JP4684632B2 - 金属パターン形成方法、金属パターン及びプリント配線板 - Google Patents
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Description
サブトラクティブ法とは、基板上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。この手法で使用される金属基板は、基板と金属層との密着性を持たせるために基板界面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させていた。その結果、出来上がる金属パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、金属基板を形成する際、基板を凹凸処理するため、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であるいという問題点があった。
また、導電体表面の平滑化は、高密度化にも大きく貢献する。従来のビルトアッププリント配線板では、剥離強度を確保するために粗面化処理を行っていたが、この数ミクロンの凹凸が、さらなる微細配線化の妨げになっているのが現状である。
従って、半導体デバイスに有用なプリント配線板の形成といった観点からも、平滑な絶縁基板上に、細密で、且つ、密着性の高い金属パターンを形成する手段が熱望されている。
即ち、本発明の金属パターン形成方法は、(a)以下に示す(2)に記載の方法により、基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し該基板と直接化学結合するポリマーからなるポリマー層をパターン状に設ける工程と、(b)該ポリマー層上に無電解メッキ触媒またはその前駆体を吸着または付与させる工程と、(c)無電解メッキを行い、線幅30μm以下のパターン状金属膜を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
本発明における基板とは、ポリマーがその表面に直接化学結合しうるものを指し、例えば、樹脂フィルム上に直接ポリマーをパターン状に設ける場合には、該樹脂フィルム自体を指し、樹脂フィルムなどの基材表面に重合開始層などの中間層を設け、その表面にポリマーをパターン状に設ける場合には、フィルム基材上に中間層を備えたものを指す。
なお、基板上に、上記無電解メッキまたはその前駆体と相互作用する官能基を有し該基板と直接化学結合するポリマーをパターン状に設ける方法は、以下に示す(2)の態様が採用される。
(2)重合性基および無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する高分子化合物を基板表面に接触させ、画像様に輻射線の照射を行うことで、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する領域をパターン状に形成する方法。
本発明の請求項10に係る金属パターンは、前記本発明の金属パターン形成方法により 得られ、表面の凹凸が500nm以下の基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し該基板と直接化学結合するポリマーからなるポリマー層をパターン状に設け、該ポリマー層上に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与した後、無電解メッキを行うことでパターン状に金属膜を設けた金属パターンであって、該基板と該金属膜との密着性が0.2kN/m以上であることを特徴とする。
ここで、表面の凹凸が500nm以下の基板を用いることで、その上にポリマー層をパターン状に形成した場合、ポリマー層の表面凹凸もまた500nm以下になる。このようなパターンに無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与し、無電解メッキすることにより、概パターン中にもメッキ触媒、メッキ金属が入り込んだ状態(コンポジット状態)で、かつ、そのパターン上に金属メッキ膜が形成された状態となる。かくして形成された金属パターンの基板界面部〔金属とポリマー層(有機成分)との界面〕の粗さは、メッキ触媒、メッキ金属がポリマーパターン入り込んだ分、ポリマーパターン表面の粗さに比較して若干は粗くなるが、その程度は低いため、金属パターンにおけるメッキ及びメッキ触媒層(無機成分)とポリマー層(有機成分)との界面における凹凸は、形成される金属膜(金属パターン)の高周波特性が低下しない程度に押さえることができる。このために、金属パターンを電気配線として使用する際、優れた高周波特性が得られる。高周波特性とは、高周波送電時の伝送損失が低くなる特性であり、伝送損失の中でも特に導体損失が低くなる特性である。
ここで、基板表面の凹凸を小さくすると、金属パターンの基板界面部の粗さをより抑えることができ、得られる金属パターンの高周波特性が向上するため、表面の凹凸が100nm以下の基板を使用することが好ましい。
また、このような金属パターン形成方法を用いて作製された金属パターン部の基板表面は、表面グラフトにより表面改質することで基板界面の凹凸が最小限に留められ、且つ、金属パターン部分の基板界面が、基板に直接結合しているグラフトポリマーとのハイブリッド状態であるため、形成された金属膜と基板との密着性が高いものと考えられる。
本発明において、表面粗さの目安として、JIS B0601におけるRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値の差」を用いている。
このような金属パターンを導電性材料として用いる場合、形成された金属パターン、即ち、配線部分の金属と有機材料との界面の凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失(送電損失)が少なくなる。
このため、前記金属パターンを導電層(配線)として用いた本発明のプリント配線板は、平面性及び基板との密着性に優れた微細な配線が形成され、且つ、高周波特性にも優れる。
また、本発明の金属パターンは、表面の凹凸が少ない基板を用いた場合でも、基板と金属膜との密着性に優れ、且つ、高周波特性に優れるという効果を奏する。このような金属パターンを導電層(配線)として用いた本発明のプリント配線板は、高周波特性に優れる。
[金属パターン形成方法]
本発明の金属パターン形成方法は、(a)基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、該基板と直接化学結合するポリマーからなるポリマー層をパターン状に設ける工程と、(b)該ポリマー層上に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する工程と、(c)無電解メッキを行い、線幅30μm以下のパターン状金属膜を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
