で焼き付けた場合においても、良好な耐溶剤性及び耐アルカリ溶出性を有する表面被覆材料を得ることができる。0.5重量%未満の場合では、促進剤としての効果が薄く、結果として低温で焼き付けた場合の表面被覆材料の耐溶剤性及び耐アルカリ溶出性が劣り、10重量%を超える場合では、被覆用組成物自体のpHを著しく低下させることになり操業の安全性が欠けてしまう。
【0020】
酸性化合物としては、燐酸系化合物、硫酸、硝酸、塩酸の群から選ばれ、解離性の水素イオンを有するものが好ましい。燐酸系化合物としては、燐酸二水素アンモニウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸一水素ナトリウム、燐酸三ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウム、燐酸二水素マグネシウム、第一燐酸アルミニウム、次亜燐酸、正燐酸、ポリ燐酸が挙げられる。これらの酸性化合物は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0021】
以上説明した被覆用組成物の製造方法は、限定するものではないが一例を示せば以下のようである。
即ち所定量の非重合性乳化剤と脱イオン水とを反応槽に入れて液温度を70℃に上昇させる。これに所定量の単量体混合物に油溶性重合開始剤を溶解したもの、又は所定量の単量体混合物と過硫酸アンモニウム水溶液と酸性亜硫酸ソーダ水溶液を同時並行に2時間で終了するように攪拌しながら滴下した後、引き続き70℃にて2時間攪拌しながら重合反応を行って水系エマルジョンを得る。次いで、10〜50℃,約100rpmの攪拌下にある上記の水系エマルジョンに湿潤した潤滑剤を少量ずつ添加し組成物を得るといった方法が挙げられる。また酸性化合物を加える場合には、10〜50℃,約100rpmの攪拌下にある上記組成物に添加するといった方法が挙げられる。
【0022】
かかる発明の組成物の、被覆対象材料に対する皮膜の焼付け温度としては60〜300℃が良い。焼付け温度が60℃未満の場合、溶媒である水分の除去が困難であるといった問題や、共重合体中の自己架橋性単量体部分の架橋形成が不充分で、皮膜の鉛筆硬度、皮膜の外観、常温及び高温での潤滑性が悪く、300℃を超える場合では、皮膜の分解が徐々に開始され燃焼してしまうといった問題や、加熱する設備が大がかりとなり、かつ処理材料を強制的に冷却する設備がさらに必要となり好ましくない。かくして得られる本発明の組成物からの皮膜は、6H以上の鉛筆硬度と、良好な耐汚染性と、25℃での動摩擦係数0.15以下かつ120℃での動摩擦係数として25℃におけるものの1.2倍未満を有する優れた物性を有する。なお、表面被覆材料の用途によっては、耐溶剤性や耐アルカリ溶出性が必要とされる。このような要求に対して、酸性化合物を含有していない本発明の被覆用組成物を用いた場合、120℃以上の焼付け温度が必要となるが、酸性化合物を含有させた被覆用組成物では、60℃〜120℃の焼付け温度でも、優れた耐溶剤性(後述の評価方法で4級以上)、耐アルカリ溶出性(後述の評価方法で10%以下)を有する皮膜が得られる。
【0023】
本発明組成物の被覆対象材料としては、冷延鋼板,アルミ板、アルミ合金めっき鋼板、亜鉛板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、ABS樹脂板等が挙げられ、とくに鋼板に施用した場合には上述の皮膜の低・高温を通じての潤滑性の良さから、連続プレス加工等にも耐え効果が大きい。
【0024】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各評価は、次の方法により測定及び判定を行ったものである。
【0025】
1.組成物安定性
水系エマルジョンを主とする組成物を50mlのガラスビンに約30mlとり、密栓して50℃で1ケ月間静置した。1ケ月後のエマルジョンの状態を目視で判定した。
○ : 凝集、増粘、沈降、分離なく良好である。 ・・・ 合格
△ : 凝集物及び又は沈降物が発生する。 ・・・ 不合格
