JP4670118B2 - 積層ガス吸着用シート及びそれを用いた空気清浄用フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ガス吸着用シート及びそれをハニカム形状とした空気清浄用フィルタに関するものであり、より詳しくはオゾン除去に優れ、かつ難燃性を有する積層ガス吸着用シート及びそれを用いた空気清浄用フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コロナ放電による帯電方式を採用した電気集塵式空気清浄機や電子写真複写機などの事務用機器では、コロナ放電が機内の空気中で行われるため多量のオゾンが機内に発生する。このオゾンは非常に臭いの強い、酸化性の強い気体であり、空気中に0.1ppmの濃度が存在するだけで、息切れやめまい、吐き気、頭痛などの生理作用を生じさせるものであるため、事務用機器としてはこのようなオゾンを機外へ漏洩させることは大きな欠陥とされていた。
【0003】
かかる問題を克服するため、当該事務用機器の排気ダクトにオゾン除去フィルタを取り付けることが従来から行われており、排気を効率的に行うという観点から当該フィルタは通気抵抗の小さいハニカム構造体が採用されていた。また、かかるフィルタにおいてオゾンを除去する物質として、二酸化マンガン、二酸化ニッケルなどの金属酸化物あるいは活性炭が使用されていた。例えば、特公昭63−31253号公報には、特定の細孔径を有する繊維状活性炭をハニカム状に加工したフィルタが提案されている。しかし活性炭を使用する場合、オゾンの除去は吸着の他、活性炭によるオゾンの還元分解によっても進行するため、オゾンの除去とともに活性炭の劣化が進行することは避け難く、結果的に寿命が短くなるという問題がある。そこで、オゾン除去能力の発現有効期間を延ばそうとすれば、繊維状活性炭の使用量を上げることが必要となるが、繊維状活性炭では嵩密度が小さくならないために、シート状物の厚みが上がり、ハニカムの空隙が小さくなり、圧力損失が増大するという問題ある。このため当該フィルタでは、オゾン除去性能を向上させることは勿論、その効果発現期間を長くすることが実用上困難であった。
【0004】
他方、活性炭によるオゾン除去性能自体を向上させる目的で、例えば特開昭62−286540号公報には、活性炭に、カリウム化合物とナトリウム化合物を特定量混合した活性炭成形体、特公平4−71641号公報には、特定の活性炭にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添着し、更に熱処理した活性炭が夫々提案されており、ある程度オゾン除去性能が向上されている。
【0005】
しかし事務用機器では、UL(Underwriters Laboratories Inc.)の定める難燃規格を満足することが必要となるところ、かかる方法ではアルカリ金属が触媒となって、活性炭の燃焼性が促進されるので、当該UL規格を満足することは事実上不可能であり、これら方法は実用上使用できないものであった。
【0006】
一方、難燃性の面から、例えば特公平5−43414号公報では、特定の細孔径を有する活性炭と水溶性高分子物質、リン酸アンモニウムなどの水溶性無機系化合物を含有するガス吸着用活性炭素紙が提案されおり、一応の成果を得ているが、無機系化合物によって活性炭上のオゾン分解活性点が減少するため、オゾン除去性能が低下するといった問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、活性炭の使用技術を改良することによって、オゾンを初めとする人体に有害なガスの除去性能が高く且つ長寿命で、しかもULの定める難燃性の基準を満足する積層ガス吸着用シート及びそれを用いた空気清浄用フィルタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、シート基材の片面側に複数層を形成した積層ガス吸着用シートであって、シート基材から遠い側には活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方が含有され、シート基材に近い側には難燃剤が含有されていることを特徴とする積層ガス吸着用シートが提供される。
【0009】
また本発明によれば、シート基材の両面側に複数層を形成した積層ガス吸着用シートであって、両面側のシート基材から遠い側には、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方が含有され、シート基材に近い側には難燃剤が含有されていることを特徴とする積層ガス吸着用シートが提供される。
【0010】
上記シート基材中には、活性炭又はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は難燃剤が含有されていてもよい。
【0011】
さらに本発明によれば、上記積層ガス吸着用シートをハニカム形状とした空気清浄用フィルタが提供される。
【0012】
当該空気清浄用フィルタは開口率が50〜90%であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
ガス吸着用シートの難燃性を向上させるためには、当然ながら難燃剤を含有させる必要があり、かかる難燃剤を含有させることによるガス除去性能の低下をいかにして抑制するかについて本発明者らが鋭意検討した結果、ガス吸着用シートを積層構造として、シート基材から遠い側に、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを含有させ、かつシート基材に近い側に難燃剤を含有させることにより、難燃性を向上させながら、ガス除去性能も向上させ得ること見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
