JP4686276B2 - 車輌の軸梁脱着装置。 - Google Patents

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本発明は、鉄道車輌の車軸に取付けられた軸梁を脱着するための装置に関するものである。
鉄道車輌の種類によっては車輪Cの車軸外端Bに図10に示すような軸梁Aが取り付けられている。軸梁Aは、内部に軸受けが内装されており、点検や保守の際には車軸端Bから抜き取られて洗浄や部品交換が行われた後、車軸端Bに再装着される。この軸梁Aを抜き取るには、締着部材を取外した後、通常、軸梁本体とアーム部aの適所をクレーンで吊り、軸梁背面と車輪Cとの隙間にバールなどの工具を挿し込み、この工具をハンマーで叩いたり、人力でこじるようにして車軸端Bから抜き取るようにしている。また、軸梁Aや内部の軸受け部材を洗浄あるいは部品交換した後の軸梁Aの取付けは、クレーンで吊られた軸梁Aを位置確認しながら車軸端Bに挿着するようにしている。
関連技術として、特許文献1には、車軸端に取り付けられた軸箱内に装着されているコロ軸受けを軸箱内から抜き取るための装置が開示されている。
特開平5−58291号公報
しかしながら、人力による一般的な手法では、錆付きがひどい固渋品の場合、作業員が2名がかりで時間をかけて抜き取らなければならない。しかも、軸梁は、作業員の腰下位置にあるため、かがんだり、腰を曲げて作業を行わなければならず、作業員への肉体的負担が大きい。
また、錆付きが極端な場合には、こうした手法では車軸軸端から抜き取れないことがあるばかりでなく、ややもすると工具によって軸梁を傷つけたりする。
更には、脱着作業の際、重量のある軸梁(例えば、70kg程度)をクレーンで吊って移動することから、誤って落下した場合には危険である。
一方、上記特許文献1記載の装置は、車軸軸端から軸箱を抜き取った後で、軸箱からコロ軸受けを無理なく抜き取るための装置であり、車軸軸端からの軸箱の抜き取りを行うものではない。したがって、こうした装置にあっても、軸箱の脱着作業は、上記した人力による手法を採らざるを得ない。車輌の車軸梁の脱着を行うための装置は、現在のところ、開発及び実用化されたものが存在しないのが実情である。
本発明の目的は、作業員が肉体的負担をあまりかけることなく、比較的容易かつ安全に脱着作業を行うことができ、しかも錆付きのひどい固渋品であっても車軸軸端から軸梁を確実に抜き取ることができる、軸梁の脱着装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、台車と、前記台車上に載置され、前後方向にスライド自在なテーブルと、前記テーブルの前方端に互いに離間及び接近する方向にスライド自在に設けられ、前記軸梁の背面下部に係止される左右のストッパ片を有するストッパと、前記テーブルの上面に起立して設けた支持フレームと、後端を前記支持フレームの上端に枢支され、起立する位置から前方に倒れこむ位置へと回動自在であり、先端部に前記軸梁の背面上部に係止される係止爪を有するクランプアームと、前記支持フレームの中間部に固定したシリンダとこのシリンダ内に嵌挿され前記テーブルの前後方向に進退自在なロッドとからなる押圧部材とを備える。そして、前記押圧部材を構成するロッドが前進して前記軸梁の取付けられた前記車軸の軸端を押圧したときに、前進位置にあった前記テーブルと前記テーブルに固定された前記ストッパと前記クランプアームとが反作用力によって後退する、点に特徴がある。
台車は、架台の底部にキャスタを備え、テーブルやその他の構成部材並びにテーブル上に載置される軸箱を支持するに耐え得るものであれば、その構造のいかんを問うものではない。
テーブルは、軸箱を支持するに十分な面積を有し、台車上に前後方向にスライド自在に載置されている。テーブルは、鉄道車両の車輪の多様な径に対応可能なように、上下方向への昇降機構を併せもつものが望ましい。
ストッパは、テーブルの前部に起立して軸梁の背面下部に係止される部材であれば、その形状や構造のいかんを問わないが、テーブルの幅方向に互いに離間及び接近するスライド自在な左右のストッパ片によって構成すると良い。
