JP2009280904A - 表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、金属パターン材料、及びポリマー層形成用分散物 - Google Patents

表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、金属パターン材料、及びポリマー層形成用分散物 Download PDF

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Abstract

【課題】基板との密着性に優れた金属膜を有し、且つ、湿度変化による密着力の変動が少ない表面金属膜材料、及び該表面金属膜材料を有機溶剤の使用を低減しつつ作製することができる表面金属膜材料の作製方法を提供すること。
【解決手段】(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法、この作製方法により得られた表面金属膜材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、金属パターン材料、及びポリマー層形成用分散物に関する。
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1、2参照。)。しかしながら、この方法によれば、グラフトポリマーが極性基を有することから、温度や湿度変化により水分の吸収や脱離が生じ易く、その結果、形成された金属膜や基板が変形してしまうという問題を有していた。
また、この方法を利用して得られた金属パターンを金属配線基板の配線として使用する際には、基板界面部分に極性基を有するグラフトポリマーが残存し、水分やイオン等を保持しやすくなるため、温・湿度依存性や配線間の耐イオンマイグレーション性や、形状の変化に懸念があった。特に、プリント配線板などの微細配線に適用した際には、配線(金属パターン)間における高い絶縁性が必要であり、配線間の絶縁信頼性のより一層の向上が要求されているのが現状である。この点から、金属配線材料を得る際には、疎水性材料を用いることが好ましいが、疎水性材料を用いる際には、金属配線作製プロセスの中で有機溶剤を用いる必要があり、環境負荷が高くなってしまうといった問題を抱えている。そのため、電気絶縁性を良好とすると共に、環境負荷の低い金属配線作製プロセスが求められている。
一方、ポリマー粒子の水分散物を用いて硬化膜を形成する技術については、特許文献1、2に記載されている。しかしながら、いずれも特許文献にもこの硬化膜上にめっき膜を形成するといった記載はない。
Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
特開平7−156560号公報 特開2004−317572号公報
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、基板との密着性に優れた金属膜を有し、且つ、湿度変化による密着力の変動が少ない表面金属膜材料、及び該表面金属膜材料を有機溶剤の使用を低減しつつ作製することができる表面金属膜材料の作製方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、基板との密着性に優れた金属パターンを有し、且つ、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料、及び該金属パターン材料を有機溶剤の使用を低減しつつ作製することができる金属パターン材料の作製方法その作製方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れたポリマー層を形成し得るポリマー層形成用分散物を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
本発明の表面金属膜材料の作製方法においては、(b)工程後、(c)工程前に、基板を水洗する工程を含むことが好ましい。
また、(a)工程が、(a−1)基材上に、重合開始剤を含有する、又は重合開始可能な官能基を有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(a−2)該重合開始層に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、を含むことも好ましい態様である。
本発明の表面金属膜材料の作製方法においては、(a)工程に用いられるシアノ基を有するポリマーが、シアノ基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独、若しくは、共重合してなるポリマーであることが好ましい。
また、(a)工程に用いられるシアノ基を有するポリマーが、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることも好ましい態様である。
Figure 2009280904
上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法においては、(d)工程では、無電解めっきが行われることが好ましく、該無電解めっきの後に、更に電気めっきが行われることがより好ましい。
本発明の表面金属膜材料は、本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られたものである。
本発明の第1の金属パターン材料の作製方法は、(e)本発明の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする。
つまり、金属パターン材料の作製方法は、前述の表面金属膜材料の作製方法における(a)、(b)、(c)、及び(d)工程を行った後、形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程〔(e)工程〕を行うものである。
本発明の第2の金属パターン材料の作製方法は、(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b’)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、パターン状の熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
つまり、本発明の第2の金属パターン材料の作製方法では、パターン状の熱融着層を形成することで、その形状に応じた金属膜が形成されることから、本発明の第1の金属パターン材料の作製方法のようなエッチング工程を必要とすることなく、金属パターン材料を作製することができる。
また、本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
本発明によれば、基板との密着性に優れた金属膜を有し、且つ、湿度変化による密着力の変動が少ない表面金属膜材料、及び該表面金属膜材料を有機溶剤の使用を低減しつつ作製することができる表面金属膜材料の作製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを有し、且つ、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料、及び該金属パターン材料を有機溶剤の使用を低減しつつ作製することができる金属パターン材料の作製方法その作製方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れたポリマー層を形成し得るポリマー層形成用分散物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法>
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第1の金属パターン材料の作製方法は、(e)本発明の表面金属膜材料(本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料)のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする。
つまり、金属パターン材料の作製方法は、前述の表面金属膜材料の作製方法における(a)、(b)、(c)、及び(d)工程を行った後、形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程〔(e)工程〕を行うものである。
また、本発明の第2の金属パターン材料の作製方法は、(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b’)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、パターン状の熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
つまり、本発明の第2の金属パターン材料の作製方法は、本発明の表面金属膜材料の作製方法の(b)工程を、(b’)工程に置き換える方法である。
本発明の表面金属膜材料の作製方法において、シアノ基を有するポリマーからなる粒子(以下、単に「ポリマー粒子」と称する場合がある。)が融着した領域は、シアノ基の存在により、めっき触媒又はその前駆体との相互作用性に優れると共に、高温高湿下であっても吸水性が低く、また、疎水性が高い領域となる。また、ポリマー粒子が融着する際に基板表面にも密着することになるため、ポリマー粒子が融着した領域は、基板に対して良好な密着性を有することになる。これに加え、この領域は、上記のようにめっき触媒等との相互作用性に優れることから、この領域にめっき触媒等を付与した後、めっきを行うことで、該領域との密着性に優れた金属膜を得ることができる。また、ポリマー粒子を構成するポリマーが重合性基などの反応性基を有していると、熱融着層と基板とが化学結合することが可能となり、金属膜と基板との間により高い密着性が発現する。
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法においては、疎水性材料であるシアノ基を有するポリマーを粒子とし、水分散物とすることで、有機溶剤の使用量を低減させることができる。
