JP4627133B2 - 樹脂組成物及び接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、難燃性に優れた樹脂組成物、特に接着剤硬化後の内部応力を低減した常温硬化型の接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
省力化、省資源及び省エネルギーの点で、常温下、短時間で接着する接着剤として、常温速硬化型接着剤組成物が使用されている。従来、常温速硬化型接着剤組成物としては、二剤型速硬化エポキシ系接着剤組成物、嫌気性接着剤組成物、瞬間接着剤組成物及び第二世代のアクリル系接着剤組成物(SGA)が知られている。
【0003】
二剤型速硬化エポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤を計量、混合して被着体に塗布し、主剤と硬化剤の反応により硬化するものである。しかしながら、二剤型速硬化エポキシ系接着剤はより高い剥離強度と衝撃強度が要求されている。
【0004】
嫌気性接着剤は、被着体間において接着剤組成物を圧着して空気を遮断することにより硬化するものである。しかしながら、嫌気性接着剤組成物は、圧着する際に接着剤組成物の一部が被着体からハミ出した場合、ハミ出した部分が空気に接触しても硬化する性質が要求されている。又、被着体間のクリアランスが大きい場合にも硬化する性質が要求されている。
【0005】
瞬間接着剤は通常シアノアクリレートを主成分とし、作業性に優れている。しかしながら、より高い剥離強度や衝撃強度が要求されている。
【0006】
SGAは二剤型接着剤であるが二剤の正確な計量を必要とせず、計量や混合が不完全でも二剤の接触だけで、常温で数分〜数十分で硬化するために、作業性に優れ、しかも剥離強度や衝撃強度が高く、ハミ出し部分の硬化も良好であるために、広く用いられている。
【0007】
しかしながら、SGAは有機高分子化合物を含有する組成物であるため、SGAにより接着した接合体は加熱されたり、炎に接した場合は、高分子鎖の解重合や熱分解を生じ、接着剤としての機能が果たせなくなるおそれがある。その結果、加熱されたり、炎に接する恐れのある用途には、従来のSGAの使用は制限されている。
【0008】
この結果、接合部が加熱されたり、炎に接する恐れのある用途には、難燃性を付与した両面テープを用いる方法や溶接工法が採用されている。
【0009】
難燃性を付与した両面テープを用いる方法として特開平9−194797号公報や特開平10−140094号公報に、光重合開始剤とポリリン酸アンモニウムを添加した速硬化型難燃性両面テープが開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
光重合開始剤とポリリン酸アンモニウムを添加する方法は、被着体に紫外線を照射する必要があるために金属等の光を通さない被着体の接着には使用出来ず、又、接着力が小さいために長期間高荷重が加わる用途には適さず、耐久性の改善が要求されている。
【0011】
特開平8−198907号公報には、芳香族環を臭素化した難燃剤と三酸化アンチモンとを配合した難燃性両面テープが開示されている。しかしながら、ハロゲン化合物と三酸化アンチモンの難燃性化合物の組み合わせは相乗効果により難燃性は優れるものの、加熱時に被着体が金属等の場合、被着体を腐食するガスを発生する恐れがあるため、改善が要求されている。
【0012】
被着体が金属の場合には、接合に有機化合物を用いない溶接工法では高温に曝されても接合部位が剥がれ落ちないメリットはあるものの、溶接時に発生する熱により接合体に歪みが発生してしまい、歪みの除去作業が必要であるという課題がある。又、意匠性が必要な金属パネルでは外観が損なわれるという課題がある。
【0013】
本発明は、特定の成分を有する組成物が、人体や環境への悪影響が少なく、難燃性を有すると共に、金属等の薄板を接着した際には接着歪みが小さいので外観が良好な構造体が得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、重合性ビニルモノマー、重合開始剤、還元剤、ポリリン酸誘導体、有機リン酸エステル、及び金属水酸化物を含有してなる樹脂組成物であり、エラストマー成分を含有してなる樹脂組成物であり、重合性ビニルモノマーが(メタ)アクリル酸誘導体である樹脂組成物であり、23℃での硬化体の貯蔵弾性率が、1500MPa以下である樹脂組成物であり、樹脂組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤が少なくとも重合開始剤を含有してなり、第二剤が少なくとも還元剤を含有してなる二剤型樹脂組成物であり、接着剤であり、樹脂組成物の硬化体であり、接着剤により接合してなる接合体である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(7)エラストマー成分を含有する樹脂組成物と、(4)ポリリン酸誘導体、(5)有機リン酸エステル、及び(6)金属水酸化物を含有する。尚、本発明の樹脂組成物は、パラフィン類や酸化防止剤を含有してもよい。
【0016】
本発明で使用する(1)重合性ビニルモノマーは、ラジカル重合可能であればいかなるものでもよいが、硬化速度等の点で、(メタ)アクリル酸誘導体であることが好ましく、重合性ビニルモノマー100質量部中、(メタ)アクリル酸誘導体が70質量部以上であることがより好ましく、重合性ビニルモノマーが全て(メタ)アクリル酸誘導体であることが最も好ましい。
【0017】
ここで(メタ)アクリル酸誘導体とは、アクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体をいう。これらは通常、液状ないし固形状のものが使用される。(メタ)アクリル酸誘導体としては例えば、次のようなものがある。
【0018】
(i) 一般式
Z−O−R1
で示される単量体。
【0019】
(式中、Zは(メタ)アクリロイル基、CH2=CHCOOCH2−CH(OH)CH2−基、又はCH2 =C(CH3)COOCH2−CH(OH)CH2−基を示し、R1は水素、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、ジシクロペンチル基、ジシクロペンテニル基、(メタ)アクリロイル基及びイソボルニル基を示す)
