図1は本発明の実施形態の電子楽器の外観図である。この電子楽器はトランペット型の電子楽器であり、胴体部10の演奏者側にはマウスピースに相当する口入力部20を備え、その反対側にベル部に相当する楽音発生部30を備えている。また、胴体部10の下部には操作部40と把持部50を備えている。さらに、胴体部10の中央部には、口入力部20側から順に、第1バルブ操作子11、第2バルブ操作子12及び第3バルブ操作子13が配設されている。この第1〜第3バルブ操作子11〜13はトランペットのピストンバルブ(及びキー)に相当するものであり、各バルブ操作子11〜13は請求項における「複数の演奏操作子」に相当する。
また、口入力部20内には演奏者の音声を検出するマイクロホンあるいは薄板に貼着されたピエゾ素子等の空気の振動を検出する振動検出器20aが配設され、楽音発生部30内には楽音を発生するスピーカ30aが配設されている。さらに、操作部40には後述のモード選択などを行うための各種の設定操作子40aが配設され、胴体部10内にはこの楽器の作動を制御するための電子回路装置が収容されている。また、胴体部10の側部には各種モード状態などの表示を行う表示器60が配設されている。
図2はバルブ操作子11〜13の詳細を示す図であり、バルブ操作子11〜13は、上下に延設されたロッド11a〜13aと、ロッド11a〜13aの上端に固着されて指で押圧操作される円盤状の操作部11b〜13bとをそれぞれ備えている。ロッド11a〜13aは、胴体部10及び把持部50内に進退可能にそれぞれ侵入している。ロッド11a〜13aの各下端部は、把持部50内に設けた図示しないスプリングとストッパ機構により上方に付勢されており、下方への押圧により胴体部10内に押し下げられて図示しないスイッチがオンとなり、下方への押圧解除により図示の上端位置に停止してスイッチがオフとなる。
ロッド11a〜13aの胴体部10の上面の胴体部10への侵入口周囲には、リング17〜19がそれぞれ固着されている。これらのリング17〜19の下方には、発光ダイオード、ランプなどで構成した発光素子21〜23がそれぞれリング17〜19に対応して胴体部10内に収容されている。リング17〜19の下部は透明の樹脂で形成されている。これにより、発光素子21〜23の点灯による光がリング17〜19の上面から漏れないようにして、リング17〜19全体がそれぞれ独立して発光するようにしている。
図3は実施形態における前記電子回路装置のブロック図であり、この電子回路装置は、バス100に接続された音声信号入力回路31、スイッチ回路32、表示制御回路33、楽音信号発生部34、コンピュータ本体部35、メモリ装置36および発光制御回路37を備えている。
音声信号入力回路31は振動検出器20aから入力した音声信号のピッチ(周波数)を検出するピッチ検出回路31aと、同音声信号の音量レベル(振幅エンベロープ)を検出するレベル検出回路31bとを備えている。スイッチ回路32は、第1〜第3バルブ操作子11〜13及び複数の設定操作子40aの操作に連動するスイッチを有し、第1〜第3バルブ操作子11〜13及び複数の設定操作子40aの操作を検出する。表示制御回路33は表示器60の表示状態を制御する。楽音信号発生部34は、コンピュータ本体部35から入力設定される音高データ、キーオンデータ、及びキーオフデータに基づいて楽音信号を発生する回路であり、メロディの楽音信号を発生する第1楽音信号発生回路34aと、伴奏の楽音信号を発生する第2楽音信号発生回路34bとで構成されている。これらの楽音信号はアンプ38を介してスピーカ30aに出力される。なお、音高データは発生楽音の周波数(ピッチ)を表すものであり、キーオンデータ及びキーオフデータは楽音の発生開始及び発生停止をそれぞれ指示するものである。