クランプアームは、ストッパ片と上下に対を成し、軸梁背面の上部に係止されてテーブルの後方移動とともに軸梁を外方に抜出すためのものである。クランプアームは、強度を考えて両側前端に軸梁上面の一部に係止される左右の係止爪を備えた鋼板製のプレート材から成るものが望ましい。また、クランプアームは、その後端をフレームに枢支し、起立した位置から前方に倒れこんで前端が軸梁背面の上部に係止される位置へと回動自在なものにすると良い。回動動作は、手動式あるいは電動式いずれにすることもできる。 更に、クランプアームを上記プレート材によって形成した場合には、プレート材の板面に、軸梁上面の突起部が入り込み可能な孔部を形成すると良い。
押圧部材は、フレームの中間部に固定された油圧シリンダによって構成することができる。この場合、シリンダ内に嵌挿された進退動自在なロッドの先端が前記車軸の軸端を押圧する。
本発明は、次の効果を奏する。
台車に載置されたテーブルの前部に設けたストッパとテーブル上方に設けたクランプアームとによって軸梁背面の上下部を係止し、押圧部材が車軸端を押圧したときの反作用力によってテーブルとストッパとクランプアームとを後退させるようにしたので、軸梁をクランプアームとストッパとによって車軸端から無理なく抜き取ることができ、しかも抜き取られた軸梁をそのままテーブル上に載置させることができる。また、台車は移動自在であることから、軸梁を所望の位置まで安全に運搬できる。
この結果、本装置によれば、単独の作業員によって肉体的な負担もたいしてかけることなく、軸梁の脱着作業を簡単かつ短時間で安全に行うことができ、錆付きのひどい固渋品であっても時間をかけることなくまた傷つけることなく車軸端から抜き取ることができる。
本発明によれば、上記効果に加えて更に次の効果を奏する。
テーブルが昇降するので、車輪の径に影響を受けることなく軸梁をクランプアームとストッパとによって確実に保持できる。また、左右のストッパ片を移動させることにより、軸梁の背面下部にストッパを確実に係止させることができる。
また、クランプアームが後端を枢支点として回動自在になっているので、クランプアームを使用しないときには、テーブル上方が開放され、クランプアームに邪魔されることなくテーブル上の軸梁を吊り上げることができる。更に、クランプアームに十分な強度を持たせることができる。また、クランプアームがプレート材によって形成されているにも拘らず軸梁上面の突起に邪魔されることなく、クランプアームを軸梁背面上部にしっかりと係止させることができる。
更に、油圧によって進退動するロッドにより、車軸端に強い押圧力をかけることができ、これに伴いクランプアームとストッパに大きな抜き取り力を生じさせることができる。
以下、本発明の最良の実施形態について、図1から図9を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明に係る脱着装置の側面図、図2はその平面図、図3はその背面図である。
図中符合1は、台車で、本体部の四隅に張出し部1aが突出形成され(図2参照)、この張出し部1aの底面に自在キャスタ2が固定されている。
3は、台車上面に載置されたテーブルである。テーブル3は、台車本体部との間に図示しない昇降機構が組み込まれ、台車後部に突出した足踏みレバー4を踏むことにより、昇降機構が動作してテーブル面が上下に変位し、任意位置で固定可能となっている。テーブル3の側面には、前後方向に延びるガイド溝4aとこれに沿って摺動するスライダ4bとから成るスライド機構4が設けられ、このスライド機構4によってテーブル3は後方の退避位置(図7から図9)と前方の脱着位置(図1、図4)との間で前後方向にスライドする。テーブル3は、退避位置において図示しない適宜のロック手段によって固定される。
また、テーブル3の側面には、テーブル3の前後方向に引き出し及び後退可能な細長い受け片5が設けられている(図2参照)。この受け片5は、引き出されたときに軸梁Aのアーム部aを支持する。
