JP4628653B2 - 無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法 - Google Patents

無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗マレイン酸含有水溶液を共沸溶媒を用いて共沸脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造工程において、得られる蒸留残渣中の無水マレイン酸濃度および水分濃度が特定の範囲のものである、無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無水マレイン酸は、反応性の大きい二重結合と二つのカルボキシル基とを脱水して無水物となった形で有することから、化学的に種々の反応を行うことができ、医薬、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂などをはじめ、可塑剤、農薬等各種の分野で多用される汎用化合物である。
【0003】
無水マレイン酸は、n−ブタンなどの炭素数4以上の脂肪族炭化水素やベンゼン等を接触気相酸化反応器で酸化し、得られる無水マレイン酸やマレイン酸を含有するガスからマレイン酸を回収して、脱水等により無水マレイン酸にする方法によって製造されている。また、ナフタリンやo−キシレンの接触気相酸化反応によって無水フタル酸を製造する際に排出される排ガスの洗浄水にも相当量のマレイン酸が含まれることから、該洗浄水を回収しこれを同様にして無水マレイン酸とする方法によっても製造されている。
【0004】
一般に、無水マレイン酸を接触気相酸化反応により製造する場合には、接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸をそのまま精製する方法、その他、無水マレイン酸を一旦水溶液に捕集してマレイン酸含有水溶液を調製し、これを脱水してマレイン酸を無水マレイン酸に再転化して製造する方法等がある。
【0005】
例えば、濃縮脱水による無水マレイン酸の製造方法としては、粗マレイン酸水溶液を濃縮工程と脱水工程によって脱水する方法であって、脱水工程に入る前に無水マレイン酸を添加し、該脱水工程が薄膜型蒸発器で、少なくとも一つの静的管状蒸発器中で液体−蒸気並流で行われる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、該特許文献1の方法は、共沸脱水工程を使用したものではないため、マレイン酸から無水マレイン酸への脱水反応と同時にフマル酸への転位反応が進み、フマル酸等の結晶が析出した。また、マレイン酸から無水マレイン酸への脱水反応速度が遅いため、高い無水化反応率を得ることができなかった。さらに、接触気相酸化反応によって副生するアルデヒド類およびキノン類の不純物を核として縮合物が発生して析出物が装置内で蓄積し、装置が絶えず停止するという問題があった。しかも該文献1には、高沸点物質を除去する工程についての記載や、蒸留残渣を処理する工程についての記載はない。
【0007】
また、原料ガスと酸素を気相で触媒存在下に反応させて無水マレイン酸を含む反応ガスを生成し、有機溶媒を循環させることにより該ガスから無水マレイン酸を捕集する方法がある。しかしこの方法では反応副生成物であるアクリル酸、有水マレイン酸、フマル酸およびその他の高沸点成分が有機溶媒中に捕集されて系外に排出されないため、これらの成分が次第に装置内に蓄積し、装置を閉塞するという問題があった。この問題を解決するため、反応ガスを有機溶剤と接触させて無水マレイン酸を有機溶剤中に捕集し、この有機溶剤から無水マレイン酸を分離し、その後アルカリ水溶液で洗浄後、有機溶剤を再利用する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかし該文献2の方法は、有機溶媒を用いて反応ガスから無水マレイン酸を捕集する方法である。よってこの点で、水捕集後のマレイン酸水溶液を共沸脱水することで無水マレイン酸を製造する本発明とは異なるものである。また該文献2の方法では、無水マレイン酸分離後に有機溶媒をアルカリ洗浄することが必須である。しかしながら、該アルカリ洗浄においては、アルカリ溶液やアルカリ金属が無水マレイン酸と爆発的に反応する危険性があった。また、大量の塩類が生成し、該塩類を除去する特殊装置が燃焼処理の際に必要になりコストがかかっていた。さらには、アルカリ洗浄後に大量の水でアルカリを洗い流す必要があるため、不経済であり、大量に発生した廃水を処理する工程が必要である。また、該文献2においては、無水マレイン酸製造の最終工程である精製工程、特に高沸点物質除去工程に関する記載は一切ない。またその際発生する蒸留残渣の組成等を示唆する記載もされていない。
【0009】
さらに、本発明における共沸脱水と類似する無水マレイン酸の製造方法として、無水マレイン酸を含む反応ガスを水と接触させて、粗マレイン酸含有水溶液を得て、これを溶融無水マレイン酸中に溶解し、該混合溶液を130〜160℃の無水マレイン酸−芳香族炭化水素の混合溶液中に連続的に添加してマレイン酸を共沸脱水する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。マレイン酸を脱水するための共沸溶媒としては、キシレン、サイメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロロベンゼン等が記載されている。
【0010】
該文献3の方法は、共沸脱水による無水マレイン酸の製造方法である。しかしながら、副生成物であるアルデヒド類およびキノン類が縮合反応を起こし、脱水工程の装置内に付着するという問題があった。すなわち、この方法ではキシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等、比較的水に対する溶解度の低い共沸溶媒を使用し、マレイン酸水溶液を共沸脱水することにより無水マレイン酸を得ている。このため、共沸脱水塔内で水と共沸溶媒とが油水分離した状態となる。一方、副生成物であるアルデヒド類およびキノン類は水溶性であり、水相で濃縮され、さらに共沸脱水時の高温に長時間さらされる結果、縮合反応が進行して固体の析出物を生じ、装置を閉塞してしまうため、長期にわたる連続運転ができないのである。なお、この析出物を除去する際にも共沸脱水塔をアルカリ洗浄することが必要であり、前記文献2と同様の問題があった。また、該文献3においては、共沸脱水工程後に共沸溶媒を回収使用する態様については記載されているものの、高沸点および低沸点不純物についての記載やその除去条件に関しては全く記載されていない。さらには、発生する蒸留残渣の処理に関しても一切記載されていない。
【0011】
また前記文献3と同様に共沸脱水による無水マレイン酸の製造方法として、マレイン酸主体の有機物を20〜40質量%の範囲で含有する排ガス洗浄水を脱水塔でo−キシレンと共沸脱水蒸留して有水マレイン酸を無水マレイン酸に無水化して製造する際に、脱水塔の下部から得られる無水マレイン酸に同伴するピッチ分を減圧蒸発器で除去する無水マレイン酸の回収方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0012】
該文献4の方法においては、減圧蒸発器として強制攪拌式降下薄膜型蒸発器(回転式薄膜型蒸発器に相当)が記載されており、該蒸発器の運転条件についても記載されている。しかしながら該文献4の方法では、得られる蒸留残渣中のマレイン酸濃度が高くなってしまい、ロス分が多くなって不経済である。これは、回転式滞留槽型蒸発器のような他の蒸発器を用いていないために、脱水が不充分となるためであると推測される。また該文献4の方法は、水に対する溶解度の低いo−キシレンを共沸溶媒として用いている点で本発明とは異なるものである。
【0013】
また、上記の各製造方法において排出された蒸留残渣は、処理効率を向上させるため高温タンクに貯蔵され、5〜10日間に1回バッチで抜き出され、自然冷却されて固化した後、人力で粉砕されて固体状態で系外へ排出され、産業廃棄物として処理されていた。したがって、余分な労力が必要とされ、作業者には化学的刺激および物理的障害等を及ぼすため、環境負荷およびコスト等の面で問題となっていた。
【0014】
一方、上記蒸留残渣をバッチ抜き出しではなく連続的に抜き出して燃焼処理しようとすると、該蒸留残渣を移送中にパイプラインに閉塞が生じてしまう。これは、無水マレイン酸が脱水工程で副生成する水と逆反応して有水マレイン酸を生成し、移送中に該有水マレイン酸がフマル酸に徐々に転位し、最終的にフマル酸が高濃度に蓄積する結果、パイプラインに閉塞が生じるのである。この際には、閉塞が生じるだけでなく収率も低下し、蒸留残渣量も増加するためコストがかかっていた。
【0015】
さらに、上記蒸留残渣の他の処理方法としては、該蒸留残渣をバッチ抜き出しした後、別のタンク等に溜めておき、溜めた蒸留残渣をパイプライン等により移送して連続的に燃焼処理する方法が考えられるが、高温で長時間貯留させておくことにより、タール成分およびポリマー成分が生成して高粘度になり、移送中にパイプラインの閉塞を生じてしまう。
【0016】
このように、従来の無水マレイン酸の製造方法においては、長期にわたり連続運転するための条件を設定することが困難である。また、各工程で発生する種々の閉塞を除去することに多大なコストを要している。さらには、蒸留残渣を廃棄処理することにも多大な労力およびコストを要しているのが現状である。
