以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
A:第1の実施形態
従来の鍵盤楽器は、鍵と楽音の音高とが1対1で対応しており、いずれかの鍵を押鍵すると該鍵に対応した音高の楽音が出力される構成となっていたため、出力される楽音の音高の数だけ鍵が設けられた構成となっていた。従って、鍵盤楽器の演奏の練習を始めたばかりの初心者は、多数の鍵と楽音との対応関係を覚える必要があり、これは、演奏が上達するまでに長時間を要することとなる原因の一つとなっていた。これに対し、本実施形態に係る演奏練習装置は、楽曲中の楽音の音高等に関わらず、演奏者による運指が所定の条件を満たしていれば(例えば、実際の演奏者による運指と予め設定された運指とが一致していれば)、楽音が出力される構成となっている。従って、従来の鍵盤楽器のように、多数の鍵と楽音との対応関係を覚えることなく、予め設定された運指通りに指を動かすことによって楽曲の演奏を行うことができる。このように、本実施形態に係る演奏練習装置によれば、演奏の練習を始めたばかりの初心者であっても容易に演奏を行うことができるのである。
A−1:第1の実施形態の構成
図1は、本発明の第1の実施形態である演奏練習装置1の外観を表す平面図である。同図に示すように、この演奏練習装置1は、本体10、左手演奏部11、右手演奏部12、左手運指表示部13および右手運指表示部14により構成されている。
左手演奏部11は、鍵11a、11b、11c、11dおよび11eにより構成され、右手演奏部12は、鍵12a、12b、12c、12dおよび12eにより構成されている。そして、これらの各鍵は、通常の鍵盤楽器の鍵と同様に、演奏者が指によって押鍵できるようになっている。ここで、本実施形態においては、左手演奏部11を構成する各鍵は左手の各指に、右手演奏部12を構成する各鍵は右手の各指に、それぞれ対応した構成となっている。具体的には、左手演奏部11のうち、鍵11aは左手の小指に、鍵11bは左手の薬指に、鍵11cは左手の中指に、鍵11dは左手の人差し指に、鍵11eは左手の親指に、それぞれ対応している。同様に、右手演奏部12のうち、鍵12aは右手の親指に、鍵12bは右手の人差し指に、鍵12cは右手の中指に、鍵12dは右手の薬指に、鍵12eは右手の小指に、それぞれ対応している。
また、左手運指表示部13および右手運指表示部14は、それぞれ5個のLED(発光部)を備えている。そして、図1に示すように、左手運指表示部13に含まれる5個のLEDは、左手演奏部11に含まれる5個の鍵に対応した位置にそれぞれ配設され、右手運指表示部14に含まれる5個のLEDは、右手演奏部12に含まれる5個の鍵に対応した位置にそれぞれ配設されている。そして、いずれかのLEDを点灯させることにより、演奏者に対していずれかの鍵を指示することができるようになっている。
ここで、上述したように、本実施形態においては、各鍵と各指とが1対1で対応した構成となっているため、いずれかのLEDを点灯させることにより、押鍵すべき鍵を指示するとともに、押鍵を行うべき指を指示することができるようになっている。そして、本実施形態においては、LEDの点灯によって指示された鍵(すなわち、押鍵を行うべき指)と、実際に演奏者が押鍵した鍵(すなわち、実際に押鍵を行った指)とが所定の条件を満たす場合に、楽曲中の何等かの楽音が出力される。この所定の条件は、後述する演奏モードによって異なるものであるが、例えば、LEDの点灯によって指示された鍵と、実際に押鍵された鍵とが一致した場合、すなわち、演奏者による運指が、予め設定された運指と一致した場合に楽音が出力される(後述する運指一致モード)、といった具合になっている。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る演奏練習装置1の制御システムについて説明する。同図に示すように、この演奏練習装置1の制御システムは、CPU101、ROM102、RAM103、外部記憶装置104、操作部105、音源106、スピーカ107、LEDドライバ108、鍵駆動部109および押鍵検出部110により構成されている。これらの各部は、演奏練習装置1の本体に埋設された構成としてもよいし、演奏練習装置1とは別個の箱体内に設けられた構成としてもよい。
CPU101は、バス111を介して接続された各部、すなわち、ROM102、RAM103、外部記憶装置104、操作部105、音源106、LEDドライバ108、鍵駆動部109および押鍵検出部110との間で各種情報の授受を行い、この演奏練習装置1の制御中枢として機能する。ROM102は、このCPU101によって実行される各種制御プログラムを記憶している。RAM103は、CPU101によって主記憶として使用されるとともに、後述する楽曲データを記憶する記憶エリアや、後述する各種フラグおよびレジスタがセットされる記憶エリアを有している。
外部記憶装置104は、楽曲データ等の楽曲演奏に関する情報を記憶した磁気記憶媒体やCD−ROMなどと、これらからデータを読み取る読取装置とにより構成されている。この外部記憶装置104に記憶されている楽曲データは、CPU101からの指示に応答して読み出され、RAM103にロードされるようになっている。
ここで、楽曲1曲分の楽曲データは、図3(a)および(b)に例示するように、右手によって演奏すべきパート(以下、「右手パート」という)の演奏に関する情報を含んだ右手用楽曲データと、左手によって演奏すべきパート(以下、「左手パート」という)の演奏に関する情報を含んだ左手用楽曲データとにより構成されている。そして、右手用楽曲データおよび左手用楽曲データは、演奏動作を指示するためのイベントデータと、これらのイベントデータ間の時間間隔を表す時間データとを含んで構成されている。ここで、このイベントデータには、ノートオン(note on)イベント、ノートオフ(note off)イベントおよびキープレッシャー(key pressure)イベントの3種類がある。
ノートオンイベントは、楽音の発生を指示するためのイベントデータであり、図3(a)および(b)に示すように、発生する楽音を指定するためのノートナンバと、該楽音の強さを指定するためのベロシティとを含んでいる。なお、従来の鍵盤楽器においてはノートナンバと鍵とが1対1に対応した構成となっていたが、本実施形態においては、ノートナンバと鍵とが1対1に対応していない。すなわち、いずれか1の鍵が押鍵されると、通常の鍵盤楽器において出力可能な楽音(例えば88種類の楽音)のうちのいずれかの楽音が出力されるようになっているのである。
ノートオフイベントは、上記ノートオンイベントによって発生した楽音の消音を指示するためのイベントデータであり、消音すべき楽音を指示するためのノートナンバと、ベロシティとを含んでいる。ただし、ノートオフイベントデータは楽音の消音を指示するためのデータであるから、ベロシティはデフォルト値である「64」となっている。なお、以下の説明においては、ノートオンイベントおよびノートオフイベントを総称して「演奏イベント」という。
また、キープレッシャーイベントは、押鍵を行うべき指を指定するための運指データを含んでいる。ここで、各運指データは「1」から「5」までのいずれかの番号(指番号)を含んでおり、この指番号によりいずれかの指を特定するようになっている。すなわち、親指は「1」、人差し指は「2」、…、といった具合である。なお、本実施形態においては、演奏者の各指と各鍵とは、各々1対1で対応しているから、上記運指データは、押鍵を行うべき指を指定するとともに、押鍵すべき鍵を指定することにもなる。そして、本実施形態においては、キープレッシャーイベント中の運指データによって指定された鍵に対応して設けられたLEDが点灯し、これにより、演奏者に対して、押鍵すべき鍵(=押鍵を行うべき指)を報知するようになっている。
なお、本実施形態においては、キープレッシャーイベントを読み出すタイミングが、該キープレッシャーイベントに対応する楽音の発生を指示するためのノートオンイベントを読み出すタイミングよりも所定時間(図3(a)および(b)に示す例においては「6」)だけ早くなるように楽曲データ中の時間データが設定されている。すなわち、実際に押鍵して楽音を出力すべきタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングでLEDを予告点灯させるようになっている。
CPU101は、楽曲データ中の時間データによって指定されるタイミング、またはいずれかの鍵が押鍵されたタイミングでこれらのイベントデータを読み出し、演奏イベントは音源106または鍵駆動部109に、キープレッシャーイベントはLEDドライバ108または鍵駆動部109に、といった具合に、各イベントデータの種類に応じた宛先に送信する。以上が本実施形態において用いられる楽曲データの構成である。
次に、図2において、操作部105(教習モード選択手段)は、演奏者が演奏動作の開始を指示するためのスタートスイッチ、演奏動作の終了を指示するためのストップスイッチ、および後述する各種演奏モードを選択するためのモード選択キー等の他、各種スイッチおよび操作子等を備えており、ユーザによる操作に対応した信号をCPU101に対して送信する。
音源106は、CPU101によって供給される演奏イベントに従って楽音信号の生成等を行う手段である。具体的には、CPU101によってノートオンイベントを供給された場合には、該ノートオンイベントに含まれるノートナンバおよびベロシティに対応した楽音信号を生成して出力する。一方、CPU101によってノートオフイベントを供給された場合、音源106は、該ノートオフイベントに含まれるノートナンバによって指定される楽音の生成を停止する。なお、本実施形態における音源106は、CPU101によって指示される複数の打楽器音を出力できるようになっている(後述する打楽器モード)。この音源106から出力された信号は、図示しないアンプによって増幅され、スピーカ107から出力される。なお、スピーカ107の代わりにヘッドフォンを設けた構成としてもよい。
LEDドライバ108は、左手運指表示部13および右手運指表示部14に含まれるLEDのうちのいずれかを点灯させるための手段である。すなわち、LEDドライバ108は、CPU101によってキープレッシャーイベントが供給されると、複数のLEDのうち、該キープレッシャーイベント中の運指データによって指定される鍵に対応したLEDを点灯させるようになっている。このように、CPU101、LEDドライバ108および複数のLEDにより、特許請求の範囲における「報知手段」が構成されている。
鍵駆動部109は、演奏モードが後述する鍵駆動モードに設定されている場合に、CPU101によって供給されるキープレッシャーイベント中の運指データによって指定される鍵を公知の手法によって駆動するための手段である。すなわち、鍵駆動部109は、CPU101によって指定された鍵を押鍵された状態に駆動したり、または押鍵された鍵を解放された状態に駆動したりすることができるようになっている。押鍵検出部110は、演奏者によっていずれかの鍵が押鍵されると、その旨および押鍵または解放された鍵を表す信号をCPU101に対して出力する。
以上が本実施形態である演奏練習装置の構成である。
A−2:演奏モード
次に、本実施形態において演奏時に選択可能な演奏モードについて説明する。
本実施形態においては、楽曲の自動演奏を行う自動演奏モードと、演奏者が楽曲の練習を行うための練習モードとが用意されており、演奏者は、操作部105のモード選択キーを操作することによりこれらの各モードを選択的に切換えることができるようになっている。さらに、本実施形態においては、左手パートと右手パートとについて、それぞれ別個のモードを設定することができるようになっている。例えば、左手パートについては自動演奏モードによって自動演奏を行うとともに、右手パートについては練習モードによって演奏練習を行う、といった具合である。
また、本実施形態においては、上述した練習モードとして、a.運指一致モード、b.運指方向一致モード、c.エニーキーモード、d.鍵駆動モード、およびe.打楽器モードの5つのモードのうちのいずれかのモードを選択できるようになっている。これらの各モードは、全て特許請求の範囲における「教習モード」に含まれる概念である。以下、各モードについて説明する。
a.運指一致モード
この運指一致モードにおいては、キープレッシャーイベント中の運指データによって指定される鍵と、実際に演奏者によって押鍵された鍵とが完全に一致した場合にのみ楽音が出力される。すなわち、楽曲データによって指定される運指と、演奏者による実際の運指とが一致した場合にのみ楽音が出力される。
b.運指方向一致モード