テーブル3の後部上面には支持フレーム6が起立されている。支持フレーム6の上端には、クランプアーム7の基端が軸支されている。クランプアーム7は、基板部と側板部を備えた断面略コ字状の鋼製プレート材から成り、両側に、前方に突出した鉤状の係止爪7aを有する。クランプアーム7は、モータ8によって基端の支持軸を回動させることにより、ほぼ直立した位置と前方に倒れこんで係止爪7aが軸梁背面に周り込み可能な位置との間で回動可能となっている。クランプアーム7の電気的駆動機構にはリミットスイッチが設けられ、クランプアーム7の倒伏位置はこのリミットスイッチによって制限される。
また、クランプアーム7の基板部適所には、軸梁上面の突起部bが入り込み可能な開口7bが形成されている(図3参照)。クランプアーム7には、基板部に先端部が軸梁上面に当接される調整ネジを設け(図示せず)、その螺入量を調整することにより、倒れこんだときのクランプアーム7の係止爪7aが車軸端Bに装着された外輪と接触しない位置までクランプアーム7を持ち上げるようにしても良い。
テーブル3の前方端には、軸梁Aの背面下部に係止されるストッパ9が設けられている。ストッパ9は、図5と図6に示すように、互いに所定の間隔をおいて近接する位置と離間する位置との間でテーブル3の幅方向にスライドする左右一対のストッパ片9a,9aから構成されている。ストッパ片9aは、上端面が内端から外端に向けて斜面を有する三角形状を成していて、外側端にそれぞれ操作ロッド9bが取付けられている。
上記支持フレーム6の高さ方向ほぼ中間部には、油圧シリンダ10の先端部が固定されている。油圧シリンダ10の進退動するロッド11の先端には円盤状の押圧プレート12が取付けられている。油圧シリンダ10のロッド11は、少なくともテーブル3の前方端位置近傍まで前進する。
図中符合13は、油圧シリンダ10に作動油を供給する油圧ポンプで図示しない操作ハンドルによって駆動される。また、14は台車1の手押し用ハンドルである。
次に、上記実施例に係る装置の使用状態を図4から図9を参照しつつ説明する。
先ず、本装置を、抜き取る軸梁Aが取付けられている車輪Cの位置まで移動する。
このとき、本装置は、図1に見られるように、テーブル3が昇降レベルでは下降位置にあり、前後方向では退避位置にあってロック手段により固定されている。また、クランプアーム7は直立してテーブル上方が開放されており、ストッパ9は左右のストッパ片9aが離間した状態(図5参照)にある。
軸梁Aに接近したら、テーブル側面の受け片5を引き出し、軸梁Aのアーム部aを受け片5によって支持させる。そして、テーブル3のロックを外し、テーブル前端のストッパ9が軸梁背面に入り込む位置まで、テーブル3を前方にスライドさせる。
足踏みレバー4を操作して昇降機構によりテーブル3を上昇させ、テーブル上面と軸梁底面とを密着させる。
次いで、左右のストッパ片9aの操作ロッド9bを押してストッパ片9aを中央に寄せ(図6参照)、ストッパ9を軸梁Aの背面下部と車輪Cとの隙間に入り込ませる。
モータ8を駆動させてクランプアーム7を倒伏方向に回動させ、開口7bに軸梁上面の突起部A1を通過させた後、クランプアーム7を所定の位置で停止させる(図4参照)。必要に応じて前記調整ネジを回転させて係止爪7aの高さ位置を調整する。
その後、図4に示す状態で、油圧ポンプ13の操作ハンドルを上下させて油圧シリンダ10に作動油を送り込み、ロッド11を前進させる。ロッド先端の押圧プレート12を車軸端Bの中心位置に当接させ、更に操作ハンドルを操作してロッド11を更に前進させる。
ロッド11の前進に伴い、反作用力を受けてテーブル3が後退し、クランプアーム7の係止爪7aとストッパ片9aとが軸梁Aの背面上部と下部に係止され、徐々に軸梁Aを車軸端Bから抜き始める。軸梁Aのアーム部aが受け片5によって支持される一方、軸梁本体の底面がテーブル3に支持されているため、クレーンで吊った状態で行うのとは異なり、抜く動作は安定した状態で行われる。操作ハンドルの操作は、軸梁Aの抜け状態を確認しつつゆっくりと行う。
