JP4648098B2 - 流量制御機器絶対流量検定システム - Google Patents
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Description
これらのガスはその流量を厳格に管理しなければならない。
その理由として、ガス流量がプロセスの良否に直接影響することが挙げられる。すなわち、成膜プロセスにおいては膜質が、エッチングプロセスにおいては回路加工の良否が、ガス流量の精度により多大な影響を受け、半導体製品の歩留まりがそれにより決定される。
また、これらのガス、特に半導体製造プロセスに使用しうる高純度かつ無塵のものは高価な上、ガス種によっては自然劣化による使用制限があるため大量保管ができないことも理由として挙げられる。
従って、従来から半導体製造プロセス回路内に流量制御機器である公知のマスフローコントローラを配して、ガス種ごとに最適の流量を流すようにしている。そして、かかるマスフローコントローラは、印加電圧を変更することにより、設定流量を変更してプロセスレシピの変更に対応できるようになっている。
このように、印加電圧と実流量との関係が変化し、実流量が変化する可能性があるので、マスフローコントローラの流量は定期的に流量を検定し、較正される必要がある。
従って、配管から外さずに流量検定が行えることが理想的である。
配管を組んだままの状態で流量検定を行う方法としては、プロセスチャンバに備えられている真空系を利用することも考えられるが、この方法では所要時間や精度の点で不十分である。
特許文献1には、マスフローコントローラ絶対流量検定システムについて開示されている。図14にその配管図を示す。
このシステムは、計測用ガスとして窒素ガスのような不活性ガスを用い、ガスラインが所定の計測用ガスで満たされた状態から、マスフローコントローラ10を通しての圧力降下速度を測定するものである。そのため、マスフローコントローラ10の入口と第1開閉弁100の間の配管110上に、圧力センサ11と、計測用開閉弁101を介して計測用ガスを蓄える計測用ガスタンク102が設けられており、マスフローコントローラ10へプロセスガスの供給を第1開閉弁100により遮断した後、計測用開閉弁101を開いて圧力センサ11により所定の圧力降下に要する時間Tを測定することで、マスフローコントローラ10の絶対流量を容易かつ簡便に検定できる。
しかしながら、実際にラインを流れるプロセスガスは圧縮流体であり、理想気体に近い窒素ガスのような不活性ガスによって検定を行ったからといって、実際にプロセスガスを用いた場合の流量と同じとなる保証は無い。
また、このような計測をしている間はシステムを使用することができず、また、計測終了後にシステムを再起動するに当たって、ライン内のプロセスガスの純度が回復するまでに時間を要するため、システムの稼働率が低下してしまうという問題があった。
また、特許文献1の方法では、測定の結果、マスフローコントローラ10の流量特性が初期状態からずれていることがわかっても、その較正は別途システム使用者が行う必要があった。
そこで、本出願人は特許文献2のような方法も開示している。
特許文献2には、ガス配管系の検定システムについて開示されている。図15にその配管の模式図を示す。
このシステムにおいて、マスフローコントローラ10の流量を検定するときは、まず第1遮断弁100と終段遮断弁120とをともに開く。このとき、プロセスガス源からプロセスガスが供給される一方で、マスフローコントローラ10より下流の部分はプロセスチャンバ121の下流にある排気ポンプに連通している。
この種のガス配管系では通常、プロセスチャンバ121のさらに下流に排気ポンプが設けられていることが多く、その場合には当該部分の圧力は真空近くにまで下がる。また、排気ポンプが設けられていない場合には大気圧近辺まで下がる。そして、その圧力は圧力センサ11により計測されている。
具体的には、圧力上昇の経時変化を最小二乗法によって傾斜を算出し、初期の傾斜と比較することで検定が行われる。
これによって、プロセスガスによってマスフローコントローラ10の流量検定が可能となる。
また、流量の検定の結果、マスフローコントローラ10の流量が初期よりもずれているような場合には、図示しない本体コントローラからの指令によって、流量の補正が自動的になされるため、常に設定した流量のガスの供給が可能になる。
特許文献3は、気体マスフロー測定システムについて開示されており、図16に概念図を示している。
