JP2003064071A - 無水マレイン酸の製造方法 - Google Patents

無水マレイン酸の製造方法

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JP2003064071A JP2001254743A JP2001254743A JP2003064071A JP 2003064071 A JP2003064071 A JP 2003064071A JP 2001254743 A JP2001254743 A JP 2001254743A JP 2001254743 A JP2001254743 A JP 2001254743A JP 2003064071 A JP2003064071 A JP 2003064071A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 共沸脱水工程における閉塞物の発生を抑制し
た無水マレイン酸の製造方法を提供する。 【解決手段】 粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によ
って脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法にお
いて、粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるホルムアル
デヒドの量を0.01〜1000質量ppmの範囲にす
るアルデヒド量調整工程を行なった後に、該共沸蒸留に
よって脱水する工程を行なうものである。本発明によれ
ば、装置等の腐食を生じさせずに閉塞物の発生を防ぎ、
長期間の連続運転を可能とする無水マレイン酸の製造方
法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粗マレイン酸含有
水溶液の共沸脱水工程を含む無水マレイン酸の製造方法
において、予めアルデヒド類の含有量を低下させた後に
共沸脱水処理し、これによって閉塞物の発生を防止して
連続蒸留運転を可能とする、無水マレイン酸の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】無水マレイン酸は、n−ブタンなどの炭
素数4以上の脂肪族炭化水素やベンゼン等を接触気相酸
化反応器で酸化し、得られる無水マレイン酸やマレイン
酸を含有するガスからマレイン酸を回収して精製する方
法によって製造される。また、ナフタリンやo−キシレ
ンの接触気相酸化反応によって無水フタル酸を製造する
際に排出される排ガスの洗浄水には相当量の無水マレイ
ン酸が含まれることから、該洗浄水を回収しこれを無水
マレイン酸として使用する方法によっても製造されてい
る。
【0003】一般に、無水マレイン酸を接触気相酸化反
応を経て製造する場合には、接触気相酸化反応によって
得た無水マレイン酸をそのまま精製する場合と、これを
一旦水溶液に捕集した後に粗マレイン酸含有水溶液を精
製し、マレイン酸を無水マレイン酸に再転化して製造す
る方法等がある。いずれの方法においても、水溶液捕集
を行なった場合には有水化したマレイン酸を無水化する
ため脱水処理する必要がある。また、副生するベンゾキ
ノン等の不純物や、さらには無水マレイン酸の精製工程
で副生するフマル酸などによって連続製造装置内の閉塞
などが生じる場合が多い。
【0004】特公昭41−3172号公報には、マレイ
ン酸含有水溶液の脱水工程を含む無水マレイン酸の製造
方法として、ベンゼンと空気との混合ガスを接触気相酸
化して無水マレイン酸を製造する方法であって、無水マ
レイン酸を含む反応ガスを水と接触して粗マレイン酸含
有水溶液を得て、溶融無水マレイン酸中に溶解して該混
合溶液を130〜160℃の無水マレイン酸−芳香族炭
化水素の混合溶液中に連続的に添加して液相でマレイン
酸を脱水する無水マレイン酸の連続製造法が記載されて
いる。無水マレイン酸を脱水するための芳香族炭化水素
としては、キシレン、サイメン、エチルベンゼン、ジエ
チルベンゼン、ジクロールベンゼンなどを使用し、連続
運転が可能である旨が記載されている。
【0005】また、特開昭50−50316号公報等
は、無水マレイン酸の連続製造方法における不純物によ
る経時的な装置内への堆積、該堆積に基づく閉塞や熱の
伝導性の低下などによる弊害を防止するための方法が開
示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開昭50−50316号公報記載の方法では十分な閉塞
防止には至っておらず、特公昭41−3172号公報記
載の方法でも満足行くものではない。
【0007】一方、上記した方法とは異なり、閉塞物の
発生を化学的に抑制する方法として、ベンゼンやC4
分炭化水素を接触気相酸化反応して得た反応性ガスを水
に吸収して得た粗マレイン酸含有水溶液等から無水マレ
イン酸を製造するに際して、粗マレイン酸含有水溶液に
過酸化水素を添加して濃縮、脱水を行う無水マレイン酸
の製造方法が特公平3−76311号公報に開示されて
いる。該公報によれば、粗マレイン酸含有水溶液には各
種の不純物が含有され、これらの不純物は原料としてど
のような炭化水素を用いた場合にも中間生成物、副生成
物として混在するものであり、反応触媒の改質等を行っ
ても完全に防ぐことは困難としている。この原因は、例
えばフェノール類とアルデヒド類、キノン類とアルデヒ
ド類による樹脂化またはゲル化が進行したものであっ
て、これによって装置が閉塞するとしている。そして、
該粗マレイン酸含有水溶液に過酸化水素を添加して濃
縮、脱水を行うと、樹脂状・ゲル化物質の生成が防止で
きるとしている。しかしながら、アルデヒド類に含まれ
るホルムアルデヒドが過酸化水素によって酸化され蟻酸
が発生する。接触気相酸化反応では蟻酸もわずかながら
副生するが、これに加えてアルデヒドと過酸化水素との
反応によって多量の蟻酸が発生するため、濃縮・脱水装
置の少なくとも一部または全部を腐食に耐える高価な材
質の使用する必要が生じ、製造装置のコストアップとな
る。加えて、本発明者らが確認したところ過酸化水素は
無水マレイン酸の重合開始剤として作用し、共沸脱水蒸
