JP7079492B2 - 粉体塗料用添加剤、粉体塗料組成物および塗膜 - Google Patents
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Description
無機粒子と、
前記無機粒子に担持されたシリケート化合物と、
前記無機粒子に担持された(メタ)アクリル系共重合体とを含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基およびアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマー(M1)に由来するモノマー単位(U1)を、該(メタ)アクリル系共重合体の質量に対して、30質量%以上含む、粉体塗料用添加剤、該粉体塗料用添加剤を含む粉体塗料組成物および該粉体塗料組成物から得られる塗膜であることを要旨とする。
本発明に係る粉体塗料組成物によれば、得られる塗膜の耐汚染性が良好である。
本発明に係る塗膜によれば、耐汚染性が良好である。
前記無機粒子は、粉体塗料用添加剤においてシリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体を担持する基材である。使用可能な無機粒子は特に限定されない。例えば、無機顔料として知られている無機粒子を挙げることができる。より具体的には、白色無機顔料または体質顔料が、塗料の色目に大きな影響を与えにくい等の点で好ましい。白色無機顔料の具体例としては、二酸化チタン(チタン白、チタニア)、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、アンチモン白などを挙げることができる。体質顔料としては、バリタ粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、含水珪酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉等を挙げることができる。
前記シリケート化合物は、1個または数個のケイ素原子を中心とし、電気的に陰性な配位子がケイ素原子を取り囲んだ構造を有するアニオンを含む化合物である。シリケート化合物は、粉体塗料用添加剤を含む粉体塗料組成物から得られる塗膜において加水分解して親水化することで、塗膜に耐汚染性を付与する。シリケート化合物としては、例えば、アルコキシシランおよびアルコキシシランの縮合物、並びに該縮合物を変性したものを用いることができる。具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、テトラオクチルオキシシランなどのテトラアルコキシシランが挙げられ、これらの縮合物、並びに該縮合物を変性したものを用いることができる。また、例えば、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン、イソブチルメトキシシランやイソブチルトリエトキシシラン等のイソブチルアルコキシシラン、オクチルトリメトキシシランやオクチルトリエトキシシラン等のオクチルトリアルコキシシランなどが挙げられ、これらの縮合物、並びに該縮合物を変性したものを用いることができる。なお、シリケート化合物は、1種類を用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
前記(メタ)アクリル系共重合体は、主としてアクリル酸またはメタクリル酸およびこれらの誘導体、例えばアクリルアミドなどの重合体を包含する高分子化合物であり、2種類以上の(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られる。なお、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。
前記第1モノマー(M1)は、例えば、下記の一般式(1)に示す水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。第1モノマー(M1)は、親水性官能基である水酸基およびアミド基に由来して、極性を有すると共に親水性である。
前記第2モノマー(M2)としては、例えば、下記の一般式(2)に表される(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。一般式(2)に示す第2モノマー(M2)は、水酸基およびアミド基を有していない点が第1モノマー(M1)と異なっており、第1モノマー(M1)よりも極性が小さいものが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体は、第1モノマー単位(U1)と異なる第2モノマー単位(U2)を含むことで、例えばTgや塗膜での表面配向性などの性状が適当になるように調整している。