図16では、圧力トランデューサ130に接続される入力端子134と、入力端子134と出力端子142の間に電気的に接続される温度感知性の抵抗要素138とに接続されており、固定された温度感知性の抵抗要素140は、出力端子142とグランド136との間に電気的に接続されている。
圧力トランデューサ130は、任意の比較的高精度の圧力ゲージであり、例えば測定されている気体圧力に応答する可動の金属ダイアフラムを用いるタイプのキャパシタンスマノメータである。
従って、この圧力トランデューサ130を、図示しない気体源に接続されるマスフローコントローラ10の下流に設けられた既知の容積を有するチャンバに接続することによって、マスフローコントローラ10の、気体の平均流量を決定し較正する比較的単純な装置が提供されることになる。
特許文献3の方法によれば、チャンバ内部の気体のモル数に比例して、マスフローコントローラの流量を得ることが可能であり、被測定流体もプロセスガスそのものを測定することが可能である。なお、この際には、数学的な計算は不要となり、圧力と温度とを個別に測定することも不要となる。
つまり、特許文献1乃至特許文献3の方法では、高精度な絶対流量による検定を行うことは困難であると考えられる。
特許文献2では、プロセスチャンバに接続する流路の終段遮断弁とマスフローコントローラとの間の空間の容積が一定である必要があり、この空間の容積が変化してしまうと、基準となるべきデータが無くなってしまい、実質的に改造以後はマスフローコントローラの較正をすることができない。
特許文献3においても同じことが言える。流量を求めるために、圧力センサをトリガーとした電気回路を用いて、既知の一定体積を有するチャンバ内の圧力上昇を計測すると記載されている。そのため、改造を行うことにより、被測定空間の容積が変化してしまっては、流量の検定が正確に行えない。また、ここで言うチャンバとは、既知の一定体積を有する配管に接続する圧力を測定するための容器のことを指しており、流路変更の影響をほとんど受けない程度に、チャンバの容積を十分大きくとったシステムにすることも考えられるが、空間的制約の厳しい半導体製造装置では、実現的でない。
しかしながら、ガス集積ユニットの改造は、製造計画や設計変更等によって頻繁に起こりうることであり、改造に対応した絶対流路測定手段の実現は、ユーザーからの要請も非常に高い。
(1)流量制御機器の出口とプロセスチャンバの入口とを連通するガス流路に設けられた第1遮断弁及び第2遮断弁とを有する流量制御ユニットにおける前記流量制御機器の絶対流量を検定する流量制御機器絶対流量検定システムにおいて、前記第1遮断弁及び前記第2遮断弁との間の前記ガス流路と真空ポンプの入口とを連通する排気流路と、前記排気流路に設けられた第3遮断弁及び第4遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁との間の前記排気流路に設けられた、圧力センサと温度センサと、前記圧力センサと前記温度センサとを接続し、ガス種固有の圧縮因子データ、及び前記流量制御機器の出口と、前記第
2遮断弁と、前記第4遮断弁により形成される所定の空間の容積値を記憶する検定用制御装置と、を有し、第1計測時における、前記圧力センサによる第1圧力値と、前記温度センサによる第1温度値とに対応する第1圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第1圧力値、前記第1温度値、前記容積値、及び前記第1圧縮因子値から第1質量を求め、第2計測時における、前記圧力センサによる第2圧力値と、前記温度センサによる第2温度値とに対応する第2圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第2圧力値、前記第2温度値、前記容積値、及び前記第2圧縮因子値から第2質量を求め、前記第1質量と、前記第2質量との差により、前記流量制御機器の絶対流量を検定すること、前記流量制御機器は、予め与えられる一定流量を流すものであり、前記第1計測時と、前記第2計測時を、経過時間を基準に決定する第1方式と、前記第1計測時と、前記第2計測時を、所定圧力を基準に決定する第2方式とを、計測時に、前記流量制御機器を通過する流体の前記一定流量によって、切り替えること、を特徴とする。
また、ここでいう圧縮因子とは、圧力P、絶対温度Tにおける気体1molの体積をV、気体定数をRとするとき、Z=PV/RTの式で表される変数を圧縮因子という。実在気体の理想気体からの偏差を表すもので、ガス種によって異なる値を示し、理想気体ではZ=1である。また、Zは圧縮係数とも呼ばれる。
