JP3783819B2 - 空気浄化用フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、除塵機能と脱臭機能を有した空気浄化用フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、有害ガス、悪臭、粉塵汚染の問題の高まりとともに、空気清浄用フィルターとして除塵機能を有するフィルター、脱臭機能を有するフィルターを組み合わせて配置したものが要望されてきている。しかしながら、除塵フィルターと脱臭フィルターを分離させて別々に存在させる形状では、スペースの問題やコスト的に高価になりやすいといった問題があった。
【0003】
上記の問題を解決するために、除塵フィルターと脱臭フィルターを積層一体化したフィルターが種々提案されている。
【0004】
例えば、特開平4−74505には、エレクトレット化不織布を用いた除塵フィルターとラテックス中に粒状活性炭を分散させた脱臭フィルターをホットメルト接着剤により接着し、プリーツ形状に一体成型したフィルターが開示されている。しかし、本特許に開示されているエレクトレット化不織布はいわゆるスパンボンドタイプのエレクトレット不織布であり、かかるエレクトレット不織布では、集塵機能が不十分であり、また、早期に目詰まりが発生し、急激な圧損上昇を生じるため、脱臭シートの寿命が来る前にフィルター寿命を来してしまい、フィルター機能及び経済上問題のあるものであった。
【0005】
また、特開平7−265640には、エレクトレット繊維を起毛させ粉塵を3次元的に捕捉し目詰まりを生じにくくしたフィルターが開示されているが、本特許に開示されているエレクトレット繊維も、いわゆるスパンボンドタイプのエレクトレットフィルターであり、帯電率が低く充分満足できる集塵効率が得られなかった。
【0006】
上記の通り、十分な集塵効果を発揮し、且つ、フィルター寿命の長い複合機能(除塵及び脱臭)フィルターは、存在しないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通気性が良好で、優れた除塵性能が長期に亘って維持され、かつ、脱臭機能も優れた吸着性フィルター及び空気清浄用フィルターを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、平均粒子径60〜600μmの粒状活性炭を支持繊維に接着固定してなる脱臭シートと、エレクトレット繊維からなる不織布を主構成成分とする除塵シートとを積層してなる吸着性シートであって、前記脱臭シートの充填密度が0.15〜0.3g/ccであり、且つ、前記エレクトレット繊維がフィルムスプリット型エレクトレット繊維であることを特徴とする吸着性シートを提供するものである。
【0009】
本発明の吸着性シートの好ましい実施態様は、前記除塵シートの充填密度が0.01〜0.20g/ccである。
【0010】
本発明の吸着性シートの好ましい実施態様は、前記脱臭シートが、主に支持繊維と接着繊維からなる繊維層と、繊維層を形成する支持繊維と接着性繊維の連続した部分により粒状活性炭が接着固定されてなる活性炭層とが一体的に形成されてなるシートである。
【0011】
また、本発明は、上記の吸着性シートを、プリーツ状又は波状に成型されてなることを特徴とする空気浄化用フィルターを提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるフィルムスプリット型エレクトレット繊維の素材は、特に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系ポリマー、ポリ−4−メチル−1ペンテンなどのα−ポリオレフィン系ポリマー、テフロン等のフッ素系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルなどが好適に用いられる。
【0013】
本発明に用いられるフィルムスプリット型エレクトレット繊維の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、上記の樹脂から溶融押出しによりキャストフィルムを作製し、次いでこのフィルムを5〜10倍に縦あるいは横方向に延伸することにより延伸フィルムを形成した後、荷電によりエレクトレットフィルムとし、開繊カッターでスプリットして製造する。
なお、延伸フィルムの荷電は、コロナ放電、電界放電、電子線照射、摩擦帯電などの荷電法を単独又は組み合わせて用いることができる。
また、エレクトレットフィルムをスプリットする方法としては、針式カッター、ねじ式カッター、ブレード式カッターなどによる方法が用いられる。