前記第3モノマー(M3)としては、例えば、第1モノマー(M1)が有する水酸基およびアミド基の一方を炭化水素基等の非極性官能基に置き換えた(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。換言すると、第3モノマー(M3)は、第1モノマー(M1)よりも化学構造的に極性官能基が少ないものであり、例えば、下記の一般式(3)に示すヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや下記の一般式(4)および(5)に示す(メタ)アクリルアミド系モノマー、あるいはこれらの塩が挙げられる。なお、第3モノマー(M3)は、極性を有すると共に親水性であるものが用いられる。第3モノマー(M3)としては、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシモノマー、ジメチルアクリルアミド(DMAA)やジエチルアクリルアミド(DEAA)やジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)やジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(DMAPAA-Q)等のアミド系モノマーなどの親水性モノマーを用いることができる。
前記第4モノマー(M4)としては、前述のように、アクリル酸やメタクリル酸が挙げられる。第4モノマー(M4)の量は、(メタ)アクリル系共重合体となるモノマー組成物の総量に対して、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。第4モノマー(M4)の使用は任意であるため、使用量の下限は0である。ただし、第4モノマー(M4)による効果を十分に得る観点では、下限は好ましくは1質量%以上である。
換言すると、(メタ)アクリル系共重合体が第4モノマー(M4)に由来する第4モノマー単位(U4)を含む場合、その割合は、該(メタ)アクリル系共重合体の質量に対して、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
前記(メタ)アクリル系共重合体は、例えば以下のような方法で得ることができる。第1モノマー(M1)および重合開始剤と、必要に応じて加えられる第2モノマー(M2)、第3モノマー(M3)および第4モノマー(M4)とを混合した混合物を、窒素等の不活性ガス雰囲気下で所定温度に加熱したイソプロピルアルコール(IPA)等の溶媒中に加える。混合したモノマーからなるモノマー組成物を重合することで、(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物を得ることができる。この製造方法によれば、第2モノマー単位(U2)、第3モノマー単位(U3)および第4モノマー単位(U4)のうちの全部または一部と、第1モノマー単位(U1)とからなる配列に秩序がないランダム共重合体である(メタ)アクリル系共重合体を得ることができる。
前記重合開始剤は、例えば、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)や2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)や2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤や、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの過酸化物系重合開始剤などを用いることができる。なお、アゾ系重合開始剤は、モノマーの側鎖など、モノマーにおける狙いと別の箇所と反応し難いので、過酸化物系重合開始剤よりも好ましい。
得られた(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物と、シリケート化合物と、無機粒子とを混合し、乾燥させ、更に篩い等で分級することで、粉体塗料用添加剤を得ることができる。粉体塗料用添加剤は、微細な粉状であり、用いられる無機粒子の平均粒径に由来して平均粒径が規定される。
前記粉体塗料用添加剤は、シリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量と、無機粒子の質量との比の値を、以下の式1に示すように、2.5以下に設定することが好ましい。
(シリケート化合物+(メタ)アクリル系共重合体)/無機粒子≦2.5 ・・・(式1)
粉体塗料用添加剤は、無機粒子の質量を1とした場合に対する、シリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量の比の値を2.5以下に設定すると、添加した粉体塗料組成物のブロッキングを防止して良好な貯蔵安定性が得られる。また、粉体塗料用添加剤は、シリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量と、無機粒子の質量との比の値を、以下の式2に示すように、0.6以上に設定することが好ましい。