これらの点から、得られた表面金属膜材料は、基板との密着性に優れた金属膜を有し、更に、ポリマー層が湿度変化に応じて変化することがないため、湿度変化による密着力の変動が少ないものとなる。このような表面金属膜材料は、後述の金属パターン材料の作製方法等に適用されて、電気配線用材料として用いられる他にも、電磁波防止膜、シールド材料等に用いることができる。
また、金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、金属パターンの非形成領域では熱融着層が露出した状態となるが、この露出した部分は吸水することがなく、これに起因する絶縁性の低下が起こらない。その結果、本発明の金属パターン材料の作製方法において形成された金属パターン材料は、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れたものとなる。
まず、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a)〜(d)の各工程について説明する。
〔(a)工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a)工程では、基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子(ポリマー粒子)を含有する水分散物を塗布し、乾燥する。
この工程により、基板上にはポリマー粒子の集合体が積層した状態が形成される。
(ポリマー粒子)
まず、本工程で用いられるシアノ基を有するポリマーからなる粒子(ポリマー粒子)について説明する。
シアノ基は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する機能はあっても、解離性の極性基(親水性基)のように高い吸水性、親水性を有するものではない。このため、シアノ基を有し、且つ、解離性の極性基(親水性基)が少ない、又は、有しないポリマーからなる粒子を熱融着してなる熱融着層は、吸水性が低く、疎水性の層となる。
この点から、本発明においては、シアノ基を有するポリマーとして、(a)及び(b)工程を経て形成された熱融着層が、吸水性が低く、且つ、疎水性が高くなるようなポリマーを用いることが好ましい。
一般に、官能基は高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基は熱融着層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、膜が緻密になり、且つ、熱融着層全体としての極性が下がるため、吸水性が低くなる。このため、シアノ基を有するポリマーにおいて、シアノ基はポリマー主鎖から3原子以上離れて結合していることが好ましい。
なお、本発明における熱融着層は、後述する(c)工程において、熱融着層の良溶剤にてめっき触媒等を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒等と相互作用できるようになる。
本発明におけるシアノ基を有するポリマーは、シアノ基を有するポリマーは、ポリマーの主鎖、側鎖のいずれか又は両方にシアノ基が導入されていればよく、めっき触媒等への相互作用形成性の観点からは、側鎖にシアノ基が導入されていることが好ましい。シアノ基を側鎖に有するポリマーとしては、シアノ基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーが挙げられる。
シアノ基を有するモノマーとしては、特に制限されないが、
以下、シアノ基を有するモノマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。また、これらのモノマーは、シアノ基を有するポリマーを合成する際、1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
Figure 2009280904
上記のモノマーの中でも、めっき触媒等への相互作用形成性の観点から、主鎖がフレキシブルなポリマーを形成しうる、シアノ基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
シアノ基を有するポリマーにおいて、シアノを有するモノマーに由来するユニットは、めっき触媒又はその前駆体との相互作用形成性の観点から、シアノを有するポリマー中に、50モル%〜95モル%の範囲で含有されることが好ましく、40モル%〜80モル%の範囲で含有されることがより好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーは、シアノ基の他に、反応性基を有することが好ましい態様である。シアノ基を有するポリマーが反応性基を有する場合、熱融着の際、ポリマー粒子同士、及び/又は、ポリマー粒子と基板とを反応させて、結合することができる。
シアノ基を有するポリマーに導入しうる反応性基が重合性基の場合は、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキセタン基、エポキシ基が挙げられ、縮合・付加反応を引き起こす官能基の場合は、イソシアネート基、活性水素を含む官能基、アゾ化合物における活性基などが挙げられる。本発明においては、反応性基が重合性基であり、更に好ましくはラジカル重合性基であることが、基板との反応、及び、ポリマー膜自体も硬膜化できる観点で好ましい。
このような重合性基は、ポリマーの主鎖末端及び/又は側鎖に導入することが好ましく、上記のような反応の容易性の観点からは、側鎖に導入することが好ましい。
本発明においては、シアノ基を有するモノマーと、反応性基を有するモノマーと、を共重合させることで得られたポリマーが、シアノ基を有するポリマーの好ましい1態様である。
シアノ基を有するポリマーに反応性基(重合性基)が導入されている場合、反応性基を有するモノマーに由来するユニットは、1モル%〜50モル%の範囲で含有されることが好ましく、5モル%〜30モル%の範囲で含有されることがより好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーを得る際には、吸水性を低下させるため、疎水性を向上させるため、また、水分散性を向上するため、シアノ基や重合性基を有するモノマー以外に他のモノマーを用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な重合性モノマーを用いてよく、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、更には、日本油脂株式会社製の市販品(ブレンマーPE−200・PE−350・PP−500・PP−800・PP−1000・70PEP−350B・55PET800)などが好ましく使用できる。
また、シアノ基を有するポリマーを得る際に用いる他のモノマーとしては、ポリマー粒子のTgを制御するために、以下に示すようなユニットを形成しうるモノマーを用いることもできる。
Figure 2009280904
なお、これらの他のモノマーに由来するユニットは、シアノ基を有するポリマー中に5モル%〜60モル%の範囲で含有されることが好ましく、10モル%〜50モル%の範囲で含有されることがより好ましい。
以下、シアノ基を有するポリマーとして好ましい態様である、シアノ基及び重合性基を有するポリマーについて説明する。
本発明において、シアノ基及び重合性基を有するポリマーとしては、シアノ基としてシアノ基を有するポリマー(以下、「シアノ基含有重合性ポリマー」と称する。)が好ましい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
Figure 2009280904
上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2009280904
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(3)で表されるユニットであることが好ましい。
Figure 2009280904
上記式(3)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(3)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
式(3)におけるZは、前記式(1)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3)におけるLも、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3)で表されるユニットが、下記式(4)で表されるユニットであることが好ましい。
Figure 2009280904
式(4)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(4)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
式(4)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
前記式(3)及び式(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3)及び式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(2)で表されるユニットが、下記式(5)で表されるユニットであることが好ましい。
Figure 2009280904
上記式(5)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、酸素原子、又はNR’(R’は、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(5)におけるRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