この運指方向一致モードにおいては、運指データによって前回指定された鍵(以下、「前回の鍵」という)に対して、運指データによって今回指定された鍵と、実際に演奏者によって押鍵された鍵とが、鍵が配列された方向(図1中のx軸方向)において同じ方向(x軸の正の方向または負の方向)にある場合に楽音が出力されるようになっている。例えば、前回の鍵が鍵12cであり、今回押下すべき鍵が鍵12aである場合、今回押鍵すべき鍵12aは、前回の鍵12cに対してx軸の負の方向に位置する。従って、該前回の鍵12cに対してx軸の負の方向に位置する鍵が押鍵された場合、つまり、鍵12aまたは鍵12bが押鍵された場合には、楽曲中の該時点における楽音が出力される。
この運指方向一致モードについて別の表現をすれば、前回押鍵を行うべきであった指に対して、運指データによって今回指定された指と、実際に押鍵を行った指とが、手のなかにおいて同じ側にある場合に楽音が出力される、ということもできる。すなわち、上述の例において、前回押鍵を行うべきであった指は右手の中指であり、今回押鍵を行うべき指は右手の親指である。ここで、右手の甲側から見た場合、親指は、中指に対して左側に位置する。従って、中指に対して左側(親指側)にある指、つまり親指または人差し指によって押鍵が行われた場合には、楽曲中の該時点における楽音が出力される。
c.エニーキーモード
このエニーキーモードにおいては、いずれの鍵が押鍵された場合であっても、すなわち、いずれの指で押鍵が行われた場合であっても楽音が出力されるようになっている。
d.鍵駆動モード
この鍵駆動モードにおいては、キープレッシャーイベント中の運指データによって指定される鍵が、押鍵または解放された状態に自動的に駆動されるとともに、このモードに設定されたパートについて自動演奏が行われるようになっている。すなわち、楽曲演奏の進行に伴って鍵の駆動が行われる点で、上記自動演奏モードとは異なる。演奏者は、この鍵駆動を見て運指を覚えたり、各鍵に対応した位置に各指を配置し、鍵の駆動に合わせて指を動かす、といった練習を行うことができる。なお、以下では、この鍵駆動モードにおける演奏、すなわち、自動演奏とともに鍵駆動が行われる演奏を、「模範演奏」という。
e.打楽器モード
本実施形態に係る演奏練習装置においては、操作部105に対して所定の操作を行うことにより、各鍵に対して、打楽器音を割当てることができるようになっている。すなわち、例えば、右手の親指に対応する鍵には大太鼓の音を割当て、人差し指にはシンバルの音を割当て、……、といった具合である。そして、演奏モードが打楽器モードに設定されている場合には、楽曲の進行の如何に関わらず、いずれかの鍵が押鍵されると、該鍵に割当てられた打楽器音が出力されるようになっている。なお、この打楽器モードにおいては、押鍵すべき鍵(=押鍵を行うべき指)を演奏者に対して指示する必要はないから、LEDの点灯は行われない。
以上が本実施形態における演奏モードである。上述した自動演奏モード、および練習モードとして選択可能な上記各モードは、特許請求の範囲における「教習モード」に相当する。また、特許請求の範囲における「教習手段」とは、上記各モードにおいて演奏の教習を行うための手段あり、本実施形態においては、CPU101、ROM102、音源106、LEDドライバ108、鍵駆動部109および押鍵検出部110により実現されるようになっている。
A−3:フラグおよびレジスタ
次に、RAM103にセットされる各種フラグおよびレジスタについて説明する。
RAM103には、スタートフラグSF、パートフラグPFおよび練習モードフラグPM(R)ならびに(L)と、レジスタAD(R)およびAD(L)、DU(R)およびDU(L)、ADG(R)およびADG(L)ならびにDUG(R)およびDUG(L)とが、それぞれ設定されるようになっている。なお、これらのフラグまたはレジスタについて、「(R)」が付されているものは右手パートについてのレジスタまたはフラグを、「(L)」が付されているものは左手パートについてのレジスタまたはフラグを、それぞれ表す。
まず、スタートフラグSFは、演奏動作を行うか否かを表すフラグであり、後述するスタート/ストップ処理において、操作部105のスタートスイッチが押鍵された場合には“1”が、ストップスイッチが押鍵された場合には“0”が、それぞれセットされる。
パートフラグPFは、右手パートおよび左手パートが、それぞれ練習モードおよび自動演奏モードのうちのいずれに設定されているのかを示すフラグである。具体的には、右手パートが練習モード、左手パートが自動演奏モードに設定されている場合にはパートフラグPFに“0”がセットされ、左手パートが練習モード、右手パートが自動演奏モードに設定されている場合にはパートフラグPFに“1”がセットされ、右手パート、左手パートともに練習モードに設定されている場合にはパートフラグPFに“2”がセットされるようになっている。
練習モードフラグPM(R)およびPM(L)は、それぞれ、右手パートまたは左手パートのいずれかまたは両方が練習パートに設定されている場合に、上述した各モードのうちのいずれのモードが練習モードとして選択されているのかを示すフラグである。具体的には、運指一致モードに設定されている場合には、練習モードフラグPM(RまたはL)に“0”がセットされ、運指方向一致モードに設定されている場合には練習モードフラグPM(RまたはL)に“1”がセットされ、エニーキーモードに設定されている場合には練習モードフラグPM(RまたはL)に“2”がセットされ、鍵駆動モードに設定されている場合には練習モードフラグPM(RまたはL)に“3”がセットされ、打楽器モードに設定されている場合には練習モードフラグPM(RまたはL)に“4”がセットされるようになっている。
次に、上述した各種レジスタについて説明する。これらのレジスタは、経過時間を計時するために用いられるレジスタDU(R)およびDU(L)、ならびにDUG(R)およびDUG(L)と、RAM103内のアドレスを記憶するために用いられるレジスタAD(R)およびAD(L)、ならびにADG(R)およびADG(L)とに分けることができる。
レジスタDU(R)には、右手用楽曲データ中の各演奏イベント間の時間間隔がセットされる。すなわち、図3(a)の例においては、楽曲の演奏開始直後には、楽曲データの最初から最初の演奏イベントまでの時間間隔「10(4+6)」がセットされ、以後、順次「12」、「14(8+6)」、…、といった具合に各値がセットされる。同様に、レジスタDU(L)には、左手用楽曲データ中の各演奏イベント間の時間間隔(図3(b)の例においては「18(12+6)」、「32」、「8(2+6)」、…)がセットされる。
また、レジスタDUG(R)には、右手用楽曲データ中の各キープレッシャーイベント間の時間間隔がセットされる。すなわち、図3(a)の例においては、楽曲の演奏開始直後には、楽曲データの最初から最初のキープレッシャーイベントまでの時間間隔「4」がセットされ、以後、「26(6+12+8)」、…、といった具合に各値がセットされる。また、レジスタDUG(L)には、左手用楽曲データ中の各キープレッシャーイベント間の時間間隔(図3(b)の例においては「12」、「40(6+32+2)」、…)がセットされる。
レジスタAD(R)には、右手用楽曲データ中の各演奏イベントが格納されたRAM103内のアドレスが、上記レジスタDU(R)にセットされた時間によって指定されるタイミングで順次セットされる。すなわち、図3(a)の例においては、アドレス「R4」、「R6」、「R10」、…、といった具合に順次セットされる。同様に、レジスタAD(L)には、左手用楽曲データ中の次の演奏イベントが格納されたRAM103内のアドレス(「L4」、「L6」、「L10」…)が順次セットされる。
また、ADG(R)には、右手用楽曲データ中の各キープレッシャーイベントが格納されたRAM103内のアドレスが順次セットされる。すなわち、図3(a)の例においては、「R2」、「R8」、…、といった具合に順次セットされる。同様に、レジスタADG(L)には、左手用楽曲データ中の次のキープレッシャーイベントが格納されたRAM103内のアドレス(「L2」、「L8」、…)が順次セットされる。
以上が本実施形態において用いられるフラグおよびレジスタである。
A−4:実施形態の動作
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、図4に示すフローチャートを参照して、本実施形態において実行される処理のメインルーチンについて説明する。なお、以下に説明する各処理は、CPU101がROM102内に格納された各種プログラムに従って実行するようになっている。
まず、該演奏練習装置1の電源が投入されると、CPU101は初期設定処理を行う(ステップS10)。この初期設定処理において、CPU101は、上述した各種レジスタおよびフラグ等の初期化を行う。この初期化処理が終了すると、CPU101は、図5に示すスタート/ストップ処理を行う(ステップS20)。このスタート/ストップ処理においては、操作部105のスタートスイッチまたはストップスイッチが押下された場合に、上記各レジスタのセット等の処理が行われる(詳細は後述)。
このスタート/ストップ処理が終了すると、CPU101は、図7に示す鍵盤処理を行う(ステップS30)。この鍵盤処理においては、いずれかの鍵が押鍵または解放された場合に、設定された演奏モードに応じた発音処理(図8(a)〜(e))または消音のための処理が行われる(詳細は後述)。この鍵盤処理が終了すると、CPU101は、パネル処理を行う(ステップS40)。このパネル処理においては、操作部105における各種スイッチの状態を検出するとともに、各スイッチの状態に対応して上述した各種フラグのセットを行う。パネル処理が終了すると、CPU101はその他の処理(ステップS50)を行った後、再び鍵盤処理を行う。以後、CPU101は、上述した鍵盤処理からその他の処理に至るまでの処理(ステップS20〜S50)を、演奏練習装置1の電源が切断されるまで繰り返す。
さらに、CPU101は、上述したメインルーチンの他、一定時間間隔毎に、図6に示す割込処理を行う。この割込処理においては、自動演奏モードに設定されているパートの自動演奏処理や、LED点灯のための処理等が行われる。
ここで、図5に示すフローチャートを参照して、上述したスタート/ストップ処理について詳述する。
スタート/ストップ処理を開始すると、CPU101は、操作部105のスタートスイッチがオンされたか否かの判断を行う(ステップS201)。この判断の結果、スタートスイッチがオンされたと判断した場合には、CPU101は、スタートフラグSFに“1”をセットするとともに(ステップS202)、データセット処理を行う(ステップS203)。
このデータセット処理において、CPU101は、まず外部記憶装置104内の読出装置に対して楽曲データの読み出しを指示する。そして、CPU101は、この指示に応答して読み出された楽曲データをRAM103内の所定の記憶エリアに書き込む。さらに、CPU101は、レジスタDU(RおよびL)に、楽曲データ中の最初のノートオンイベントを読み出すまでの時間を、レジスタDUG(RまたはL)に、楽曲データ中の最初のキープレッシャーイベントを読み出すまでの時間をそれぞれセットする。図3(a)および(b)に示す例において、各レジスタにセットされる具体的な値は、DU(R)=10、DU(L)=18、DUG(R)=4、DUG(L)=12、となる。
このようなデータセット処理が終了した場合、または、上述した判断(ステップS201)の結果、スタートスイッチがオンされていないと判断した場合、CPU101は、操作部105のストップスイッチがオンされたか否かを判断する(ステップS204)。ここで、ストップスイッチがオンされたと判断した場合、CPU101は、スタートフラグSFに“0”をセットして(ステップS205)、該スタート/ステップ処理を終了する。これに対し、上述した判断の結果、ストップスイッチがオンされていないと判断した場合には、スタートフラグSFの値を変更する必要がないので、そのままスタート/ストップ処理を終了する。
次に、図6ないし図8に示すフローチャートを参照して、上述した割込処理および鍵盤処理等において行われる詳細な処理について説明する。なお、以下の説明においては、左手パートが自動演奏パートに、右手パートが練習モードに設定されている場合を例に説明を進める。また、以下では、右手パートが、(1)運指一致モード、(2)運指方向一致モード、(3)エニーキーモード、(4)鍵駆動モード、および(5)打楽器モード、の各モードに設定されている場合に分けて説明を進める。
(1)左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指一致モードに設定されている場合(パートフラグPF=0、練習モードフラグPM(R)=0)
上述したように、CPU101は、一定時間間隔(例えば、演奏者が操作部105を操作することによって設定されたテンポに応じた時間間隔)毎に割込処理を行う。図6は、この割込処理を示すフローチャートである。
割込処理を開始すると、CPU101は、まず、スタートフラグSFが“1”であるか否かを判断する(ステップS101)。上述したように、スタートフラグSFは、演奏動作の開始指示が与えられた場合に“1”がセットされるようになっている。従って、この判断の結果、スタートフラグSFが“1”でないと判断した場合、すなわち、演奏動作が開始されていない場合には、以下の処理を行う必要がないから、直ちに割込処理を終了する。
