JP4092092B2 - 無水マレイン酸の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗マレイン酸含有水溶液の共沸脱水工程を含む無水マレイン酸の製造方法において、予めアルデヒド類の含有量を低下させた後に共沸脱水処理し、これによって閉塞物の発生を防止して連続蒸留運転を可能とする、無水マレイン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無水マレイン酸は、n−ブタンなどの炭素数4以上の脂肪族炭化水素やベンゼン等を接触気相酸化反応器で酸化し、得られる無水マレイン酸やマレイン酸を含有するガスからマレイン酸を回収して精製する方法によって製造される。また、ナフタリンやo−キシレンの接触気相酸化反応によって無水フタル酸を製造する際に排出される排ガスの洗浄水には相当量の無水マレイン酸が含まれることから、該洗浄水を回収しこれを無水マレイン酸として使用する方法によっても製造されている。
【0003】
一般に、無水マレイン酸を接触気相酸化反応を経て製造する場合には、接触気相酸化反応によって得た無水マレイン酸をそのまま精製する場合と、これを一旦水溶液に捕集した後に粗マレイン酸含有水溶液を精製し、マレイン酸を無水マレイン酸に再転化して製造する方法等がある。いずれの方法においても、水溶液捕集を行なった場合には有水化したマレイン酸を無水化するため脱水処理する必要がある。また、副生するベンゾキノン等の不純物や、さらには無水マレイン酸の精製工程で副生するフマル酸などによって連続製造装置内の閉塞などが生じる場合が多い。
【0004】
特公昭41−3172号公報には、マレイン酸含有水溶液の脱水工程を含む無水マレイン酸の製造方法として、ベンゼンと空気との混合ガスを接触気相酸化して無水マレイン酸を製造する方法であって、無水マレイン酸を含む反応ガスを水と接触して粗マレイン酸含有水溶液を得て、溶融無水マレイン酸中に溶解して該混合溶液を130〜160℃の無水マレイン酸−芳香族炭化水素の混合溶液中に連続的に添加して液相でマレイン酸を脱水する無水マレイン酸の連続製造法が記載されている。無水マレイン酸を脱水するための芳香族炭化水素としては、キシレン、サイメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロールベンゼンなどを使用し、連続運転が可能である旨が記載されている。
【0005】
また、特開昭50−50316号公報等は、無水マレイン酸の連続製造方法における不純物による経時的な装置内への堆積、該堆積に基づく閉塞や熱の伝導性の低下などによる弊害を防止するための方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭50−50316号公報記載の方法では十分な閉塞防止には至っておらず、特公昭41−3172号公報記載の方法でも満足行くものではない。
【0007】
一方、上記した方法とは異なり、閉塞物の発生を化学的に抑制する方法として、ベンゼンやC4留分炭化水素を接触気相酸化反応して得た反応性ガスを水に吸収して得た粗マレイン酸含有水溶液等から無水マレイン酸を製造するに際して、粗マレイン酸含有水溶液に過酸化水素を添加して濃縮、脱水を行う無水マレイン酸の製造方法が特公平3−76311号公報に開示されている。該公報によれば、粗マレイン酸含有水溶液には各種の不純物が含有され、これらの不純物は原料としてどのような炭化水素を用いた場合にも中間生成物、副生成物として混在するものであり、反応触媒の改質等を行っても完全に防ぐことは困難としている。この原因は、例えばフェノール類とアルデヒド類、キノン類とアルデヒド類による樹脂化またはゲル化が進行したものであって、これによって装置が閉塞するとしている。そして、該粗マレイン酸含有水溶液に過酸化水素を添加して濃縮、脱水を行うと、樹脂状・ゲル化物質の生成が防止できるとしている。しかしながら、アルデヒド類に含まれるホルムアルデヒドが過酸化水素によって酸化され蟻酸が発生する。接触気相酸化反応では蟻酸もわずかながら副生するが、これに加えてアルデヒドと過酸化水素との反応によって多量の蟻酸が発生するため、濃縮・脱水装置の少なくとも一部または全部を腐食に耐える高価な材質の使用する必要が生じ、製造装置のコストアップとなる。加えて、本発明者らが確認したところ過酸化水素は無水マレイン酸の重合開始剤として作用し、共沸脱水蒸留工程における操作温度領域において重合が起こり、閉塞物となるマレイン酸や無水マレイン酸の重合体が発生した。特に、内部構造が複雑で閉塞物の蓄積が起こりやすい共沸脱水蒸留装置では、無水マレイン酸重合体らによる閉塞によって連続稼動ができず停止を余儀なくさせられることがわかった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、装置等の腐食原因物質の発生や、マレイン酸重合体による閉塞物の発生を防ぎ、長期間の連続運転を可能とする無水マレイン酸の製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、粗マレイン酸含有水溶液を共沸脱水する際の塔内の不純物による汚れや閉塞物について詳細に検討した結果、予めアルデヒド類を特定濃度以下に調整すると、共沸脱水工程においてキノン類との縮合物の発生を効果的に抑制できること、アルデヒド類とキノン類との縮合物の発生に先立ち、特定温度以下での留出操作による除去処理や、アルデヒド類、特にホルムホルデヒドの酸化により発生した蟻酸をさらに特定の触媒を用いて分解する反応を共沸脱水蒸留前に行なうことで、装置を腐食させることなしに蒸留装置の閉塞を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成させた。以下に具体的に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によって脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法において、予め粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるホルムアルデヒドの量を0.01〜1000質量ppmの範囲にするアルデヒド量調整工程を行なった後に、該共沸蒸留によって脱水する工程を行なう無水マレイン酸の製造方法である。