× : ゲル化する。 ・・・ 不合格
【0026】
2.潤滑性(動摩擦係数)
水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した塗膜上に25℃に調整した室内において一定の速度(10cm/分)で錘を滑らせ、その時の摩擦で生じた荷重を測定する。下式により動摩擦係数を算出した。なお、高温での潤滑性に関しては基材の下に電気ヒーターを設置し、塗膜を予め120℃まで加熱しておき、その時の動摩擦係数を上記方法で測定した。
(JIS K−7125)
動摩擦係数=錘の重さ(g)/摩擦で生じた荷重(gf)
【0027】
3.耐汚染性
水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した塗膜上に10%カーボンブラック水分散液を2ml1個所に滴下し、80℃熱風乾燥機内で24時間放置する。試料を取り出しカーボンブラック滴下部を純水流水下でウェス等でこすり、塗膜上のカーボンブラック付着状態を目視で判定した。
◎ : 付着していない ・・・ 合格
○ : うっすらと見える程度付着している ・・・ 合格
△ : 目立つ程度付着している ・・・ 不合格
× : 明らかに付着している ・・・不合格
×× : 明らかに付着し、かつ周囲に拡がる ・・・ 不合格
【0028】
4.鉛筆硬度
水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した塗膜をそれぞれ硬さが異なる鉛筆でひっかき塗膜が破損しない鉛筆の硬度を読んだ。
【0029】
5.耐溶剤性
水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した塗膜上を、エチルアルコールをウェス等に染み込ませたもので約1kgの荷重で5往復擦る。その後塗膜上の外観変化を目視で判定した。
5(級):外観変化なし
4(級):目視角度によっては変化が認められる
3(級):わずかに変化している
2(級):明らかに変化している
1(級):皮膜が剥がれている
【0030】
6.耐アルカリ溶出性
予め基材の重量を測定し、水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の前記基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した基材を含む塗膜の重量を測定し、塗膜重量Aを求める。その後予め2重量%に調整したサーフクリーナーSD280MZ(日本ペイント(株)製)のアルカリ水溶液を43℃に保温し、その中に基材を含む塗膜を2分間浸漬させる。2分後取り出し軽く水洗し、50℃の熱風乾燥機中で水分が無くなるまで乾燥する。その後再び基材を含む塗膜の重量を測定し、アルカリ処理後にも基材上に滞っている塗膜重量Bを求め、下式に示すアルカリ溶出率(%)を求める。
アルカリ溶出率(%)={1−(B/A)}×100
【0031】
7.塗装外観
水系エマルジョンを主とする組成物を鋼板等の基材上にロールコーティング後、熱風乾燥機中に所定の到達温度になるまで静置し、塗膜を焼付ける。常温まで冷却した塗膜表面の外観を目視により判定した。
○:変色なし
△:若干変色している
×:明らかに変色している
【0032】
実施例1
(非重合性乳化剤の合成)
脱イオン水893部(重量部。以下同じ),表1の組成欄に示した組成の単量体100部,過硫酸アンモニウム3部,酸性亜硫酸ソーダ4部を反応槽に入れて攪拌しながら液温度を70℃に上昇させる。引き続き70℃にて12時間攪拌しながら重合反応を行い本発明を満たす非重合性乳化剤a〜cを合成した。尚表1には、本発明の非重合性乳化剤として採用し得る市販の界面活性剤等d〜fも併記した。
【0033】
【表1】
【0034】
※MAA :メタクリル酸
※VSS :ビニルスルホン酸ソーダ
※HEA :アクリル酸2−ヒドロキシエチル
※SPSS:p−スチレンスルホン酸ソーダ
【0035】
実施例2
(水系エマルジョンの合成)
