JP4635289B2 - 界面活性剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の構造を有する界面活性剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
界面活性剤は親水性基と疎水性基、あるいは極性基と無極性基というふたつの相反する部分を分子中に持つ物質であり、洗浄、濡れ、乳化、分散、可溶化、防食、潤滑、帯電防止などの効果を有している。界面活性剤を利用した産業は非常に多岐にわたるが、なかでも近年、生化学、医薬品、衛生材料、化粧品など生体に関連した分野において、より付加価値の高い高機能界面活性剤が注目されている。
【0003】
化粧品分野においては、皮膚の水分保持機能、外界からの種々の刺激に対する保護し、皮膚に潤いを与えて健やかに保つ目的から、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダなどが利用されている。また、洗浄を主たる目的とした化粧品としてアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(以下POEと略記する)アルキルエーテル硫酸エステル塩などが広く用いられている。さらに、基礎化粧品としてはPOE鎖を持つ非イオン活性剤を使用する例が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の技術において使用される材料は使用感や皮膚への刺激性に問題があった。本発明は生体に対する適合性が高く、低刺激性、高安全性でありながら界面活性剤として要求される特性を満足した高機能の界面活性剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
生体関連用途においては、生体に対するマイルドな特性、すなわち生体適合性が要求されることから、生化学領域における界面活性剤(バイオサーファクタント)あるいはバイオサーファクタント類似の構造を持つことが好ましい。バイオサーファクタントは、
(1)生体由来の界面活性剤(レシチン、サポニン、胆汁酸など)
(2)微生物の産生する界面活性剤(脂肪酸塩系、糖脂質系)
(3)生体内に存在する界面活性剤
に分類される。すでに応用されている(1)の技術をベースとし、構造を見直すことによって界面活性剤としての性能や生体に対する適合性を向上させた界面活性剤について着目し、鋭意検討の結果、我々は本特許を発明するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1) 有効成分の少なくとも一部が下記一般式[1]で表される構造を有することを特徴とする界面活性剤。
【化4】
[上記式[1]において、R1 、R2 は同一または相異なり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。]
【0007】
(2) 有効成分の少なくとも一部が下記一般式[2]で表される構造を有することを特徴とする界面活性剤。
【化5】
[上記式[2]において、R1 、R2 は同一または相異なり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表し、R3 は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または下記一般式[3]に示す置換基を表し、R4 は炭素数1以上の炭化水素基であり、一部の水素原子は水酸基、ハロゲンによって置換されていてもよい。
【0008】
【化6】
(Aはオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシペンタメチレン、オキシヘキサメチレン基であり、これらの群から選ばれる1種または2種以上が混在してもよく、結合順はランダムでもよい。Aが1種の基から成る場合、nは1から30の整数を表し、Aが2種以上の基から成る場合、nは平均値であって、1から30までの数を表す。さらにR5 は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)]
【0009】
一般式[1]の構造(以下ホスホリルコリン類似構造と略記する)は、生体膜を形成しているリン脂質(ホスファチジルコリン)と類似構造であるため、この構造を持った物質は、細胞との親和性が高く、生体に対する適合性が高い。
【0010】
本発明の界面活性剤においては有効成分の少なくとも一部が上記ホスホリルコリン類似構造を有する物質であることを特徴とし、他の成分が共存していてもよい。ホスホリルコリン類似構造と生体との親和性が高いため、選択的に生体との直接的な接触に関与し、生体に対する適合性向上に寄与すると考えられる。
【0011】
本発明の界面活性剤は有効成分の少なくとも一部が一般式[1]で示されるが、一般式[1]や一般式[2]に示すように、ホスホリルコリン類似基の片末端もしくは両末端に炭化水素基を導入することで、界面活性剤としての機能が発揮される。親水性基が一般式[1]や[2]に示したように、両性であることは刺激性を低減させることからも好ましい。また、一般式[2]に示すように、末端にリン酸エステルとして炭化水素基やオキシアルキレン基を導入することで保湿効果や洗浄効果を調節することが可能である。
【0012】
一般式[1]もしくは一般式[2]の窒素原子に結合するR1 、R2 は炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、一般式[2]に示した、窒素原子に結合するもうひとつの置換基であるR4 は炭素数1以上の炭化水素基であり、一部の水素原子は水酸基、ハロゲンによって置換されていてもよい。R1 、R2 、R4 はこのような構成であれば特に制限を受けないが、R1 、R2 については炭素数7以下の比較的短い炭化水素基で、R4 が炭素数8以上の比較的長い炭化水素基(一部の水素原子は水酸基、ハロゲンによって置換されていてもよい)であることが、界面活性効果、低刺激性からより好ましい。