【0011】
粗マレイン酸含有水溶液の共沸脱水工程では、共沸脱水塔内でアルデヒド類も留出除去されるのであるが、一般に塔底温度140〜200℃と高温で行われるため、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドとキノン類との縮合物が発生する。そこで、該水溶液中に含まれるホルムアルデヒドを予め0.01〜1000質量ppm、より好ましくは0.01〜800質量ppm、特には0.01〜500質量ppmの範囲内に除去した後に共沸脱水することにより、該縮合物の発生を効果的に防止することができるのである。ホルムアルデヒドの含有量が1000質量ppmを超えるとキノン類との縮合反応が発生しやすくなるが、その一方、アルデヒド類は少量存在しても縮合物が発生しないことが判明し、例えばホルムアルデヒドが0.01質量ppm未満であれば縮合物は発生しない。なお、無水マレイン酸合成反応で副生されるアルデヒド類はそのほとんどがホルムアルデヒドとアセトアルデヒドであり、中でもホルムアルデヒドが主成分である。そこで、本発明ではアルデヒド類の指標としてホルムアルデヒドを使用し、ホルムアルデヒドの含有量を上記範囲に制限することで簡便に閉塞物の発生を防止するもののである。また、キノン類のそのほとんどはp−ベンゾキノンとハイドロキノンであり、その合計含有量をキノン類含有量としてキノン類の指標とすることができる。なお、上記のホルムアルデヒドの含有量を特定の範囲に調整することは、具体的には上記範囲内になるようにホルムアルデヒドを除去する工程を含んでいる。
【0012】
さらに説明すると、粗マレイン酸含有水溶液の共沸蒸留の操作温度範囲では粗マレイン酸含有水溶液に不純物として含まれるアルデヒド類は、キノン類やフェノール類と縮合反応を起こしてしまい、共沸脱水蒸留塔内の汚れの原因となる。これは、アルデヒド類の共沸脱水蒸留塔からの留出速度よりもキノン類との縮合反応の方が速度が速いからであり、樹脂状またはゲル状物質の発生原因となっている。しかしながら、アルデヒド類の留出速度と、アルデヒド類とキノン類との縮合反応の速度、およびその際の温度との関係を調べたところ、溶液の温度40〜130℃、より好ましくは50〜120℃、特に好ましくは60〜110℃で粗マレイン酸含有水溶液を加熱処理すると、装置内の圧力のいかんにかかわらず、両者の縮合速度よりもアルデヒド類の留出速度の方が早いことが判明した。すなわち、この温度範囲で、前記の粗マレイン酸含有水溶液からアルデヒド類を除去してその量を上記範囲内に調整する処理操作を行うと、アルデヒド類除去装置には樹脂状またはゲル状物質の付着がほとんどなく、かつ次工程の共沸脱水蒸留においても装置への閉塞物の付着がほとんどなく、このため安定して連続運転を行うことができる。上記のアルデヒド量調整工程において130℃を超えるとアルデヒド類の留出よりも縮合物の発生が速くなり、その一方、40℃を下回るとアルデヒド類の留出速度も遅く、生産性が低下する場合がある。
【0013】
またアルデヒド類を留出除去するための装置における粗マレイン酸含有水溶液の滞留時間は5分以下、より好ましくは3分以下、特には1分以下が好ましい。上記温度範囲に加熱される時間が短いほど縮合物の発生による閉塞が防げられるからである。上記のような留出除去装置としては、薄膜蒸発器や段塔や充填塔を用いる多段式蒸留器等が例示でき、装置内での滞留時間を短くできることから薄膜蒸発器が好ましい。なお、薄膜蒸発器には、回転式や流下式などがあるが上記の滞留時間で処理できるものであればいずれの方法でも用いることができる。また、薄膜蒸発器によるアルデヒド類の除去操作では粗マレイン酸含有水溶液中の水分も同時に除去されるが、水分およびアルデヒド類除去後のマレイン酸濃度は、90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特には80質量%以下であればよい。90質量%を越えるとマレイン酸異性化反応が起こりやすくフマル酸の生成量が多くなるため、次工程の共沸脱水蒸留装置内で閉塞物が析出しやすくなる。上記アルデヒド類を留出除去する装置における好ましい温度および滞留時間は、フマル酸の発生量を減少させる点からも好ましい条件となる。この様に、本発明の製造方法にあっては、共沸蒸留によって脱水する装置である共沸脱水塔とは別に、その前処理工程としてアルデヒド量を特定範囲に調整するための、アルデヒド類を留出などの操作により除去する処理装置が設置されている工程を含むことが好ましい形態である。
【0014】
