JP4674780B2 - タンデム型薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタンデム型薄膜太陽電池の製造方法に関し、特に、その太陽電池の性能を低下させることなく製造工程の融通性を高めかつ生産効率を改善し得る製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年では薄膜太陽電池も多様化し、従来の非晶質薄膜太陽電池の他に結晶質薄膜太陽電池も開発され、これらを積層したタンデム型(ハイブリッド)薄膜太陽電池も実用化されつつある。
【0003】
半導体薄膜太陽電池は、一般に、少なくとも表面が絶縁性の基板上に順に積層された第1電極、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および第2電極を含んでいる。そして、1つの光電変換ユニットはp型層とn型層でサンドイッチされたi型層を含んでいる。
【0004】
光電変換ユニットの厚さの大部分を占めるi型層は実質的に真性の半導体層であって、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。したがって、i型光電変換層は光吸収のためには厚い方が好ましいが、必要以上に厚くすればその堆積のためのコストと時間が増大することになる。
【0005】
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜太陽電池の重要な特性の1つである開放端電圧の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換に直接寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与しない損失となる。したがって、p型とn型の導電型層は、十分な拡散電位を生じさせ得る範囲内で、できるだけ小さな厚さを有することが好ましい。
【0006】
このようなことから、光電変換ユニットまたは薄膜太陽電池は、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かにかかわらず、その主要部を占めるi型の光電変換層が非晶質のものは非晶質ユニットまたは非晶質薄膜太陽電池と称され、i型層が結晶質のものは結晶質ユニットまたは結晶質薄膜太陽電池と称される。
【0007】
ところで、薄膜太陽電池の変換効率を向上させる方法として、2以上の光電変換ユニットを積層してタンデム型にする方法がある。この方法においては、薄膜太陽電池の光入射側に大きなバンドギャップを有する光電変換層を含む前方ユニットを配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する(たとえばSi−Ge合金などの)光電変換層を含む後方ユニットを配置することにより、入射光の広い波長範囲にわたって光電変換を可能にし、これによって太陽電池全体としての変換効率の向上が図られる。このようなタンデム型薄膜太陽電池の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットの両方を含むものは特にハイブリッド薄膜太陽電池と称されることもある。
【0008】
たとえば、i型非晶質シリコンが光電変換し得る光の波長は長波長側において800nm程度までであるが、i型結晶質シリコンはそれより長い約1100nm程度の波長の光までを光電変換することができる。ここで、光吸収係数の大きな非晶質シリコン光電変換層は光吸収のためには単層でも0.3μm以下の厚さで十分であるが、光吸収係数の小さな結晶質シリコン光電変換層は長波長の光をも十分に吸収するためには単層では2〜3μm程度以上の厚さを有することが好ましい。すなわち、結晶質光電変換層は、通常は、非晶質光電変換層に比べて10倍程度に大きな厚さを有することが望まれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようなタンデム型薄膜太陽電池において、それが非晶質ユニットと結晶質ユニットの両方を含む場合に、非晶質ユニットを形成する際に最適なプラズマCVD条件と結晶質ユニットを形成するのに最適なプラズマCVD条件とは互いに異なるので、互いに別々のプラズマCVD装置でそれぞれの最適条件のもとで形成することが好ましい。また、結晶質ユニットは非晶質ユニットに比べて長い形成時間を要するので、単一の製造ラインで形成された非晶質ユニット上に、結晶質ユニットを複数の製造ラインで迅速に形成することが望まれる場合もある。さらに、タンデム型薄膜太陽電池において、それが複数の結晶質ユニットのみを含む場合でも、光吸収効率の最適化を図るために、光入射側に近い前方ユニットとその後ろに形成される後方ユニットとの間では互いに厚さやその他の特性が変えられるので、各ユニットを別々のプラズマCVD装置で形成することが望まれる場合が多い。
【0010】