留工程における操作温度領域において重合が起こり、閉
塞物となるマレイン酸や無水マレイン酸の重合体が発生
した。特に、内部構造が複雑で閉塞物の蓄積が起こりや
すい共沸脱水蒸留装置では、無水マレイン酸重合体らに
よる閉塞によって連続稼動ができず停止を余儀なくさせ
られることがわかった。
【0008】本発明は上記問題点に鑑み、装置等の腐食
原因物質の発生や、マレイン酸重合体による閉塞物の発
生を防ぎ、長期間の連続運転を可能とする無水マレイン
酸の製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、粗マレイ
ン酸含有水溶液を共沸脱水する際の塔内の不純物による
汚れや閉塞物について詳細に検討した結果、予めアルデ
ヒド類を特定濃度以下に調整すると、共沸脱水工程にお
いてキノン類との縮合物の発生を効果的に抑制できるこ
と、アルデヒド類とキノン類との縮合物の発生に先立
ち、特定温度以下での留出操作による除去処理や、アル
デヒド類、特にホルムホルデヒドの酸化により発生した
蟻酸をさらに特定の触媒を用いて分解する反応を共沸脱
水蒸留前に行なうことで、装置を腐食させることなしに
蒸留装置の閉塞を効果的に防止できることを見出し、本
発明を完成させた。以下に具体的に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、粗マレイン酸含有水溶
液を共沸蒸留によって脱水する工程を含む無水マレイン
酸の製造方法において、予め粗マレイン酸含有水溶液中
に含まれるホルムアルデヒドの量を0.01〜1000
質量ppmの範囲にするアルデヒド量調整工程を行なっ
た後に、該共沸蒸留によって脱水する工程を行なう無水
マレイン酸の製造方法である。
【0011】粗マレイン酸含有水溶液の共沸脱水工程で
は、共沸脱水塔内でアルデヒド類も留出除去されるので
あるが、一般に塔底温度140〜200℃と高温で行わ
れるため、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドとキノ
ン類との縮合物が発生する。そこで、該水溶液中に含ま
れるホルムアルデヒドを予め0.01〜1000質量p
pm、より好ましくは0.01〜800質量ppm、特
には0.01〜500質量ppmの範囲内に除去した後
に共沸脱水することにより、該縮合物の発生を効果的に
防止することができるのである。ホルムアルデヒドの含
有量が1000質量ppmを超えるとキノン類との縮合
反応が発生しやすくなるが、その一方、アルデヒド類は
少量存在しても縮合物が発生しないことが判明し、例え
ばホルムアルデヒドが0.01質量ppm未満であれば
縮合物は発生しない。なお、無水マレイン酸合成反応で
副生されるアルデヒド類はそのほとんどがホルムアルデ
ヒドとアセトアルデヒドであり、中でもホルムアルデヒ
ドが主成分である。そこで、本発明ではアルデヒド類の
指標としてホルムアルデヒドを使用し、ホルムアルデヒ
ドの含有量を上記範囲に制限することで簡便に閉塞物の
発生を防止するもののである。また、キノン類のそのほ
とんどはp−ベンゾキノンとハイドロキノンであり、そ
の合計含有量をキノン類含有量としてキノン類の指標と
することができる。なお、上記のホルムアルデヒドの含
有量を特定の範囲に調整することは、具体的には上記範
囲内になるようにホルムアルデヒドを除去する工程を含
んでいる。
【0012】さらに説明すると、粗マレイン酸含有水溶
液の共沸蒸留の操作温度範囲では粗マレイン酸含有水溶
液に不純物として含まれるアルデヒド類は、キノン類や
フェノール類と縮合反応を起こしてしまい、共沸脱水蒸
留塔内の汚れの原因となる。これは、アルデヒド類の共
沸脱水蒸留塔からの留出速度よりもキノン類との縮合反
応の方が速度が速いからであり、樹脂状またはゲル状物
質の発生原因となっている。しかしながら、アルデヒド
類の留出速度と、アルデヒド類とキノン類との縮合反応
の速度、およびその際の温度との関係を調べたところ、
溶液の温度40〜130℃、より好ましくは50〜12
0℃、特に好ましくは60〜110℃で粗マレイン酸含
有水溶液を加熱処理すると、装置内の圧力のいかんにか
かわらず、両者の縮合速度よりもアルデヒド類の留出速
度の方が早いことが判明した。すなわち、この温度範囲
で、前記の粗マレイン酸含有水溶液からアルデヒド類を
除去してその量を上記範囲内に調整する処理操作を行う
と、アルデヒド類除去装置には樹脂状またはゲル状物質
の付着がほとんどなく、かつ次工程の共沸脱水蒸留にお
いても装置への閉塞物の付着がほとんどなく、このため
安定して連続運転を行うことができる。上記のアルデヒ
ド量調整工程において130℃を超えるとアルデヒド類
の留出よりも縮合物の発生が速くなり、その一方、40
℃を下回るとアルデヒド類の留出速度も遅く、生産性が
低下する場合がある。
【0013】またアルデヒド類を留出除去するための装
置における粗マレイン酸含有水溶液の滞留時間は5分以
下、より好ましくは3分以下、特には1分以下が好まし
い。上記温度範囲に加熱される時間が短いほど縮合物の
発生による閉塞が防げられるからである。上記のような
留出除去装置としては、薄膜蒸発器や段塔や充填塔を用
いる多段式蒸留器等が例示でき、装置内での滞留時間を
短くできることから薄膜蒸発器が好ましい。なお、薄膜
蒸発器には、回転式や流下式などがあるが上記の滞留時
間で処理できるものであればいずれの方法でも用いるこ
とができる。また、薄膜蒸発器によるアルデヒド類の除
去操作では粗マレイン酸含有水溶液中の水分も同時に除
去されるが、水分およびアルデヒド類除去後のマレイン
酸濃度は、90質量%以下、より好ましくは85質量%
以下、特には80質量%以下であればよい。90質量%
を越えるとマレイン酸異性化反応が起こりやすくフマル
酸の生成量が多くなるため、次工程の共沸脱水蒸留装置
内で閉塞物が析出しやすくなる。上記アルデヒド類を留
出除去する装置における好ましい温度および滞留時間
は、フマル酸の発生量を減少させる点からも好ましい条
件となる。この様に、本発明の製造方法にあっては、共
沸蒸留によって脱水する装置である共沸脱水塔とは別
に、その前処理工程としてアルデヒド量を特定範囲に調