0.6≦(シリケート化合物+(メタ)アクリル系共重合体)/無機粒子≦2.5 ・・・(式2)
粉体塗料用添加剤は、無機粒子の質量を1とした場合に対する、シリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量の比の値を0.6以上に設定すると、シリケート化合物および(メタ)アクリル系共重合体に由来する耐汚染性がより好適に発現される。なお、粉体塗料用添加剤は、無機粒子、(メタ)アクリル系共重合体およびシリケート化合物の組成割合(混合時の質量比)が、1:1:1程度にすることがより好ましい。
0.3≦(メタ)アクリル系共重合体/無機粒子≦1.5 ・・・(式3)
無機粒子の質量を1とした場合に対する(メタ)アクリル系共重合体の質量を前記値とすることで、(メタ)アクリル系共重合体に由来する初期の耐汚染性が好適に発現される。また、液状の(メタ)アクリル系共重合体による粉体塗料用添加剤のべたつきを防いで、粉体塗料組成物のブロッキング等を防止できる。
0.3≦シリケート化合物/無機粒子≦2.0 ・・・(式4)
シリケート化合物の質量を1とした場合に対する(メタ)アクリル系共重合体の質量を前記値とすることで、シリケート化合物に由来する長期に亘る耐汚染性が好適に発現される。また、液状のシリケート化合物による粉体塗料用添加剤のべたつきを防いで、粉体塗料組成物のブロッキング等を防止できる。
本開示に係る粉体塗料組成物は、粉体塗料と、前述した粉体塗料用添加剤とを含んでいる。粉体塗料は、樹脂成分および硬化剤を基本的に含み、必要に応じて、顔料、硬化触媒、他の成分などの添加成分を含んでいてもよい。粉体塗料は、樹脂成分および硬化剤と、必要に応じた添加成分とを溶融混練し、これを微細に粉砕することで得られる粉状である。粉体塗料組成物は、粉状の粉体塗料に対して、粉状の粉体塗料用添加剤を混ぜることで得られる。
本開示に係る塗膜は、粉体塗料用添加剤を含む粉体塗料組成物を、例えば、静電粉体スプレーまたは摩擦帯電塗装などの吹き付け法や、流動浸漬塗装などの浸漬法により塗装し、所定条件で焼き付けすることで形成される。塗膜は、例えば、20μm~300μmの範囲の膜厚で形成される。塗膜は、従来から使用されている基材に、本開示に係る粉体塗料用添加剤を含む粉体塗料組成物を塗装することで得ることができ、基材としては、例えば、鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、銅、及びスズ等の金属素材、これらの金属に表面処理を施したもの、並びにこれらの金属素材に必要に応じてプライマーや中塗り塗装を施した下地塗装膜等が挙げられる。また、適用可能な分野としては、例えば、車両関係、家電関係、建築関係、道路関係、及び事務用機器等に適用することができる。
(合成例A-1)
フラスコにイソプロピルアルコール(IPA)を90質量部仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。表1に示すように、第1モノマー(M1)としてヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)50質量部、第2モノマー(M2)としてアクリル酸ブチル(BA)30質量部およびメタクリル酸ラウリル(LMA)10質量部、モノマー(M3)としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)10質量部、重合開始剤として1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)6質量部、IPA15質量部を混合した組成物を、100分かけて前記フラスコへ滴下した。組成物を全量投入した後、そのまま80℃で3時間反応させて、合成例A-1の(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物(固形分50%)を得た。
合成例A-1と同様に、表1~3に示す配合割合で、仕込み溶媒、モノマー組成物、重合開始剤および溶媒を混合して、合成例A-2~A-16の(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物(固形分50%)を得た。なお、各モノマー単位の含有量は、共重合体を合成する際の各モノマーの配合比(質量%)から求めることができる。
表1~3に示す(メタ)アクリル系共重合体におけるTgは、当該共重合体の原料として用いられるモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度とモノマーの質量分率から、以下のフォックス(Fox)の式に基づいて求めた。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・+Wn/Tgn
