JP3674750B2 - ガス吸着用シート及び空気清浄用フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス吸着用シート及びそれをハニカム形状とした空気清浄用フィルタに関するものであり、より詳しくはオゾン除去に優れ、かつ難燃性を有するガス吸着用シート及びそれを用いた空気清浄用フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コロナ放電による帯電方式を採用した電気集塵式空気清浄機や電子写真複写機などの事務用機器では、コロナ放電が機内の空気中で行われるため多量のオゾンが機内に発生する。このオゾンは非常に臭いの強い、酸化性の強い気体であり、空気中に0.1ppmの濃度が存在するだけで、息切れやめまい、吐き気、頭痛などの生理作用を生じさせるものであるため、事務用機器としてはこのようなオゾンを機外へ漏洩させることは大きな欠陥とされていた。
【0003】
かかる問題を克服するため、当該事務用機器の排気ダクトにオゾン除去フィルタを取り付けることが従来から行われており、排気を効率的に行うという観点から当該フィルタは通気抵抗の小さいハニカム構造体が採用されていた。
【0004】
例えば、特公昭63−31253号公報には、特定の細孔径を有する繊維状活性炭をハニカム状に加工したフィルタが提案されている。しかしオゾン吸着材として活性炭のみを使用した場合、オゾンの除去は吸着の他、活性炭によるオゾンの還元分解によっても進行するため、オゾンの除去とともに活性炭の劣化が進行することが避けがたく、結果的にフィルター寿命が短くなるという問題を生じていた。
【0005】
また、かような活性炭のみを用いたフィルターの寿命を延ばすためには繊維状活性炭の使用量を上げることが必要となり、結局、シートの厚みが増加したり、ハニカムの空隙が小さくなることにより、圧力損失が増大するという問題を生じていた。このように当該フィルタでは、オゾン除去性能を向上させることは勿論、その効果発現期間を長くすることが実用上困難であった。
【0006】
このような事情から、活性炭によるオゾン除去性能自体を向上させる目的で、例えば特開昭62−286540号公報には、活性炭に、カリウム化合物とナトリウム化合物を特定量混合した活性炭成形体、特公平4−71641号公報には、特定の活性炭にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添着し更に熱処理した活性炭が夫々提案されており、オゾン除去性能の改善が試みられている。
【0007】
しかし事務用機器では、UL(Underwriters Laboratories Inc.)の定める難燃規格を満足することが必要となるところ、かかる方法ではアルカリ金属が触媒となって、活性炭の燃焼性が促進されるので、当該UL規格を満足することは事実上不可能であり、これら方法は実用上使用できないものであった。
【0008】
一方、難燃性の面から、例えば特公平5−43414号公報では、特定の細孔径を有する活性炭と水溶性高分子物質、リン酸アンモニウムなどの水溶性無機系化合物を含有するガス吸着用活性炭素紙が提案されており一応の成果を得ているが、無機系化合物によって活性炭上のオゾン分解活性点が減少するため、オゾン除去性能が低下するといった問題を生じていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、オゾンを初めとする人体に有害なガスの除去性能が高く且つ長寿命で、しかもULの定める難燃性の基準を満足するガス吸着用シート及びそれを用いた空気清浄用フィルタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、シート基材の両面に、ガス吸着層を形成してなるガス吸着用シートであって、前記ガス吸着層が、活性炭と、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤とを含んでなるガス吸着用シートを提供するものである。
【0011】
本発明のガス吸着用シートの好ましい実施態様は、前記シート基材が難燃剤を含んでなるものである。
【0012】
また、本発明は、上記のガス吸着用シートを、開口率が50〜90%のハニカム形状としてなる空気清浄用フィルタを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のガス吸着用シートは、シート基材上に形成されたガス吸着層に、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤とを一緒に含有させることを特徴とするものであり、特に難燃剤として難溶性難燃剤を適用することによって、水溶性難燃剤を用いた場合のオゾン分解活性の急激な低下という欠点を改善したものである。
【0014】
即ち、水溶性難燃剤を用いた場合には、難燃剤とアルカリ金属とが反応し、例えばリン酸ナトリウムの如き物質を形成して、活性炭上のオゾン分解活性点が被覆されるため、オゾン分解活性が急激に低下するため、高いオゾン分解活性を維持することが困難であったが、本願発明は、かような問題点を全く生じないオゾン分解材を提供するものである。
【0015】
また、本発明のガス吸着用シートは、強度発現のために、弾性的で強度の優れたシート基材を用い、その上にガス吸着層を形成した2層構造とすることによって、従来の活性炭成形体などに比べ強度が格段に向上され、ハニカム形成時の折り曲げ加工が極めて容易であるという特徴を有する。
【0016】
本発明に用いられる活性炭の種類は、特に限定はなく、例えば木材(木炭)やのこ屑、果実殻(ヤシ殻、棉実殻、もみ殻、コーヒー豆など)、セルロース、リグニン、パルプなどの植物系原料;褐炭、亜炭、泥炭、無煙炭、石油スラッジなどの鉱物系原料等を素材とし、塩化亜鉛などを使用した薬品賦活あるいは水蒸気などを用いたガス賦活等を施すことにより得られた活性炭が挙げられる。
【0017】
活性炭の形状は、粉末状、粒状、繊維状のいずれであってもよいが、ガス吸着用シート中での密度を上げるには、粉末状や粒状のものが好ましい。