整するための、アルデヒド類を留出などの操作により除
去する処理装置が設置されている工程を含むことが好ま
しい形態である。
【0014】また、アルデヒド類を除去してその量を調
整する方法としてはこのような留出除去による方法に限
られず、分子状酸素による酸化分解がある。この反応は
塩基のほか金属イオン、光照射や金属触媒等の触媒を用
いた接触酸化で高収率に行えることが一般に知られてお
り、新実験化学講座 第15巻 酸化と還元 I−14
62〜465ページ(丸善株式会社 昭和51年6月2
0日発行)などに記載されている方法で行なうことがで
きる。粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるアルデヒド
類を除去する方法としては、触媒、好ましくは金属触
媒、特に第VIII族金属を担体に担持した触媒を用い
る方法が、使用した触媒との分離が簡単かつ経済的であ
る点で好ましい。また、特開昭47−34310号公報
に記載される、装置の腐食原因となる発生した蟻酸を金
属触媒を用いて分解する方法によってもよい。更に、こ
の2つの反応を同時に行う方法として、例えば特表平1
0−508786号公報に記載される、ホルムアルデヒ
ドを蟻酸に変換し次いでこれを二酸化炭素と水に分解す
る方法がある。該触媒は、炭素に第VIII族金属、特
に白金、パラジウム、ロジウムなどを担持させたもので
あり、分子状酸素含有ガスとともにアルデヒド類を含む
流体を接触させて酸化する。
【0015】粗マレイン酸含有水溶液に含まれるアルデ
ヒド類や蟻酸を二酸化炭素と水に分解する方法として
は、上記公報に記載の方法に限らない。例えば、通常知
られているアルデヒド類酸化用の第VIII族触媒を用
い、バッチ式、連続式、または流動床、固定床等の組み
合わせで処理してもよい。金属触媒の担体は、マレイン
酸などの酸に対して安定であることが必要であり、通常
は炭素を用いることが好ましく、この場合の該担体の形
態は粉末でも成型したペレット状でもよい。この担体に
金属パラジウムを0.1〜10質量%、より好ましくは
3〜7質量%担持させて酸化用触媒を調製する。反応例
としては、常圧において槽型の反応器を使用し、粗マレ
イン酸含有水溶液に対して0.1〜10質量%、より好
ましくは1〜5質量%を添加し、分子状酸素または空気
をバブリングしながら撹拌して反応を行う。酸化条件は
水が沸騰しない温度、すなわち常圧であれば100℃以
下、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜7
0℃、特には50〜70℃で行う。100℃を越えると
縮合反応およびフマル酸生成反応が起こりやすく、その
一方、30℃を下回ると、酸化反応が遅くなるため反応
時間が長くなる。反応時間はアルデヒド類が縮合反応を
起こさないだけの量に減少できる必要十分な時間であれ
ば特に制限されないが、一般には、滞留時間は20時間
以下である。20時間を越えると反応器を大きくする必
要があり、不経済である。なお、反応の際の圧力は、
1.013×103hPa〜2.026×104hPaの
範囲が好ましい。この範囲であれば、分子状酸素がより
効率的に固体である酸化用触媒や水溶液中のアルデヒド
類と接触でき、触媒使用量や反応時間をより短縮でき
る。なお、2.026×104hPaを越えると耐圧性
の確保のために設備費が高価になり、不利である。な
お、減圧である1.013×103hPaを下回ると、
分子状酸素と固体の触媒と液中のアルデヒドとの接触が
反応速度を得るために不十分となり好ましくない。ま
た、上記のような槽型反応器ではなく、金属触媒を担持
したペレット状の触媒を筒型の反応器として通液して連
続的に反応を行ってもよい。該酸化用触媒を使用するこ
とで、ホルムアルデヒドが二酸化炭素と水に分解し、蟻
酸による装置の腐食を防止することができる。
【0016】アルデヒド類を除去してその量を調整する
方法としては、その他に吸着現象を利用した方法なども
ある。具体的には、活性炭、イオン交換樹脂、合成吸着
剤、ゼオライトやアルミナなどによってアルデヒド類、
または蟻酸を吸着する。これらの吸着剤はアルデヒド類
や蟻酸などカルボン酸などの極性基を持った化合物を吸
着しやすい。吸着装置の形式は、バッチ式または連続
式、さらには流動床、固定床のいずれの組み合わせでも
よい。特に、装置が連続式固定床であれば、メンテナン
ス性に優れるため有利である。さらに蒸留による留出や
触媒を用いたアルデヒドの分解後に残存した蟻酸の吸着
除去のために用いると、装置腐食防止に有効な方法であ
る。ただしこれらの吸着剤には吸着量の連続使用の限界
があるため、吸着物を取り除き賦活再使用するための工
程と期間が必要となる。従って、このような処理の必要
のない留出除去による方法や触媒を用いたアルデヒドの
分解の方法がアルデヒドの類の除去方法として有利であ
る。
【0017】上記アルデヒド類を除去してその量を調整
する方法は、共沸脱水工程で縮合反応による閉塞の発生
を防止し、かつ該装置の腐食の発生が無い程度に蟻酸を
除去できればよく、その除去方法は1種類であってもよ
いし2種以上の方法を組み合わせたものであってもよ
い。なお、装置腐食が問題にならない程度の蟻酸濃度と
は、共沸脱水塔廃液や、その他の精製工程途中の粗マレ
イン酸含有水溶液中や無水マレイン酸溶液中に蟻酸が1
000質量ppm以下、好ましくは700質量ppm以
下、更に好ましくは500質量ppm以下、特には10
0質量ppm以下である。これによって、粗マレイン酸
含有水溶液の精製装置および配管などの周辺機器に安価
なSUS304材質を使用することができる。上記のよ
うに、本発明の製造方法にあっては蟻酸濃度を特定量以
下に調整することは、装置の腐食を防ぐ上でより好まし
い形態である。アルデヒド量調整工程を行なった後に蟻
酸が多く存在する処理方法を行なった場合には、更に続
けて蟻酸量調整工程を付加するか、共沸脱水塔の塔頂か
らの留分となる蟻酸含有水を廃水として抜き取ることで
蟻酸濃度を特定濃度以下に調節することが好ましい。更
に好ましい形態にあっては、蟻酸が多く残存するアルデ
ヒド類の除去方法を避けることが好ましい。具体的に