また、式(5)におけるLは、前記式(2)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(5)においては、L中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5)におけるL中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、前記式(1)〜式(5)で表されるユニットを含んで構成されるものであり、重合性基とシアノ基とを側鎖に有するポリマーである。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーを合成する際の重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合と、でその合成方法が異なる。
1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合は、1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様と、1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様と、がある。
2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合は、2−1)両者がカチオン重合の態様と、2−2)両者がラジカル重合である態様と、がある。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、2−2)の態様で合成されることが最も好ましい。以下、この2−2)の態様について、具体的に説明する。
2−2)両者がラジカル重合である態様
両者がラジカル重合である態様では、合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
Figure 2009280904
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2009280904
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機原子団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2009280904
Figure 2009280904
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
Figure 2009280904
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
前記iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、上記1−2)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
水酸基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2−ヒドロキシエチル)−(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
前記iii)の合成方法において、シアノ基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
Figure 2009280904
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーにおいて、前記式(1)、式(3)、又は式(4)におけるLがウレタン結合を有する二価の有機基である構造の場合には、下記の合成方法(以下、合成方法Aと称する。)で合成することが好ましい。
即ち、本発明における合成方法Aは、少なくとも溶媒中で、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL中のウレタン結合を形成することを特徴とする。
ここで、合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーとしては、上記1−2)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと、以下に示す挙げるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、の共重合体が好ましい。 ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH (R=H又はMe、n=1〜5)
なお、合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
また、合成方法Aに用いられるイソシアネート基と重合性基とを有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI、昭和電工(株)製)、2−メタクリルオキシイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
また、合成方法Aに用いられる溶媒としては、SP値(沖津法により算出)が20〜23MPa1/2であるものが好ましく、具体的には、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、1,2,3−トリアセトキシ−プロパン、シクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセチルアセトン、アセトフェノン、トリアセチン、1,4−ジオキサン、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、高分子量体を合成する観点から、エステル系溶媒であることがより好ましく、特に、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等のジアセテート系溶媒や、ジメチルカーボネートが更に好ましい。
ここで、本発明における溶媒のSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
以上のようにして合成された本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基含有ユニット、シアノ基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合成分全体に対し5〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95mol%である。
なお、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、シアノ基含有ユニット、重合性基含有ユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。この他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。
他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、具体的には、アクリル樹脂骨格、スチレン樹脂骨格、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)骨格、メラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ポリエステル樹脂骨格、ポリウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリオレフィン骨格、ポリシクロオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル骨格、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの重合体)骨格、ポリアミド骨格、ポリアセタール骨格、ポリカーボネート骨格、ポリフェニレンエーテル骨格、ポリフェニレンスルファイド骨格、ポリスルホン骨格、ポリエーテールスルホン骨格、ポリアリレート骨格、ポリエーテルエーテルケトン骨格、ポリアミドイミド骨格などの主鎖骨格を形成しうるモノマーが挙げられる。
また、これらの主鎖骨格は、シアノ基含有ユニットや、重合性基含有ユニットの主鎖骨格であってもよい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
ここに記載されている分子量及び重合度の好ましい範囲は、本発明において用いられるシアノ基含有重合性ポリマー以外のシアノ基を有するポリマーに関しても好適な範囲である。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
Figure 2009280904
Figure 2009280904
Figure 2009280904
Figure 2009280904
本発明におけるシアノ基を有するポリマーは、水分散物とした際の分散安定性や、塗布膜の現像性を加味すると室温以上のTgを有することが好ましい。一方、ポリマーのTgが80℃以上になると熱融着性が低下することから、Tgは室温〜80℃が好ましい。
(水分散物の調製)
本工程で用いるシアノ基を有するポリマーからなる粒子(ポリマー粒子)と水とを含有する水分散物(本発明のポリマー層形成用分散物)は、以下のようにして調製することができる。
前述のようなシアノ基を有するポリマーを非水系の有機溶剤に溶解し、これを界面活性剤が入った水溶液と混合乳化する方法が挙げられる。また、シアノ基を有するポリマーの種類によっては、乳化重合や分散重合も用いることができる。
なお、水分散とは、水溶媒中に水に不溶なポリマーが均一に浮遊している状態を指す。
本発明における水分散物中のポリマー粒子の平均粒径は、0.01μm〜20μmが好ましく、更に好ましくは0.05μm〜10μmである。ポリマー粒子の粒径がこの範囲内であることで、経時安定性が得られ、また、パターン状の熱融着層を形成する際に良好な解像度が得られる。