【0020】
このような単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸等がある。これらの中では、接着性が大きく、歪みが小さい点で、(メタ)アクリル酸メチル及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルとイソボルニル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。(メタ)アクリル酸メチルとイソボルニル(メタ)アクリレートを併用する場合、組成比は質量比で(メタ)アクリル酸メチル:イソボルニル(メタ)アクリレート=60〜95:5〜40が好ましく、80〜90:10〜20がより好ましい。
【0021】
(ii)一般式
Z−O−(R2O) p −R1
で示される単量体。
【0022】
(式中、Z及びR1は前述の通りである。R2は−C2H4−、−C3H6−、−CH2CH(CH3)−、−C4H8−又は−C6H12−を示し、pは1〜25の整数を表す)
【0023】
このような単量体としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等がある。これらの中では、接着性が大きく、接着後の被着体の接着歪みが小さい点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
(iii)一般式
【化3】
で示される単量体。
(式中、Z及びR2は前述の通りである。R3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、qは0〜8の整数を表す)
【0025】
このような単量体としては例えば、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等がある。
【0026】
(iv)前記(i)、(ii)又は(iii)記載の単量体に含まれない多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル。
【0027】
このような単量体としては例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
【0028】
(v)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマー。
このような単量体は、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、有機ポリイソシアネート及び多価アルコールを反応することにより得られる。
【0029】
ここで水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等がある。
【0030】
又有機ポリイソシアネートとしては例えば、トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等がある。
【0031】
多価アルコールとしては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルポリオール等がある。
【0032】
(vi)一般式(I)で示される酸性リン酸化合物。
【化4】
【0033】
(式中、RはCH2=CR4CO(OR5)m−基(但し、R4は水素又はメチル基、R5は−C2H4−、−C3H6−、−CH2CH(CH3)−、−C4H8−、−C6H12−又は
【化5】
を示し、mは1〜10の整数を表す。)を示し、nは1又は2の整数を表す)
【0034】
この一般式(I)で示される酸性リン酸化合物としては例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート及びビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート等がある。
【0035】
以上、(i)〜(vi)の単量体は、1種又は2種以上を使用することができる。これらの中では、接着性が大きく、接着後の被着体の接着歪みが小さい点で、(i)、(ii)及び(vi)からなる群の1種又は2種以上が好ましく、(i)、(ii)及び(vi)を併用することがより好ましい。(i)と(ii)を併用した場合、その組成比は質量比で(i):(ii)=50〜95:5〜50が好ましく、60〜80:20〜40がより好ましい。(vi)の使用量は、(i)と(ii)の合計100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜7質量部がより好ましい。
【0036】
又、(メタ)アクリル酸誘導体以外の重合性ビニルモノマーとしては例えば、スチレン、α−アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル、ジビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、及び、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等のビニルエステル等がある。
【0037】
本発明で使用する(2)重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては例えば、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等がある。これらの中では、反応性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0038】
重合開始剤の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。0.1質量部未満だと硬化速度が遅いおそれがあり、20質量部を越えると貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0039】
本発明で使用する(3)還元剤は、前記重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する公知の還元剤であれば使用できる。代表的な還元剤としては例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩等がある。