は、アルデヒド量調整工程として過酸化水素のみを使用
する除去方法は、生成した蟻酸が分解されず工程液中に
残存するため避けることが好ましいのである。
【0018】本発明では、アルデヒド類の特にホルムア
ルデヒドの濃度を特定範囲に調整した後に共沸脱水処理
を行なうが、該共沸脱水処理で使用する共沸溶媒として
は、従来公知のものを使用することができる。このよう
な共沸溶媒としては、o−キシレン、サイメン、エチル
ベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロールベンゼン等の
芳香族系化合物などを例示することができる。更に、ア
ルデヒド類やキノン類による縮合物の発生を効果的に防
止するために、温度20℃の水に対する溶解度が0.1
〜5質量%の親水性を有する有機溶媒を共沸溶媒として
使用することがより好ましい。水と親水性を有する有機
溶剤や共沸混合物を使用して共沸脱水を行なうと、蒸留
塔内における疎水性の共沸溶剤と水分と間で生ずる油水
分離状態を緩和でき、アルデヒド類とキノン類との塔内
濃度が低下して両者による縮合反応が抑制され、同様に
マレイン酸やフマル酸そしてマレイン酸や無水マレイン
酸の重合体等水溶性の固体物の析出を抑制できるからで
ある。
【0019】このような共沸溶媒の使用量は使用する有
機溶媒や共沸混合物の組成比によっても異なるが、少な
くとも粗マレイン酸含有水溶液に含まれる水分および無
水化によって発生する水分との理論上の共沸組成に必要
な有機溶媒量比であればよい。あまり過剰量であると熱
消費量が多くなり経済的に不利となり好ましくないが、
ただしすみやかに共沸脱水塔内から水を留出させるには
やや過剰量比で行なうことが好ましい。またもちろん水
に対する共沸溶媒の必要量比の少ない有機溶媒を選択す
る熱消費量が少なくなり工業的に有利となる。
【0020】特に、上記する親水性を有する有機溶媒と
しては、共沸溶媒として使用できる目的物との反応性の
ないものであって、温度20℃の水に対する溶解度が
0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、
特に好ましくは1〜3質量%の有機溶媒である。水に対
する溶解度が0.1質量%を下回ると、上記した油水分
離状態を発生しやすくなり、その一方5質量%を越える
と、油水分離状態の改善効果はあるが、共沸脱水蒸留で
水とともに塔頂に留出した有機溶媒を冷却後に水と分液
して回収利用する場合に、水相へのロス量が大きくな
り、分液回収量が減少するために不利となる。なお、溶
解度は圧力によっても変動するが、本発明における溶解
度は、常圧(1013hPa)での値とする。
【0021】また更に、本発明で使用する有機溶媒は、
温度20℃(常圧)におけるマレイン酸の溶解度が0.
1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に
は1.0質量%以上であることが好ましい。溶解度が高
いほど固形析出の防止の効果が大きいからである。有機
溶媒がマレイン酸に対する親和性を有する場合には共沸
脱水工程におけるマレイン酸やフマル酸の析出を防止す
ることができ、同時にフマル酸への異性化並びにマレイ
ン酸や無水マレイン酸の重合体等の水溶性の固体物の析
出をも防止できるからである。
【0022】本発明で使用する有機溶媒は、更に、圧力
1013hPaにおける沸点が80〜190℃、より好
ましくは100〜170℃、特には110〜160℃の
範囲のものであることが好ましい。沸点が190℃より
高いと無水マレイン酸の沸点と近くなり、有機溶媒とと
もに留去する割合が高くなるため好ましくない。また、
沸点が80℃より低いと蒸留塔内の脱水反応温度が低下
して脱水速度が低下し、有利に製造ができなくなるから
である。
【0023】本発明で使用する有機溶媒としては、メチ
ルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、3−ペン
タノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−へプタ
ノン等のケトン類、酢酸アミル、酢酸アリル等のエステ
ル類、メチルシクロヘキサノール、2−エチル−1−ヘ
キサノール等のアルコール類がある。本発明では、特に
メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、2−
ヘキサノン等のケトン類や酢酸アリルなどのエステル類
を使用することが好ましく、特にはケトン類がマレイン
酸の溶解度に優れる点で好ましい。上記条件を満足して
無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発生防止効
果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイン酸や無水
マレイン酸との反応性がないからである。上記したケト
ン類やエステル類などの有機溶剤は水との相溶性を有
し、共沸溶媒に対するマレイン酸やフマル酸そしてマレ
イン酸や無水マレイン酸重合体の溶解度が増加し、析出
問題を解決することができる点で好ましい。上記条件を
満足し、無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発
生防止効果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイン
酸や無水マレイン酸との反応性がないからである。その
有機溶媒の1種を単独で使用するほか、2種以上を併用
することができる。その有機溶媒の混合物の特性として
少なくとも、温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜
5質量%の有機溶媒であれば好適に使用できる。以上の
方法を用いることにより、内部構造が複雑であるため閉
塞が起こった場合には、洗浄作業が煩雑で困難な共沸脱
水蒸留塔での、閉塞物の付着を防止し、長期間の装置の
稼動を可能にすることができる。
【0024】以下、本発明の無水マレイン酸の製造方法
の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明する。な