難燃性を向上させながらガス除去性能も向上させることができたのは、本発明のガス吸着用シートを積層構造とし、ガス吸着機能と難燃性機能を層別に機能分離した点に大きな要因がある。すなわち、活性炭上のオゾン分解活性点を減少させ、ガス吸着作用を低下させる難燃剤を活性炭とは別の層に含有させて、難燃剤と活性炭を離隔することで活性炭のガス吸着性能の低下を抑制し、かつ活性炭が含有されている層にアルカリ金属化合物および/又はアルカリ土類金属化合物を含有させることによって、活性炭のガス吸着性能を向上させたのである。
【0015】
また本発明の積層ガス吸着用シートにおいて、ガス吸着機能を有する層をシート基材から遠い側に、難燃性機能を有する層をシート基材に近い側に設けることも重要な事項である。ガス吸着機能を有する層をシート基材から遠い側に設けることにより、除去したい物質を含んだガスと接触する活性炭の表面積が増大し、当該物質の除去を円滑かつ有効に行うことができ、また難燃性機能を有する層をシート基材に近い側に設けることにより、ガス吸着用シート全体の難燃性を向上させることができたのである。
【0016】
本発明で使用する活性炭としては、特に限定はなく、これまで公知の活性炭が使用でき、かかる活性炭は、例えば木材(木炭)やのこ屑、果実殻(ヤシ殻、棉実殻、もみ殻、コーヒー豆など)、セルロース、リグニン、パルプなどの植物系原料;褐炭、亜炭、泥炭、無煙炭、石油スラッジなどの鉱物系原料等を素材とし、塩化亜鉛などを使用した薬品賦活あるいは水蒸気などを用いたガス賦活等を施すことにより得られる。
【0017】
活性炭の形状は、粉末状、粒状、繊維状のいずれであってもよいが、ガス吸着用シート中での密度を上げるには、粉末状や粒状のものが好ましい。
【0018】
この際、粉粒状活性炭の粒径としては、1〜150ミクロンが好ましく、より好ましくは1〜100ミクロンである。またシート基材から遠い側に設ける、ガス吸着機能を有する層に含有される活性炭の粒径としては、1〜30ミクロンが好ましく、より好ましくは1〜25ミクロンである。粒径が1ミクロン未満の活性炭は、飛散や凝着など取り扱い性が悪く、他方150ミクロンより大きい活性炭ではガス吸着性シートの薄層化が困難であり、また当該シートからの活性炭の剥離を招くおそれがある。
【0019】
本発明に使用される活性炭の比表面積は、800m2 /g以上が好ましく、1,000m2 /g以上がより好ましい。活性炭の比表面積が800m2 /gより小さいと、オゾンの除去性能が低下するおそれがあるからである。
【0020】
シート基材から遠い側の層に含まれる活性炭量は5〜50g/m2 が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、7g/m2 以上であり、さらに好ましくは10g/m2 以上である。他方上限値としては、45g/m2 以下であり、さらに好ましくは40g/m2 以下である。5g/m2 未満の場合十分なオゾン除去性能が得られず、他方50g/m2 を越える場合は、ガス吸着用シートの厚みが厚くなるため、加工性が悪くなり、またハニカム形状に加工した場合に開口率が小さくなり通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題を生ずるおそれがある。
【0021】
活性炭は、シート基材やシート基材から近い側の層の有する機能を害することのない範囲で、シート基材や当該層中に含有されていてもよく、積層ガス吸着用シートに含まれる活性炭の全含有量は、積層ガス吸着用シートに対して10〜80wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、20wt%以上である。他方上限値としては、70wt%以下である。活性炭の含有率が10wt%未満の場合、オゾン除去に機能する活性炭量が不足するためオゾン除去が十分にはなされない。一方80wt%を超える場合、積層ガス吸着用シートの強度が低下し、加工性が悪くなることがある。
【0022】
本発明で使用するアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、それぞれアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含有する無機又は有機化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属類の水酸化物;酸化物;炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。またアルカリ土類金属化合物としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;酸化物;炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。使用に当たってはこれらのアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の一種または二種以上が使用できる。アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物は、液状として使用してもよいし、ペースト状として使用してもよい。
【0023】
シート基材から遠い側の層に含まれるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量は、当該層中の活性炭に対して10〜100wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、15wt%以上であり、より好ましくは20wt%以上である。他方上限値としては、95wt%以下であり、より好ましくは90wt%以下である。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量が10wt%より少ないと、オゾン除去効果が小さくなるという問題があり、100wt%より多いとオゾン除去効果は上がるが難燃性に劣るという問題がある。