また、アルデヒド類を除去してその量を調整する方法としてはこのような留出除去による方法に限られず、分子状酸素による酸化分解がある。この反応は塩基のほか金属イオン、光照射や金属触媒等の触媒を用いた接触酸化で高収率に行えることが一般に知られており、新実験化学講座 第15巻 酸化と還元 I−1462〜465ページ(丸善株式会社 昭和51年6月20日発行)などに記載されている方法で行なうことができる。粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるアルデヒド類を除去する方法としては、触媒、好ましくは金属触媒、特に第VIII族金属を担体に担持した触媒を用いる方法が、使用した触媒との分離が簡単かつ経済的である点で好ましい。また、特開昭47−34310号公報に記載される、装置の腐食原因となる発生した蟻酸を金属触媒を用いて分解する方法によってもよい。更に、この2つの反応を同時に行う方法として、例えば特表平10−508786号公報に記載される、ホルムアルデヒドを蟻酸に変換し次いでこれを二酸化炭素と水に分解する方法がある。該触媒は、炭素に第VIII族金属、特に白金、パラジウム、ロジウムなどを担持させたものであり、分子状酸素含有ガスとともにアルデヒド類を含む流体を接触させて酸化する。
【0015】
粗マレイン酸含有水溶液に含まれるアルデヒド類や蟻酸を二酸化炭素と水に分解する方法としては、上記公報に記載の方法に限らない。例えば、通常知られているアルデヒド類酸化用の第VIII族触媒を用い、バッチ式、連続式、または流動床、固定床等の組み合わせで処理してもよい。金属触媒の担体は、マレイン酸などの酸に対して安定であることが必要であり、通常は炭素を用いることが好ましく、この場合の該担体の形態は粉末でも成型したペレット状でもよい。この担体に金属パラジウムを0.1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%担持させて酸化用触媒を調製する。反応例としては、常圧において槽型の反応器を使用し、粗マレイン酸含有水溶液に対して0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%を添加し、分子状酸素または空気をバブリングしながら撹拌して反応を行う。酸化条件は水が沸騰しない温度、すなわち常圧であれば100℃以下、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃、特には50〜70℃で行う。100℃を越えると縮合反応およびフマル酸生成反応が起こりやすく、その一方、30℃を下回ると、酸化反応が遅くなるため反応時間が長くなる。反応時間はアルデヒド類が縮合反応を起こさないだけの量に減少できる必要十分な時間であれば特に制限されないが、一般には、滞留時間は20時間以下である。20時間を越えると反応器を大きくする必要があり、不経済である。なお、反応の際の圧力は、1.013×103hPa〜2.026×104hPaの範囲が好ましい。この範囲であれば、分子状酸素がより効率的に固体である酸化用触媒や水溶液中のアルデヒド類と接触でき、触媒使用量や反応時間をより短縮できる。なお、2.026×104hPaを越えると耐圧性の確保のために設備費が高価になり、不利である。なお、減圧である1.013×103hPaを下回ると、分子状酸素と固体の触媒と液中のアルデヒドとの接触が反応速度を得るために不十分となり好ましくない。また、上記のような槽型反応器ではなく、金属触媒を担持したペレット状の触媒を筒型の反応器として通液して連続的に反応を行ってもよい。該酸化用触媒を使用することで、ホルムアルデヒドが二酸化炭素と水に分解し、蟻酸による装置の腐食を防止することができる。
【0016】
アルデヒド類を除去してその量を調整する方法としては、その他に吸着現象を利用した方法などもある。具体的には、活性炭、イオン交換樹脂、合成吸着剤、ゼオライトやアルミナなどによってアルデヒド類、または蟻酸を吸着する。これらの吸着剤はアルデヒド類や蟻酸などカルボン酸などの極性基を持った化合物を吸着しやすい。吸着装置の形式は、バッチ式または連続式、さらには流動床、固定床のいずれの組み合わせでもよい。特に、装置が連続式固定床であれば、メンテナンス性に優れるため有利である。さらに蒸留による留出や触媒を用いたアルデヒドの分解後に残存した蟻酸の吸着除去のために用いると、装置腐食防止に有効な方法である。ただしこれらの吸着剤には吸着量の連続使用の限界があるため、吸着物を取り除き賦活再使用するための工程と期間が必要となる。従って、このような処理の必要のない留出除去による方法や触媒を用いたアルデヒドの分解の方法がアルデヒドの類の除去方法として有利である。
【0017】
上記アルデヒド類を除去してその量を調整する方法は、共沸脱水工程で縮合反応による閉塞の発生を防止し、かつ該装置の腐食の発生が無い程度に蟻酸を除去できればよく、その除去方法は1種類であってもよいし2種以上の方法を組み合わせたものであってもよい。なお、装置腐食が問題にならない程度の蟻酸濃度とは、共沸脱水塔廃液や、その他の精製工程途中の粗マレイン酸含有水溶液中や無水マレイン酸溶液中に蟻酸が1000質量ppm以下、好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、特には100質量ppm以下である。これによって、粗マレイン酸含有水溶液の精製装置および配管などの周辺機器に安価なSUS304材質を使用することができる。上記のように、本発明の製造方法にあっては蟻酸濃度を特定量以下に調整することは、装置の腐食を防ぐ上でより好ましい形態である。アルデヒド量調整工程を行なった後に蟻酸が多く存在する処理方法を行なった場合には、更に続けて蟻酸量調整工程を付加するか、共沸脱水塔の塔頂からの留分となる蟻酸含有水を廃水として抜き取ることで蟻酸濃度を特定濃度以下に調節することが好ましい。更に好ましい形態にあっては、蟻酸が多く残存するアルデヒド類の除去方法を避けることが好ましい。具体的には、アルデヒド量調整工程として過酸化水素のみを使用する除去方法は、生成した蟻酸が分解されず工程液中に残存するため避けることが好ましいのである。
【0018】