【0017】
また、前記文献1〜3には、無水マレイン酸の製造工程において発生する蒸留残渣を、効率よく処理する技術に関しては何も記載がされていないのである。
【0018】
ここで、無水マレイン酸以外の化合物の製造における、蒸留残渣の処理方法についても従来いくつか開示がなされている。例えば、無水フタル酸の製造時に発生する蒸留残渣を冷却固化後、エアーハンマーや高圧噴射で粒状化して系外に排出する方法が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。しかしながら、該文献5の方法では、該蒸留残渣を粒状化するために、多大な労力およびコストを必要としていた。また、マレイミド類の製造時に発生する蒸留残渣に、カルボン酸系有機溶媒および極性有機溶媒の1種を溶解させて移送する方法が開示されている(例えば、特許文献6を参照)。しかしながら該文献6の方法では、蒸留残渣を処理する際に新たに添加剤を供給する必要があり不経済であった。
【0019】
以上のように、無水マレイン酸以外の化合物の製造における蒸留残渣の処理方法に関する前記文献5および6には、該蒸留残渣を極めて効率よく処理することができる方法およびその工程については記載がされておらず、また本発明の処理方法に関する示唆も全くない。
【0020】
【特許文献1】
特開昭57−193470号公報
【特許文献2】
特開平11−92473号公報
【特許文献3】
特公昭41−3172号公報
【特許文献4】
特開昭63−313782号公報
【特許文献5】
特開昭53−137926号公報
【特許文献6】
特許第3281841号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、閉塞物の発生を抑制し、長期にわたる安定した無水マレイン酸の製造を可能とする、無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、無水マレイン酸製造工程において発生する蒸留残渣を、パイプラインにより連続的に移送して燃焼処理することで、廃棄物処理費用や労力を軽減することのできる、無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法を提供するものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、接触気相酸化反応による副生成物の種類、並びに該副生成物が排出される際の蒸留残渣の性質およびその処理条件について詳細に検討した。その結果、接触気相酸化反応によって副生するアルデヒド類およびキノン類の縮合物、マレイン酸の単独重合物、並びにマレイン酸およびマレイン酸の異性体であるフマル酸の析出物、アクリル酸の単独重合物、フタル酸等が副生成物の主成分であり、上記縮合物および重合物が主として高沸点物質除去工程後の蒸留残渣として排出されることを見出した。また、蒸留残渣中の前記縮合物および重合物の含有量が多いと、該蒸留残渣の流動性が害され、廃棄処理時にパイプラインにおいて閉塞が発生する原因となることを見出した。これに対し、水に対する親和性をある程度有する有機溶媒を共沸溶媒として用いると、縮合物の発生を効果的に抑制でき、さらには、共沸脱水工程および/または高沸点物質除去工程の工程条件を調整すると、蒸留残渣中の無水マレイン酸濃度および水分濃度、並びに粘度が一定の範囲内となり、良好な流動性を示すために連続的に移送して燃焼処理することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
【発明の実施の形態】
炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸を捕集する工程と、該捕集工程で得た粗マレイン酸含有水溶液を、共沸溶媒として温度20℃(常圧)の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を用いて共沸脱水する工程と、さらに該共沸脱水工程で得た粗無水マレイン酸から高沸点物質を蒸留残渣として分離し系外に除去する工程とを含む無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法において、前記高沸点物質除去工程は二段の濃縮工程を有し、前記濃縮工程において、第一段目はフラッシュ塔並びに流下式薄膜型蒸発器および/または回転式薄膜型蒸発器で行い、第二段目は回転式滞留槽型蒸発器で行い、前記回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度は126〜160℃であり、前記蒸留残渣中の無水マレイン酸濃度が5〜50質量%であり、水分濃度が1質量%以下であることを特徴とする、無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法である。
【0025】
従来の無水マレイン酸の製造方法においては、共沸脱水工程において生成した縮合物等により、蒸留残渣を移送するパイプラインにおいて閉塞が生じるため、高沸点物質除去工程後の蒸留残渣を連続的に移送して廃棄処理することが困難であった。一方、本発明は、共沸溶媒として特定の溶媒を使用することで縮合物の発生を抑制し、高沸点物質除去工程の工程条件を調整することで蒸留残渣の流動性を確保して、蒸留残渣の連続的な移送および連続的な燃焼処理を可能とする。
【0026】
本発明で使用する共沸溶媒は、温度20℃(常圧)の水に対する最大溶解濃度が好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは1〜3質量%の有機溶媒である。該最大溶解濃度が0.3質量%を下回ると、上記した油水分離状態を発生しやすくなる。一方、5質量%を超えると油水分離状態を改善する効果はあるが、共沸脱水蒸留で水とともに塔頂に留出した有機溶媒を、冷却後に水と分液して回収し再利用する場合の水相へのロス量が大きくなり、回収量が減少するために工業的な実施には不利になる。なお、本明細書中、「最大溶解濃度」とは、化学便覧やバイルシュタイン等に記載される溶解度や溶解性データを意味するが、これらに記載がない場合には実施例の項で規定する最大溶解濃度であってもよい。
【0027】
従来、共沸脱水工程においては、接触気相酸化反応で副生するホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、酢酸、アクリル酸、ベンゾキノン、ハイドロキノンなどが縮合反応して縮合物を生成し、閉塞の原因となっており、蒸留残渣の流動性も悪かった。これに対し、本発明では、温度20℃の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を使用することにより、共沸脱水塔内における油水分離状態を緩和し、アルデヒド類とキノン類の水相への局在化を抑える。その結果、これらの水相内濃度を低下させ、これらが縮合反応することによる縮合物の生成を極めて効果的に防止することができる。
【0028】
上記のような好ましい共沸溶媒としては、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノンおよび3−ヘプタノン等のケトン類、並びに酢酸アリル等のエステル類がある。なお、最大溶解濃度は圧力によっても変動するが、本発明においては、常圧(1013hPa)での値とする。本発明で使用される共沸溶媒の最大溶解濃度は、化学便覧(丸善株式会社)やバイルシュタインオンライン(STNインターナショナル)等に記載されたデータにより示される。具体的には、メチルイソブチルケトン(1.91質量%)、ジイソプロピルケトン(0.43質量%)、2−ヘキサノン(1.75質量%)、3−ヘキサノン(1.57質量%)、2−ヘプタノン(0.44質量%)、酢酸アリル(2.8質量%)等である。特に好ましくはケトン類が使用される。ケトン類は、上記条件を満足し、マレイン酸の溶解度に優れる。また、ケトン類は無水マレイン酸の製造工程における縮合物の発生防止効果や縮合物の溶解性にも優れる。さらに、ケトン類はマレイン酸や無水マレイン酸との反応性を有しない。なお、本発明においては、これらの有機溶媒の1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
以下、本発明の無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明する。なお、図1において、1は原料ガス、2は分子状酸素含有ガス、3は接触気相酸化反応器、5は無水マレイン酸含有ガス、10は無水マレイン酸捕集器、11は凝縮粗製無水マレイン酸、20は水捕集塔、21はリサイクル捕集水、23はマレイン酸含有水溶液、30は前濃縮装置、40は共沸脱水塔、42は粗無水マレイン酸、50は油水分離槽、51は廃水、60は高沸点分離塔、61は蒸留残渣、70は低沸分離塔、80は精製塔、81は精製無水マレイン酸、90は溶媒回収塔、100は廃液燃焼装置である。なお、本明細書中、「マレイン酸」とは有水マレイン酸をいい、また「フタル酸」とは有水フタル酸をいうものとする。
【0030】