これに対し、スタートフラグSFが“1”であると判断した場合には、演奏動作の開始が指示されていることを意味している。この場合、CPU101は、レジスタDU(L)、DU(R)、DUG(L)およびDUG(R)にセットされた値を、それぞれ「1」ずつデクリメントする(ステップS102)。
次にCPU1は、パートフラグPFが“0”、“1”および“2”のうちのいずれの値であるかを判断する(ステップS103)。すなわち、右手パートおよび左手パートが、それぞれ練習モードおよび自動演奏モードのいずれに設定されているのかを判断する。
いま、パートフラグPFには“0”がセットされている。この場合、CPU101は、ステップS104〜S114までの処理、すなわち、処理a.左手パートの自動演奏処理、処理b.右手パートのLED点灯処理、ならびに処理c.右手パートに関するレジスタのセット等、を行う。以下、これらの各処理について説明する。
処理a.左手パートの自動演奏処理
左手パートの自動演奏処理においては、レジスタDU(L)にセットされた時間が「0」となったタイミングで左手用楽曲データ中の演奏イベントをRAM103から読み出して音源106に出力する、といった自動演奏のための処理が行われる。具体的には、以下の通りである。
CPU101は、まず、上述したレジスタDU(L)のデクリメント(ステップS102)の結果、該レジスタDU(L)の値が「0」となったか否かを判断する(ステップS104)。上述したように、このレジスタDU(L)には、左手用楽曲データ中の演奏イベント間の時間がセットされる。従って、上記判断においてレジスタDU(L)の値が「0」でないと判断した場合には、まだ左手用楽曲データ中の演奏イベントを読み出すタイミングではないことを意味しているから、以下の処理(ステップS105およびS106)は行われない。これに対し、レジスタDU(L)の値が「0」であると判断した場合には、左手用楽曲データ中の演奏イベントを読み出すタイミングが到来したことを意味しているから、左手パートの演奏に関する処理を行う。すなわち、CPU101は、該時点においてレジスタAD(L)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントの次の演奏イベントが格納されたアドレスをレジスタAD(L)にセットする。ただし、楽曲演奏開始後、最初にレジスタDU(L)の値が「0」となった際には、左手用楽曲データ中の最初の演奏イベントが格納されたアドレスをレジスタAD(L)にセットする。また、CPU101は、該演奏イベントを読み出すまでの時間を、レジスタDU(L)にセットする(ステップS105)。
次に、CPU101は、上記ステップS105において新たにレジスタAD(L)セットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出し、音源106に出力する(ステップS106)。
一方、CPU101から演奏イベントを供給された音源106は、該演奏イベントに従って楽音信号の生成および出力または楽音信号の出力の停止等の動作を行う。このようにして、左手パートの自動演奏が順次進行される。
処理b.LED点灯処理(ステップS107〜S110)
上述した処理aが終了すると、CPU101は、右手パートのLED点灯処理を開始する。このLED点灯処理においては、レジスタDUG(R)にセットされた時間が「0」となった場合に、キープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される鍵に対応したLED15を点灯させるための処理が行われる。
この処理bが開始されると、CPU101は、上述したデクリメント(ステップS102)の結果、該レジスタDUG(R)の値が「0」となったか否かを判断する(ステップS107)。上述したように、レジスタDUG(R)には、右手用楽曲データ中の各キープレッシャーイベント間の時間がセットされる。従って、この判断の結果、レジスタDUG(R)の値が「0」でないと判断した場合には、まだLEDの点灯タイミングではないことを意味しているから、直ちに処理bを終了し、後述する処理cに移行する。これに対し、レジスタDUG(R)の値が「0」であると判断した場合には、いずれかのLED15の点灯タイミングが到来したことを意味しているから、CPU101は、ステップS108に示す処理を行う。
すなわち、CPU101は、キープレッシャーイベントが格納されたアドレスを、レジスタADG(R)にセットする。具体的には、該時点においてレジスタADG(R)にセットされたアドレスに格納されたキープレッシャーイベントの次のキープレッシャーイベントが格納されたアドレスを、レジスタADG(R)にセットする。ただし、楽曲演奏開始後、最初にレジスタDUG(R)の値が「0」となった際には、最初のキープレッシャーイベントが格納されたアドレスをレジスタADG(R)にセットする。さらに、CPU101は、新たにレジスタADG(R)にセットされたアドレスに格納されたキープレッシャーイベントを読み出すまでの時間を、レジスタDUG(R)にセットする(ステップS108)。
次に、CPU101は、練習モードフラグPM(R)が“4”であるか否かを判断する(ステップS109)。ここで、練習モードフラグPM(R)は“0”にセットされている。従って、CPU101は、上記ステップS108においてレジスタADG(R)に新たにセットされたアドレスに格納されたキープレッシャーイベントをRAM103から読み出してLEDドライバ108に出力する(ステップS110)。これにより、処理bが終了する。
ここで、LEDドライバ108は、右手運指表示部14に含まれるLEDのうち、CPU101から受け取ったキープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される鍵に対応したLEDを点灯させる。さらにLEDドライバ108は、該LEDを点灯させてから一定時間が経過すると、点灯したLEDを消灯させる。このような処理が行われることにより、打楽器モード以外の演奏モードにおいて、楽曲データ中のキープレッシャーイベントによって指定される鍵(すなわち、押鍵を行うべき指)が、演奏者に対して報知されることとなる。なお、LEDを消灯させるタイミングは、点灯時から一定時間経過後に限らず、例えば、次のキープレッシャーイベントを受け取ったタイミングで消灯させる構成としてもよいし、あるいは、楽曲データ中のノートオフイベントを受け取ったタイミングで消灯させる構成としてもよい。
処理c.右手パートについてのレジスタのセット等(ステップS111〜S114)
上述した処理bが終了すると、CPU101は、レジスタDU(R)にセットされた時間が「0」となったタイミングで右手パートについてのレジスタのセットを行う。詳述すると、以下の通りである。
まず、CPU101は、上述したレジスタDU(R)のデクリメント(ステップS102)の結果、該レジスタDU(R)の値が「0」となったか否かを判断する(ステップS111)。上述したように、このレジスタDU(R)には、右手用楽曲データ中の各演奏イベント間の時間がセットされる。従って、上記判断の結果、レジスタDU(R)の値が「0」でないと判断した場合には、まだ、右手パートのレジスタのセットおよび模範演奏のための処理のタイミングが到来していないことを意味しているから、以下の処理(ステップS112〜S114)を行うことなく処理cを終了するとともに、割込処理を終了する。
これに対し、レジスタDU(R)の値が「0」であると判断した場合には、右手パートの演奏に関するレジスタのセットを行うタイミングが到来したことを意味している。この場合、CPU101は、該時点においてレジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントの次の演奏イベントが格納されたアドレスを、レジスタAD(R)にセットする。ただし、楽曲演奏開始後、最初にレジスタDUG(R)の値が「0」となった場合には、最初の演奏イベントが格納されたアドレスをレジスタAD(R)にセットする。さらに、CPU101は、新たにレジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントを読み出すまでの時間を、レジスタDU(R)にセットする(ステップS112)。
次に、CPU101は、練習モードフラグPM(R)に“3”がセットされているか否かを判断する(ステップS113)。ここで、上述したように、右手パートは運指一致モードに設定されている(PM(R)=0)から、CPU101は、ステップS114の処理(詳細は後述)を行うことなく処理cを終了するとともに、割込処理を終了する。
次に、図7ないし図8に示すフローチャートを参照して、上述したメインルーチンにおいて実行される鍵盤処理について説明する。この鍵盤処理が開始されると、CPU101は、まず、前回の鍵盤処理において解放されていた鍵のうちのいずれかの鍵が押鍵されたか否かを判断する(ステップS301)。この判断は、押鍵検出部110から送信される信号に基づいて行われる。この判断の結果、押鍵されていないと判断した場合、楽音発生のための処理(ステップS303〜S309)を行う必要はないから、CPU101は、楽音の消音のための処理(ステップS310〜312)に進む。
これに対し、前回の鍵盤処理において解放されていた鍵のうちのいずれかが押鍵されたと判断した場合、CPU101は、パートフラグPFの値が“0”、“1”および“2”のうちのいずれであるかを判断する(ステップS302)。いま、パートフラグPFは“0”に設定されているから、CPU101は、次に、押鍵された鍵が右手演奏部12に含まれる鍵であるか否かを判断する(ステップS303)。この判断は、押鍵検出部110によって出力される信号に基づいて行われる。ここで、左手パートは自動演奏モードに設定されているから、上述した判断の結果、操作された鍵が右手演奏部12ではない場合、すなわち、左手演奏部11である場合には発音処理を行う必要はない。従って、楽音の消音のための処理(ステップS310)に進む。
これに対し、押鍵された鍵が右手演奏部12に含まれる鍵である場合、CPU101は、現在設定されている右手パートの演奏モード、すなわち、運指一致モードに対応した発音処理を行う(ステップS304)。
図8(a)は、右手パートの演奏モードが運指一致モードに設定されている場合に、前掲図7のフローチャート中のステップS304において行われる発音処理を示すフローチャートである。図8(a)に示すように、この発音処理において、CPU101は、まず、スタートフラグSFに“1”がセットされているか否かを判断する(ステップSa10)。この結果、スタートフラグSFに“1”がセットされていない場合には、演奏動作が開始されていないことを意味しており、発音処理等を行う必要はないから、何ら処理を行うことなく鍵盤処理に戻る。
これに対し、スタートフラグSFが“1”である場合、すなわち、演奏動作が開始されている場合には、CPU101は、該時点においてレジスタADG(R)にセットされているアドレスに格納されたキープレッシャーイベント内の運指データによって指定される鍵と、演奏者によって押鍵された鍵(押鍵検出部110から送信された信号によって判別)とが一致しているか否かを判断する(ステップSa11)。この結果、運指データによって指定された鍵と、押鍵された鍵とが一致していない場合には、発音処理を行うことなく鍵盤処理に戻る。
これに対し、運指データによって指定された鍵と、押鍵された鍵とが一致していると判断した場合、CPU101は、該時点においてレジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出して音源106に出力(ステップSa12)した後、鍵盤処理に戻る。
演奏イベントを受け取った音源106は、該演奏イベントに従って楽音信号を生成し、スピーカ107に出力する。このように、練習モードが運指一致モードに設定されている場合には、運指データによって指定された鍵と、演奏者によって押鍵された鍵とが一致した場合にのみ楽音が発生し、運指データによって指定された鍵と、演奏者によって押鍵された鍵とが一致しない場合には楽音を発生しないようになっている。なお、運指データによって指定された鍵と、演奏者によって押鍵された鍵とが一致しない場合には、楽音を発生しないのではなく、アラーム等を出力し、これにより、演奏者に対して押鍵された鍵が誤った鍵であることを報知するようにしてもよい。
