JP2006237400A - 導電性パターンの形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基板表面の粗面化やエッチング工程を行うことなく微細な金属パターンの形成が可能であり、急激な温度変化に対しても安定した密着性を維持することができる導電性パターンの形成方法を提供すること。また、高周波特性に優れる金属配線に好適な導電性パターンの形成方法を提供すること。
【解決手段】 基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程と、
該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
無電解メッキを行う工程と、
前記親水性基を疎水性に変換する工程と、
をこの順に有することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性パターンの形成方法に関し、金属配線基板に好適な導電性パターンの形成方法に関する。
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン形成方法としては、例えば、「サブトラクティブ法」が知られている。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、電気配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
この問題を解決するために、基板表面にラジカル重合性化合物をグラフト重合して表面改質を行うことで、基板の凹凸を最小限にとどめ、かつ、基板の処理工程を簡易にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。しかし、この手法で作製した金属膜をサブトラクティブ法によりパターン化しても、サブトラクティブ法に特有の問題点がある。サブトラクティブ法により高細線幅の金属パターンを形成するためには、レジストパターンの線幅よりもエッチング後の線幅が細くなる、いわゆる、オーバーエッチング法が有効である。しかしながら、オーバーエッチング法により、微細金属パターンを直接形成しようとすると、線のにじみやかすれ、断線等が発生しやすくなり、良好な微細金属パターンを形成するという観点からは、30μm以下の金属パターンの形成は難しい。また、パターン部以外のエリアに存在する金属膜をエッチング処理によって除去するため無駄が多く、また、そのエッチング処理によって生じる金属廃液の処理に費用がかかるなど、環境、価格面でも問題があった。
更に、グラフト重合による表面改質が行われた基板にはグラフトポリマーの有する極性基が存在する。そのため、上記方法で作製された金属パターンを電気配線基板の配線とする場合、基板界面部分に存在する極性基が水分を保持しやすくなるため、その電気配線基板に急激に熱をかけた際に金属パターンと基板との界面で水蒸気が発生して、金属パターンが基板から剥離してしまう懸念があり、この点に対する改良が望まれていた。
特開昭58−196238号公報 Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、基板表面の粗面化やエッチング工程を行うことなく微細な金属パターンの形成が可能であり、急激な温度変化に対しても安定した密着性を維持することができる導電性パターンの形成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高周波特性に優れる金属配線に好適な導電性パターンの形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
即ち、本発明の導電性パターンの形成方法は、基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程と、該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、無電解メッキを行う工程と、前記親水性基を疎水性に変換する工程と、をこの順に有することを特徴とする。
本発明の導電性パターンの形成方法において、前記無電解メッキを行う工程と前記親水性基を疎水性に変換する工程との間に、又は、前記親水性基を疎水性に変換する工程の後に、電気メッキを行う工程を有することが好ましく、親水性基を疎水性に変換する工程の後に電気メッキを行う工程を有することがより好ましい。
また、本発明の導電性パターンの形成方法において、前記基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程が、基板上に、表面グラフト重合法を用いて無水マレイン酸化合物によるグラフトポリマーをパターン状に生成させた後、酸無水物構造を分解して開環する方法で行われることが好ましい態様の1つである。これに合わせ、親水性基を疎水性に変換する工程が、加熱により前記開環構造を閉環することで行われることが好ましい。
本発明によれば、基板表面の粗面化やエッチング工程を行うことなく微細な金属パターンの形成が可能であり、急激な温度変化に対しても安定した密着性を維持することができる導電性パターンの形成方法を提供することができる。
また、本発明の導電性パターンの形成方法によれば、基板表面の粗面化を必要とせず、また、金属パターンと基板との間に安定した密着性が得られるため、形成された導電性パターンは高周波特性に優れる金属配線に好適に用いられる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性パターンの形成方法は、基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程(以下、適宜「親水性グラフトポリマーパターン形成工程」と称する。)と、該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程(以下、適宜「無電解メッキ触媒等付与工程」と称する。)と、無電解メッキを行う工程(以下、適宜「無電解メッキ工程」と称する。)と、前記親水性基を疎水性に変換する工程(以下、適宜「極性変換工程」と称する。)と、をこの順に有することを特徴とする。
<親水性グラフトポリマーパターン形成工程>
本工程では、基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させて、親水性グラフトポリマーパターンを形成する。このようなグラフトポリマーは、一般的に、表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて生成される。
表面グラフト重合とは、一般に、固体表面を形成する高分子化合物鎖上に活性種を与え、この活性種を起点として別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。
本発明では、基板表面に親水性基を有する重合性化合物、又は、親水性基に変換可能な官能基を有する重合性化合物を接触させ、そこにエネルギーを付与することで、基板表面に活性点を発生させて、この活性点と重合性化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。
また、エネルギーを付与し基板表面に活性点を発生させてから、親水性基を有する重合性化合物、又は、親水性基に変換可能な官能基を有する重合性化合物を、その基板表面に接触させてもよい。
この接触は、親水性基を有する重合性化合物、又は、親水性基に変換可能な官能基を有する重合性化合物を含有する液状組成物中に、基板を浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、前記液状組成物を基板表面に塗布する、又は、その塗膜を乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成する方法を用いることが好ましい。
また、基板の両面に親水性グラフトポリマーパターンを形成させる場合には、上記のような表面グラフト重合を用いて表裏同時にグラフトポリマーを生成させてもよいし、片面に対して先ずグラフトポリマーを生成させた後に、もう片面に対してグラフトポリマーを生成させてもよい。
本発明を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法のいずれもを使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には、表面グラフト重合法として、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203,p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報、及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al,Macromolecules vol.19,page 1804(1986)などの記載の方法にて作製することができる。具体的には、PETなどの高分子表面をプラズマ若しくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とノマーとを反応させることによりグラフトポリマーを得ることができる。
光グラフト重合法は、上記記載の文献の他に、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)記載のように、フィルム基板の表面に光重合性組成物を塗布し、その後、ラジカル重合化合物を接触させ光を照射させて、グラフトポリマーを得ることができる。
〔親水性基を有する重合性化合物〕
本発明に用いられる親水性基を有する重合性化合物には、後述の極性変換工程にて、疎水性に極性変換しうる親水性基を有する重合性化合物を用いることが必要である。