脱イオン水495部(重量部。以下同じ)と表2に示した非重合性乳化剤5部を反応槽に入れて液温度を70℃に上昇させる。これに表2のその他の共重合性単量体組成欄に示した組成の単量体混合物300部、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水97部に溶解した液及び酸性亜硫酸ソーダ4部を脱イオン水96部に溶解した液とを同時並行的に2時間で終了するように攪拌しながら滴下した後、引き続き70℃にて2時間攪拌しながら重合反応を行って本発明を満たす水系エマルジョンNo.A〜Pを合成した。
【0036】
また、比較例として、本発明を外れる水系エマルジョンNo.Q〜Vを表2に示す単量体共重合割合にて同様に合成した。表2中の「エマルジョン安定性」とはこれらの水系エマルジョンを密閉した容器に入れ、50℃で1ケ月間静置したものを目視で評価したものであり、○は凝集、増粘、沈降、分離なく良好であるものを、△は凝集物及び又は沈降物が発生するものを、×はゲル化するものを表す。
【0037】
【表2】
【0038】
※MMA :メタクリル酸メチル
※n−BA :アクリル酸n−ブチル
※i−BMA :メタクリル酸イソブチル
※2EHMA :メタクリル酸2−エチルヘキシル
※CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
※St :スチレン
※MAA :メタクリル酸
※HEA :アクリル酸2−ヒドロキシエチル
※N−MAM :N−メチロールアクリルアミド
※N−MMAM:N−メトキシメチルアクリルアミド
※GMA :メタアクリル酸グリシジル
※DvB :ジビニルベンゼン
【0039】
表2から、本願発明の要件を充たす水系エマルジョンA〜Pは重合もスムースで生成したエマルジョンの安定性も優れることが理解される。他方自己架橋性単量体が過大であるR、非重合性乳化剤を採用していないVは、エマルジョン自体がすでに安定性に欠ける。自己架橋性単量体が過少であるQ及びS、重合性乳化剤であるSPSSを使用したT、自己架橋性単量体ではないDvBを使用したUは水系エマルジョン自体の安定性は問題無いが、以下に示すように潤滑剤を含有せしめた組成物となると欠陥を露呈する。
【0040】
実施例3〜7及び比較例1〜3
表2に示した水系エマルジョンCを用い、表3に示す各種潤滑剤4種を水系エマルジョンの固形分に対し、表3に示す各々の量を混合した被覆用組成物(以下単に組成物とも言う)を調整し、アルミ板上に該組成物を、焼付け後の皮膜が3μmになるようにロールコーティングした後、到達温度が130℃になるよう焼き付けし被覆用組成物の皮膜で被覆された表面被覆鋼板を得た。表3に組成物の安定性他鋼板の表面特性の評価結果を示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3から、本願発明の要件を充たす実施例3〜7は塗装性、鉛筆硬度、耐汚染性も良好で、常温及び高温での動摩擦係数から潤滑性も優れることが理解される。又、耐溶剤性や耐アルカリ溶出性も優れている。他方潤滑剤の混合量が過大である比較例2や、ステアリン酸系化合物の潤滑剤を使用した比較例3は、組成物自体の安定性が欠け、鋼板へのコーティングに至れなかった。潤滑剤の混合量が過少である比較例1は組成物自体の安定性は問題ないが、常温及び高温での潤滑性が欠ける。
【0043】
実施例8〜22及び比較例4〜8
表2に示した水系エマルジョンを用い、水系エマルジョンの固形分に対しペインタッド51(シリコン系化合物)5重量部を混合した被覆用組成物を調整し、表4に示す各種素材の鋼板上に該組成物を焼付け後の皮膜が3μmになるようにロールコーティングした後、到達温度が130℃になるよう焼き付けし被覆用組成物の皮膜で被覆された表面被覆鋼板を得た。表4に組成物の安定性他鋼板の表面特性の評価結果を示す。
【0044】
【表4】
【0045】
※素材1 :アルミ板
※素材2 :電気亜鉛めっき鋼板
【0046】