また、ここでいう圧縮因子データとは、予め計測された温度と圧力に対をする圧縮因子の数値をデータ化したものをいい、ガス種によっても異なるデータを有する。ただし、限定したガス種についてのみの使用の場合であれば、データを持たずに計算式によって算出することも可能である。
また、ここでいうプロセスチャンバとは、その内部でプロセスガスによる半導体製造プロセスが実施されるもののことを指す。
また、ここでいう所定圧力とは、経過時間に替えて流量制御機器の流量を検定するために採用する圧力値であり、検定に用いるプロセスガスの流量が多い場合、瞬時に圧力が上がってしまうため、圧力を基準に測定を行ったほうが精度良く測定することができ、実験によっても確認されている。
(1)流量制御機器の出口とプロセスチャンバの入口とを連通するガス流路に設けられた第1遮断弁及び第2遮断弁とを有する流量制御ユニットにおける前記流量制御機器の絶対流量を検定する流量制御機器絶対流量検定システムにおいて、前記第1遮断弁及び前記第2遮断弁との間の前記ガス流路と真空ポンプの入口とを連通する排気流路と、前記排気流路に設けられた第3遮断弁及び第4遮断弁と、前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁との間の前記排気流路に設けられた、圧力センサと温度センサと、前記圧力センサと前記温度センサとを接続し、ガス種固有の圧縮因子データ、及び前記流量制御機器の出口と、前記第
2遮断弁と、前記第4遮断弁により形成される所定の空間の容積値を記憶する検定用制御装置と、を有し、第1計測時における、前記圧力センサによる第1圧力値と、前記温度センサによる第1温度値とに対応する第1圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第1圧力値、前記第1温度値、前記容積値、及び前記第1圧縮因子値から第1質量を求め、第2計測時における、前記圧力センサによる第2圧力値と、前記温度センサによる第2温度値とに対応する第2圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第2圧力値、前記第2温度値、前記容積値、及び前記第2圧縮因子値から第2質量を求め、前記第1質量と、前記第2質量との差により、前記流量制御機器の絶対流量を検定すること、前記流量制御機器は、予め与えられる一定流量を流すものであり、前記第1計測時と、前記第2計測時を、経過時間を基準に決定する第1方式と、前記第1計測時と、前記第2計測時を、所定圧力を基準に決定する第2方式とを、計測時に、前記流量制御機器を通過する流体の前記一定流量によって、切り替えること、を特徴とするので、理想気体に近い窒素ガスのような測定用ガスをではなく、実際にマスフローコントローラに流すプロセスガスを用いて、流量制御機器の絶対流量を検定することが可能となり、理想気体の状態方程式を、各時点での圧力値と温度値のそれぞれに対応する圧縮因子によって補正して算出するので、精度の高い絶対流量が得られ、それによって流量制御機器の絶対流量検定することが可能になるとともに、流量制御機器を通過する気体の流量にあった、精度良い検定を行うことができるという優れた効果を奏する。
そして、このように実在気体を使用して精度の良い絶対流量を求めることが可能となるので、計測用ガスを用いて較正を行った場合のように、実際の使用状態と異なることが無く、絶対流量によって検定が可能となり、それによって較正されるので、半導体機器に供給しているガスの絶対流量を把握することができる。
従って、流量が少ない場合には経過時間を基準に、流量が多い場合には所定圧力を基準に測定を行い、絶対流量を検定するシステムを採用することで、低コストで、空間効率的にも優れた、精度良い流量検定が実現可能となる。
(第1実施例)
図1には、半導体製造プロセスに用いられる流量制御機器の絶対流量を検定するのに必要な最小構成の流路構成図が示されている。
流体制御機器であるマスフローコントローラ10は、その内部でプロセスガスによる半導体製造プロセスが実施されているプロセスチャンバ13の入口に接続される、ガス流路30に接続されている。また、第1遮断弁21と第2遮断弁22は、マスフローコントローラ10の出口とプロセスチャンバ13の入口とを連通する、ガス流路30上に設けられている。