コンピュータ本体部35は、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなり、プログラムの実行により、この電子楽器の各種動作を制御する。メモリ装置36は、メモリカードなどのような小型かつ比較的大容量の記録媒体を備え、各種プログラム及び各種演奏データを記憶している。この演奏データは、音高データ、キーオンデータ、キーオフデータなどを時系列に記憶した楽曲の自動演奏データを構成している。発光制御回路37は、前記発光素子21,22,23の点灯を制御する。
また、バス100には、外部機器用インターフェース回路41及び通信用インターフェース回路42も接続されている。外部機器用インターフェース回路41は、図示しない接続端子に接続される外部の各種音楽機器と交信して、外部の各種音楽機器に対して各種プログラム及びデータの入力及び出力を可能とする。通信用インターフェース回路42は、図示しない接続端子に接続される通信ネットワーク(例えば、インターネット)を介して外部と交信して、外部(例えば、サーバ)に対して各種のプログラム及びデータの入力及び出力を可能とする。
ここで、この楽器の演奏方法について簡単に説明する。演奏者は、一方の手で把持部50を握ることにより楽器を保持し、他方の手の指で第1〜第3バルブ操作子11〜13を押圧操作する。この操作は音高を指定するための操作であるが、トランペットなどと同様に、第1〜第3バルブ操作子11〜13の非操作状態と操作状態の組み合わせによって、1つの音高ではなく複数の音高候補が同時に指定される。そして、第1〜第3バルブ操作子11〜13を必要に応じた組み合わせで操作した状態で、演奏者は、口入力部20に向かって、発生させようとする楽音の音高周波数に近い周波数を有する音声を発生する。この場合の音声は、例えば「アー」、「ウー」などの単純なものでよく、要は音声が特定の周波数(以後、「音声ピッチ」という。)を有していればよい。この音声の発生により、第1〜第3バルブ操作子11〜13の操作によって指定された複数の音高候補のうちから、入力された音声ピッチに最も近い周波数の音高が、後述のモードに応じて楽音発生の音高あるいは入力音高として決定される。そして、決定された音高に応じて、楽音(例えば、トランペット音)あるいは自動演奏データに応じた楽音が入力音声に同期して発生される。
この音高の決定について図4を用いて具体的に説明する。図4は音高と運指(操作状態の組み合わせ)との関係を示す運指図であり、図中の「バルブ操作子」と示した左欄は、縦方向に、第1〜第3バルブ操作子11〜13の非操作状態と操作状態との組み合わせからなる8通りの操作の組み合わせを示している。このうち、数字「1」、「2」、「3」は操作されるべきバルブ操作子を、第1、第2および第3バルブ操作子11〜13にそれぞれ対応させて示しており、「−」印は操作されるべきでないバルブ操作子を示している。一方、図中の「決定音高」と示した下欄は、横方向に、発音等のために決定されるべき楽音の音名を示している。
そして、「決定音高」の上方と「バルブ操作子」の右方の交点位置の「○」印が、決定されるべき楽音の音高と操作されるべき第1〜第3バルブ操作子11〜13の組み合わせとを対応付けている。したがって、第1〜第3バルブ操作子11〜13の操作の組み合わせにより、決定される楽音の音高候補として複数の音高が指定される。例えば、第1〜第3バルブ操作子11〜13のいずれも操作されなければ決定される楽音の音高候補は「C4 」,「G4 」,「C5 」,「E5 」,「G5 」,「C6 」である。また、第2バルブ操作子12だけが操作されれば「B3 」,「F♯4」,「B4 」,「D♯5」,「F♯5」,「B5 」である。
また、図中の「○」印の下部の矢印は、口入力部20から入力された音声ピッチのずれの許容範囲を示している。この許容範囲は、図中の「入力音高」と示した上欄に、横方向に示した音名の周波数に対応している。なお、図中の上欄の「入力音高」の音名と、図中の下欄の「決定音高」との音名とが1オクターブずれているのは、人間の声の音域(男性)とトランペットの発音音域とのずれを補正するためである。また、図中に示した「無音」は、楽音が決定(あるいは発生)されないことを意味してる。したがって、例えば、第1〜第3バルブ操作子11〜13のいずれも操作されない状態で、「A♯2」と「D♯3」の間の周波数域の音声を入力すれば「C4 」の音高が決定される。「E3 」と「A3 」の間の周波数域の音声を発生すれば「G4 」の音高が決定される。なお、この音声信号の周波数のずれの許容範囲を、設定操作子40aの操作によって種々に変更することも可能である。
