JP4653213B2 - 光ファイバケーブル - Google Patents
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Description
一般的に、一次被覆層には被覆後そのヤング率が3MPa以下、二次被覆層にはヤング率が500MPa以上になる樹脂が用いられている。
具体的には、クマゼミが架空に布設された光ファイバケーブルを木の幹や枝と誤って、そのシースに産卵管を突き刺し、内部に産卵する行動が原因である、というものである。
このようにシースに産卵管が刺し込まれると、内部の光ファイバにこれが刺さって光ファイバが傷つき、断線することがある。
このようにしてなる本発明の光ファイバケーブルによれば、セミの産卵時の光ファイバ心線のロス変動を小さく抑えることができる。
このようにしてなる本発明の光ファイバケーブルによれば、引張強度が20MPa以下であるので、常温環境下だけでなく−20℃程度の低温環境下においても光ファイバケーブルから光ファイバ心線を容易に取り出すことができ、さらに、引張強度が5MPa以上であるので、光ファイバケーブルを敷設する際にシースが損傷してしまう等の問題が生じにくい。
図1に示すように、本発明の光ファイバケーブル10は、その中心部に1本の光ファイバ心線1を有している。この光ファイバ心線1は、例えば、ガラス光ファイバの外周に、紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等からなる一次被覆層及びこの一次被覆層上に施した二次被覆層、必要ならさらに二次被覆層の外周に識別用の極めて薄い着色層を有し、一般的には外径250μmである。光ファイバ心線の種類としては、例えば、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standard Sector)G.652で規定される通常シングルモードファイバ(SMF)を用いることができる。
この光ファイバ心線1と一対のテンションメンバ2、2を覆うようにシース3が施されている。このシース3は、高分子材料からなり、例えば、ポリオレフィン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレートを主成分とした紫外線硬化型樹脂等を用いることができる。
ここで、支持線5は、例えば、FRP線や亜鉛メッキ鋼線等からなるものであり、このように支持線5を有する光ファイバケーブル10は、自己支持型光ファイバケーブルと呼ばれている。
尚、テンションメンバ2、2及び支持線5とも、ケーブル長手方向全長に亘って光ファイバ心線1と並行に配置されている。
シース3に降伏点時の応力より大きな応力がかけられると塑性領域(弾性領域を超え、変形が元には戻らず残留する領域)に移行し、耐磨耗性が初期状態よりも劣化する。したがって、セミが産卵管をシース3に押し当て、降伏点時以上の応力がかけられた状態では、シース3は産卵管の往復回転運動によって簡単に磨耗してしまう。
一方、シース3を形成する高分子材料として降伏点時の応力が大きいものを用いると、セミの産卵管を押し当てられても弾性領域を保持することができ、初期の摩耗性を保持することができる。これにより、セミの産卵行動等により光ファイバが断線する可能性を低減することができる。
なお、ここでいう降伏点時の応力とは、23℃におけるJIS K7113に規定される「引張降伏強さ」を意味する。
まず、13cm長に切断した光ファイバケーブル10を2本を1組にして、総数40本20組を用意した。1回の実験では1組2本の光ファイバケーブルをクマゼミと共に幅200mm、奥行き200mm、高さ300mmの容器内に放置し、24時間経過後、光ファイバケーブルに残された産卵傷の平均深さを調べた。結果を図2に示す。
なお、高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、降伏点時の応力は、結晶ポリオレフィンの配合量を大きくすることによって大きくすることができる。
また、心線取り出し作業性の観点からは、降伏点時の応力が20MPa以下の高分子材料を用いることが好ましい。
セミの産卵時において、産卵管が突き刺さったときの力が内部の光ファイバ心線まで作用し、光ファイバ心線が曲げられることによりロス変動が発生する。
このロス変動は、産卵時に一時的に光ファイバ心線の伝送損失が増加するものであるが、変動が大きい(1dBを超える)場合は光瞬断に達する可能性があり、また元の伝送損失に戻らない場合もある。なお、ロス変動が一時的にでも0.2dBを超えると通信障害などの問題が生じることがある。
なお、ここでいう0.3%モデュラスとは、JIS K7113に規定されるものであり、23℃における0.3%伸びたときの引張り弾性率を意味する。
図3に示すように長さ3mの光ファイバケーブル10をクマゼミを収容した幅200mm、奥行き200mm、高さ300mmの容器21内にはわせ、光ファイバケーブルの両端にそれぞれ波長1550nmの光源22と、OE変換器23/デジタルオシロスコープ24を接続し、産卵時に発生するロス変動を調べた。測定間隔は1msecとした。結果を図4に示す。