つまり、本発明における親水性基は、無電解メッキ触媒又はその前駆体との相互作用性を有し、かつ、疎水性に極性変換しうるものである。
このような親水性基としては、(1)親水性基自体が熱や酸などにより疎水性に極性変換するもの、(2)他の反応性物質との反応により疎水性に極性変換するもの、(3)閉環反応により疎水性に極性変換するもの、のいずれであってもよい。
以下、この(1)〜(3)の親水性基を有する重合性化合物について順に説明する。
[(1)熱や酸などにより疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物]
本発明において、熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基としては、公知の官能基を挙げることができる。下記に、熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基の例を挙げる。
例えば、特開平10−296895号及び米国特許第6,190,830号に記載のオニウム塩基が好ましく、特に、アンモニウム塩であることが好ましい。より具体的なものとして、(メタ)アクリイロルオキシアルキルトリメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
また、特開2001−117223公報記載の官能基も好適である。該公報の中でも、特に好ましくは、一般式(3)で示されるカルボン酸基及びカルボン酸塩基が好適なものとして挙げられるが、これらの例示に特に限定されるものではない。
以下、熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基として特に好ましい具体例を示す。
Figure 2006237400
このような熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
Figure 2006237400
上記のような(1)の親水性基を有する重合性化合物により親水性グラフトポリマーパターンを形成する場合には、2つの方法を用いることができる。第1の方法としては、まず、このような親水性基を有する重合性化合物を用いて、基板表面全体にグラフトポリマーを生成させた後、無電解メッキによる金属膜を設けたくない領域(非金属パターン領域)の親水性基を疎水性に変換させる方法である。第2の方法としては、上記のような親水性基を有する重合性化合物を用い、基板表面の金属パターンを形成したい領域にのみにグラフトポリマーを生成させる方法である。
なお、上記第1の方法における無電解メッキによる金属膜を設けたくない領域(非金属パターン領域)の親水性基を疎水性に変換させる手段としては、例えば、基板表面全体に生成されたグラフトポリマー上に、光熱変換物質及びバインダーを含有する層を設け、その層の非金属パターン領域に対してパターン露光を行い、露光部の親水性基を疎水性に変換するという手段が挙げられる。
ここで、光熱変換物質として、取り扱い性の観点から、シアニン色素類が好適である。
また、バインダーとしては、入手のしやすさの観点から、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂等が好適である。
更に、露光には、紫外線、赤外線、レーザー等が好適である。
上記のパターン露光後、光熱変換物質含有層が除去されることで、親水性グラフトポリマーパターンが形成される。
[(2)他の反応性物質との反応により疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物]
本発明において、他の反応性物質との反応により疎水性に極性変換する親水性基としては、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)、スルホン酸基(−SO3H、−SO3Na)等が挙げられる。これらの親水性基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
Figure 2006237400
上記のような(2)の親水性基を有する重合性化合物により親水性グラフトポリマーパターンを形成する場合には、2つの方法を用いることができる。第1の方法としては、このような親水性基を有する重合性化合物を用い、基板表面の金属パターンを形成したい領域にのみにグラフトポリマーを生成させる方法である。第2の方法としては、まず、上記のような親水性基を有する重合性化合物を用いて、基板表面全体にグラフトポリマーを生成させた後、無電解メッキによる金属膜を設けたくない領域(非金属パターン領域)の親水性基を反応性物質と反応させて疎水性に変換させる方法である。
なお、これらの親水性基と反応する反応性物質とその反応方法については、後述の極性変換工程において説明する。
[(3)閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物]
本発明において、閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基としては、酸無水物構造が挙げられる。この酸無水物構造は、環状部分が開環して親水性基であるカルボン酸が生起する。この開環が水により行われた場合には閉環すると無水物構造を形成し、また、開環がアミン類により行われた場合にはイミド閉環構造を形成することで疎水性を示すようになる。
以下、閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物として好適な、酸無水物構造を有する無水マレイン酸化合物について説明する。
本発明において用いられる無水マレイン酸化合物は、下記一般式(A)で表される構造を有する。
Figure 2006237400
(上記一般式(A)中、R1及びR2は1価の有機基を表す。該1価の有機基としては、直鎖、分岐鎖若しくは環状の脂肪族基、又は、芳香族基であることが好ましく、置換基を導入可能な場合には、更に置換基を有していてもよい。)
一般式(A)におけるR1及びR2の1価の有機基としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
下記に、上記一般式(A)で表される無水マレイン酸化合物の具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
Figure 2006237400
このような無水マレイン酸化合物は、酸無水物構造が分解されて開環することで親水性基(カルボン酸基)を生じ、また、閉環することで疎水性となるものであると共に、構造内にエチレン性不飽和結合基を有する。そのため、この無水マレイン酸化合物を用いることで、閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基を有するグラフトポリマーを生成させることができる。
なお、無水マレイン酸化合物を用いて表面グラフト重合を行なう場合、無水マレイン酸化合物自体のラジカル重合反応性が低いため、スチレン化合物類、ビニルエーテル化合物類などと共重合することが好ましい。
ここで、酸無水物構造の分解による開環反応について説明する。酸無水物構造の開環反応は、1.酸触媒下での加水分解反応、2.塩基を反応させること、のいずれかで行われる。
ここで、酸触媒として用いられる化合物は、塩酸、硫酸、硝酸などのプロトン酸類や塩化アルミ、3フッ化ホウ素などのルイス酸等が挙げられる。また、この酸触媒下で酸無水物構造と反応させる化合物としては、水、アルコール類が挙げられ、アルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等が挙げられる。
一方、開環反応に用いられる塩基としては、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アルキルアミン等の有機塩基が挙げられ、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、アルキルアミンとしては、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、セカンダリーブチルアミン、イソブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ターシャリーアミルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、フェネチルアミン等が挙げられる。また、無機塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。この中でも、後の閉環反応にてイミド結合が形成できるという観点でアルキルアミンを用いることが好ましい。
この開環反応によりカルボン酸が生じ、このカルボン酸が親水性基として機能することとなる。
上記のような(3)の親水性基を有する重合性化合物により親水性グラフトポリマーパターンを形成する場合には、2つの方法を用いることができる。第1の方法としては、このような親水性基を有する重合性化合物を用い、基板表面の金属パターンを形成したい領域にのみにグラフトポリマーを生成させた後、酸無水物構造を開環させる方法である。第2の方法としては、まず、上記のような親水性基を有する重合性化合物を用いて、基板表面全体にグラフトポリマーを生成させた後、無電解メッキによる金属膜を設けたい領域(金属パターン領域)のみ酸無水物構造を開環させる方法である。
上記のような(1)〜(3)に示される親水性基を有する重合性化合物としては、上記の各具体例のようなモノマーをはじめ、同様の親水性基を有するマクロモノマーや、同様の親水性基及び重合性基を有するポリマーも用いることができる。