なお、上述したように、楽曲データ中のキープレッシャーイベントを読み出すタイミングは、演奏イベントを読み出すタイミングよりも所定時間(図3に例示する楽曲データにおいては「6」)だけ早くなるように、楽曲データ中の時間データが設定されている。ここで、キープレッシャーイベントがレジスタADG(RまたはL)にセットされてから、演奏イベントがレジスタAD(RまたはL)にセットされるまでの間に、演奏者によっていずれかの鍵が押鍵された場合には、該押鍵が行われたタイミングで次の演奏イベントをレジスタAD(RまたはL)にセットし、該演奏イベントに対応した楽音を出力する構成としてもよいし、何ら楽音を出力しないようにしてもよい。また、図6中のステップS108において、新たなデータをレジスタADG(R)およびDUG(R)にセットする直前に、レジスタADG(R)にセットされているアドレスに記憶されたキープレッシャーイベントを読み出してRAM103内の所定領域に記憶しておき、この記憶されたデータを用いて、図8(a)中のステップSa11、および後述する図8(b)中のステップSb11における判断を行うようにしてもよい。すなわち、図8(a)中のステップSa11および図8(b)中のステップSb11において、押鍵が行われた鍵と、RAM103内の所定領域に記憶されたキープレッシャーイベントによって指定される指に対応した鍵とを比較するようにしてもよい。
さて、以上示した発音処理が行われた後、CPU101は、以下に示す消音処理(ステップS310〜S312)を行う。
この消音処理において、CPU101は、まず、押鍵された鍵のパート(右手パートまたは左手パート)の練習モードフラグPM(RまたはL)が、“3”であるか否かを判断する(ステップS310)。ここで、練習モードフラグPM(R)は、“0”にセットされているから、ステップS310に進む。すなわち、CPU101は、前回の鍵盤処理において押鍵されていた鍵のうちのいずれかの鍵が解放されたか否かを判断する(ステップS311)。この判断の結果、いずれかの鍵が解放されたと判断した場合、CPU101は、解放された鍵に対応した楽音の発生を停止すべき旨の指示を音源106に対して送信して(ステップS312)、鍵盤処理を終了する。これに対し、いずれの鍵も解放されていないと判断した場合には、楽音停止のための処理を行う必要はないから、そのまま鍵盤処理を終了する。
以上が、左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指一致モードに設定されている場合の割込処理および鍵盤処理である。
(2)左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指方向一致モードに設定されている場合(パートフラグPF=0、練習モードフラグPM(R)=1)
左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指方向一致モードに設定されている場合には、上記(1)の場合と概ね同様の処理が行われる。従って、上記(1)の場合と同様の処理については、説明を省略する。
左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指方向一致モードに設定されている場合には、上記(1)における鍵盤処理(図7)中のステップS304において、運指方向一致モードに対応した発音処理、すなわち、図8(b)に示す発音処理が実行される。
図8(b)に示す発音処理が開始されると、CPU101は、まず、図8(a)に示した発音処理と同様、スタートフラグSFが“1”であるか否かを判断する(ステップSb10)。この結果、スタートフラグSFが“1”でないと判断した場合には、発音処理を行う必要はないから、そのまま鍵盤処理に戻る。
これに対し、スタートフラグSFが“1”である場合、CPU101は、該時点においてレジスタADG(R)にセットされているアドレスに格納されたキープレッシャーイベント内の運指データによって指定される鍵(今回押鍵すべき鍵)が、該キープレッシャーイベントの前のキープレッシャーイベント内の運指データによって指定される鍵(前回の鍵)に対してx軸の正の方向および負の方向のいずれに位置するかを判断する。さらに、CPU101は、演奏者によって押鍵された鍵が、上記前回の鍵に対してx軸の正の方向および負の方向のうちのいずれの方向に位置するかを判断する。そして、この結果、前回の鍵の位置に対し、今回押鍵すべき鍵の位置と実際に押鍵された鍵の位置とが、x軸方向において同じ方向であるか否かを判断する(ステップSb11)。
この判断の結果、同じ方向にないと判断した場合には、発音処理を行うことなく鍵盤処理に戻る。これに対し、同じ方向にあると判断した場合、CPU101は、該時点においてレジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出して音源106に出力(ステップSb12)し、鍵盤処理に戻る。
このように、練習モードが運指方向一致モードに設定されている場合には、直前に押鍵すべきであった鍵に対し、今回押鍵すべき鍵と実際に押鍵された鍵とが、x軸方向において同じ方向(正の方向または負の方向)にある場合にのみ楽音が発生されるようになっている。すなわち、例えば、前回押鍵すべきであった鍵が右手の人差し指に対応した鍵12bであり、今回押鍵すべき鍵が右手の薬指に対応した鍵12dである場合、今回押鍵すべき鍵12dは、直前の鍵12bに対して右側にある。従って、該直前の鍵12bに対して右側にある鍵が押鍵された場合、すなわち、右手の中指に対応する鍵12c、薬指に対応する鍵12d、および小指に対応する鍵12eが押鍵された場合に楽音が出力される。
(3)左手パートが自動演奏モードに、右手パートがエニーキーモードに設定されている場合(パートフラグPF=0、練習モードフラグPM(R)=2)
左手パートが自動演奏モードに、右手パートが運指方向一致モードに設定されている場合に行われる処理は、上述した(1)における処理と概ね同様である。従って、上述した(1)と共通する処理については、説明を省略する。
左手パートが自動演奏モードに、右手パートがエニーキーモードに設定されている場合には、上記(1)の場合の鍵盤処理(図7)中のステップS304において、図8(c)に示す処理が実行される。図8(c)に示すフローチャートにおいて、CPU101は、まず、図8(a)および(b)に示す発音処理と同様、スタートフラグSFが“1”であるか否かを判断する(ステップSc10)ことにより、演奏動作が開始されているか否かを判断する。そして、演奏動作が開始されている場合には、レジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出して音源106に出力し(ステップSc11)、鍵盤処理に戻る。
音源106はCPU101から受け取った演奏イベントに従って楽音信号を生成し、スピーカ107に出力する。このように、エニーキーモードにおいては、演奏者によっていずれの鍵が押鍵された場合であっても、楽音が出力されるようになっている。
(4)左手パートが自動演奏モードに、右手パートが鍵駆動モードに設定されている場合(パートフラグPF=0、練習モードフラグPM(R)=3)
この場合、前掲図6に示したフローチャート中の処理a.左手パートの自動演奏処理、および処理b.右手パートのLED点灯処理、が実行された後、処理cにおいて、右手パートの模範演奏のための処理が実行される。
CPU101は、上記(1)と同様に上記処理aおよび処理bを実行した後、レジスタDU(R)の値が「0」となったと判断すると(ステップS111)、レジスタAD(R)およびDU(R)のセットを行い(ステップS112)、演奏モードフラグPM(R)に“3”がセットされているか否かを判断する(ステップS113)。ここで、演奏モードフラグPM(R)は“3”にセットされているから、CPU101は、ステップS114に示す右手パートの模範演奏処理を開始する。すなわち、CPU101は、レジスタAD(R)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出して音源106および鍵駆動部109に出力するとともに、該時点においてレジスタADG(R)にセットされたアドレスに格納されたキープレッシャーイベントを読み出して鍵駆動部109に出力する。
ここで、音源106は、CPU101によって供給された演奏イベントに従って楽音信号の生成および出力または楽音信号の出力の停止等の動作を行う。
また、鍵駆動部109は、CPU101によってノートオンイベントおよびキープレッシャーイベントを供給された場合には、該キープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される鍵を、押鍵した状態に駆動する。一方、ノートオフイベントおよびキープレッシャーイベントを供給された場合、鍵駆動部109は、キープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される鍵を、解放した状態に駆動する。
音源106および鍵駆動部109によってこのような処理が行われることにより、右手演奏部12のうちの押鍵すべき鍵が自動駆動されるとともに、スピーカ107からは右手パートの楽音が出力され、模範演奏が実行される。
一方、この割込処理において右手パートの模範演奏処理が行われるため、図7に示す鍵盤処理中のステップS304における練習モードフラグPM(R)に応じた処理は、図8(d)に示すように、何も行われることはない。また、右手パートが鍵駆動モードに設定されている場合には、楽音の消音のための処理も上述した割込処理において行われるため、鍵盤処理において消音のための処理を行う必要がない。すなわち、図7に示す鍵盤処理において、ステップS310の判断の後、ステップS311およびS312の処理を行うことなく鍵盤処理を終了する。
(5)左手パートが自動演奏モードに、右手パートが打楽器モードに設定されている場合(パートフラグPF=0、練習モードフラグPM(R)=4)
この場合、図6に示す割込処理中の処理a.左手パートの自動演奏処理を行った後、処理bにおいてLEDの点灯処理が行われることなく、処理c.右手パートのレジスタのセット等が実行される。具体的には、以下の通りである。
上記(1)と同様に上記処理aを実行した後、レジスタDUG(R)が「0」となったタイミングでレジスタADG(R)およびDUG(R)のセットを行うと(ステップS107、S108)、CPU101は、演奏モードフラグPM(R)が“4”であるか否かを判断する(ステップS109)。ここで、演奏モードフラグPM(R)は“4”にセットされている。すなわち、右手パートが打楽器モードに設定されている。この打楽器モードにおいては、LEDの点灯を行う必要はないから、キープレッシャーイベントの出力(ステップS110)を行うことなく、処理bを終了する。以後、CPU101は、上述した(1)と同様に処理cを実行し、割込処理を終了する。
次に、この場合の鍵盤処理について説明する。図7に示す鍵盤処理において、右手演奏部12に含まれる鍵が押鍵されたと判断すると(ステップS303)、CPU101は、図8(e)に示す発音処理を行う。すなわち、CPU101は、押鍵された鍵に予め対応付けられた打楽器音を出力すべき旨の指示を音源106に対して与える(ステップSe10)。音源106は、この指示に従って打楽器音を出力する。このように打楽器モードにおいては、押鍵された鍵に対応した打楽器音が出力されるようになっている。上述した指示を出力すると、CPU101は、図8(e)に示す処理を終了して、鍵盤処理に戻る。
以上が、左手パートが自動演奏モードに設定されており、かつ、右手パートが練習モードに設定されている場合の動作である。
ここで、右手パートが自動演奏モードに設定されており、かつ、左手パートが練習モードに設定されている場合、すなわち、パートフラグPFに“1”がセットされている場合には、以下の処理が実行される。
すなわち、図6に示す割込処理中、ステップS103においてパートフラグPFの値が“1”であると判断される。この場合、上記処理aと同様の自動演奏処理を右手パートについて行うとともに(ステップS120)、上記処理bおよびcに示した処理、すなわち、LEDの点灯処理およびレジスタのセット等の処理を左手パートについて行う(ステップS121およびS122)。すなわち、上記(1)の場合の割込処理において、フラグおよびレジスタに付された「R」と「L」とをそれぞれ入れ替えた処理が行われる。
一方、図7に示す鍵盤処理においては、ステップS302においてパートフラグPFの値が“1”であると判断される。この場合、CPU101は、押鍵された鍵が左手演奏部11に含まれる鍵であるか否かを判断し(ステップS305)、左手演奏部11に含まれる鍵でない場合、すなわち、右手演奏部12に含まれる鍵である場合には、何ら処理を行うことなく、消音のための処理(ステップS310〜S312)に移行する。これに対し、左手演奏部12に含まれる鍵が押鍵されたと判断した場合には、CPU101は、左手パートについての練習モードフラグPM(L)にいずれの値がセットされているかを判断し、図8(a)〜(e)に示した発音処理のうち、練習モードフラグPM(L)に応じた発音処理を、左手パートについて実行する(ステップS306)。以後、CPU101は、消音のための処理(ステップS310〜S312)を行い、鍵盤処理を終了する。