【0024】
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は、シート基材やシート基材から近い側の層の有する機能を害することのない範囲で、シート基材や当該層中に含有されていてもよく、積層ガス吸着用シートに含まれるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の全含有量は、ガス吸着用シート重量に対して5〜50wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、7wt%以上であり、より好ましくは10wt%である。他方上限値としては、45wt%以下であり、より好ましくは40wt%以下である。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量が5wt%より少ないとオゾン除去効果が小さくなるという問題があり、50wt%より多いと難燃性に劣るという問題がある。
【0025】
本発明で使用する難燃剤としては、例えば三酸化アンチモンや水酸化アルミナ、水酸化マグネシウム、臭化アンモン、塩化アンモン、硫酸アンモン、スルファミン酸アンモンなどの無機系難燃剤;リン酸アンモニウム、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジンなどのリン酸塩、リン酸トリエステルなどのリン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、脂肪族、環状脂肪族、芳香族化合物の塩素または臭素化物などの有機系難燃剤が使用できる。これら難燃剤は、一種または二種以上を併用してもよい。
【0026】
シート基材に近い側の層中の含有される難燃剤量は、2〜50g/m2 であることが好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、3g/m2 以上であり、より好ましくは5g/m2 以上である。他方上限値としては、45g/m2 以下であり、より好ましくは40g/m2 以下である。難燃剤の含有量が2g/m2 より少ないと、十分な難燃効果が得られず、ULの定める規格を満足することができないという問題があり、50g/m2 より多いと、難燃剤を含有する層の層強度が強くなり、積層ガス吸着用シートのしなやかさがなくなり、シート割れを起こすおそれがある。
【0027】
難燃剤は、シート基材やシート基材から遠い側の層の有する機能を害することのない範囲で、シート基材や当該層中に含有されていてもよく、積層ガス吸着用シートに含まれる難燃剤の全含有量は、ガス吸着用シートに対して3〜70wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、5wt%以上であり、より好ましくは7wt%である。他方上限値としては、65wt%以下であり、より好ましくは60wt%以下である。難燃剤の含有量が3wt%より少ないと、十分な難燃効果が得られず、ULの定める規格を満足することができないという問題があり、70wt%より多いと、難燃剤を含有する層の層強度が強くなり、積層ガス吸着用シートのしなやかさがなくなり、シート割れを起こすおそれがある。
【0028】
本発明で使用するシート基材としては、例えば抄紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの樹脂フィルム;アルミ箔や銅箔、ステンレス鋼などの金属シートが使用できる。抄紙の原料としては、木材系パルプやマニラ麻パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アクリルパルプ、アラミドパルプなどのフィブリル化できる繊維が好ましく、シート基材の強度を上げるために、ポリビニルアルコール繊維やポリオレフィン系繊維、セラミック繊維、ガラス繊維などを支持繊維として、フィブリル化繊維と混合して使用してもよい。
【0029】
シート基材中に、活性炭やアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、難燃剤を含有させると、有害ガスの除去性能がより一層向上し、また難燃性の度合いも向上する。シート基材に含有させる物質は、必要とする効果により選択すればよく、例えば有害ガスの除去性能をより向上させたいときは活性炭および必要によりアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を、難燃性を向上させたいときは難燃剤をそれぞれシート基材中に添加すればよい。
【0030】
活性炭やアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、難燃剤をシート基材中に含有させるには、シート基材の製造過程でそれら物質を添加しておけばよい。例えばシート基材として抄紙を用いるときは、フィブリル化した繊維と抄紙に含有させたい物質とを混合した後、一般的に知られている湿式抄紙法によって抄造しシート基材とすればよい。このとき、当該物質と繊維との結合を高めるために、ポリアクリルアミドや脱アセチル化キチンなどの抄紙助剤を使用してもよい。また樹脂フィルムをシート基材として用いるときは、当該樹脂を製造する工程あるいは当該樹脂をシート化する工程において活性炭などシート基材中に添加しておきたい物質を添加しておけばよい。
【0031】