お、図1において、1は反応ガス、10は無水マレイン
酸捕集器、11は粗製無水マレイン酸、20は水洗捕集
器、21はリサイクル捕集水、30は薄膜蒸発器などの
アルデヒド類除去装置、40は共沸脱水塔、50は油水
分離槽、51は廃水、60は高沸点分離装置、61は残
渣、70は溶剤分離塔、71は共沸溶媒、80は精製
塔、81は精製無水マレイン酸、90は溶媒回収塔であ
る。
【0025】まず、図示しない接触気相酸化反応器に原
料ガスを供給する。供給原料ガスとしては、接触気相酸
化反応によって生成物としてマレイン酸を生ずるもので
あれば特に制限はなく、無水マレイン酸を製造するため
に使用されるベンゼンやブタン等の公知の炭化水素を供
給原料として用いることができる。本発明では、ベンゼ
ンを接触気相酸化反応の原料とすることが好ましい。原
料種の相違によって副生物も相違し、特にベンゼンを原
料とする場合には縮合物の原因物質であるアルデヒド類
やキノン類の副生量が多いために効果的である。
【0026】反応器に使用する触媒についても、マレイ
ン酸または無水マレイン酸を生成するものであれば公知
の触媒を使用でき、バナジウムを主成分として含有する
酸化用触媒を用いることができる。このような触媒とし
ては、特開平5−261292号公報、特開平5−26
2754号公報、特開平5−262755号公報、特開
平6−145160号公報に記載される触媒が例示でき
る。
【0027】接触気相酸化反応は文字通り酸化反応であ
るから、原料ガスと共に分子状酸素含有ガスを供給す
る。このような分子状酸素含有ガスとしては、通常空気
が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を
加えて富化された空気等を使用することもできる。
【0028】反応条件は従来公知の方法を採用できる
が、使用する酸化用触媒の種類や供給原料濃度、分子状
酸素含有ガス濃度等によって適宜変更してもよい。例え
ば、バナジウム−リン系触媒を用いて、温度を300〜
600℃で反応させる。接触気相酸化反応器から排出さ
れる反応ガスには、無水マレイン酸と共に副生する反応
成分や原料ガス自体に含有されていた不純物がそのまま
の形状で含まれ更に該不純物や原料化合物の酸化物であ
る低沸点物質や高沸点物質、さらに非凝縮性ガスが含ま
れている。なお、本発明において低沸点物質とは、標準
状態においてマレイン酸よりも沸点が低い物質をいい、
蟻酸、酢酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトア
ルデヒド、p−ベンゾキノン、ハイドロキノン、水等が
例示できる。また、高沸点物質とは、標準状態において
マレイン酸よりも沸点が高い物質をいい、無水フタル酸
やフマル酸などが例示できる。更に、非凝縮性ガスと
は、標準状態で気体の物質をいい、具体的には、窒素、
酸素、空気、プロピレン、プロパン、一酸化炭素、二酸
化炭素等が例示できる。なお、上記の標準状態は、常圧
1013hPa(1気圧)、温度0℃の状態のことであ
る。
【0029】ベンゼンの接触気相酸化反応によって得ら
れる反応ガスの組成は、一般に、無水マレイン酸(以
下、反応ガスの組成における「無水マレイン酸」には、
無水マレイン酸に換算したマレイン酸を含むものとす
る。)2〜5質量%、水蒸気を除く低沸点物質として、
酢酸、アルデヒド等が0.01〜0.1質量%、キノン
類が0.005〜0.05質量%、高沸点物質として無
水フタル酸等が0.005〜0.03質量%、残りは非
凝縮性ガスと水蒸気である。
【0030】次に、反応器から排出された反応ガス
(1)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給する。無
水マレイン酸捕集器(10)では、無水マレイン酸の融
点以上、かつ沸点以下、より好ましくは55〜120
℃、特に好ましくは60〜100℃で冷却し、無水マレ
イン酸(11)の一部を液体で捕集する。共沸脱水塔内
で発生する閉塞物の一種であるフマル酸を溶解するため
である。なお、無水マレイン酸の蒸気圧残分があるため
この冷却後の反応ガスにも無水マレイン酸が多量に存在
する。このため、このような無水マレイン酸の冷却によ
る捕集工程を行った後には、該工程の排出ガスを水洗捕
集器(20)に供給し、多量に存在する無水マレイン酸
を水溶液中に捕集し粗マレイン酸含有水溶液として回収
する。
【0031】水洗捕集器(20)の捕集条件は、従来公
知の方法を採用できる。捕集液としては、水を使用する
ことができるが、マレイン酸の濃縮、脱水工程で発生し
た水または水溶液の一部を捕集液の一部として使用する
こともできる。塔頂温度は、無水マレイン酸の捕集率を
向上させるためには低温であることが好ましく、水洗捕
集器(20)に付属させた冷却器(図示せず)を使用し
て捕集塔塔頂温度を10〜90℃、より好ましくは20
〜60℃とする。10℃を下回ると、マレイン酸の溶解
度が下がり結晶が析出し、水洗捕集器(20)の圧力損
失の増加や液の分散性の悪化による捕集塔(20)の段
効率の低下を招く。その上、過量の冷却エネルギーが必
要となるからである。一方、90℃を越えると無水マレ
イン酸の捕集率が低下するからである。
【0032】該反応ガスは、水洗捕集器(20)では、
塔底液のマレイン酸濃度が10〜80質量%、より好ま
しくは20〜60質量%になるように捕集液(21)を
捕集塔の上部から塔内に導入して無水マレイン酸含有ガ
スと向流接触させて無水マレイン酸を捕集する。マレイ
ン酸濃度が80質量%を上回るとマレイン酸の析出防止
のために捕集温度を90℃以上に上げる必要があり、捕
集率が低下し、その一方10質量%を下回ると粗マレイ
ン酸含有水溶液の濃縮・脱水工程で留出させる水が多く
なり、不経済である。
【0033】なお、図1と相違して、無水マレイン酸捕
集器(10)による液体状態での無水マレイン酸の捕集
を行わずに、該反応ガスの全てを水洗捕集器(20)に
供給して、粗マレイン酸含有水溶液として捕集してもよ
い。
【0034】本発明では、次いで水洗捕集器(20)か
ら得た粗マレイン酸含有水溶液を薄膜蒸発器や触媒にお