次に、右手パートおよび左手パートともに練習モードに設定されている場合、すなわち、パートフラグPFに“2”がセットされている場合には、以下の処理が実行される。
すなわち、図6に示す割込処理中、ステップS103においてパートフラグPFの値が“2”であると判断される。この場合、上記処理aに示した自動演奏処理は行われず、上記処理bに示したLED点灯処理(ステップS130およびおよびS131)、ならびに処理cに示したレジスタのセットおよび模範演奏のための処理(ステップS132およびS133)が、右手パートおよび左手パートの両方について行われる。
一方、図7に示す鍵盤処理においては、ステップS302においてパートフラグPFの値が“2”であると判断される。この場合、CPU101は、押鍵された鍵が右手演奏部12に含まれる鍵であるか、左手演奏部11に含まれる鍵であるかを判断し(ステップS307)、この判断の結果、右手演奏部12に含まれる鍵が押鍵されたと判断した場合には、図8(a)〜(e)に示した発音処理のうち、練習モードフラグPM(R)に応じた発音処理を、右手パートについて実行する(ステップS308)。これに対し、左手演奏部11に含まれる鍵が押鍵されたと判断した場合には、図8(a)〜(e)に示した発音処理のうち、練習モードフラグPM(L)に応じた発音処理を、左手パートについて実行する(ステップS309)。これらの発音処理が終了すると、CPU101は、消音のための処理(ステップS310〜S312)を行い、鍵盤処理を終了する。
以上が、本実施形態に係る演奏練習装置の動作である。
従来の鍵盤楽器は、各鍵と各楽音とが1対1で対応していたため、楽音に対応した数の多数の鍵を備えた構成となっていた。従って、演奏の練習を始めて間もない初心者は、多数の鍵のうちのいずれの鍵がいずれの楽音に対応しているかに戸惑うことがあり、演奏の上達までに相当の時間を要する、といった問題があった。これに対し、本実施形態に係る演奏練習装置は、各鍵と各指とが1対1で対応している構成となっている。従って、各鍵がいずれの楽音に対応しているかを考えることなく、LEDの点灯によって指示された指によって鍵を押鍵すれば、楽曲の演奏を行うことができるようになっている。従って、初心者や、指の動作に障害を有する人などであっても、容易に楽曲の演奏を行うことができる。
また、初心者は、鍵を押鍵する指の動きがぎこちない場合が多いが、従来の鍵盤楽器を用いて演奏練習を行う場合には、多数の鍵のうちのいずれの鍵がいずれの楽音に対応しているかということに気を取られ、十分な指の動きの練習を行うことができなかった。これに対し、本実施形態に係る演奏練習装置は、運指に重点を置いた練習を行うことができるから、滑らかな指を動きをマスターするための練習を効果的に行うことができるという利点がある。また、このような運指中心の練習を行い、滑らかに運指動作を行うことができるようになってから、上記従来の鍵盤楽器の練習を行うようにすれば、より効果的に鍵盤楽器の演奏練習を行うことができると考えられる。
また、従来の演奏支援装置においては、運指を表示するためにはLED等によって指番号を表示する必要があったが、本実施形態に係る鍵盤楽器によれば、鍵と指とが1対1で対応しているため、指番号を表示する必要がない。すなわち、LEDの点灯によって鍵を指定することにより、該鍵を押鍵すべき指を指定することができる。
また、練習モードを選択できるため、各演奏者の熟達の程度に合わせた練習を行うことができる。
例えば、上記実施形態の例においては、鍵駆動モードが最も容易であり、次いでエニーキーモード、運指方向一致モード、運指一致モードといった順に難易度が増していくと考えられる。従って、最初は鍵駆動モードによって鍵盤楽器演奏の指の動作に慣れ、その後エニーキーモード、運指方向一致モード、運指一致モードといった具合にモードを切換えていけば、より効果的な練習を行うことができる。
また、本実施形態に係る演奏練習装置においては、右手パートと左手パートについて、各々独立に練習モードを設定できるようになっている。従って、苦手とするパートについて重点的に練習を行うといった具合に、各演奏者の熟練の程度に合わせて練習を行うことができる。また、右手パートまたは左手パートのうちのいずれか一方のパートを自動演奏モードまたは練習モードに設定し、他方のパートを打楽器モードに設定すれば、片手でメロディを演奏するとともに、もう一方の手で打楽器音による伴奏を行うといった演奏態様も実現することができる。
さらに、本実施形態に係る演奏練習装置によれば、鍵の数が少ない構成となっているため、従来の鍵盤楽器と比較して大幅に小型化・軽量化を図ることができるから、携帯性に優れるという利点がある。
B:第2の実施形態
上記実施形態においては、練習モードとして、a.運指一致モード、b.運指方向一致モード、c.エニーキーモード、d.鍵駆動モード、およびe.打楽器モードのうちのいずれかをモードが選択できる構成となっていた。本実施形態においては、従来の鍵盤楽器の演奏を練習するための練習モードとして、これらと同様のモードを選択できるようになっている。なお、以下に示す第2の実施形態に係る鍵盤楽器において、上記第1の実施形態に係る演奏練習装置と共通する部分については、前掲の図1および図2に示した各部と同一の符号を付して、その説明を省略する。
B−1:第2の実施形態の構成
図9は、本実施形態に係る鍵盤楽器の外観を示す平面図である。同図に示すように、この鍵盤楽器は、従来の鍵盤楽器と同様に黒鍵および白鍵からなる鍵盤と、各鍵に対応した位置に配設された複数のLEDにより構成されるLED部201とを含んで構成されている。本実施形態に係る鍵盤楽器においては、各指と各鍵とが1対1で対応した上記実施形態に係る演奏練習装置とは異なり、各鍵と楽音とが1対1で対応した構成となっている。すなわち、いずれかの鍵を押鍵すると、該鍵に対応した楽音が出力されるようになっている。なお、図9には便宜的に鍵の一部のみを示したが、実際には、自然楽器のピアノに対応して鍵が88個ずつ設けられている。また、図9に示した鍵盤楽器において、各鍵に対応して付した「C4」、「D4」等の符号は、各鍵に対応する楽音の音名である。
このような構成において、演奏動作をスタートすると、楽曲の進行に合わせてLED部201のうちのいずれかのLEDが順次点灯するようになっている。そして、上記第1の実施形態と同様に、LEDの点灯によって指示された鍵と実際に演奏者によって押鍵された鍵とが所定の条件を満たす場合に、楽曲中の楽音が出力されるようになっている。そして、上記所定の条件は、設定された演奏モードによって異なる。
B−2:演奏モード
上記第1の実施形態においては、10個の鍵と各指とが1対1で対応した演奏練習装置において、5つの練習モードを選択できる構成としたが、本実施形態に係る鍵盤楽器は、各鍵と各楽音とが1対1で対応した構成となっている。従って、上記実施形態における練習モードを、本実施形態に係る鍵盤楽器に適用する場合には、上記実施形態における練習モードとは若干異なる演奏モードとなる。以下、この従来の鍵盤楽器における演奏モードについて説明する。
a.音高一致モード
LEDの点灯によって指定された鍵と、実際に押鍵された鍵とが一致した場合にのみ該鍵に対応する楽音が出力され、LEDの点灯によって指定された鍵と、実際に押鍵された鍵とが一致しない場合には、楽音が出力されないようになっている。
b.楽音高低一致モード
直前に発生すべきであった楽音の音高(直前の音高)と比較して今回発音すべき楽音の音高が高い場合、該直前の音高と比較して音高が高い楽音のうちのいずれかの楽音に対応した鍵が押鍵された場合には、今回発音すべき楽音が出力される。また、直前の音高と比較して今回発音すべき楽音の音高が低い場合、該直前の音高と比較して音高が低い楽音のうちのいずれかの楽音に対応した鍵が押鍵された場合には、今回発音すべき楽音が出力されるようになっている。
例えば、直前に発生すべきであった楽音が「G3(図9参照)」であり、今回発音すべき楽音が「C4」であるとする。この場合、直前の楽音「G3」の音高と比較して今回発音すべき楽音「C4」の音高が高いので、直前の楽音「G3」と比較して音高が高い楽音、すなわち、楽音「G#3」、「A3」、「A#3」、「B3」、「C4」、……、のうちのいずれかの楽音に対応した鍵が押鍵された場合には、今回発音すべき楽音「C4」が発音されることとなる。また、例えば、直前の楽音が「F#3」であり、今回発音すべき楽音が「D3」であるとすると、直前の楽音「F#3」の音高と比較して今回発音すべき楽音「D3」の音高が低いので、直前の楽音「F#3」と比較して音高が低い楽音、すなわち、楽音「F3」、「E3」、「D#3」、……、のうちのいずれかの楽音に対応した鍵が押鍵された場合には、今回発音すべき楽音「F#3」が発音されることとなる。
c.エニーキーモード
このエニーキーモードにおいては、演奏者によっていずれの鍵が押鍵された場合であっても、今回発音すべき楽音が出力されるようになっている。
d.鍵駆動モード
この鍵駆動モードにおいては、楽曲データ中の情報によって指定される楽音に対応した鍵が、押鍵または解放された状態に自動的に駆動されるとともに、楽曲の自動演奏が行われる。すなわち、楽曲の模範演奏が行われることとなる。
e.打楽器モード
この打楽器モードにおいては、いずれかの鍵が押鍵されると、該鍵に予め割当てられた打楽器音が出力される。
以上が従来の鍵盤楽器において選択可能な練習モードの詳細である。ここで、上記第1の実施形態と同様に、上記各練習モードおよび自動演奏モードのうちのいずれかのモードを、右手パートおよび左手パートについて、それぞれ独立に設定できるようにしてもよい。ここで、上記第1の実施形態と同様、自動演奏モード、および練習モードとして選択可能な上記各モードは、特許請求の範囲における「教習モード」に相当する。
なお、本実施形態における動作は、上記実施形態における動作と概ね同様であるので説明を省略する。
C:第3の実施形態
上記第1の実施形態においては、演奏練習装置1が10個の鍵を備え、これら10個の鍵が各指と1対1で対応するようにした。これに対し、本実施形態においては、通常の鍵盤楽器と同様の複数の鍵(例えば、88個の鍵)を備えた鍵盤楽器を用い、これらの複数の鍵のうちの一部の鍵(例えば10個の鍵)と各指とを1対1で対応付けることができるようになっている。
本実施形態においては、前掲図2に示した上記第1の実施形態における演奏練習装置1の代わりに、例えば88個の鍵を有する鍵盤を備えた鍵盤楽器が設けられた構成となっている。すなわち、LEDドライバ108によって駆動されるLEDは、鍵盤楽器の88個の各鍵に対応して設けられている。鍵駆動部109はこれらの88個の鍵のうちのいずれかを押鍵された状態または解放された状態に駆動できるようになっている。また、押鍵検出部110は、88個の鍵のうちのいずれかの鍵が押下されると、該鍵を表す信号をCPU101に対して出力する。ここで、上記鍵盤楽器としては、例えば、電子鍵盤楽器や、消音演奏が可能な消音ピアノや、消音演奏、多数の音色による演奏、および自動演奏が可能な消音自動演奏ピアノ等を用いることができる。
このような構成において、本実施形態にかかる鍵盤楽器は、通常の鍵盤楽器と同様に88個の鍵を用いた演奏を行うモード(通常モード)と、88個の鍵のうちのいずれか10個の鍵のみを用い、上記第1の実施形態と同様の態様による演奏を行うモード(運指教習モード)とを、演奏者が任意に選択できるようになっている。さらに、運指教習モードにおいては、上記第1の実施形態における5つの演奏モードを選択することが可能である。以下、本実施形態における動作を説明する。
上記通常モードに設定されている場合、CPU101は、押鍵検出部110からの信号に基づいて、押下または離鍵された鍵がいずれの鍵であるかを判断し、該鍵に対応した楽音に対応したノートオンイベントまたはノートオフイベントを音源106に出力する。このように、通常モードに設定されている場合には、従来の鍵盤楽器と同様の演奏を行うことができる。
これに対し、上記運指教習モードに設定されている場合、本実施形態に係る鍵盤楽器の動作は以下のようになる。
演奏者はまず、鍵盤を構成する88個の鍵のうちのいずれか10個の鍵を選択する。例えば、演奏者が操作部105に対して所定の操作を行った後に押鍵された10個の鍵が選択されるといった具合である。ここで、選択される10個の鍵は、隣り合う10個の鍵であってもよいし、任意の個数間隔で選択された10個の鍵(例えば1個おきに選択した10個の鍵)であってもよい。
CPU101(対応手段)は、こうして選択された10個の鍵と、両手の各指とを1対1で対応付ける。すなわち、例えば、選択された10個の鍵のうち、左側に位置する5個の鍵を左手の各指にそれぞれ対応付け、右側に位置する5個の鍵を右手の各指にそれぞれ対応付けるといった具合である。この場合、左手の各指に対応付けられた5個の鍵が上記第1の実施形態における左手演奏部11の5個の鍵に相当し、右手の各指に対応付けられた5個の鍵が上記第1の実施形態における右手演奏部12の5個の鍵に相当することとなる。CPU101は、こうして選択された10個の鍵と各指の識別番号とを対応付けて、RAM103に書き込む。