即ち、本発明の金属パターン形成方法は、基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する領域/相互作用しない領域を設け、該相互作用する領域に、無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与させた後、無電解メッキをしてなる。なお、本発明においては、上記無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用するポリマーが存在する領域(ポリマー層)を、適宜「グラフトパターン」と称する。
以下、このような工程(a)〜(c)を順に説明する。
基板上に、グラフトパターンを設ける方法としては、以下に示す(2)の態様が挙げられる。
後述する態様(2)に係るパターン形成層においては、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段に準じた方法が適用される。グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
なお、本態様における基板表面とは、その表面に、極性変換基を有する高分子化合物の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合する機能を有する表面を示すものであり、基板自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また該基板上に別途中間層を設け、該中間層がこのような特性を有するものであってもよい。このような基板としてはその表面凹凸が500nm以下となるものを選択することが好ましい。
後述する高分子化合物を用いたパターン形成材料の表面にグラフトパターンを形成する際、付与するエネルギーがIRレーザなどの光エネルギーであれば、該光エネルギーを熱エネルギーに変換するための光熱変換物質を、パターン形成材料のどこかに含有させておくことが好ましい。光熱変換物質を含有させておく部分としては、例えば、パターン形成層、中間層、基材のいずれでもよく、更には、中間層と基材との間に光熱変換物質層を設け、そこに添加してもよい。
態様(2)に用いられる基板は、後述する高分子化合物の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合した表面グラフト層と該高分子化合物の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合できるような基板表面を有するものである。先に述べたように、基板の表面自体がこのような特性を有していてもよく、このような特性を有する中間層を基材表面に設けたものを基板として用いてもよい。
このような基板表面は、前記表面グラフト層をグラフト合成して設けるのに適した特性を有していれば、無機層、有機層のいずれでもよい。また、本態様においては、薄層の高分子化合物からなるパターン形成層により親疎水性の変化を発現するため、表面の極性は問題ではなく、親水性であっても、また、疎水性であってもよい。
中間層においては、特に、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法により本態様の薄層ポリマーを合成する場合には、有機表面を有する層であることが好ましく、特に有機ポリマーの層であることが好ましい。また有機ポリマーとしてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フォルマリン樹脂などの合成樹脂、ゼラチン、カゼイン、セルロース、デンプンなどの天然樹脂のいずれも使用することができるが、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法などではグラフト重合の開始が有機ポリマーの水素の引き抜きから進行するため、水素が引き抜かれやすいポリマー、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂などを使用することが、特に製造適性の点で好ましい。
このような中間層は、後述の基材を兼ねていても良く、また必要に応じて基材上に設けられた中間層であってもかまわない。
本態様で、基板の表面凹凸が500nm以下となるようにするためには、基板が樹脂フィルムなどの基板のみからなる場合には基材即ち基板自体の表面の、或いは、基材表面に中間層を設けて基板とする場合にはその中間層表面の、表面凹凸が500nm以下となるよう調製されることが好ましい。基板の表面凹凸が500nm以下となるようにするためには、材料としての平滑性に優れた樹脂基材を選択するとともに、中間層を形成する場合、中間層の膜厚均一性が高いものを形成すればよい。
態様(2)においては、上記基板表面に、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する化合物として、重合性化合物と重合開始剤を添加し、中間層(基板)表面として重合開始能を発現する層を形成することが、活性点を効率よく発生させ、パターン形成感度を向上させるという観点から好ましい。
重合開始能を発現する層(以下、適宜、重合性層と称する)は、必要な成分を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に設け、加熱又は光照射により硬膜し、形成することができる。
重合性層に用いられる重合性化合物は、基板との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により上層に含まれる、末端及び/又は側鎖に重合性基を有する親水性化合物が付加し得るものであれば特に制限はないが、中でも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。
このような疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
更には、前記のブタジエン、イソプレン、ペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、これらの構成単位とスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で0〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
態様(1)における重合性層にはエネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