シート基材の片面側に複数層を形成するには、コーター法、グラビア法など公知のコーティング方法が使用できる。具体的には、難燃剤を接着剤及び必要により増粘剤と共に混合しペースト状とした後、コーター法、グラビア法などによってシート基材上に塗布し、まず難燃剤を含有する層を形成する。次に、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを接着剤及び必要により増粘剤と混合しペースト状として、難燃剤を含有する層の上に既述の方法により塗設する。なお活性炭以外は液状物で塗膜溶液としてもよい。図1(a)にシート基材の片面側に複数の層を形成した本発明の積層ガス吸着用シートの一形態を示す。シート基材の両面側に複数の層を形成する場合は、片面側に複数の層を形成する上記処理を両面側において施せばよい。ガス吸着体積が増えるので、シート基材の両側面に複数層を形成した積層ガス吸着用シートが実用上は好適に使用される。図1(b)乃至(d)にシート基材の両側面に複数の層を形成した本発明に係る積層ガス吸着用シートの好適態様例を示す。図1(b)はシート基材上に難燃剤を含有する層を設け、その上に活性炭とアルカリ金属化合物を含有する層を設けた積層ガス吸着用シート、(c)は上記(b)に示す積層ガス吸着用シートのシート基材中に活性炭を含有させたもの、(d)は同様にシート基材中に活性炭と難燃剤が含有させたものの、それぞれ断面概略図である。
【0032】
本発明の積層ガス吸着用シートにおいて、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを含有する層および難燃剤を含有する層以外に、シート基材上に形成する層の塗布を容易にするためのアンダー層やシート表面を保護するための表面保護層などを必要により設けることができる。
【0033】
積層ガス吸着用シートの厚さは、0.02〜0.3mmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.25mmである。0.02mmより薄いとオゾン除去、難燃性の効果が小さく、0.3mmより厚いとシートが厚くなり、ハニカム形状にシートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0034】
活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを含有する層の厚さは、積層ガス吸着用シートの厚みに対して5〜50%であることが望ましい。当該層の厚さが5%未満の場合、十分なオゾン除去性能が得られず、他方当該層の厚さが50%を越える場合は、層強度が強くなり積層ガス吸着用シートにしなやかさがなくなる。このため活性炭シートを成形するときにシート割れが起こりやすくなる。
【0035】
難燃剤を含有する層の厚さは、積層ガス吸着用シートの厚みに対して5〜50%であることが望ましい。当該層の厚さが5%未満の場合、十分な難燃性能が得られず、他方当該層の厚さが50%を越える場合は、層強度が強くなり積層ガス吸着用シートにしなやかさがなくなる。このため活性炭シートを成形するときにシート割れが起こりやすくなる。
【0036】
積層ガス吸着用シートの目付は、10〜150g/m2 が好ましい。より好ましくは20〜100g/m2 である。当該シートが10g/m2 より軽いとオゾン除去、難燃性の効果が小さく、150g/m2 より重いとシートが厚くなり、ハニカム形状にシートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0037】
本発明の積層ガス吸着用シートをハニカム形状とするには、従来公知の加工方法を用いることができる。なお本発明においてハニカム形状とは、断面が六画形状のものの他、四角、正弦波形、ロール形のものなど中空多角柱、円柱などの中空柱体が連続したものをいう。例えば、積層ガス吸着用シートを正弦波形のハニカム形状とするには、まず積層ガス吸着用シートを賦形ロールに通して波形に賦形し、波形の当該積層ガス吸着用シートの片面または両面に平らなシートを接合する。これを積層化して正弦波形のハニカム形状のフィルタとする。ここで、波形の頂点に接着剤を付けて固定するのが普通であるが、波形の積層ガス吸着用シートを積層するとその間にある平らなシートは必然的に固定されるので、必ずしも接着剤を付ける必要はない。なお、接着剤を付ける場合はシートの吸着能を損なわないものを使用する必要がある。接着剤としては例えば、コーンスターチに若干の合成のりを混ぜたものが好適に使用できる。図2を参照して、オゾン除去性能を高めるためには、波形の積層ガス吸着用シートの接着ピッチを小さくし、山高さを低くするとよい。好適範囲としては、ピッチは0.5〜8mm、山高さは0.4〜5mmである。
【0038】
ハニカム構造フィルタの開口率は、シートの厚みやピッチ、山高さを調整することによって、制御することができ、好適範囲としては50〜90%である。開口率が50%未満の場合、通過する流体の圧力損失が大きくなり、90%を超える場合は、強度面で耐久性が落ちるおそれがある。
【0039】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例および比較例に記載された「部」は重量部を、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0040】
実施例1
活性炭(平均粒径50ミクロン、比表面積900m2 /g)45部、叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)48部、バインダーとしてのポリビニルアルコール7部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄紙し基材シート(目付26g/m2 、厚さ0.12mm)を製造した。
【0041】