以後、これらの10個の鍵を用いて、前掲図4〜図8に示した上記第1の実施形態における動作と同様の動作が行われる。ただし、本実施形態においては、図7に示す鍵盤処理中のステップS301においていずれかの鍵が押下されたか否かを判断した後、CPU101は、RAM103に書き込まれた10個の鍵を識別するための情報を参照し、押下された鍵が予め選択された10個の鍵のうちのいずれかの鍵であるか否かを判断する。この判断の結果、10個の鍵のうちのいずれかの鍵であると判断した場合には、CPU101は、そのまま図7中のステップS302の処理に移行する。これに対し、押下された鍵が10個の鍵のうちのいずれでもないと判断した場合には、何ら発音のための処理を行う必要はないから、直ちに鍵盤処理を終了する。
このように、本実施形態によれば、88個の鍵を用いた通常の鍵盤楽器としての演奏と、全ての鍵のうちの10鍵のみを各指と1対1で対応させた演奏と選択することができるから、演奏者の熟練の程度に適した演奏練習を行うことができる。すなわち、練習を始めた当初は10鍵のみを用いた運指教習を行い、ある程度慣れてきたら88個の鍵を用いた練習を行うといったことが可能となる。
ここで、上記鍵盤楽器として、ハンマアクション機構(ハンマによって弦を打弦し、これにより発音する機構)を有する消音ピアノおよび消音自動演奏ピアノを用いた場合に、運指教習モードに設定されたときには、周知の消音機構によってハンマによる打弦が行われないような構成とし、これにより演奏者による押鍵によるハンマの打弦を阻止するようにしてもよい。
なお、従来より市販されている鍵盤楽器等に新たなプログラムをインストールすることにより、該鍵盤楽器に上記第3の実施形態にかかる鍵盤楽器の機能を後付けできるようにしてもよい。こうすれば、鍵盤楽器を所持しているユーザは、上記第1の実施形態における演奏練習装置1のように特別な装置を別途購入する必要がない。
D:第4の実施形態
次に、本発明の第4の実施形態に係る鍵盤楽器について説明する。
上記第1の実施形態に係る演奏練習装置おいては、複数の演奏モードの設定を可能とし、これにより演奏初心者の教習を行うようにしたが、本発明は、かかる演奏練習のための装置に限らず、鍵盤楽器としても実施可能である。図10は、かかる見地に基づく本発明の第4実施形態に係る鍵盤楽器2の外観を示す平面図である。
上記第1実施形態に係る演奏練習装置1にあっては、右手および左手の各指に1対1に対応する合計10個の鍵11a〜11eおよび12a〜12eが設けられた構成としたが、本実施形態に係る鍵盤楽器2においては、図10に示すように、左手または右手のいずれか一方の手の各指に1対1に対応する合計5個の鍵12a、12b、12c、12dおよび12e(特許請求の範囲における「第1鍵」に相当)が設けられた構成となっている。なお、各鍵に対応した5個のLEDを含む運指表示部14を備え、これらの各LEDの点灯により演奏者に対していずれの鍵を押鍵すべきか(またはいずれの指で押鍵を行うべきか)を指示する点については、上記第1の実施形態に係る演奏練習装置と同様である。
さらに、上記第1実施形態にあっては、演奏練習のための各種の演奏モードが用意された構成としたが、本実施形態においては、演奏を楽しむ鍵盤楽器としての見地から、上記第1の実施形態における運指一致モードのみが用意された構成となっている。すなわち、楽曲データ中のキープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される指(鍵)に対応したLEDが点灯されるとともに、点灯したLEDに対応した鍵が押鍵された場合には、楽曲データ中の対応する演奏イベントに基づいて、楽音が出力されるのである。換言すれば、各鍵に割当てられる楽音の音高が、楽曲の進行に伴って動的に変化するということもできる。なお、本実施形態に係る鍵盤楽器における具体的な動作は、上記第1実施形態におけるものと同様となるため、その説明を省略する。
本実施形態に係る鍵盤楽器によれば、各鍵と各指とが1対1に対応しているから、鍵盤楽器の演奏に慣れていない初心者であっても容易に演奏を楽しむことができる。また、一般に、演奏初心者の演奏を上達させるためには、手の各指を各鍵と1対1に対応付けた状態、すなわち、いわゆるホームポジションを認識させることが重要と考えられるが、従来の鍵盤楽器にあっては多数の鍵が設けられているため、かかるホームポジションの認識が妨げられ得るという問題がある。これに対し、本実施形態に係る鍵盤楽器によれば、各指と1対1に対応した5個の鍵のみが設けられた構成となっているから、初心者であっても直ちにホームポジションを認識することができるという利点がある。
E:変形例
以上この発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまでも例示であり、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
<変形例1>
上記第1の実施形態においては、10個の鍵を備えた演奏練習装置について説明したが、鍵の個数はこれに限られるものではない。例えば、図1に示した第1の実施形態に係る演奏練習装置において、左手演奏部11および右手演奏部12を2組ずつ配列して鍵の総数を20個とし、2人の演奏者によって連弾を行うことができるようにしてもよい。すなわち、該演奏練習装置に設けられた10個の鍵を用いて1人の演奏者が演奏し、他の10個の鍵を用いてもう1人の演奏者が演奏するようにするのである。
また、鍵の総数を5個としてもよい。この場合には、右手パートおよび左手パートのうちのいずれのパートを練習するかを選択できるようにし、選択されたパートについてのみ上記第1の実施形態における練習モードによる演奏練習を行うとともに、該選択されたパート以外のパートについては何ら演奏を行わないか、または自動演奏を行うようにする。すなわち、上記実施形態におけるパートフラグPFの値を、“0”または“1”のうちのいずれかのみを選択することができるようにすればよい。このようにすることにより、鍵盤楽器の小型化を図ることができるという利点がある。
このように、本発明に係る演奏練習装置に設けられる鍵の個数は、1以上の演奏者の両手または片手の各指が各鍵と1対1で対応するように、5n(nは自然数)個であることが好ましい。
一方、上記第3の実施形態においては、鍵盤楽器が備える88個の鍵のうちのいずれか10個の鍵を選択し、これらの10個の鍵を両手の各指と1対1に対応させるようにしたが、これに限らず、5n(nは自然数)個の鍵を選択できるようにして、複数の演奏者による連弾や、片手のみの演奏ができるようにしてもよい。
また、上記第3の実施形態においては、選択された鍵と各指とを1対1で対応付けるようにしたが、例えば各指に複数の鍵を対応付けるようにしてもよいし、10本の指のうちの一部の指に複数の鍵を対応付け、他の指には1個の鍵を対応付けるようにしてもよい。例えば、右手に対応する鍵を7個選択し、これらの鍵のうちの左側から2個の鍵を右手の親指に、右側から2個の鍵を右手の小指に、残りの3個の鍵を右手の人差し指、中指および薬指に、それぞれ対応付ける。このようにすることにより、各指の間隔を大きく開いて演奏の練習を行うというように、より多様な態様により演奏練習を行うことができる。
さらに、上記第1および第3の実施形態においては、5本全ての指を用いて演奏練習を行うようにしたが、これに限らず、例えば、一部の指を使用しないで演奏できるようにしてもよい。例えば、演奏の初心者は、薬指を用いた演奏が苦手である場合が多いため、薬指を用いないで練習を行えるようにしてもよい。この場合、以下に示す構成とすればよい。すなわち、図3(a)および(b)に示した各楽曲データ中の運指データは、5本全ての指のうちのいずれかの指を指定するようになっていたが、この運指データの他に、例えば薬指以外の指を指定する運指データ(すなわち、指番号「4」を含まない運指データ)や、人差し指および中指のみを指定する別の運指データ(すなわち、指番号「2」および「3」のみを含む運指データ)を含ませるようにする。そして、演奏者の指定により、これらの運指データのうちのいずれかを選択して用いるようにする。こうすることにより、例えば、初心者は人差し指と中指のみを用いた演奏練習を行うことができ、中級者は薬指以外の指を用いた演奏練習を行うことができ、上級者は5本全ての指を用いた演奏練習を行うことができる。すなわち、演奏者の熟練の程度に応じた練習を行うことができるという利点がある。
<変形例2>
上記各実施形態においては、いずれかのLEDを点灯させ、演奏者の視覚によって押鍵すべき鍵を認識させるようにしたが、これに限らず、視覚以外の感覚、すなわち、演奏者の聴覚、嗅覚、味覚および触覚等によって押鍵すべき鍵を認識させるようにしてもよい。なお、これらの各感覚によって、押鍵すべき鍵を演奏者に認識させる手法は、本出願人の先願である特願平11−13418号公報に詳細に開示されている。具体的には、例えば、次に押下すべき鍵の音高や押鍵を行うべき指を指示する音声、例えば「右手の親指」といった音声を記録しておき、これらの音声を再生することによって、演奏者に押鍵すべき指を指示するようにしてもよい。
また、演奏者にいずれかの鍵の押鍵を指示するための手法としては様々な手法が考えられるが、これらの各手法のうちのいずれか2以上の手法を同時に用いるようにしてもよい。すなわち、例えば、上述したLEDの点灯および音声の再生の両方を用いて、次に押鍵すべき鍵を指示するようにしてもよい。
また、押鍵を行うべき指をLEDの点灯によって指示するとともに、演奏データに含まれるノートナンバおよびベロシティに対応した楽音(以下、「正規ノートガイド音」という)を音源によって生成するようにしてもよい。このようにすれば、押鍵を行うべき指を演奏者が認識できるとともに、当該押鍵によってどのような楽音が発生されるのかを認識できるので、教習効果を向上させることができる。
なお、この場合、楽曲の進行に伴って順次正規ノートガイド音が発生される一方で、演奏者が鍵を押下することによって楽音が発生することとなるが、上記正規ノートガイド音と、押鍵によって発生した楽音とを区別できるようにしてもよい。すなわち、例えば、一方の楽音をヘッドフォンから出力するとともに、他方の楽音をスピーカから出力したり、各楽音をヘッドフォンの右出力と左出力とからそれぞれ出力させたり、または、各楽音の音色を異ならせるといった方法により、上記正規ノートガイド音と、押鍵に応じて発生した楽音とを区別できるようにしてもよい。
また、例えば、次に鍵を押下すべきタイミングに先立って該鍵をわずかに駆動することにより、次に押下すべき鍵を演奏者に指示するようにしてもよい。具体的には、以下の通りである。
上記第1の実施形態では、前掲図6中のステップS107〜S110(処理b)に示したように、LEDを点灯すべきタイミング(すなわち、レジスタDUG(RまたはL)が「0」となったタイミング)が到来すると、CPU101が楽曲データ中のキープレッシャーイベントを読み出してLEDドライバに出力するようになっていた。これに対し、本変形例においては、CPU101は、キープレッシャーイベントを鍵駆動部109(報知用鍵駆動手段)に出力するようにすればよい。そして、鍵駆動部109は、受け取ったキープレッシャーイベント中の運指データによって指定される鍵を駆動するとともに、一定時間(例えば0.5秒)が経過した後、該鍵を非駆動状態に戻す。このようにすることにより、演奏者には、次に押下すべき鍵が“ピクッ”と動いたように見える。演奏者は、こうして指示された鍵を順次押下することにより楽曲の演奏を行うことができる。
なお、次に押鍵すべき鍵を指示するための鍵の駆動量は、この鍵の駆動によって音が発生されない程度であればよく、演奏者によって押鍵された場合の鍵の駆動量と比較してわずかなものであってもよい。すなわち、次に押鍵すべき鍵を指示するための鍵の駆動量は、演奏者が視認可能な程度、例えば5mm程度のわずかな駆動量でよい。また、押鍵すべき鍵を指示するために当該鍵を駆動した後、一定時間経過後に該鍵を非駆動状態に戻すのではなく、演奏者が当該鍵を押鍵するまで、駆動状態を維持するようにしてもよい。
<変形例3>
上記各実施形態においては、楽曲データ中の時間データによって指定されるタイミングで、レジスタAD(RまたはL)およびADG(RまたはL)に順次イベントデータのアドレスがセットされる構成としたが、演奏者による押鍵を待って楽曲が進行するようにしてもよい。すなわち、例えば、練習パートに設定されているパートについては、時間データの如何に関わらず、実際に鍵が押鍵されたタイミングでレジスタAD(RまたはL)にセットされたアドレスに格納された演奏イベントをRAM103から読み出して音源106に出力するとともに、次のイベントデータのアドレスをレジスタAD(RまたはL)にセットするようにする。つまり、鍵が押鍵される毎に、次の楽音が順次出力されるようにするのである。このようにすることにより、演奏者は、自分のペースで演奏を行うことができるという利点がある。
