JP4650131B2 - レンズ基板およびリア型プロジェクタ - Google Patents
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リア型プロジェクタに用いられる透過型スクリーンでは、視野角特性を向上させる目的で、凸レンズとしてのマイクロレンズを備えるマイクロレンズ基板が用いられている。しかしながら、このようなマイクロレンズ基板を用いただけでは、光が必要以上に拡散してしまい、投影される画像において十分な輝度を得るのが困難となり、また、スクリーン上の各部位での明るさが大きく異なるものになってしまう。したがって、通常、透過型スクリーンにおいては、フレネルレンズ基板を用いて、光源からの光を一旦平行光にした後、この平行光を、マイクロレンズ基板で拡散させるような構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような構成では、透過型スクリーンを構成する部材が多くなってしまい、装置の小型化、薄型化に不利である。また、上記のように、複数のレンズ基板を有するため、これらを確実に平行に配置するのが困難で、スクリーンに対して正面の位置での画像の輝度を十分に高めるのが困難になるとともに、各方向についての視野角特性のばらつきが大きくなり、好適な画像を投影することができなくなる。
本発明のレンズ基板は、多数のレンズ部を有するレンズ基板であって、
レンズ基板の一方の主面側に、マイクロレンズとしての多数の凹レンズを有し、他方の主面側にフレネルレンズを有することを特徴する。
これにより、光学特性に優れたレンズ基板を提供することができる。
これにより、視野角特性を十分に優れたものとしつつ、投影される映像の輝度を特に高いものとすることができる。
本発明のレンズ基板では、前記凹レンズは、レンズ基板を平面視したときの縦幅が横幅よりも小さい扁平形状を有するものであることが好ましい。
これにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止することができる。
これにより、レンズ基板の光学特性を特に優れたものとすることができる。
本発明のレンズ基板では、前記凹レンズの表面付近に着色部を有することが好ましい。
これにより、コントラストに優れた画像を得ることができる。
これにより、光の利用効率に優れるとともに、レンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
本発明のレンズ基板では、前記着色部の平均厚さは、0.1〜50μmであることが好ましい。
これにより、光の入射側から入射させるべき光の透過率を特に高いものとしつつ、レンズ基板に入射させるべき光の入射側とは反対の側から入射した光(外光)を効率良く減衰させて外光の影響をより確実に防止することができる。その結果、レンズ基板を透過した光により形成される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
これにより、着色部は、各部位での厚さのばらつきが小さいものとなる。その結果、投射される画像において、色ムラ等の不都合が発生するのを効果的に防止することができる。
これにより、着色部は、各部位での厚さのばらつきがより小さいものとなる。
本発明のレンズ基板では、前記着色液は、前記着色剤と、ベンジルアルコールとを含むものであることが好ましい。
これにより、着色部は、各部位での厚さのばらつきがさらに小さいものとなる。
前記凹レンズが設けられた面側に、遮光部を有することが好ましい。
これにより、コントラストに優れた画像を得ることができる。
本発明のリア型プロジェクタは、本発明のレンズ基板を備えたことを特徴とする。
これにより、光学特性に優れたリア型プロジェクタを提供することができる。
なお、本発明において、「基板」とは、実質的に可撓性を有さない、比較的肉厚の大きい板状のものから、フィルム状(シート状)のもの等を含む概念のことを指す。
本発明のレンズ基板の用途は、特に限定されないが、本実施形態では、レンズ基板を、主に、リア型プロジェクタを構成する部材として用いるものとして説明する。
まず、本実施形態のレンズ基板の構成について説明する。
図1は、本発明のレンズ基板を示す模式的な縦断面図、図2は、図1に示すレンズ基板のマイクロレンズが設けられた面側からの平面図である。なお、以下の説明では、図1中の左側を「(光の)入射側」、右側を「(光の)出射側」と言う。また、本発明においては、特に断りのない限り、「(光の)入射側」、「(光の)出射側」とは、それぞれ、画像光(映像光)を得るための光の「入射側」、「出射側」のことを指し、外光等の「入射側」、「出射側」のことを指すものではない。また、本明細書で参照する各図は、マイクロレンズ、着色部等、構成の一部を強調して示したものであり、実際の寸法を反映するものではない。