まず、原料ガス(1)が接触気相酸化反応器(3)に供給され無水マレイン酸含有ガス(5)が得られ、これが無水マレイン酸捕集器(10)に移送されて該ガスに含まれる無水マレイン酸が液体で凝縮捕集される。残部ガスは水捕集塔(20)で捕集水と気液接触し、該ガス中に含まれる無水マレイン酸が捕集水中に回収される。水捕集塔の塔底液(23)は前濃縮装置(30)で30〜60質量%の水分を除去された後、共沸脱水塔(40)に供給される。該共沸脱水塔には無水マレイン酸捕集器(10)で回収された無水マレイン酸も供給される。該共沸脱水塔で脱水およびマレイン酸の無水化が行われる。共沸脱水塔の塔頂液には共沸溶媒と水とが含まれ、これが油水分離槽(50)で共沸溶媒相と水相とに分離される。該共沸溶媒相は還流液として共沸脱水塔(40)に循環される。該水相は溶媒回収塔(90)に移送され、含まれる共沸溶媒は溶媒回収塔(90)の塔頂より分離して油水分離槽(50)に移送し、共沸脱水塔(40)で共沸溶媒として回収使用される。溶媒回収塔(90)の塔底から共沸溶媒を含まない回収水が得られ、水捕集塔(20)の捕集水として使用される。共沸脱水塔(40)の塔底液は、高沸点分離塔(60)、低沸分離塔(70)および精製塔(80)に順次供給され、精製されて精製無水マレイン酸(81)が得られる。低沸分離塔(70)からの留出液は溶媒回収塔(90)に供給され、ここに含まれる共沸溶媒は油水分離槽(50)に循環され、残部は水捕集塔(20)に供給されて捕集水として使用される。水捕集塔(20)において、前濃縮装置(30)、共沸脱水塔(40)および低沸分離塔(70)からの留出液に含まれる低沸点物質は、その塔頂から廃ガスとして排出される。本発明では、共沸脱水塔(40)で特定の共沸溶媒を使用し、さらに共沸脱水塔(40)および/または高沸点分離塔(60)の工程条件を調整することで、高沸点分離塔(60)の塔底液として得られる蒸留残渣(61)の無水マレイン酸濃度および水分濃度、並びに粘度を特定の範囲とする点に特徴がある。本発明によれば、共沸脱水塔において「温度20℃の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒」を共沸溶媒として使用することで縮合物の生成が抑制され、上記のように流動性を有する蒸留残渣が得られる。このため、パイプライン等の装置に閉塞が生じることなく、蒸留残渣が連続的に移送され、廃液燃焼装置(100)において連続的に燃焼処理されることが可能となる。
【0031】
原料ガス(1)としては、接触気相酸化反応によってマレイン酸を生成するものであれば特に制限されず、無水マレイン酸を製造するために使用される公知の炭化水素が使用される。例えば、ベンゼンや、ブタン(n−ブタン)、ブテン類(1−ブテン、2−ブテン)、ブタジエン(1,3−ブタジエン)等の炭素数4以上の炭化水素、o−キシレン、またはナフタレンの1種またはこれらの2種以上の混合物が例示される。さらに、原料ガスとして、好ましくは1.0〜2.0モル%の濃度のベンゼンまたは2.0〜7.0モル%の濃度のブタンが用いられ、より好ましくは、1.2〜1.9モル%ベンゼンまたは3.0〜6.0モル%ブタンが用いられる。これらが好ましく用いられるのは、原料種およびガス濃度の相違によって副生物も相違するが、特にこれらが用いられる場合の副生物による閉塞物、特に縮合物の発生に、本発明の製造方法が効果的であるためである。なお、これら以外の物質を原料ガス(1)とする場合にも、本願の製造方法は適用される。
【0032】
接触気相酸化反応器(3)には接触気相酸化反応用の触媒が充填されている。該触媒は、上記原料ガス(1)と接触してマレイン酸または無水マレイン酸を生成するものであれば、特に制限されることなく従来公知の触媒が用いられる。一般には、バナジウム、リンまたはモリブデンを主成分として含有する酸化触媒が用いられる。このような触媒としては、特開平5−261292号公報、特開平5−262754号公報、特開平5−262755号公報および特開平6−145160号公報に記載される触媒等が好ましく使用される。
【0033】
接触気相酸化反応に際して供給される分子状酸素含有ガス(2)としては、通常空気が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を加えて富化された空気等を使用することもできる。
【0034】
反応条件は従来公知の方法を採用できるが、使用する酸化触媒の種類や供給原料濃度、酸素濃度等によって適宜変更してもよい。例えば、バナジウム−リン系触媒を用いて、温度を300〜500℃で反応させる。ただし、通常条件下では、触媒失活および収率低下のおそれがあるので、480℃を超えて長時間放置することは好ましくない。接触気相酸化反応器(3)からは、無水マレイン酸と共に、副生する反応成分および原料ガス自体に含有されていた不純物が、そのままの形状でまたは接触気相酸化されて排出される。排出ガスに含まれる物質は、低沸点物質、高沸点物質および非凝縮性ガスに分類できる。本発明において「低沸点物質」とは、標準状態において無水マレイン酸よりも沸点が低い物質をいい、ギ酸、酢酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、p−ベンゾキノンおよび水等が例示される。また、「高沸点物質」とは、標準状態において無水マレイン酸よりも沸点が高い物質をいい、無水フタル酸、フマル酸およびハイドロキノン等が例示される。さらに、「非凝縮性ガス」とは、標準状態で気体の物質をいい、具体的には、窒素、酸素、空気、プロピレン、プロパン、ベンゼン、ブタン、一酸化炭素および二酸化炭素等が例示される。
【0035】
接触気相酸化反応によって得られる反応ガスの組成は、一般に、無水マレイン酸(以下、反応ガスの組成における「無水マレイン酸」には、無水マレイン酸に換算したマレイン酸を含むものとする。)が2〜5質量%、水蒸気を除く低沸点物質として、酢酸およびアルデヒド等が0.01〜0.5質量%、高沸点物質として無水フタル酸等が0.005〜0.08質量%、残りは非凝縮性ガスと水蒸気である。
【0036】
原料ガス(1)と分子状酸素含有ガス(2)との混合は、均一に混合できるものであれば特に制限されず種々の方法が用いられるが、例えば、スタティックミキサー等が好ましく用いられる。
【0037】
接触気相酸化反応器(3)は固定床反応器または流動床反応器で、複数接触管型熱交換反応器が用いられる。該接触管としては、該して公知で使用されているものが利用される。該接触管は公知の任意の好適な配置で配置される。該接触管の外径dと管分布(ピッチ)tとの関係は、好ましくはt/d=1.2〜1.6の範囲である。
【0038】
さらに、反応組成物は反応領域に入る前に、熱伝達媒体の温度付近まで予備加熱される。接触気相酸化反応器の各熱伝達領域は、その内部に、効果的な触媒温度プロファイルおよび反応温度を維持するために使用される熱伝達媒体の循環を有している。所望の触媒温度プロファイルを維持することは、最適な無水マレイン酸の収率を維持するために、および触媒寿命を最適化するために必要とされる。
【0039】
熱伝達媒体は接触気相酸化反応器の熱伝達領域を循環し、熱伝達媒体が特定の領域において接触管の外側部分から熱を移送する。接触気相酸化反応器の熱伝達媒体領域は300〜500℃、好ましくは330〜450℃の温度で維持される。触媒温度のピークは熱伝達媒体温度より20〜80℃高く、熱伝達媒体の温度変化に非常に敏感である。
【0040】
熱伝達媒体は接触気相酸化反応器内を通る反応組成物ガスの流れと同一方向(並流)または逆方向(向流)に循環する。好ましくは逆方向(向流)に循環する。また、好ましくは反応組成物ガスは反応器内をダウンフロー(上から下)に循環する。また、好ましくは、出口部の熱伝達媒体温度が入口部と比較して2〜10℃高くなるように制御される。
【0041】
また、生産性を向上させるためには、高濃度のガスを供給することが必須である。このため、爆発の可能性が生じることから、ガス組成を常時安全な範囲に維持するか、爆発を防止するための対策をとる必要がある。
【0042】
一般に、炭化水素と分子状酸素含有ガスとの混合ガスの爆発可能性を低下させる方法としては、炭化水素ガス成分濃度を爆発下限界濃度以下に保つ方法、炭化水素ガス成分濃度を爆発上限界濃度以上に保つ方法、および酸素濃度を限界酸素濃度以下に保つ方法等がある。このうち無水マレイン酸製造プロセスにおいては、通常、炭化水素ガス成分濃度を爆発下限界濃度以下に保つ方法が使用されている。
【0043】
爆発下限界濃度を超える濃度の炭化水素ガス、例えば2.0モル%ベンゼンおよび7.0モル%のブタン、を供給する場合には、爆発防止対策をとることにより爆発の可能性を低下させることができる。該爆発防止対策としては、着火防止ガス線速以上に配管内ガス線速を上げる方法がある。該ガス線速は各ガス濃度に伴い変化するもので、具体的には30m/s以上が好ましい。その他の対策としては、炭化水素および分子状酸素含有ガスの混合位置から接触気相酸化反応器内の触媒層までの空間部の一部または全部に、不活性固体を充填する方法がある。該不活性固体は、金網等デミスター、波状金属板、リング状充填物、セラミックボール、多孔板等が挙げられる。また、接触気相酸化反応器までの空間容積をできるだけ小さくすることが好ましい。さらには、適所に圧力、温度および火災等の感知器を設置し、入口側には遮断装置(逆止弁、閉止弁等)を設置し、それらを自動制御できることが好ましい。また必要に応じてラプチャーディスク等の安全板を設けることが好ましい。
【0044】
さらに、帯電を防止するために、原料ガス(1)を霧状で噴霧するのではなく、完全に蒸発後分子状酸素含有ガス(2)と混合することが好ましい。
【0045】