さらに、この場合、一方のパートが自動演奏モードに設定されている際には、練習モードに設定されたパートにおける演奏の進行状況に関わらず、自動演奏モードに設定されたパートの演奏が進められる構成としてもよいが、例えば、練習パートの演奏の進行状況に合わせて、自動演奏パートの自動演奏を進めるようにしてもよい。この場合、例えば、楽曲を所定の区間に区切り、自動演奏パートの演奏を、いずれかの区間の終了時点において一時的に停止するとともに、練習パートの演奏が該区間の終了時点に至ったときには、自動演奏パートの演奏を次の区間に進める、といった構成とすればよい。このようにすることにより、練習パートの演奏が自動演奏パートについての自動演奏について行けない、といったことがなくなるので、演奏者は自動演奏パートの演奏に合わせようとして焦ってしまうこと等がなくなる。
<変形例4>
上記実施形態においては、楽曲データとして、右手用楽曲データと左手用楽曲データとに分割された楽曲データを用いたが、楽曲データがこのように分割されていない場合には、例えば、本出願人の先願である特開平5−40474号公報に開示されている「電子楽器における自動演奏装置」等を用いることにより、右手用楽曲データと左手用楽曲データとに分割すればよい。
また、上記第1の実施形態においては、押鍵すべき鍵を指定するための情報、すなわち、いずれの指で鍵を押鍵すべきかを指定するための情報(運指情報)を含んだ楽曲データを用いたが、楽曲データがこの運指情報を含んでいない場合には、例えば、本出願人の先願である特開平7−261750号公報に開示されている「運指情報分析装置及び同装置を適用した電子楽器」等を用いることにより、運指情報を生成して用いるようにすればよい。
<変形例5>
上記第1の実施形態においては、単に鍵盤の上に指を載せて演奏を行う構成としたが、図11に示すように、各指を各鍵に支持するための指クランプ300を各鍵の上面に配設する構成としてもよい。この指クランプ300は、例えば長方形状の布等を、指の径と同程度の径を有する筒状に形成して各鍵の面上に固定したものであり、演奏者の指を該指クランプ300の筒状部分に挿入することにより、各鍵に各指を支持できるようになっている。このようにすることにより、例えば、上記各実施形態の鍵駆動モードによる練習を行う場合、鍵の駆動に合わせて指が強制的に動かされるようになる。従って、鍵盤楽器の練習を始めたばかりでまだ指が滑らかに動かない人等が、鍵盤楽器の演奏における指の動きに慣れるための練習を行うことができる。
ここで、この各指クランプ300は、鍵が配設される方向に概ね一列となるように配設してもよいが、図11に示すように、各指の指先の位置に対応した位置に配設する構成としてもよい。このようにすれば、各指を無理なく各鍵に支持することができる。また、この指クランプ300の位置を、演奏者が任意に調節できるようにしてもよいし、各指クランプ300を、演奏者が任意に着脱できるようにしてもよい。このようにすれば、例えば、練習開始当初は指クランプ300を用いて練習を行い、指の動きに慣れてきたら指クランプ300をはずして練習を行う、というように、各演奏者の熟練の程度に合わせた練習を行うことができるという利点がある。
なお、指を鍵に支持するための手段は、上述した指クランプ300に限られるものではない。例えば、図12に示すように、各鍵の端部近傍に手の指の径よりもやや大きい程度の径を有する穴301を設け、演奏者がこの穴301に指を挿入することによって、各指を鍵に支持するようにしてもよい。また、この場合には、各指を穴301に挿入しやすいように、鍵の長さを各指の長さに合わせるようにしてもよい。すなわち、中指に対応する鍵の長さを短くし、親指および小指に対応する鍵の長さを長くするといった具合である。このようにすれば、各指を穴301に無理なく挿入することができる。
<変形例6>
上記第1の実施形態においては、本体10に左手演奏部11および右手演奏部12が設けられた構成としたが、このようにするのではなく、例えば、図13に示すように、本体10を分割した形状の左側本体10aおよび右側本体10bを設け、左側本体10aに左手演奏部11および左手運指表示部13を、右側本体10bに右手演奏部10bおよび右手運指表示部14をそれぞれ設けた構成としてもよい。このようにすることにより、演奏の際に、右手と左手との間隔を演奏者が任意に設定することができるから、各演奏者が、自分に合った態勢で演奏を行うことができる。なお、上記左側本体10aと右側本体10bとを着脱可能な構成としてもよい。
また、図14に示すように、上記左側本体10aと右側本体10bとを連結部302を介して連結し、この連結部302を軸として回転可能な構成としてもよい。このような構成とすることにより、演奏練習装置を折りたたむことができるようになるから、持ち運ぶ際に便利である。
<変形例7>
上記第3の実施形態においては、運指教習モードにおいて使用する鍵を演奏者が任意に設定できるようにしたが、これに限らず、例えば、88個の鍵のうちのいずれか10個の鍵を予め固定的に選定しておき、運指教習モードにおいてはこの10個の鍵を用いた演奏を行うようにしてもよい。こうすることにより、運指を指示するための各部、例えばLED等を上記10個の鍵に対応した数だけ設ければよく、88個全ての鍵について設ける必要がないので、構成をより簡易にすることができる。
また、上記第3の実施形態においては、運指教習モードにおいて指定された10個の鍵以外の鍵が押鍵された場合には楽音を発生しないようにしたが、こうするのではなく、例えば、上記10個の鍵以外の鍵が押鍵された場合には、押鍵された鍵に対応付けられた音高の楽音を発生するようにしてもよい。
また、上記第3の実施形態においては、鍵盤楽器の88個の鍵のうちの5鍵のみを、各指に1対1で対応させるように設定し、一方の手についてはこれらの5鍵を用いて上記第1の実施形態に示した運指教習を行うとともに、他方の手については上記5鍵以外の鍵を用いて上記第2の実施形態に示した音高教習を行うことができるようにしてもよい。このようにすることにより、より多様な演奏練習を行うことができる。
また、上記第3の実施形態においては、運指教習モードでいずれかの鍵が押鍵された場合には該押鍵に対応した演奏データを内蔵された音源106に出力し、この音源106が楽音を生成するようにしたが、鍵盤楽器外部に設けられた電子音源または該鍵盤楽器とは別の自動演奏ピアノ等に上記演奏データを送出するようにし、この演奏データによって上記電子音源または自動演奏ピアノ等を駆動するようにしてもよい。
さらに、鍵盤楽器として、鍵駆動機能を有する自動演奏ピアノ、消音自動演奏ピアノまたは電子鍵盤楽器を用いて運指教習を行う場合には、通常の演奏においてはあまり用いられない鍵(例えば鍵盤の両端付近に位置する鍵)を各指に1対1で対応付けるようにしてもよい。そして、これらの鍵を用いた運指教習モードによる演奏練習に並行して、楽曲データに従った自動演奏または鍵駆動を、他の鍵(各指に1対1で対応付けられた鍵以外の鍵)を用いて行うようにしてもよい。また、鍵盤楽器が備える各鍵毎に、ハンマによる打弦を行うか、またはハンマによる打弦を阻止するかを設定できるようにした鍵盤楽器が知られているが、このような鍵盤楽器を用いる場合、上述した各指と1対1で対応付けられる鍵についてのみハンマによる打弦を阻止するようにするとともに、それ以外の鍵(自動演奏または鍵駆動がなされる鍵)についてはハンマによる打弦が行われるようにしてもよい。
<変形例8>
1台の鍵盤楽器において、上記第2の実施形態における演奏練習と、上記第3の実施形態における演奏練習の両方を行うことができるようにし、演奏者がいずれかの演奏練習を選択できるようにしてもよい。
<変形例9>
上記各実施形態においては、その機能の一部または全部を、パーソナルコンピュータによって実現することも可能である。すなわち、例えば、パーソナルコンピュータのCPUに、上述したCPU101と同様の制御を実行させるとともに、パーソナルコンピュータのキーボードに設けられた各キーを、上記各実施形態における各鍵の代わりに用いたり、パーソナルコンピュータに内蔵された音源またはソフトウェア(いわゆるソフト音源)によって楽音信号を生成するようにしてもよい。
<変形例10>
上記第1および第4の実施形態においては、複数の鍵の各々が両手または片手の各指に1対1に対応付けられた構成としたが、これに限らず、例えば、各鍵が複数の指と対応付けられた構成としてもよい。
図15(a)は、上記第4の実施形態に係る鍵盤楽器に本変形例を適用した場合の外観を示す斜視図である。同図に示すように、本変形例に係る鍵盤楽器にあっては、2個の鍵(左側鍵400aおよび右側鍵400b)のみが設けられるとともに、各鍵に対応したLED(右側LED410aおよび左側LED410b)が設けられた構成となっている。そして、これらの2個の鍵のうち、左側鍵400aは右手の親指に対応する一方、右側鍵400bは親指以外の指、つまり、人指し指、中指、薬指および小指の4本の指に対応付けられた構成となっている。すなわち、演奏者は、右手の親指を左側鍵400aに載せ、右手の人指し指、中指、薬指および小指を右側鍵400bに載せた状態で演奏を行うようになっている。
本変形例における動作は以下の通りである。すなわち、キープレッシャーイベントに含まれる運指データによって指定される指が親指である場合には左側LED410aが点灯される一方、運指データによって指定される指が人指し指、中指、薬指および小指のうちのいずれかである場合には右側LED410bが点灯される。そして、左側LED410aが点灯された場合にあっては左側鍵400aが押下されることを条件に、楽曲データ中の演奏データによって指定される楽音が出力される。一方、右側LED410bが点灯された場合にあっては、右側鍵400bが押下されることを条件に、楽曲データ中の演奏データによって指定される楽音が出力されるようになっている。本変形例における具体的な制御の内容は、上記第1実施形態におけるものと同様であるため、その説明を省略する。
このように、2個の鍵のみが設けられた構成とすれば、鍵盤楽器の演奏に関して全くの初心者であっても、きわめて容易に演奏を楽しむことができるという利点がある。なお、上述した例にあっては、右手を用いて演奏を行う場合について説明したが、本変形例は、左手を用いて演奏を行う場合にも適用できることはいうまでもない。ただし、この場合には、左側鍵400aが左手の人指し指、中指、薬指および小指に対応付けられる一方、右側鍵400bが左手の親指に対応付けられることとなる。
また、上記例にあっては2個の鍵のみを設けた鍵盤楽器を例に説明したが、鍵の個数はこれに限られるものではなく、3個または4個の鍵が設けられた構成としてもよい。すなわち、例えば、図15(b)に示すように、右手の親指に対応付けられた左側鍵401aと、右手の人指し指、中指および薬指に対応付けられた中央鍵401bと、右手の小指に対応付けられた右側鍵401cと、これら3個の鍵の各々に対応する3個のLED(左側LED411a、中央LED411bおよび右側LED411c)とを設けた構成としてもよい。
なお、各指と各鍵との対応関係は、上記例に示したものに限られず、適宜変更可能であることはいうまでもない。例えば、図15(a)に示す例にあっては、右手の親指と人指し指とを左側健400aに対応させる一方、右手の中指、薬指および小指を右側健400bに対応させるようにしてもよい。
<変形例11>
上記第1および第4の実施形態においては、各指と1対1に対応した鍵のみが設けられた構成としたが、これに限らず、各指と1対1に対応した鍵以外の鍵を設けるようにしてもよい。すなわち、例えば、図16(a)に示すように、各指と1対1に対応した5個の鍵の両側に鍵(以下、「補助鍵」という)402aおよび402bを設け、これらの補助鍵402aおよび402bに以下のaおよびbに示す各機能を持たせるようにしてもよい。なお、これらの補助鍵402aおよび402bは、特許請求の範囲における「第2鍵」に相当するものである。
a.鍵盤楽器の操作子としての機能
演奏者は、これらの鍵を押下することにより、鍵盤楽器に対して各種の指示を与えることができるようになっている。例えば、左側の補助鍵402aを押下することにより演奏の開始を指示する一方、右側の補助鍵402bを押下することにより演奏の停止を指示することができる、といった具合である。また、本出願人の先願である特願平11−318653号には、演奏データに対して指情報を入力する演奏データ編集装置が開示されており、この演奏データ編集装置は、各指と1対1に対応した操作子と、各操作子によって入力された情報を確定するため操作子とが操作子装置に設けられた構成となっている。本変形例に係る鍵盤楽器を上記演奏データ編集装置として用いる場合には、各操作子によって入力された情報を確定するための操作子としての機能を、上記各補助鍵402aおよび402bに持たせるようにしてもよい。
b.指開き演奏モードにおいて演奏に用いられる鍵としての機能