【0040】
第3級アミンとしては例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等がある。チオ尿素誘導体としては例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等がある。遷移金属塩としては例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等がある。これらの中では、反応性の点で、チオ尿素誘導体が好ましく、エチレンチオ尿素がより好ましい。
【0041】
還元剤の使用量は重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.05〜15質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。0.05質量部未満だと硬化速度が遅いおそれがあり、15質量部を越えると未反応の還元剤が残り、接着性が低下するおそれがある。
【0042】
本発明で使用する(4)ポリリン酸誘導体としては、難燃性や接着性が良好で、金属等の薄板を接着した際、被着体構造物の変形や歪みが小さい点で、ポリリン酸及び/又はポリリン酸アンモニウムが好ましく、ポリリン酸アンモニウムが特に好ましい。ポリリン酸誘導体は、粒子表面が化学的に未処理のものや粒子表面を熱硬化性樹脂でマイクロカプセル化したものが用いられる。
【0043】
ポリリン酸誘導体の使用量は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(7)エラストマー成分を含有する樹脂組成物100質量部に対して10〜75質量部が好ましく、30〜60質量部がより好ましい。10質量部未満だと十分な難燃性が得られないおそれがあり、75質量部を越えると接着性が低下し、著しい粘度上昇を伴い、接着剤組成物の塗布作業が困難になり、接着後の被着体構造物の変形や歪みが大きくなるおそれがある。
【0044】
本発明で使用する(5)有機リン酸エステルとしては、例えばトリエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、クレジル−2,6−キシレニルフォスフェー、トレゾルシノールジフォスフェート、リン酸−t−ブチルフェニルフォスフェート及び芳香族縮合リン酸エステル類等がある。
【0045】
これらの中では、難燃性が大きく、接着後の被着体構造物の変形や歪みが小さい点で、一般式(A)及び/又は一般式(B)で示される有機リン酸エステルが好ましい。
【0046】
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12はCH3−、C2H5−、C6H5−、CH3−C6H4−又は(CH3)2−C6H3−を示し、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は同一でもよく、異なってもよい)
【0049】
一般式(A)や一般式(B)で示される有機リン酸エステルの中では、耐熱性、難燃性が大きく、接着後の被着体構造物の変形や歪みが小さい点で、単位重量あたりのリン含有量の高いものが好ましく、トリエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート及びトリキシレニルフォスフェートからなる群のうちの1種又は2種以上がより好ましく、トリエチルフォスフェートが最も好ましい。又、接着性が大きい点で、トリフェニルフォスフェートを用いてもよい。
【0050】
有機リン酸エステルの使用量は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(7)エラストマー成分を含有する樹脂組成物100質量部に対して5〜45質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。5質量部未満だと十分な難燃性が得られず、接着後の被着体構造物の変形や歪みが大きくなり、金属水酸化物の割合が多くなる場合には著しい粘度上昇を伴い、接着剤組成物の塗布作業が困難になるおそれがあり、45質量部を越えると接着性が極端に低下するおそれがある。
【0051】
本発明で使用する(6)金属水酸化物としては、樹脂組成物中の各成分の熱分解や解重合が起こりうる200〜400℃の範囲内に結晶水の放出を起こすものが好ましく、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウム等がより好ましい。これらの中では、硬化性や難燃性の点で、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0052】
金属水酸化物の使用量は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(7)エラストマー成分を含有する樹脂組成物100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。5質量部未満だと十分な難燃性が得られず、接着性が低下するおそれがあり、50質量部を越えると接着後の被着体構造物の変形や歪みが大きくなり、接着性が低下し、著しい粘度上昇を伴い、接着剤組成物の塗布作業が困難になるおそれがある。
【0053】
さらに、本発明では、接着性向上の点で、(7)エラストマー成分を使用することが好ましい。エラストマー成分とは、常温でゴム状弾性を有する高分子物質をいい、(メタ)アクリル系モノマーに溶解又は分散できるものが好ましい。
【0054】