さらに、第1遮断弁21と第2遮断弁22の間に、真空ポンプ14に接続される排気流路31が接続されている。さらに、この排気流路31には第3遮断弁23及び第4遮断弁24が設けられており、第3遮断弁23と第4遮断弁24の間には圧力センサ11と、温度センサ12が設けられている。なお、これら第3遮断弁23、圧力センサ11、温度センサ12、及び第4遮断弁24が排気流路31に設けられている部分を、説明の便宜上、検定ユニット20と称する。
この第1遮断弁21、第2遮断弁22、第3遮断弁23、及び第4遮断弁24は図示しない流体接続ユニットに接続されるエアオペレート式のダイアフラム弁である。この遮断弁については必ずしもエアオペレート式である必要は無いが、半導体製造プロセスにおいては、前述したように可燃性のガスを使用するケースもあるので、防爆仕様であることが望ましく、エアオペレート式のものが用いられることが多い。
図2は、実際のラインの一部を表した配管図である。
すなわち、複数のガスライン、図2においては第1ガス供給路33、第2ガス供給路34、第3ガス供給路35の3つの流路が、マスフローコントローラ10を介してガス流路30に接続されており、第1遮断弁21と第2遮断弁22の間のガス流路30に排気流路31が接続されて設けられることになる。
なお、第1ガス供給路33、第2ガス供給路34、第3ガス供給路35には、圧力計15や、第5遮断弁28が設けられ、第1パージ弁25及び第2パージ弁26を介して接続されるパージライン32が接続されており、N2パージをする場合に用いられる。またパージライン32は、圧力計15、レギュレータ16が備えられるほか、第3パージ弁27を介してガス流路30に合流している。
そして、排気流路31には検定ユニット20である、第3遮断弁23、第4遮断弁24、圧力センサ11、及び温度センサ12が設けられ、真空ポンプ14に接続されており、ガス流路30は、プロセスチャンバ13に接続されている。
検定ユニット20は、図3に示すようにガス集積ユニットの一端に設けられており、各ブロックに設けられるマスフローコントローラ10の検定を行うことが可能である。なお、図3には図2と対応して、ガス供給路が3つしか描かれていないが、実際のガス集積ユニットには、さらに多くのガス供給路を接続することが可能である。そして、これらは1つのユニットとしてガスBoxに収められている。
次に、その手順について説明を行う。
最初に、流量Qを求める計算手順について示しておく。
流量Qは流入質量dGと経過時間dtの関係で求めることができ、マスフローコントローラ10の検定には温度0℃における絶対流量Qoとして計算する。
従って、dG=r0Q0dtという式によって表すことができる。ここで比重量r0は、物質の固有値である。
dGは、第1計測時と第2計測時の、それぞれの時点で測定した圧力と温度から、理想気体の状態方程式によって求めることが可能である。
すなわちPV=nRTとして表され、この時の気体定数Rはガス種によって決定され、圧力Pは圧力センサ11で測定され、温度Tは温度センサ12で測定され体積Vは既知である。なお、状態方程式をモル数nでなく質量Gを用いれば、PV=GRTとしても表すことができる。
即ち、dG=G2−G1=(P1/T1−P2/T2)(V/R)と表される。
この式に基づいて、前述の絶対流量Q0の式に代入することで、Q0=(P1/T1−P2/T2)(V/R)/(r0t)と表される。
しかしながら、理想気体の状態方程式は、あくまで理想気体に適用するものであり、実際の気体においては、分子間引力や、分子の大きさ、及び集合状態等、気体分子ごとに異なり、理想気体の状態方程式を補正して用いる必要がある。
この補正に用いられるのが、実在気体の非理想的挙動を示す無次元量である圧縮因子Zである。
圧縮因子Zは、Z=PV/RTの式で表され、また、Z=Z(P,T)とも表される。即ち、圧縮因子Zは圧力Pと温度Tの関数であるといえる。
図5は、圧力300kPa、温度300K条件下における代表的なプロセスガスの圧縮因子Zの値を記載した表である。圧縮因子Zは、高圧、低温下では影響が大きく、実際に、図5に示すように、分子量の大きいものほどZ=1の理想気体の条件から外れている様子がわかる。
図6及び図7は実際にガスによって圧縮因子Zが温度と圧力が変化することによってどのように変化するかを示した図であり、図6がSF6の圧縮因子Zの温度による変化を示したグラフであり、図7がH2の圧縮因子Zの温度による変化を示したグラフである。
それぞれのグラフには、縦軸を圧縮因子Z、横軸を温度[℃]で示しており、20kPa、50kPa、75kPa、101.3kPa時における曲線をそれぞれ示している。