次に、実施形態の電子楽器の具体的動作について、図5の機能ブロック図を用いて説明する。なお、この機能ブロック図中のコンピュータ処理部は、前記コンピュータ本体部35のプログラム処理を機能的に表したものであるが、もちろん、同図のような電子回路で構成することもできる。
この実施形態では6つの動作モードを備えており、前記設定操作子40aに含まれる手動/自動スイッチ61とモードスイッチ62により第1〜第6モードを選択できる。手動/自動スイッチ61とモードスイッチ62とは連動しており、手動/自動スイッチ61がM側(マニュアル)のときモードスイッチ62は「1」端子に接続されて第1モードとなり、手動/自動スイッチ61がA側(オート側)のときモードスイッチ62は「2〜6」端子のうちのセレクトされた端子に接続され、それぞれ第2〜第6モードとなる。また、モードスイッチ62に連動するスイッチ62aが設けられ、このスイッチ62aは、モードスイッチ62が「6」端子に接続されたときのみオン(ハイレベル出力)となる。
(第1モード)第1モードでは手動/自動スイッチ61がM側になるのでメモリ装置36のイネーブル端子がローレベルとなり、メモリ装置36、演奏データ読出し処理部51及び運指変換処理部52が実質非動作となって、後述の自動演奏の動作を行われない。また、手動/自動スイッチ61がM側になるのでゲート回路63の反転入力端子がローレベルとなり、このゲート回路63が導通する。また、セレクタ64はセレクト端子BがハイレベルのときB入力が選択されるので、この第1モードではセレクタ64はA入力を選択出力する。一方、使用者によるマニュアル操作に基づく第1〜第3バルブ操作子11〜13の操作状態がスイッチ回路32で検出され、このスイッチ回路32からバルブ状態信号が出力される。なお、このバルブ状態信号は第1〜第3バルブ操作子11〜13にそれぞれ1ビットを対応させ、操作子状態を“1”、非操作状態を“0”として構成した3ビットの信号である。
したがって、この第1モードでは、スイッチ回路32からのバルブ状態信号がゲート回路63を介して発光制御回路37に入力され、発光制御回路37はバルブ状態信号の各ビット状態に対応して各バルブ操作子11〜13に対応する発光素子21〜23をそれぞれ点灯制御する。また、スイッチ回路32からのバルブ状態信号がセレクタ64を介して音高候補抽出処理部53に入力される。音高候補抽出処理部53は、音高候補テーブル53aを備えている。この音高候補テーブル53aは、例えば図4の運指図をテーブル化したものであり、図4の左欄の「バルブ操作子」の組み合わせ(「−,2,3」等)をバルブ状態信号の3ビットに対応させ、指定された組み合わせに対して「○」印の位置に対応する下欄の「決定音高」の音高データを複数の音高候補データとして出力する。そして、この音高候補抽出処理部53からの音高候補データは音高判定処理部54に入力される。
一方、振動検出器20aから入力される音声信号の音声ピッチがピッチ検出回路31aで検出されて音高判定処理部54に入力される。音高判定処理部54は入力される音高候補データから、入力される音声ピッチに応じた音高データを抽出して第1楽音信号発生回路34aに出力する。なお、この音高データの抽出の際に、入力音声ピッチに対する前述した許容範囲を考慮してもよいし、考慮しなくてもよい。また、振動検出器20aから入力される音声信号の音量レベルがレベル検出回路31bで検出されて発音制御データ生成処理部55に入力される。なお、音高判定処理部54からの音高データは後述の一致検出回路65とワンショット回路68にも出力され、レベル検出回路31bからの音量レベルはワンショット回路69にも出力されるが、この第1モードでは、これらの回路の動作は影響しない。発音制御データ生成処理部55は、音量レベルのデータから、発生する楽音の音量パラメータ(ベロシティ)や音色パラメータ等の発音制御データを第1楽音信号発生回路34aに出力する。そして、第1楽音信号発生回路34aは、音高判定処理部54で判定された音高データと楽音制御データに基づいて楽音信号(メロディ)を発生し、アンプ38及びスピーカ30aで楽音が発生される。