このような重合性化合物から得られるグラフトポリマーは、上記のような官能基を有する重合性化合物の1種による単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、他の重合性化合物との共重合体であってもよい。
上記のような(1)〜(3)に示される親水性基を有するマクロモノマーは、上記(1)〜(3)に示される親水性基を有するモノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。具体的には、本発明に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種提案されている。
これらのマクロモノマーの有用な重量平均分子量としては、250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
上記のような(1)〜(3)に示される親水性基及び重合性基を有するポリマーは、上記(1)〜(3)に示される親水性基を有するモノマーを公知の方法にて重合させて得られたポリマーに重合性基を導入することで作製することができる。つまり、このポリマーには、このような親水性基に加え、ポリマーの少なくとも末端又は側鎖に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入されていることが必須である。この重合性基は、ポリマーの側鎖に導入されていることが好ましい。なお、この重合性基の導入方法も公知の方法を用いることができる。
このようなポリマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
なお、上記のような(1)〜(3)に示される親水性基を疎水性に変換する方法については、後述の極性変換工程にて詳細に説明する。
このような親水性基を有する重合性化合物を含有する液状組成物に用いられる溶剤は、主成分である親水性基を有する重合性化合物が溶解可能ならば特に制限はなく、また、この液状組成物には、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
基板表面に液状組成物を塗布法にて接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、その場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
〔エネルギー付与〕
基板表面に活性点を発生させるためのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。上述のように、(1)に示される親水性基は熱により極性が変化してしまうため、このような親水性基を用いてグラフトポリマーを生成させる際に、基板表面に活性点を発生させるために加熱を用いる場合には、(1)に示される親水性基の極性が変化しない程度の加熱であることが必要である。
エネルギー付与手段の具体例としては、例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱、更には、グロー放電処理等が挙げられる。ここで、光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用される。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及びエネルギー付与手段により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
上述のように、上記(1)〜(3)に示される親水性基を有する重合性化合物を用いて親水性グラフトポリマーパターンを形成する際には、基板表面全体にグラフトポリマーを生成させる態様と、所望の金属パターン状にグラフトポリマーを生成させる態様と、が用いられる。グラフトポリマーを基板表面全体に生成させる態様では、上記のエネルギー付与手段を用いて基板表面全体に活性点を発生させればよい。
対して、グラフトポリマーを所望の金属パターン状に生成させる態様では、上記のエネルギー付与手段を用いて基板表面の所望の領域にのみ活性点を発生させればよい。このように、基板表面に対して、所望の領域にのみ活性点を発生させる手段としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録や、青色レーザ等の走査露光、マスクを用いた紫外線露光等が好適に挙げられる。特に、基板に与えるエネルギー量を考慮すると、紫外線露光が好ましい。
〔基板〕
次に、本発明において用いられる基板について説明する。本発明における基板は、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用でき、使用目的に応じて適宜選択される。
基板として具体的には、ポリイミド樹脂、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを成型したものや、シリコーン基板、紙、プラスチックがラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
また、本発明で得られる導電膜を用いてプリント配線板を作製する場合には、基板として絶縁性樹脂を用いることが好ましい。
このような絶縁樹脂としては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル化合物、エポキシ化合物などの樹脂が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を含む熱硬化性樹脂組成物により形成される基板が好ましく用いられる。これらの樹脂を2種以上組み合わせて樹脂組成物とする場合の好ましい組み合わせとしては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物とエポキシ化合物などの組み合わせが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂組成物により多層プリント配線板の基板を形成する場合には、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる無機充填剤を含まないことが好ましく、また、臭素化合物又はリン化合物を更に含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい
また、プリント配線板の基板として好ましい、その他の絶縁樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂が挙げられ、このような樹脂については、例えば、天羽悟ら著、「Journal of Applied Polymer Science」第92巻、p1252−1258(2004年)に詳細に記載されている。
更に、クラレ製のベクスターなどの名称で市販品としても入手可能な液晶性ポリマーやポリ4フッ化エチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂なども好ましく挙げられる。
これらの樹脂のうち、フッ素樹脂(PTFE)は高分子材料の中でもっとも高周波特性に優れる。ただし、Tgが低い熱可塑性樹脂であるために熱に対する寸法安定性に乏しく、機械的強度なども熱硬化性樹脂材料に比べて劣る。また、形成性や加工性にも劣るという問題がある。また、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂などとのアロイ化を行なって用いることもできる。例えば、PPEとエポキシ樹脂、トリアリルイソシアネートとのアロイ化樹脂、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化樹脂としても使用することができる。
エポキシ樹脂はそのままでは誘電特性が不十分であるが、かさ高い骨格の導入などで改善が図られており、このようにそれぞれの樹脂の特性を生かし、その欠点を補うような構造の導入、変性などを行った樹脂が好ましく用いられる。
例えば、シアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、「電子技術」、2002年第9号、p35に記載されており、これらの記載もまた、このような絶縁樹脂を選択する上で参照することができる。
本発明で得られる導電膜を用いてプリント配線板を形成する場合、大容量データを高速に処理するという観点で、信号の遅延と減衰とを抑制するためには、誘電率及び誘電正接のそれぞれ低くすることが有効である。低誘電正接材料の採用については、「エレクトロニクス実装学会誌」第7巻、第5号、P397(2004年)に詳細に記載されているとおりであり、特に低誘電正接特性を有する絶縁材料を採用することが高速化の観点から好ましい。具体的には、基板は、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.0以下である絶縁性樹脂からなることが好ましく、且つ、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなることが更に好ましい。絶縁樹脂の誘電率、誘電正接は、常法、例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法を利用した測定器(極薄シート用εr、tanδ測定器・システム、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
[基板表面或いは中間層]
本発明における基板は、上述のように、グラフトポリマーが化学的に直接結合できるような表面を有するものである。本発明においては、基板の表面自体がこのような特性を有していてもよく、このような特性を有する中間層を基板表面に設けてもよい。