したがって、前述した理想気体の状態方程式を利用するためには、PV=ZnRTというように圧縮因子Zによって補正する必要があり、これによって、正しい値の算出が可能となる。
これに従い絶対流量Q0は、Q0=(P1/(Z1T1)−P2/(Z2T2))(V/R)/(r0t)のように表される。
これは、同一の圧力センサ11にて計測する必要があるためで、基準となる容積はどのマスフローコントローラ10を計測する場合でも同一であり、流路を計測用の空間としているため、通常は例えば100cc程度の容積となる。従って、2sccmの流量でガスを供給する場合には、必要なだけの圧力変化を計測するためには時間がかかるが、2000sccmの流量でガスを供給する場合には、一瞬で圧力センサ11のゲージを振り切ってしまうほどの勢いで、圧力が変化する。一方、流量が2sccmの時に精度良く圧力を検出できる圧力センサ11を選定すると、必然的にそのレンジは決定されてしまうため、流量が2000sccmの際には、圧力センサの限界レンジに一瞬で達する結果となる。
図9には、圧力と計測時間の関係を示したグラフを示す。また図10には、流体が窒素の場合の、ある容積の場合における、圧力と計測時間の関係を表にしたものを示す。
図9の縦軸を圧力[kPa]、横軸を計測時間[sec]としており、ここに示すように、圧力と計測時間は正比例し、測定流量が20sccmの時と、50sccmの時と、100sccmの時の変化は異なり、流量が多くなるほど傾斜がきつくなることがわかる。
図10に示す表では、測定流量が2000sccmの際には0.7秒で必要な圧力に達してしまうことがわかる。
したがって、これに対応するために、設定された供給流量の量によっては基準を切り替える必要がある。つまり、例えば設定流量が2sccm〜1000sccm未満までは経過時間dtを基準に、圧力と温度を計測し、設定流量が1000sccm〜2000sccmの場合には、圧力を基準に、温度と時間を計測するのである。このような方法をとることによって、計測精度を保つことが可能である、
なお、図10の表中、太字で書かれている数字は設定値である。例えば、ガス流量が10sccmのときは、dt=10に設定されており、計測するとその結果は、dP=3kPaであるというようになる。ガス流量が1000sccmの場合、dP=23kPaに設定されており、圧力が圧力P1から、圧力P2になるまでのdPが23kPaになるまでにかかる時間が1.3secとなっている。
図11は、図1に示した回路による絶対流量の検定手順を示したフロー図であり、実際のラインでも同様の手順によって、絶対流量検定が行われることになる。
流量測定モードを選択すると、S1では、各遮断弁の状態の設定を行う。図1に示される第1遮断弁21、第3遮断弁23、第4遮断弁24を全て開け、第2遮断弁22を閉じた状態にして、排気流路31側に気体が流れるようにする。この際、絶対流量を検定するマスフローコントローラ10以外の第1遮断弁21は閉じておく必要がある。つまり、複数のラインが接続されている図2において、例えば第1ガス供給路33に設けられたマスフローコントローラ10の絶対流量検定を行う場合、第2ガス供給路34及び第3ガス供給路35に備えられる第1遮断弁21は閉じておく必要がある。一度に1つのマスフローコントローラ10の絶対流量検定しか行えないため、こうしておかないと第1ガス供給路33に備えられるマスフローコントローラ10の絶対流量検定を行うことができないからである。なお、他のマスフローコントローラ10の絶対流量検定を行う場合も同様のことが言える。
S4では、設定した圧力センサ11の圧力が、圧力P1に達したことを確認して温度センサ12にて温度T1を計測し、計測を開始する。
つまり、ここでは、先に設定圧力又は設定時間に達した場合で、計測基準が異なることになる。よって、図10で言えば、先に設定圧力となる設定圧力範囲dPである23kPaと圧力P1の和の値に先に達すれば、その時点を第2計測時とし、経過時間と、温度T2を計測する。この時の圧力P2は設定圧力と等しい。
また、先に計測時間dtが10secに達した場合、その時点を第2計測時とし、圧力P2及び温度T2の計測を行う。例えば、マスフローコントローラ10の設定流量が50sccmで、使用している流体が窒素だったとして、図10に示す表によれば計測時間dtは10secであるので、圧力P1計測後、10秒たった後に圧力P2と温度T2を測定する。この時の設定圧力範囲dPは10kPaであるので、圧力P2は圧力P1+dPの値と等しくなる。例えば、マスフローコントローラ10の設定流量が2000sccmで、使用している流体が窒素だったとして、図10に示す表によれば、設定圧力範囲dPは23kPaであるので、圧力が23kPa上昇するのに0.7secかかることが分かる。