このように、第1モードでは、バルブ操作子11〜13の操作状態と振動検出器20a(口入力部20)からの音声ピッチに応じて発音する楽音の音高が決定され、また、振動検出器20aからの音量レベル(アンプッシュア)に応じた音量等が決定され、楽音が発生される。したがって、マニュアル演奏(通常のトランペットと同様な演奏)を行うことができる。また、発光素子21〜23により、バルブ操作子11〜13の操作状態に応じて、操作されているバルブ操作子に対応して操作確認用の発光表示が行われ、演奏操作を確認することができる。
(第2モード)この第2モードが本発明の要部の好適な実施例となっている。手動/自動スイッチ61がA側(オート側)になると自動演奏に関する動作を行う。また、手動/自動スイッチ61がA側のときはモードスイッチ62は「2〜6」端子を選択可能となり、「2」端子を選択して第2モードとなる。なお、このモードスイッチ62の「2〜6」端子の接続切換により、演奏データ読出し処理部51への歩進信号として出力する信号が選択切換される。
演奏データ読出し処理部51、運指変換処理部52、メロディ音高マーク検出部51aは、メモリ装置36から自動演奏データを読み出し、その自動演奏データからのメロディデータの読出し及び停止、伴奏データの1シーケンス読出し及び停止、及びバルブ状態信号の生成を制御する機能である。自動演奏データは、例えば図6に示したように、メロディ音の音高を示すメロディ音高データ、メロディ音の符長を示すメロディ符長データ、伴奏音の音高を示す伴奏音高データ、伴奏音の符長を示す伴奏符長データを含んでいる。また、各データにはメロディ音高マーク、メロディ符長マーク、伴奏音高マーク、伴奏符長マークがそれぞれ付けられている。演奏データ読出し処理部51は、自動演奏用メモリと読出し部とからなり、手動/自動スイッチ61がA側になると、メモリ装置36から演奏データを読出して自動演奏用メモリに一旦格納するとともに、メロディ音高データを読み出す。
メロディ音高データは運指変換処理部52と後述の一致検出回路65に出力される。運指変換処理部52はメロディ音高データから運指テーブル52aによりバルブ状態信号を自動生成し、そのバルブ状態信号を発光制御回路37に出力する。なお、運指テーブル52aは、音高候補テーブル53aの逆変換に相当するテーブルであり、図4の下欄の「決定音高」(この場合メロディ音高データに相当)に対して図4の「○」印の位置に対応する「バルブ操作子」の組み合わせ(「−,2,3」等)を3ビットで表現したデータに変換し、バルブ状態信号として出力するものである。すなわち、この運指変換処理部52から出力されるバルブ状態信号は、自動演奏データ中のメロディ音高データによって自動生成されるものであり、前記バルブ操作子11〜13の操作状態から検出したものとは異なる。発光制御回路37は、バルブ状態信号により各バルブ操作子11〜13に対応する発光素子21〜23をそれぞれ点灯制御するとともに、そのバルブ状態信号をスルーで後述のシフトレジスタ66に出力する。
メロディ音高マーク検出部51aは、次のメロディ音高データのメロディ音高マークを検出すると停止信号を演奏データ読出し処理部51に出力し、これによって演奏データ読出し処理部51はメロディ音高データの読出しを一時停止する。また、演奏データ読出し処理部51は、後述の歩進信号が入力されると次のメロディ音高データの読出しを行う。すなわち、演奏データ読出し処理部51とメロディ音高マーク検出部51aは、自動演奏メモリのメモリアドレスを1メロディ音高データに対応する伴奏を含む1セット分歩進しながら、メロディ音高データを1つずつ先読みするような動作をする。