車軸端Bから抜き取られた軸梁Aは、そのままテーブル上に載置される(図7参照)。したがって、抜き取られた軸梁Aは、本装置の台車1を移動することでそのまま所望の位置まで運搬される。例えば洗浄や部品交換などの保守のエリアまで移動された軸梁Aは、貫通している油圧シリンダ10のロッド11を退避させるとともに軸梁Aからクランプアーム7を起立する方向に回動させてテーブル上方を開放することにより、テーブル上方から吊り上げて本装置から下ろされる。
洗浄や保守を終えた軸梁Aは、退避位置でロックされたテーブル上に再度載置された後、元の車輪位置まで本装置によって運搬される(図8参照)。
車軸端Bとテーブル上の軸梁Aの位置を適正位置に調整したら、油圧ポンプ13の操作ハンドルを上下してロッドを再度前進させる。このとき、ロッド先端の押圧プレート12は、軸梁正面を押さえるに必要な表面積を持つ大きなものに交換されている(図8と9参照)。また、ストッパ9は、離間された位置に戻されている。
したがって、ロッド11に押された軸梁Aは、そのまま車軸端Bに嵌り込む(図9)。後は、本装置を軸梁Aから遠ざけた後、所定の締結部材によって軸梁Aを車軸端Bに固定すれば良い。
なお、本発明は、実施例に限定されるものではなく、その精神を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
本発明の一実施例に係る装置の側面図。 図1の装置の平面図。 図1の装置の背面図。 図1の装置によって軸梁を抜き取る直前の軸梁及び車軸端と本装置の位置関係を示す側面図。 図1の装置のストッパの左右のストッパ片が離間した状態の斜視図。 図1の装置のストッパの左右のストッパ片が近接した状態の斜視図。 図1の装置によって軸梁を抜き取った状態の軸梁と車軸端と本装置の位置関係を示す側面図。 図1の装置によって軸梁を装着する直前の軸梁及び車軸端と本装置の位置関係を示す側面図。 図1の装置によって軸梁を装着した状態の軸梁及び車軸端と本装置の位置関係を示す側面図。 本発明が適用される車軸端に取り付けられた軸梁の正面図。
符号の説明
1 台車
2 自在キャスタ
3 テーブル
4 スライド機構
6 フレーム体
7 クランプアーム
8 モータ
9 ストッパ
10 油圧シリンダ
11 ロッド
12 押圧プレート
13 油圧ポンプ
A 軸梁
a アーム部
B 車軸端
C 車輪


Claims (5)

  1. 鉄道車両の車軸に取付けられた軸梁を脱着する装置において、
    台車と、
    前記台車上に載置され、前後方向にスライド自在なテーブルと、
    前記テーブルの前方端に互いに離間及び接近する方向にスライド自在に設けられ、前記軸梁の背面下部に係止される左右のストッパ片を有するストッパと、
    前記テーブルの上面に起立して設けた支持フレームと、
    後端を前記支持フレームの上端に枢支され、起立する位置から前方に倒れこむ位置へと回動自在であり、先端部に前記軸梁の背面上部に係止される係止爪を有するクランプアームと、
    前記支持フレームの中間部に固定したシリンダとこのシリンダ内に嵌挿され前記テーブルの前後方向に進退自在なロッドとからなる押圧部材とを備え、
    前記押圧部材を構成するロッドが前進して前記軸梁の取付けられた前記車軸の軸端を押圧したときに、前進位置にあった前記テーブルと前記テーブルに固定された前記ストッパと前記クランプアームとが反作用力によって後退する、
    ことを特徴とする車輌の軸梁脱着装置。
  2. 前記テーブルは、上下方向に昇降自在であることを特徴とする請求項1記載の車輌の軸梁脱着装置。
  3. 前記クランプアームは、両側前端に軸梁の背面上部に係止される左右の係止爪を備えたプレート材から成ることを特徴とする請求項1記載の車輌の軸梁脱着装置。
  4. 前記クランプアームは、プレート材の板面に、前記軸梁上面の突起部が入り込み可能な孔部を有することを特徴とする請求項3記載の車輌の軸梁脱着装置。
  5. 前記押圧部材は、そのロッド先端に、前記軸梁に当接する押圧プレートを交換可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の車輌の軸梁脱着装置。
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