本態様に用い得る光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、重合性層に含まれる重合性化合物と、上層に含まれる末端又は側鎖に重合性基を有する親水性化合物とを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
重合開始剤の含有量は、重合性層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が十分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
本発明において「基板」とは、前述のように「ポリマーがその表面に直接化学結合しうるもの」を指すが、樹脂フィルムなどの表面に重合開始層などの中間層を設け、その表面にポリマーをパターン状に設ける場合、該樹脂フィルムなどを「基材」と称する。
本発明の金属パターン材料に使用され、前記特性を備えた表面を備えた基板を構成する基材は、表面が平滑で、表面凹凸が500nm以下であり、且つ、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。本態様に使用される基材としては、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムが好ましい。
このような絶縁樹脂としては、ポリフェニレンエーテルまたは変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル化合物、エポキシ化合物などの樹脂が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を含む熱硬化性樹脂組成物により形成される基板が好ましく用いられる。これらの樹脂を2種以上組み合わせて樹脂組成物とする場合の好ましい組み合わせとしては、ポリフェニレンエーテルまたは変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物、ポリフェニレンエーテルまたは変性ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物、ポリフェニレンエーテルまたは変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物とエポキシ化合物などの組み合わせが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂組成物により多層プリント配線板の基板を形成する場合には、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる無機充填剤を含まないことが好ましく、また、臭素化合物またはリン化合物をさらに含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい
さらに、クラレ製のベクスターなどの名称で市販品としても入手可能な液晶性ポリマーやポリ4フッ化エチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂なども好ましく挙げられる。
これらの樹脂のうち、フッ素樹脂(PTFE)は高分子材料の中でもっとも高周波特性に優れる。ただし,Tgが低い熱可塑性樹脂であるために熱に対する寸法安定性に乏しく,機械的強度なども熱硬化性樹脂材料に比べて劣る。また形成性は加工性にも劣るという問題がある。また、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂などとのアロイ化を行なって用いることもできる。たとえば、PPEとエポキシ樹脂、トリアリルイソシアネートとのアロイ化樹脂、あるいは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化樹脂としても使用することができる。
エポキシ樹脂はそのままでは誘電特性が不十分であるが、かさ高い骨格の導入などで改善が図られており、このようにそれぞれの樹脂の特性を生かし、その欠点を補うような構造の導入、変性などを行った樹脂が好ましく用いられる。
例えば、シアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、「電子技術」 2002年第9号 p35に記載されており、これらの記載もまた、このような絶縁樹脂を選択する上で参照することができる。
態様(2)におけるパターンの形成は、光などの輻射線の照射或いは加熱により行われる。また、光照射の一態様として、前記光熱変換物質を併用するタイプであれば、赤外線領域のレーザー光等の走査露光による加熱により、パターンを形成することも可能である。
パターン形成方法としては、加熱、露光等の輻射線照射により書き込みを行う方法が挙げられる。例えば、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射、γ線などの電子線照射、サーマルヘッドによる熱的な記録などが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
態様(2)は、重合性基および無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜「相互作用性基」と称する)を有する高分子化合物を基板表面に接触させ、画像様に輻射線の照射を行うことで、グラフトパターンを形成するものである。この工 程を(a−2)工程と称する。
態様(2)に係るグラフトパターンは、基板上に、重合性基及び相互作用性基を有する高分子化合物を接触させ、エネルギーを付与することで該化合物の重合性基と基板とが化学結合を生成するため、強固で耐久性に優れた無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する領域(以下、適宜「相互作用性領域」と称する)を形成することができる。このような結合の形成を表面グラフトと称する。これは、既述の表面グラフト重合と呼ばれる手段に準じるものであり、本態様では、重合性基及び相互作用性基を有する高分子化合物を含有する組成物を接触させながら、基板表面に生成する活性種に直接結合させるものである。
この接触は、取り扱い性や製造効率の観点から、後述するように、該重合性基及び相互作用性基を有する高分子化合物を含有する組成物を主成分とする層を基板表面に、塗布法により形成することで実施される。
なお、態様(2)に係る表面グラフトは、既述の表面グラフト重合と同様にして形成することができる。
本態様に用いられる重合性基及び相互作用性基を有する化合物とは、後述の相互作用性基を有するモノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られるホモポリマー、コポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、特に末端に重合性基を有するものが好ましく、更に、末端及び側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