なお、演奏データ読出し処理部51はメロディ音高データの読出しを一時停止しても、内部の自動シーケンス処理により伴奏音高データ及び伴奏符長データについては次のメロディ音高データ直前までを読み出して第2楽音信号発生回路34bに出力し、伴奏符長データに応じて所定の伴奏の楽音を発生する。
一方、この第2モードでは手動/自動スイッチ61がA側になるのでゲート回路63が非導通となるとともにセレクタ64はB入力を選択出力する。また、セレクタ67のセレクト端子には、モードスイッチ62の「6」端子の接続に連動するスイッチ62aが接続されており、この第2モードではモードスイッチ62が「2」端子に接続されているので、スイッチ62aの出力はローレベルとなって、セレクタ67はB入力を選択出力する。前記発光制御回路37からのバルブ状態信号はシフトレジスタ66に出力されるとともに、オア回路66aを介してセレクタ67のB入力に出力される。したがって、このバルブ状態信号は、メロディ音高データが読み出されるとセレクタ67,64を介して音高候補抽出回路53に瞬時に入力される。
音高候補抽出処理部53は、前記同様にバルブ状態信号に対応する複数の音高候補データを音高判定処理部54に出力し、音声信号の音声ピッチがピッチ検出回路31aで検出されて音高判定処理部54に入力される。そして、音高判定処理部54は、前記同様に音高候補データから音声ピッチに相当する音高データを抽出して第1楽音信号発生回路34aに出力する。また、音声信号の音量レベルを示す音量レベルデータもレベル検出回路31bから発音制御データ生成処理部55に入力され、発音制御データ生成処理部55は発音制御データを第1楽音信号発生回路34aに出力する。これにより、入力される音声ピッチと音高候補とで最終的に音高が決定され、その音高によりメロディ用の第1楽音信号発生回路34aからメロディの楽音信号が発生される。
この第2モードでは、一致検出回路65の出力はモードスイッチ62の「2」端子を介して演奏データ読出し処理部51に入力される。そして、一致検出回路65は、演奏データ読出し処理部51から出力されるメロディ音高データと音高判定処理部54で決定された音高データとが一致すると一致信号を出力し、この一致信号は歩進信号として演奏データ読出し処理部51に入力される。すなわち、自動演奏データのメロディ音高データでバルブ状態信号が自動生成され、このバルブ状態信号に応じて抽出された音高候補データの中から振動検出器20aにおいて入力された音声ピッチに応じて決定された音高と、メロディ音高データとが一致すると、演奏データ読出し処理部51でメモリアドレスが歩進し、次のメロディ音高データを読み出すようになる。
このように、音高候補抽出処理部53にバルブ状態信号が瞬時に入力され、あたかもバルブ状態信号が決定された状態となり、この状態で振動検出器20aからの口入力の待ち状態となる。そして、首尾よく口入力された音声ピッチがメロディ音高データに合って入れば、一致信号が出力されて、この一致信号によりメモリアドレスが歩進する。一方、口入力された音声ピッチとメロディ音高データが一致していない場合、この一致信号は出力されない。振動検出器20aからの口入力待ち状態となって、入力された音声ピッチがメロディ音高データと一致した後(一致信号が出力された後)は、その音高の発音を持続すべき状態である。