【0014】
本発明に用いられるフィルムスプリット型のエレクトレット繊維の平均スプリット幅は、好ましくは10μm〜500μm、より好ましくは20μm〜300μm、最も好ましくは40μm〜200μmである。
【0015】
本発明に用いられるフィルムスプリット型のエレクトレット繊維のエレクトレットフィルムの厚さは3μm〜30μmが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるフィルムスプリット型のエレクトレット繊維の表面荷電密度はルースの式で示される最大表面電荷密度を有することが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0017】
本発明に用いられる除塵シート中のフィルムスプリット型エレクトレット繊維の下記式で求められる充填密度は、0.01〜0.1cc/ccが好ましい。o.1cc/ccを越える場合には、脱臭シートとの一体化工程での押圧のためさらに高密度となり、通気抵抗が高くなる。0.01cc/cc未満の場合には、安定した密度を維持するのが困難で、また強度面での取り扱いがも困難なものになる。
【0018】
なお、上記の充填密度は、下記の式で計算される。
充填密度(cc/cc)=(W×10−4)/(T×ρ)
但し、W:繊維層の目付(g/m2 )
T:繊維層の厚さ(cm)
ρ:繊維の密度(g/cc)
【0019】
本発明に用いられる除塵シート中のフィルムスプリット型エレクトレット繊維の目付は、5〜250g/m2 が好ましい。目付が5g/m2 未満の場合は、粉塵の捕集効率が低く、250g/m2 を越える場合には目詰まりを生じ易くなる。
【0020】
本発明に用いられるフィルムスプリット型エレクトレット繊維は、帯電性を向上するため添加剤を用いてもよい。ここで用いられる添加剤は特に限定されるものではなく、例えばリン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ソディウム2,2‘−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートのような樹脂改良剤、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,ビス(2’−メチル−4ヒドロキシ−5‘−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ポロピオネート〕、3,9−ビス〔2−{3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストリト−ルジホスファイト、エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルオスファイト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトのような抗酸化剤、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドのような重金属不活性剤、2−(2’−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3‘−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2‘−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルビキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β‘−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン〕ジエチル(混合)−1,2,3,4−ブタンテトラカルビキシレートのような光安定剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムのような脂肪酸金属塩などが好適に用いられる。
また、これらの添加剤の添加量は、添加剤の種類によっても異なるが、フィルムスプリット型エレクトレット繊維の重量に対して0.05〜5重量%の範囲が効果的である。
【0021】
本発明に用いられる除塵シートは、除塵効率の安定化、粉塵保持量の安定化、フィルムスプリット型エレクトレット繊維ケバ立ち防止等、フィルターとしての取り扱い性をさらに良好にするために、カバーファクターを付与することが好ましい。
【0022】
前記カバーファクターの形態としては、不織布、織物、ネット状基材等が好適に用いられる。
【0023】