このシート基材の両側表面に、難燃剤としてのリン酸ジグアニジンを含むペースト状物を6g/m2 となるように塗設した。更に得られたシート(目付33g/m2 、厚み0.13mm)の両側に粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、酢酸カリウムおよびリン酸ジグアニジンを重量比で2:1:1の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて加工し、目付55g/m2 、厚さ0.16mmの積層ガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された難燃剤の層の厚さは全体の6.3%、活性炭と酢酸カリウムを含有する層の厚さは全体の18.8%であった。得られた積層ガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0042】
次に、コルゲート加工機を用いて積層ガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率65%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.8mmAq、初期オゾン除去率96%、100時間後オゾン除去率90%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
【0043】
評価方法
(圧力損失)
ハニカム形状のフィルタを直径65mm、厚さ15mmに切断し、直径65mmのガラスカラムにセットする。風速1m/secの条件でフィルタの圧力損失を測定した。なお、圧力測定はマノスターゲージを用いて測定した。
【0044】
(オゾン除去率)
ハニカム形状のフィルタを直径65mm、厚さ15mmに切断し、直径65mmのガラスカラムにセットする。ここにオゾン濃度1PPMの空気を1m/secで通し、1回の通過でのオゾン除去率を測定する。なおオゾン濃度は紫外線吸収法オゾン濃度測定器で測定した。測定条件は、温度25±2℃、湿度50±5%である。
【0045】
(難燃性評価法)
ULで定めるUL94V試験法に基づいて評価した(Standard for Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.Vertical Burning Test ;94V-0,94V-1,94V-2)。UL94試験法に定められた有炎燃焼時間、無炎燃焼時間から難燃性のグレードを求め、定められた基準に達しないものは難燃性を不合格とした。
【0046】
実施例2
粉末活性炭(平均粒径50ミクロン、比表面積900m2 /g)30部、水酸化アルミニウム(平均粒径20ミクロン)30部、叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)30部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄紙し、基材シート(目付36g/m2 、厚さ0.14mm)を製造した。
【0047】
このシート基材の両側表面に、難燃剤としてのポリリン酸アンモニウムを含むペースト状物をリン酸アンモニウムの量で10g/m2 となるように塗布した。更に得られたシート(目付48g/m2 、厚み0.16mm)の両側に粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、炭酸水素カリウム及びリン酸アルミニウムを重量比で3:2:1の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付70g/m2 、厚さ0.19mmの積層ガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された難燃剤の層の厚さは全体の10.5%、活性炭と炭酸水素カリウムを含有する層の厚さは全体の15.8%であった。得られた積層ガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0048】
次に、コルゲート加工機を用いて積層ガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率58%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失2.3mmAq、初期オゾン除去率96%、100時間後オゾン除去率93%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−1の難燃性であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
実施例3
水酸化アルミニウム(平均粒子径20ミクロン)50部、叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)43部、バインダーとしてのポリビニルアルコール7部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄紙し基材シート(目付26g/m2 、厚さ0.12mm)を製造した。
【0049】
このシート基材の両側表面に、難燃剤としてのリン酸アルミニウムを含むペーストをリン酸アルミニウムの量で20g/m2 となるように塗布した。更に得られたシート(目付48g/m2 、厚み0.16mm)の両側に粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)と炭酸水素カリウムとを重量比で2:1の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付80g/m2 、厚さ0.20mmの積層ガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された難燃剤の層の厚さは全体の20%、活性炭と炭酸水素カリウムを含有する層の厚さは全体の20%であった。得られた積層ガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0050】