接触気相酸化反応器(3)から排出された無水マレイン酸含有ガス(5)が無水マレイン酸捕集器(10)に供給される。該無水マレイン酸捕集器において、該無水マレイン酸含有ガスは、無水マレイン酸の融点以上かつ沸点以下、より好ましくは53〜100℃、特に好ましくは55〜70℃に冷却される。その結果、無水マレイン酸の一部が液体として凝縮捕集される。なお、該無水マレイン酸捕集器(10)で凝縮捕集により得られた凝縮粗製無水マレイン酸(11)は、好ましくは、図1および図3に記載のように共沸脱水塔(40)へ供給されるか、または図2および図4に記載のように高沸点分離塔(60)へ供給される。共沸脱水塔(40)へ供給される場合には共沸脱水塔(40)内の析出物の発生を抑制する効果があるため、より好ましくは共沸脱水塔(40)へ供給される。さらに、脱水反応促進による収率改善を図るため、特に好ましくは共沸脱水塔(40)の塔底または回収部下部へ供給される。
【0046】
水捕集塔(20)の捕集条件は、従来公知の方法が採用される。捕集液としては、水が使用されるが、マレイン酸の濃縮、および脱水工程で発生した水または水溶液の一部も捕集液の一部として使用される。塔頂温度は、無水マレイン酸の捕集率を向上させるためには低温であることが好ましい。そこで、水捕集塔(20)に付属させた冷却器を使用することにより、捕集塔塔頂温度は好ましくは10〜90℃、より好ましくは20〜60℃にされる。ここで、10℃を下回ると、マレイン酸の溶解度が低下して結晶が析出する。その結果、水捕集塔(20)の圧力損失の増加や液の分散性の悪化による捕集塔の段効率の低下を招くおそれがある。さらに、過量の冷却エネルギーが必要とされ不経済である。一方、90℃を上回ると、無水マレイン酸の捕集率が低下するおそれがある。また、水捕集塔(20)においては、塔底液のマレイン酸濃度が、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%となるように、捕集液を向流接触させることにより無水マレイン酸が捕集される。ここで、マレイン酸濃度が10質量%を下回ると、マレイン酸含有水溶液(23)の濃縮および脱水工程で留出させる水が多くなり、製造コストが上昇するおそれがある。一方、マレイン酸濃度が80質量%を上回ると、マレイン酸の析出を防止するために捕集温度を90℃以上に上げる必要があり、その結果捕集率が低下するおそれがある。なお、図1と相違して、無水マレイン酸捕集器(10)による無水マレイン酸の凝縮捕集を行わずに、前記無水マレイン酸含有ガス(5)の全てを水捕集塔(20)に供給して、マレイン酸含有水溶液(23)を調製してもよい。
【0047】
次いで、前記マレイン酸含有水溶液(23)は、前濃縮装置(30)に供給される。前濃縮工程は、共沸脱水工程に先立ち、例えば30〜60質量%の水が除去される工程である。該前濃縮装置(30)においては、例えば、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔およびスプレー塔、並びに薄膜型蒸発器(流下式および回転式等)等の従来公知の設備が用いられる。本発明においては、装置がコンパクトで脱水効率に優れるため、薄膜型蒸発器が好ましく用いられる。なお、前記マレイン酸含有水溶液(23)は、前濃縮装置(30)を経ずに共沸脱水塔(40)に供給されてもよい。一方、前濃縮装置(30)からの留出液は、水捕集塔(20)に循環されてもよいし、廃水として排出されてもよい。
【0048】
前記前濃縮装置(30)において濃縮されたマレイン酸含有水溶液(23)は、次いで共沸脱水塔(40)に供給される。共沸脱水工程においては、該マレイン酸含有水溶液(23)中に含まれる有水マレイン酸が脱水され、無水マレイン酸に転換する。該共沸脱水塔(40)においては、例えば、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔およびスプレー塔等の従来公知の設備が用いられる。通常は棚段塔または充填塔が好ましく用いられる。特に、有堰多孔板を5〜50段、より好ましくは10〜40段備えた棚段塔が好ましく用いられる。ここで、5段未満では、マレイン酸と共沸溶媒との接触時間が不足し、脱水率が低下するおそれがある。一方、50段を超えると、設備費が高くなり不経済である。また、無水マレイン酸の塔頂からの留出が多くなり、無水マレイン酸のロス分が増大する場合がある。
【0049】
上記したように、前記共沸脱水工程において使用される共沸溶媒は、温度20℃(常圧)の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは1〜3質量%の有機溶媒である。該最大溶解濃度が0.3質量%を下回ると、上記した油水分離状態を発生しやすくなる。一方、5質量%を超えると油水分離状態を改善する効果はあるが、共沸脱水蒸留で水とともに塔頂に留出した有機溶媒を、冷却後に水と分液して回収し再利用する場合の水相へのロス量が大きくなり、回収量が減少するために工業的な実施には不利になる。また、前記共沸脱水工程において使用される共沸溶媒は、温度20℃(常圧)におけるマレイン酸の最大溶解濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜7.0質量%、特に好ましくは1.0〜7.0質量%である。マレイン酸の溶解度がこの範囲内であれば、共沸脱水工程においてマレイン酸、フマル酸およびマレイン酸重合体等の水溶性固体物の析出が防止される。また、フマル酸の析出が防止されるのは、フマル酸への異性化が抑制されることにもよる。したがって、共沸脱水工程において、このような共沸溶媒が使用されると、共沸脱水塔(40)内における油水分離状態が緩和され、アルデヒド類やキノン類の水相への蓄積も抑制される。その結果、これらが縮合的に反応することが抑えられ、該反応により生成する閉塞物の生成が防止されるため好ましい。なお、前記「マレイン酸の最大溶解濃度」とは、化学便覧やバイルシュタイン等に記載される溶解度や溶解性データを意味するが、これらに記載がない場合には実施例の項で規定する最大溶解濃度であってもよい。
【0050】
また、前記共沸溶媒は、圧力1013hPaにおける沸点が好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜160℃、特に好ましくは110〜150℃である。沸点が80℃未満であると、共沸蒸留塔(60)内の脱水反応温度が低下するのに伴って脱水反応速度が低下し、製造効率が低下する。一方、沸点が170℃を超えると、無水マレイン酸の沸点と近くなり、有機溶媒とともに留去される無水マレイン酸の割合が増加してしまう。
【0051】
前記共沸溶媒として、好ましくは、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノンおよび3−ヘプタノン等のケトン類、並びに酢酸アリル等のエステル類等が用いられる。これらのケトン類やエステル類は水との相溶性を有するため、マレイン酸、フマル酸およびマレイン酸重合体等のこれら共沸溶媒に対する溶解度が増加し、析出物の発生を抑制することができる。特に好ましくは、マレイン酸の溶解度に優れる点でケトン類が用いられる。また、ケトン類は無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発生防止効果や閉塞物の溶解性にも優れる。さらに、ケトン類はマレイン酸や無水マレイン酸との反応性を有しない。なお、本発明においては、これらの有機溶媒の1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
ここで、原料ガスとしてベンゼンを用いる場合には、縮合物の原因となるアルデヒド類やキノン類の副生量が多い。したがって、この場合には前記共沸溶媒を選択することが特に効果的である。しかしながら、原料ガスとしてベンゼン以外、例えば、n−ブタン等の脂肪族炭化水素を用いる場合や、無水フタル酸を製造する目的でナフタリンおよびo−キシレン等の芳香族炭化水素を原料ガス(1)として用いて、副生物として無水マレイン酸を得る際等にも、アルデヒド類やキノン類は生成する。したがって、いずれの原料を使用する場合にも共沸溶媒を選択することは有用である。
【0053】
また、前記共沸溶媒の共沸脱水塔(40)における使用量は、マレイン酸含有水溶液1質量部に対して好ましくは0.3〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。共沸溶媒の使用量がマレイン酸含有水溶液に対して0.3質量部未満では共沸脱水塔(40)内で油水分離状態が発生しやすくなり、水相側においてアルデヒド類やキノン類が縮合反応し閉塞物が生成する。一方、10質量部を超えると共沸脱水するために多量の熱エネルギーを要するので不経済である。さらに、前記共沸溶媒の共沸脱水塔(40)の塔底液中の濃度は、好ましくは100ppm以上、より好ましくは100〜50000ppmである。100ppm未満では、塔底液中に残存しているアルデヒド類やキノン類が縮合反応を起こし、装置を閉塞するおそれがある。
【0054】
共沸溶媒は、共沸脱水塔(40)に直接供給される方式に限らず、供給原料に混在した状態で共沸脱水塔(40)内に供給されてもよい。共沸溶媒が供給される位置は特に限定されるものではないが、直接供給される場合には、共沸脱水塔(40)の上部に供給されるのが一般的である。
【0055】