中間層としては、特に、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法によりグラフトポリマーを合成する場合には、有機表面を有する層であることが好ましく、特に有機ポリマーの層であることが好ましい。また、有機ポリマーとしてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フォルマリン樹脂などの合成樹脂、ゼラチン、カゼイン、セルロース、デンプンなどの天然樹脂のいずれも使用することができる。光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法などではグラフト重合の開始が有機ポリマーの水素の引き抜きから進行するため、水素が引き抜かれやすいポリマー、特に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂などを使用することが、特に製造適性の点で好ましい。
[重合開始能を発現する層]
本発明においては、グラフト重合の際に活性点を効率よく発生させるという観点から、基板表面に設けられる中間層としては、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する化合物を含有する重合開始能を発現する層であることが好ましい。この重合開始能を発現する層としては、重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性層と、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(以下、特定重合開始ポリマーと称する。)を架橋反応により固定化してなる重合開始層と、の2つの態様が存在する。
この2つの態様の重合開始能を発現する層について順次説明する。
(重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性層)
本発明における重合性層は、重合性化合物及び重合開始剤等の必要な成分を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に設け、加熱又は光照射により硬膜し、形成することができる。
(a)重合性化合物
重合性層に用いられる重合性化合物は、基板との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により相互作用性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーが付加し得るものであれば特に制限はないが、中でも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。
このような疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
更には、前記のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で0〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
(b)重合開始剤
本発明における重合性層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、重合性層に含まれる重合性化合物と、相互作用性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーと、を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
重合性化合物及び重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合性層を基板上に形成する場合の塗布量は、充分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、1〜15g/m2が好ましい。
上記のように、基板表面上に上記の重合性層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合性層を形成するが、このとき、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、基板上にグラフトポリマーが生成した後に重合性層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。ここで、予備硬化に光照射を利用するのは、前記光重合開始剤の項で述べたのと同様の理由による。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
加熱乾燥後に所望により行われる光照射は、光源として、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。引き続き行われるグラフトパターンの形成と、エネルギー付与により実施される重合性層の活性点とグラフト鎖との結合の形成を阻害しないという観点から、重合性層中に存在する重合性化合物が部分的にラジカル重合しても、完全にはラジカル重合しない程度に光照射することが好ましく、光照射時間については光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が10%以上となり、且つ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
(特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層)
本発明における重合開始層は、特定重合開始ポリマーを含んで構成されていてもよい。この特定重合開始ポリマーは、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーである。このため、その特定重合開始ポリマーにおいて、重合開始基がポリマー鎖に結合しており、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態の重合開始層を形成することができる。このような重合開始層の表面にグラフトポリマーを生成させる場合、例えば、親水性基を有するモノマーを含有する溶液を接触させても、その溶液中に重合開始層中の開始剤成分が溶出することを防止することができる。また、重合開始層の形成に際しては、通常のラジカルによる架橋反応のみならず、極性基間の縮合反応や付加反応を使用することも可能であるため、より強固な架橋構造を得ることができる。その結果、重合開始層中の開始剤成分が溶出することをより効率良く防止することができ、重合開始層表面と直接結合をしていないホモポリマーの副生が抑えられることにより、重合開始層表面には直接結合したグラフトポリマーのみが生成されることになる。
ここで用いられる特定重合開始ポリマーは、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載にものが挙げられる。特定重合開始ポリマーの特に好ましいものの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2006237400
Figure 2006237400
−重合開始層の成膜−
本発明における重合開始層は、上述の特定重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基板上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより成膜する。つまり、この架橋反応が進行することにより、特定重合開始ポリマーが固定化される。この架橋反応による固定化には、特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用するの方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用するの方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
また、架橋剤を併用する方法に用いられる架橋剤としては、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知のものを用いることができる。
特定重合開始ポリマー中の架橋性基と架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(架橋性基,架橋剤)=(−COOH,多価アミン)、(−COOH,多価アジリジン)、(−COOH,多価イソシアネート)、(−COOH,多価エポキシ)、(−NH2,多価イソシアネート)、(−NH2,アルデヒド類)、(−NCO,多価アミン)、(−NCO,多価イソシアネート)、(−NCO,多価アルコール)、(−NCO,多価エポキシ)、(−OH,多価アルコール)、(−OH,多価ハロゲン化化合物)、(−OH,多価アミン)、(−OH,酸無水物)が挙げられる。中でも、架橋の後にウレタン結合が生成し、高い強度の架橋が形成可能であるという点で、(官能基,架橋剤)=(−OH,多価イソシアネート)が、更に好ましい組み合わせである。
本発明における架橋剤の具体例としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
Figure 2006237400
このような架橋剤は、重合開始層の成膜の際、上述の特定重合開始ポリマーを含有する塗布液に添加される。その後、塗膜の加熱乾燥時の熱により、架橋反応が進行し、強固な架橋構造を形成することができる。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応により架橋反応が進行し、架橋構造が形成される。これらの反応における温度条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、更に好ましくは80℃以上200℃以下である。