【0018】
この際、粉末状あるいは粒状の活性炭の粉粒径としては、1〜150ミクロンが好ましく、より好ましくは1〜100ミクロンである。また、シート基材上に形成されたガス吸着層に使用される活性炭としては特に1〜30ミクロンの範囲がよい。粒径が1ミクロン未満の活性炭では、飛散や凝着など取り扱い性が悪く、他方150ミクロンより大きい活性炭では、ガス吸着性シートの薄層化が困難であり、また当該シートからの活性炭の剥離を招くおそれがある。
【0019】
本発明に用いられる活性炭の比表面積は、800m2/g以上が好ましく、1,000m2/g以上がより好ましい。活性炭の比表面積が800m2/gより小さいと、オゾンの除去性能が低下するおそれがあるからである。
【0020】
本発明においてガス吸着層中に含まれる活性炭量は5〜50g/m2が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、7g/m2以上であり、さらに好ましくは10g/m2以上である。他方上限としては、45g/m2以下であり、さらに好ましくは40g/m2以下である。5g/m2未満の場合は、十分なオゾン除去性能が得られず、他方50g/m2を越える場合は、ガス吸着用シートの厚みが厚くなるため加工性が悪くなり、またハニカム形状に加工した場合に開口率が小さくなって通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題を生ずるおそれがある。
【0021】
本発明においてガス吸着用シートに含まれる活性炭の全含有量は、ガス吸着用シートに対して10〜80wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、20wt%以上である。他方上限値としては、70wt%以下である。活性炭の含有率が10wt%未満の場合、オゾン除去に機能する活性炭量が不足するためオゾン除去が十分にはなされない。一方80wt%を越える場合、ガス吸着用シートの強度が低下し、加工性が悪くなることがある。
【0022】
本発明に用いられるアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、それぞれアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含有する無機又は有機化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属類の水酸化物;酸化物;炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、こはく酸、フタル酸、フタル酸水素などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。またアルカリ土類金属化合物としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;酸化物;炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などの水溶性の塩;ハロゲン化物などが挙げられる。使用に当たってはこれらのアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の一種または二種以上が使用できる。アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物は、液状として使用してもよいし、ペースト状として使用してもよい。
【0023】
本発明においてガス吸着層中のアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の添加量は、ガス吸着層中の活性炭に対して10〜100wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、15wt%以上であり、より好ましくは20wt%以上である。他方上限値としては、95wt%以下であり、より好ましくは90wt%以下である。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量が10wt%より少ないとオゾン除去効果が小さくなるという問題があり、100wt%より多いと、オゾン除去性能は上がるが難燃性に劣るという問題がある。
【0024】
本発明おいてガス吸着用シートに含まれるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の全含有量は、ガス吸着用シートに対して5〜60wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、7wt%以上であり、より好ましくは10wt%である。他方上限値としては、55wt%以下であり、より好ましくは50wt%以下である。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の含有量が5wt%より少ないと、オゾン除去効果が低いという問題があり、60wt%より多いと、難燃性に劣るという問題がある。
【0025】
本発明においてガス吸着層に用いられる難燃剤は難溶性難燃剤であることが必要であり、例えばメタリン酸アルミニウム、リン酸メラミン、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系の難溶性難燃剤が使用できる。本発明においては、これらの難燃剤を一種または二種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明においてガス吸着層中の難燃剤の添加量は、ガス吸着層中の活性炭に対して30〜130wt%であることが好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、35wt%以上であり、より好ましくは40wt%以上である。他方上限値としては、125wt%以下であり、より好ましくは120wt%以下である。難燃剤の含有量が30wt%より少ないと、十分な難燃効果が得られず、ULの定める規格を満足することができないという問題があり、130wt%より多いと活性炭上のオゾン分割活性点が減少するため、ガス吸着用シートのオゾン除去性能が低下するという問題がある。
