JP4627558B2 - すっきりとした飲み口の清酒 - Google Patents
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その中で、清酒においてその酒質が消費者に受け入れにくい部分が見られる。それは、清酒の口当たりが重く、特に女性に飲みにくいと言う印象を与えると言う点である。特に純米酒においては、アルコール添加などのある種の希釈処理を行わないため、もろみ成分がそのままの濃度で圧濾圧搾され、清酒としての製品となる。そのため、アルコール添加酒に比べ、清酒中の酸、アミノ酸、全糖質量などの濃度が他の清酒より高くなり、飲み口が重くなる。
飲み口を軽くする方法としては、今までには低アルコール酒にする(特許文献1、2、3)、焙炒処理をしてアミノ酸度を下げる(特許文献4、5)、全体を水で薄める、などの方法は各種考えられているが、従来の清酒らしい酒質を残しつつ飲み口を軽くする方法として、全糖質量を下げるという醸造方法については研究がなされていない。
本発明者らは、最終もろみ中の全糖質量の多くが、分解しにくい分岐オリゴ糖であることを鑑み、これを分解して酵母が資化できるようにすることを検討した。そこで、分岐オリゴ糖を分解するための方法として、分岐オリゴ糖切断酵素として、αグルコシダーゼ又はイソアミラーゼ又はプルラナーゼ又はイソプルラナーゼ又はトランスグルコシダーゼを用いることを思い至った。通常、αグルコシダーゼ又はイソアミラーゼ又はプルラナーゼ又はイソプルラナーゼ又はトランスグルコシダーゼは清酒醸造においては、主に吟醸酒などの仕込みにおいてグルコース不足を補うためなど、発酵促進に使われる。本発明では、もろみ期間中にαグルコシダーゼ又はイソアミラーゼ又はプルラナーゼ又はイソプルラナーゼ又はトランスグルコシダーゼなどを用いることによって難消化性オリゴ糖を分解できないかと言うことを検討した。その結果、αグルコシダーゼ又はイソアミラーゼ又はプルラナーゼ又はイソプルラナーゼ又はトランスグルコシダーゼを用いることによって、清酒中の難消化性のα―1、6結合のオリゴ糖が減少し、難資化性のα―1、6結合から易資化性のα―1,4結合の資化しやすい糖、又はグルコースに変換されることを見出した。上記の酵素活性の高い麹を用いた場合にも同じ効果が得られた。分岐オリゴ糖切断酵素で処理された糖は酵母によって容易に資化され、結果として全糖質量を少なくすることに成功した。そして、そのできあがった清酒は官能検査によると、清酒独特のうまみなど、本来の清酒の味わいはそのまま残っているが、すっきりとした飲み口の、飲みやすい清酒であり、当初の目的を十分に果たしていた。
本発明によって、清酒中の全糖質量が低くなり、従来の清酒の味わいを残ししたまますっきりとした飲み口である清酒を製造することに成功し、さらに分解された難消化性のオリゴ糖からできたグルコースをアルコールに変えることにより、アルコール生成量を増やすことにも寄与することが出来た。
以下に本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はその実施例に何等限定されることはなく、例示するに過ぎない。
〔参考例1〕
精米歩合70%の日本晴の掛け米及び麹米を使用して、表1の仕込み配合で汲み水150%、総米1kgの三段仕込みで仕込み試験を行った。ピルビン酸が50ppm以下になった時に上槽した。仕込みは液化液の仕込みで行い、1つは、仕込み時にαグルコシダーゼを添加し、もう一つはαグルコシダーゼの代わりにグルコアミラーゼを添加して仕込みを行った。各酵素の添加量は18000U/kg白米とした。
参考例1の全糖質量のもろみ期間中における変化を図1、図2に示した。図1はαグルコシダーゼを添加したもので、図2は対照のαグルコシダーゼ添加なしのものである。なお、図中Gはグルコースを表し、G2以上、はグルコースが2つ以上つながった糖である事を示す。αグルコシダーゼを添加したもろみでは、留15日目以降、対照に比べて二糖以上の糖が減っており、上槽時には対照の1/3程度になっていた。また、全糖質量を比較したものを図3に示す。これによると、留10日以降、αグルコシダーゼを添加したものの方が対照よりも全糖質量が減っており、上槽時には対照の半分程度になっていた。
〔参考例3〕
参考例1で醸造した清酒を当社パネラー10名で官能検査を行った。αグルコシダーゼを添加した酒を、対照のαグルコシダーゼを添加しない従来の仕込みと比べた場合にどうであったかを答えてもらった。
その結果、液化液仕込みでは、αグルコシダーゼを添加した酒は対照のαグルコシダーゼを添加しない酒に比べて「飲み口が軽い、スッキリしている」、などの評価をしたパネラーが多数であった(表3)。このことから、本発明であるαグルコシダーゼを用いた仕込みによる方法を用いれば、当初の狙い通り、従来の清酒の味わいを残しつつ、飲み口の軽い、すっきりとした清酒を製造できることが分かった。
以下表3は液化液仕込みによる官能検査結果である。
精米歩合70%の日本晴の掛け米及び麹米を使用して、表4の仕込み配合で汲み水150%、総米1kgの三段仕込みで仕込み試験を行った。ピルビン酸が50ppm以下になった時に上槽した。仕込みは通常の粒の仕込みで行い、1つは、仕込み時にαグルコシダーゼを添加し、もう一つはαグルコシダーゼの代わりにグルコアミラーゼを添加して仕込みを行った。各酵素の添加量は18000U/kg白米とした。
実施例4の全糖質量のもろみ期間中における変化を図4、図5に示した。図4はαグルコシダーゼを添加したもので、図5は対照のαグルコシダーゼ添加なしのものである。なお、図中Gはグルコースを表し、G2以上、はグルコースが2つ以上つながった糖である事を示す。αグルコシダーゼを添加したもろみでは、留15日目以降、対照に比べて二糖以上の糖が減っており、上槽時には対照の1/3程度になっていた。また、全糖質量を比較したものを図6に示す。これによると、留10日以降、αグルコシダーゼを添加したものの方が対照よりも全糖質量が減っており、上槽時には対照の半分以下になっていた。
〔実施例6〕
実施例4で醸造した清酒を当社パネラー10名で官能検査を行った。αグルコシダーゼを添加した酒を、対照のαグルコシダーゼを添加しない従来の仕込みと比べた場合にどうであったかを答えてもらった。
その結果、粒仕込みでも、αグルコシダーゼを添加した酒は対照のαグルコシダーゼを添加しない酒に比べて「飲み口がスッキリ、あっさりしている」、などの評価をしたパネラーが多数であった(表6)。このことから、本発明であるαグルコシダーゼを用いた仕込みによる方法を用いれば、当初の狙い通り、従来の清酒の味わいを残しつつ、飲み口の軽い、すっきりとした清酒を製造できることが分かった。
以下表6は粒仕込みによる官能検査結果である。
Claims (4)
- 全糖濃度が0.95重量%であり、アルコール度数が19.8度であり、酸度が2.0であることを特徴とする清酒。
- 日本酒度が+11であることを特徴とする、請求項1に記載の清酒。
- アミノ酸度が1.4であることを特徴とする、請求項1または2に記載の清酒。
- 上記清酒が純米酒である、請求項1ないし3の何れか1項に記載の清酒。
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