また、本発明における水分散物中のポリマー粒子の含有量は、塗布膜厚を制御する点から、5質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
−重合開始剤−
本発明における水分散物は、ポリマー粒子の熱融着後に得られる熱融着層の硬膜性を上げるために、重合開始剤を含有していてもよい。
この重合開始剤の種類やその添加量(添加の有無も含む)は、(b)工程で行われる後露光の手段に応じて決定されればよい。特に、(b)工程で形成される熱融着層が所望の硬膜性(例えば、後述する硬化度)を達成しうるように、(b)工程で行われる後露光の手段に応じて、重合開始剤の種類やその添加量(添加の有無も含む)を決定することが好ましい。
使用される重合開始剤としては、光重合開始剤であっても熱重合開始剤であってもよいが、熱溶融時の硬膜を抑制しないという観点から、光重合開始剤が好ましい。また、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができるが、扱い易さ、反応性の観点からは、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、更に、ラジカル重合開始剤が好ましい。更に、水分散物に導入するため、重合開始剤としては水溶性のものが好ましい。なお、難水溶性の重合開始剤であっても、界面活性剤などを併用することで液中に分散することもできる。
本発明で使用される光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
また、熱重合開始剤としては、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。
本発明において好ましい形態である水溶性の光重合開始剤としては、アセトフェノン類;ケトン類;ベンゾインエーテル類;ベンジルケタール類;スルホニウム塩類;ヨードニウム塩類などの光重合開始剤に、親水基(カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、アンモニウム塩構造、アミノ基、リン酸基、エチレンオキシド基)が導入されている化合物を使用することができる。具体的には、3−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアミノプロポキシ)−4,5−ジメチル−チオキサントンヒドロクロリド、3−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアミノプロポキシ)−4,5−ジメチル−チオキサントンヒドロブロミド、3−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアミノプロポキシ)−4,5−ジメチル−チオキサントンヒドロサルフェート、3−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアミノプロポキシ)−4,5−ジメチル−チオキサントンヒドロナイトレート、(2−アクリロイルオキシ)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−ヒドロキシエトキシ)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−カルボキシメトキシ)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−カルボキシメトキシ)フェニルプロパン−1−オンのナトリウム塩、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−カルボキシメトキシ)フェニルプロパン−1−オンのアンモニウム塩、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)―フェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパン−1−オンやそのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
これら光重合開始剤は単独であるいは2種以上を併用して用いられてもよい。また、これらの光重合開始剤に、促進剤として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン等を併用してもよい。
本発明における水分散物中の重合開始剤の含有量は、水分散物中、固形分で0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲が特に好ましい。
−光熱変換剤−
本発明における水分散物は、ポリマー粒子の熱融着をし易くするために、光熱変換剤を含有していてもよい。
本発明においては、特開2002−154279の〔0043〕〜〔0058〕に記載の光熱変換剤を用いることができる。
特に、(b)工程においてエネルギー付与に赤外線レーザーを用いる場合は、光を吸収し発熱する光熱変換剤を用いることが好ましい。光熱変換剤として用いることのできる物質としては、光を吸収して熱に変換して放出するものであれば特に制限はなく、従来から公知のものであれば使用できる。紫外から近赤外にわたる波長領域において光の波長を有効に吸収し効率よく熱エネルギーに変換できる色素が好ましく用いられる。本発明の特に好ましい態様では半導体レーザー光照射により発熱させるため600nmから2000nmに吸収極大を示し、可視域での吸収がない若しくは小さい近赤外吸収剤や、吸収極大はなくても上記領域で吸収した光を熱に変換し得る金属微粒子、金属化合物微粒子或いは炭素微粒子が好ましい。
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている赤外吸収性の顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
これら顔料は、表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、親水性樹脂や親油性樹脂を表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤やエポキシ化合物、イソシアナート化合物等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。これらの顔料中、赤外線を吸収するものが、赤外線を発光するレーザーでの利用に適する点で好ましい。かかる赤外線を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好ましく、水溶性或いは親水性の樹脂と分散しやすく、かつ親水性を損わないように親水性樹脂やシリカゾルで表面がコートされたカーボンブラックが特に好ましい。顔料の粒径は0.01μm〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.01μm〜0.5μmの範囲にあることが更に好ましい。
染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年刊)CMC)或いは特許に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料、シアニン染料などの赤外線吸収染料が好ましい。
更に、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム染料、英国特許434,875号記載のシアニン染料や米国特許第4,756,993号記載の染料、米国特許第4,973,572号記載のシアニン染料、特開平10−268512号記載の染料、特開平11−235883号記載のフタロシアニン化合物を挙げることができる。
また、染料として米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン染料、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、エポリン社製エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125等も好ましく用いられる。
−界面活性剤−
本発明における水分散物には、必要に応じて、界面活性剤を含有させることができる。用いられる界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
−その他の成分−
その他、本発明における水分散物には、本発明の効果を損なわない範囲において、親水性のバインダーポリマーや、分散剤等を添加してもよい。
〔基板〕
次に、本発明において用いる基板について説明する。
本発明における基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述のポリマー粒子と化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、該基材上に別途中間層(例えば、後述する重合開始層)を設け、該中間層がこのような特性を有するものであってもよい。
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、ポリマー粒子と化学結合しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252-1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(a)、(b)工程を施すことで、樹脂フィルムの両面に熱融着層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(c)工程、及び(d)工程を行うことで、基板の両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