【0027】
本発明においてガス吸着用シートに含まれる難燃剤の全含有量は、ガス吸着用シートに対して5〜60wt%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限値としては、7wt%以上であり、より好ましくは10wt%である。他方上限値としては、55wt%以下であり、より好ましくは50wt%以下である。難燃剤の含有量が5wt%より少ないと、十分な難燃効果が得られず、ULの定める規格を満足することができないという問題があり、60wt%より多いと、活性炭上のオゾン分割活性点が減少するため、ガス吸着用シートのオゾン除去性能が低下するという問題がある。
【0028】
本発明に用いられるシート基材の素材は、例えば抄紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの樹脂フィルム;アルミ箔や銅箔、ステンレス鋼などの金属シートが使用できる。抄紙の原料としては、レーヨンやポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の短繊維又は木材系パルプやマニラ麻パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アクリルパルプ、アラミドパルプなどのフィブリル化できる繊維が挙げられる。シート基材の強度を上げるために、ポリビニルアルコール繊維やポリオレフィン系繊維、セラミック繊維、ガラス繊維などを支持繊維として使用してもよい。
【0029】
本発明に用いられるシート基材の厚みは、0.01〜0.1mmであることが好ましい。シート基材の厚みが0.01mm未満の場合には、ハニカム形状への折り込み加工の際の強度が不十分となり、シート基材の厚みが0.1mmを越える場合には、結局ガス吸着シート全体の厚みが大きくなり、ハニカム形状のフィルターにした際の圧力損失が大きくなり、また、ガス吸着剤の目付が不十分となる。
【0030】
本発明において、シート基材が難燃剤を含有していてもよい。シート基材が難燃剤を含有するとガス吸着用シート全体の難燃性が向上し、ガス吸着層の難燃剤量が低減でき、ガス吸着層のオゾン分解剤の存在比率が増加し、更に高いオゾン吸着性能が維持できる。シート基材中の難燃剤は、難溶性難燃剤であればより好ましい。
【0031】
本発明おいて、難燃剤をシート基材中に含有させるには、シート基材の製造過程でそれら物質を添加しておけばよい。例えばシート基材として抄紙を用いるときは、短繊維及びフィブリル化した繊維の抄紙時に難溶性難燃剤を混合した後、一般的に知られている湿式抄紙法によって抄造しシート基材とすればよい。このとき、当該物質と繊維との結合を高めるために、ポリアクリルアミドや脱アセチル化キチンなどの抄紙助剤を使用してもよい。また樹脂フィルムをシート基材として用いるときは、当該樹脂を製造する工程あるいは当該樹脂をシート化する工程において難溶性難燃剤どシート基材中に添加しておきたい物質を添加しておけばよい。
【0032】
本発明において、シート基材上のガス吸着層の形成には、コーター法、グラビア法など公知のコーティング方法が使用できる。具体的には、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤を接着剤及び必要により増粘剤と共に混合しペースト状とした後、コーター法、グラビア法などによってシート基材上に塗布しガス吸着層を形成する。シート基材の両側面にガス吸着層を形成する場合は、片側面にガス吸着層を形成する上記処理を両側面において施せばよい。図1(a)乃至(b)にシート基材の両側面にガス吸着層を形成した本発明に係るガス吸着用シートの好適態様例を示す。
【0033】
本発明において、ガス吸着層の層厚がガス吸着用シートの40〜90%であることが好ましい。ガス吸着層の層厚が40%未満の場合、高いオゾン分解性能を維持する事ができず、他方層厚が90%を越える場合は、層強度が強くなりガス吸着シートにしなやかさがなくなる。このためハニカム成型加工時にシート割れが起きやすくなる。
【0034】
本発明においてガス吸着用シートの厚さは、0.02〜0.3mmが好ましく、より好ましくは0.03mm〜0.25mmである。0.02mmより薄いとオゾン除去、難燃性の効果が小さく、0.3mmより厚いとシートが厚くなり、ハニカム形状にシートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0035】
本発明において、ガス吸着用シートの目付は、10〜150g/m2が好ましい。より好ましくは20〜100g/m2である。当該シートが10g/m2より軽いとオゾン除去、難燃性の効果が小さく、150g/m2より重いとシートが厚くなり、ハニカム形状にシートを加工した場合に開口率が小さくなって、通過する空気の圧力損失が大きくなるといった問題が起こるおそれがある。
【0036】
本発明のガス吸着用シートをハニカム形状とするには、従来公知の加工方法を用いることができる。なお本発明においてハニカム形状とは、断面が六画形状のものの他、四角、正弦波形、ロール形のものなど中空多角柱、円柱などの中空柱体が連続したものをいう。例えば、ガス吸着用シートを正弦波形のハニカム形状とするには、まずガス吸着用シートを賦形ロールに通して波形に賦形し、波形の当該ガス吸着用シートの片面または両面に平らなシートを接合する。これを積層化して正弦波形のハニカム形状のフィルタとする。ここで、波形の頂点に接着剤を付けて固定するのが普通であるが、波形のガス吸着用シートを積層するとその間にある平らなシートは必然的に固定されるので、必ずしも接着剤を付ける必要はない。なお、接着剤を付ける場合はシートの吸着能を損なわないものを使用する必要がある。接着剤としては例えば、コーンスターチに若干の合成のりを混ぜたものが好適に使用できる。図2を参照して、オゾン除去性能を高めるためには、波形のガス吸着用シートの接着ピッチを小さくし、山高さを低くするとよい。好適範囲としては、ピッチ幅は0.5〜8mm、ピッチ高は0.4〜5mmである。