前記カバーファクターを付与する方法としては、カバーファクターと前述のフィルムスプリット型エレクトレット繊維を主構成成分とする不織布とを、ニードルパンチ法やエアーパンチ法等の機械的交絡法により積層一体化すればよい。
【0024】
前記カバーファクターの素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、レーヨン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリクラール、ポリエチレン等が挙げられる。
【0025】
前記カバーファクターの目付は、低圧損、高粉塵除去率を可能な限り活かすためできるだけ低目付が好ましく、5g/m2 〜100g/m2 が好ましい。
【0026】
また、前記カバーファクターの中に熱融着繊維を混入して隣あう繊維と融着すれば、よりケバ立ちが抑制できさらに好ましい。
【0027】
この際の熱融着繊維の断面は丸断面、短形断面等の種々の形状が用いられる。熱融着繊維は単一成分の樹脂でもよく、複数成分からなるものであってもよい。多成分からなる熱融着繊維としては、サイドバイサイド構造やシースコア構造を有する断面形状が挙げられる。例えば、シースコア構造を有する繊維についてはシース部の方がコア部より溶融温度が低い樹脂を用いる。このような組合せとしては、例えば、シースをポリエチレンやエチレン酢ビ共重合物、コアをポリプロピレンとする組合せやシースを溶融温度の低い共重合ポリエステル、コアをポリエチレンテレフタレートとする組合せ等が挙げられる。このように溶融温度の異なる樹脂を組合せ、繊維の表面に溶融温度の低い繊維とすることで所定の温度において表面部分だけを溶融させ、内部の繊維の形状そのまま保持することができる。また、当然ながらこれら繊維層を複数層積層してもよい。
【0028】
本発明に用いられるフィルムスプリット型エレクトレット繊維を主構成成分とする不織布には、抗菌繊維、脱臭繊維、芳香繊維、難燃繊維、さらには、スパンボンドタイプやメルトブローンタイプのエレクトレットフィルター化された繊維もしくは不織布を繊維層の機能を失わない範囲で混合してもさしつかえない。
【0029】
本発明に用いられる除塵シートの充填密度は、0.01〜0.20g/ccが好ましく、0.02〜0.15g/ccであればより好ましい。0.20g/ccを越える場合には、通気抵抗が高くなり、粉塵保持量が低くなる。0.01g/cc未満の場合には、強度が弱く、取り扱い性が悪くなる。
【0030】
なお、除塵シートの充填密度とは、除塵シートを構成するフィルムスプリット型エレクトレット繊維やカバファクター、その他の添加剤の全てを含む充填密度をいい、下記式により計算される。
充填密度(g/cc)=除塵シートの目付(g/cm2 )/除塵シートの厚み(cm)
上記で、除塵シートの厚みは、吸着性シートに荷重180gf/cm2 の圧力を加えた時の吸着性シートの厚みと脱臭シートの厚みとの差として求める。
【0031】
本発明に用いられる脱臭シートは、平均粒子径60〜600μmの粒状活性炭を支持繊維に接着固定してなることが必要である。かかる粒状活性炭を支持繊維に接着固定してなることにより、低圧損と優れた脱臭効果を発現し得るからである。なお、粒状活性炭を支持繊維に固定するには、接着繊維等の接着剤により支持繊維と粒状活性炭を接着固定するのが好ましい。
【0032】
本発明に用いられる脱臭シートは、主に支持繊維と接着性繊維からなる繊維層と、繊維層を形成する支持繊維と接着性繊維の連続した部分により粒状活性炭が接着固定されてなる活性炭層とが一体的に形成されてなるシートであることが好ましい。かような繊維層を有することにより、粒状活性炭にふれずに折り曲げ加工等が可能となり、また、かような活性炭層を有することにより、粒状活性炭は脱臭シートに強固に一体的に固定され、折り曲げ加工時の粒状活性炭脱落が極めて生じ難くなるためである。
【0033】
本発明に用いられる脱臭シートは、さらに粒状活性炭が支持繊維により湿式接着固定されていればより好ましい。ここで、湿式接着固定とは、粒状活性炭、支持繊維、必要により接着性繊維を水中に分散させたスラリーから湿式抄紙することにより接着固定することをいう。このように、湿式接着固定すれば、本発明に用いられる脱臭シートは、溶融させた接着性繊維や接着剤の使用を最小限とし、粒状活性炭本来の脱臭性能を最大限に利用することを可能とすると同時に、吸着性シート全体の通気抵抗を低く維持することを可能とするからでる。
【0034】
