JP4662585B2 - 孔版印刷用油中水型エマルションインキ - Google Patents

孔版印刷用油中水型エマルションインキ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷用油中水型エマルションインキに関し、擦れによる色落ち(以後、指触乾燥性と云う)の少ない、また顔料や樹脂の凝集のない孔版印刷用油中水型エマルションインキに関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷方法は、周知のように孔版印刷原紙を用い、この原紙の穿孔部を介して原紙の一方の側より他方の側へインキを移動させることにより、紙などの被印刷物面に印刷を行なうものである。
近年、輪転孔版印刷機もマイクロコンピューター等による自動化が進み、操作も簡単になり、これに伴って孔版印刷の利用が増加している。しかし孔版印刷の乾燥は浸透乾燥と蒸発乾燥のみであり、また機上でインキが固化しないように反応性の樹脂が使用できないことから、これまで安定性及び定着性、指触乾燥性を改善するため種々の研究がなされてきた。
【0003】
例えば、特開昭61−255967号公報にはこれら特性改善のために固形の樹脂等を添加したエマルションインキが提案されている。また特開平5−117564号公報にはインキの定着性を向上させることを目的にゲル化剤を含む孔版印刷用エマルションインキが提案されている。更に特開平6−220382号公報には定着性を向上させるために水相に多量の疎水性樹脂を添加したエマルションインキが提案されている。
【0004】
また、近年、インキの人体に対する安全性の要求は高くなっている。芳香族成分を多く含有する溶解性の高いモーターオイルなどは臭気の問題があり、インキに使用される不揮発性オイルにおいても芳香族成分の少ないナフテン系あるいはパラフィン系のオイルを使用する必要が生じている。
【0005】
しかし、これらの従来の技術でモーターオイルを使用しない場合には樹脂を均一にインキ中に添加することが困難であり、顔料を紙表面に十分に固着できていなかったため指触乾燥性が得られなかった。また水相に疎水性樹脂を添加した物では水相の樹脂が多いためにインキが紙に転移した後、インキの粘度上昇が著しいことによる浸透性の低下および油相中のオイル、界面活性剤のために完全な皮膜が形成されずべとべと感がある等の問題がある。
【0006】
このように、指触乾燥性に優れ、低コストで臭気の少ないインキが望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の欠点を除去し、孔版印刷機において、指触乾燥性、分散安定性に優れ、芳香族成分の少なく、臭気の少ないオイルを使用した時でも樹脂の不均一部のない孔版印刷用油中水型エマルションインキを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、油相10〜90重量%および水相90〜10重量%によって構成される油中水型エマルションインキにおいて、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3万以上15万以下で、かつ0号ソルベントHに可溶性(トレランスが1.4g/g以上)の高分子量ロジン変性フェノール樹脂を含有することを特徴とする孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
また、本発明によれば、前記高分子量ロジン変性フェノール樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が、5.5万以上15万以下であることを特徴とする前記記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
また、本発明によれば、インキ中の高分子量ロジン変性フェノール樹脂の含有量が着色剤1重量部に対して0.3重量部以上であり、油相中の樹脂濃度が50重量%以下であることを特徴とする前記記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
また、本発明によれば、更に、アルキド樹脂を含有することを特徴とする前記記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
更に、本発明によれば、インキ中のアルキド樹脂の含有量が着色剤1重量部に対して0.05重量部以上であり、油相中の樹脂濃度が50重量%以下であることを特徴とする前記記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
更にまた、本発明によれば、粘度が10cSt(40℃下)以上で、かつ環分析による炭素分布における芳香族成分の炭素の含有量が15%CA以下の不揮発性の鉱物油を含有することを特徴とする前記記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキが提供される。
なお、本明細書において、不揮発性鉱物油の芳香族成分(CA)は環分析による炭素分布における芳香族成分の炭素の含有量を表し、単位を%CAで示す。
【0009】