【0037】
本発明の空気清浄用フィルターの開口率は、シートの厚みやピッチ、山の高さを調整することによって制御することができ、好適範囲としては50〜90%である。開口率が50%未満の場合、通過する流体の圧力損失が大きくなり、90%を越える場合は、強度面で耐久性が落ちるおそれがある。
【0038】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例および比較例に記載された「部」は重量部を、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0039】
(実施例1)
レーヨン(1.5d×5mm)45部、ポリエステル45部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄紙機で抄紙(目付18g/m2、厚さ0.07mm)を製造した。
【0040】
このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびメタリン酸アルミニウムを重量比で2:1:2の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付88g/m2、厚さ0.16mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の56%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率58%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.6mmAq、初期オゾン除去率97%、300時間後オゾン除去率91%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0041】
[評価方法]
(圧力損失)
ハニカム形状のフィルタを直径65mm、厚さ15mmに切断し、直径65mmのガラスカラムにセットする。風速1m/secの条件でフィルタの圧力損失を測定した。なお、圧力測定はマノスターゲージを用いて測定した。
【0042】
(オゾン除去率)
ハニカム形状のフィルタを直径65mm、厚さ15mmに切断し、直径65mmのガラスカラムにセットする。ここにオゾン濃度1PPMの空気を1m/secで通し、1回の通過でのオゾン除去率を測定する。なおオゾン濃度は紫外線吸収法オゾン濃度測定器で測定した。測定条件は、温度25±2℃、湿度50±5%である。
【0043】
(難燃性評価法)
ULで定めるUL94V試験法に基づいて評価した(Standard for Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.Vertical Burning Test ;94V-0,94V-1,94V-2)。UL94試験法に定められた有炎燃焼時間、無炎燃焼時間から燃焼性のグレードを求め、定められた基準に達しないものは難燃性を不合格とした。
【0044】
(実施例2)
実施例1のシート基材に粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびリン酸メラミンを重量比で2:1:1.8の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付88g/m2、厚さ0.16mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の58%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率65%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.6mmAq、初期オゾン除去率97%、300時間後オゾン除去率90%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0045】
(実施例3)
レーヨン(0.7d×5mm)45部、ポリエステル45部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄紙機で抄紙(目付12g/m2、厚さ0.05mm)を製造した。
【0046】
このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびメタリン酸アルミニウムを重量比で2:1:2の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付82g/m2、厚さ0.14mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の79%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率63%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.5mmAq、初期オゾン除去率97%、100時間後オゾン除去率91%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0047】
(実施例4)
メタリン酸アルミニウム30部、濾水度が30度に叩解されたマニラ麻パルプ40部、支持繊維として2d×5mmのポリエステル繊維20部、バインダーとしてのポリビニルアルコール10部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機でシート基材(目付18g/m2、厚さ0.08mm)を製造した。
【0048】
このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびメタリン酸アルミニウムを重量比で2:1:1.5の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付81g/m2、厚さ0.15mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の46%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率60%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを実施例1と同様の方法によって評価したところ、圧力損失1.6mmAq、初期オゾン除去率97%、300時間後オゾン除去率92%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−1の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0049】
(比較例1)
実施例1のシート基材に粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびリン酸グアニジンを重量比で2:1:1.5の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付85g/m2、厚さ0.15mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の53%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率67%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.6mmAq、初期オゾン除去率96%、300時間後オゾン除去率60%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0050】
(比較例2)
活性炭(平均粒径20ミクロン、比表面積1200m2/g)45部、叩解されたマニラ麻パルプ(濾水度30度)48部、バインダーとしてのポリビニルアルコール7部を混合してスラリーをつくり、これをヤンキー型湿式抄シート機で抄シート(目付26g/m2、厚さ0.12mm)を製造した。
【0051】
このシート基材の両側表面に、粉末活性炭(平均粒径10ミクロン、比表面積1200m2/g)、酢酸カリウムおよびメタリン酸アルミニウムを重量比で1:1:1.8の割合で混合し、さらにアルギン酸ナトリウムを加えて、ペースト状としてシート基材上にコート加工し、目付83g/m2、厚さ0.18mmのガス吸着用シートを製造した。シート基材上に形成されたガス吸着層の厚さは全体の33%であった。次に、コルゲート加工機を用いてガス吸着用シートをピッチ2.2mm、山高さ1.0mmの片段ボールシートに成形した。この片段ボールシートを70段に重ね、切断加工して層長15mm、開口率52%のハニカム形状のフィルタを得た。このフィルタを下記に示す方法によって評価したところ、圧力損失1.8mmAq、初期オゾン除去率96%、300時間後オゾン除去率78%であった。また片段ボールシートの難燃性は、UL94に基づく試験の結果、V−0の難燃性であった。結果をまとめて表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
ガス吸着層に、活性炭と、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、難溶性難燃剤とがそれぞれ含有されている実施例1乃至4のガス吸着用シートでは、300時間後であってもオゾン除去率が90%以上維持され、また難燃性評価は、V−0又はV−1と事務機器の部品として使用できるレベルのものであった。一方、活性炭とアルカリ金属化合物および水溶性難燃剤をシートに含有した比較例1のガス吸着用シートでは、当初のオゾン除去率こそ96%と高い値を示しているものの、水溶性難燃剤により活性炭の活性点が被覆され、300時間経過後では65%と急激にオゾン除去率が低下している。またシート基材中に活性炭を混合した比較例2は、オゾン分解剤量は実施例と同等であるが、ガス吸着層の層厚が40%未満であるため、300時間経過後のオゾン除去率が78%と低い値となっている。
【0054】
【発明の効果】
本発明のガス吸着用シートによれば、オゾンを初めとする人体に有害なガスを効率的に除去することができ、また当該シートは長期間使用しても性能が落ちない。しかもULの定める難燃性の基準を満足するので、事務用機器などに使用することができる。また当該ガス吸着用シートをハニカム形状とした空気清浄用フィルタによれば、人体に有害なガスを効率的に除去し、かつ圧力損失を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガス吸着層を形成した本発明のガス吸着用シートの断面概略図である。
【図2】本発明のガス吸着用シートを片段ボールシートとした断面概略図である。
【符号の説明】
1:シート基材
2:ガス吸着層
3:活性炭
4:アルカリ金属化合物
5:難燃剤
6:ガス吸着用シート
Claims (5)
- 活性炭と、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方と、リン系難溶性難燃剤とを含んでなることを特徴とするガス吸着用シート。
- 前記リン系難溶性難燃剤がメタリン酸アルミ及び/又はリン酸メラミンであることを特徴とする請求項1記載のガス吸着用シート。
- アルギン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のガス吸着用シート。
- シート基材の両面に、ガス吸着層を形成してなるガス吸着用シートであって、前記シート基材が難燃剤を含んでなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のガス吸着用シート。
- 請求項1〜4に記載のガス吸着用シートを、開口率が50〜90%のハニカム形状としてなることを特徴とする空気清浄用フィルタ。
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