Figure 2006237400
また、塗布液中の架橋剤の添加量としては、特定重合開始ポリマー中に導入されている架橋性基の量により変化するが、架橋度合や、未反応の架橋成分の残留による重合反応への影響の観点から、通常、架橋性基のモル数に対して0.01〜50当量であることが好ましく、0.01〜10当量であることがより好ましく、0.5〜3当量であることが更に好ましい。
また、重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の特定重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
重合開始層の塗布量は、表面グラフト重合の開始能や、膜性の観点から、乾燥後の重量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、1〜15g/m2が好ましい。
[重合開始能を有する基板]
更に、本発明においては、基板自体が重合開始能を有していてもよい。このような基板としては、例えば、骨格中に重合開始部位を有するポリイミド(以下、適宜、特定ポリイミドと称する。)を含む基板が好適である。
以下、このような特定ポリイミドを含有する基板を、「重合開始能を有するポリイミド基板」と称し、説明する。
また、重合開始能を有するポリイミド基板における重合開始部位とは、UV光などによるエネルギー付与により活性化されて構造中に活性点(ラジカル種)を発生しうる部位を意味する。活性点を発生させる態様には、重合開始部位に直接活性点を発生させる態様や、重合開始部位近傍の水素の引き抜きにより、重合開始部位及びその近傍に活性点の発生を引き起こす態様、などが含まれる。
本発明における重合開始能を有するポリイミド基板は、次の<1>〜<3>をこの順に行うことにより作製することができる。
<1>ポリイミド前駆体化合物の作製
<2>ポリイミド前駆体の成形
<3>加熱処理によるポリイミド前駆体のポリイミド構造へ変化
以下、上記<1>〜<3>について説明する。
<1>ポリイミド前駆体化合物の作製
本発明における特定ポリイミドを合成する際に用いられるポリイミド前駆体化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が用いられる。
Figure 2006237400
上記一般式(I)中、R1は4価の有機基を表し、R2は2価の有機基を表し、nは2以上の整数を表す。但し、一般式(I)で表されるポリイミド前駆体化合物は、その分子を構成する構造単位の何れかにおいて、R1及び/又はR2として重合開始能を有する構造を含む基を有する。
なお、一般式(I)中における重合開始能を有する構造を含む基が、本発明に係る特定ポリイミドにおける重合開始部位に相当する部分である。また、重合開始能を有する構造としては、光重合開始能を有する構造であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物中、R1及び/又はR2として含まれる重合開始能を有する構造を含む基の含有量としては、基板表面にて行われるグラフト重合反応の観点から、10モル%〜60モル%が好ましく、20モル%〜60モル%がより好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(III)で表されるジアミン化合物と、を有機溶媒中で反応させることで得ることができる。また、他の成分として2価のアルコール類を添加してもよい。
Figure 2006237400
上記一般式(II)中のR3は前記一般式(I)におけるR1と、上記一般式(III)中のR4は前記一般式(I)におけるR2と、それぞれ同義である。
(一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物)
一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸無水物、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン無水物、1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン無水物、1,2,5,6−テトラカルボキシナフタレン無水物、p−ターフェニル−3,4,3”,4”−テトラカルボン酸無水物、m−ターフェニル−3,4,3”,4”−テトラカルボン酸無水物、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等が挙げられる。
また、一般式(II)中のR3が重合開始能を有する構造を含む基である場合、該重合開始能を有する構造としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等が挙げられる。
3が重合開始能を有する構造を含む基である場合、一般式(II)中に2つ存在するカルボン酸無水和物構造とR3との結合態様としては、カルボン酸無水和物構造が、上記重合開始能を有する構造中のいかなる場所に結合している態様であってもよく、また、連結基を介して結合していてもよい。
重合開始能を有する構造の中でも、ポリイミドの耐熱性の観点からは、(a)芳香族ケトン類が特に好ましい。
以下に(a)芳香族ケトン類の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(a)芳香族ケトン類
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(a)芳香族ケトン類には、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006237400
一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物であって、R3が重合開始能を有する構造を含む基であるものについて、具体例を下に示すが、これらに限定されるものでない。
Figure 2006237400
一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
(一般式(III)で表されるジアミン化合物)
一般式(III)で表されるジアミン化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、4,4”−ジアミノターフェニル、4,4−ジアミノクオーターフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフロロプロバン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,3,5,6−テトラアミノ−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
また、一般式(III)中のR4が重合開始能を有する構造を含む基である場合、該重合開始能を有する構造としては、前記一般式(II)におけるR3と同様に、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等が挙げられる。
4が重合開始能を有する構造を含む基である場合、一般式(III)中において2つ存在するアミノ基とR4との結合態様としては、2つのアミノ基が上記重合開始能を有する構造中のいかなる場所に結合している態様であってもよく、また、連結基を介して結合していてもよい。
重合開始能を有する構造の中でも、ポリイミドの耐熱性の観点からは、(a)芳香族ケトン類であることが特に好ましい。
(a)芳香族ケトン類の具体例としては、前記一般式(II)において列挙した具体例と同様の例を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(III)で表されるジアミン化合物であって、Rが重合開始能を有する構造を含む基であるものについて、具体例を下に示すが、これらに限定されるものでない。
Figure 2006237400
一般式(III)で表されるジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(一般式(I)で表される化合物の合成方法)
ポリイミド前駆体化合物である、一般式(I)で表される化合物の合成は、一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物、一般式(III)で表されるジアミン化合物、及び、所望により、ジアルコール化合物を用いて合成される。
具体的には、例えば、まず、一般式(III)で表されるジアミン化合物を溶媒に溶解させ、次に、一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物を添加し、用いる化合物に応じて、氷冷下若しくは室温又は40〜80℃の反応温度を選択して反応させることができる。
−溶媒−
ここで使用する溶媒としては、全成分の溶解性などを考慮して適宜選択すればよいが、なかでも下記溶剤が好適なものとして挙げられる。
例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、エチレンカーボネート、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、これらの溶剤を単独或いは混合して使用する。
これらの中でも、特に好ましい溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼン、ジメチルスルホキシドを挙げることができる。
一般式(I)で表される化合物(ポリイミド前駆体化合物)の重量平均分子量は、通常1,000〜10,000,000、好ましくは1,000〜1,000,000程度である。更に好ましくは、2,000〜1,000,000程度である。