次に、コルゲート加工機を用いて積層ガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率55%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失2.4mmAq、初期オゾン除去率96%、100時間後オゾン除去率94%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−1の難燃性であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
実施例4
叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)50部、支持繊維としてレーヨン繊維(8デニール、繊維長5mm)40部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄紙し基材シート(目付20g/m2 、厚さ0.08mm)を製造した。
【0051】
このシート基材の両側表面に、難燃剤としてのリン酸アルミニウムを含むペーストをリン酸アルミニウムの量で20g/m2 となるように塗布した。更に得られたシート(目付42g/m2 、厚み0.12mm)の両側に粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、酢酸カリウム及びリン酸アルミニウムを重量比で5:2:1の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付75g/m2 、厚さ0.17mmの積層ガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された難燃剤の層の厚さは全体の23.5%、活性炭と酢酸カリウムを含有する層の厚さは全体の29.4%であった。得られた積層ガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0052】
次に、コルゲート加工機を用いて積層ガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率62%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失1.7mmAq、初期オゾン除去率96%、100時間後オゾン除去率94%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−1の難燃性であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
比較例1
活性炭(平均粒径50ミクロン、比表面積900m2 /g)30部、水酸化アルミニウム(平均粒径20ミクロン)30部、叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)30部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄紙し基材シート(目付40g/m2 、厚さ0.14mm)を製造した。
【0053】
このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、酢酸カリウム及びリン酸グアニジンを重量比で3:2:1の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付60g/m2 、厚さ0.18mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された層の厚さは全体の22.2%であった。得られたガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0054】
次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率60%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失2.0mmAq、初期オゾン除去率96%、100時間後オゾン除去率93%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果は不合格であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
【0055】
比較例2
実施例3で製造した基材を用い、このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、炭酸水素カリウム及びリン酸アルミニウムを重量比で5:2:5の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付70g/m2 、厚さ0.2mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された活性炭と炭酸水素カリウムを含有する層の厚さは全体の40%であった。得られたガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0056】
次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率55%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失2.4mmAq、初期オゾン除去率94%、100時間後オゾン除去率75%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−1の難燃性であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