合成方法としては、相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させる方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法、相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法である。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜、2−(3−ブロモ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜が挙げられる。
相互作用性基を有するポリマー中のカルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
これらのマクロモノマーのうち有用な分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和し得る溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
組成物を液状のまま接触させる場合には、任意に行うことができるが、塗布法により相互作用性基含有組成物塗布層を形成する場合の塗布量は、十分なメッキ触媒またはその前駆体との相互作用性、及び、均一な塗布膜とを得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
態様(2)におけるパターンの形成に用いられるエネルギー付与方法には特に制限はなく、基板表面に活性点を生じさせ、重合性基を有する親水性化合物との結合し得るエネルギーを付与できる方法であれば、いずれも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。
画像様の露光に活性光線の照射を適用する場合、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
親水性パターン層の形成に用いる方法としては、既述の各種の書き込み方法が本態様においても同様に好ましく適用できる。
<無電解メッキ触媒>
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を前記グラフトパターン上(相互作用性領域)に固定する手法としては、一般に、荷電を調節した金属コロイドが用いられるが、この金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、上記金属の金属イオンを還元することにより作製することができる。ここで使用する界面活性剤により荷電が変わり、グラフトパターン上の相互作用性基と相互作用させることで、グラフトパターン上に選択的に吸着させることができる。
本工程において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。金属イオンは、別途還元反応により0価金属に変化させても良いし、前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属に変化させてもよい。
次に、前記(b)工程により得られた基板上に無電解メッキを行うことで、パターン状に金属膜が形成される。本工程における無電解メッキを行うことで、前記工程により得られたグラフトパターン上に該パターンにしたがった高密度の金属膜が形成される。その結果、形成された金属パターンは、優れた導電性、密着性が得られる。
無電解メッキとは、メッキさせたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。本工程における無電解メッキは、例えば、前記(b)工程で得られた、無電解メッキ触媒またはその前駆体がパターン状に付与された基板を、水洗して余分な金属、金属塩を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。また、グラフトパターン上に吸着又は含浸して存在する無電解メッキ触媒前駆体を用いて金属膜を成膜するために用いられる無電解メッキ浴としても、同様に一般的に知られている無電解メッキ浴が使用することができる。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO4)2、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていても良い。
また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
乾燥処理を行うことにより密着性が向上する作用は明確ではないが、十分な乾燥を行うことにより、密着性を低下させる要因である水分が金属パターン材料中に保持されるのを防ぐことで、水分に起因する密着性の経時的な低下を抑制しうるものと推定している。
表面グラフト膜中の無電解メッキ触媒やメッキにより析出した金属などの微粒子の状態をさらに詳細に説明すれば、このようなポリマー層(グラフト膜)中においては、ポリマー層と金属膜との界面から基板方向に、無電解メッキ触媒微粒子、及び/又は、無電解メッキにより析出した金属からなる微粒子が界面側に高密度で分散している。このときの微粒子分散状態において、界面近傍に微粒子が25体積%以上含まれている領域が存在することが、金属膜の密着力発現の観点から好ましく、更に好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、特に50体積%以上含まれる領域が存在することが好ましい。また、ポリマー層中において、このような微粒子を高密度で存在する領域としては、ポリマー層と金属膜との界面から基板方向へ深さ0.05μm以上で存在することが好ましく、0.1μm以上がより好ましく、更に0.2μm以上が好ましく、特に0.3μm以上の深さまで存在することが好ましい。
本発明の金属パターン形成方法においては、前記無電解メッキの後、前工程により形成された金属膜を電極とし、さらに電気メッキを行うことができる。これにより基板との密着性に優れた金属膜パターンをベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、パターン状の金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属パターンを配線パターンなど種々の応用に適用するのに好適である。
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