なお、この判断をマスフローコントローラ10に設定されている設定流量に応じて、圧力を基準に判断するか、経過時間を基準に判断するかを決定するようにしてもよい。図10で言えば、設定流量が2sccm〜1000sccm未満の場合には経過時間dtを基準に、圧力と温度を計測し、設定流量が1000sccm〜2000sccmの場合には、圧力を基準に、温度と時間を計測するのである。
以上のような手順によって、マスフローコントローラ10の絶対流量検定が可能となり、この値によって、マスフローコントローラ10の較正を行うことも可能である。ただし、マスフローコントローラ10の較正は印加電圧の変更によって行われることになり、較正後は適正な流量が得られることになるわけだが、マスフローコントローラ10を製作した当初の印加電圧と実流量の関係からずれていくことになる。経験上、使用をしていると、チャンバ内のガス濃度が設計値からズレて、結果としてプロセスの歩留まりを悪化させるので、ずれの限界値を越えた時点で何らかのアラームが発せられるようにしておくことが好ましい。
(第2実施例)
半導体製造プロセスに用いられるガス集積ユニットは、生産計画の変更や、製品の変更によって、改造されるケースが珍しくない。しかしながら、これまでの理想気体の状態方程式を圧縮因子Zで補正して、絶対流量を算出する第1実施例においても、改造によって流路構成が変わり、計算に用いるための容積Vが変更になると、流量の算出ができなくなってしまう。そこで、この問題に着目して、第1実施例の流路構成において、改造によって変わってしまった体積Vを求める方法を第2実施例として開示する。
第2実施例の構成は、前述のとおりであり第1実施例と同じであるので、構成の説明は省略する。
図1の第1遮断弁21、第2遮断弁22、第3遮断弁23が閉じられることでガス流路30及び排気流路31の一部が形成する第1密閉空間の容積V1と、第3遮断弁23、第4遮断弁24が閉じられることで排気流路31の一部が形成する第2密閉空間の容積V2とで、第1実施例の理想気体の状態方程式に用いた容積Vの値が求まる。すなわち、V=V1+V2となる。
ただし、厳密に言えば、マスフローコントローラ10の出口から第1遮断弁21までの流路の容積V3が存在するので、V=V1+V2+V3となるのだが、マスフローコントローラ10と第1遮断弁21は直近に設けられていて、容積V3は容積V1、容積V2に比べて非常に小さいことと、この部分が改造されるケースはほとんど無いので、ここでは既知であるとして説明を行う。
図12及び図13には、図1の構成において、未知である容積V1を計測する手段をフローチャートとして示している。なお、図12及び図13は、実質的には同様の手法に基づいて計算を行っている。
まず、図12から説明を行う。
容積測定モードを選択すると、S11では、各遮断弁の状態の設定を行う。図1に示される第1遮断弁21、第3遮断弁23、第4遮断弁24を全て開け、第2遮断弁22を閉じた状態にして、排気流路31側に気体が流れるようにする。この際、容積測定の対象となるマスフローコントローラ10以外の第1遮断弁21は閉じておく必要がある。つまり、複数のラインが接続されている図2において、例えば第1ガス供給路33に設けられたマスフローコントローラ10を使用して容積測定を行う場合、第2ガス供給路34及び第3ガス供給路35に備えられる第1遮断弁21は閉じておく必要がある。同時に2以上のマスフローコントローラ10を使用しての容積測定が行えないため、こうしておかないと第1ガス供給路33に備えられるマスフローコントローラ10での容積測定を行うことができないからである。なお、他のマスフローコントローラ10での容積測定を行う場合も同様のことが言える。ただし、1度容積測定を行ってしまえば、精度良く容積を求めることができるので、他のマスフローコントローラ10を用いて容積測定を行うのは確認的な意味でしかないが、より確実な容積の測定が行える可能性がある。