式中、Tgは、求めようとしている(メタ)アクリル系共重合体のTg(K)、W1、W2、W3・・・Wnは、各モノマーの質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・Tgnは、各モノマーの質量分率に対応するモノマーからなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示している。本開示においては、(メタ)アクリル系共重合体のTgは、モノマー組成物で使用している各種モノマーから、前記式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。
SP値は、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法により算出している。具体的には、以下に示す数式(1)を用いて算出している。
以下で「Tg」は、各モノマーの単独重合体のTg(ガラス転移温度)を示す。また、SP値の単位は前述のとおり(cal/cm3)1/2である。
・ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、Tg:98℃、SP値:13.8、分子量:115)
[第2モノマー(M2)]
・アクリル酸ブチル(BA、Tg:-54℃、SP値:9.77、分子量:128)
・メタクリル酸ブチル(BMA、Tg:20℃、SP値:9.45、分子量:142)
・メタクリル酸ラウリル(LMA、Tg:-65℃、SP値:9.02、分子量:254)
・アクリル酸-2-エチルヘキシル(2-EHA、Tg:-85℃、SP値:9.2、分子量:184)
[第3モノマー(M3)]
・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA、Tg:55℃、SP値:13.47、分子量:130)
・ジメチルアクリルアミド(DMAA、Tg:119℃、SP値:10.4、分子量:99)
・ジエチルアクリルアミド(DEAA、Tg:81℃、SP値:10、分子量:127)
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA、Tg:134℃、SP値:10.6、分子量:156)
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(DMAPAA-Q、Tg:不明、SP値:9.9、分子量:206.5)
[第4モノマー(M4)]
・メタクリル酸(MAA、Tg:228℃、SP値:12.54、分子量:86)
・アゾ系重合開始剤D1:1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、和光純薬工業株式会社製(商品名:V-40)
・アゾ系重合開始剤D2:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、日本ファインケム株式会社製(商品名:ABN-E)
・アゾ系重合開始剤D3:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、日本ファインケム株式会社製(商品名:ABN-V)
・過酸化物系重合開始剤D4:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、日油株式会社製(商品名:パーブチルO)
後述する粉体塗料用添加剤の製造に先立ち、以下の2種類の粉体塗料を製造した。
[プリミド硬化粉体塗料の製造]
ポリエステル樹脂(ダイセル・オルネクス社製、商品名:CRYLCOAT4659-0)600質量部、β-ヒドロキシアルキルアミド硬化剤(EMS-PRIMD社製、商品名:プリミドXL552、水酸基価600~725mgKOH/g)30質量部、ベンゾイン6質量部、二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR-95)350質量部をヘンシェルミキサーで混合した。作製した混合物を混練機(Buss AG社製、商品名:ブスコニーダーPR46)に投入して120℃で溶融混練を行った。得られた混練物を50℃以下に冷却後、ハンマー式衝撃粉砕機で微粉砕し、150メッシュのふるいで分級してプリミド硬化粉体塗料を得た。
B-NCO硬化型ポリエステル樹脂(DIC株式会社製、商品名:ファインディック(登録商標)M-8250)550質量部、ε-カプロラクタムブロックのポリイソシアネート(エボニック社製、商品名:VESTAGON(登録商標)B1530)80質量部、ベンゾイン10質量部、および、二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR-95)350質量部をヘンシェルミキサーで混合した。作製した混合物を混練機(Buss AG社製、商品名:ブスコニーダーPR46)に投入して100℃で溶融混練を行った。得られた混練物を50℃以下に冷却後、ハンマー式衝撃粉砕機で微粉砕し、150メッシュのふるいで分級してウレタン硬化粉体塗料を得た。