しかしながら、このような状況下において、たとえば透明基板側から順にpinの接合を含むpin型非晶質ユニットを形成した後に、その基板をプラズマCVD装置から一旦大気中に取出して他のプラズマCVD装置に移してpin型結晶質ユニットをさらに形成した場合、得られるタンデム型薄膜太陽電池の光電変換特性は基板を大気中に取出すことなく両ユニットを連続的に形成した場合に比べて低下するという事実を本発明者たちは経験した。具体的には、光電変換効率の絶対値による比較において0.5%以上の低下が見られた。
【0011】
このような本発明者たちが経験した知見に基づいて、本発明は、タンデム型薄膜太陽電池の性能を低下させることなくその製造工程の融通性を高めかつ生産効率を改善し得る製造方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、透明基板上で順に堆積されたp型層、i型光電変換層、およびn型層を含む光電変換ユニットの複数が積層されていて、少なくともその基板側から最も遠い後方ユニットは結晶質i型光電変換層を含む結晶質ユニットであるタンデム型薄膜太陽電池の製造方法は、基板上で少なくとも1つのユニットに含まれるn型層が比較的低いドーパント濃度でプラズマCVDによって形成された後に基板が大気中に取出されることによって、その低濃度n型層の表面が大気に露呈され、その後にその大気に露呈された低濃度n型層上にそれより高濃度のn型中間層とそれに引続いて結晶質ユニットがプラズマCVDで形成されるステップを含むことを特徴としている。
【0013】
低濃度n型層のドーパント濃度は1.5×1020cm-3以下であることが好ましく、その上に形成される高濃度のn型中間層のドーパント濃度は5×1020cm-3以上であることが好ましい。
【0014】
高濃度n型中間層は、好ましくは、大気に露呈された低濃度n型層の表面が水素プラズマに暴露される処理がなされた後に引続いてプラズマCVDで形成されることが好ましい。
【0015】
水素プラズマ暴露処理時とn型中間層をプラズマCVDで堆積するときおよびその中間層上に結晶質ユニットのp型層をプラズマCVDで堆積するときのいずれのガス圧も、同一減圧チャンバ内で実質的に同一の圧力に設定され得る。
【0016】
基板上で最初のユニットとして、非晶質i型光電変換層を含む非晶質ユニットが形成されることが好ましい。
【0017】
プラズマCVDには、H2で希釈されたSiH4を含むガスが反応ガスとして好ましく利用され得る。
【0018】
【発明の実施の形態】
前述のように基板上にpin型非晶質ユニットを形成した後にその基板をプラズマCVD装置から一旦大気中に取出して他のプラズマCVD装置に移してpin型結晶質ユニットをさらに形成した場合に、得られるタンデム型薄膜太陽電池の光電変換特性が基板を大気中に取出すことなく両ユニットを連続的に形成した場合に比べて低下することの原因について、本発明者たちが検討した。その結果、この原因の1つとして、非晶質ユニットと結晶質ユニットを連続的に形成した場合には非晶質ユニットのn層として微結晶層が形成され(n層はp層に比べて結晶化しやすい)、そのn層の微結晶が結晶核として作用してその上に良質の結晶質ユニットが形成され得るのに対して、非晶質ユニットの形成後にそれが一旦大気に露呈されれば、そのn層表面の酸化や異物の付着などによって、その後に形成される結晶質ユニットの結晶化が阻害されるという理由が考えられた。
【0019】
また、微結晶n層にリンがドープされていればその表面がポーラスになりやすく、特にそのドープ量が多くなるほどその傾向が強くなる。したがって、そのようなn層のポーラスな表面を大気に露呈すれば、平坦な表面に比べて、より酸化や異物の付着などが促進されやすいと考えられる。
【0020】
上述のような本発明者たちの分析に基づいて、以下において本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本願の各図において、厚さや長さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表わしてはいない。また、各図において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表わしている。
【0021】
まず図1において、本発明の実施の形態の一例による製法によって作製されたタンデム型薄膜太陽電池セルが模式的な断面図で示されている。すなわち、この太陽電池セルでは、ガラスなどの透明絶縁基板1上に透明導電性酸化物(TCD)からなる透明電極2が形成される。透明電極2上には、第1の光電変換ユニット3に含まれるp型層3p、実質的に真性半導体の非晶質または結晶質の光電変換層3i、およびn型層3nがプラズマCVDで順次に堆積される。
【0022】
ここで、n型層3nのドーパント濃度は、通常の光電変換ユニットに含まれるn型層に比べて低くされ、具体的には1.5×1020cm-3以下にされる。これは、n型層3nのドーパント濃度が低くなるに従って、そのn型層3nの表面が酸化されにくくなるとともにポーラスになりにくくなるからである。
【0023】