レンズ基板1は、通常、主として透明性を有する材料で構成される。
レンズ基板1の具体的な構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の各種樹脂材料や、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。中でも、透明性、加工性等の観点から、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂がより好ましい。アクリル系樹脂は、優れた透明性を有し、かつ、耐熱性、耐光性、加工性、成形した際の寸法精度、機械的強度等にも優れ、また、最適な屈折率を有している。また、レンズ基板1を構成する材料としてアクリル系樹脂を用いた場合、例えば、後述するようなレンズ基板の製造方法において、簡易な設備で、より容易にレンズ基板を製造することができる。また、組成物の選択の自由度が増すとともに、レンズ基板を製造する際に用いる装置等の部材に対する悪影響の発生をより効果的に防止することができる。
基材15は、通常、主として、上述したような材料で構成されたものであるが、それ以外の成分を含むものであってもよい。
また、硬化部16は、後述するエネルギ線の照射で硬化することにより形成されたものである。前述した材料の中でも、エネルギ線(例えば、紫外線)の照射により好適に硬化し得る材料としては、例えば、アクリル系樹脂等が挙げられる。
特に、本実施形態では、着色部13が、光の入射側に設けられた凹レンズとしてのマイクロレンズ11の表面付近に設けられている。これにより、外光のレンズ界面での反射を低減させることができ、コントラストを向上させることができる。
着色部13の色は、特に限定されないが、例えば、青色を基調とし、赤色あるいは茶色あるいは黄色を混色した着色剤を用いて形成されるものであり、外観としては無彩色で黒色であり、光源の光の三原色のバランスを制御する特定の波長の光を選択的に吸収または透過するものであるのが好ましい。これにより、外光の反射を防止し、レンズ基板1を透過した光により形成される画像の色調を正確に表現し、さらに色座標が広く(色調の表現の幅が十分に広く)、より深い黒を表現できることで、結果的にコントラストを特に優れたものとすることができる。
このように、レンズ基板がマイクロレンズを備えるものであることにより、レンズ基板を、リア型プロジェクタ等に適用した場合における、視野角特性を特に優れたものとする(上下および左右方向の視野角特性をいずれも特に優れたものとする)ことができる。
上記のように、マイクロレンズの形状や配列方式、占有率等を厳密に規定することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
特に、本実施形態では、光の入射側に凹レンズとしてのマイクロレンズ11を有しており、光の出射側にフレネルレンズ12を有している。このような構成であることにより、正面の輝度分布をより均一にするという効果が得られる。
フレネルレンズ12のピッチは、特に限定されないが、50〜200μmであるのが好ましく、60〜180μmであるのがより好ましい。これにより、解像度を向上させることができ、かつ、マイクロレンズ11とフレネルレンズ12とのピッチ干渉によるモアレ現象をより効果的に防止することができる。
また、フレネルレンズ12のHaze(くもり度:Td/Tt、Td:拡散光線透過率、Tt:全光線透過率)が、例えば50〜89%になるようにすることが望ましい。
レンズ基板1の光の利用効率(レンズ基板1の入射面側から入射する光の光量に対する、出射面側から出射する光の光量の割合)は、60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80〜99%であるのがさらに好ましい。
次に、上述したレンズ基板の製造方法について説明するが、それに先立ち、レンズ基板の製造に好適に用いることができる第1の型としてのマイクロレンズ形成用型、および、その製造方法について説明する。
また、凸部61の高さをD[μm]、凸部61の短軸方向の長さをS[μm]としたとき、0.02≦S/D≦50の関係を満足するのが好ましく、0.1≦S/D≦1.40の関係を満足するのがより好ましく、0.5≦S/D≦1.0の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、光の干渉によるモアレの発生を効果的に防止しつつ、視野角特性を特に優れたものとすることができる。
前述したようなマイクロレンズ形成用型6は、図6に示すような、マイクロレンズ形成用型6の凸部に対応した形状の凹部51を有する凹部付き基板5を用いて製造する。
まず、凹部付き基板5を製造するに際し、基板7を用意する。