このような(7)エラストマー成分としては、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体(MBAS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS) 、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、並びに、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、線状ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びブタジエンゴム等の各種合成ゴム、天然ゴム、スチレン−ポリブタジエン−スチレン系合成ゴムといったスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン−EPDM合成ゴムといったオレフィン系熱可塑性エラストマー、並びに、カプロラクトン型、アジペート型及びPTMG型といったウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールマルチブロックポリマーといったポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン−ポリオールブロック共重合体やナイロン−ポリエステルブロック共重合体といったポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、並びに、塩ビ系熱可塑性エラストマー等がある。これらのエラストマー成分は相溶性を考慮して、1種又は2種以上が使用できる。
【0055】
又、末端メタクリル変性したポリブタジエンも使用できる。
【0056】
これらの中では、化合物に対する溶解性及び接着性の点で、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体及び/又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムが好ましく、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体とアクリロニトリル−ブタジエンゴムの併用がより好ましい。
【0057】
エラストマー成分の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。5質量部未満だと粘度及び接着性が低下するおそれがあり、50質量部を越えると粘度が高すぎて作業上不都合が生じるおそれがある。
【0058】
リン酸誘導体、有機リン酸エステル及び金属水酸化物の添加方法は特に制限はなく、(1)第一剤と第二剤それぞれに別のものを添加する方法、(2)一方の剤のみに添加する方法、(3)第一剤と第二剤それぞれに同じ割合で等量ずつ均等に配分する方法があるが、第一剤と第二剤の粘度が等しくなる点で、(3)の方法が好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物は空気に接している部分の硬化を迅速にするために各種パラフィン類を使用することができる。パラフィン類としては例えば、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、蜜ろう、ラノリン、鯨ろう、セレシン及びカンデリラろう等がある。これらの中では、パラフィンが好ましい。パラフィン類の融点は40〜100℃が好ましい。
【0060】
パラフィン類の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。0.1質量部未満だと空気に接している部分の硬化が悪くなるおそれがあり、5質量部を越えると接着強度が低下するおそれがある。
【0061】
更に、貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤を含む各種の酸化防止剤等を使用することができる。酸化防止剤としては例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、トリフェニルホスファイト、フェノチアジン及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等がある。これらの中では、p−メトキシフェノールが好ましい。
【0062】
酸化防止剤の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.001〜3質量部が好ましい。0.001質量部未満だと効果がないおそれがあり、3質量部を越えると硬化物の強度が低下するおそれがある。
【0063】
本発明では粘度の調整や粘性・流動性の調整のために、微粉末シリカ等も使用することができる。これらの他にも所望により可塑剤、充填剤、着色剤又は防錆剤等の既に知られている物質を使用することもできる。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、その硬化体の23℃の貯蔵弾性率が1500MPa以下であることが好ましく、1000MPa以下であることがより好ましい。1500MPaを越えると接着後の被着体構造物の変形や歪みが大きくなるおそれがある。
【0065】
ポリリン酸誘導体、金属水酸化物、および有機リン酸エステルは、(1)第一剤及び第二剤それぞれ別の剤に添加する方法、(2)いずれの成分も一方の剤のみに添加する方法、(3)第一剤と第二剤それぞれに同じ割合で等量ずつ均等に配分する方法があるが、第一剤及び第二剤の粘度が等しくなる点で、(3)の方法が好ましい。
【0066】
本発明の実施態様として好ましくは、二剤型の接着剤組成物として使用することがある。二剤型については、本発明の接着剤組成物の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、接着剤組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤に重合開始剤を、第二剤に還元剤を別々に貯蔵する。二剤型は貯蔵安定性に優れる点で好ましい。この場合、両剤を同時に又は別々に塗布して接触、硬化することによって、二剤型の接着剤組成物として使用できる。
【0067】
本発明の接着剤組成物により被着体を接合して接合体を作製する。被着体の各種材料については、紙、木材、セラミック、ガラス、陶磁器、ゴム、プラスチック、モルタル、コンクリート及び金属等制限はないが、被着体が金属等の場合、優れた接着性を示す。
【0068】
【実施例】
以下実験例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、各物質の使用量の単位は質量部で示す。各物質については、次のような略号を使用した。尚、ポリリン酸アンモニウムは微粒子化したものを用い、パラフィンは融点は56℃のものを使用した。
【0069】
〔略号〕
NBR:アクリロニトリル−ブタジエンゴム