なお、共沸脱水塔(40)の塔底温度は、好ましくは130〜200℃、より好ましくは150〜190℃である。塔底温度が130℃を下回ると、マレイン酸の脱水反応が遅くなるためマレイン酸の脱水が充分にできず、無水マレイン酸の収率が低下するおそれがある。一方、塔底温度が200℃を上回ると、無水マレイン酸の分解および重合が起こりやすくなる。また、共沸脱水塔(40)の塔頂圧力(絶対圧)は、好ましくは10〜102kPa、より好ましくは20〜102kPa、特に好ましくは30〜90kPaである。塔頂圧力が10kPaを下回ると、真空装置が大型化するばかりではなく、塔内温度が低下し、マレイン酸やフマル酸が結晶化して蒸留できない場合がある。一方、塔頂圧が102kPa力を上回ると、塔内温度が上昇し、重合物が発生しやすくなることに加え、リボイラーの大型化および装置の耐圧化の必要があり不経済である。さらに、本発明において、共沸脱水塔(40)の塔底滞留時間は好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは0.5〜8時間、特に好ましくは1〜5時間である。塔底滞留時間が0.5時間未満では、有水マレイン酸が充分に無水化されず、その後の工程においてフマル酸に転位して、該フマル酸が析出することによりパイプライン等の装置の閉塞を生じる場合がある。一方、塔底滞留時間が10時間を超えると、共沸脱水塔(40)内において無水マレイン酸およびアクリル酸の重合物および縮合物が生じ、これらが核となって装置を閉塞するおそれがある。
【0056】
共沸脱水工程においては、共沸脱水塔(40)の塔頂部に油水分離槽(50)を付属させて、該油水分離槽(50)に塔頂流出液を供給することにより、共沸溶媒相と水相とに分離させることができる。該共沸溶媒相中の液は、共沸脱水塔(40)に還流させてもよい。一方、該水相中には共沸溶媒が含まれている。したがって、水相の液は溶媒回収塔(90)に供給され、蒸留により水相から共沸溶媒を分離することで、共沸溶媒が効率的に再利用される。さらに、共沸溶媒が回収された水相は、抜き出して系外に排出されてもよいが、水捕集塔(20)に供給されて捕集水として再利用されてもよい。なお、溶媒回収塔(90)としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔およびスプレー塔等、従来公知の装置か使用される。溶媒回収塔(90)の蒸留条件としては、特に限定されることはなく、例えば、塔頂温度50〜120℃、塔頂圧力(絶対圧)20〜202kPa等の条件が用いられる。
【0057】
共沸脱水塔(40)の塔底液は、次いで高沸点分離塔(60)に供給されて高沸点物質を分離された後、低沸分離塔(70)による低沸点物質除去工程において低沸点物質を分離され、次いで精製塔(80)において精製されることが好ましい。該精製塔において精製無水マレイン酸(81)が得られる。
【0058】
本発明では、例えば、特定の共沸溶媒を使用し、さらに高沸点物質除去工程の工程条件を調整すると、前記蒸留残渣(61)中の無水マレイン酸濃度を従来よりも低くすることが可能となる。
【0059】
従来の反応工程においては、共沸脱水塔、高沸点分離塔および蒸留残渣の抜出ライン等における閉塞を防止するためには、蒸留残渣中の無水マレイン酸を高濃度に維持する工程条件とせざるを得ず、無水マレイン酸のロス分が増大し、収率が低下するという問題点があった。一方、本発明によれば、工程条件を調整することで、蒸留残渣中の無水マレイン酸濃度を低下させても閉塞を防止することが可能となるのである。
【0060】
したがって、本発明において、蒸留残渣(61)中の無水マレイン酸濃度は、5〜50質量%、より好ましくは8〜45質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。無水マレイン酸濃度が5質量%未満では、高沸点不純物であるフマル酸、有水マレイン酸、無水フタル酸、重合物、縮合物およびタール分等の濃度が増加し、これらが析出しやすくなり、パイプライン等の装置において閉塞が発生する場合がある。一方、50質量%を超えると、無水マレイン酸のロス分が増大し、蒸留残渣(61)量も多くなり不経済である。
【0061】
また、従来は蒸留残渣中(61)の縮合物濃度が大きかったことから、上記と同様に蒸留残渣中の水分は比較的高濃度に調整され、さらに該蒸留残渣を廃棄処理するに際しては、水を加えることにより流動性を付与していた。これに対し、本発明では、特定の共沸溶媒を使用することで前記縮合物の生成が抑制される結果、蒸留残渣(61)中の縮合物濃度が抑えられ、さらに、高沸点物質除去工程において工程条件を調整することで蒸留残渣(61)の流動性が確保される。したがって、本発明において、該蒸留残渣(61)中の水分濃度は1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。1質量%以下であれば、従来とは異なり、簡便に連続燃焼処理される。一方、水分濃度が1質量%超では、水が無水マレイン酸と反応し、有水マレイン酸が生成し、さらにフマル酸へ転位することで、パイプライン等の装置に閉塞が発生するおそれがある。
【0062】
さらに、本発明においては、工程条件を調整することで前記蒸留残渣(61)は一定範囲の粘度を有する。本発明において、蒸留残渣(61)の150℃における粘度は10〜200センチポイズ、より好ましくは20〜200センチポイズ、特に好ましくは30〜180センチポイズである。蒸留残渣の粘度が10センチポイズ未満では、水分濃度が大きくなるため、上記のような問題が発生する。また、無水マレイン酸濃度も大きくなり、ロス分が増大して不経済である。一方、200センチポイズを超えると、蒸留残渣の流動性が悪くなり、パイプライン等の装置が閉塞する場合がある。なお、本発明において、粘度の測定は、回転粘度計の一種であるB型粘度計を用いて測定する。
【0063】
前記高沸点分離塔(60)は、特に限定されるものではないが、例えば、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔およびフラッシュ塔、並びに回転式滞留槽型蒸発器および薄膜型蒸発器等が用いられる。さらに、これらの装置は単独で、または複数組み合わせられて直列もしくは並列に接続されて用いられる。本発明において、好ましくは、前記高沸点物質除去工程は二段の濃縮工程を有する。該濃縮工程のより好ましい実施形態を、図5を用いて以下に説明する。なお、図5において62はフラッシュ塔、63は流下式薄膜型蒸発器、64は回転式滞留槽型蒸発器、65は回転式薄膜型蒸発器である。
【0064】
まず第一段目においては、好ましくはフラッシュ塔(62)並びに流下式薄膜型蒸発器(63)および/または回転式薄膜型蒸発器(65)が用いられる。共沸脱水工程の塔底液は粘度が低く流動性も良好であることから、これらの薄膜型蒸発器を用いることにより接触表面積および接触時間を大きくすることができる。該薄膜型蒸発器としては、特に好ましくは竪型流下式薄膜型蒸発器が用いられる。
【0065】
ここで、第一段目においてフラッシュ塔と流下式薄膜型蒸発器および/または回転式薄膜型蒸発器とを併用する場合には、これらの順序は問わず、いかなる順序で用いてもよい。しかし好ましくは、図5に示すように共沸脱水塔(40)の塔底より得られた粗無水マレイン酸(42)をまずフラッシュ塔(62)に供給し、その後に流下式薄膜型蒸発器(63)(図5(a)を参照。)または回転式薄膜型蒸発器(65)(図5(b)を参照。)に供給する。この場合、フラッシュ塔(62)に供給された液に含まれる高沸点不純物が重力落下により薄膜型蒸発器に移行する。また、フラッシュ塔(62)の外部からの熱源はガスの顕熱分のみであるが、薄膜型蒸発器が加熱されることでフラッシュ塔(62)も加熱される。さらに、かかる態様により前記フラッシュ塔(62)の塔底部の汚れが抑制される。これは以下の理由による。すなわち、粗無水マレイン酸(42)がフラッシュ塔(62)に直接供給されることで、該フラッシュ塔(62)の塔底部が洗浄されるのである。また、塔底液滞留時間が短くなることで、溶存しているアルデヒド類およびキノン類による縮合物の生成が抑制されることも一因と考えられる。なお、図5には示していないが、流下式薄膜型蒸発器(63)と回転式薄膜型蒸発器(65)とを併用することもできる。ここで、この際の塔内ガス線速は、好ましくは1〜10m/sである。ガス線速が1m/s未満では、塔径が大きくなり不経済である。一方、10m/s超では、高沸点不純物の飛沫分が多くなり、次工程以降において装置の閉塞が発生しやすい。なお、前記「塔内ガス線速」とは、塔内ガス流量/塔断面積で表されるものとする。さらに、薄膜型蒸発器に移行した凝縮物は、該蒸発器において加熱され、高沸点不純物と、溶媒等の低沸点物質に分離される。本発明において、該凝縮物中の溶媒等の低沸点物質を含むガスは、好ましくは図5に示すようにフラッシュ塔(62)に供給される。ここでフラッシュ塔(62)に供給されたガス中に含まれる高沸点物質は、該フラッシュ塔(62)において低沸点物質と分離される。さらに、第一段目においては、蒸発器内の滞留時間が短いことが好ましく、例えば、5分以内であることが好ましい。滞留時間が短時間であると、共沸脱水塔の塔底液に溶存しているアルデヒド類およびキノン類による縮合物の生成が抑制されるためである。なお、「蒸発器内の滞留時間」とは、蒸発器抜出量に対する液滞留時間をいい、蒸発器内の滞留時間=蒸発気液滞留量/蒸発器抜出量で表される。
【0066】