本発明に用いられる脱臭シート含まれる粒状活性炭の平均粒子径は、通気性、吸着材の脱落、抄紙性等を考慮して、JIS標準ふるい(JIS Z8801)による値で平均60〜600μmであることが好ましく、100〜500μmであればより好ましい。平均粒子径が60μm未満の場合には、一定の高吸着容量を得るのに通気抵抗が大きくなりすぎ、また、同時にシート充填密度が高くなりやすく、粉塵供給時に早期の圧損上昇を引き起こす原因にもなる。平均粒子径が600μmを越える場合には、脱落が生じやすくなり、またワンパスでの初期吸着性能が極端に低くなり、更にはプリーツ形状及びハニカム状等の空気浄化用フィルターとしたときの折り曲げ、及び波状加工時の加工性が悪くなる。なお、上記の粒状活性炭は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
【0035】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる粒状活性炭の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系等が好適に用いられる。また、上記の粒状活性炭は、形状的には破砕炭、造粒炭、ビーズ炭等が好適に用いられる。
【0036】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる粒状活性炭のJIS K1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は、20重量%以上が好ましい。悪臭ガス等の無極性のガス状及び液状物質に対して高い吸着性能を必要とするためである。
【0037】
本発明に用いられる脱臭シート含まれる粒状活性炭は、極性物質の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。ガス薬品処理に用いられる薬品としては、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、p−アニシジン、スルファニル酸等のアミン系薬剤や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5.5−ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2.2−イミノジエタノール、2.2.2−ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2.2−イミノジエタノール塩酸塩、P―アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L−アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が好適に用いられる。なお、薬品処理は、例えば、粒状活性炭に薬品を担持させたり、添着することにより行う。また、活性炭に直接薬品を処理する以外に、シート面表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法やシート全体に含浸添着することも可能である。
【0038】
本発明に用いられる脱臭シートは、粒状活性炭を30〜80重量%含有することが好ましい。30重量%未満の場合には、良好な吸着性能が得られず、80重量%を越える場合には、脱臭シートの強度が低下する。
【0039】
本発明に用いられる脱臭シートは、支持繊維を5〜50重量%含有することが好ましい。5重量%未満では、抄紙性が悪くなり、50重量%を超える場合には、吸着効果が不良となる。
【0040】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる支持繊維の外表面積は、1m2 /g以下であることが好ましい。1m2 /gを越える場合には、通気性及び抄紙性が低下するためである。
なお、上記の支持繊維としては、フィブリル化した繊維、フィブリル化していない繊維の両者が用いられる。
【0041】
本発明に用いられる脱臭シート含まれる支持繊維の繊維長は、3〜20mmであることが好ましい。3mm未満の場合には、通気性が悪くなり、20mmを超える場合には、抄紙性やシートの地合が悪くなり、通気抵抗、吸着性能のバラツキが大きくなる。
【0042】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる支持繊維の比重は、0.8〜1.7g/ccであることが好ましい。比重が0.8g/cc未満の場合には、抄紙スラリー生成時に、支持繊維と粒状活性炭とが分離して形成されるため、表面層に支持繊維の緻密な層が形成され、通気抵抗が高くなり、また、支持繊維による粒状活性炭の固持が不十分となり、粒状活性炭の脱落が大きくなる。比重が1.7g/ccをこえる場合には、粒状活性炭(比重約1.8)との比重差が小さいため、表面層が形成されず、本来の目的を達成できない。また、上記の支持繊維としては、親水性のあるのものが好ましい。脱臭シートをより強固に形成するためである。