基板7を構成する材料としては、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料等が挙げられる。中でも、基板7の構成材料としては、ソーダガラス、結晶性ガラス(例えば、ネオセラム等)、無アルカリガラスが好ましい。このような材料は、各種エネルギ線に対する安定性が特に優れているとともに、たわみを生じ難く、傷つき難い。また、加工が容易で、かつ、比較的安価であり、製造コストの面からも有利である。
また、この基板7は、厚さが均一で、たわみや傷のないものが好適に用いられる。また、基板7は、洗浄等により、その表面が清浄化されているものが好ましい。
特に、本実施形態では、まず、図4(a)に示すように、用意した基板7の裏面に裏面保護膜89を形成するとともに、基板7の表面にマスク形成用膜4を形成し(マスク形成用膜形成工程)、その後、図4(b)に示すように、マスク形成用膜4に初期孔81を形成すること(初期孔形成工程)によりマスク8を得る。マスク形成用膜4および裏面保護膜89は同時に形成することもできる。
かかる観点からは、マスク形成用膜4(マスク8)を構成する材料としては、例えばCr、Au、Ni、Ti、Pt等の金属やこれらから選択される2種以上を含む合金、前記金属の酸化物(金属酸化物)、シリコン、樹脂等が挙げられる。
また、マスク形成用膜4(マスク8)は、例えば、実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、異なる複数の層を有する積層体等であってもよい。
初期孔81の形成方法は、特に限定されないが、レーザ光の照射による方法であるのが好ましい。これにより、所望のパターンに配列した所望の形状の初期孔81を容易かつ精確に形成することができる。その結果、凹部51の形状、配列方式等をより確実に制御することができる。また、初期孔81をレーザの照射により形成することにより、マイクロレンズ形成用型を生産性良く製造することができる。特に、大面積の基板にも簡単に凹部を形成することができる。また、レーザ光の照射により初期孔81を形成する場合、その照射条件を制御することにより、後述するような初期凹部71を形成することなく初期孔81のみを形成したり、初期孔81とともに、形状、大きさ、深さのばらつきの小さい初期凹部71を、容易かつ確実に形成することができる。また、レーザ光の照射でマスク形成用膜4に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によってレジスト膜に開口部を形成する場合に比べて、簡単かつ安価に開口部(初期孔81)を形成することができる。
また、マスク形成用膜4に対してレーザ光の照射で初期孔81を形成するだけでなく、例えば、基板7にマスク形成用膜4を形成する際に、予め基板7上に所定パターンで異物を配しておき、その上にマスク形成用膜4を形成することでマスク形成用膜4に積極的に欠陥を形成し、当該欠陥を初期孔81としてもよい。
エッチングの方法は、特に限定されず、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等が挙げられる。以下の説明では、ウェットエッチングを用いる場合を例に挙げて説明する。
また、ウェットエッチング法を用いると、凹部51を好適に形成できる。そして、エッチング液として、例えば、一水素二フッ化アンモニウムを含むエッチング液を用いると、基板7をより選択的に食刻することができ、凹部51を好適に形成することができる。
また、ウェットエッチングによれば、ドライエッチングに比べて簡単な装置で処理を行うことができ、さらに、一度に多くの基板に対して処理を行うことができる。これにより生産性が向上し、安価にマイクロレンズ形成用型6を提供することができる。
マスク8が、前述したような主としてクロムで構成される層と、主として酸化クロムで構成される層とを有する積層体である場合、マスク8の除去は、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含む混合物を用いたエッチングにより行うことができる。
以上により、図4(d)および図6に示すように、基板7上に多数の凹部51が千鳥状に形成された凹部付き基板5が得られる。
すなわち、レーザ光の照射によりマスク形成用膜4に初期孔81を形成することで、従来のようなフォトリソグラフィ法によって開口部を形成する場合に比べて簡単かつ安価に、所定パターンで開口部(初期孔81)を有するマスクを得ることができる。これにより生産性が向上し、安価に凹部付き基板5を提供することができる。
また、初期孔81の形成をレーザの照射により行う場合、形成される初期孔81の形状、大きさ、配列等を、容易かつ確実に管理することができる。
<A’1>まず、図5(e)に示すように、上記のようにして得られた凹部付き基板5の凹部51が形成された側の面に、流動性を有する状態の樹脂材料62(例えば、軟化状態の樹脂材料62、未重合(未硬化)の樹脂材料62)を付与する。