即ち、本発明者は、前記目的を達成するため種々研究を行い、分子量がポリスチレン換算で3万以上15万以下、好ましくは5.5万以上15万以下で、かつ0号ソルベントHに可溶性の高分子量ロジン変性フェノール樹脂を含有させることにより指触乾燥性に優れ、また樹脂の均一性の高いインキが、臭気が少ないオイルを使用した場合でも得られること、さらにアルキド樹脂を含有させることにより、特にアルキド樹脂の含有量を顔料1重量部に対して0.05重量部以上であり油相中の樹脂濃度が50重量%以下とすることによりインキ中の顔料の分散安定性が良くなり指触乾燥性の効果がさらに向上することを見い出した。
また、樹脂をゲル化するとワニスの粘度が高くなり、製造効率が低下したり、ゲル化する時のゲル化剤が高価であるなどのコストが高くなるなどの問題があったが、上記構成により、樹脂をゲル化することなく指触乾燥性に優れた孔版印刷用油中水型エマルションインキが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキがこれらの効果を有する理由は定かではないが、高分子量のロジン変性フェノール樹脂を用いることにより乾燥時に該樹脂が複数の顔料に吸着し、顔料の凝集を強くしていることや、顔料に吸着した樹脂が紙にも吸着し、顔料の紙への固着に寄与していることが考えられる。しかし、分子量が高すぎると樹脂の溶解性が著しく低下し、溶剤に芳香族成分の含有量の多い溶剤が必要になる。芳香族成分が少なく、臭気が少ないパラフィン系あるいはナフテン系のオイルを使用しインキ化したときにはインキ内に樹脂の不均一が生じ、溶解した状態での樹脂のインキへの添加が困難になるなどの問題が生じる。この傾向は0号ソルベントHに対し溶解性を示さない溶解性が低い樹脂を使用した場合に見られ、インキ化したときにインキ内に樹脂の不均一部が生じる。これはインキ中に添加されている溶解能力の低い溶剤やオイルにより樹脂が相分離するためと考えられる。本発明においては、0号ソルベントHに溶解性を示す溶解性の高い樹脂を使用することにより、樹脂の相分離を防止しうるものと考えられる。
また、本発明において、アルキド樹脂の添加は、高分子量の樹脂を用いることにより起こる可能性のあるインキ中での顔料間の凝集を防止する作用をしているものと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の孔版印刷用油中水型エマルションの油相は、油成分、着色剤、着色剤分散剤、樹脂、乳化剤などから構成される。また水相は、水、電解質、防黴剤、水蒸発防止剤、水溶性高分子、水中油型樹脂エマルション(疎水性高分子)などから構成される。これらの構成成分は、エマルションの形成を阻害しない公知のものが使用される。
【0012】
本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキの油相について説明する。
該油相には、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3万以上15万以下、好ましくは5.5万以上15万以下で、かつ0号ソルベントHに可溶性(トレランスが1.4g/g以上)の高分子量ロジン変性フェノール樹脂を含有させる。
ロジン変性フェノール樹脂の該重量平均分子量が3万未満であると、複数の顔料への樹脂の吸着或いは顔料に吸着した樹脂の紙への吸着が不十分であり、十分な指触乾燥性が得られない。また15万を超えると溶解性が著しく低下し、芳香族成分を多量に含む溶剤が必要となる。
また、ロジン変性フェノール樹脂が0号ソルベントHに不溶性または難溶性(トレランスが1.4g/g未満)であると樹脂をインキに添加するのに芳香族成分の多い臭気のある溶剤が必要となる。
0号ソルベントHによるトレランスが5以上であると、ビヒクルに対する溶解性が良すぎて、顔料に樹脂が吸着しないため、指触乾燥性に関して十分な効果が得られない。
従って、0号ソルベントHによるトレランスは2以上5未満のものがより好ましい。
【0013】
本発明において0号ソルベントHとは、飽和分100%で構成される日本石油社製の無臭の溶剤である。
また、トレランスとは、樹脂と溶剤の相溶性の度合いを示すものであり、1gの樹脂に相溶可能な溶剤の重量(g)で表わす。
【0014】
油相に添加される分子量3万以上15万以下で、かつ0号ソルベントHに可溶性(トレランスが1.4g/g以上)の代表的なロジン変性フェノール樹脂としては、たとえば荒川化学社製のKG−836、KG−846、KG−1829、KG−1804、KG−1808−1、タマノル371、タマノル394などが挙げられる。
【0015】
本発明において、インキ中の重量平均分子量3万以上15万以下の高分子量ロジン変性フェノール樹脂の使用量は、印刷適正、指触乾燥性等から、顔料1重量部に対して0.3重量部以上、好ましくは0.4〜2.0重量部、より好ましくは0.5〜1.5重量部が適切である。
上記ロジン変性フェノール樹脂は単独で用いても良いが、顔料分散性、乳化適正を考慮し、他の樹脂及び他のロジン変性フェノール樹脂と併用しても良い。
樹脂としてはロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴムなどのゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;アルキド樹脂;重合ひまし油;等を1種または2種以上を混合して添加して良い。
【0016】
本発明において、特にアルキド樹脂を併用することが好ましい。