<2>ポリイミド前駆体の成形
上記<1>に次いで、ポリイミド前駆体の成形が行われる。用いられるポリイミド前駆体としては、上記<1>で得られた一般式(I)で表される化合物のみを用いてもよいし、他の構造のポリイミド前駆体(重合開始能を有する基を含まない化合物)を併用してもよい。
複数種のポリイミド前駆体が用いられる場合、全ポリイミド前駆体中における一般式(I)で表される化合物と、他のポリイミド前駆体との含有比としては、一般式(I)で表される化合物が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
成形体の形状については、特に限定されないが、製造適性の点からは、フィルム状、板状であることが好ましい。
(成形方法)
成形方法としては、いかなる手法も適用でき、2軸延伸フィルム成形、射出成形、押出形成、中空成形、圧縮成形、反応成形、FRP成形、熱成形、ロールシート成形、キャレンダ成形、積層成形、回転成形が適用できる。また、ガラス基板等に塗布、乾燥してフィルム状に成形することもできる。
<3>加熱処理によるポリイミド前駆体のポリイミド構造へ変化
上記<2>により成形されたポリイミド前駆体の成形体に対して、加熱処理が行われる。加熱処理は、100℃〜450℃で、1分〜1時間加熱することにより行われ、これにより、前記一般式(I)で表される化合物(ポリイミド前駆体)は、下記一般式(IV)で表されるポリイミドに構造が変化する。このようにして、本発明に係るポリイミド基板が得られる。
Figure 2006237400
一般式(IV)中、R1、R2、及びnは、一般式(I)におけるR1、R2、及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
以下に、一般式(IV)で表されるポリイミドの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2006237400
Figure 2006237400
以上のようにして、特定ポリイミドを含む基板(重合開始能を有するポリイミド基板)が得られる。
本発明の導電性パターンの形成方法においては、以上説明したグラフトポリマー生成工程に次いで、「無電解メッキ触媒等付与工程」及び「無電解メッキ工程」が行われ、基板表面には、その基板との密着性に優れた金属膜(導電膜)が形成される。
以下、無電解メッキ触媒等付与工程、及び、無電解メッキ触媒等付与工程について、詳細に説明する。
<無電解メッキ触媒等付与工程>
本工程においては、上記のようにして生成したグラフトポリマーの親水性基に対して、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する。
〔無電解メッキ触媒〕
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、相互作用性領域中の上の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマーが有する親水性基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解メッキ触媒)を吸着させることができる。
〔無電解メッキ触媒前駆体〕
本工程において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、グラフトポリマーの親水性基に吸着した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトポリマーに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーが存在する基板表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーを有する基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する親水性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、グラフトポリマー生成領域に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
<無電解メッキ工程>
本工程では、無電解メッキ触媒等付与工程より、無電解メッキ触媒等が付与された基板に対して、無電解メッキを行うことで、金属パターンが形成される。即ち、本工程における無電解メッキを行うことで、前記工程により得られた親水性グラフトポリマーパターンに高密度の金属膜(金属パターン)が形成される。形成された金属パターンは、優れた導電性と密着性を有する。
〔無電解メッキ〕
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、前記無電解メッキ触媒等付与工程で得られた、無電解メッキ触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウム等が知られており、中でも、導電性の観点からは、銅や金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される金属膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られる金属パターンは、運動性の高いグラフトポリマーに吸着された無電解メッキ触媒に対して無電解メッキを行い形成されるものであり、メッキ液はグラフトポリマーからなる層内部にも浸透すると考えられることから、金属パターンと基板との界面は、グラフトポリマーと無電解メッキ触媒や析出したメッキ金属とのハイブリッド状態になっているものと予想される。このような金属パターンを、SEMにより断面を観察すると、グラフトポリマーからなる層中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子が分散しており、更に、その上に比較的大きな金属粒子が析出していることが確認された。この結果に示されるように、界面がグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態で構成されているため、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との界面の凹凸差が500nm以下、更に、好ましい態様である100nm以下であるような平坦な状態であっても、金属パターンの密着性が良好であった。
ここで、グラフトポリマーからなる層中の無電解メッキ触媒やメッキにより析出した金属などの微粒子の状態を更に詳細に説明する。このようなグラフトポリマーからなる層中においては、無電解メッキ触媒、無電解メッキ触媒前駆体に由来する金属塩、及び/又は、無電解メッキにより析出した金属からなる微粒子が分散している。この際の微粒子の分散状態は、金属パターンとの界面に近づくにつれて高密度となり、金属パターンとの界面近傍に微粒子が25体積%以上含まれている領域が存在することが、金属パターンの密着力発現の観点から好ましく、更に好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、特に50体積%以上含まれる領域が存在することが好ましい。また、グラフトポリマーからなる層中において、このような微粒子が高密度で存在する領域としては、金属パターンとの界面から基板方向へ深さ0.05μm以上の領域で存在することが好ましく、0.1μm以上の領域で存在することがより好ましく、更に0.2μm以上の領域で存在することが好ましく、特に0.3μm以上の深さまで存在することがの深さまで存在することが好ましい。
<極性変換工程>
本工程では、前記無電解メッキ工程の後で、グラフトポリマーの親水性基を疎水性に極性変換する。本工程における極性変換方法は、前述のグラフトポリマー生成工程において説明した親水性基の種類によって異なる。以下、グラフトポリマーの有する親水性基の種類と、その親水性基に合わせた極性変換方法について説明する。
ここで、親水性基を疎水性に変化させるとは、極性変換前の親水性基の親水性と比較して、水との親和性が低くなる状態へと変化させることを意味する。
本発明において、(1)熱や酸などにより疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物を用いてグラフトポリマーを生成した場合には、極性変換方法として、該(1)の親水性基を有するグラフトポリマーが生成した基板ごと加熱する、又は、グラフトポリマーの親水性基に酸を付与する方法が用いられる。
グラフトポリマーが生成した基板を加熱する方法を用いる場合には、加熱条件は、(1)の親水性基の種類、(1)の親水性基の量、基板の材質等により、適宜、決定される。
グラフトポリマーの(1)の親水性基を極性変換するための加熱条件は、一般的には、加熱温度としては、80〜250℃の範囲であることが好ましく、100〜200℃の範囲であることがより好ましい。また、加熱時間としては、10分〜12時間の範囲であることが好ましく、10分〜4時間の範囲であることがより好ましい。
また、グラフトポリマー(1)の親水性基に酸を付与する方法を用いる場合には、以下の手法が適用できる。
即ち、グラフトポリマーからなる層中に、予め、熱により酸を発生する酸発生剤を含有させておき、それを基板ごと加熱することで、(1)の親水性基に酸を付与する手法である。ここで用いられる酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムトリフラート、フェニルジアゾニウムトリフラート等が挙げられる。
本発明において、(2)他の反応性物質との反応により疎水性に極性変換する親水性基を有するグラフトポリマーを生成した場合には、極性変換方法として、グラフトポリマーの親水性基に、該親水性基と反応する反応性物質を付与する方法が用いられる。