本発明では、アルデヒド類の特にホルムアルデヒドの濃度を特定範囲に調整した後に共沸脱水処理を行なうが、該共沸脱水処理で使用する共沸溶媒としては、従来公知のものを使用することができる。このような共沸溶媒としては、o−キシレン、サイメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロールベンゼン等の芳香族系化合物などを例示することができる。更に、アルデヒド類やキノン類による縮合物の発生を効果的に防止するために、温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%の親水性を有する有機溶媒を共沸溶媒として使用することがより好ましい。水と親水性を有する有機溶剤や共沸混合物を使用して共沸脱水を行なうと、蒸留塔内における疎水性の共沸溶剤と水分と間で生ずる油水分離状態を緩和でき、アルデヒド類とキノン類との塔内濃度が低下して両者による縮合反応が抑制され、同様にマレイン酸やフマル酸そしてマレイン酸や無水マレイン酸の重合体等水溶性の固体物の析出を抑制できるからである。
【0019】
このような共沸溶媒の使用量は使用する有機溶媒や共沸混合物の組成比によっても異なるが、少なくとも粗マレイン酸含有水溶液に含まれる水分および無水化によって発生する水分との理論上の共沸組成に必要な有機溶媒量比であればよい。あまり過剰量であると熱消費量が多くなり経済的に不利となり好ましくないが、ただしすみやかに共沸脱水塔内から水を留出させるにはやや過剰量比で行なうことが好ましい。またもちろん水に対する共沸溶媒の必要量比の少ない有機溶媒を選択する熱消費量が少なくなり工業的に有利となる。
【0020】
特に、上記する親水性を有する有機溶媒としては、共沸溶媒として使用できる目的物との反応性のないものであって、温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは1〜3質量%の有機溶媒である。水に対する溶解度が0.1質量%を下回ると、上記した油水分離状態を発生しやすくなり、その一方5質量%を越えると、油水分離状態の改善効果はあるが、共沸脱水蒸留で水とともに塔頂に留出した有機溶媒を冷却後に水と分液して回収利用する場合に、水相へのロス量が大きくなり、分液回収量が減少するために不利となる。なお、溶解度は圧力によっても変動するが、本発明における溶解度は、常圧(1013hPa)での値とする。
【0021】
また更に、本発明で使用する有機溶媒は、温度20℃(常圧)におけるマレイン酸の溶解度が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特には1.0質量%以上であることが好ましい。溶解度が高いほど固形析出の防止の効果が大きいからである。有機溶媒がマレイン酸に対する親和性を有する場合には共沸脱水工程におけるマレイン酸やフマル酸の析出を防止することができ、同時にフマル酸への異性化並びにマレイン酸や無水マレイン酸の重合体等の水溶性の固体物の析出をも防止できるからである。
【0022】
本発明で使用する有機溶媒は、更に、圧力1013hPaにおける沸点が80〜190℃、より好ましくは100〜170℃、特には110〜160℃の範囲のものであることが好ましい。沸点が190℃より高いと無水マレイン酸の沸点と近くなり、有機溶媒とともに留去する割合が高くなるため好ましくない。また、沸点が80℃より低いと蒸留塔内の脱水反応温度が低下して脱水速度が低下し、有利に製造ができなくなるからである。
【0023】
本発明で使用する有機溶媒としては、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−へプタノン等のケトン類、酢酸アミル、酢酸アリル等のエステル類、メチルシクロヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコール類がある。本発明では、特にメチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、2−ヘキサノン等のケトン類や酢酸アリルなどのエステル類を使用することが好ましく、特にはケトン類がマレイン酸の溶解度に優れる点で好ましい。上記条件を満足して無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発生防止効果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイン酸や無水マレイン酸との反応性がないからである。上記したケトン類やエステル類などの有機溶剤は水との相溶性を有し、共沸溶媒に対するマレイン酸やフマル酸そしてマレイン酸や無水マレイン酸重合体の溶解度が増加し、析出問題を解決することができる点で好ましい。上記条件を満足し、無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発生防止効果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイン酸や無水マレイン酸との反応性がないからである。その有機溶媒の1種を単独で使用するほか、2種以上を併用することができる。その有機溶媒の混合物の特性として少なくとも、温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%の有機溶媒であれば好適に使用できる。以上の方法を用いることにより、内部構造が複雑であるため閉塞が起こった場合には、洗浄作業が煩雑で困難な共沸脱水蒸留塔での、閉塞物の付着を防止し、長期間の装置の稼動を可能にすることができる。
【0024】