【0013】
一般式[2]のR3 は炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または一般式[3]に示すオキシアルキレン基である。R3 はこのような構成であれば特に制限を受けないが、一般式[3]においてnが2から10のオキシアルキレン基が界面活性効果、低刺激性からより好ましい。
【0014】
本発明の界面活性剤は、一般式[2]において、例えばR1 、R2 、
R4 がそれぞれメチル基で、R3 がドデシル基のような構成(短鎖炭化水素基−N・・・PO−長鎖炭化水素基:以下この構成をタイプAと略記する)を持つことも可能であるが、例えばR1 、R2 がメチル基、R4 がドデシル基、R3 がブチル基もしくはトリ(オキシエチレン)基のような構成(長鎖炭化水素基−N・・・PO−短鎖炭化水素基もしくはオキシアルキレン基:以下この構成をタイプBと略記する)をもつことがより好ましい。
【0015】
タイプAの界面活性剤においては、加水分解されやすいリン酸エステル結合によって長鎖アルキル基が導入されているため、比較的分解されやすく、界面活性剤としての機能を維持するのにやや不利である。それに対し、タイプBの界面活性剤では万一リン酸エステル結合が加水分解によって開裂しても、ホスホリルコリン類似構造と長鎖アルキル基が残存するため、生体に対する適合性を維持したまま界面活性剤としての機能を保持することが期待できる。
【0016】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0017】
〈ホスホリルコリン類似構造含有界面活性剤の調製〉
100mlの二口ナス型フラスコにトリエチレングリコールモノメチルエーテル11.52gに乾燥トリエチルアミン9.8ml(70.19mmol)を加えて溶解させた。この溶液を撹拌しながら、窒素気流下、−20℃で2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(以下COPと略記する)10.00g(70.19mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(37.5ml)溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応混合物を引き続き12時間撹拌して反応させた後、沈殿物を濾別した。この濾液を濃縮し、生成する沈澱を除去した後、減圧乾燥して淡黄色液体2−[(メトキシエトキシ)エトキシ]エチル−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(以下EO3OPと略記する)を得た(17.00g、収率90%)。
【0018】
100mlの二口ナス型フラスコにN,N−ジメチル−n−ドデシルアミン7.90g(37.01mmol)、EO3OP10.00g(37.01mmol)、乾燥アセトニトリル32mlを入れ、窒素気流下、60℃で24時間撹拌して反応させた。反応混合物を濃縮して溶媒を除去した後、少量の水を加えて溶解させた。この水溶液をヘキサン、続いてシクロヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して淡黄色粘稠液体の目的物を得た(以下NLCho−3と呼称する)。
【0019】
〈実施例1〉
成人女性被験者10名の手の甲に油性ボールペンで約3cmの線を引き、NLCho−3を使用して洗浄を行った。線の消失度合いを各被験者に5段階で評価してもらい、その平均値を表1に示した。なお、数値は大きいほど洗浄効果が高いものとする。
【0020】
成人女性被験者10名の手の甲にNLCho−3を塗布し、しっとり感、べたつき感を5段階で評価してもらい、その平均値を表1に示した。なお、数値は大きいほどしっとり感、べたつき感が大きいものとする。
【0021】
〈比較例1〉
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムを使用して実施例1と同様の方法で試験を行った。結果は表1に示した。
【0022】
〈比較例2〉
グリセリン、エチレングリコールを使用して実施例1と同様の方法で試験を行った。結果は表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
実施例と比較例より明らかなように、本発明の界面活性剤は、合成洗剤と同程度の洗浄力を持ち、またべたつき感が低いながらもしっとりした使用感を与えることがわかった。これは、ホスホリルコリン類似構造の効果によるものと考えられ、本発明の有用性が示された。
Claims (5)
- 前記一般式[2]において、R 1 、R 2 はメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の界面活性剤。
- 前記一般式[2]において、R 4 はドデシル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の界面活性剤。
- 前記一般式[3]において、Aはオキシエチレン基であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の界面活性剤。
- 前記一般式[3]は、((メトキシエトキシ)エトキシ)エチル基であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の界面活性剤。
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