表4から、本願発明の要件を充たす実施例8〜22は塗装性、鉛筆硬度、耐汚染性も良好で、常温及び高温での動摩擦係数から潤滑性も優れることが理解される。又、実施例20及び22を除いて、耐溶剤性、耐アルカリ溶出性も優れている。実施例20及び22は耐アルカリ溶出性に劣っている。これは、共重合成分としてMAAを多く含んでいるためと考えられるが、他の性能は優れており耐アルカリ溶出性を要求しない用途に対しては十分実用的なものである。他方自己架橋性単量体の混合量が過少である比較例4及び5、自己架橋性単量体ではないDvBを使用した比較例6は組成物自体の安定性は問題ないが、耐汚染性,鉛筆硬度及び高温での潤滑性が欠け、非重合性乳化剤を用いない比較例7及び8は潤滑剤と混合した組成物の安定性が欠ける。
【0047】
実施例23〜32及び比較例9〜11
表2に示した水系エマルジョンCを用い、水系エマルジョンの固形分に対しペインタッド51(シリコン系化合物)5重量部と、表5に示す各種酸性化合物を混合した被覆用組成物を調整し、アルミ板上に該組成物を焼付け後の皮膜が3μmになるようにロールコーティングした後、表5に示す到達温度になるよう焼き付けし被覆用組成物の皮膜で被覆された表面被覆鋼板を得た。表5に組成物の安定性他鋼板の表面特性の評価結果を示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5から、本願発明の要件を充たす実施例23〜32は塗装性、鉛筆硬度、耐汚染性も良好で、常温及び高温での動摩擦係数から潤滑性も優れることが理解される。また焼付け温度が120℃以上の実施例4,31,32は耐溶剤性、耐アルカリ溶出性に優れており、酸性化合物を混合した実施例26〜30においては80℃といった比較的低温領域の焼付け温度でも良好な耐溶剤性、耐アルカリ溶出性を可能としている。なお、実施例23〜25は、若干耐溶剤性、耐アルカリ溶出性に劣るが、その他の性能は優れており、耐溶剤性、耐アルカリ溶出性を要求しない用途に対しては、十分実用的なものである。他方焼付け温度が低温に過ぎる比較例9は満足な皮膜硬度が得られず、耐汚染性も劣る。焼付け温度が過度に高い比較例10は表面被覆材及び潤滑剤が分解し、塗膜評価まで至っていない。酸性化合物の混合量が過大である比較例11は焼付け後の塗装外観が劣り、また組成物のpHが著しく低下してしまうため操業の安全性が著しく欠ける。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、安全性及び環境面に優れた水系エマルジョンをベースとする、高い硬度と低温から高温まで潤滑性の安定した皮膜を与える被覆用組成物並びに該皮膜で被覆された表面被覆材料が提供される。本組成物は、例えば鋼板等に施用されると該鋼板は従来は高温における潤滑性の低下の為に不可能であった連続打抜き加工も行い得る。
Claims (3)
- N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルの群から選ばれるビニル重合性の自己架橋性単量体2〜30重量%と(メタ)アクリル酸エステル,スチレン,(メタ)アクリル酸,(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル鎖中に水酸基を1つ以上有する水酸基含有単量体から選ばれる単量体を1種又はそれ以上を非重合性乳化剤の存在下に共重合してなるアクリル系共重合体の水系エマルジョンと、上記水系エマルジョンの固形分に対し2〜10重量%のシリコン系化合物,フッ素系化合物,ポリエチレン系化合物の群から選ばれる潤滑性化合物とを、必須成分とする被覆用組成物。
- 燐酸系化合物、硫酸、硝酸、塩酸、の群から選ばれる1種以上の酸性化合物を上記水系エマルジョンの固形分に対し0.5〜10重量%含有せしめてなる請求項1に記載の被覆用組成物。
- 請求項1または2に記載の組成物を60〜300℃で焼付けてなる、6H以上の鉛筆硬度、25℃での動摩擦係数0.15以下かつ120℃での動摩擦係数として25℃におけるものの1.2倍未満を有する皮膜で被覆された表面被覆材料。
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