本発明の金属パターンは、表面の凹凸が500nm以下、好ましくは100nm以下の基板上に、局所的に金属膜を設けた金属パターンであって、該基板と該金属膜との密着性が0.2kN/m以上であることを特徴とする。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属膜との密着性に優れることを特徴とする。
より詳細には、本発明の金属パターンは、表面の凹凸が500nm以下、好ましくは100nm以下の基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、該基板と直接化学結合するポリマーをパターン状に設け、該パターン上に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与した後、無電解メッキを行うことで局所的に金属膜を設けた金属パターンであって、該基板と該金属膜との密着性が0.2kN/m以上であることを特徴とする。
このような金属パターンは、基板として、前記金属パターン形成方法で挙げた基板のうち、表面の凹凸が500nm以下のものを選択するほかは、前記金属パターン形成方法と同様の工程により作製することができる。
より詳細には、JIS B0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることを要する。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属パターンの表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JISC6481に基づき90度剥離実験を行うか、又は、金属パターン事態の端部を直接剥ぎ取り、JISC6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
しかし、本発明の金属パターンは、基板表面の凹凸が小さいものを用いても、基板に直接化学結合しているグラフトポリマーとのハイブリッド状態であるため、得られる金属パターンのメッキ及びメッキ触媒層(無機成分)とポリマー層(有機成分)との界面における凹凸が小さく、且つ、優れた密着性を維持しうるものとなった。
先に述べた、JIS B0601の規定に準じた10点平均粗さ(Rz)の値によれば、基板表面の凹凸が500nm以下であり、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下で選択される。
このような平滑な基板は、樹脂基板など、それ自体が平滑なものを選択してもよく、また、表面凹凸が比較的大きなものでは、前記した中間層を設けて、表面凹凸を好ましい範囲に調製することも可能である。
このように、本発明の金属パターンは、基板と金属膜との密着性を維持しながら、基板側の界面における凹凸を最小限に留めることが可能となった。
[参考例1]
(基板の作製)
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基材として用い、その表面に下記の組成をロッド10番の塗布バーを使用して塗布し、100℃で1分乾燥し、膜厚1.6μmの赤外線吸収剤を含有する中間層を形成し、実施例1で用いる基板Aを作製した。
ここで、基材であるポリイミドフィルムをNanopics1000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて40μm×40μmの範囲で測定した値により、JIS B 0601に準じて求めたRzは15nmであった。また、このポリイミドフィルム上に中間層を形成した基板Aにおいても同様に測定したところ、Rzは10nmであり、実施例に用いた基板Aの表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
・エポキシ樹脂 2g
(エピコート、Yuka−shell Co,Ltd.)
・赤外線吸収剤(IR125 和光純薬剤) 0.2g
・1−メトキシ−2−プロパノール 9g
・メチルエチルケトン 9g
基板Aの表面を次の条件にてプラズマ処理して表面グラフト重合によるパターン形成層の形成を行った。
島津製作所製LCVD−01型プラズマ処理装置を用いて5.33Pa(0.04torr)のアルゴンガス雰囲気下にて10秒間処理後、空気に曝し、中間層表面にパーオキシド基を導入した。この膜を10質量%のα(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩水溶液に浸漬し、15分間アルゴンガスをバブルしたのち、7時間60℃に加温することによってグラフト重合を行った。グラフト重合後膜を3000mlのイオン交換水中につけ、グラフト重合以外のホモポリマーを除去することによりプラズマ処理により表面にグラフトされたパターン形成層を有するパターン形成材料Aを得た。
得られたパターン形成材料Aを波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光し、グラフトパターン材料Aを作製した。
この基板A上にグラフト層を有するグラフトパターン材料Aのパターン部についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは15nmであり、実施例1におけるグラフトパターン材料Aの表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
グラフトパターン材料Aを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、金属パターンAを作製した。
<無電解メッキ浴成分>
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
(基板の作製)
参考例1で使用したポリイミドフィルムを基材として用い、その表面に下記中間層塗布液(光重合性組成物)を、ロッドバー18番を用いて塗布し、80℃で2分間乾燥し、膜厚6μmの中間層を形成した。
そして、上記中間層を備えた基材に、400Wの高圧水銀灯(型番:UVL−400P、理工科学産業社製)を使用して、10分間光照射し、予備硬化させて実施例2で用いる基板Bを作製した。
この基板Bについて、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは12nmであり、表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 2g
(共重合モル比率80/20、平均分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
予備硬化させた基板Bを、アクリル酸(10質量%)及び過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4、0.01質量%)を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、上記の400Wの高圧水銀灯を使用し、30分間光照射した。光照射後、得られたフィルムをイオン交換水でよく洗浄し、アクリル酸がグラフトされた基板を得た。