マスフローコントローラ10を通過する窒素ガスの供給流量が安定したら、S13で第4遮断弁24を閉じる。こうすることで、第2遮断弁22及び第4遮断弁24によって流路が閉じられ、袋小路となるので、マスフローコントローラ10の出口と、第2遮断弁22と、第4遮断弁24によって形成される空間の圧力の上昇が始まる。流路内の圧力が圧力P1に達したら、S14で、第1遮断弁21を閉じ、これによって、容積V1+容積V2の密閉空間が出来上がる。次に、S15で圧力P1、温度T1を計測する。
このようにして、未知である容積V1の第1密閉空間の、圧力が圧力P1、温度が温度T1である状態と、既知である容積V2の第2密閉空間の圧力が圧力P2、温度が温度T2である状態と、第1密閉空間と第2密閉空間を連通した状態での空間の容積が容積V1+容積V2であって、圧力が圧力P3、温度が温度T3である状態が得られる。
S20では、これらに基づいて理想気体の状態方程式によって、未知である容積V1を求める。このようにして、改造後の第1密閉空間の容積V1を知ることができる。
前述の状態を式に表すと、P1V1=n1RT1、P2V2=n2RT2、P3(V1+V2)=n3RT3、の3つの式が得られる。
ここで、Rは気体定数で、nxはモル数である。なお、空間の密閉度が高ければ、モル数は保存されるはずであり、n1+n2=n3であるといえる。
従って上記の式を気体定数Rについて整理し、モル数の関係によって表すと、V1=(T1(P2T3−P3T3))/(T2(P3T1−P1T3))V2と表される。
上記式の右項は全て判明しているので容積V1を計算によって求めることが可能となる。
容積測定モードを選択すると、S21では、各遮断弁の状態の設定を行う。図1に示される第1遮断弁21、第3遮断弁23、第4遮断弁24を全て開け、第2遮断弁22を閉じた状態にして、排気流路31側に気体が流れるようにする。この際、容積測定の対象となるマスフローコントローラ10以外の第1遮断弁21は閉じておく必要がある。この理由は図12の場合と同じである。
マスフローコントローラ10を通過する窒素ガスの供給流量が安定したら、S23で第4遮断弁24を閉じる。こうすることで、第2遮断弁22及び第4遮断弁24によって流路が閉じられ、袋小路となるので、マスフローコントローラ10の出口と、第2遮断弁22と、第4遮断弁24によって形成される空間の圧力の上昇が始まる。流路内の圧力が圧力P1に達したら、S24で、第3遮断弁23を閉じ、これによって、容積V2の第2密閉空間が出来上がる。次に、S15で圧力P1、温度T1を計測する。
このようにして、既知である容積V2の第2密閉空間の、圧力が圧力P1、温度が温度T1である状態と、未知である容積V1の第1密閉空間と容積V2の第2密閉空間を連通した状態での圧力が圧力P2、温度が温度T2である状態が得られる。
S20では、これらに基づいて理想気体の状態方程式によって、未知である容積V1を求める。このようにして、改造後の第1密閉空間の容積V1を知ることができる。
前述の状態を式に表すと、P1V2=n1RT1、P2(V1+V2)=n2RT2、の2つの式が得られる。
ここで、Rは気体定数で、nxはモル数である。なお、空間の密閉度が高ければ、モル数は保存されるはずであり、かつ、真空状態が高いレベルで実現されているので、n1=n2であるといえる。
従って上記の式を気体定数Rについて整理し、モル数の関係によって表すと、V1=(P1T1−P2T2)/(P2T2)V2と表される。
上記式の右項は全て判明しているので容積V1を計算によって求めることが可能となる。
ただし、ユーザーの装置によっては、ガス流路30に備えられるプロセスチャンバ13に備えられている真空発生装置の能力が高くなく、高真空を発生することができなかったり、排気流路31に高真空を発生させる能力のある真空ポンプ14が接続されていなかったりといったような事態が考えうるので、上記2つの方法を提案している。
また、このように半導体製造プロセスのガス集積ユニットの改造後に出来上がってしまう未知容積を求める方法を提供することにより、ガス集積ユニット改造後であっても第1実施例の方法でのマスフローコントローラ10の絶対流量検定を行うことができる。