なお、樹脂材料62の付与に先立ち、凹部付き基板5の凹部51が形成されている側の面に離型処理を施しておいてもよい。これにより、後述する工程において、凹部付き基板5から、マイクロレンズ形成用型を容易かつ確実に分離(剥離)することができる。
<A’2>次に、樹脂材料62を平板等で押圧した後、樹脂材料62を固化(ただし、硬化(重合)を含む)させる。これにより、凹部51に充填された樹脂で構成された凸部61を備えたマイクロレンズ形成用型6が形成される。
次に、上述したマイクロレンズ形成用型6を用いて、レンズ基板1を製造する方法について説明する。
図7、図8は、図1に示すレンズ基板の製造方法の一例を示す模式的な縦断面図である。なお、以下の説明では、図7、図7中の下側を「(光の)入射側」、上側を「(光の)出射側」と言う。
なお、本工程においては、組成物3としてスペーサー19を含むものを用いてもよい。これにより、後述する工程においてマイクロレンズ形成用型6上の組成物3を基材15で押圧する際に、組成物3で構成された層の不本意な厚さのばらつきが生じるのを防止することができ、最終的に得られるレンズ基板1での、マイクロレンズ11の焦点の位置をより確実に制御することができ、色ムラ等の不都合の発生をより効果的に防止することができる。
なお、組成物3の付与に先立ち、マイクロレンズ形成用型6の凸部61が形成されている側の面に離型処理を施しておいてもよい。これにより、後述する工程において、マイクロレンズ形成用型6から、レンズ基板1(より正確には、レンズ基板1製造中筐体としての基板2)を容易かつ確実に分離(剥離)することができる。
また、組成物押圧工程においては、例えば、押圧手段を用いて、フレネルレンズ形成用型9のほぼ全面(組成物3に接触するのとは反対の面側の全面)を、押圧してもよい。これにより、組成物3に加えられる圧力をより均一なものとすることができ、その結果、最終的に得られるレンズ基板1において、厚さの不本意なばらつきが発生するのをより効果的に防止することができる。また、押圧手段を用いることにより、容易かつ確実に、比較的大きな圧力で、基材15、フレネルレンズ形成用型9により組成物3を押圧することができる。その結果、レンズ基板1の厚さをより薄いものとすることができる。その結果、レンズ基板1の設計上、レンズの焦点距離を短くすることができ、光学特性の観点から有利である。また、レンズ基板を備える透過型スクリーン(リア型プロジェクタ)の薄型化を図る上でも有利である。
また、本工程においては、基材15とフレネルレンズ形成用型9との間に、上述したのと同様なスペーサーを配しておいてもよい。
着色液は、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、着色剤とベンジルアルコールとを含むものである。このような着色液を用いることにより、基板2の着色を容易かつ確実に行うことができる。特に、アクリル系樹脂のように、従来の着色方法では着色が困難であった材料で構成された基板に対しても、容易かつ確実に着色を施すことができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
なお、ここで、アクリル系樹脂に対して、ベンジルアルコールは特に前述の着色座席を確保する働きが強い。このために着色剤をより効率的に基板に取りこむことが可能となる。
なお、着色液の付与は、必要に応じて(例えば、形成すべき着色部13の濃度を濃くしたい場合等においては)、複数回繰り返し行ってもよい。
また、着色液の付与後、必要に応じて、加熱、冷却等の熱処理、光照射、雰囲気の加圧、減圧等の処理を施してもよい。これにより、着色部13の定着(安定化)を促進することができる。
着色液中におけるベンジルアルコールの含有率は、特に限定されないが、0.01〜10.0wt%であるのが好ましく、0.05〜8.0wt%であるのがより好ましく、0.1〜5.0wt%であるのがさらに好ましい。ベンジルアルコールの含有率が上記範囲内の値であると、着色部13を形成すべき基板2に対する悪影響の発生(例えば、基板2の構成材料の劣化等)をより効果的に防止しつつ、容易かつ確実に好適な着色部13を形成することができる。
以下、前記レンズ基板(透過型スクリーン)を備えたリア型プロジェクタについて説明する。
図9は、本発明のリア型プロジェクタの構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、リア型プロジェクタ300は、投写光学ユニット310と、導光ミラー320と、レンズ基板1(透過型スクリーンとしてのレンズ基板1)とが筐体340に配置された構成を有している。
また、特に、前述したレンズ基板1では、楕円形状のマイクロレンズ11が千鳥状(千鳥格子状)に配されているので、リア型プロジェクタ300では、モアレ等の問題が特に発生し難い。