特に0.3%モデュラスが50MPaより小さい領域ではセミの産卵時のロス変動が急激に大きくなることから、0.3%モデュラスを50MPa以上とすることで、セミの産卵時のロス変動を効果的に低減できる。
なお、高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、0.3%モデュラスは、たとえば、ベースポリエチレンに配合するポリプロピレンの配合比や難燃材として添加する水酸化マグネシウムの添加量を増加させることによって大きくすることができる。
また、支持線を取り外した状態での固定曲げ配線のしやすさの観点からは、0.3%モデュラスが800MPa以下の高分子材料を用いることが好ましい。
引張強度を20MPa以下とすることで、常温環境下だけでなく−20℃程度の低温環境下においても光ファイバケーブルから光ファイバ心線を容易に取り出すことができ、さらに、引張強度を5MPa以上とすることで、光ファイバケーブルを敷設する際にシースが損傷してしまう等の問題が生じにくい。
なお、ここでいう引張強度とは、23℃におけるJIS K7113に規定される「引張応力」を意味する。
高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、引張強度は、たとえば、ベースポリエチレンに配合するポリプロピレンの配合比や難燃材として添加する水酸化マグネシウムの添加量を変化させることによって調整することができる。
ショアD硬度を62以下とすることで、常温環境下だけでなく−20℃程度の低温環境下においても光ファイバケーブルにニッパなどで切り込みを入れたときに亀裂が伝わりにくい。したがって、低温環境下においても良好な支持線の分離作業ができる。さらに、ショアD硬度を30以上とすることで、光ファイバケーブルを敷設する際にシースが損傷してしまう等の問題が生じにくい。
なお、ここでいうショアD硬度とは、JIS K7215 タイプDに規定されるものであり、23℃におけるものである。
なお、高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、ショアD硬度は、たとえば、ベースポリエチレンに配合するポリプロピレンの配合比を変えることで変化させることによって調整することができる。
ベースとなるポリオレフィン材料の種類(密度)や配合する樹脂や難燃材の種類・配合量を調整することで、降伏点時の応力、0.3%モデュラス、引張強度、ショアDを変化させた熱可塑性樹脂を用いてシース3を形成し、図1と同様の光ファイバケーブル10を製造した。これらを用いて、産卵傷の平均深さ、産卵時のロス変動、−20℃環境下での取り出し性、常温下での取り出し性、−20℃環境下での支持線分離性、常温下での支持線分離性を評価した。
−20℃環境下での取り出し性、常温下での取り出し性は、光ファイバケーブル10の支持線部を取りケーブル本体部のみの状態とし、端末よりニッパで10mm切り込みを入れる。その後光ファイバケーブルを手で左右に切り裂いたとき、問題なく切り裂けた場合を○、10mmの切り込みでは裂くのが非常に困難で、切り込みを100mm入れれば裂ける場合を△、切り込みを100mm入れても切り裂けない場合を×とした。
結果を表1に示す。
また、0.3%モデュラスを50MPa以上とすることで、セミの産卵行動によるロス変動を0.2dB以下に抑えることができた。
さらに、引張強度を20MPa以下、常温環境下だけでなく−20℃程度の低温環境下においても光ファイバケーブルから光ファイバ心線を容易に取り出すことができた。
また、ショアD硬度を62以下とすることで、良好な支持線部の分離性が得られた。
2 テンションメンバ
3 シース
4 切欠
5 支持線
9 連結部
10 光ファイバケーブル
31、41、51、61 内層シース
32、42、52、62 外層シース
Claims (4)
- 光ファイバ心線と、該光ファイバ心線の片側または両側に前記光ファイバ心線と平行に配置されたテンションメンバと、前記光ファイバ心線と前記テンションメンバとを一体的に被覆するシースと、を有する光ファイバケーブルにおいて、少なくとも前記シースの表面と前記光ファイバ心線との間であって、前記テンションメンバがない部分には、降伏点時の応力が12MPa以上であり、かつショアD硬度が30以上62以下である高分子材料があることを特徴とする光ファイバケーブル。
- 前記高分子材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
- 前記高分子材料は0.3%モデュラスが50MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
- 前記高分子材料は引張強度が5MPa以上20MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の光ファイバケーブル。
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