以下、本発明の無水マレイン酸の製造方法の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明する。なお、図1において、1は反応ガス、10は無水マレイン酸捕集器、11は粗製無水マレイン酸、20は水洗捕集器、21はリサイクル捕集水、30は薄膜蒸発器などのアルデヒド類除去装置、40は共沸脱水塔、50は油水分離槽、51は廃水、60は高沸点分離装置、61は残渣、70は溶剤分離塔、71は共沸溶媒、80は精製塔、81は精製無水マレイン酸、90は溶媒回収塔である。
【0025】
まず、図示しない接触気相酸化反応器に原料ガスを供給する。供給原料ガスとしては、接触気相酸化反応によって生成物としてマレイン酸を生ずるものであれば特に制限はなく、無水マレイン酸を製造するために使用されるベンゼンやブタン等の公知の炭化水素を供給原料として用いることができる。本発明では、ベンゼンを接触気相酸化反応の原料とすることが好ましい。原料種の相違によって副生物も相違し、特にベンゼンを原料とする場合には縮合物の原因物質であるアルデヒド類やキノン類の副生量が多いために効果的である。
【0026】
反応器に使用する触媒についても、マレイン酸または無水マレイン酸を生成するものであれば公知の触媒を使用でき、バナジウムを主成分として含有する酸化用触媒を用いることができる。このような触媒としては、特開平5−261292号公報、特開平5−262754号公報、特開平5−262755号公報、特開平6−145160号公報に記載される触媒が例示できる。
【0027】
接触気相酸化反応は文字通り酸化反応であるから、原料ガスと共に分子状酸素含有ガスを供給する。このような分子状酸素含有ガスとしては、通常空気が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を加えて富化された空気等を使用することもできる。
【0028】
反応条件は従来公知の方法を採用できるが、使用する酸化用触媒の種類や供給原料濃度、分子状酸素含有ガス濃度等によって適宜変更してもよい。例えば、バナジウム−リン系触媒を用いて、温度を300〜600℃で反応させる。接触気相酸化反応器から排出される反応ガスには、無水マレイン酸と共に副生する反応成分や原料ガス自体に含有されていた不純物がそのままの形状で含まれ更に該不純物や原料化合物の酸化物である低沸点物質や高沸点物質、さらに非凝縮性ガスが含まれている。なお、本発明において低沸点物質とは、標準状態においてマレイン酸よりも沸点が低い物質をいい、蟻酸、酢酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、p−ベンゾキノン、ハイドロキノン、水等が例示できる。また、高沸点物質とは、標準状態においてマレイン酸よりも沸点が高い物質をいい、無水フタル酸やフマル酸などが例示できる。更に、非凝縮性ガスとは、標準状態で気体の物質をいい、具体的には、窒素、酸素、空気、プロピレン、プロパン、一酸化炭素、二酸化炭素等が例示できる。なお、上記の標準状態は、常圧1013hPa(1気圧)、温度0℃の状態のことである。
【0029】
ベンゼンの接触気相酸化反応によって得られる反応ガスの組成は、一般に、無水マレイン酸(以下、反応ガスの組成における「無水マレイン酸」には、無水マレイン酸に換算したマレイン酸を含むものとする。)2〜5質量%、水蒸気を除く低沸点物質として、酢酸、アルデヒド等が0.01〜0.1質量%、キノン類が0.005〜0.05質量%、高沸点物質として無水フタル酸等が0.005〜0.03質量%、残りは非凝縮性ガスと水蒸気である。
【0030】
次に、反応器から排出された反応ガス(1)を無水マレイン酸捕集器(10)に供給する。無水マレイン酸捕集器(10)では、無水マレイン酸の融点以上、かつ沸点以下、より好ましくは55〜120℃、特に好ましくは60〜100℃で冷却し、無水マレイン酸(11)の一部を液体で捕集する。共沸脱水塔内で発生する閉塞物の一種であるフマル酸を溶解するためである。なお、無水マレイン酸の蒸気圧残分があるためこの冷却後の反応ガスにも無水マレイン酸が多量に存在する。このため、このような無水マレイン酸の冷却による捕集工程を行った後には、該工程の排出ガスを水洗捕集器(20)に供給し、多量に存在する無水マレイン酸を水溶液中に捕集し粗マレイン酸含有水溶液として回収する。
【0031】
水洗捕集器(20)の捕集条件は、従来公知の方法を採用できる。捕集液としては、水を使用することができるが、マレイン酸の濃縮、脱水工程で発生した水または水溶液の一部を捕集液の一部として使用することもできる。塔頂温度は、無水マレイン酸の捕集率を向上させるためには低温であることが好ましく、水洗捕集器(20)に付属させた冷却器(図示せず)を使用して捕集塔塔頂温度を10〜90℃、より好ましくは20〜60℃とする。10℃を下回ると、マレイン酸の溶解度が下がり結晶が析出し、水洗捕集器(20)の圧力損失の増加や液の分散性の悪化による捕集塔(20)の段効率の低下を招く。その上、過量の冷却エネルギーが必要となるからである。一方、90℃を越えると無水マレイン酸の捕集率が低下するからである。
【0032】
該反応ガスは、水洗捕集器(20)では、塔底液のマレイン酸濃度が10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%になるように捕集液(21)を捕集塔の上部から塔内に導入して無水マレイン酸含有ガスと向流接触させて無水マレイン酸を捕集する。マレイン酸濃度が80質量%を上回るとマレイン酸の析出防止のために捕集温度を90℃以上に上げる必要があり、捕集率が低下し、その一方10質量%を下回ると粗マレイン酸含有水溶液の濃縮・脱水工程で留出させる水が多くなり、不経済である。
【0033】
なお、図1と相違して、無水マレイン酸捕集器(10)による液体状態での無水マレイン酸の捕集を行わずに、該反応ガスの全てを水洗捕集器(20)に供給して、粗マレイン酸含有水溶液として捕集してもよい。