なお、ブラックマトリックス10は、図示の構成のように、透明な基板100上に形成した状態で、設けられたものであってもよいし、レンズ基板1に直接形成することにより設けられたものであってもよい。
例えば、レンズ基板、リア型プロジェクタを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明のレンズ基板は、前述したような方法により得られたものに限定されない。すなわち、前述したような方法以外の方法により、形成されたレンズ基板を用いてもよい。例えば、前述した凹部付き基板と、フレネルレンズとを貼り合わせることにより得られたものを用いてもよい。
また、マイクロレンズ形成用型の製造に用いる凹部付き基板の製造方法は、前述したような方法に限定されない。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ形成用型の表面に組成物を付与するものとして説明したが、例えば、フレネルレンズ形成用型(第2の型)の表面に樹脂を付与し、これをマイクロレンズ形成用型(第1の型)で押圧することにより、レンズ基板を製造してもよい。
また、前述した実施形態では、レンズ基板の製造において、マイクロレンズ形成用型を除去するものとして、マイクロレンズ形成用型は必ずしも除去しなくてもよい。言い換えると、マイクロレンズ形成用型は、レンズ基板の一部を構成するものであってもよい。
(実施例1)
以下のように、マイクロレンズ形成用の凸部を備えたマイクロレンズ形成用型(第1の型)を製造した。
まず、基板として、横1.2m×縦0.7m角、厚さ4.8mmのソーダガラス基板(絶対屈折率n2:1.50)を用意した。
このソーダガラス基板を、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む洗浄液に浸漬して6μmエッチングを行い、その表面を清浄化した。
その後、純水洗浄およびN2ガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
なお、レーザ加工は、エキシマレーザを用いて、エネルギ強度1mW、ビーム径3μm、走査速度0.1m/秒という条件で行った。
これにより、マスクの上記範囲全面に亘って、所定の長さを有する初期孔が、千鳥状に配されたパターンで形成された。初期孔の平均幅は2μmであり、平均長さは2μmであった。
また、この際、ソーダガラス基板の表面に深さ50Åの凹部および変質層も形成した。
なお、ウェットエッチングは、エッチング液として、4wt%の一水素二フッ化アンモニウムと、8wt%の過酸化水素とを含む水溶液を用い、浸漬時間は2.0時間とした。
次に、純水洗浄およびN2ガスを用いた乾燥(純水の除去)を行った。
その後、基板の凹部が形成されている面側に、ヘキサメチルジシラザンによる気相表面処理(シリル化処理)を行い、離型処理部を形成した。
これにより、図6に示すような、ソーダガラス基板上に、多数の凹部が千鳥状に配列された凹部付き基板を得た。得られた凹部付き基板を平面視したときに、凹部が形成されている有効領域において、凹部が占める面積の割合が97%であった。
次に、アクリル系樹脂を平板により押圧した後、紫外線を照射し、アクリル系樹脂を硬化させた。
その後、凹部付き基板を取り外し、マイクロレンズ形成用型を得た。
得られたマイクロレンズ形成用型の凸部が形成されている面側に、ヘキサメチルジシラザンによる気相表面処理(シリル化処理)を行い、離型処理部を形成した。
次に、マイクロレンズ形成用型上の組成物の表面に、硬化した(重合済)のアクリル系樹脂(PMMA樹脂(メタクリル樹脂))で構成された基材(平板状部材)を設置した。基材の厚さは、2mmであった。
その後、基材上に、未重合(未硬化)のアクリル系樹脂(PMMA樹脂(メタクリル樹脂))で構成された組成物を付与した。
その後、押圧手段によりフレネルレンズ形成用型を押圧し、このフレネルレンズ形成用型により、組成物、基板を押圧した。押圧手段としては、基材を押圧する押圧部が、平坦でステンレス鋼で構成されたものを用いた。
その後、押圧手段による押圧を行いつつ、組成物に対してマイクロレンズ形成用型側からエネルギ線としての紫外線を照射することにより、組成物を硬化させた。これにより、基材の両面側に、組成物が硬化することにより形成された硬化部が接合してなる基板が得られた。
その後、マイクロレンズ形成用型から取り外された基板のマイクロレンズが形成された面側に、90℃の着色液を付与することにより、着色部を形成した。着色液としては、分散染料(Blue(双葉産業製)):2重量部、分散染料(Red(双葉産業製)):0.1重量部、分散染料(Yellow(双葉産業製)):0.05重量部、ベンジルアルコール:10重量部、界面活性剤:2重量部、純水:1000重量部の混合物を用いた。また、基板と着色液とは、20分間接触させた。なお、形成された着色部の濃度は、Y値(D65/2°視野)で55%であった。