ここで、メロディ音高データの読出し時に音高候補抽出回路53に瞬時に入力されたバルブ状態信号は、上記の一致信号後の歩進により次のメロディ音高データに対応するものになってしまう。しかし、その前のバルブ状態信号はシフトレジスタ66に保持されており、このシフトレジスタ66は停止信号によりシフトするので、そのバルブ状態信号が依然として音高候補抽出回路53に入力されることになる。すなわち、音声ピッチがメロディ音高データに合った後も、その音声ピッチに対応する音高データが第1楽音信号発生回路に出力されることになり、発音の持続が可能となる。そして、演奏データ読出し処理部51の内部処理でそのメロディ音高データの符長分だけ処理を消化すると消化信号が出力され、これによってシフトレジスタ66がシフトして、先読みされているメロディ音高データに対応するバルブ状態信号が音高候補抽出処理部53に入力される。これにより、次のメロディ音高データについて同様の処理が行われる。
このように、第2モードでは、自動演奏データにより伴奏の楽音が発生される。また、メロディ音高データから自動生成したバルブ状態信号(バルブ操作子11〜13の操作入力によるものではない)により、メロディ音高データに対応して操作すべきバルブ操作子11〜13の組み合わせが、発光素子21〜23により、バルブ操作子11a〜13aに対応して発光表示される。また、自動生成したバルブ状態信号と振動検出器20aからの音声ピッチとにより、自動演奏データのメロディ音高と一致する音高が決定されるとメロディが進行する。なお、このバルブ状態信号が請求項の「組み合わせ情報」に相当する。
(第3モード)第3モードでは、手動/自動スイッチ61がA側となって、演奏データ読出し処理部51、運指変換処理部52及びメロディ音高マーク検出部51aによる自動演奏データの処理動作、その他、音高決定の動作等は、第2モードと同様である。この第3モードでは、モードスイッチ62が「3」端子に接続され、演奏データ読出し処理部51への歩進信号として、ワンショット回路68の出力信号が入力される。ワンショット回路68は、音高判定処理部54から音高データが出力されるとトリガ信号を出力し、このトリガ信号が演奏データ読出し処理部51の歩進信号となる。すなわち、振動検出器20aから入力される音声ピッチとメロディ音高データから自動生成したバルブ状態信号とにより、音高データが決定されると、第2モードと同様にして演奏が進行する。
このように、第3モードでは、演奏としては第2モードより高度な操作を要する。すなわち、振動検出器20aからの音声ピッチと前記自動生成したバルブ状態信号とにより何らかの音高が決定されると、その音高がメロディ音高データと一致しなくてもその決定された音高(例えば、メロディの音高の倍音等)でメロディが進行する。したがって、メロディ音高データとは異なる音声のピッチを、誤って入力したとしても、その間違ったままの音高でメロディが再生される。
上述のように、図4の矢印で示す音声信号の周波数のずれの許容範囲は、種々に変更することが可能である。特に、この第3モードおよび後述する第5モードでは、音声信号の周波数のずれの許容範囲が図4の矢印で示すとおりであると、演奏者が口入力部20aにいかなるピッチの音声信号を入力しても、図4の破線矢印で示す以外の部分では何らかの楽音信号が発生される。そこで、音声信号の入力の練習を行う場合には、図4の矢印の幅を狭くしておくとよい。このようにすれば、矢印の範囲外となるピッチを有する音声信号が口入力部20aに入力されても、音高判定処理部54は音高データを出力しなくなる。その結果、ワンショット回路68は演奏データ読出し処理部51へ歩進信号を出力しなくなるので、次の演奏データが読み出されることがなくなって演奏の進行が停止する。
このことは、音高を決定するための音高決定部である音高判定処理部54がが、ピッチ検出回路31aからの音声ピッチと音高候補抽出処理部53からの音高候補との関係に基づいて、楽音信号を発生すべきでないと判定したことを意味する。すなわち、演奏データ読出し処理部51によって読み出された演奏データに基づいて運指変換処理部52が生成したバルブ操作子11〜13の組み合わせに対して、前記入力された音声ピッチが不適当であったことを意味する。そして、この場合には、楽音信号が発生されないとともに、演奏データ読出し処理部51の歩進もないので、適切なピッチを有する音声信号を口入力部30aに入力するための演奏者の練習にとって効果的である。まお、この音声信号の周波数のずれの許容範囲を図4の矢印の幅より狭くすることは、他のモードにも当然に適用され得る。