前記第一段目において濃縮された、高沸点不純物を含む濃縮液は、さらに第二段目において濃縮される。この第二段目において好ましくは、図5に示すように回転式滞留槽型蒸発器(64)が用いられる。第一段目での濃縮後の濃縮液は有水マレイン酸濃度が高く比較的流動性に劣っており、さらに該蒸発器(64)を用いることで、回転により常に内壁が液で濡れている状態になり、析出物の発生が抑制される。なお、第二段目においては、排出される塔底液、すなわち蒸留残渣の量に対する供給液の滞留時間は、好ましくは2〜50時間、より好ましくは10〜30時間である。滞留時間が2時間未満では、残存している有水マレイン酸の脱水が充分になされず、有水マレイン酸の濃度が非常に高くなる結果、前記回転式滞留槽型蒸発器(64)内、および蒸留残渣を移送するパイプライン内において閉塞が生じる。また、ロス分も大きくなり不経済である。一方、滞留時間が50時間を超えると、縮合物、無水マレイン酸重合物およびアクリル酸重合物が生成し、これらを核としてパイプライン等の装置内に閉塞が生じる。
【0067】
本発明において、フラッシュ塔(62)の塔頂圧(絶対圧)としては、好ましくは1〜40kPa、より好ましくは3〜20kPaの条件が、また塔頂温度は、好ましくは70〜170℃、より好ましくは90〜140℃の条件が用いられる。高沸点分離塔(60)からの留出量は、高沸点不純物の許容量に従って適宜決定され、流下式薄膜型蒸発器(63)または回転式薄膜型蒸発器(65)の塔頂圧(絶対圧)としては、好ましくは1〜40kPa、より好ましくは3〜20kPaの条件が、また塔頂温度は、好ましくは70〜170℃、より好ましくは90〜140℃の条件が用いられる。回転式滞留槽型蒸発器(64)の塔頂圧(絶対圧)としては、好ましくは1〜40kPa、より好ましくは3〜20kPaの条件が、また塔頂温度は、好ましくは70〜170℃、より好ましくは90〜140℃の条件が用いられる。
【0068】
上記のように、高沸点物質除去工程においては高沸点不純物が濃縮され、塔底液が蒸留残渣(61)として得られる。該蒸留残渣(61)の温度は、好ましくは130〜160℃、より好ましくは130〜155℃、特に好ましくは135〜150℃である。蒸留残渣(61)の温度が130℃未満では、フマル酸、無水フタル酸等が析出し、装置の閉塞が発生するおそれがある。一方、160℃超では、無水マレイン酸の重合物、アクリル酸の重合物およびタール分が生成しやすく、装置の閉塞が発生する場合がある。
【0069】
なお、高沸点物質除去工程において高沸点不純物が濃縮されて得られる塔底液を、本発明では「蒸留残渣」と称するが、単なる「残渣」ではなく「蒸留残渣」と称するのは以下の理由による。すなわち、無水マレイン酸等の製造工程において、残渣を製品と分離する方法としては、本発明のように加熱により蒸留して分離する方法のほか、フィルターや膜等を使用して分離する方法、晶析法を用いて分離する方法などが知られている。ここで本発明では、これらのなかでも加熱蒸留による方法を採用しているため、得られる残渣を「蒸留残渣」としているのである。
【0070】
本発明において、得られた蒸留残渣(61)を燃焼処理する廃液燃焼装置(100)としては、特に制限されることなく、従来公知の装置が用いられる。本発明によれば、蒸留残渣中の水分濃度を低く抑えることができるため、従来必要だった助燃剤が不要になり、燃焼処理を簡便かつ安全に行うことができる。また、蒸留残渣(61)中の縮合物、重合物、フマル酸およびタール分等の濃度を抑えることができるため、高い燃焼効率を保持することができる。
【0071】
本発明は、上記のように縮合物の生成を抑制し、蒸留残渣の流動性を確保することで、従来問題となっていた蒸留残渣を移送するパイプライン内での閉塞を効果的に抑制する。したがって、従来は蒸留残渣をバッチで抜き出し、冷却固化後人力で粉砕して産業廃棄物として外部委託処理をする必要があったが、本発明によれば連続的に移送して燃焼処理できることからその必要がなくなり、従来問題となっていた、蒸留残渣を廃棄処理することに伴う多大な労力およびコストを削減することができる。
【0072】
本発明においては、高沸点分離塔(60)による高沸点物質除去工程とは別に、低沸分離塔(70)による低沸点物質除去工程を経由することが好ましい。該低沸分離塔(70)においては、低沸点物質および残存する共沸溶媒等が留去される。低沸分離塔(70)としては、棚段塔、充填塔、濡れ壁塔およびスプレー塔等の従来公知の装置が用いられる。本発明においては、低沸分離塔(70)は棚段塔または充填塔であることが好ましい。蒸留条件としては、従来公知の条件が用いられ、例えば塔頂温度は60〜140℃、塔頂圧力(絶対圧)は10〜60kPa、還流比は0.3〜30という条件が用いられる。なお、高沸点分離塔(60)による高沸点物質除去工程と低沸分離塔(70)による低沸点物質除去工程は、高沸点物質除去工程を先に行うことが好ましい。また、低沸分離塔(70)の留出液は、溶媒回収塔(90)または油水分離槽(50)へ供給され、好ましくは、溶媒回収塔(90)へ供給される。例えばこのように低沸分離塔(70)の留出液が溶媒回収塔(90)または油水分離槽(50)へ供給されることで、蒸留残渣(61)中の無水マレイン酸および水分濃度、並びに粘度を特定の範囲内とすることが可能となる。しかし、本発明においては、特定の性質を有する蒸留残渣(61)を得られるのであれば特に限定されず、他の方法も広く用いることができる。
【0073】
このように、共沸溶媒、高沸点物質および低沸点物質が除去された無水マレイン酸は、さらに精製塔(80)に供給されて精製され、精製無水マレイン酸(81)が製品として得られる。精製塔(80)においては、好ましくは塔頂温度80〜170℃、塔頂圧力(絶対圧)2〜40kPa、還流比0.1〜5の精製条件が用いられ、その他は公知の条件が用いられる。なお、共沸溶媒および共沸脱水塔(40)での蒸留条件を選択することにより低沸分離塔(70)を採用しないことが可能であるが、その際精製無水マレイン酸(81)は、好ましくは精製塔(80)の中段より抜き出される。
【0074】
【実施例】
(参考例1:有機溶媒の水に対する最大溶解濃度の測定方法)
本発明で使用する有機溶媒の水に対する最大溶解濃度の測定は以下の方法による。100mlの密閉できる蓋付のガラス容器に温度20℃の純水80gを入れ、スターラーで攪拌しながら対象とする有機溶媒または溶媒混合物を滴下し、1時間後の溶解状態を目視で観察する。溶け残りのあった場合には、1回の滴下量をさらに少なくして再度上記の溶解性を確認する。なお溶質である有機溶媒または溶媒混合物の最小滴下量は0.02gとした。このようにして、とけ残りがないと認められる最大滴下量(溶質質量)を求め、水(溶媒)80gへの最大溶解濃度として算出した。具体的には、
【0075】
【数1】
Figure 0004628653
【0076】
の式で求めたものを、本発明における最大溶解濃度としてもよい。これらの値は本文中に記載した化学便覧やバイルシュタインに記載される当該溶媒の水への溶解性データとほぼ一致した。なお、本件の実施例は、80gの溶媒に溶解する各溶質の最大溶解濃度を、上記式に従い算出したものである。最大溶解濃度は液温20℃で測定する。
【0077】
上記に従って評価した、o−キシレン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン(DIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)およびジブチルエーテル(DBE)の溶解性を表1に示す。
【0078】
(参考例2:該溶媒に対するマレイン酸またはフマル酸の最大溶解濃度の測定)
100mlの密閉できる蓋付のガラス容器に温度20℃の溶媒80gを入れ、スターラーで攪拌しながら最大溶解濃度測定項目の試薬特級グレードのマレイン酸またはフマル酸を添加し、目視で溶解状態を確認した。1時間攪拌しても溶け残りがある時は不溶とした。溶け残りのあった場合には、1回の添加量をさらに少なくして再度上記の最大溶解濃度の確認を行なった。なお最小滴下量は0.01gとした。このようにして、とけ残りがないと認められる最大滴下量(溶質質量)を求め、各溶媒80gへの最大溶解濃度として算出した。具体的には、
【0079】
【数2】
Figure 0004628653
【0080】
の式で最大溶解濃度として求めたものを、本発明における最大溶解濃度としてもよい。最小適下量0.01g(0.006質量%)でもとけ残った場合、不溶とした。なお、最大溶解濃度は液温20℃で測定する。
【0081】
結果を表1に示す。表1から、水への最大溶解濃度や、マレイン酸やフマル酸の最大溶解濃度は、MIBKが他の物質より比較的高い数値を示した。DIPK、DIBKとケトン基がより高い分子量の置換基になるに従ってMIBKよりも最大溶解濃度は低下してゆく傾向が見られたが、MIBKはマレイン酸やフマル酸を溶解した。しかし、o−キシレンはマレイン酸やフマル酸を溶解せず、かつ水へのこれらの物質での最大溶解濃度をほとんど示さない。
【0082】
【表1】
Figure 0004628653
【0083】
(実施例1)
図1に示す工程に従って無水マレイン酸を製造した。
【0084】
まず、ベンゼンの接触気相酸化反応により排出された無水マレイン酸を含む反応ガスを、無水マレイン酸捕集器に供給して、粗無水マレイン酸を捕集した。この捕集液は、無水マレイン酸98質量%、有水マレイン酸0.5質量%、フマル酸0.1質量%、ベンゾキノン0.04質量%、ハイドロキノン0.07質量%、無水フタル酸0.8質量%を含んでいた。その後、無水マレイン酸捕集器の出口ガスを水捕集塔に供給した。次いで、該ガスを水捕集塔において水で捕集し、粗マレイン酸含有水溶液を得た。なお、得られた粗マレイン酸含有水溶液は、有水マレイン酸47質量%、無水フタル酸0.12質量%、フマル酸0.03質量%、ホルムアルデヒド0.84質量%、ベンゾキノン0.04質量%、アクリル酸0.08質量%を含んでいた。この粗マレイン酸含有水溶液を、5.1kg/hで前濃縮装置に供給し、水を約40質量%濃縮した。その後、濃縮されたマレイン酸含有水溶液を共沸脱水塔に供給し、MIBKを共沸溶媒として使用して共沸脱水を行った。なお、無水マレイン酸捕集器で捕集された捕集液を1.5kg/hで共沸脱水塔に供給した。