本発明に使用されるアルキド樹脂は油脂と多塩基酸と多価アルコールから構成される。油脂としてはヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまし油、米糠油、綿実油等のヨウ素価80以下の不乾性油あるいは半乾性油およびこれらの脂肪酸が挙げられるが、大豆油、アマニ油、キリ油等の乾性油もアルキド樹脂のヨウ素価が80以下となる範囲においては一部使用しても良い。
上記多塩基酸としては無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸等の飽和多塩基酸、およびマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和多塩基酸が使用できる。
また上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビット等が使用できる。
アルキド樹脂の油長は油脂中の脂肪酸がトリグリセライドで存在したときの樹脂中の重量%で示される。アルキド樹脂は分散安定性、および皮膜形成による版胴スクリーンの目詰まり等の問題から、油長60〜90、ヨウ素価80以下であることが好ましい。アルキド樹脂の分子量は好ましくは3万未満、より好ましくは1万以下のものが好ましい。
【0017】
また油相中の全樹脂の使用量は、インキのコスト及び印刷適正から、油相の50重量%以下、好ましくは2〜50重量%、より好ましくは2〜24重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。樹脂の使用量が少ない場合、指触乾燥性の効果が得られなく、また使用量が多すぎると、インキの粘度が高くなり、ドラム後端からインキが漏れるなどの印刷適正の問題が生じる。
【0018】
本発明で用いられる着色剤はカーボンブラック、酸化チタン;アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、建染染料系顔料、媒染染料系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料及び天然染料系顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料;等が挙げられる。これらの染顔料類は、単独でも2種以上混合して添加しても良い。その使用量はインキ重量の2〜10重量%である。
【0019】
本発明に使用される油成分は、例えば石油系溶剤、流動パラフィン、スピンドル油、マシン油、鉱物油;あまに油、トール油、とうもろこし油、オリーブ油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油等の植物油等が使用される。これらは芳香族成分の少ないものが望ましい。
また、本発明においては合成油も使用できる。
石油系溶剤としてはエクソン社のアイソパーシリーズ(C,E,G,H,L,Mなど)及びエクソール(D−30,D−40,D−80,D−110,D−130など)、日本石油社のAFソルベントシリーズ(4号、5号、6号、7号)、モービル石油社のジェンレックスシリーズ(55、56、57)等が挙げられる。これらの溶剤は揮発性がある。
【0020】
また、鉱物油としては、粘度が10cSt(40℃下)以上でかつ環分析による炭素分布における芳香族成分の炭素の含有量が15%CA以下のパラフィン系あるいはナフテン系の不揮発性の鉱物油が好ましい。その具体例としては日本石油社の日石スーパーオイルシリーズ(B,C,D,Eなど)及びモービル石油社のガーゴイルアークティックシリーズ(1010,1022,1032,1046,1068,1100)、ガーゴイルアークティックオイルシリーズ(ライト、Cヘビー,155、300IDなど)及びモービルバキュオリンエキストラヘビー、モービルDTEエキストラヘビー、サン石油のサンパーオイルシリーズ(110、115、120、130、150、2100、2280など)およびサンセンオイルシリーズ(310、410、415、420、430、450、380、480、3125、4130、4240)、出光石油のダイアナプロセスオイルシリーズ(PX−32、PX−90、PW−32、PW−90、PW−380、PS−32、PS−90、PS−430、NS−100、NM−280、NP−24など)などが挙げられる。そして、これらの油は単独でも2種類以上混合して使用しても良い。
【0021】
本発明で用いられる乳化剤は、好ましくは非イオン界面活性剤であり、たとえば、ソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジグリセリド及び、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸等の酸化エチレン付加物等があげられ、単独であるいはこれらのHLBの異なる物を2種類以上を組み合わせて安定性の高いエマルションを調製することができる。添加量は通常インキ重量の0.5〜15重量%、好ましくは2〜5.5重量%である。
【0022】
以上のほか、油相にはエマルションの形成を阻害しない範囲でその他の樹脂、着色剤の分散剤、および酸化防止剤等を添加することができる。
【0023】
カーボンブラック等着色剤の着色剤分散剤としてはエマルションの形成を阻害しない物が使用でき、前記の乳化剤用非イオン性界面活性剤を使用することができる。