(第4モード)第4モードにおいても、上記自動演奏データの処理動作、その他、音高決定の動作等は、第2,第3モードと同様である。この第4モードでは、モードスイッチ62が「4」端子に接続され、演奏データ読出し処理部51への歩進信号として、第2のワンショット回路69の出力信号が入力される。このワンショット回路69は、レベル検出回路31bから出力された音量レベル信号が入力され、この音量レベル信号が所定の閾値以上となるとトリガ信号を出力し、このトリガ信号が演奏データ読出し処理部51の歩進信号となる。すなわち、振動検出器20aから入力される音声の音量(あるいはブレスレベル)が所定以上となると、第2モードと同様にして演奏が進行する。
このように、第4モードでは、第2モードより演奏が進行するための条件が緩和されている。振動検出器20aからの音量(ブレスレベル)が所定レベル(閾値)以上あれば、音声ピッチが検出できなかったとしても演奏が進行する。もちろん音声ピッチが検出できたとしても、演奏は進行する。この場合、例えばブレス音のみ入力すると演奏タイミングのみでコントロールされ、メモリから読み出された自動演奏データに基づく伴奏音の演奏がメロディ音なしのまま進行し、伴奏の促進としてはたらく。このとき、ブレス音に含まれる音高情報によって音高判定処部54からメロディ音高データが発生すると、メロディ音も加わって演奏が進行する。
(第5モード)第5モードにおいても、上記自動演奏データの処理動作、その他、音高決定の動作等は、第2〜4モードと同様である。この第5モードでは、モードスイッチ62が「5」端子に接続され、アンド回路71を介してワンショット回路68と第2のワンショット回路69のトリガ信号が演奏データ読出し処理部51へ歩進信号として入力される。すなわち、この第5モードでは、音声ピッチと自動生成したバルブ状態信号とにより何らかの音高(例えば、メロディ音高の倍音等)が決定され(第3モードと同様)、かつ、音量(ブレスレベル)が所定レベル以上(第4モードと同様)であれば、メロディ音の演奏が進行する。自動演奏用としてメモリ装置36に伴奏データが含まれていると伴奏データと共にメロディ音が進行する。
(第6モード)第6モードでは、上記自動演奏データの処理動作は第2〜4モードと同様であるが、音高決定の動作は第1モードと同様となる。この第6モードでは、モードスイッチ62が「6」端子に接続され、第2モードと同様に、演奏データ読出し処理部51への歩進信号として一致検出回路65の一致信号が入力される。しかし、モードスイッチ62の「6」端子への接続と連動するスイッチ62aがオンとなり、その出力がハイレベルとなって、セレクタ67はA入力を選択出力する。また、セレクタ64は第2〜5モードと同様にB入力を選択出力するので、音高候補抽出処理部53には、スイッチ回路32から出力されるバルブ状態信号が入力される(第1モードと同様)。
したがって、この第6モードでは、振動検出器20aからの音声ピッチと、バルブ操作子11〜13の演奏操作によるバルブ状態信号(メロディ音高データから自動生成したものではない)とで、自動演奏データのメロディ音高データと一致する音高が決定されるとメロディが進行する。なお、このバルブ状態信号が請求項の「組み合わせ情報」に相当する。
なお、レベル検出回路31bにおいて音量レベルを検出する閾値を、可変抵抗31cにより調性可能にしてもよい。これにより、第4及び第5モードにおいて、演奏が進行するためのブレスレベルを適宜設定することができる。