ける反応器などのアルデヒド類除去装置(30)に導入
しアルデヒド類の量を特定範囲に調整する。この際、該
粗マレイン酸含有水溶液は、ベンゼンを接触気相酸化し
て得た反応生成ガスを水捕集したものであることが閉塞
防止効果に優れる点で効果的であり好ましい。なお、ア
ルデヒド類除去装置(30)である薄膜蒸発器における
留出条件としては、粗マレイン酸含有水溶液の供給速度
や含まれるアルデヒド類の濃度によって異なるが、温度
40〜130℃、圧力700〜200hPa、滞留時間
5分以下で処理することが好ましい。特に、滞留時間が
長くなると、該装置内で縮合物が発生する場合がある。
【0035】次いで、薄膜蒸発器などのアルデヒド類除
去装置(30)の缶出液(アルデヒド類を0.01〜1
000質量ppmに処理した粗マレイン酸含有水溶液)
を共沸脱水塔(40)に供給する。
【0036】このような共沸脱水塔(40)としては、
無堰棚段塔、有堰棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー
塔などの公知の塔を用いることができる。かかる共沸脱
水塔(40)は、無堰棚段塔、有堰棚段塔、または充填
塔であれば、閉塞物発生の抑制効果に優れる点で好まし
い。その一方、理論段数が3段以上、より好ましくは4
〜20段、特には5〜15段の蒸留塔を用いることが好
ましい。3段未満ではマレイン酸と共沸溶媒との接触時
間が不足し、脱水率の低下をまねく。また、無水マレイ
ン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイン酸のロス
が増大することになる。このような弊害が生じない程度
に必要十分な段数であればよく、あまり段数が多いと設
備費が高くなり、不経済である。
【0037】使用する共沸溶媒としては少なくとも温度
20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%の有機溶
媒を共沸溶媒として使用することが好ましい。このよう
な有機溶媒としては、上記した各種の有機溶媒があり、
特にメチルイソブチルケトン(MIBKと略記する。)
を使用することが好ましい。また、共沸脱水条件は使用
する共沸溶媒によって異なるため、例えば、共沸溶媒と
してMIBKを使用する場合には、該共沸脱水塔(4
0)には、粗マレイン酸含有水溶液1質量部に対して3
〜5質量部のMIBKを供給する。一般には、塔頂圧力
(絶対圧)100〜2000hPa、より好ましくは3
00〜1500hPaとする。100hPaを下回ると
真空装置が大型化するばかりでなく、塔内温度が低くな
り、マレイン酸やフマル酸が結晶化して蒸留できない場
合がある。その一方2000hPaを越えると塔底温度
が高くなりリボイラーの大型化の他に重合物が発生し易
くなるばかりでなく、高耐圧装置にする必要が生じ不経
済である。また、塔頂温度は50〜150℃,より好ま
しくは60〜130℃である。50℃を下回るとコンデ
ンサンーが大型となり、その一方150℃を越えると塔
内でマレイン酸の重合が発生しやすくなるばかりでなく
無水マレイン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイ
ン酸のロスが増大することになる。なお、共沸脱水に用
いる共沸溶剤としては、無水マレイン酸の製造工程で回
収した共沸溶媒(71)を再使用するものであってもよ
い。また、図1に示すように共沸溶剤は、共沸脱水塔
(40)に直接供給する場合に限られず、供給原料に混
在させて共沸脱水塔(40)内に供給してもよい。
【0038】塔底温度は130〜200℃、より好まし
くは150〜195℃である。130℃を下回るとマレ
イン酸の脱水反応が遅くなり、マレイン酸の脱水不充分
となり、無水マレイン酸の収率低下につながる。一方、
200℃を超えると無水マレイン酸の沸点に近くなり留
出が起こり好ましくなく、また分解及び重合が発生しや
すくなるからである。このような共沸脱水条件とするた
めに、共沸溶剤の種類や添加量、粗マレイン酸含有水溶
液中の水濃度、原料供給段の変更、塔頂に付属させるコ
ンデンサーの還流比、塔段数、温度、圧力、その他の条
件を調整すればよい。
【0039】本発明では、共沸脱水の際に共沸脱水塔
(40)の塔頂部に油水分離槽(50)を付属させ、塔
頂留出液の共沸溶剤を還流させ、その回収水の一部を無
水マレイン酸の捕集液として使用することが出来る。ま
た共沸溶媒に水に対して溶解性を有する有機溶媒を使用
した場合には、塔頂留出後の水相側には有機溶媒が含ま
れている。より経済的なプロセスとするためには、この
有機溶媒を共沸脱水蒸留塔へ回収して使用することが有
利な方法であり、塔頂留出液の水相は溶媒回収塔(9
0)に供給する。
【0040】一方、本発明の実施形態においては、過酸
化水素を添加してホルムアルデヒドを蟻酸に酸化するな
どのアルデヒド量調整工程により蟻酸が増加した場合に
は、蟻酸を無水マレイン酸の製造工程から除去して特定
量以下に調整できる工程を備えていることは好ましい形
態である。具体的には、共沸脱水塔(40)の塔頂から
は蟻酸等の軽沸点物質が留出するため、経時的に還流液
の蟻酸濃度が増加する。従って、装置の腐食防止のため
には還流液の蟻酸濃度を測定し、または定期的に還流液
の一部を油水分離槽(50)から廃水として抜き取れ
ば、蟻酸を無水マレイン酸の製造工程から除去すること
ができる。
【0041】共沸脱水塔(40)の塔底液は高沸点分離
装置(60)に供給して高沸点物質を分離した後に後工
程の精製を行う方法が装置の閉塞を防止することができ
るため有利な方法である。例えば、接触気相酸化反応に
よって副生された無水フタル酸、フマル酸や高沸点の重
合物や縮合物等が残渣(61)として排出される。
【0042】ここで高沸点分離装置(60)としては、
連続式でもバッチ式でもよく従来公知の棚段塔、充填
塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔に加え、バッ
チ式の回転式滞留槽型蒸発器や薄膜蒸発器を用いること
ができる。かかる高沸点分離装置(60)としては、薄
膜蒸発器が好ましい。なお、図1に示すように、無水マ