<実施例1>
合成例A-1の(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物480質量部(固形分としては240質量部)、シリカ粒子(シリカ粒子B1)260質量部、およびシリケート化合物としてテトラエトキシシラン(シリケート化合物C1)260質量部を混合した。得られた混合物を振動乾燥機(中央化工機株式会社製:商品名VU-35)において、50Torrのもとで物温75℃となるまで乾燥させ、その後、300メッシュのふるいにかけて、実施例1の粉体塗料用添加剤を得た。得られた粉体塗料用添加剤1質量部を、前記(2)で製造したプリミド硬化粉体塗料100質量部に添加し、よく振り混ぜることにより、粉体塗料組成物を得た。
表4~10に示す配合割合にしたがって、実施例1と同様にして、実施例2~24および比較例1~7の粉体塗料用添加剤を得た。得られた各添加剤は、同じく表4~10に示す配合で、プリミド硬化粉体塗料またはウレタン硬化粉体塗料に添加し、よく振り混ぜることにより、各粉体塗料組成物を得た。
板厚1.5mmのクロム酸クロメート処理アルミニウム板を垂直方向に吊り下げ、コロナ帯電式静電粉体塗装機(旭サナック株式会社製、商品名:PG-1型)を用いて、当該アルミニウム板上に実施例および比較例で作製した粉体塗料組成物を静電塗装(塗装電圧:-60kV)した。次いで、塗装したアルミニウム板を電気炉にて180℃で20分間焼き付けを行い、その後、室温になるまで放冷して膜厚70μmの塗膜を備えた試験板を得た。
[耐汚染性]
実施例および比較例の粉体塗料組成物から得られる塗膜の耐汚染性を調べた。前記(4)で作製した試験板を用いて3ヶ月間屋外で暴露試験を行った。色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製、商品名:CR-200)を使用して暴露試験前後の各試験板のL*を測定し、次式によりΔL*を算出した。
ΔL*=L*(暴露後の値)-L*(暴露前の値)
得られたΔL*を耐汚染性の指標とした。ΔL*が0に近いほど、汚染物質の付着が少ないことを示しており、降雨等により、試験板に付着した汚染物質が落ちていることを表している。(メタ)アクリル系共重合体を含んでいない粉体塗料用添加剤を含有する比較例1の耐汚染性(ΔL*=-2.5)を基準として、以下のように評価した。
◎:ΔL*≧-1.0となる場合
○:-2.5<ΔL*<-1.0となる場合
×:ΔL*≦-2.5となる場合
実施例および比較例の粉体塗料組成物から得られる塗膜の仕上がり性を調べた。前記(4)で作製した各試験板について、光沢計(BYK株式会社社製、商品名:Micro-TRI-gross、入反射角60゜)を使用して60°鏡面光沢値(表中では「G60」と表記)の測定を行い、以下の評価基準で評価した。60°鏡面光沢値が大きいほど、塗膜が平滑で高い光沢を呈する良好な仕上がりであることを示す。
○:G60≧80
×:G60<80
実施例および比較例の粉体塗料組成物の貯蔵安定性を調べた。実施例及び比較例で作製した各粉体塗料組成物を40℃で保存し、1か月経過後の組成物の状態を観察して、以下の評価基準で評価した。
○:ブロッキングがない。
×:ブロッキングが発生している。
上記各評価に加え、以下の評価基準によって総合評価も行った。
◎:耐汚染性の評価が「◎」、仕上がり性の評価が「○」、貯蔵安定性の評価が「○」の場合
○:耐汚染性の評価が「◎」または「○」で、仕上がり性および/または貯蔵安定性の評価が「×」の場合と、仕上がり性、貯蔵安定性、および耐汚染性の全ての評価が「○」の場合
×:耐汚染性が「×」の場合(仕上がり性、貯蔵安定性の評価にかかわらず)
・シリカ粒子B1:未処理シリカ(平均粒径1.5μm、比表面積150m2/g、吸油量230cc/100g)、東ソー・シリカ株式会社製(商品名:ニップシールE-220A)
・シリカ粒子B2:表面処理シリカ(平均粒径1.5μm、比表面積150m2/g、吸油量230cc/100g)、東ソー・シリカ株式会社製(商品名:ニップシールE-1011)
・シリカ粒子B3:疎水性フュームドシリカ(平均粒径16nm、吸油量260cc/100g(メーカー参考値))、日本アエロジル株式会社製(商品名:アエロジルR972)
・シリカ粒子B4:粉砕シリカ(平均粒径2.3μm、比表面積200m2/g、吸油量255cc/100g)、DSL.ジャパン株式会社製(商品名:カープレックスFPS-1)
シリカ粒子B1、シリカ粒子B2およびシリカ粒子B4は、沈降法シリカである。また、シリカ粒子B1およびシリカ粒子B4は、シリカ粒子B2およびシリカ粒子B3よりも、表面の親水性が高い。
・シリケート化合物C1:テトラエトキシシラン(重合度:1)、多摩化学工業株式会社製(商品名:正珪酸エチル)
・シリケート化合物C2:テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(シリカ残存比率40%、重合度:5)、多摩化学工業株式会社製(商品名:シリケート40)