このほか、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン−無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、及びアルキド樹脂、など顔料分散能を有する樹脂なども挙げられる。
これらの分散剤は単独または2種類以上混合して添加すれば良く、樹脂以外の着色剤分散剤の添加量は着色剤重量の40重量%以下、好ましくは2〜35重量%とすれば良い。アルキド樹脂は高分子量の樹脂を添加するときに顔料の分散安定性に特に効果があるが、アルキド樹脂を単独または他の分散剤と併用して使用する場合の樹脂の添加量は顔料1に対して0.05以上であることが好ましい。
【0024】
油相に添加される酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等であり、これらの添加によって油相中のバインダー樹脂等の酸化を防ぎ、これによってインキの粘度の上昇等が防止される。また、その添加量はインキ中の油の2重量%以下、好ましくは0.1〜1.0重量%である。なお酸化防止剤は単独でも2種類以上を混合して使っても良い。
【0025】
次に本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキの水相について説明する。
該水相に添加される水溶性高分子は、保湿や増粘のために添加されるものであり、具体的には下記の天然または合成高分子が添加される。
水溶性高分子としては具体的には下記の天然または合成高分子が添加される。
例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の天然高分子;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等の半合成高分子;アクリル酸樹脂およびポリアクリル酸ナトリウムなどの中和物、ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリN−アルキル置換アクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体及びこれらをアルキル基で部分的に疎水した高分子、またアクリルアミド系ポリマーおよびアクリル系のポリマーに関しては置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマーでも良い。またポリエチレンとポリプロピレンまたはポリブチレンのブロックコポリマーも用いることができる。
これらの水溶性高分子は単独でも2種類以上混合しても良く、インキに含まれる水の25重量%以下、好ましくは0.5〜15重量%が添加される。
【0026】
水相に添加される水中油型樹脂エマルションは、合成高分子でも天然高分子でもよい。
合成高分子としてはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等が挙げられる。天然のものとしては油相に添加できる前記高分子等が挙げられる。これらは油中水型エマルションインキの安定性を阻害しない範囲であれば2種類以上を併用してもよく、また分散方法も分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成した物でも良い。
【0027】
水相に添加される防腐・防かび剤は、エマルション内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、エマルションインキを長期保存する場合は通常添加される。
その添加量は、インキ中に含まれる水の3重量%以下、好ましくは0.1〜1.2重量%とするのが良い。また防腐・防かび剤としてはサリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物およびその塩素化合物のほか、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物とピリジン系化合物の混合物、ソルビン酸やデヒドロ酢酸等が使用され、これらは単独でも2種類以上混合して使っても良い。
【0028】
水の蒸発防止剤と凍結防止剤は兼用可能であり、これらの目的で添加される物質としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級飽和一価アルコール;グリセリンやソルビトール等の多価アルコール;等が挙げられる。
これらの物質は1種または2種以上を添加すれば良く、その添加量はインキ中の水重量の15重量%以下、好ましくは4〜12重量%である。
【0029】
水相に添加されるpH調整剤は、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン等であり、必要時にはこれらのpH調整剤を添加して水相のpHを6〜8に保つことができる。水相のpHが前記範囲からはずれると、増粘剤用水溶性高分子が添加されている場合にはその効果が損なわれる等の問題がある。
【0030】
水相に添加される電解質はエマルションインキの安定性を高めるために添加されるものである。従って、該電解質にはエマルションの安定度向上に有効な離液順列が高いイオンで構成された電解質を添加するのが良い。