ここで、指開き演奏モードとは、ホームポジション(すなわち、各鍵に対して各指を1対1に対応させた手の状態)よりも親指と小指とを開いた状態で演奏を行うモードをいう。すなわち、各指と1対1に対応する5個の鍵の両側に設けられた2個の補助鍵402aおよび402bは、指開き演奏モードにおいて、親指と小指とをホームポジションよりも開いた状態で演奏するために用いられる。
具体的には、演奏モードが指開き演奏モードに設定されている場合、演奏者は、左側の補助鍵402aと、右側の補助鍵402bと、右手の人指し指、中指および薬指に対応付けられた3個の鍵12b、12cおよび12dとを用いて演奏を行うこととなる。つまり、演奏モードが通常の演奏モード(例えば上述した運指一致モード)に設定されている場合、右手の親指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、演奏者は親指に対応付けられた鍵12aを押下することとなるが、演奏モードが指開き演奏モードに設定されている場合、右手の親指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、親指に対応した鍵12aではなく、左側の補助鍵402aを押下することとなる。同様に、演奏モードが通常の演奏モードに設定されている場合、右手の小指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、小指に対応付けられた鍵12eを押下することとなるが、演奏モードが指開き演奏モードに設定されている場合、右手の小指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、小指に対応した鍵12eの代わりに、右側の補助鍵402bを押下することとなる。なお、上記においては右手で演奏を行う場合を例に説明したが、左手で演奏を行う場合にも同様の構成が適用できるのはいうまでもない。
一般に、演奏の初心者は、指を開いた状態で演奏を行うのが困難であると考えられるが、上記構成とすることにより、このような初心者であっても、ホームポジションよりも指を開いた状態での演奏をきわめて容易に訓練することができるという利点がある。
なお、演奏モードが上記指開き演奏モードに設定されている場合、親指によって左側補助鍵402aを押鍵すべきタイミングにおいては、例えば親指に対応付けられた鍵12aのLEDを点灯させることにより、右手の親指で押鍵を行うべき旨を演奏者に対して報知するとともに、指開き演奏モードである旨を演奏者に対して報知するための何らかの報知手段を設けることが好ましい。すなわち、例えば、液晶ディスプレイ等の表示手段を設け、この表示手段を用いて指開き演奏モードであることを表示するようにしてもよいし、何らかの音声を出力することによって指開き演奏モードであることを演奏者に対して報知するようにしてもよい。
さらに、各補助鍵402aおよび402bの押鍵に対する負荷を、他の5鍵12a〜12eの押鍵に対する負荷とは異なるように構成してもよい。例えば、左側補助鍵402aおよび右側補助鍵402bの押鍵に対する負荷を、他の5鍵12a〜12eの押鍵に対する負荷よりも大きくし、左側補助鍵402aおよび右側補助鍵402bの押鍵に際しては、他の5鍵12a〜12eの押鍵と比較して大きな力を要する構成としてもよい。こうすることにより、演奏者は、ホームポジションから外れた状態で演奏を行っていることを力覚的に把握することができるから、各指と1対1に対応する鍵以外の補助鍵402aおよび402bが設けられているにもかかわらず、ホームポジションの認識が妨げられることがないという利点がある。
また、これ以外にも、左側補助鍵402aおよび右側補助鍵402bの形状を、他の5鍵の形状とは異なるものとしてもよい。例えば、図16(b)に示すように、左側補助鍵402aおよび右側補助鍵402bの指を載せる部分における厚さを、他の5鍵12a〜12eの厚さと比較して薄くなる形状としてもよい。こうした場合にも、各指と1対1に対応する鍵以外の補助鍵402aおよび402bが設けられているにもかかわらず、演奏者は、ホームポジションを視覚的または触覚的に認識することができるという利点がある。
さらに、上記例では、上記指開き演奏モードにおいて鍵12aおよび12eは使用されないようにしたが、これらの鍵を以下のようにして使用してもよい。すなわち、指開き演奏モードにおいても、通常の演奏モードと同様に、原則として鍵12a〜12eを用いた演奏を要求する一方、指を開いて演奏すべき場合にのみ左側補助鍵402aまたは右側補助鍵402bの押鍵を要求するようにしてもよい。具体的には、以下の通りである。
例えば、通常の鍵盤楽器の演奏においては、直前の押鍵に対応した楽音と今回の押鍵に対応した楽音との間に所定以上の音高差がある場合には、演奏者は指を開いて演奏する必要がある。本変形例においても、原則として鍵12a〜12eを用いた演奏を要求する一方、直前の押鍵に対応して出力された楽音と、今回の押鍵によって出力されるべき楽音との間に所定以上の音高差がある場合には、指を開いた状態で押鍵を行うべきと判定し、左側補助鍵402aまたは右側補助鍵402bの押鍵を演奏者に対して要求する、といった具合である。
<変形例12>
上記変形例11においては、各指と1対1に対応した5個の鍵の両側に一対の補助鍵を設ける構成としたが、これに限らず、例えば、図17に示すように、これら5鍵の間に、通常の鍵盤楽器と同様の4個の黒鍵403a、403b、403cおよび403dを設ける構成としてもよい。そして、各黒鍵403a〜403dには、上記変形例11のaにおいて示した操作子としての機能のほか、黒鍵演奏モードにおける演奏に用いられる鍵としての機能を持たせるようにしてもよい。ここで、黒鍵演奏モードとは、各指に1対1に対応付けられた5個の鍵(白鍵)12a〜12eのうちの左側の4個の鍵12a〜12dに代えて、上記4個の黒鍵403a〜403dを用いて演奏を行うモードである。具体的には、黒鍵演奏モードに設定されている場合、演奏者は、黒鍵403a〜403dと、小指に対応付けられた白鍵12eとを用いて演奏を行う。
つまり、演奏モードが上述した運指一致モードに設定されている場合、右手の親指、人指し指、中指および薬指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、演奏者はそれぞれの指に対応付けられた鍵(白鍵)12a〜12dを押下することとなるが、演奏モードが黒鍵演奏モードに設定されている場合、親指、人指し指、中指および薬指での押鍵を要求されるタイミングにおいては、演奏者は各指に対応付けられた白鍵12a〜12dではなく、それぞれ黒鍵403a、403b、403cおよび403dを押下することとなるといった具合である。一般に、演奏に慣れていない初心者は、黒鍵を用いた演奏が苦手である場合が多いが、上記構成とすることにより、黒鍵を用いた演奏をきわめて容易に訓練することができるという利点がある。
なお、上記黒鍵演奏モードに設定されている場合、親指によって第1黒鍵を押鍵すべきタイミングにおいては、例えば親指に対応付けられた鍵(白鍵)12aのLEDを点灯させることにより、親指で押鍵を行うべき旨を演奏者に対して報知するとともに、何らかの報知手段によって黒鍵演奏モードである旨(黒鍵を押下すべき旨)を演奏者に対して報知するようにしてもよい。すなわち、例えば、各鍵に対応付けられたLEDとは別個に設けられたLEDの点灯によって黒鍵演奏モードである旨を報知するようにしてもよいし、液晶ディスプレイの表示によって黒鍵演奏モードである旨を報知するようにしてもよいし、何らかの音声を出力することによって黒鍵演奏モードである旨を報知するようにしてもよい。
また、本変形例においては、黒鍵演奏モードにおいては白鍵12a〜12dの代わりに黒鍵403a〜403dを用いて演奏を行うようにしたが、これに限らず、白鍵12a〜12eおよび黒鍵403a〜403dをともに用いて演奏を行う白鍵黒鍵混在モードを設けるようにしてもよい。この白鍵黒鍵混在モードにおいては、白鍵12a〜12eを押鍵すべき場合には通常の演奏モードと同様に各白鍵に対応付けられたLEDを点灯させる一方、黒鍵403a〜403dを押鍵すべき場合には、これらの各LEDの点灯によって押鍵を行うべき指を指定するとともに、何らかの報知手段を用いて黒鍵を押下すべき旨を演奏者に対して報知するようにすればよい。こうすることにより、白鍵と黒鍵の両方を用いた演奏の練習を行うことができるという利点がある。
<変形例13>
上記各実施形態においては、各鍵の近傍に複数のLEDを有する運指表示部(左手運指表示部13および右手運指表示部14)を設けた構成としたが、これに限らず、例えば、図18に示すように、かかる運指表示部13を演奏練習装置または鍵盤楽器等とは別個の箱体に設け、演奏練習装置等と当該運指表示部13とを適当な長さの信号線420によって接続した構成としてもよい。かかる構成とすれば、運指表示部13の位置を演奏者が見やすい位置に任意に変更することができる。例えば、初心者は、演奏の際に鍵盤を見てしまうものであるが、上記構成により運指表示部13を演奏練習装置または鍵盤楽器の鍵盤から離れた位置に配置すれば、鍵盤を見ないで演奏する訓練を行うことも可能である。
<変形例14>
上記第1の実施形態に係る演奏練習装置または第4の実施形態に係る鍵盤楽器においては、複数の鍵の各々の押鍵に対する負荷を、各鍵ごとに異ならせるようにしてもよい。例えば、演奏初心者は、小指や薬指を用いた演奏が苦手である場合が多いが、このような事情に鑑み、小指および薬指に対応する鍵の負荷を、他の鍵の負荷と比較して軽くした構成としてもよい。さらに、各鍵の負荷を、各鍵ごとに演奏者が任意に設定することができるようにしてもよい。こうすることにより、例えば、まず小指や薬指に対応する鍵の負荷を軽く設定して演奏の練習を行い、演奏に慣れたらこれらの鍵の負荷を重くして、小指や薬指による押鍵をさらに訓練するといった練習も可能となる。
<変形例15>
上記第1の実施形態においては、従来の鍵盤楽器のように発音すべき楽音に対応する鍵を押鍵するというのではなく、例えば運指一致モードの場合、演奏者による運指が予め設定された運指と合っていれば楽曲中の楽音が出力される構成となっていた。これと同様の考え方を、後述するようなタイピング練習に適用することもできる。すなわち、以下に示す通りである。
従来からパソコン・ワープロ等のキーボードのタイピング練習を行うためのソフトウェアが各種提供されている。これらのソフトウェアにおいては、模範となる文字がモニタに表示されるとともに、該模範となる文字とユーザが入力した文字とが一致するか否か、すなわち、ユーザが、表示された文字に対応したキー(鍵)を押下したか否かが判断される、といったものが一般的である。従って、ユーザは、多数(例えば、40個)のキーのうちの、表示された文字に対応するキーを押下する必要があり、初心者にとっては困難を伴うものであった。
ここで、図19は、本変形例に係るタイピング練習装置(運指練習装置)の外観を示す平面図である。同図に示すように、このタイピング練習装置は、上記第1の実施形態に係る演奏練習装置と同様に、左手の各指に対応した左手用キー11’と右手の各指に対応した右手用キー12’を備えて構成されている。そして、図示しないモニタ上に文字が順次表示され、これに応じてユーザが10個のキーのうちのいずれかのキーを押下するようになっている。
ここで、一般的に、キーボード上の各キーについては、それぞれ押下すべき指が決まっているものである。例えば、文字「Y」、「H」、「U」、……、は右手の人差し指により押下し、文字「I」、「K」、…、は右手の中指で押下する、といった具合である。そこで、本変形例に係るタイピング練習装置においては、表示される文字を指定するデータ(文字データ)とともに、該データによって指定される各文字に対応したキーを押下すべき指を指定するためのデータ(運指データ)が、内部の記憶装置に記憶された構成となっている。そして、このタイピング練習装置内の制御部は、記憶装置から文字データを読み出し、該文字データによって指定される文字をモニタに表示するとともに、ユーザによって押鍵が行われた場合には、押鍵された鍵に対応した指と、上記運指データによって指定される指とが一致するか否かを判断し、一致する場合には、タイピングが適切である旨をモニタに表示する。
このようにすることにより、タイピングを始めたばかりの初心者であっても、表示された文字に対応するキーが、本来のキーボードのような多数のキーのうちのいずれであるか、といったことに戸惑うことなく、タイピングの練習を行うことができるという利点がある。
なお、本変形例においては、10個のキーが設けられたタイピング練習装置を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、上記変形例1のように、5n個のキーが設けられたタイピング練習装置であってもよい。また、上記第3の実施形態と同様に、従来のキーボードのうちのいずれか5個または10個のキーのみを各指と1対1で対応させることにより、上記タイピング練習装置と同様の機能を実現するものであってもよい。