本発明において、基板表面とポリマー粒子(熱融着層)とを化学結合させるためには、表面にポリマー粒子と反応する反応性基が存在する基板を用いることが好ましく、更に好ましくは、基材上に、重合開始剤を含有する、又は重合開始可能な官能基を有する重合開始層を形成した基板を用いることが好ましい。この基板を用いることで、活性点を効率よく発生させ、効率よくポリマー粒子(熱融着層)と基板との結合させることができる。
以下、本発明における重合開始層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
(重合開始層)
本発明における重合開始層としては、高分子化合物と重合開始剤とを含む層や、重合性化合物と重合開始剤とを含む層、重合開始可能な官能基を有する層が挙げられる。
本発明における重合開始層は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基材表面に設け、加熱又は光照射により硬膜することで、形成することができる。
本発明における重合開始層に用いられる化合物としては、基材との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により、活性種を発生するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、多官能モノマーや分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーと、重合開始剤とを混合したものが用いることができる。
このような分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
これらの重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で10〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
重合開始層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有する。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを、目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、熱重合を利用することがポリマー粒子の熱融着と、基板(重合開始層)とポリマー粒子との反応を同時に行うことができるため好適である。このため、重合開始層には、熱重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、これを含む重合開始層から活性種を発生しうるものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができるが、扱い易さ、反応性の観点からは、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、更に、ラジカル重合開始剤が好ましい。
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
また、熱重合開始剤としては、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合開始層中、固形分で0.1質量%〜70質量%の範囲が好ましく、1質量%〜40質量%の範囲が特に好ましい。
上記重合性化合物及び重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合開始層を基材上に形成する場合の塗布量は、十分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1〜20g/mが好ましく、0.1〜15g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが更に好ましい。
本発明においては、上記のように、基材上に上記の重合開始層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合開始層を形成するが、この時、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、重合開始層上に熱融着層が形成された後に重合開始層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
加熱乾燥後に所望により行われる光照射には、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等が用いられる。また、放射線として、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
なお、重合開始層中に存在する重合開始剤が、重合性化合物を硬化する際にラジカル重合しても、完全に消費しない程度に光照射することが好ましい。光照射時間については、光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が80%以下となり、且つ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
また、上記の重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合開始層以外に、特開2004−161995公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーを用いた重合開始層も好ましい。このポリマーは、具体的には、側鎖に重合開始能を有する官能基(重合開始基)及び架橋性基を有するポリマー(以下、重合開始ポリマーと称する。)であり、このポリマーにより、ポリマー鎖に結合した重合開始基を有し、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態の重合開始層を形成することができる。
このようにして形成される重合開始層も、本願の重合開始層として好適である。
ここで用いられる重合開始ポリマーは、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載にものが挙げられる。重合開始ポリマーの特に好ましいものの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2009280904
Figure 2009280904
−重合開始層の成膜−
本発明における重合開始ポリマーを用いてなる重合開始層は、上述の重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基材上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより成膜する。つまり、この架橋反応が進行することにより、重合開始ポリマーが固定化される。この架橋反応による固定化には、重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
また、架橋剤を併用する方法に用いられる架橋剤としては、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知のものを用いることができる。
重合開始ポリマー中の架橋性基と架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(架橋性基,架橋剤)=(−COOH,多価アミン)、(−COOH,多価アジリジン)、(−COOH,多価イソシアネート)、(−COOH,多価エポキシ)、(−NH,多価イソシアネート)、(−NH,アルデヒド類)、(−NCO,多価アミン)、(−NCO,多価イソシアネート)、(−NCO,多価アルコール)、(−NCO,多価エポキシ)、(−OH,多価アルコール)、(−OH,多価ハロゲン化化合物)、(−OH,多価アミン)、(−OH,酸無水物)が挙げられる。中でも、架橋の後にウレタン結合が生成し、高い強度の架橋が形成可能であるという点で、(官能基,架橋剤)=(−OH,多価イソシアネート)が、更に好ましい組み合わせである。
本発明における架橋剤の具体例としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
Figure 2009280904
このような架橋剤は、重合開始層の成膜の際、上述の重合開始ポリマーを含有する塗布液に添加される。その後、塗膜の加熱乾燥時の熱により、架橋反応が進行し、強固な架橋構造を形成することができる。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応により架橋反応が進行し、架橋構造が形成される。これらの反応における温度条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、更に好ましくは80℃以上200℃以下である。
Figure 2009280904
また、塗布液中の架橋剤の添加量としては、重合開始ポリマー中に導入されている架橋性基の量により変化するが、架橋度合や、未反応の架橋成分の残留による重合反応への影響の観点から、通常、架橋性基のモル数に対して0.01〜50当量であることが好ましく、0.01〜10当量であることがより好ましく、0.5〜3当量であることが更に好ましい。
また、重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合開始ポリマーを用いてなる重合開始層の塗布量は、活性種の発生能や、膜性の観点から、乾燥後の質量で、0.1〜20g/mが好ましく、更に、1〜15g/mが好ましい。
更に、本発明において、前述のような、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いる場合、この絶縁性樹脂からなる層中に、公知の重合開始剤を含有させて、絶縁性の重合開始層とすることが好ましい。この絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、前述の、熱重合開始剤、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤)や、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物、更には、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(重合開始ポリマー)などを用いることができる。
絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤の量は、一般的には、絶縁層中に固形分で0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
(水分散物の塗布、及び乾燥)
本工程において、前述のようにして調製された水分散物は、基板上に塗布され、その後、乾燥させる。
水分散物の塗布には、バーコート、スピンコート、コーターコート、ディップコート 等の公知の塗布方法が用いられる。
塗布量としては、0.1μm〜5μm、更に好ましくは0.5μm〜2μmが好ましい。
また、塗布後の乾燥温度としては、50℃〜150℃が好ましく、更に好ましくは70℃〜100℃である。感想時間は1分〜1時間が好ましく、更に好ましくは1分〜10分である。
〔(b)工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(b)工程では、基板上に存在する粒子をエネルギー付与により熱融着させて、熱融着層を形成する。
本工程にて粒子を熱融着させる際には、加熱や露光などのエネルギー付与を行えばよく、具体的には、以下に示す方法などが用いられる。
エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。加熱温度としては、100℃〜300℃が好ましく、更に好ましくは100℃〜250℃である。加熱時間は1分〜1時間が好ましく、更に好ましくは1分〜10分である。
エネルギー付与としては、露光を用いる場合には、面露光方式、走査方式のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線灯などによる露光や、キセノン放電灯の高照度の短時間露光を行って、熱を発生させる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化するが、通常は、面露光強度が0.1J/cm〜10J/cmの範囲であることが好ましく、0.1J/cm〜1J/cmの範囲であることがより好ましい。基板が透明である場合は、基板の裏側から基板を通して露光することもできる。
露光時間は、0.01msec〜1msec、好ましくは0.01msec〜0.1msecの照射で上記の露光強度が得られるように露光照度を選択するのが好ましい。照射時間が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した熱エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加させる必要が生じる。
後者の場合には、赤外線成分を多く含むレーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調して基板上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げることができる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場合の露光量は、面露光強度が0.1〜10J/cmの範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cmの範囲であることがより好ましい。また、波長としては600nm〜2000nmが好ましい。基板が透明である場合は、基板の裏側から基板を通して露光することもできる。
−後露光−
上述のようにエネルギー付与が行われた後、熱融着層の硬化度を更に上げるために、後露光を行うことができる。
この後露光には、高圧水銀灯等の254nm付近の短波光や、超高圧水銀灯等の300nm以上の光を用いることができる。
−硬化度−
上記のようにして形成された熱融着層は、以下のような硬化度を有することが好ましい。
熱融着層の硬化度に関しては重合性基の消費率で10%〜80%が好ましく、更に好ましくは30%〜70%である。
ここで、この重合性基の消費率は、ATR−IRを用いて、後露光前後でのオレフィン由来のピーク面積比を測定することで求めることができる。
この硬化度を実現するには、本工程にて、後露光に、超高圧水銀灯等の300nm以上の光を使用した場合には、本発明における水分散物に前述の重合開始剤を添加することが好ましい。また、本工程における後露光に、高圧水銀灯等の254nm付近の短波光を使用する場合には、前述の重合開始剤を添加しなくとも、上記の硬化度を実現するができる。
〔水洗工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法においては、(b)工程後、(c)工程前に、基板を水洗する工程を有することが好ましい。
この水洗工程を経ることで、(b)工程後において、基板上に残存している未融着のポリマー粒子や不純物等を除去することができる。
なお、(b)工程にてパターン状の熱融着層を形成した場合には、未融着のポリマー粒子が多く存在することになるため、本工程が有用である。
〔(c)工程〕
(c)工程では、(b)工程において形成された熱融着層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。本工程においては、熱融着層を構成するポリマー中のシアノ基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(d)めっき工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(d)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、熱融着層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて熱融着層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を熱融着層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を熱融着層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に熱融着層が形成された基板を浸漬すればよい。
また、(a)工程において、ポリマー粒子を含有する水分散物を基板に塗布するが、この水分散物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加しておいてもよい。ポリマー粒子と、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する水分散物を、基板上に塗布し、乾燥させた後、(b)工程に供することで、シアノ基を有するポリマーと、めっき触媒又はその前駆体と、を含有する熱融着層を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(c)工程を省略することができる。
なお、本発明の表面金属膜材料の作製方法において、基板の両面に対して熱融着層が形成されている場合には、その両面の熱融着層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、熱融着層中のシアノ基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
(その他の触媒)
本発明において、後述の(c)工程において、熱融着層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、特に、シアノ基に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
以上説明した(c)工程を経ることで、熱融着層中のシアノ基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
〔(d)工程〕
(d)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された熱融着層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(c)工程において、熱融着層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された熱融着層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、熱融着層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が熱融着層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
このめっき浴に用いられる溶剤には、吸水性が低く、疎水性の高い熱融着層(前記1〜4の条件を全て満たす熱融着層)に対して、親和性の高い有機溶剤を含有させることが好ましい。有機溶剤の種類の選択や、含有量は、熱融着層の物性に応じて調製すればよい。特に、熱融着層の条件1における飽和吸水率が大きければ大きいほど、有機溶剤の含有率を小さくすることが好ましい。具体的には、以下の通りである。
即ち、条件1における飽和吸水率が0.01〜0.5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は20〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が0.5〜5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は10〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が5〜10質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜60%であることが好ましく、同飽和吸水率が10〜20質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜45%であることが好ましい。