その後、基板1がプラズマCVD装置から大気中に引出され、それによってn型層3nの表面が大気に露呈される。その後に、基板1が他のプラズマCVD装置内に導入され、好ましくは、大気中露呈によって汚染または変質させられたn型層3nの表面層を浄化または改質するように水素プラズマへの暴露処理がなされる。ただし、この水素プラズマ暴露処理は不可欠なものではなく、省略することも可能である。
【0024】
n型層3n上には次に形成される結晶質光電変換ユニット4の結晶化を容易にするように作用し得るフレッシュな付加的n型微結晶中間層5nがプラズマCVDで堆積される。ここで、このn型中間層5nのドーパント濃度は、n型層3nの低ドーパント濃度を補うように比較的高濃度にされ、具体的には5×1020cm-3以上にされる。すなわち、n型中間層5nは第1光電変換ユニット3のn型層3nの機能を補充するようにも作用し、第1光電変換ユニット3に含まれるn型層の一部と考えることもできる。
【0025】
n型微結晶中間層5n上には、第2の光電変換ユニット4に含まれるp型層4p、実質的に真性の結晶質光電変換層4iおよびn型層4nが順次プラズマCVDで堆積され、最後に裏面電極10が形成される。
【0026】
なお、水素プラズマ暴露処理は、それに引続くn型中間層5nおよびp型層4pのプラズマCVDの際と実質的に同一のガス圧の下で行なうことができる。すなわち、水素プラズマ暴露処理とn型中間層5nの形成の工程を付加しても、それに伴って必要となるガス圧調整時間を非常に短くすることができる。
【0027】
このようなタンデム型薄膜太陽電池セルの製造方法においては、第1光電変換ユニット3のn型層3nが大気中に露呈されてもそのドーパント濃度が低いのでその表面層が劣化しにくく、少し劣化したとしても水素プラズマ暴露処理によって浄化または改質することもできる。水素プラズマはn型層3nの表面を浄化するとともにその結晶化を促し、または非晶質成分を除去するように作用する。そして、そのn型層3n上に新たに形成されるフレッシュなn型微結晶中間層5nがその上に堆積される結晶質光電変換ユニット4の結晶化を容易にさせる効果とも相俟って、結晶質ユニット4は大気に露呈された通常のドーパント濃度のn型層3n上に水素プラズマ暴露処理を経ることなく直接堆積される場合に比べて良好な結晶性を有し、基板1が一旦大気中に取出されることによる悪影響を顕著に軽減することができる。
【0028】
このようにして第1ユニット3と第2ユニット4とが別々のCVD装置で形成することが可能になれば、それぞれのユニットに求められる最良の特性を実現するために最も適合するCVD条件を別々に設定することができ、タンデム型薄膜太陽電池セル全体としての性能をむしろ改善し得ると期待される。また、それぞれのユニットのために複数の製造ラインを利用することができるので生産効率を高めることができ、さらに複数のプラズマCVD装置の利用によってそれらの装置のメンテナンスを順次円滑に行なうことができるようになる。
【0029】
なお、上述のような実施形態の製造方法によって得られるタンデム型薄膜太陽電池において、各光電変換ユニットが効率的に光を吸収することができるように、光電変換されるべき光は各光電変換ユニットのp型層側から入射させられる。また、タンデム型薄膜太陽電池が非晶質ユニットと結晶質ユニットとの両方を含むハイブリッド薄膜太陽電池である場合には、より短い波長の光を吸収し得る非晶質光電変換ユニットが光入射側に近い前方ユニットとして配置され、より長い波長の光を吸収し得る結晶質光電変換ユニットは光入射側から遠い後方ユニットとして配置される。
【0030】
ところで、以上の実施形態では2つの光電変換ユニットが積層された2段タンデム型薄膜太陽電池のみについて説明されたが、本発明は3段以上の光電変換ユニットを含むタンデム型薄膜太陽電池にも適用し得ることは言うまでもない。
【0031】
以下においては、上述の実施形態に対応する積層構造を含む集積型ハイブリッド薄膜太陽電池の製造方法の実施例が、図2を参照しつつ、参考例および比較例とともに説明される。
【0032】
(実施例1)
図2は、実施例1において作製された集積型ハイブリッド薄膜太陽電池を模式的な断面図で図解している。この太陽電池の製造において、まず、ガラス基板1上に、微細な表面凹凸構造(表面テクスチャ)を有する酸化スズ膜からなる透明電極層2が形成された。この透明電極層2は、YAGレーザを用いたレーザスクライブによって形成された溝2aによって複数の短冊状の透明電極領域に分離された。すなわち、透明電極分離溝2aは、図2の紙面に対して垂直方向に延びている。
【0033】
その後、透明電極層2上には、175℃の基板温度のもとで、pin型の非晶質光電変換ユニット層3がSiH4とH2を含む原料ガスを利用してプラズマCVDによって形成された。この非晶質光電変換ユニット層3に含まれるp型シリコン層3pは、10nmの厚さに堆積された。ノンドープのi型非晶質シリコン光電変換層3iは、0.27μmの厚さに堆積された。そして、n型シリコン層3nは、SiH4/PH3(H2ベースで0.5%ドープの希釈ガス)/H2混合ガス中のそれぞれのガス流量比が1/0.4/100のもとで8nmの厚さの微結晶層として堆積された。このとき、Siに対するPのドーピング濃度は1×1020cm-3になる。