MBAS:メチルメタクリレート−ブタジェン−アクリロニトリル−スチレン共重合体
TEP:トリエチルフォスフェート
TPP:トリフェニルフォスフェート
酸性リン酸化合物:アシッドホスホキシエチルメタクリレート
【0070】
各種物性については、次のようにして測定した。
【0071】
〔貯蔵弾性率〕
第一剤と第二剤を等量混合した接着剤組成物を厚さ1mmのシート状に硬化させ、得られた硬化体を粘弾性測定装置(セイコー電子工業(株)製テンションモジュールDMS210)により測定し、23℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0072】
〔歪み量・歪み〕
長さ200mm×幅25mm×厚さ0.3mmのSPCC試験片中央部に、第一剤と第二剤を等量混合した接着剤組成物を長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmのサイズに塗布、硬化させ、室温で24時間養生した後の、SPCC試験片の反り量(単位:mm)を測定した。又、養生後、試験片から5m離れた位置から、目視により歪みの有無を判定した。判定は以下の通りである。
○:反りがわからない。
△:わずかに反りが見られる。
×:明らかに反りがある。
【0073】
〔引張剪断接着強さ〕
JIS K−6856に従い、試験片(100mm×25mm×1.6mmt、SECC−Dサンドブラスト処理)の片方に第一剤と第二剤を等量混合した接着剤組成物を塗布した。その後、直ちにもう片方の試験片を重ね合わせて張り合わせた後、室温で24時間養生したものを試料とした。
尚、試料の引張剪断接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、相対湿度50%の環境下において、引張速度10mm/分で測定した。
【0074】
〔難燃性〕
UL−94垂直燃焼試験法に準じて厚さ1/8インチ(0.3175cm)の接着剤組成物の硬化体を作製し、燃焼性を評価した。
【0075】
〔作業性〕
引張剪断接着強さ試験において、第一剤と第二剤を等量混合した接着剤組成物を試験片に塗布しやすかった場合を○、少し塗布しにくかった場合を△、粘度が高く塗布しにくかった場合を×とした。
【0076】
実験例1
表1に示す組成の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を用いて、表2に示す組成の二剤型接着剤組成物を調製し、物性を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実験例2
表3に示す組成の二剤型接着剤組成物を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実験例3
表4に示す組成の二剤型接着剤組成物を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
実験例4
表5に示す組成の二剤型接着剤組成物を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
実験例5
表6に示す組成の二剤型接着剤組成物を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0086】
【表6】
【0087】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物により、人体や環境への悪影響が少なく、難燃性が良好で、接着剤硬化後の被着体構造物の変形や歪みが小さい接着剤組成物が得られる。そのため、金属等の薄板や樹脂等のフィルムの接着等に好ましく使用できる。例えば、被着体の厚さを薄くしても、歪みの発生が少ないので美観が良好である。かかる接着剤の産業上の有益性は大きい。
Claims (11)
- (1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤、(4)ポリリン酸誘導体、(5)有機リン酸エステル、及び(6)水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含有してなる樹脂組成物。
- (7)エラストマー成分を含有してなる請求項1記載の樹脂組成物。
- (1)重合性ビニルモノマーが(メタ)アクリル酸誘導体である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- 23℃での硬化体の貯蔵弾性率が、1500MPa以下である請求項1〜4のうちの1項記載の樹脂組成物。
- パラフィン類及び/又は酸化防止剤を含有してなる請求項1〜5のうちの1項記載の樹脂組成物。
- (1)重合性ビニルモノマーが、(i)、(ii)及び(vi)からなる群の1種又は2種以上である請求項1〜7のうちの1項記載の樹脂組成物。
(i) 一般式
Z−O−R 1
で示される単量体。
(式中、Zは(メタ)アクリロイル基、CH 2 =CHCOOCH 2 −CH(OH)CH 2 −基、又はCH 2 =C(CH 3 )COOCH 2 −CH(OH)CH 2 −基を示し、R 1 は水素、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、ジシクロペンチル基、ジシクロペンテニル基、(メタ)アクリロイル基及びイソボルニル基を示す)
(ii)一般式
Z−O−(R 2 O) p −R 1
で示される単量体。
(式中、Z及びR 1 は前述の通りである。R 2 は−C 2 H 4 −、−C 3 H 6 −、−CH 2 CH(CH 3 )−、−C 4 H 8 −又は−C 6 H 12 −を示し、pは1〜25の整数を表す)
(vi)一般式(I)で示される酸性リン酸化合物。
- 請求項1〜7のうちの1項記載の樹脂組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有してなり、第二剤が少なくとも(3)還元剤を含有してなる二剤型樹脂組成物。
- 請求項1〜7のうちの1項記載の樹脂組成物からなる接着剤。
- 請求項1〜7のうちの1項記載の樹脂組成物の硬化体。
- 請求項9記載の接着剤により接合してなる接合体。
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