離液順列の高い陰イオンは、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等であり、離液順列が高い陽イオンはアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンであることから、ここで添加される電解質としては少なくとも陰イオンか陽イオンの一方が前記イオンよりなる塩が好ましい。
このような電解質としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等が好ましい。またその添加量は水相の0.1から2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0031】
また、本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキ中には滲み防止、あるいは粘度調整のために体質顔料も添加できる。
インキ中に添加される体質顔料としては白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等の無機微粒子およびポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、等の有機微粒子またはこれらの共重合体からなる微粒子が挙げられる。
具体的な例としてはアエロジル200、アエロジルR972等(日本アエロジル社)、NEW D ORBEN(白石工業社)、BEN−GEL、S−BEN、ORGANITEなど(豊川洋行社)、TIXOGELシリーズ(VP、DS、GB、VG、EZ−100など)、OPTIGEL(日産ガードラー社)などが挙げられる。
これらは油相、水相または両相に添加しても良い。その添加量はインキに対して0.01〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0032】
上記のほか、本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキには、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離を良くするため、或いは印刷用紙の巻き上がり防止のために油相にワックスを添加することができる。また、水相にはトリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等を添加して、水溶性高分子添加による高粘度化を更に増進させることができる。さらに、水相に防錆剤を添加して印刷の際に印刷機がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用インキに添加されている公知品を必要に応じて添加すれば良く、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。
【0033】
本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキは、従来のエマルションインキの製造と同様にして油相及び水相液を調整し、この両相を公知の乳化機内で乳化させて製造することができる。すなわち、着色剤、乳化剤及び必要に応じて添加される樹脂等の添加物を良く分散させた油相を常温で調整し、これに防腐・防かび剤や水溶性高分子等が必要に応じて添加されている水溶液からなる水相を徐々に添加して乳化すれば良い。
インキの粘度は撹拌条件によっても調節可能であるが、ずり速度20s-1の時の粘度が10〜35Pa・sであればよい。
また、油相に顔料、樹脂、体質顔料などを添加した時のずり速度20s-1の油相の粘度は0.05〜20Pa・s、好ましくは0.1〜3Pa・sであることが望ましい。
【0034】
【実施例】
次に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に記す部は重量部である。
〈孔版印刷用油中水型エマルションインキの製造〉
実施例及び比較例に示した各成分を用い、先ず、着色剤、オイル、顔料分散剤を、3本ロールで練肉することにより顔料分散体を調整した。この顔料分散体に乳化用界面活性剤、オイルと樹脂等のワニスを加え油相とし、これに水、凍結防止剤、抗菌剤、電解質あるいは水溶性樹脂などからなる水相を加え乳化することにより孔版印刷用エマルジョンインキとした。
尚、使用したアルキド樹脂はヤシ油76部、ペンタエリスリット7部、イソフタル酸17部から合成した。
また、日石0号ソルベントHの性状を下記に示す。
Figure 0004662585
【0035】
実施例及び比較例で用いた樹脂の分子量と0号ソルベントHに対する溶解性を表1に示す。
【表1】
Figure 0004662585
【0036】
Figure 0004662585
【0037】
Figure 0004662585
【0038】
Figure 0004662585
【0039】
Figure 0004662585
【0040】
Figure 0004662585
【0041】
Figure 0004662585
【0042】
Figure 0004662585
【0043】
Figure 0004662585
【0044】
Figure 0004662585
【0045】
Figure 0004662585
【0046】
Figure 0004662585
【0047】
Figure 0004662585
【0048】
Figure 0004662585
【0049】