【0043】
本発明に用いられる脱臭シートの製造工程は、図1に例示した通り、予め活性炭、支持繊維、接着性繊維を水中に分散させスラリー状とし、これを長網式、短網式、円網式等の方法によって水分を除去し湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り、あるいは吸引後、回転乾燥ドラムにて接触乾燥する方法で脱臭シートの連続物を製造できる。また、スラリー中に高分子系、無機系の分散剤や凝集剤を適量添加して歩留まりを向上させることもできる。また、通気性のある穴のあいた金型や樹脂型に上記スラリーを流し込み、その後吸引、乾燥する方法でも本発明の脱臭シートを製造できる。また、支持繊維、接着性繊維を含む不織布ウェッブを予め作製しておき、この中に活性炭を分散させその後、熱風を吹き付ける方法でシート化する方法でも製造可能であるが、活性炭の均一分散性を考慮すると前述の水中に分散する工程を介して製造するのがより好ましい。
【0044】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる支持繊維の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリオレフィン等の合成繊維の他、リンター、木綿、麻、木材パルプ、レーヨン、ガラス繊維等が用いられる。好ましくは、木材パルプ、レーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドである。なお、繊維形状は同心円形でも異形断面でもよい。また倦縮のかかった繊維も使用できる。
【0045】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる接着性繊維は、水膨潤性繊維や熱溶融性繊維等、混抄時の接着成分(バインダー)となるものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン−ポリエチレン、ポリエステル複合繊維、ポリアミド複合繊維等が好適に用いられる。また、これらの繊維はシースコア構造でも、サイドバイサイド構造、あるいは倦縮のある繊維でもよい。
【0046】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる接着性繊維の比重は、0.8〜1.7g/ccであることが好ましい。抄紙スラリー生成後に、支持繊維の近傍に存在し、粒状活性炭含有シートの表面層及び裏面層の形態保持性を良好なものとするためである。
【0047】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる接着性繊維の繊維長は、1〜20mmであることが好ましい。1mm未満の場合には、通気性が悪くなり、20mmを超える場合には、抄紙性やシートの地合が悪くなり、通気抵抗、吸着性能のバラツキが大きくなる。
【0048】
本発明に用いられる脱臭シートに含まれる接着性繊維の混抄割合は、1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部であればより好ましい。1重量部未満の場合には、接着成分としての機能を発揮することができず、30重量部を超える場合には、吸着性が相対的に低下し、通気抵抗も上昇する。
【0049】
本発明に用いられる脱臭シートは、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は繊維類中に練り込んでも、後加工で添着、及び担持して付与してもよい。例えば、難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した脱臭シートを製造することが可能である。
【0050】
上記の付随的機能を有する成分は、粒状活性炭へ添着又は担持してもよい。但し、この際には、粒状活性炭本来の吸着機能を損なわないよう留意する必要がある。
また、繊維類に吸着性能を有する繊維、例えば、イオン交換繊維等を用いることにより、脱臭機能を強化することも可能である。
【0051】
本発明に用いられる脱臭シートの厚みは、0.3〜2.5mmが好ましい。通気性や加工性を良好にするためである。
【0052】
本発明に用いられる脱臭シートの坪量は、50g/m2 以上が好ましく、100g/m2 以上であればさらなる高吸着能化が実現でき、より官能的に除去効果が感じられるものとなるため好適である。
【0053】