レイン酸(11)を共沸脱水塔(40)の塔底液と共に
高沸点分離装置(60)に供給して精製をおこなっても
よい。
【0043】次いで、高沸点分離装置から排出されるガ
ス成分にはマレイン酸のほかに、共沸溶剤が残存する場
合には、次いで溶剤分離塔(70)に供給して共沸溶剤
を分離する。また、共沸脱水蒸留で共沸溶剤をボトムに
残存しないかごく微量となるような運転条件とした場合
には、この工程を省略することもできる。なお、高沸点
分離装置(60)による高沸点物質の除去工程と溶剤分
離塔(70)による共沸溶剤の除去工程とはいずれを先
に行ってもよい。
【0044】従来は、共沸脱水塔(40)の塔内および
塔底にゲル状物質が付着する。具体的には、共沸脱水塔
の塔内の内壁や棚段、あるいは、棚段部材の孔等に付着
する。しかもこの付着物は水洗によっても容易に除去で
きず、このため無水マレイン酸の製造工程において、共
沸脱水塔やその周辺設備では定期的な洗浄やアルカリ洗
浄が必要であった。しかしながら、本発明では共沸脱水
工程の前にアルデヒド類の除去工程を行うことで不純物
によって発生するゲル状の縮合物の付着などによる閉塞
物の発生を抑制することができ、プラントの長期稼動を
達成できる。
【0045】本発明では、このように共沸溶剤を除去
し、および高沸点物質を除去した無水マレイン酸を更に
精製塔(80)に供給して精製し、無水マレイン酸(8
1)を製品としてもよい。
【0046】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明す
る。
【0047】(実施例1)熱経時テストによる不純物組
成と生成析出物量を確認した。まず、精製マレイン酸4
2質量%水溶液にホルムアルデヒド、ハイドロキノンを
表1に示したように種々濃度を変化させた溶液1,2,
3を作成した。各溶液をガラス製500mlフラスコに
200ml入れ、100℃で2時間オイルバス中で加熱
攪拌した。
【0048】冷却後、1μmメンブランフィルターで吸
引ろ過した。析出固形分の付着したメンブランフィルタ
ーを50℃で一晩で乾燥させ、その乾燥固形分の質量か
ら仕込んだマレイン酸水溶液に対する熱経時後析出物の
生成量(質量ppm)を算出した。結果を表1に示す。
【0049】表1から明らかなように、ホルムアルデヒ
ド含有量の減少に伴ってマレイン酸縮合物である固形の
析出物量が少なくなった。特に、ホルムアルデヒドの含
有量が300質量ppmの場合には、熱経時後の析出物
量を0とすることができた。
【0050】
【表1】
【0051】(実施例2)図1に示す工程に従って無水
マレイン酸を製造した。まず、ベンゼンの接触気相酸化
反応により排出された無水マレイン酸を含む反応ガス
を、無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガス温度を6
0℃にコントロールして粗製無水マレイン酸(11)を
捕集した。その後、この無水マレイン酸捕集器(10)
の出口ガスを水洗捕集器(20)に導入した。ついで、
水洗捕集器(20)で該ガスを水で洗浄しついで、粗マ
レイン酸含有水溶液を得た。該溶液のマレイン酸濃度は
42質量%であり、水分68質量%、ホルムアルデヒド
3754質量ppm、p−ベンゾキノン186質量pp
m、ハイドロキノン67質量ppm、蟻酸105質量p
pmであった。
【0052】次いで、該粗マレイン酸含有水溶液を、回
転式薄膜蒸発器(回転羽根はテフロン(登録商標)製、
容器はガラス製)に供給し、内圧560hPa、オイル
ジャケット温度130℃、内部液温約100℃、装置内
滞留時間を約1分間でアルデヒド除去処理を行なった。
留出率41.4質量%とすることで、ボトム液として得
られたマレイン酸水溶液濃度は72.8質量%となっ
た。この液を再び純水で希釈してマレイン酸濃度42質
量%とした。この希釈液を分析すると、この濃縮操作に
よって、ホルムアルデヒド324質量ppm、p−ベン
ゾキノン1質量ppm、ハイドロキノン46質量pp
m、蟻酸60質量ppmにそれぞれ減少したことがわか
った。
【0053】このアルデヒド類の減少した試料を用い
て、実施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算
出した。結果を表2に示す。
【0054】(実施例3)実施例2で得た粗マレイン酸
含有水溶液を使用し、アルデヒド類を減少させる処理と
して、粉末活性炭にパラジウムを5質量%担持させたも
の(以下Pd/Cと記載:川研ファインケミカル株式会
社製)をホルムアルデヒドの酸化用触媒として用いた。
まず、200mlガラス製フラスコに粗マレイン酸含有
水溶液80gを入れ、常圧下、水浴で加熱し60℃、4
00rpmで撹拌した。ここに、上記触媒濃度3質量%
となるように添加し、温度60℃で8時間、ガラス製キ
ャピラリー細管から空気を30ml/minの速度で液
中にバブリング処理しつつ酸化した。このアルデヒド類
の減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理
し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0055】表2から明らかなように、酸化用触媒の使
用によってもアルデヒド類を減少することができ、最終
的にマレイン酸縮合物である熱経時後テストでの析出物
量が減少した。
【0056】(比較例1)実施例2と同様にして粗マレ
イン酸含有水溶液を得たが、回転式薄膜蒸発器によるア
ルデヒド減少処理を行なわなかった。その後、実施例1
と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果
を表2に示す。
【0057】実施例2と比較例1とを比較すると、ホル
ムアルデヒドを減少させるとマレイン酸縮合物である熱
経時後テストでの析出物量が1/3にまで減少した。
【0058】(参考例)実施例2で得た粗マレイン酸含
有水溶液を使用し、アルデヒド類を減少させるため、常
圧下、200mlガラス製フラスコに粗マレイン酸含有
水溶液80gを入れ、ホルムアルデヒドの1モル倍の過
酸化水素(31質量%水溶液)を添加し、60℃、3時