【0034】
本発明では、次いで水洗捕集器(20)から得た粗マレイン酸含有水溶液を薄膜蒸発器や触媒における反応器などのアルデヒド類除去装置(30)に導入しアルデヒド類の量を特定範囲に調整する。この際、該粗マレイン酸含有水溶液は、ベンゼンを接触気相酸化して得た反応生成ガスを水捕集したものであることが閉塞防止効果に優れる点で効果的であり好ましい。なお、アルデヒド類除去装置(30)である薄膜蒸発器における留出条件としては、粗マレイン酸含有水溶液の供給速度や含まれるアルデヒド類の濃度によって異なるが、温度40〜130℃、圧力700〜200hPa、滞留時間5分以下で処理することが好ましい。特に、滞留時間が長くなると、該装置内で縮合物が発生する場合がある。
【0035】
次いで、薄膜蒸発器などのアルデヒド類除去装置(30)の缶出液(アルデヒド類を0.01〜1000質量ppmに処理した粗マレイン酸含有水溶液)を共沸脱水塔(40)に供給する。
【0036】
このような共沸脱水塔(40)としては、無堰棚段塔、有堰棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔を用いることができる。かかる共沸脱水塔(40)は、無堰棚段塔、有堰棚段塔、または充填塔であれば、閉塞物発生の抑制効果に優れる点で好ましい。その一方、理論段数が3段以上、より好ましくは4〜20段、特には5〜15段の蒸留塔を用いることが好ましい。3段未満ではマレイン酸と共沸溶媒との接触時間が不足し、脱水率の低下をまねく。また、無水マレイン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイン酸のロスが増大することになる。このような弊害が生じない程度に必要十分な段数であればよく、あまり段数が多いと設備費が高くなり、不経済である。
【0037】
使用する共沸溶媒としては少なくとも温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%の有機溶媒を共沸溶媒として使用することが好ましい。このような有機溶媒としては、上記した各種の有機溶媒があり、特にメチルイソブチルケトン(MIBKと略記する。)を使用することが好ましい。また、共沸脱水条件は使用する共沸溶媒によって異なるため、例えば、共沸溶媒としてMIBKを使用する場合には、該共沸脱水塔(40)には、粗マレイン酸含有水溶液1質量部に対して3〜5質量部のMIBKを供給する。一般には、塔頂圧力(絶対圧)100〜2000hPa、より好ましくは300〜1500hPaとする。100hPaを下回ると真空装置が大型化するばかりでなく、塔内温度が低くなり、マレイン酸やフマル酸が結晶化して蒸留できない場合がある。その一方2000hPaを越えると塔底温度が高くなりリボイラーの大型化の他に重合物が発生し易くなるばかりでなく、高耐圧装置にする必要が生じ不経済である。また、塔頂温度は50〜150℃,より好ましくは60〜130℃である。50℃を下回るとコンデンサンーが大型となり、その一方150℃を越えると塔内でマレイン酸の重合が発生しやすくなるばかりでなく無水マレイン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイン酸のロスが増大することになる。なお、共沸脱水に用いる共沸溶剤としては、無水マレイン酸の製造工程で回収した共沸溶媒(71)を再使用するものであってもよい。また、図1に示すように共沸溶剤は、共沸脱水塔(40)に直接供給する場合に限られず、供給原料に混在させて共沸脱水塔(40)内に供給してもよい。
【0038】
塔底温度は130〜200℃、より好ましくは150〜195℃である。130℃を下回るとマレイン酸の脱水反応が遅くなり、マレイン酸の脱水不充分となり、無水マレイン酸の収率低下につながる。一方、200℃を超えると無水マレイン酸の沸点に近くなり留出が起こり好ましくなく、また分解及び重合が発生しやすくなるからである。このような共沸脱水条件とするために、共沸溶剤の種類や添加量、粗マレイン酸含有水溶液中の水濃度、原料供給段の変更、塔頂に付属させるコンデンサーの還流比、塔段数、温度、圧力、その他の条件を調整すればよい。
【0039】
本発明では、共沸脱水の際に共沸脱水塔(40)の塔頂部に油水分離槽(50)を付属させ、塔頂留出液の共沸溶剤を還流させ、その回収水の一部を無水マレイン酸の捕集液として使用することが出来る。また共沸溶媒に水に対して溶解性を有する有機溶媒を使用した場合には、塔頂留出後の水相側には有機溶媒が含まれている。より経済的なプロセスとするためには、この有機溶媒を共沸脱水蒸留塔へ回収して使用することが有利な方法であり、塔頂留出液の水相は溶媒回収塔(90)に供給する。
【0040】
一方、本発明の実施形態においては、過酸化水素を添加してホルムアルデヒドを蟻酸に酸化するなどのアルデヒド量調整工程により蟻酸が増加した場合には、蟻酸を無水マレイン酸の製造工程から除去して特定量以下に調整できる工程を備えていることは好ましい形態である。具体的には、共沸脱水塔(40)の塔頂からは蟻酸等の軽沸点物質が留出するため、経時的に還流液の蟻酸濃度が増加する。従って、装置の腐食防止のためには還流液の蟻酸濃度を測定し、または定期的に還流液の一部を油水分離槽(50)から廃水として抜き取れば、蟻酸を無水マレイン酸の製造工程から除去することができる。
【0041】
共沸脱水塔(40)の塔底液は高沸点分離装置(60)に供給して高沸点物質を分離した後に後工程の精製を行う方法が装置の閉塞を防止することができるため有利な方法である。例えば、接触気相酸化反応によって副生された無水フタル酸、フマル酸や高沸点の重合物や縮合物等が残渣(61)として排出される。