このようにして得られた透過型スクリーンを用いて、図9に示すようなリア型プロジェクタを作製した。なお、光の入射側にマイクロレンズが配されるようにレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)を設置した。
マイクロレンズ形成用型の製造における初期孔の形成条件、エッチング条件を調節するとともに、レンズ基板の製造に用いる組成物の構成材料、エネルギ線の種類等を表1に示すようにし、着色液の温度、濃度、付与時間等を調整し、着色部の濃度、着色部の平均厚さを表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)、リア型プロジェクタを製造した。
光の出射側にマイクロレンズが配されるようにレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)を設置した以外は、前記実施例1と同様にしてレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)、リア型プロジェクタを製造した。
(実施例5)
光の出射側にマイクロレンズが配されるようにレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)を設置した以外は、前記実施例2と同様にしてレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)、リア型プロジェクタを製造した。
(実施例6)
光の出射側にマイクロレンズが配されるようにレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)を設置した以外は、前記実施例3と同様にしてレンズ基板(透過型スクリーンとして機能するレンズ基板)、リア型プロジェクタを製造した。
実施例4と同様にしてレンズ基板を製造し、以下のようにして、レンズ基板のマイクロレンズが設けられた側にブラックマトリックスを設けた以外は、前記実施例4と同様にしてリア型プロジェクタを製造した。
まず、厚さ3mmのガラス基板を用意した。
次に、90℃×30分のプレベーク処理を施した。
次に、遮光材料が塗布された面が光の出射側となるように、前記ガラス基板を前記レンズ基板のマイクロレンズが形成されている側と接合した。
その後、0.5wt%のKOH水溶液を用いて、40秒の現像処理を施した。
その後、純水洗浄およびN2ガスを用いた乾燥(純水の除去)を行い、さらに、200℃×30分のポストベーク処理を施した。これにより、各マイクロレンズに対応した開口部を有するブラックマトリックスが形成された。形成されたブラックマトリックスの厚さは2μm、開口部の直径は45μmであった。
マイクロレンズ形成用型として、銅で構成され、前記実施例1で用いたのと同様の形状を有するものを用意した。
次に、マイクロレンズ形成用型上の組成物の表面に、硬化した(重合済)のアクリル系樹脂(PMMA樹脂(メタクリル樹脂))で構成された基材(平板状部材)を設置した。基材の厚さは、2mmであった。その後、押圧手段により基材を押圧し、この基材により、前記組成物を押圧した。押圧手段としては、基材を押圧する押圧部が、平坦でステンレス鋼で構成されたものを用いた。
その後、押圧手段による押圧を解除し、組成物に対して基材側からエネルギ線としての紫外線を照射することにより、組成物を硬化させた。これにより、組成物が硬化することにより形成された硬化部が、基材に接合してなる基板が得られた。
その後、マイクロレンズ形成用型から取り外された基板のマイクロレンズが形成された面側に、着色部を形成することにより、一方の面側に多数個のマイクロレンズを備えたマイクロレンズ基板を得た。なお、着色部の形成は、前記実施例1と同様の条件で行った。
一方、フレネルレンズ形成用型として、銅で構成され、前記実施例1で用いたのと同様の形状を有するものを用意した。
その後、押圧手段による押圧を解除し、組成物に対して基材側からエネルギ線としての紫外線を照射することにより、組成物を硬化させた。これにより、組成物が硬化することにより形成された硬化部が、基材に接合してなる基板が得られた。
その後、上記のようにして得られたマイクロレンズ基板とフレネルレンズ基板とを用いて、透過型スクリーンを組み立てた。このとき、マイクロレンズ基板のマイクロレンズが設けられた面側が、フレネルレンズ基板に対向するように組み立てた。
このようにして得られた透過型スクリーンを用いて、図9に示すようなリア型プロジェクタを作製した。なお、透過型スクリーンは、光の入射側にフレネルレンズ基板が設置され、フレネルレンズ基板を透過した光(平行光)がマイクロレンズ基板に入射するように、設置した。
実施例1で得られた凹部付き基板をマイクロレンズ形成用型として用いた以外は、前記実施例1と同様にしてリア型プロジェクタを製造した。すなわち、凸レンズとしてのマイクロレンズを備えたレンズ基板を有するリア型プロジェクタを製造した。