【0034】
その後、基板1がCVD装置のアンロードチャンバ内に搬送され、そのチャンバが速やかにN2ガスで満たされた後に、基板1が大気中に取出されて、n型微結晶シリコン層3nの表面が40時間だけ大気に露呈された。
【0035】
さらにその後、基板1が他のCVD装置のロードチャンバ内にセットされ、175℃に昇温された後に、0.1〜0.2W/cm2のRF(高周波)パワー密度条件の下の水素プラズマにn型微結晶シリコン層3nの表面が30〜60秒の間暴露された。その後にRF電源を切って、一旦高真空に真空引きすることなく、SiH4/PH3(希釈ガス)/H2=1/4/96の混合ガスにて調圧した後に厚さ30nmのn型微結晶シリコン中間層5nが堆積されるとともに、これに続いてpin型の結晶質光電変換ユニット層4が堆積された。このとき、n型中間層5n中のPのドーピング濃度は1×1021cm-3になる。
【0036】
結晶質光電変換ユニット層4に含まれるp型微結晶シリコン層4pは15nmの厚さに堆積され、ノンドープのi型結晶質シリコン光電変換層4iが1.7μmの厚さに堆積され、そしてn型微結晶シリコン層4nが20nmの厚さに堆積された。さらに、裏面電極層10の一部として働く厚さ60nmの酸化亜鉛膜が、結晶質光電変換ユニット層4上を覆うようにスパッタリングによって形成された。
【0037】
その後、基板が大気中に取出され、YAGレーザを用いたレーザスクライブによって半導体層分割溝4aが形成された。そして、さらに裏面電極10に含まれる厚さ30nmの酸化亜鉛膜、200nmの銀膜、および厚さ5nmのチタン膜がそれぞれスパッタリングによって形成された。最後に、裏面電極層10を複数の短冊状裏面電極に分離するために、YAGレーザを用いたレーザスクライブによって裏面電極分離溝10aが形成された。こうして、図2に示されているように左右に隣接する短冊状ハイブリッドセルが互いに電気的に直列接続された集積型ハイブリッド薄膜太陽電池が製造された。
【0038】
なお、本実施例における薄膜太陽電池に含まれる各層の成膜の際に用いられた反応ガスに関するガス混合比率、圧力、調圧時間が、表1においてまとめられている。
【0039】
【表1】
【0040】
この表1からわかるように、水素プラズマ暴露処理のガス圧とその後に堆積されるn型中間層5nの成膜ガス圧とが、さらにその後に堆積されるp型層4pの成膜ガス圧と同じ133Paにされ得る。したがって、n型中間層5nとp型層4pの成膜のために要する調圧時間を合計で35秒のように短くすることができる。すなわち、水素プラズマ暴露処理とn型中間層5nの成膜の工程が付加されても、それに伴って必要となる調圧時間を短くすることができ、薄膜太陽電池の成膜工程の時間的効率に対してほとんど悪影響を及ぼすことがない。
【0041】
この実施例1において製造された集積型ハイブリッド薄膜太陽電池において、ソーラシミュレータを用いてAM1.5の光を1kW/m2のエネルギ密度で25℃のもとで照射することによって光電変換特性が測定された。その結果の相対的値が表2に示されている。
【0042】
(実施例2)
実施例2においては、水素プラズマ暴露処理が行なわれなかったことのみにおいて実施例1と異なっていた。
【0043】
(参考例)
参考例においては、n型微結晶層3nのドーパント濃度が通常の1×1021cm-3に高められるとともにその厚さが30nmにされ、その後に基板が大気中に露呈されることなくそのまま引続いて結晶質光電変換ユニット4が堆積されたことのみにおいて実施例1と異なっていた。
【0044】
(比較例)
比較例においては、n型微結晶層3nのドーパント濃度が通常の1×1021cm-3に高められたことのみにおいて実施例2と異なっていた。
【0045】
上述の実施例1と2、参考例、および比較例のそれぞれにおいて4つのサンプル(N=4)について光電変換特性が測定された。表2では、参考例による集積型ハイブリッド薄膜太陽電池における光電変換特性を基準として、実施例1と2および比較例による集積型ハイブリッド薄膜太陽電池の光電変換効率が規格化されて示されている。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示されているように、実施例1において低濃度のn型層3nの形成後に基板1を大気中に40時間放置した場合であっても、非晶質ユニット3を形成した後に基板を大気中に取出すことなく引続いて結晶質ユニット4を形成した参考例に比べて、その光電変換効率の低下はほとんど見られないことがわかる。
【0048】
また、実施例2におけるように水素プラズマ暴露処理が行なわれない場合であっても、低濃度のn型層3nを利用する本発明の製造方法によれば、参考例に比べて相対値で最大でも2%以内であって平均では1%程度の特性低下に留まっている。
【0049】
他方、非晶質光電変換ユニット3内のn型層3nが通常のドーパント濃度にされた比較例では、新たに付加的なn型微結晶中間層5nが形成されても、得られる薄膜太陽電池の特性に大きなばらつきを生じ、参考例に比較して相対値で平均でも5%程度の大きな特性低下を生じている。
【0050】