【0042】
ここで高沸点分離装置(60)としては、連続式でもバッチ式でもよく従来公知の棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔に加え、バッチ式の回転式滞留槽型蒸発器や薄膜蒸発器を用いることができる。かかる高沸点分離装置(60)としては、薄膜蒸発器が好ましい。なお、図1に示すように、無水マレイン酸(11)を共沸脱水塔(40)の塔底液と共に高沸点分離装置(60)に供給して精製をおこなってもよい。
【0043】
次いで、高沸点分離装置から排出されるガス成分にはマレイン酸のほかに、共沸溶剤が残存する場合には、次いで溶剤分離塔(70)に供給して共沸溶剤を分離する。また、共沸脱水蒸留で共沸溶剤をボトムに残存しないかごく微量となるような運転条件とした場合には、この工程を省略することもできる。なお、高沸点分離装置(60)による高沸点物質の除去工程と溶剤分離塔(70)による共沸溶剤の除去工程とはいずれを先に行ってもよい。
【0044】
従来は、共沸脱水塔(40)の塔内および塔底にゲル状物質が付着する。具体的には、共沸脱水塔の塔内の内壁や棚段、あるいは、棚段部材の孔等に付着する。しかもこの付着物は水洗によっても容易に除去できず、このため無水マレイン酸の製造工程において、共沸脱水塔やその周辺設備では定期的な洗浄やアルカリ洗浄が必要であった。しかしながら、本発明では共沸脱水工程の前にアルデヒド類の除去工程を行うことで不純物によって発生するゲル状の縮合物の付着などによる閉塞物の発生を抑制することができ、プラントの長期稼動を達成できる。
【0045】
本発明では、このように共沸溶剤を除去し、および高沸点物質を除去した無水マレイン酸を更に精製塔(80)に供給して精製し、無水マレイン酸(81)を製品としてもよい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
熱経時テストによる不純物組成と生成析出物量を確認した。まず、精製マレイン酸42質量%水溶液にホルムアルデヒド、ハイドロキノンを表1に示したように種々濃度を変化させた溶液1,2,3を作成した。各溶液をガラス製500mlフラスコに200ml入れ、100℃で2時間オイルバス中で加熱攪拌した。
【0048】
冷却後、1μmメンブランフィルターで吸引ろ過した。析出固形分の付着したメンブランフィルターを50℃で一晩で乾燥させ、その乾燥固形分の質量から仕込んだマレイン酸水溶液に対する熱経時後析出物の生成量(質量ppm)を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
表1から明らかなように、ホルムアルデヒド含有量の減少に伴ってマレイン酸縮合物である固形の析出物量が少なくなった。特に、ホルムアルデヒドの含有量が300質量ppmの場合には、熱経時後の析出物量を0とすることができた。
【0050】
【表1】
Figure 0004092092
【0051】
(実施例2)
図1に示す工程に従って無水マレイン酸を製造した。まず、ベンゼンの接触気相酸化反応により排出された無水マレイン酸を含む反応ガスを、無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガス温度を60℃にコントロールして粗製無水マレイン酸(11)を捕集した。その後、この無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガスを水洗捕集器(20)に導入した。ついで、水洗捕集器(20)で該ガスを水で洗浄しついで、粗マレイン酸含有水溶液を得た。該溶液のマレイン酸濃度は42質量%であり、水分68質量%、ホルムアルデヒド3754質量ppm、p−ベンゾキノン186質量ppm、ハイドロキノン67質量ppm、蟻酸105質量ppmであった。
【0052】
次いで、該粗マレイン酸含有水溶液を、回転式薄膜蒸発器(回転羽根はテフロン(登録商標)製、容器はガラス製)に供給し、内圧560hPa、オイルジャケット温度130℃、内部液温約100℃、装置内滞留時間を約1分間でアルデヒド除去処理を行なった。留出率41.4質量%とすることで、ボトム液として得られたマレイン酸水溶液濃度は72.8質量%となった。この液を再び純水で希釈してマレイン酸濃度42質量%とした。この希釈液を分析すると、この濃縮操作によって、ホルムアルデヒド324質量ppm、p−ベンゾキノン1質量ppm、ハイドロキノン46質量ppm、蟻酸60質量ppmにそれぞれ減少したことがわかった。
【0053】
このアルデヒド類の減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0054】
(実施例3)
実施例2で得た粗マレイン酸含有水溶液を使用し、アルデヒド類を減少させる処理として、粉末活性炭にパラジウムを5質量%担持させたもの(以下Pd/Cと記載:川研ファインケミカル株式会社製)をホルムアルデヒドの酸化用触媒として用いた。まず、200mlガラス製フラスコに粗マレイン酸含有水溶液80gを入れ、常圧下、水浴で加熱し60℃、400rpmで撹拌した。ここに、上記触媒濃度3質量%となるように添加し、温度60℃で8時間、ガラス製キャピラリー細管から空気を30ml/minの速度で液中にバブリング処理しつつ酸化した。このアルデヒド類の減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0055】
表2から明らかなように、酸化用触媒の使用によってもアルデヒド類を減少することができ、最終的にマレイン酸縮合物である熱経時後テストでの析出物量が減少した。
【0056】
(比較例1)