【0085】
共沸脱水塔としては、濃縮部105φ有堰5段、回収部105φ有堰26段の蒸留塔を使用した。共沸溶媒は、該マレイン酸含有水溶液に含まれる水、およびマレイン酸が無水化することにより発生する水の合計量に対し4質量倍を塔頂から供給し、塔頂圧力650hPa、塔底温度180℃、塔底抜き出し液量に対して約3時間共沸脱水蒸留を行った。系内組成が一定になった時点での塔底液は、無水マレイン酸94.2質量%、有水マレイン酸2.5質量%、フマル酸1.5質量%、MIBK0.5質量%を含んでいた。
【0086】
この塔底液を高沸点分離塔、低沸分離塔、および精製塔へ順次供給した。また、精製塔の塔頂より精製無水マレイン酸を抜き出し、高沸点分離塔の底部より蒸留残渣を抜き出した。さらに、該蒸留残渣をパイプラインで移送し、燃焼設備で連続燃焼処理した。より詳細な条件は以下の通りである。
【0087】
高沸点分離塔では、まずフラッシュ塔および竪型流下式薄膜型蒸発器を使用し、塔頂圧力146hPa、塔底温度135℃、濃縮倍率(Feed/Bott.)5.2、フラッシュ塔内ガス線速1.9m/s、滞留時間2分で濃縮した。次いで回転式滞留槽型蒸発器を使用し、塔頂圧力67hPa、塔底温度140℃、濃縮倍率(Feed/Bott.)4.4、蒸留残渣量に対する塔底滞留時間30時間で濃縮することにより二段濃縮し、底部より蒸留残渣を得た。
【0088】
低沸分離塔では、有堰5段の蒸留塔を使用し、塔頂圧力133hPa、塔底温度135℃、還流比10で低沸点物質と共沸溶媒との分離を行った。
【0089】
精製塔では、有堰10段の蒸留塔を使用し、塔頂圧力67hPa、塔底温度132℃、還流比0.5で無水マレイン酸の精製を行った。結果を以下に示す。
【0090】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸20.3質量%、フマル酸38.8質量%、有水マレイン酸22.9質量%、無水フタル酸11.5質量%、水分0.1質量%以下を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく140℃であり、粘度は100センチポイズ(150℃)であった。
【0091】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格(JIS 1359/1985、純度:99.0質量%以上、凝固点:52.0℃以上、溶融色:50以下)を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は95.7%であった。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、合計約100g存在していたが、稼動中に装置の閉塞が発生することはなく、燃焼処理にも問題は生じなかった。
【0092】
(実施例2)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度を160℃としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0093】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸9.0質量%、フマル酸46.5質量%、無水フタル酸14.6質量%、有水マレイン酸20.6質量%、水分0.1質量%以下を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく160℃であり、粘度は190センチポイズ(150℃)であった。
【0094】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は96.6%であった。稼動中、パイプラインがやや閉塞気味になり、圧力に振りが見られた。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、合計約300g存在しており、その成分は主にフマル酸であった。
【0095】
(実施例3)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度を130℃としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0096】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸35.5質量%、フマル酸29.8質量%、有水マレイン酸20.9質量%、無水フタル酸9.1質量%、水分0.1質量%以下を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく130℃であり、粘度は40センチポイズ(150℃)であった。
【0097】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は94.4%であった。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、主にフマル酸が合計約150g存在していたが、稼動中に装置の閉塞が発生することはなく、燃焼処理にも問題は生じなかった。
【0098】
(実施例4)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度を126℃としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0099】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸47.6質量%、フマル酸23.2質量%、無水フタル酸7.1質量%、有水マレイン酸18.6質量%、水分0.1質量%以下を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく126℃であり、粘度は30センチポイズ(150℃)であった。
【0100】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は92.9%であった。稼動中、パイプラインがやや閉塞気味になり、圧力に振りが見られた。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、合計約500g存在しており、その成分は主にフマル酸およびフタル酸であった。
【0101】
(実施例5)
回転式滞留槽型蒸発器の蒸留残渣量に対する塔底滞留時間を1.5時間としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0102】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸20.0質量%、フマル酸30.2質量%、無水フタル酸9.3質量%、有水マレイン酸34.5質量%、水分0.2質量%を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく140℃であり、粘度は95センチポイズ(150℃)であった。
【0103】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は95.0%であった。稼動中、パイプラインがやや閉塞気味になり、圧力に振りが見られた。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、合計約150g存在しており、その成分は主にフマル酸および有水マレイン酸であった。
【0104】
参考例6)
回転式滞留槽型蒸発器を回転式薄膜型蒸発器としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0105】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸20.0質量%、フマル酸24.9質量%、無水フタル酸7.0質量%、有水マレイン酸42.0質量%、水分0.3質量%を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく140℃であり、粘度は93センチポイズ(150℃)であった。
【0106】
上記の条件で1ヶ月間連続稼動させたところ、精製無水マレイン酸の純度は99.86〜99.91質量%、凝固点は52.7〜52.8℃、溶融色は5であり、いずれもJIS規格を充分満足するものであった。また、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は94.2%であった。稼動中、パイプラインがやや閉塞気味になり、圧力に振りが見られた。さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は、合計約1kg存在しており、その成分は主に有水マレイン酸であった。
【0107】
参考例7)
高沸点分離塔において、共沸脱水塔の塔底液をフラッシュ塔ではなく竪型流下式薄膜型蒸発器に供給したこと以外は、実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0108】