ところで、水素プラズマ暴露処理時間は、120秒以内に制限されることが好ましい。なぜならば、それより長く水素プラズマ暴露処理を行なえば、逆に光電変換特性の低下が見られるからである。その理由としては、あまりに長く水素プラズマ暴露処理を行なえば、i型非晶質光電変換層3iにまで水素ラジカルによるダメージが及ぶからであろうと推測される。
【0051】
なお、参考例において非晶質光電変換ユニット層3と結晶質光電変換ユニット層4を連続的にプラズマCVDで形成する際には基板ホルダの熱容量の関係から温度を変更することが困難なことから175℃の一定温度のもとでそれらの光電変換ユニット層が形成された。そして、この参考例との比較を明瞭化するために、実施例においても非晶質光電変換ユニット層3と結晶質光電変換ユニット層4の堆積時における基板温度も175℃の一定温度に維持された。しかし、非晶質光電変換ユニット層3と結晶質光電変換ユニット層4のより好ましい堆積温度は互いに異なっている。したがって、もし実施例においてこれらの最適温度が採用されていたならば、実施例の薄膜太陽電池は参考例に比べて光電変換効率がむしろ改善されるのではないかという可能性もある。
【0052】
また、前述のように、本発明によれば非晶質光電変換ユニット3と結晶質光電変換ユニット4のそれぞれを別々の成膜ラインで形成することができるので、両ユニットの成膜時間が異なっていてもそれぞれの成膜ラインを無駄なく稼動することができ、生産ラインのメンテナンス管理がしやすくなるという利点を生じ、タンデム型薄膜太陽電池を高い生産効率で提供することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、タンデム型薄膜太陽電池の性能を低下させることなくその製造工程の融通性を高めかつ生産効率を改善し得る製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例による製造方法によって作製されるタンデム型薄膜太陽電池を示す模式的な断面図である。
【図2】 図1の実施形態による半導体積層構造を有する集積型ハイブリッド薄膜太陽電池を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁基板、2 透明電極、2a 透明電極分離溝、3 第1光電変換ユニット、3p p型層、3i 真性半導体の光電変換層、3n n型層、4 第2光電変換ユニット、4p p型層、4i 真性半導体の結晶質光電変換層、4n n型層、4a 半導体層分割溝、5n n型中間層、10 裏面電極、10a 裏面電極分離溝。
Claims (7)
- 透明基板上で順に堆積されたp型層、i型光電変換層、およびn型層を含む光電変換ユニットの複数が積層されていて、少なくとも前記基板側から最も遠い後方ユニットは結晶質i型光電変換層を含む結晶質ユニットであるタンデム型薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記基板上で少なくとも1つの前記ユニットに含まれる前記n型層が比較的低いドーパント濃度でプラズマCVDによって形成された後に前記基板が大気中に取出されることによって、前記低濃度n型層の表面が大気に露呈され、
その後に、前記大気に露呈された低濃度n型層上にそれより高濃度のn型中間層とそれに引続いて結晶質ユニットがプラズマCVDで形成されるステップを含むことを特徴とする製造方法。 - 前記低濃度n型層のドーパント濃度は1.5×1020cm-3以下であり、前記高濃度のn型中間層のドーパント濃度は5×1020cm-3以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 大気に露呈された前記低濃度n型層の表面が水素プラズマに暴露される処理がなされた後に引続いて前記高濃度n型中間層がプラズマCVDで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記水素プラズマ暴露処理時と前記n型中間層をプラズマCVDで堆積するときおよび前記中間層上に前記結晶質ユニットの前記p型層をプラズマCVDで堆積するときのいずれのガス圧も、同一減圧チャンバ内で実質的に同一の圧力に設定されることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- 前記水素プラズマ暴露処理の時間は2分以内であることを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
- 前記基板上で最初の前記ユニットとして、非晶質i型光電変換層を含む非晶質ユニットが形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の製造方法。
- 前記プラズマCVDにはH2で希釈されたSiH4を含むガスが反応ガスとして利用されることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の製造方法。
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