得られたパターン形成材料Bを波長400nmの青色光を発するレーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光しグラフトパターン材料Bを作製した。
この基板B上にグラフト層を有するグラフトパターン材料Bのパターン部についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは13nmであり、実 施例1におけるパターン形成材料Bの表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
グラフトパターン材料Bを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、参考例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンBを作製した。
(グラフトパターンの形成)
参考例2と同様にして作製した基板Bの表面に、アクリル酸をロッドバー#6を用いて塗布し、塗布面を厚さ25μmのPETフィルムでラミネートした。
さらにその上にクロムを蒸着したマスクパターンを重ね、上からUV光を照射(400W高圧水銀灯:UVL−400P、理工科学産業(株)製、照射時間30秒)した。光照射後、マスクとラミネートフィルムを取り除き、水洗することによりポリアクリル酸がパターン状にグラフトされたグラフトパターン材料Cを得た。
グラフトパターン材料Cのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは14nmであった。
グラフトパターン形成材料Cを、硝酸銀(和光純薬製)10質量%の水溶液に5分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に10分間浸漬した後、下記組成の電気メッキ浴にて15分間電気メッキし、金属パターンCを作製した。
<無電解メッキ浴成分>
・硫酸銅 0.3g
・酒石酸NaK 1.7g
・水酸化ナトリウム 0.7g
・ホルムアルデヒド 0.2g
・水 48g
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
参考例2で得られた金属パターンCにおいて、金属膜が形成された領域を、ミクロトーム(ライカ製)を用いてダイヤモンドカッター(製品名:スミナイフ)にてカットし、きれいなメッキ断面を調整した。そのサンプルをSEMで観察したところ、金属膜に隣接したポリマー中における微粒子の分散状態が確認できた。図1は、参考例2で得られた金属パターンCの断面SEM写真である。
図1の写真により、ポリマー層中の金属膜との界面近傍に、無電解メッキ触媒、無電解メッキにより析出した金属の1種以上からなると考えられる微粒子が高密度で存在することが確認された。また、ポリマー層の深部(基板近傍)には、微粒子はほとんど観察されなかった。
その後、画像のヒストグラムにて、図2における各深さの白色部分の比率を算出し、これをメッキ層下のグラフトポリマー中の微粒子の比率とした。その結果、深さ0.3μmの領域における微粒子は53体積%であると算出された。同様に、深さ0.2μmでは、60体積%、深さ0.1μmでは60体積%と算出され、金属膜との界面近傍に微粒子が高密度で存在することが確認された。
(グラフトパターンの作製)
実施例1と同様にして作製した基板Bに下記組成からなる塗布液を、ロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmであった。
・親水性ポリマー(合成方法は下記に示す) 0.25g
・水 5g
・アセトニトリル 3g
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc300gに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1N水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し親水性ポリマーを得た。
グラフトパターン材料Dのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは15nmであった。
得られたグラフトパターン材料Dを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、参考例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンDを作製した。
実施例2で形成された金属パターンを、更に、15分間電気メッキし、金属パターンEを作製した。
<電気メッキ浴の組成>
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
(グラフトパターンの形成)
参考例2で用いたものと同じポリイミド基材上に、下記の光重合性組成物をロッド17番の塗布バーを使用して塗布し、80℃で2分乾燥させた。次に、塗布層が形成されたフィルムに、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理化学産業(株)製)を使用し、上からUV光を10分間照射し、予備硬化させ、実施例6で用いる基板Fを作製した。この基板Fについて、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは83nmであり、表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(M210、東亞合成(株)製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 2g
得られたパターン形成材料Fを波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光した。このレーザー露光により、レーザー光を吸収した感光層はアブレーションを起こし、吸着性層とともに除去され、グラフトパターン材料Fが形成された。
グラフトパターン材料Fのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは80nmであった。
形成されたグラフトパターン材料Fを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、参考例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンFを作製した。
(パターン形成材料の作製)