間、400rpmで撹拌処理した。このアルデヒド類の
減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理し、
析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0059】表2から明らかなように、熱経時後の析出
物は少なかったが、蟻酸濃度が上昇した。
【0060】
【表2】
【0061】(実施例4)実施例2で得た粗製マレイン
酸水溶液42質量%を、回転式薄膜蒸発器による処理の
後該缶出液のマレイン酸濃度を42質量%に純水で希釈
調製した処理液を用いて、図1に示す工程に従って共沸
脱水溶剤としてo−キシレンを塔頂から供給して共沸脱
水蒸留を行なった。
【0062】共沸脱水塔(40)として、縮合部32φ
有堰5段、回収部50φ有堰10段の蒸留塔を使用し
た。塔底から数えて第10段目から粗マレイン酸含有水
溶液を供給した。共沸溶媒は、粗マレイン酸含有水溶液
に含まれる水分と無水化によって発生する水分に対し
2.5質量倍を塔頂から供給し、常圧、塔底温度170
℃で8時間共沸脱水蒸留を行なった。
【0063】この結果、共沸脱水塔の第10〜13段目
に黒色汚れがわずかに存在した程度であり、縮合物の析
出量を減少させることができた。処理工程および結果を
表3に示す。
【0064】(実施例5)実施例3で得た酸化用触媒を
3質量%添加してのアルデヒド除去処理による該処理液
を用いて、実施例4と同じ条件で共沸脱水蒸留を行なっ
た。処理工程および結果を表3に示す。
【0065】(実施例6)実施例2で得た回転式薄膜蒸
発器による処理の後、該缶出液のマレイン酸濃度を42
質量%に純水で希釈調製した処理液を用いて、図1に示
す工程に従って共沸脱水溶剤としてメチルイソブチルケ
トンを塔頂から供給して共沸脱水蒸留を行なった。
【0066】共沸溶媒を粗マレイン酸含有水溶液に含ま
れる水分と無水化によって発生する水分に対し、3.5
質量倍を塔頂から供給した以外は、実施例4と同じ条件
で共沸脱水蒸留を行なった。結果を表3に示す。使用す
る共沸溶媒が親水性およびマレイン酸に対して親和性を
有する場合には、実施例4で残存していた共沸脱水蒸留
塔内の少量の黒色汚れも除去できる。
【0067】(比較例3)実施例2で得た粗製マレイン
酸水溶液42質量%を用い、回転式薄膜蒸発器による処
理およびマレイン酸濃度の42質量%への希釈処理を行
なわないこと以外は実施例4と同様にして共沸脱水蒸留
を行なった。この結果、比較例3では蒸留塔の6〜14
段目に縮合物の析出が多量に生成して黒色に汚れ、詰ま
りが発生した。処理工程および結果を表3に示す。
【0068】実施例4、5と比較例3との比較から、表
3に示すように、共沸脱水蒸留を行なう前にアルデヒド
類の除去処理を行なうと共沸脱水塔における析出物の発
生を効果的に防止することができた。また、酸化用触媒
を使用した実施例5とこれを使用しない比較例3とを比
べると、比較例3では蒸留塔の黒色汚れが実施例5の2
倍以上であった。
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】アルデヒド類を一定量以下に低減させる
調整工程を行うことで精製工程中でのキノン類との縮合
物の生成反応を抑えることができ、さらには生成量を実
質的にほとんど無くすることができる。このため従来問
題であった精製装置の閉塞を著しく少なくでき、連続稼
動時間をより長くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明における無水マレイン酸の製
造方法の好ましい製造方法の工程図である。
【符号の説明】
1…反応ガス、 10…無水マレイン酸捕集器、 11…粗製無水マレイン酸、 20…水洗捕集器、 21…捕集液、 30…薄膜蒸発器などのアルデヒド類除去装置、 40…共沸脱水塔、 50…油水分離槽、 51…廃水、 60…高沸点分離装置、 61…残渣、 70…溶剤分離塔、 71…共沸溶媒、 80…精製塔、 81…無水マレイン酸、 90…溶媒回収塔。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 良武 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒内 (72)発明者 山田 創一 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒内 Fターム(参考) 4C037 KC10

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によ
    って脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法にお
    いて、 粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるホルムアルデヒド
    の量を0.01〜1000質量ppmの範囲にするアル
    デヒド量調整工程を行なった後に、該共沸蒸留によって
    脱水する工程を行なうものである、無水マレイン酸の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 該アルデヒド量調整工程が、温度40〜
    130℃で該粗マレイン酸含有水溶液を蒸留するもので
    ある、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該アルデヒド量調整工程が、触媒を用い
    てホルムアルデヒドを分解する工程を含むものである、
    請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 粗マレイン酸含有水溶液が、ベンゼンを
    接触気相酸化して得た反応生成ガスを水捕集したもので
    ある請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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