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【0050】
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【0051】
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【0052】
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【0053】
Figure 0004662585
【0054】
Figure 0004662585
【0055】
比較例6
分子量が15万を越えるロジン変性フェノール樹脂としてタマノル387(荒川化学)を用いたが、この樹脂は0号ソルベントHに対する溶解性がなく適正なワニス及びインキが得られなかった。
【0056】
〈エマルションインキの評価〉
これらのインキを用い、市販の(株)リコー製孔版印刷機(プリポートVT3500)で十分印刷を行ってインキを印刷機内にいきわたらせた後、印刷した。
この際の印刷物の印刷濃度は反射式光学濃度計(マクベス社製RD914)によって測定した。
▲1▼ 指触乾燥性
指触乾燥性は印刷部分を布を取り付けたクロックメーターで10往復/10秒で擦り布の汚れ具合を比較して求めた。布の汚れが多い物を指触乾燥性1とし、特に優れるものを5として5段階で評価した。
▲2▼ 着色剤の凝集の有無(着色剤凝集)
着色剤の凝集の有無は顕微鏡観察と色調の変化により行い、凝集のない物を5、凝集したものを1として5段階で評価した。
▲3▼ 樹脂の凝集の有無(樹脂凝集)
樹脂の凝集の有無はインキ化したときに系が均一な物を○、不均一部の程度の小さい物を△、不均一部が存在するものを×として評価した。
これらの結果を表2にまとめて示した。
尚、表2中の樹脂の「T」はタマノルの略称である。
【0057】
【表2】
Figure 0004662585
【0058】
上記表2の実施例と比較例の結果から、請求項1の分子量3万以上15万以下でかつ0号ソルベントHに溶解性をもつ高分子量ロジン変性フェノール樹脂を使用したエマルションインキは性能が優れていることが明らかである。
また、実施例1と実施例3、4、6の結果から、請求項2の分子量5.5万以上15万の以下のロジン変性フェノール樹脂を用いることによる、指触乾燥性、着色剤の分散安定性の向上の効果が明らかである。
また、実施例7と9の結果から、請求項3のロジン変性フェノール樹脂を、着色剤1重量部に対して0.3重量部以上用いることによる指触乾燥性向上効果が明らかである。
また、実施例2と4、5の結果から、請求項4のアルキド樹脂を用いることによる指触乾燥性、着色剤の分散安定性の向上効果が明らかである。
更に、実施例5と6の結果から、請求項5の該アルキド樹脂の添加量を、着色剤1重量部に対して0.05重量部以上にすることにより更に効果が向上することが明らかである。
実施例1〜14の全ての結果から、請求項6の芳香族成分の少ない不揮発性オイルの使用が可能であることが明らかになった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の孔版印刷用油中水型エマルジョンインキは、前記高分子量ロジン変性フェノール樹脂を含有させることにより分散安定性及び指触乾燥性に優れ、また、更にアルキド樹脂を含有させることにより顔料分散安定性にさらに優れると云う効果を有する。
更に、本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキは、芳香族成分の少ない不揮発性の鉱物油を用いることができるため、臭気に対して優れる(臭気がない)と云う効果を有する。

Claims (5)

  1. 油相10〜90重量%および水相90〜10重量%によって構成される油中水型エマルションインキにおいて、ポリスチレン換算の重量平均分子量が4万以上10万以下で、かつ0号ソルベントH(商品名)に可溶性(トレランスが1.4g/g以上)の高分子量ロジン変性フェノール樹脂を含有し、ゲル化剤を含有しないことを特徴とする孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
  2. インキ中の高分子量ロジン変性フェノール樹脂の含有量が、着色剤1重量部に対して0.3重量部以上であり、油相中の樹脂濃度が50重量%以下である請求項1に記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
  3. アルキド樹脂を含有する請求項1又は2に記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
  4. インキ中のアルキド樹脂の含有量が、着色剤1重量部に対して0.05重量部以上であり、油相中の樹脂濃度が50重量%以下である請求項3に記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
  5. 粘度が10cSt(40℃下)以上で、かつ環分析による炭素分布における芳香族成分の炭素の含有量が15%C以下の不揮発性の鉱物油を含有する請求項1から4のいずれかに記載の孔版印刷用油中水型エマルションインキ。
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