参考例2と同様にして作製した基板Bを、t−ブチルアクリレート溶液(30質量%、溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG))に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間露光をした。
光照射後に得られたフィルムをプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)で良く洗浄し、ポリ−t−ブチルアクリレートがグラフトされたパターン形成材料Gを得た。
得られた金属(微粒子)膜パターン形成材料Gの上に下記組成の溶液を塗布した。なお、得られた金属(微粒子)膜の膜厚は0.5μmだった。
・トリフェニルスルホニウムトリフラート 0.05g
・メチルエチルケトン(MEK) 1g
グラフトパターン材料Gのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは15nmであった。
形成されたグラフトパターン材料Gを下記手法で作製した正電荷を有するAg粒子が分散した液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンGを作製した。
過塩素酸銀のエタノール溶液(5mM)50mlにビス(1,1−トリメチルアンモニウムデカノイルアミノエチル)ジスルフィド3gを加え、激しく攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.4M)30mlをゆっくり滴下してイオンを還元し、4級アンモニウムで被覆された銀粒子の分散液を得た。
(ポリイミド基板の作製)
(ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
窒素下にてN−メチルピロリドン(30ml)中にジアミン化合物として、4,4'-―ジアミノジフェニルエーテル(28.7mmol)を溶解させ室温にて約30分間撹拌した。 この溶液に3,3’,4,4’’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(28.7mmol)を0℃にて加え5時間撹拌した。反応液を再沈してポリイミド前駆体1を得た。生成物は1H−NMR、FT−IRによりその構造を確認した。
上記手法で合成したポリアミック酸(ポリイミド前駆体1)をDMAc(和光純薬(株)社製)に溶かし30質量%の溶液とした。ガラス基板に該溶液をロッドバー#36を用いて塗布、100℃で5分間乾燥、250℃で30分間加熱して固化させ、ガラス基板から剥がすことでポリイミド基材を得た。
このポリイミド基材上に、実施例2と同様にして中間層を設けて基板Hを得た。
なお、得られたポリイミド基板Hについて、前記と同様にRzを測定したところ、Rzは400nmであり、基板の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることが分かった。
得られた膜に400W高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光を行った。その後に得られた膜を水にて洗浄し、露光部が親水性に変化したグラフトパターン材料Hを得た。グラフトパターンHのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様にしてRzを測定したところ、Rzは420nmであった。
得られたグラフトパターン材料Hを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンHを作製した。
(グラフトパターンの作製)
参考例2と同様にして作製した基板Bに、下記組成からなる塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。
<塗布液の組成形成>
・親水性ポリマーA(合成方法は下記に示す) 0.25g
・水 5g
・アセトニトリル 3g
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc300gに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、10質量%炭酸ナトリウム水溶液にて中和し、イソプロピルアルコールに加えポリマーを沈殿させた。その後、水に際溶解しポリマー中に含まれる炭酸ナトリウムを限外濾過により取り除き、親水性ポリマーAを得た。
グラフトパターン材料Iのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは20nmであった。
(金属パターンの形成)
得られたグラフトパターン材料Iを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンIを作製した。
(絶縁性基板の作成)
ガラス基板上に、下記のように調整した低誘電性絶縁ポリマー塗布液を、ロッドバー20番を使用して、乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布し、110℃で10分間乾燥して絶縁ポリマー基板を作製した。これを基板Gとする。
(低誘電性絶縁ポリマー塗布液の調整)
トルエン183gにポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社製商品名)50g、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社製商品名)100g、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA−HQ、三光化学株式会社製商品名)28.1g、ナフテン酸マンガン(Mn含有量=6質量%、日本化学産業株式会社製)の17%トルエン希釈溶液0.1g、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン(DER331L、ダウケミカル日本株式会社製商品名)88.3gを加え、80℃で加熱溶解して塗布液を調整した。
この基板Gの上に下記組成からなる塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。
<塗布液の組成形成>
・親水性ポリマー(合成方法は下記に示す) 0.25g
・水 5g
・アセトニトリル 3g
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc300gに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1N水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し親水性ポリマーを得た。
グラフトパターン材料Jのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様に測定したRzは15nmであった。