【0057】
比較例3
実施例4で製造した基材を用い、このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径18ミクロン、比表面積1200m2 /g)、酢酸カリウム及びポリリン酸アンモニウムを重量比で5:2:5の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えてペースト状としてコート加工し、目付60g/m2 、厚さ0.15mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成された活性炭と酢酸カリウムを含有する層の厚さは全体の46.7%であった。得られたガス吸着用シートの物性を表1及び表2に示す。
【0058】
次に、コルゲート加工機を用いて積層ガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率70%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失1.6mmAq、初期オゾン除去率94%、100時間後オゾン除去率73%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、不合格であった。ハニカム形状成形品の物性結果をまとめて表3に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
活性炭と、アルカリ金属化合物層及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを含有する層及び難燃剤を有する層を有する実施例1乃至4の積層ガス吸着用シートでは、100時間経過後であってもオゾン分解率は低下せず、また難燃性評価は、V−0又はV−1と事務機器の部品として使用できるレベルのものであった。一方比較例1及び3では難燃剤を含有する層を設けていないので、難燃性試験の結果は不合格となっている。他方比較例2のガス吸着用シートも難燃剤を有する層は設けていないが、基材シート中などにも難燃剤を含有しており、ガス吸着用シート全体として、44.7wt%もの難燃剤を含有しているため、ULの難燃性の基準は満足している。しかし、多量の難燃剤を活性炭と同一層内に含有させているため、100時間後のオゾン分解率は75%と急激に低下している。
【0063】
【発明の効果】
本発明の積層ガス吸着用シートによれば、オゾンを初めとする人体に有害なガスを効率的に除去することができ、また当該シートは長期間使用しても性能が落ちない。しかもULの定める難燃性の基準を満足するので、事務用機器などに使用することができる。また当該ガス吸着用シートをハニカム形状とした空気清浄用フィルタによれば、人体に有害なガスを効率的に除去し、かつ圧力損失を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層ガス吸着用シートの断面概略図である。
【図2】本発明の積層ガス吸着用シートを片段ボールシートとした断面概略図である。
【符号の説明】
1:シート基材
2:難燃剤を含有する層
3:活性炭及びアルカリ金属化合物を含有する層
4:活性炭
5:難燃剤
6:積層ガス吸着用シート
7:シート
Claims (6)
- シート基材の片面側に複数層を形成した積層ガス吸着用シートであって、シート基材から遠い側には、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方が含有され、シート基材に近い側には、難燃剤が含有され且つ活性炭、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物のいずれも含有されておらず、シート基材から遠い側の層に含まれるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量は、当該層中の活性炭に対して10〜100wt%であり、また当該層中の活性炭の粒径は1〜30ミクロンであることを特徴とする積層ガス吸着用シート。
- シート基材中に、活性炭又はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は難燃剤が含有される請求項1記載の積層ガス吸着用シート。
- シート基材の両面側に複数層を形成した積層ガス吸着用シートであって、両面側のシート基材から遠い側には、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方が含有され、シート基材に近い側には、難燃剤が含有され且つ活性炭、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物のいずれも含有されておらず、シート基材から遠い側の層に含まれるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量は、当該層中の活性炭に対して10〜100wt%であり、また当該層中の活性炭の粒径は1〜30ミクロンであることを特徴とする積層ガス吸着用シート。
- シート基材中に、活性炭又はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物又は難燃剤を含有する請求項3記載の積層ガス吸着用シート。
- 請求項1または請求項3記載の積層ガス吸着用シートをハニカム形状としたことを特徴とする空気清浄フィルタ。
- 開口率が50〜90%である請求項5記載の空気清浄フィルタ。
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