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、熱融着層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更に熱融着層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
(電気めっき)
本工程おいては、(c)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された熱融着層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、及び/又は、無電解めっきにより、熱融着層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜と熱融着層との密着性を更に向上させることができる。
熱融着層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、熱融着層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、熱融着層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
<表面金属膜材料>
本発明の表面金属膜材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の表面金属膜材料を得ることができる。
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料は、高温高湿下であっても、金属膜の密着力の変動が少ないといった効果を有する。この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
本発明の第1の金属パターン材料の作製方法は、(a)〜(d)の工程を経て得られた本発明の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有する。
この(e)エッチング工程について以下に説明する。
〔(e)工程〕
(e)工程では、上記(d)工程で形成されためっき膜(金属膜)をパターン状にエッチングする。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前記記載の手法が使用できる。
以上の(a)〜(e)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料が作製される。
本発明の第2の金属パターン材料の作製方法は、(a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、(b’)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、パターン状の熱融着層を形成する工程と、(c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
このように、(b’)工程において、パターン状に熱融着層を形成すれば、そのパターン状の熱融着層に対し、(c)、及び(d)工程を行うことで、金属パターン材料を作製するこがもできる(フルアディティブ工法)。
上記(b’)工程にてパターン状の熱融着層を形成するためには、基板上に存在するポリマー粒子に対するエネルギー付与をパターン状に行えばよい。エネルギー付与をパターン状に行うことで、露光領域に存在するポリマー粒子のみを熱融着させることができる。その結果、パターン状の熱融着層が形成される。
パターン状にエネルギーを付与する方法としては、パターン露光が好適である。
パターン形成した熱融着層上にめっき膜を形成するための(c)、及び(d)工程は、前述の方法と同じである。
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料は、前述の本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
得られた金属パターン材料を構成する熱融着層は、前述のように、吸水性が低く、疎水性が高いため、この熱融着層の露出部(金属パターンの非形成領域)は、絶縁信頼性に優れる。
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面又は局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、又は、金属膜自体の端部を直接剥ぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
〔実施例1〕
[水分散物1の調製]
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート10g、アセトニトリル3.3gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。そこへ、2−シアノエチルアクリレート40.0g、及びV−65(和光純薬製)0.64gのジメチルカーボネート10g/アセトニトリル3.3gの溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。反応液を冷却した後に、ジメチルカーボネートを用いて30質量%に希釈し、ポリマー溶液を得た。
油相成分として、ポリマー溶液25gに、バイオニンA−41C(竹本油脂社製)0.4gを溶解させた後、水相成分のPVA205(クラレ社製)の4%水溶液36.0gに混合し、ホモジナイザーを用い、10000rpmで10分間乳化分散させた。その後、水を24g追加し、60℃で90分間、減圧撹拌しながら、ジメチルカーボネートを蒸発させ水分散物1を得た。
水分散物1中のポリマー粒子の粒径を、SEMで測定したところ、平均粒径は0.3μmであった。
また、ポリマー粒子のTgを、TG−DTAで測定したところ、−5℃であった。
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材を得た。
ついで、基材の上に下記の光重合性組成物をロッドバー18番で塗布し、80℃で2分間乾燥させた。次にこの塗布された基材を、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用して、10分間露光し、予備硬化させて、基材上へ重合開始層を形成した。
〔光重合性組成物〕
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤) 1.6g
・AIBN(熱重合開始剤) 1.5g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
上記のような重合開始層が形成された後、180℃で30分間硬化処理を実施した。これにより、基板A1を得た。この基板A1の表面凹凸(Rz)は0.2μmであった。
[熱融着層の形成]
(塗布、乾燥)
前述の方法で得られた水分散物1をバーコーターにて、乾燥膜質量が1.0g/mになるように塗布し、30℃で風乾燥した。
(加熱)
その後、ポリマー粒子が存在する基板を、150℃で1時間加熱することで、ポリマー粒子を熱融着させた。これにより、基板表面全体に熱融着層を形成した。
(水洗)
その後、攪拌した状態の水中に熱融着層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、熱融着層を有する基板A2を得た。
[めっき触媒の付与]
ポリマー層を有する基板A2を、硝酸パラジウムを1質量%含むアセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、60℃で5分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2’ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・37%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
以上の組成のめっき浴のpHを、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.5(60℃)に調整した。
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、引張試験機((株)エー・アンド・デー製、RTM−100)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.4kN/mであった。
[金属パターンの形成、及び絶縁信頼性試験]
実施例1で得られためっき膜表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にエッチングレジストを形成し、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=200μm/200μmの線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。この櫛形配線を、ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25)にて、125℃−85%相対湿度(未飽和)、印加電圧10V、2気圧下で100時間放置させた所、配線間の絶縁不良は見られなかった。
〔実施例2〕
[水分散物2の調製]