本発明に用いられる脱臭シートの充填密度は、0.15〜0.3g/ccであれば好ましく、0.17〜0.25g/ccであればより好ましい。0.15g/cc未満の場合には、粉塵除去効率が低くなり、0.3g/ccを超える場合には、目詰まりにより早期の圧損上昇を引き起こし、フィルターとしては好ましくない。
このようなシート密度に調整するには、支持繊維中に繊維径15μm以上のものを適量混抄することにより、繊維と活性炭間に空隙を持たせることが容易となるためより好ましい。
【0054】
本発明に用いられる脱臭シートの使用法は支持繊維、接着性繊維からなる繊維層側を下流に配置するのがよい。なぜなら、所定の風圧を与えた場合に粒状活性炭の脱落を抑えることができるためである。また、シート厚み方向の充填密度を考えた場合、粗から密の状態を実現できているため、粉塵を上流側から負荷した場合にシート厚み方向に比較的まんべんなく粉塵が保持できるため早期の目詰まりによる圧損上昇がおこりにくくなる。
【0055】
本発明に用いられる除塵シートと脱臭シートとの一体化は、単純に重ね合わせるだけでもよく、また少量の接着剤の塗布、あるいは熱融着性を利用した接着法、たとえば、接着繊維を被接着体に吹きかける方法、接着性シートをシート間に挿入し接着する方法や、超音波により融着させ接着する方法、ニードルパンチ、エアーパンチ等の機械的交絡法を使用すればより強固に一体化できるため好ましい。いずれにしても、上流側に配置することになるので、風圧によりフィルムスプリット型エレクトレット繊維層が簡単にはがれることがない。このためあまり強固な一体化は不要である。なお、除塵シートと脱臭シートを一体化した本発明の吸着性シートの模式図を図1に示す。
【0056】
本発明の吸着性シートは、プリーツ状や波状に成型することによりフィルターユニット化が可能となる。この際のフィルター厚みはカーエアコン内部装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルタユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると適している。ひだ山頂点間隔は2〜30mm程度が適している。2mm以下ではひだ山間が密着しすぎでデッドスペースが多く、効率的にシートを活用できなくなる。一方、30mm以上ではシート展開面積が小さくなるためフィルター厚みに応じた除去効果を得ることができなくなる。
【0057】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
尚、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0058】
【実施例】
▲1▼JIS15種※)粉塵保持量
(線速30cm/s、供給濃度0.10g/m3 の条件下で測定)
粉塵に対する目詰まり度の代用特性。初期圧損から150Pa上昇したときを寿命と判断し、該時点において濾材に堆積した粉塵量を天秤で秤量した値である。
※)以下の混合粉体である。
JIS8種(平均約8μm、関東ローム) 72%
カーボンブラック(平均約0.1μm) 23%
コットンリンタ(直径約1.5μm) 5%
【0059】
▲2▼通気抵抗は線速30cm/sの条件下での値
【0060】
▲3▼粒子除去効率
0.3μmのNaCl粒子を用いて線速30cm/sにおいてフィルターの上下流の粒子濃度をそれぞれパーティクルカウンター(リオン製、KC−01C)で測定し、上流側の粒子濃度から下流側の粒子濃度を減じた値を上流側の粒子濃度で除した値の百分率で示した。
【0061】
▲4▼シート充填密度
シート充填密度(g/cc)=シート目付/シート厚み
[シート厚みは180gf/cm2 の荷重下での値]
【0062】
また、線速30cm/sの条件下で、補強シートの本体シートからのはがれ性、ケバ立ち具合も比較した。
【0063】
○除塵シートA
厚さ8.5μm、平均スプリット幅65μmのポリプロピレン製(ラウリン酸アルミニウム0.3%含有)エレクトレットフィルムスプリット繊維のみからなる目付30g/m2 のエレクトレットスプリット繊維層を作製した。この繊維層の通気抵抗は7Paと非常に低いにもかかわらず粒子除去効率は40%と非常に大きなものである。
【0064】
○除塵シートB
厚さ8.5μm、平均スプリット幅65μmのポリプロピレン製(ラウリン酸アルミニウム0.3%含有)エレクトレットフィルムスプリット繊維からなる目付30g/m2 のエレクトレットスプリット繊維層とシースが共重合ポリエステルでコアがポリエチレンテレフタレートからなる4デニールの熱融着繊維の目付10g/m2 とを積層し、次いでパンチ密度を50パンチ/inch2 でニードルパンチ加工を施し、その後120℃で30秒間熱風オーブン中で熱処理をしフィルムスプリット型エレクトレット繊維層Aを作製した。この繊維層の通気抵抗は8Paと非常に低いにもかかわらず粒子除去効率は40%と非常に大きなものである。