(1)流量制御機器であるマスフローコントローラ10の出口とプロセスチャンバ13の入口とを連通するガス流路30に設けられた第1遮断弁21及び第2遮断弁22とを有する流量制御ユニットにおけるマスフローコントローラ10の絶対流量を検定するマスフローコントローラ10絶対流量検定システムにおいて、第1遮断弁21及び第2遮断弁22との間のガス流路30と真空ポンプ14の入口とを連通する排気流路31と、排気流路31に設けられた第3遮断弁23及び第4遮断弁24と、第3遮断弁23と、第4遮断弁24との間の排気流路31に設けられた、圧力センサ11と温度センサ12と、圧力センサ11と温度センサ12とを接続し、ガス種固有の圧縮因子データ、及びマスフローコントローラ10の出口と、第2遮断弁22と、第4遮断弁24により形成される所定の空間の容積値を記憶する検定用制御装置と、を有し、第1計測時における、圧力センサ11による圧力P1と、温度センサ12による温度T1とに対応する第1圧縮因子Z1を検定用制御装置の圧縮因子データから読み出して、圧力P1、温度T1、容積V、及び第1圧縮因子Z1から質量G1を求め、第2計測時における、圧力センサ11による圧力P1と、温度センサ12による温度T2とに対応する第2圧縮因子Z2を検定用制御装置の圧縮因子データから読み出して、圧力P2、温度T2、容積V、及び第2圧縮因子Z2から質量G2を求め、質量G1と、質量G2との差により、マスフローコントローラ10の絶対流量を検定することが可能となる。
そして、このように実在気体を使用して精度の良い絶対流量を求めることが可能となるので、計測用ガスを用いて較正を行った場合のように、実際の使用状態と異なることが無く、絶対流量によって検定が可能となり、それによって較正されるので、半導体機器に供給しているガスの絶対流量を把握することができる。
ガス集積ユニットの有する流量制御機器である、例えばマスフローコントローラ10に流すプロセスガスの流量は、マスフローコントローラ10を通過する流量で2cc〜2000ccと幅が有り、マスフローコントローラ10の絶対流量検定を行う場合にも使用状態と同じ設定の流量で検定する必要がある。
従って、流量が少ない場合には経過時間を基準に、流量が多い場合には所定圧力を基準に測定を行い、絶対流量を検定することで、精度良い流量検定が実現可能となる。
11 圧力センサ
12 温度センサ
13 プロセスチャンバ
14 真空ポンプ
15 圧力計
16 レギュレータ
20 検定ユニット
21 第1遮断弁
22 第2遮断弁
23 第3遮断弁
24 第4遮断弁
25、26、27 パージ弁
28 第5遮断弁
30 ガス流路
31 排気流路
32 パージライン
33 第1ガス供給路
34 第2ガス供給路
35 第3ガス供給路
dG 流入質量
G1、G2 質量
dP 設定圧力範囲
P1、P2、P3 圧力
Q0 絶対流量
T1、T2、T3 温度
V1、V2、V3 容積
Z1 第1圧縮因子
Z2 第2圧縮因子
r0 比重量
dt 経過時間
Claims (1)
- 流量制御機器の出口とプロセスチャンバの入口とを連通するガス流路に設けられた第1遮断弁及び第2遮断弁とを有する流量制御ユニットにおける前記流量制御機器の絶対流量を検定する流量制御機器絶対流量検定システムにおいて、
前記第1遮断弁及び前記第2遮断弁との間の前記ガス流路と真空ポンプの入口とを連通する排気流路と、
前記排気流路に設けられた第3遮断弁及び第4遮断弁と、
前記第3遮断弁と、前記第4遮断弁との間の前記排気流路に設けられた、圧力センサと温度センサと、
前記圧力センサと前記温度センサとを接続し、ガス種固有の圧縮因子データ、及び前記流量制御機器の出口と、前記第2遮断弁と、前記第4遮断弁により形成される所定の空間の容積値を記憶する検定用制御装置と、を有し、
第1計測時における、前記圧力センサによる第1圧力値と、前記温度センサによる第1温度値とに対応する第1圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第1圧力値、前記第1温度値、前記容積値、及び前記第1圧縮因子値から第1質量を求め、
第2計測時における、前記圧力センサによる第2圧力値と、前記温度センサによる第2温度値とに対応する第2圧縮因子値を前記検定用制御装置の前記圧縮因子データから読み出して、前記第2圧力値、前記第2温度値、前記容積値、及び前記第2圧縮因子値から第2質量を求め、
前記第1質量と、前記第2質量との差により、前記流量制御機器の絶対流量を検定すること、
前記流量制御機器は、予め与えられる一定流量を流すものであり、
前記第1計測時と、前記第2計測時を、経過時間を基準に決定する第1方式と、
前記第1計測時と、前記第2計測時を、所定圧力を基準に決定する第2方式とを、
計測時に、前記流量制御機器を通過する流体の前記一定流量によって、切り替えること、
を特徴とする流量制御機器絶対流量検定システム。
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