得られた蒸留残渣の組成および粘度は、ともに実施例1と同じであり、また収率も同じであった。
【0109】
さらに、停止後内部点検を行ったところ、装置およびパイプライン内での析出物は合計110g存在していた。またフラッシュ塔の塔底部においては、付着物がやや増加していた。
【0110】
(比較例1)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度を120℃としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0111】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸54.3質量%、フマル酸15.7質量%、無水フタル酸4.2質量%、有水マレイン酸23.2質量%、水分0.5質量%を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく120℃であり、粘度は9センチポイズ(150℃)であった。
【0112】
上記の条件で稼動したところ、10日目にパイプライン中に閉塞が生じて移送ができなくなり、製造を停止した。停止後内部点検を行ったところ、回転式滞留槽型蒸発器内には析出物が少量存在し、また、パイプライン内には析出物が多量に存在していた。該析出物の主成分はフマル酸およびフタル酸であった。なお、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は89.2%ときわめて低かった。
【0113】
(比較例2)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度を180℃としたこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0114】
高沸点分離塔から抜き出された蒸留残渣は、無水マレイン酸3.8質量%、フマル酸53.0質量%、無水フタル酸15.7質量%、有水マレイン酸15.7質量%、水分0.1質量%以下を含んでいた。該蒸留残渣の温度は塔底温度に等しく180℃であり、粘度は350センチポイズ(150℃)であった。
【0115】
上記の条件で稼動したところ、1日目にパイプライン中に閉塞が生じて移送ができなくなり、製造を停止した。停止後内部点検を行ったところ、回転式滞留槽型蒸発器内には析出物が多量に存在し、また、パイプライン内にも析出物が多量に存在していた。該析出物の主成分は縮合物、フマル酸、無水マレイン酸重合物、およびアクリル酸の重合物であった。なお、反応生成無水マレイン酸に対する精製無水マレイン酸の収率は96.9%であった。
【0116】
(比較例3)
回転式滞留槽型蒸発器の塔底液に、水を該塔底液に対して2質量%供給したこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0117】
上記の条件で稼動したところ、3日目にパイプライン中に閉塞が生じて移送ができなくなり、製造を停止した。停止後内部点検を行ったところ、パイプライン内に析出物が多量に存在していた。該析出物の主成分はフマル酸および縮合物であった。
【0118】
(比較例4)
共沸溶媒としてo−キシレンを使用したこと以外は実施例1と同様にして、無水マレイン酸を製造した。結果を以下に示す。
【0119】
上記の条件で稼動したところ、8時間後にパイプライン中に閉塞が生じて移送ができなくなり、製造を停止した。停止後内部点検を行ったところ、共沸脱水塔以降の装置(共沸脱水塔、フラッシュ塔、流下式薄膜型蒸発器および回転式滞留槽型蒸発器)およびパイプライン内に析出物が多量に存在していた。特に、共沸脱水塔から回転式滞留槽型蒸発器までの移送ライン内に多く存在していた。該析出物の主成分は縮合物、フマル酸、無水マレイン酸重合物、およびアクリル酸の重合物であった。
【0120】
【発明の効果】
従来、無水マレイン酸製造における共沸脱水工程においては、水溶性のアルデヒド類およびキノン類などが縮合反応して縮合物を生成し、閉塞の原因となっており、蒸留残渣の流動性が悪かった。これに対し、本発明では、温度20℃の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を使用することにより、共沸脱水塔内における油水分離状態を緩和し、アルデヒド類とキノン類の水相への局在化を抑える。その結果、これらの水相内濃度を低下させ、これらが縮合反応することによる縮合物の生成を極めて効果的に防止することができる。
【0121】
また従来、高沸点物質除去工程で得られた蒸留残渣を廃棄する際には、流動性を付与するために水を添加しなければならなかった。本発明は、上記のような共沸溶媒を使用して縮合物の発生を効果的に防止し、共沸脱水工程および/または高沸点物質除去工程の工程条件を調節することで、得られる蒸留残渣に流動性が付与される。それによって、その後の処理工程において従来問題となっていた、閉塞物によるパイプライン等の装置の閉塞を防止し、該蒸留残渣の廃棄処理に要する労力およびコストの削減を可能とする。また、水を添加していないために助燃剤もほとんど必要とされない。さらには、燃焼後の排出ガスの熱量も蒸気または温水等により回収されるため、設備投資およびランニングコストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい実施形態の工程図である。
【図2】 図2は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい実施形態の工程図である。
【図3】 図3は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい実施形態の工程図である。
【図4】 図4は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい実施形態の工程図である。
【図5】 図5は、本発明の無水マレイン酸の製造方法における、高沸点分離塔の好ましい実施形態の工程図である。
【符号の説明】
1…原料ガス、2…分子状酸素含有ガス、3…接触気相酸化反応器、5…無水マレイン酸含有ガス、10…無水マレイン酸捕集器、11…凝縮粗製無水マレイン酸、20…水捕集塔、21…リサイクル捕集水、23…マレイン酸含有水溶液、30…前濃縮装置、40…共沸脱水塔、42…粗無水マレイン酸、50…油水分離槽、51…廃水、60…高沸点分離塔、61…蒸留残渣、62…フラッシュ塔、63…流下式薄膜型蒸発器、64…回転式滞留槽型蒸発器、65…回転式薄膜型蒸発器、70…低沸分離塔、80…精製塔、81…精製無水マレイン酸、90…溶媒回収塔、100…廃液燃焼装置。

Claims (6)

  1. 炭化水素の接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸を捕集する工程と、該捕集工程で得た粗マレイン酸含有水溶液を、共沸溶媒として温度20℃(常圧)の水に対する最大溶解濃度が0.3〜5質量%の有機溶媒を用いて共沸脱水する工程と、さらに該共沸脱水工程で得た粗無水マレイン酸から高沸点物質を蒸留残渣として分離し系外に除去する工程とを含む無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法において、
    前記有機溶媒は、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノンおよび3−ヘプタノンであるケトン類、並びに酢酸アリルであるエステル類であり、
    前記高沸点物質除去工程は二段の濃縮工程を有し、
    前記濃縮工程において、第一段目はフラッシュ塔並びに流下式薄膜型蒸発器および/または回転式薄膜型蒸発器で行い、第二段目は回転式滞留槽型蒸発器で行い、
    前記回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度は126〜160℃であり、
    前記蒸留残渣中の無水マレイン酸濃度が5〜50質量%であり、水分濃度が1質量%以下であることを特徴とする、無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法。
  2. 前記回転式滞留槽型蒸発器の塔底温度が130〜140℃である、請求項1に記載の処理方法。
  3. 前記高沸点物質除去工程で分離された蒸留残渣の、150℃における粘度が10〜200センチポイズである、請求項1または2に記載の無水マレイン酸の蒸留残渣の処理方法。
  4. 前記回転式滞留槽型蒸発器における、蒸留残渣量に対する液滞留時間が2〜50時間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理方法。
  5. 前記フラッシュ塔における塔内ガス線速が1〜10m/sである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理方法。
  6. 前記共沸脱水工程における共沸脱水塔は、有堰多孔板5段以上を備えるものであり、さらに該共沸脱水塔における塔底抜出量に対する塔底液滞留時間が0.5〜10時間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理方法。
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