・シリケート化合物C3:テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(重合度:10)、三菱化学株式会社製(商品名:MKCシリケートMS56)
・シリケート化合物C4:メチルトリエトキシシラン(重合度:1)、エボニック・ジャパン株式会社製(商品名:Dynasilan MTES)
・シリケート化合物C5:テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(重合度:4)、三菱化学株式会社製(商品名:MKCシリケートMS51)
上記以外の様々なバリエーションの粉体塗料用添加剤および粉体塗料組成物においても、良好な性能が得られることを、追加の実施例で示す。
(合成例A’-1)
フラスコにイソプロピルアルコール(IPA)を90質量部仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)50質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)10質量部、アクリル酸ブチル(BA)10質量部、メタクリル酸イソステアリル(ISTA)30質量部、重合開始剤として1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(和光純薬工業製V-40)6質量部、及びIPA15質量部を混合したモノマー組成物を、100分かけて前記フラスコへ滴下した。全量投入後、そのまま80℃で3時間反応させて(メタ)アクリル系共重合体(A’-1)を含む樹脂組成物(固形分50%)を得た。
表11記載の配合に従い、共重合体(A’-1)と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A’-2)を含む樹脂組成物(固形分50%)を得た。
その他については、表1~3と同様である。
(追加実験例1)
合成例A’-1の(メタ)アクリル系共重合体を含む樹脂組成物480質量部(固形分としては240質量部)、シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製、ニップシールE-220A)260質量部、およびシリケート化合物(三菱化学株式会社製、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物、MKCシリケートMS51)260質量部を混合した。得られた混合物を、振動乾燥機(中央化工機株式会社製:商品名VU-35)において、50Torrのもとで物温75℃となるまで乾燥させ、その後、300メッシュのふるいにかけて、粉体塗料用添加剤を得た。
表12記載の配合に従い、追加実験例1と同様にして、いくつかの粉体塗料組成物を得た。なお、参考例では、粉体塗料用添加剤を使用せずに、通常の粉体塗料組成物を製造した。
参考のため、前述の実施例2についても、後掲の表12に記載している。
実施例1と同様にして、膜厚70μmの塗膜を備えた試験板を得た。
耐汚染性、仕上がり性および貯蔵安定性について、実施例1と同様に評価した。なお、耐汚染性の評価については、3ヶ月だけでなく、6ヵ月間屋外で暴露試験を行なった後のΔL*(追加評価)についても算出した。
形成した塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:近景、遠景ともにはっきりと映り込むほどに塗膜表面の平滑性、反射性が良好である。
○:近景ははっきりと映り込むが、遠景がややぼやける。
×:近景がぼやける。
炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムについての詳細情報は以下である。
・炭酸カルシウムB5:日東粉化工業株式会社製、NS#100(平粒粒径2.1μm)
・硫酸バリウムB6:冨士タルク工業株式会社製、バライトパウダーFBA(平均粒径8μm)
その他については、表4~10と同様である。
また、実施例2と追加実施例1~6との対比から、追加実施例1~6の、6ヵ月間屋外で暴露試験を行なった後のΔL*(追加評価)が非常に良好であることが確認できる。追加実施例1~6では実施例2よりも多くの粉体塗料用添加剤が用いられており、その結果として耐汚染性がより長く持続すると考えられる。
発明Aの粉体塗料用添加剤は、無機粒子と、
前記無機粒子に担持されたシリケート化合物と、
前記無機粒子に担持された(メタ)アクリル系共重合体とを含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基およびアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマー(M1)に由来するモノマー単位(U1)を、該(メタ)アクリル系共重合体の質量に対して、30質量%以上含む。