前記各実施例および各比較例について、レンズ基板(マイクロレンズを備えたレンズ基板)の製造条件、レンズ基板(マイクロレンズを備えたレンズ基板)の構成等を表1にまとめて示す。なお、表中、メタクリル樹脂を「PMMA」で示した。また、エネルギ線の照射方向については、マイクロレンズ形成用型側からの照射を「正」、それとは反対側からの照射を「逆」として示した。また、表1中、比較例2のマイクロレンズ形成用型については、凹部についての値を示した。
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタについて、光の利用効率の評価を行った。
光の利用効率の評価は、A(=300)[cd/m2]の白色光を入射させた際、透過型スクリーンの光の出射面側で測定される光の輝度B[cd/m2]の比率(B/A)を求めることにより行った。B/Aの値が大きいほど、光の利用効率が優れているといえる。なお、実施例1〜3および比較例2については、マイクロレンズが設けられた面側から光を入射させた際の光の利用効率を求め、実施例4〜7および比較例1については、フレネルレンズ基板が設置された面側から光を入射させた際の光の利用効率を求めた。
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタについて、コントラストの評価を行った。
コントラスト(CNT)として、暗室において413lxの全白光が入射した時の白表示の正面輝度(白輝度)LW[cd/m2]と、明室において光源を全消灯した時の黒表示の正面輝度の増加量(黒輝度増加量)LB[cd/m2]との比LW/LBを求めた。なお、黒輝度増加量は、暗室の黒表示の輝度に対する増加量をいう。また、明室での測定は、外光照度が約185lxの環境下で行った。暗室での測定は、外光照度が0.1lx以下の環境下で行った。
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーン(レンズ基板)にサンプル画像を表示させた状態で、鉛直方向および水平方向での視野角の測定を行った。
視野角の測定は、変角光度計(ゴニオフォトメータ)で、1度間隔で測定するという条件で行った。
前記各実施例および各比較例のリア型プロジェクタの透過型スクリーン(レンズ基板)にサンプル画像を表示させた。表示された画像について、回折光、モアレ、色ムラの発生状況を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:回折光、モアレ、色ムラが全く認められない。
○:回折光、モアレ、色ムラがほとんど認められない。
△:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つがわずかに認められる。
×:回折光、モアレ、色ムラのうち少なくとも一つが顕著に認められる。
これらの結果を表2にまとめて示す。
これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
Claims (12)
- 多数のレンズ部を有するレンズ基板であって、
レンズ基板の一方の主面側に、マイクロレンズとしての多数の凹レンズを有し、他方の主面側にフレネルレンズを有することを特徴するレンズ基板。 - 前記凹レンズの曲率半径は、5〜300μmである請求項1に記載のレンズ基板。
- 前記凹レンズは、レンズ基板を平面視したときの縦幅が横幅よりも小さい扁平形状を有するものである請求項1または2に記載のレンズ基板。
- 前記レンズ基板の厚さは、0.5〜5mmである請求項1ないし3のいずれかに記載のレンズ基板。
- 前記凹レンズの表面付近に着色部を有する請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズ基板。
- 前記着色部の濃度は、Y値(D65/2°視野)で20〜85%である請求項5に記載のレンズ基板。
- 前記着色部の平均厚さは、0.1〜50μmである請求項5または6に記載のレンズ基板。
- 前記着色部は、前記凹レンズが設けられた側の面に、着色剤を付与することにより形成されたものである請求項5ないし7のいずれかに記載のレンズ基板。
- 前記着色剤の付与は、前記着色剤を含む着色液を用いて行われる請求項8に記載のレンズ基板。
- 前記着色液は、前記着色剤と、ベンジルアルコールとを含むものである請求項9に記載のレンズ基板。
- 前記フレネルレンズが設けられた面側から光を入射して用いるレンズ基板であって、
前記凹レンズが設けられた面側に、遮光部を有する請求項1ないし10のいずれかに記載のレンズ基板。 - 請求項1ないし11のいずれかに記載のレンズ基板を備えたことを特徴とするリア型プロジェクタ。
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