【0065】
○除塵シートC
厚さ8.5μm、平均スプリット幅65μmのポリプロピレン製(ラウリン酸アルミニウム0.3%含有)エレクトレットフィルムスプリット繊維からなる目付30g/m2 のエレクトレットスプリット繊維と4デニールのポリプロピレンからなる目付15g/m2 の乾式不織布をニードルパンチ加工しフィルムスプリット型エレクトレット繊維層B を作製した。この繊維層の通気抵抗は8Paと非常に低いにもかかわらず粒子除去効率は41%と非常に大きなものである。
【0066】
○脱臭シートA
平均粒径310μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が470mg/gである粒状活性炭を70重量部、8デニール×繊維長8mmのレーヨン繊維を10重量部、シースコア構造を有し鞘側が110℃の融点を有するポリエステル複合繊維8重量部、水熱溶融性繊維である1デニール×繊維長3mmのポリビニルアルコール6部、また、微粉末状のポリビニルアルコール6部とをパルパーで水中に分散し湿式抄紙用原液を調整した。これを長網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付350g/m2 、シート充填密度0.18g/ccの低充填密度脱臭シートを得た。このシートは抄紙スクリーン上で粒状活性炭とレーヨン(比重約1.5)、ポリビニルアルコール(比重約1.3)、ポリエステル(比重1.4)の比重差により、沈降速度の差異が生じ、その結果活性炭含有層(裏面層)と支持繊維及び接着性繊維からなる表面層を形成できた。このシートの通気抵抗を測定したところ30Paときわめて低く、トルエン吸着量はシート重量の33%もあり非常に高吸着能を有するシートである。またフィルターとして使用中に粒状活性炭の脱落もなく、取り扱い性に非常に優れたものである。更に、特筆すべきはJIS15種の粉塵負荷した場合に終圧に達するまでの圧損上昇が非常にゆるやかで目詰まりしにくく、最終的に40g/m2 もの粉塵を保持できるシートである。
【0067】
○脱臭シートB
平均粒径130μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が470mg/gである粒状活性炭を70重量部、8デニール×繊維長8mmのレーヨン繊維を10重量部、シースコア構造を有し鞘側が110℃の融点を有するポリエステル複合繊維8重量部、水熱溶融性繊維である1デニール×繊維長3mmのポリビニルアルコール6部、また、微粉末状のポリビニルアルコール6部とをパルパーで水中に分散し湿式抄紙用原液を調整した。これを長網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥し、目付170g/m2 、シート充填密度0.18g/ccの低充填密度脱臭シートを得た。このシートは抄紙スクリーン上で粒状活性炭とレーヨン(比重約1.5)、ポリビニルアルコール(比重約1.3)、ポリエステル(比重1.4)の比重差により、沈降速度の差異が生じ、その結果活性炭含有層(裏面層)と支持繊維及び接着性繊維からなる表面層を形成できた。このシートの通気抵抗を測定したところ32Paときわめて低く、トルエン吸着量はシート重量の33%もあり非常に高吸着能を有するシートにである。またフィルターとして使用中に粒状活性炭の脱落もなく、取り扱い性に非常に優れたものである。更に、特筆すべきはJIS15種の粉塵負荷した場合に終圧に達するまでの圧損上昇が非常にゆるやかで目詰まりしにくく、最終的に42g/m2 もの粉塵を保持できるシートである。
【0068】
(実施例1)
脱臭シートAの裏面層にASTM D2979で定められた25℃で950g/5mmφのプローブタックを有する繊維径50μmの接着剤4g/m2 を吹きかけた後、除塵シートAを重ねあわせた後、軽くプレスローラー間に挟み常温圧着し一体化し、除塵脱臭一体シートを作製した。このシートの除塵シート側は多少ケバ立ちを生じていたが、実用上問題になるものではなかった。
【0069】
(実施例2)