これらの親水性基と反応する反応性物質としては、下記に示す官能基を有する化合物であることが好ましい。親水性基と、該親水性基と反応する官能基と、の好ましい組み合わせとしては、(グラフトポリマーの親水性基,親水性基と反応する官能基、又はそれを有する化合物)=(−COOH,−NH2)、(−COOH,アジリジン)、(−COOH,イソシアネート)、(−COOH,エポキシ)、(−NH2,イソシアネート)、(−NH2,アルデヒド類)、(−NCO,アミン)、(−OH,アルコール)、(−OH,エポキシ)、(−OH,ハロゲン化化合物)、(−OH,アミン)、(−OH,イソシアネート)が挙げられる。
この(2)の親水性基に反応性物質を付与する方法としては、該反応性物質を含有する溶液中に、グラフトポリマーが生成した基板を浸漬する方法が挙げられる。なお、この方法を用いる場合、(2)の親水性基と反応性物質との接触が容易になるように、無電解メッキによるメッキ量を少なくしておくことが好ましい。
本発明において、(3)閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物としては、無水マレイン酸化合物が挙げられる。この無水マレイン酸化合物を用いてグラフトポリマーを生成させた場合には、極性変換方法として、開環した酸無水物構造を有するグラフトポリマーが生成した基板ごと加熱して、閉環させる方法が用いられる。
この際の加熱条件は、酸無水物構造の種類、その量、基板の材質等により、適宜、決定される。一般的には、加熱温度は、100〜200℃の範囲であることが好ましく、加熱時間は10分〜4時間であることが好ましい。
以上のように、本工程において、グラフトポリマーの有する親水性基の種類に合わせた極性変換方法を用いて、親水性基を疎水性に変換することができる。
本発明においては、反応性の観点から、(1)熱や酸などにより疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物、及び、(3)閉環反応により疎水性に極性変換する親水性基を有する重合性化合物を用いる態様が好ましい。
<電気メッキ工程>
本発明においては、前記極性変換工程の前又は後に、電気メッキを行う工程(電気メッキ工程)を有することもできる。本工程では、前記無電解メッキ工程における無電解メッキにより得られた金属膜を電極とし、更に、電気メッキを行う。
ここで、前記極性変換工程では、加熱等を行うことから、形成された金属膜とグラフトポリマーとの界面でCO2、H2Oなどの気体が発生することがある。この気体の除去性を高めるためには金属膜が薄いほうが好ましいことから、金属膜の膜厚を増加させるために行う本電気メッキ工程は、前記極性変換工程の後を行うことが好ましい。
上記のように、本工程では、無電解メッキにより得られた、基板との密着性に優れた金属膜(金属パターン)をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。本発明においては、この工程を付加することにより、金属パターンを目的に応じた厚みに形成することができ、本発明において得られた導電性パターンを種々の応用に適用するのに好適である。
〔電気メッキ〕
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線など作製する際に用いるためには、膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
<防錆処理工程>
本発明においては、形成された金属パターンに対して、酸化を防止するための防錆処理を施すことができる。
特に、前記極性変換工程は加熱やその他の化合物を付与するなどの手段を用いるため、その工程中又は工程後に得られた金属膜(金属パターン)を酸化してしまう恐れがある。このため、防錆工程を施すことが好ましい。
本発明に適用可能な防錆処理としては、通常、プリント配線基板の製造時に使用されている防錆処理の方法が何れも使用可能である。例えば、基板上に亜鉛をメッキをする方法、フラックスを塗布する方法、ソルダーレジストを塗布する方法などを用いることができる。
本発明によれば、基板表面と直接結合している親水性グラフトポリマーパターン上に、選択的に無電解メッキまたはその前駆体を付与し、続いて無電解メッキを行うため、従来のレジストパターンを用いたエッチング工程による金属パターン形成方法と比較して、高解像度の金属パターンを容易に得ることができる。また、基板表面の粗面化やエッチング工程を必要としないため、工程が簡易になる、エッチング廃液がでないといった利点をも奏する。
本発明により形成された導電性パターンは、無電解メッキ後において残存するグラフトポリマーの有する親水性基が疎水性に極性変換されていることを特徴とする。これにより、無電解メッキにより金属膜を形成した後に残存した親水性基の存在に起因する、急激な温度変化や湿度変化による金属パターンの剥離を防止することできる。
また、本発明により作製された導電性パターンを配線基板に適用した場合であっても、上記のように、基板表面の粗面化を必要とせず、また、金属パターンと基板との間に安定した密着性が得られるため、優れた高周波特性が得られるという効果を有する。
更に、本発明により作製された導電性パターンは、基板表面と擦りなどの機械的な操作によっても剥がれることがないように強固に密着し、かつ、均質な金属膜を備えることから、フレキシブルな金属配線基板を形成する際にも好適に用いられる。その他、例えば、電磁波防止膜、アンテナなどにも用いることができる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
<グラフトポリマー生成工程>
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面にグロー処理として平版マグネトロンスパックリング装置(東芝エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件でアルゴングロー処理を行った。
(アルゴングロー処理)
初期真空 :1.2×10‐3Pa
アルゴン圧力 :0.9Pa
RFグロー :1.5kW
処理時間 :60sec
次に、グロー処理したポリイミドフィルムを、窒素バブルした10質量%のα(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩水溶液に50℃で7時間浸漬して、表面グラフト重合を行わせた。その後、水洗によりグラフト重合されていないポリマーを取り除いた。これにより、基板表面全体に、α(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩によるグラフトポリマーが生成した。
その後、グラフトポリマー上に、ロッドバー18番を用いて下記組成物を塗布し、110℃で10分乾燥した。得られた光熱変換物質含有層の膜厚は9.3μmであった。
(光熱変換物質含有層塗布液)
・光熱変換物質(IR125 和光純薬工業) 0.1g
・ポリスチレン 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 1.6g
得られた光熱変換物質含有層に対し、波長830nmの赤外光を発するIRレーザー(ビーム径20μm)にて、非金属パターン領域をパターン露光した。その後、MFGにより光熱変換物質含有層を洗浄、除去し、親水性グラフトポリマーパターン1を形成した。
<無電解メッキ触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程>
この親水性グラフトポリマーパターン1を有する基板を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬した。
(無電解メッキ浴成分)
・硫酸銅 0.3g
・酒石酸KNa 1.7g
・水酸化ナトリウム 0.7g
・ホルムアルデヒド 0.2g
・水 48g
<極性変換工程>
無電解メッキが終了した後、金属膜(金属パターン)が形成された基板を、150℃で、1時間加熱し、グラフトポリマーの有する親水性基を疎水性に極性変換させた。
<電気メッキ工程>
極性変換工程後、下記組成の電気メッキ浴を用いて、15分間電気メッキした。
(電気メッキ浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
<防錆処理工程>
その後、奥野製薬工業製、OPCディフェンサーを用いて防錆処理を行った。
以上のようにして、実施例1における導電性パターンAを得た。
〔実施例2〕
<グラフトポリマー生成工程>
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その基板上に、下記光重合性組成物をロッドバー18番で塗布し80℃で2分間乾燥させた。次に、この塗膜に対し、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、10分間紫外線照射し、予備硬化させた。このようにして、基板上に重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性層を形成した。
〔光重合性組成物〕
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
次に、この重合性層が形成されたフィルムを、10質量%の下記構造の化合物(potassium{2−(4−(methacrylamido)phenyl)sulfanyl}acetate)水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、1.5kw高圧水銀灯(USHIO製)を使用し10分間光照射した。光照射後、フィルムをイオン交換水で良く洗浄した。これにより、表面に、potassium{2−(4−(methacrylamido)phenyl)sulfanyl}acetateによるグラフトポリマーが生成した。