得られたグラフトパターン材料Jを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。その後、実施例5と同様にして、形成された金属パターンを、更に、30分間電気メッキし、金属パターンJを作製した。
金属パターンJは、ラインアンドスペース20μmであることが確認できた。
参考例3で得られた金属パターンCを2週間真空乾燥して、その特性変化を評価した。その結果、線幅:13μm、厚み:14μm、基板表面の凹凸:10nm、パターンの凹凸:14nm、界面の凹凸:100nm以下、密着力:1.0kN/mであり、2週間の乾燥処理により、基板と金属膜との密着性が向上することが確認された。
[実施例12]
実施例5で得られた金属パターンEを2週間真空乾燥して、その特性変化を評価した。その結果、線幅:10μm、厚み:15μm、基板表面の凹凸:10nm、パターンの凹凸:15nm、界面の凹凸:100nm以下、密着力:0.5kN/mであり、2週間の乾燥処理により、密着性が向上することが確認された。
(金属パターンの細線幅の測定)
参考例1〜3、6〜8及び11、実施例2、3、7〜9で得られた金属パターンを、光学顕微鏡(ニコン製、OPTI PHOTO−2)を用いて細線幅を測定した。測定結果を下記表1に示す。
参考例1〜3、6〜8及び11、実施例2、3、7〜9で得られた金属パターンを、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察し、形成された金属膜の厚みを測定した。測定は、1つのサンプルにつき、3点を測定した平均を表す。測定結果を下記表1に示す。
参考例1〜3、6〜8及び11、実施例2、3、7〜9で得られた金属パターンを、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察することにより、メッキ膜及びメッキ触媒層(無機成分)と、グラフトポリマー層(有機成分)との界面の凹凸を確認することができる。この基板界面において、1つのサンプルについて、10μmの幅で観測し、最大から5番目までの山頂の平均値と最小から5番目までの谷底の平均値との差から凹凸の大きさを求めた。測定結果を下記表1に示す。
参考例1、2、6、実施例2、7、9と同様にして得られた金属パターン(幅:5mm)の表面に銅板(厚さ:50μm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C6481に基づき90度剥離実験を行った。また、参考例3、11、実施例3、8と同様にして得られた金属パターン(幅:5mm)に関しては、金属パターンを、JIS C6481に基づき90度剥離実験によりそのまま剥ぎ取った。測定結果を下記表1に示す。
また、本発明の実施例により得られた金属パターンは、いずれも、その導電性を充分達成しうる銅厚を有していることがわかった。特に、実施例3及び実施例8においては、さらに電解メッキを行うことで、所望の膜厚を有するパターン状の金属膜が得られることが確認された。
なお、実施例3及び実施例9の対比により、メッキによる金属パターン形成後に乾燥工程を実施することで、基板と金属膜との密着性のさらなる向上が達成しうることが確認された。
Claims (12)
- (a)重合性基および無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する高分子化合物を基板表面に接触させ、パターン状に輻射線の照射を行うことで、基板上に、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し該基板と直接化学結合するポリマーからなるポリマー層をパターン状に設ける工程と、
(b)該ポリマー層上に無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、線幅30μm以下のパターン状金属膜を形成する工程と、
を有する金属パターン形成方法。 - 前記無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し前記基板と直接化学結合するポリマーの重量平均分子量が、500〜500万の範囲であり、無電解メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基としてカルボキシル基を有する請求項1に記載の金属パターン形成方法。
- 前記(a)工程に先立って、前記基板表面に、重合開始剤を含有する重合開始能を発現する層を形成する工程を有する請求項1又は請求項2に記載の金属パターン形成方法。
- 前記重合開始能を発現する層の乾燥後の塗布量が、0.1g/m2〜20g/m2である請求項3に記載の金属パターン形成方法。
- 前記無電解メッキの後に電気メッキを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
- 前記無電解メッキ又は電気メッキの後に、乾燥工程を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
- 表面の凹凸が500nm以下の基板上に、 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により、局所的に線幅30μm以下の金属膜を設けた金属パターンであって、該基板と該金属膜との密着性が0.2kN/m以上である金属パターン。
- 表面の凹凸が500nm以下の基板上に、 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により得られた線幅30μm以下の金属パターンであって、
該基板と該金属膜との間に存在するポリマー層は、無電解メッキ触媒微粒子、及び/又は、無電解メッキにより析出した金属からなる微粒子を25体積%以上分散含有する領域を、該基板と該金属膜との界面から基板方向に厚み0.05μm以上含み、且つ、該基板と該金属膜との密着性が0.2kN/m以上である金属パターン。 - 前記基板が、表面の凹凸が100nm以下の基板であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の金属パターン。
- 前記基板が、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の金属パターン。
- 前記基板が、1GHzにおける誘電率が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の金属パターン。
- 前記請求項10又は請求項11に記載の金属パターンを導電層として用いることを特徴とするプリント配線板。
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