実施例2と同様にして粗マレイン酸含有水溶液を得たが、回転式薄膜蒸発器によるアルデヒド減少処理を行なわなかった。その後、実施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0057】
実施例2と比較例1とを比較すると、ホルムアルデヒドを減少させるとマレイン酸縮合物である熱経時後テストでの析出物量が1/3にまで減少した。
【0058】
(参考例)
実施例2で得た粗マレイン酸含有水溶液を使用し、アルデヒド類を減少させるため、常圧下、200mlガラス製フラスコに粗マレイン酸含有水溶液80gを入れ、ホルムアルデヒドの1モル倍の過酸化水素(31質量%水溶液)を添加し、60℃、3時間、400rpmで撹拌処理した。このアルデヒド類の減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0059】
表2から明らかなように、熱経時後の析出物は少なかったが、蟻酸濃度が上昇した。
【0060】
【表2】
Figure 0004092092
【0061】
(実施例4)
実施例2で得た粗製マレイン酸水溶液42質量%を、回転式薄膜蒸発器による処理の後該缶出液のマレイン酸濃度を42質量%に純水で希釈調製した処理液を用いて、図1に示す工程に従って共沸脱水溶剤としてo−キシレンを塔頂から供給して共沸脱水蒸留を行なった。
【0062】
共沸脱水塔(40)として、縮合部32φ有堰5段、回収部50φ有堰10段の蒸留塔を使用した。塔底から数えて第10段目から粗マレイン酸含有水溶液を供給した。共沸溶媒は、粗マレイン酸含有水溶液に含まれる水分と無水化によって発生する水分に対し2.5質量倍を塔頂から供給し、常圧、塔底温度170℃で8時間共沸脱水蒸留を行なった。
【0063】
この結果、共沸脱水塔の第10〜13段目に黒色汚れがわずかに存在した程度であり、縮合物の析出量を減少させることができた。処理工程および結果を表3に示す。
【0064】
(実施例5)
実施例3で得た酸化用触媒を3質量%添加してのアルデヒド除去処理による該処理液を用いて、実施例4と同じ条件で共沸脱水蒸留を行なった。処理工程および結果を表3に示す。
【0065】
(実施例6)
実施例2で得た回転式薄膜蒸発器による処理の後、該缶出液のマレイン酸濃度を42質量%に純水で希釈調製した処理液を用いて、図1に示す工程に従って共沸脱水溶剤としてメチルイソブチルケトンを塔頂から供給して共沸脱水蒸留を行なった。
【0066】
共沸溶媒を粗マレイン酸含有水溶液に含まれる水分と無水化によって発生する水分に対し、3.5質量倍を塔頂から供給した以外は、実施例4と同じ条件で共沸脱水蒸留を行なった。結果を表3に示す。使用する共沸溶媒が親水性およびマレイン酸に対して親和性を有する場合には、実施例4で残存していた共沸脱水蒸留塔内の少量の黒色汚れも除去できる。
【0067】
(比較例3)
実施例2で得た粗製マレイン酸水溶液42質量%を用い、回転式薄膜蒸発器による処理およびマレイン酸濃度の42質量%への希釈処理を行なわないこと以外は実施例4と同様にして共沸脱水蒸留を行なった。この結果、比較例3では蒸留塔の6〜14段目に縮合物の析出が多量に生成して黒色に汚れ、詰まりが発生した。処理工程および結果を表3に示す。
【0068】
実施例4、5と比較例3との比較から、表3に示すように、共沸脱水蒸留を行なう前にアルデヒド類の除去処理を行なうと共沸脱水塔における析出物の発生を効果的に防止することができた。また、酸化用触媒を使用した実施例5とこれを使用しない比較例3とを比べると、比較例3では蒸留塔の黒色汚れが実施例5の2倍以上であった。
【0069】
【表3】
Figure 0004092092
【0070】
【発明の効果】
アルデヒド類を一定量以下に低減させる調整工程を行うことで精製工程中でのキノン類との縮合物の生成反応を抑えることができ、さらには生成量を実質的にほとんど無くすることができる。このため従来問題であった精製装置の閉塞を著しく少なくでき、連続稼動時間をより長くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明における無水マレイン酸の製造方法の好ましい製造方法の工程図である。
【符号の説明】
1…反応ガス、
10…無水マレイン酸捕集器、
11…粗製無水マレイン酸、
20…水洗捕集器、
21…捕集液、
30…薄膜蒸発器などのアルデヒド類除去装置、
40…共沸脱水塔、
50…油水分離槽、
51…廃水、
60…高沸点分離装置、
61…残渣、
70…溶剤分離塔、
71…共沸溶媒、
80…精製塔、
81…無水マレイン酸、
90…溶媒回収塔。

Claims (2)

  1. 粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によって脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法において、
    粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるホルムアルデヒドの量を0.01〜1000質量ppmの範囲にする、過酸化水素を添加することなく温度40〜130℃で該粗マレイン酸含有水溶液を蒸留してホルムアルデヒドを留出除去する工程からなるアルデヒド量調整工程、または炭素にパラジウムを担持した触媒を用いてホルムアルデヒドを分解する工程からなるアルデヒド量調整工程を行なった後に、該共沸蒸留によって脱水する工程を行なうものである、無水マレイン酸の製造方法。
  2. 粗マレイン酸含有水溶液が、ベンゼンを接触気相酸化して得た反応生成ガスを水捕集したものである請求項1記載の製造方法。
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