300mLの3つ口フラスコにジメチルカーボネートを15mL入れ、65℃に昇温し、その中に、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.72g、2−シアノエチルアクリレート16.01g、V−65:0.40g、及びジメチルカーボネート15mLの混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に65℃で5時間反応させた。反応終了後、アセトニトリルを7mLたした。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.15g、U−600(日東化成製)0.20g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)6.2g、ジメチルカーボネート6.2gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を0.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応液を冷却した後に、ジメチルカーボネートを用いて30質量%に希釈し、ポリマー溶液を得た。
油相成分として、ポリマー溶液25gにバイオニンA−41C(竹本油脂社製)0.4gを溶解させた後、水相成分のPVA205(クラレ社製)の4%水溶液36.0gに混合し、ホモジナイザーを用いて10000rpmで10分間乳化分散させた。その後、水を24g追加し、60℃で90分間、減圧撹拌しながら、ジメチルカーボネートを蒸発させ、水分散物2を得た。
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
[熱融着層の形成]
(塗布、乾燥、及び加熱)
前述の方法で得られた水分散物2を、実施例1と同じ条件で、基板A1上に塗布し、その後、乾燥、加熱して、熱融着層を有する基板A3を得た。
続いて、このポリマー層を有する基板A3に対して、実施例1と同様の方法で、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行った。
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、実施例1と同様の手法で密着性を評価したところ、90°ピール強度は0.50kN/mであった。
〔実施例3〕
[水分散物3の調製]
300mLの3つ口フラスコにジメチルカーボネートを23mL入れ、70℃に昇温し、その中に、4−(4’―シアノフェニル)フェニルアクリレート19.94g、2−シアノエチルアクリレート10.01g、V−65:0.32g、及びジメチルカーボネート23mLの混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に70℃で3時間反応させた。反応液を冷却した後に、ジメチルカーボネートを用いて30質量%に希釈し、ポリマー溶液を得た。
油相成分として、ポリマー溶液25gにバイオニンA−41C(竹本油脂社製)0.4gを溶解させた後、水相成分のPVA205(クラレ社製)の4%水溶液36.0gに混合し、ホモジナイザーで10000rpmで10分間乳化分散させた。その後、水を24g追加し、60℃で90分間、減圧撹拌しながら、ジメチルカーボネートを蒸発させ、水分散物3を得た。
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
[熱融着層の形成]
(塗布、乾燥)
前述の方法で得られた水分散物2を、実施例1と同じ条件で、基板A1上に塗布し、その後、乾燥した。
(加熱)
その後、ポリマー粒子が存在する基板を、200℃で1時間加熱することで、ポリマー粒子を熱融着させた。これにより、基板表面全体に熱融着層を形成した。
(水洗)
その後、攪拌した状態の水中に熱融着層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、熱融着層を有する基板A4を得た。
続いて、この熱融着層を有する基板A4に対して、実施例1と同様の方法で、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行った。
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、実施例1と同様の手法で密着性を評価したところ、90°ピール強度は0.35kN/mであった。
〔実施例4〕
[水分散物4の調製]
実施例2で用いた水分散物2に、下記構造の赤外線吸収色素(光熱変換剤)をポリマー粒子に対して5質量%の割合で添加し、水分散物4を調製した。
Figure 2009280904
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
[熱融着層の形成]
(塗布、乾燥)
前述の方法で得られた水分散物4を、実施例1と同じ条件で、基板A1上に塗布し、その後、乾燥した。
(パターン露光)
その後、ポリマー粒子が存在する基板に対し、40W赤外線半導体レーザー(クレオ社製)にて、3000mJ/cmにてパターン露光を行った。
(水洗)
その後、攪拌した状態の水中に熱融着層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、パターン状の熱融着層を有する基板A5を得た。
続いて、この熱融着層を有する基板A5に対して、実施例1と同様の方法で、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行った。
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、実施例1と同様の手法で密着性を評価したところ、90°ピール強度は0.55kN/mであった。
〔実施例5〕
[水分散物4の調製]
実施例2調製した水分散物に、該水分散物の1質量%になるように、3−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアミノプロポキシ)−4,5−ジメチル−チオキサントンヒドロクロリド(アルドリッチ製)を添加し水分散物4を得た。
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
[熱融着層の形成]
(塗布、乾燥、及び加熱)
前述の方法で得られた水分散物4を、実施例1と同じ条件で、基板A1上に塗布し、その後、乾燥、加熱して、熱融着層を有する基板を得た。続いて、1.5kWの高圧水銀灯(USIO製 UVX−02516SILP01)を用いて、180秒間露光し、基板A6を得た。
続いて、この熱融着層を有する基板A6に対して、実施例1と同様の方法で、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行った。
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、実施例1と同様の手法で密着性を評価したところ、90°ピール強度は0.55kN/mであった。

Claims (11)

  1. (a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、
    (b)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、熱融着層を形成する工程と、
    (c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
    (d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
    を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法。
  2. 前記(b)工程後、前記(c)工程前に、前記基板を水洗する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面金属膜材料の作製方法。
  3. 前記(a)工程に用いられるシアノ基を有するポリマーが、シアノ基が置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独、若しくは、共重合してなるポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面金属膜材料の作製方法。
  4. 前記(a)工程に用いられるシアノ基を有するポリマーが、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法。
    Figure 2009280904

    (上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
  5. 前記(d)工程では、無電解めっきが行われることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法。
  6. 前記無電解めっきの後に、更に電気めっきが行われることを特徴とする請求項5に記載の表面金属膜材料の作製方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料。
  8. (5)請求項7に記載の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法。
  9. (a)基板上に、シアノ基を有するポリマーからなる粒子を含有する水分散物を塗布し、乾燥する工程と、
    (b’)前記基板上に存在する該粒子をエネルギー付与により熱融着させて、パターン状の熱融着層を形成する工程と、
    (c)該熱融着層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
    (d)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
    を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。
  11. シアノ基を有するポリマーからなる粒子、及び水を含有し、めっき触媒又はその前駆体を受容するポリマー層の形成に用いられるポリマー層形成用分散物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012029869A1 (ja) * 2010-08-31 2012-03-08 富士フイルム株式会社 導電膜形成方法
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