Figure 2006237400
その後、グラフトポリマー上に、ロッドバー18番を用いて下記組成物を塗布し、110℃で10分乾燥した。得られた光熱変換物質含有層の膜厚は9.3μmであった。
(光熱変換物質含有層塗布液)
・光熱変換物質(IR125 和光純薬工業) 0.1g
・ポリメタクリル酸メチル 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 1.6g
得られた光熱変換物質含有層に対し、波長830nmの赤外光を発するIRレーザー(ビーム径20μm)にて、非金属パターン領域をパターン露光した。その後、MFGにより光熱変換物質含有層を洗浄、除去し、親水性グラフトポリマーパターン2を形成した。
<無電解メッキ触媒等付与工程、無電解メッキ工程、極性変換工程、電気メッキ工程、防錆処理工程>
この親水性グラフトポリマーパターン2が形成された基板を、実施例1における無電解無電解メッキ触媒等付与工程、無電解メッキ工程、極性変換工程、電気メッキ工程、及び防錆処理工程と同様の工程に供した。
以上のようにして、実施例2における導電性パターンBを得た。
〔実施例3〕
<特定重合開始ポリマーAの合成>
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、〔2−(アクリロイロキシ)エチル〕(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウム ブロミド8.1gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.9gと、イソプロピルメタクリレート13.5gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、MFG30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80度に上げ、更に2時間反応させ、下記特定重合開始ポリマーAを得た。なお、下記の構造式に付されている数値は、各繰り返し単位におけるモル共重合比を示す。
Figure 2006237400
<グラフトポリマー生成工程>
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に、下記の重合開始層塗布液をロッドバー18番を用いて塗布し、130℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は9.3μmであった。
(重合開始層塗布液)
・上記特定重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
次に、この重合開始層が形成されたフィルムに、30質量%の無水マレイン酸/スチレン=1/1(モル比)のMFG溶液をロットバー#6を用いて塗布し、塗布面を厚さ25μmのPETフィルムでラミネートした。更に、その上にフォトマスクを重ね、UV光を所望の金属パターン状に照射(1.5kW高圧水銀灯:USHIO製、照射時間5分)した。光照射後、フォトマスク及びPETフィルムを除去して、アセトンにより洗浄した。これにより、基板表面に、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体からなるグラフトポリマーが生成した。その後、このグラフトポリマーが生成した基板を30質量%のベンジルアミンのMEK溶液に4時間浸漬して反応させて、酸無水物構造を開環させて、親水性グラフトポリマーパターン3を形成した。
<無電解メッキ触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程>
この親水性グラフトポリマーパターン3が形成された基板を、実施例1における無電解メッキ触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程と同様の工程に供した。
<極性変換工程>
無電解メッキが終了した後、金属パターンが形成された基板を、200℃で、1時間加熱し、グラフトポリマー中の開環した酸無水物構造を閉環し、を疎水性に極性変換させた。
<電気メッキ工程、及び防錆処理工程>
その後、実施例1における電気メッキ工程、及び防錆処理工程に供した。
以上のようにして、実施例3における導電性パターンCを得た。
〔実施例4〕
<重合開始能を有するポリイミド基板の作製>
(ポリイミド前駆体化合物(ポリアミック酸1)の合成)
窒素下にて、N−メチルピロリドン(30ml)中にジアミン化合物として、4,4’−ジアミノベンゾフェノン(28.7mmol)を溶解させ室温にて約30分間撹拌した。この溶液にp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(28.7mmol)を0℃にて加え5時間撹拌した。この反応液を再沈して、ポリイミド前駆体化合物(ポリアミック酸)を得た。ポリアミック酸1は、1H−NMR、FT−IRによりその構造を確認した。
(ポリイミドフィルムの作製)
上記手法で合成したポリアミック酸を、DMAc(和光純薬(株)社製)に溶解し30質量%の溶液とした。ガラス基板に、該溶液をロッドバー#36を用いて塗布、100℃で5分間乾燥後、250℃で30分間加熱して固化させ、ガラス基板から剥がすことで、ポリイミドフィルム(基板)を得た。
<グラフトポリマー生成工程>
上記手法で作製したポリイミドフィルに、30質量%の無水マレイン酸/スチレン=1/1(モル比)のMFG溶液をロットバー#6を用いて塗布し、塗布面を厚さ25μmのPETフィルムでラミネートした。更に、その上にフォトマスクを重ね、UV光を所望の金属パターン状に照射(1.5kW高圧水銀灯:USHIO製、照射時間5分)した。光照射後、フォトマスク及びPETフィルムを除去して、アセトンにより洗浄した。これにより、基板表面に、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体からなるグラフトポリマーが生成した。その後、このグラフトポリマーが生成した基板を30質量%のベンジルアミンのMEK溶液に4時間浸漬して反応させて、酸無水物構造を開環させて、親水性グラフトポリマーパターン4を形成した。
<無電解メッキ触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程>
この親水性グラフトポリマーパターン4が形成された基板を、実施例1における無電解メッキ触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程と同様の工程に供した。
<極性変換工程>
無電解メッキが終了した後、金属パターンが形成された基板を、200℃で、1時間加熱し、グラフトポリマー中の開環した酸無水物構造をイミド閉環し、疎水性に極性変換させた。
<電気メッキ工程、及び防錆処理工程>
その後、実施例1における電気メッキ工程、及び防錆処理工程に供した。
以上のようにして、実施例4における導電性パターンDを得た。
<評価>
1・導電性の評価
得られた導電性パターンA〜Dにおける金属パターンの表面抵抗(Ω/□)を4探針法にて測定することで、導電性を評価した。結果を下記表1に示す。
2.密着性試験
得られた導電性パターンA〜Dを幅5mmに切込みを入れ、銅箔(金属膜)を剥がし、JIS C 6481(1994年度版)に基づき90度剥離実験を行うことで、密着性を評価した。結果を下記表1に示す。
3.金属パターンの剥離の観察
得られた導電性パターンA〜Dを、270℃で30分加熱し、加熱後の金属パターンの剥離の状態を目視にて確認した。結果を下記表1に示す。
Figure 2006237400
表1に示されるように、実施例の方法により得られた導電性パターンA〜Dでは、導電性、密着性のいずれもが優れていた。また、導電性パターンA〜Dにおいて、加熱した場合であっても金属パターンの剥離は見られず、急激な温度変化に対しても安定した密着性を維持可能であることが分かる。

Claims (4)

  1. 基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程と、
    該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
    無電解メッキを行う工程と、
    前記親水性基を疎水性に変換する工程と、
    をこの順に有することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
  2. 前記無電解メッキを行う工程と前記親水性基を疎水性に変換する工程との間に、又は、前記親水性基を疎水性に変換する工程の後に、電気メッキを行う工程を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性パターンの形成方法。
  3. 前記基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、親水性基を有するグラフトポリマーをパターン状に生成させる工程が、基板上に、表面グラフト重合法を用いて無水マレイン酸化合物によるグラフトポリマーをパターン状に生成させた後、酸無水物構造を分解して開環する方法で行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性パターンの形成方法。
  4. 前記親水性基を疎水性に変換する工程が、加熱により前記開環構造を閉環することで行われることを特徴とする請求項3に記載の導電性パターンの形成方法。
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