脱臭シートAの裏面層にASTM D2979で定められた25℃で950g/5mmφのプローブタックを有する繊維径50μmの接着剤4g/m2 を吹きかけた後、除塵シートBを重ねあわせた後、軽くプレスローラー間に挟み常温圧着し一体化し、除塵脱臭一体シートを作製した。このシートの両面ともケバ立ちはほとんどなく、取り扱い性に優れたものであった。特性面では通気抵抗は40Paと低いものでありながら粒子除去効率は39%と高除去率であるのはもちろんのこと、JIS15種の粉塵負荷した場合に終圧に達するまでの圧損上昇が非常にゆるやかで目詰まりしにくく、終圧に達するまでに50g/m2 もの粉塵を保持できた。また、このシートの実効果をより具体的に確認するためにフィルター正面サイズ200mm×180mm、フィルター厚み40mm、ひだ山頂点間隔8mmのプリーツ状に加工し(シート展開面積0.36m2 )、さらに端面固定用枠材を付けユニット化したものをカーエアコン内部に設置した。このユニットのJIS15種粉塵供給量は17gであった。場所の差あれ年あたりの自動車用フィルターの外気から流入する粉塵量は約10gといわれており、1.7年間有効ということができる。
【0070】
(実施例3)
脱臭シートB の裏面層に除塵シートCを重ねあわせた後、通常のニードルパンチ装置にてパンチ密度50パンチ/inch2 .でニードルパンチ加工を施し一体化した。ケバ立ち等の発生はほとんどなく性能面は実施例1と同様良好なものであった。特筆すべきは、このシート全体へのニードルパンチ加工により貫通した適度な通気孔を設けることができたため、脱臭シートとフィルムスプリット型エレクトレット繊維層の各々単独で測定した通気抵抗の積算値よりも小さくなり、より低圧損なものとなった。
【0071】
(比較例1)
直径20μm、目付30g/m2 のポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布をエレクトレット化し、エレクトレット繊維層を得た。このシートの通気抵抗は10Paと低いものであったが粒子除去効率はスパンボンドタイプであるため10%と低いものであった。また、JIS15種の粉塵を負荷した場合に早期に圧損上昇がおこり、最終的に10g/m2 しか粉塵を保持できないものであった。脱臭シートBの裏面層にASTM D2979で定められた25℃で950g/5mmφのプローブタックを有する繊維径50μmの接着剤4g/m2 を吹きかけた後、上記エレクトレット繊維層を重ねあわせた後、軽くプレスローラー間に挟み常温圧着し一体化し、除塵脱臭一体シートを作製した。通気抵抗は45Paと比較的低いものであったが、JIS15種の粉塵負荷した場合に終圧に達するまでの圧損上昇が非常にはやく目詰まりしやすく、終圧に達するまでに20g/m2 しか粉塵を保持できなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明に記載した脱臭シートとエレクトレットフィルターの組み合わせにより、通気性及び悪臭ガスに対する吸着性能に優れ、微粒子に対する除去効率に優れ、粉塵に対する目詰まりを生じ難く、更には取り扱い性や折り曲げ加工性も良好なものになる。特に本発明はカーエアコン搭載用、空調機器用、家電用空気清浄機等の使用下において優れた性能を発現することが可能であり、本発明の産業上の利用性は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る脱臭シートを長網式抄紙法によって製造する際の装置構成例を示す概略説明図である。
【図2】 本発明の空気清浄用シートの模式図である。
【符号の説明】
1 網状無端ベルト
2 粒状活性炭、支持繊維および接着成分を懸垂させた液を入れる容器
3.4 プレスロール
5 シート運搬用無端ベルト
6 回転式乾燥ドラム
7 巻取りロール
8 吸着性シート
Claims (4)
- 平均粒子径60〜600μmの粒状活性炭を支持繊維に接着固定してなる脱臭シートと、エレクトレット繊維からなるニードルパンチ加工を施した不織布を主構成成分とする除塵シートとを積層してなる吸着性シートであって、前記脱臭シートの充填密度が0.15〜0.3g/ccであり、且つ、前記エレクトレット繊維が幅10μm〜500μm、厚さ3μm〜30μmのフィルムスプリット型エレクトレット繊維であることを特徴とする吸着性シート。
- 前記除塵シートの充填密度が、0.01〜0.20g/ccであることを特徴とする請求項1に記載の吸着性シート。
- 前記脱臭シートが、主に支持繊維と接着繊維からなる繊維層と、繊維層を形成する支持繊維と接着性繊維の連続した部分により粒状活性炭が接着固定されてなる活性炭層とが一体的に形成されてなるシートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着性シート。
- 請求項1乃至請求項3いずれかに記載の吸着性シートを、プリーツ状又は波状に成型されてなることを特徴とする空気浄化用フィルター。
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