発明Aによれば、塗膜においてシリケート化合物よりも親水性を早い段階で発揮する(メタ)アクリル系共重合体の存在によって、塗膜の耐汚染性をより向上できる。
なお、無機粒子としては、無機顔料が好ましく、シリカ粒子(より具体的には沈降法シリカ粒子)、炭酸カルシウム粒子または硫酸バリウム粒子がより好ましい。
発明Bの粉体塗料用添加剤は、発明Aにおいて、前記モノマー(M1)が、下記一般式(1)で表されるものである。
発明Bによれば、塗膜においてシリケート化合物よりも親水性を早い段階で発揮する(メタ)アクリル系共重合体の存在によって、塗膜の耐汚染性をより向上できる。
発明Cの粉体塗料用添加剤は、発明AおよびBにおいて、前記(メタ)アクリル系共重合体は、前記モノマー単位(U1)と、前記モノマー(M1)と別の(メタ)アクリル系モノマー(M2)に由来する別のモノマー単位(U2)とを含み、
前記モノマー(M2)が、下記一般式(2)で表されるものである。
発明Cによれば、別のモノマー単位(U2)を含むことで、(メタ)アクリル系共重合体の性状を適当に調整できる。
発明Dの粉体塗料用添加剤は、発明Cにおいて、前記モノマー(M2)は、該モノマー(M2)の単独重合体のガラス転移温度が前記モノマー(M1)の単独重合体のガラス転移温度より低いものである。
発明Dによれば、別のモノマー(M2)を含むことで、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を適度に調整することができる。
発明Eの粉体塗料用添加剤は、発明A~Dの何れか1つにおいて、前記シリケート化合物および前記(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量と、前記無機粒子の質量との比の値が、以下の式1に示す関係にある。
(シリケート化合物+(メタ)アクリル系共重合体)/無機粒子≦2.5 ・・・(式1)
発明Eによれば、粉体塗料用添加剤を粉体塗料組成物に配合した際に、粉体塗料組成物のブロッキングの発生を防止して、適当な貯蔵安定性を確保できる。
発明Fの粉体塗料用添加剤は、発明A~Eの何れか1つにおいて、前記無機粒子は、シリカ(より具体的には沈降法シリカ等)である。
発明Fによれば、粉体塗料用添加剤を配合した粉体塗料組成物から得られる塗膜の仕上がり性を向上できる。
発明Gの粉体塗料用添加剤は、発明A~Fの何れか1つにおいて、前記シリケート化合物は、重合度が1~4の範囲にあるオリゴマーである。
発明Gによれば、粉体塗料用添加剤を配合した粉体塗料組成物から得られる塗膜の仕上がり性を向上できる。
発明Hは、発明A~Gの何れか1つに記載の粉体塗料用添加剤と、粉体塗料用添加剤と、粉体塗料とを含む、粉体塗料組成物である。
発明Hによれば、得られる塗膜の耐汚染性が良好である。
発明Iは、発明H記載の粉体塗料組成物で形成された、塗膜である。
発明Iによれば、塗膜の耐汚染性が良好である。
M2 第2モノマー(別の(メタ)アクリル系モノマー)
U1 第1モノマー単位(モノマー単位)
U2 第2モノマー単位(別のモノマー単位)
Claims (11)
- 無機粒子と、
前記無機粒子に担持されたシリケート化合物と、
前記無機粒子に担持された(メタ)アクリル系共重合体とを含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基およびアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマー(M1)に由来するモノマー単位(U1)を、該(メタ)アクリル系共重合体の質量に対して、30質量%以上含む、粉体塗料用添加剤。 - 前記無機粒子が、無機顔料である請求項1記載の粉体塗料用添加剤。
- 前記モノマー(M2)は、該モノマー(M2)の単独重合体のガラス転移温度が前記モノマー(M1)の単独重合体のガラス転移温度より低いものである請求項4記載の粉体塗料用添加剤。
- 前記シリケート化合物および前記(メタ)アクリル系共重合体を合わせた質量と、前記無機粒子の質量との比の値が、以下の式1に示す関係にある請求項1~5の何れか一項に記載の粉体塗料用添加剤。
(シリケート化合物+(メタ)アクリル系共重合体)/無機粒子≦2.5 ・・・(式1) - 前記無機粒子は、シリカ粒子である請求項1~6の何れか一項に記載の粉体塗料用添加剤。
- 前記無機粒子は、炭酸カルシウム粒子および硫酸バリウム粒子からなる群より選ばれる少なくともいずれかである請求項1~6の何れか一項に記載の粉体塗料用添加剤。
- 前記シリケート化合物は、重合度が1~4の範囲にあるオリゴマーである請求項1~8の何れか一項に記載の粉体塗料用添加剤。
- 請求項1~9の何れか一項に記載の粉体塗料用添加剤と、粉体塗料とを含む、粉体塗料組成物。
- 請求項10記載の粉体塗料組成物で形成された、塗膜。
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