以上の実施形態では、演奏を歩進して停止するときの停止指示を、次のメロディ音高データ(あるいはメロディ音高マーク)の検出により得るようにしているが、次のタイミングデータ(時刻)や符長(時間)あるいはそれらのマークを検出したら停止指示を出すようにしてもよい。また、次のメロディ音高データなどの音符データが停止指示とならなくても、次の休符までの演奏、フレーズ単位あるいは小節単位など所定の(あるいは何らかのルールで決まる)演奏長さの単位で停止指示を出すようにしてもよい。すなわち、本発明における演奏の歩進、停止のインターバルは、前記実施形態の様な1つの音符単位とは限らず、上記のような単位、あるいはその他の単位でもよい。また、演奏データは実施形態(図6)のものに限らずその他各種のフォーマットでもよいことはいうまでもない。
なお、実施形態のように、演奏指示部をさらに設け、前記補助演奏部からの演奏データのうち、前記組み合わせ情報を用いて、演奏進行の指示として、前記演奏指示部で発光指示(振動指示でも可)させるようにしてもよい。これにより、演奏進行の各段階(各音符毎)で押さえるべき運指を学習することができる。この時単に、バルブを見ているだけでなく、演奏のための指を動かすようにできるので、さらに上達が早くなること請け合いである。ただし、実施例ではこのときの実際に操作したときの指情報は、無視され演奏に反映されない。
また、実施形態の第4モードのように、所定レベル以上の口入力があれば、歩進(演奏進行)するようにしてもよい。これにより、入力音高が間違っていても演奏進行は止まらない。間違えると、間違った音高の楽音を発生しつつ演奏進行がなされる。演奏ストップしないで演奏しやすくなるので、アンサンブル演奏練習に適している。音楽的に一番やってはいけないことは演奏がストップすることであるからである。
また、実施形態の第5モードのように、所定レベル以上の口入力で且つ口入力の音高判定(演奏データとの一致の度合い)が良好であれば、その条件だけで歩進(演奏進行)するようにしてもよい。これにより、入力音高を間違うと演奏進行されない。間違えても探り弾きなどによって正解音高へ瞬時に達すれば、演奏進行を大きく乱さないようにでき、より音楽的な演奏練習ができる。しかし、探り弾きを推奨するものではない。
また、実施形態では第1〜第3バルブ操作子11〜13のうちで操作すべき操作子を発光素子21〜23の点灯によって視覚的に表示するようにした。しかし、これに代えてまたは加えて、操作すべきバルブ操作子を上方または下方に若干変位させ、または同操作子を振動させて、操作すべきバルブ操作子を演奏者に対して触覚的に認識させるような運指ガイド指示を行うようにしてもよい。この場合、図2に破線で示したように、把持部50内に、第1〜第3バルブ操作子11〜13を駆動する小型電磁アクチュエータ、小型電圧アクチュエータなどの駆動装置81〜83を内蔵させるとともに、発光制御回路37に代えてまたは加えて、操作すべきバルブ操作子を表すバルブ状態信号に基づいて前記駆動装置81〜83を駆動制御する駆動制御回路を設ければよい。
実施形態では、「補助演奏部」あるいは「自動演奏部」として自動演奏データをメモリ装置36から入力するような構成とした例について説明したが、「補助演奏部」はこの例に限らず、例えばプロや熟練者の演奏による演奏データを入力するようにしてもよい。また、有線あるいはインターネットのサーバなどから演奏データの信を受けるようにしてもよい。
また、実施形態ではトランペット型の楽器の場合について説明したが、ホルン、ユーホニウム、チューバなどの、複数の演奏操作子を備え、この複数の演奏操作子の操作の組み合わせに応じて、発生される楽音の音高を決定するような管楽器を模した管楽器型の形状をした電子楽器に適用することもできる。
また、音声ピッチを入力する手段としてマイク等の振動検出器を用いた場合について説明したが、人体の「のど」に接触させて振動を検出する骨伝導ピックアップを用いてもよい。このような検出器を用いると声帯を悪くしたひとでも口空気流型楽器の演奏が可能となる道がこの発明によって開かれることにもなる。
11,12,13…バルブ操作子(演奏操作子)、20…口入力部、51…演奏データ読出し処理部(補助演奏部、自動演奏部)、51a…メロディ音高マーク検出部(補助演奏部、自動演奏部)